新技術説明会 様式例

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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第6回 糖新生とグリコーゲン分解

脂肪酸 1) 脂肪酸の分類脂肪酸は, 中性脂肪や複合脂質に結合しており, その構造は炭素鎖が連なるカルボン酸である 脂肪酸は炭素の鎖長 ( 長短 ) によっても分類され, 炭素数 2~4 個のものを短鎖脂肪酸 ( 低級脂肪酸 ),5 ~12 個を中鎖脂肪酸, それ以上の炭素数のものを長鎖脂肪酸 (

センシンレンのエタノール抽出液による白血病細胞株での抗腫瘍効果の検討

第6回 糖新生とグリコーゲン分解

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グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

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生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

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1,4-ナフトキノン誘導体の合成と活性評価について

Umpolung Reactivity of Difluoroenol Silyl Ethers with Amines and Amino Alcohols

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査読済み試験論文 n-3 脂肪酸が豊富な微細藻類を含む飼料を給与されたアトランティックサーモン (Salmo salar) の代謝 健康及び切り身の栄養価について Katerina Kousoulaki1*, Tone-Kari Knutsdatter Østbye 1, Aleksei Krasn

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の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

加工デンプン(栄養学的観点からの検討)

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脂質について知りたい! からだに必要なものを取り込んで生きていく営み ( 栄養 ) において 特に重要な成分は 炭水化物 たんぱく質 脂質 ビタミン ミネラルです 脂質は私たちのからだにとって重要な栄養素であり 食品にあっては食べ物をおいしくしたり 食べやすくしたりするなどの役割も担っています 私た

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次の 1~50 に対して最も適切なものを 1 つ (1)~(5) から選べ 1. 細胞内で 酸素と水素の反応によって水を生じさせる反応はどこで行われるか (1) 核 (2) 細胞質基質 (3) ミトコンドリア (4) 小胞体 (5) ゴルジ体 2. 脂溶性ビタミンはどれか (1) ビタミン B 1

解糖系でへ 解糖系でへ - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 - リン酸 - リン酸 1,-2 リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 AT AT リン酸化で細胞外に AT 出られなくなる 異性化して炭素数 AT の分子に分解される AT 2 ホスホエノール AT 2 1

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日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

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第6号-2/8)最前線(大矢)

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル


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3.(修正版)プレゼン配布資料(金沢大学_関口先生)

血糖値 (mg/dl) 血中インスリン濃度 (μu/ml) パラチノースガイドブック Ver.4. また 2 型糖尿病のボランティア 1 名を対象として 健康なボランティアの場合と同様の試験が行われています その結果 図 5 に示すように 摂取後 6 分までの血糖値および摂取後 9 分までのインスリ

1-1 栄養素の代謝と必要量 : 糖質 炭水化物 1 糖質の消化吸収 デンプンは唾液中のα アミラーゼの作用により加水分解され かなりの部分が消化を受ける ヒト の唾液中に存在するデンプン消化酵素は α アミラーゼがほとんどである 胃では糖質の消化酵素は 分泌されないが 食道から胃内に流入した食塊が

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

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報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

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( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

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保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

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られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

脂質の分解小腸 脂肪分解とカルニチン < 胆汁 > 脂肪の乳化 < 膵液 膵液リパーゼ ( ステアプシン )> 脂肪酸 グリセリン 小腸より吸収吸収された脂肪酸は エステル結合により中性脂肪として蓄積されます 脂肪酸は 体内で分解されエネルギーを産生したり 糖質や余剰のエネルギー産生物質から合成され

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

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総説 実践女子大学生活科学部紀要第 54 号,001 ~ 005, L- カルニチン - その存在量と生理機能 - 田島眞 L-Carnitine the amounts in foods and the functional properties Makoto TAJIMA L-Car

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平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

第90回日本感染症学会学術講演会抄録(I)

かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

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Microsoft PowerPoint マクロ生物学9

ン投与を組み合わせた膵島移植手術法を新たに樹立しました 移植後の膵島に十分な栄養血管が構築されるまでの間 移植膵島をしっかりと休めることで 生着率が改善することが明らかとなりました ( 図 1) この新規の膵島移植手術法は 極めてシンプルかつ現実的な治療法であり 臨床現場での今後の普及が期待されます

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Transcription:

1 異なる脂肪酸を組み合わせることで 強力にがん細胞を死滅させる 名古屋大学大学院生命農学研究科 栄養生化学研究分野 助教北浦靖之

研究背景 脂肪酸 : 一価のカルボン酸 ( カルボキシル基 COOH をもつ化合物 ) 飽和脂肪酸 短鎖 : 炭素数が 6 以下 ( 酢酸 ブチル酸 ) 中鎖 : 炭素数が 8 12( カプリル酸 ) 長鎖 : 炭素数が 14 以上 ( ステアリン酸 ) 不飽和脂肪酸 : 主に長鎖脂肪酸 一価 : 二重結合の数が 1 つ ( ) 多価 : 二重結合の数が 2 つ以上 ω-3: メチル末端から 3 番目の炭素 - 炭素結合に二重結合 (α- リノレン酸 ドコサヘキサエン酸 :DHA) ω-6: メチル末端から 6 番目の炭素 - 炭素結合に二重結合 (γ- リノレン酸 アラキドン酸 ) 2

3 脂肪酸による細胞死誘導 (Lipotoxicity) 短鎖 および長鎖飽和脂肪酸によるがん 細胞死誘導効果に関する報告は多数ある が 中鎖に関してはほとんど報告がない ブチル酸 (C4: 炭素数 4) による大腸がん由来細胞の細胞死誘導 J. Int. Med. Res. 37: 803 (2009) Cancer Research 63: 5401 5407 (2003) J. Nutr. 132:1812-1818 (2002) (C16) ステアリン酸 (C18) による肝臓がん由来細胞の細胞死誘導 AJP Gastrointest. Liver Physiol. 299: G236 G243 (2010) J. Hepatology 52: 586 (2010) J. Biol. Chem. 281: 12093 (2006) Clinical Nutrition 23: 721 732 (2004)

中鎖飽和脂肪酸による細胞死誘導 Jurkat 細胞 ( ヒト T 細胞性白血病由来 ) 死細胞の割合 (PI positive cells%) DMSO 1% エナント酸 C7 カプリル酸 C8 ペルラゴン酸 C9 カプリン酸 C10 C12 各脂肪酸刺激 24 時間後に PI (Propidium iodide) で染色し フローサイトメーターにて陽性細胞 ( 死細胞 ) の割合を測定 4

( 長鎖一価不飽和脂肪酸 ) は ( 長鎖飽和脂肪酸 ) の細胞死誘導を抑制する C16 C16 + C18:1 ( 炭素数 18: 二重結合 1) による細胞死 (% Apoptosis) MDA-MB-231 細胞 ( ヒト乳がん由来 ) + 濃度 (μm) Cancer Research 60: 6353 6358 (2000) より一部改変 5

( 長鎖一価不飽和脂肪酸 ) は ( 中鎖飽和脂肪酸 ) の細胞死誘導を促進する DMSO 1% C12 C16 0.5 mm なし HT1080 細胞 ( ヒト線維肉腫由来 ) 6

細胞生存率 (DMSO1% なしの群に対する比率 ) ( 長鎖一価不飽和脂肪酸 ) は中鎖飽和脂肪酸による細胞死誘導を促進する 7 HT1080 細胞 ( ヒト線維肉腫由来 ) なし DMSO 1% カプリル酸 C8 カプリン酸 C10 C12 C16 0.5 mm 各脂肪酸刺激 48 時間後に MTT アッセイにより生細胞数を測定

細胞生存率 (DMSO1% なしの群に対する比率 ) ( 長鎖一価不飽和脂肪酸 ) は中鎖飽和脂肪酸による細胞死誘導を促進する 8 A549 細胞 ( ヒト肺がん由来 ) なし DMSO 1% カプリル酸 C8 カプリン酸 C10 C12 C16 0.5 mm 各脂肪酸刺激 48 時間後に MTT アッセイにより生細胞数を測定

細胞生存率 (DMSO1% なしの群に対する比率 ) ( 長鎖一価不飽和脂肪酸 ) は中鎖飽和脂肪酸による細胞死誘導を促進する 9 HeLa 細胞 ( ヒト子宮頸がん由来 ) なし DMSO 1% カプリル酸 C8 カプリン酸 C10 C12 C16 0.5 mm 各脂肪酸刺激 48 時間後に MTT アッセイにより生細胞数を測定

( 長鎖一価不飽和脂肪酸 ) は ( 中鎖飽和脂肪酸 ) の細胞死誘導を促進する Jurkat 細胞 ( ヒト T 細胞性白血病由来 ) 刺激なし : 灰色 刺激あり : 青 死細胞の割合 (PI positive cells%) なし 0.5 mm + + DMSO 1% C12 C16 各脂肪酸刺激 16 時間後に PI (Propidium iodide) で染色し フローサイトメーターにて陽性細胞 ( 死細胞 ) の割合を測定 10

( 長鎖一価不飽和脂肪酸 ) はによる Caspase-3 の活性化を促進する Jurkat 細胞 ( ヒト T 細胞性白血病由来 ) 刺激なし : 灰色刺激あり : 青 Caspase-3 活性化細胞の割合 (substrate fluorescent positive cells%) なし 0.5 mm + + DMSO 1% C12 C16 各脂肪酸刺激 5 時間後に Caspase-3 蛍光基質 NucView TM 488 Caspase-3 substrate を添加し フローサイトメーターにて陽性細胞 (Caspase-3 活性化細胞 ) の割合を測定 11

( 長鎖一価不飽和脂肪酸 ) はによる活性酸素種 (ROS) の産生を促進する Jurkat 細胞 ( ヒト T 細胞性白血病由来 ) 刺激なし : 灰色刺激あり : 青 ROS 産生細胞の割合 (DCFDA positive cells%) なし 0.5 mm + + DMSO 1% C12 C16 各脂肪酸刺激 5 時間後にROS 蛍光指示薬 DCFDA (2',7'-dichlorodihydrofluorescein diacetate, acetyl ester) を添加し フローサイトメーターにて陽性細胞 (ROS 産生細胞 ) の割合を測定 12

( 長鎖一価不飽和脂肪酸 ) はによるミトコンドリア機能障害を促進する Jurkat 細胞 ( ヒト T 細胞性白血病由来 ) 刺激なし : 灰色刺激あり : 青 ミトコンドリア機能障害 ( 膜電位低下 ) 細胞の割合 (TMRM low cells%) なし 0.5 mm + + DMSO 1% C12 C16 各脂肪酸刺激 5 時間後にミトコンドリア膜電位蛍光指示薬 TMRM (tetramethyl rhodamine methyl ester) を添加し フローサイトメーターにて陽性細胞 (ROS 産生細胞 ) の割合を測定 13

予想される とによる作用メカニズム 14 (C12) (C18:1) (C16) 促進 ROS 抑制? ミトコンドリア機能障害 ( 膜電位の低下 ) Cyt-c + Caspase-9 Caspase-3 ER ストレス? Caspase-3 apoptosis

15 従来技術とその問題点 がんの治療に用いられる物理的 薬理学的ながん抑制法の多くは 単に細胞死を誘導するものであり がん細胞のみならず正常細胞をも死に至らしめるため がん病巣 がん細胞にのみ特異的に作用させるためには厳密なコントロールが必要となる

がん細胞のグルコース代謝は正常細胞とは異なる Warburg Effect ミトコンドリアでの酸化的リン酸化に用いるグルコースが尐なく 必要なエネルギーを細胞質での解糖系から優先的に得ている現象 増殖細胞 がん細胞脂肪酸 アミノ酸 核酸の合成が亢進し 分解が抑制 細胞増殖に必要となるエネルギーや細胞構成分子を生産 Science 324: 1029-1033 (2009) 16

17 新技術の特徴 従来技術との比較 細胞死誘導効果がほとんどないと考えられていた2 種類の脂肪酸を組み合わせることで 強力にがん細胞を死滅することができる 中鎖飽和脂肪酸は正常細胞で分解されやすいが 脂肪酸分解が抑制されているがん細胞では分解されないため がん細胞特異的に効果を示す可能性がある (in vitroにて検討中 ) 腸管で吸収された中鎖飽和脂肪酸は長鎖脂肪酸とは異なる経路で体内に運ばれる

18 小腸 長鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸では小腸からの吸収経路が異なる 長鎖脂肪酸 中鎖脂肪酸 長鎖脂肪酸は 小腸で吸収された後 小腸上皮細胞でトリアシルグリセロール (TG) に再合成され キロミクロンを形成し リンパ管を経由して血液に流れ込み 全身の組織に運ばれ 貯蔵もしくは必要に応じて分解される TG リンパ管 全身の組織 ( 脂肪組織 筋肉など ) 貯蔵 ( 必要に応じて分解 ) FFA 門脈肝臓分解 中鎖脂肪酸は小腸上皮細胞で TG に再合成されず 小腸で吸収された大部分がキロミクロンを形成せずに 遊離脂肪酸 (FFA) の形で門脈血中に送られ 直接肝臓に取り込まれた後 速やかに効率よく分解される そのため 長鎖脂肪酸にくらべ体脂肪が蓄積しにくい

19 想定される用途 抗がん剤がん患部に直接投与することで がん細胞には細胞死を誘導し 正常細胞では素早く分解される 健康食品 サプリメント中鎖飽和脂肪酸は腸管から吸収され 門脈を経由して直接肝臓へ到達する また 血中にはが遊離脂肪酸の形で多く存在するため 相乗効果が期待できる 軟膏剤塗布することによる皮膚がんの治療

20 想定される業界 利用者 対象 医薬品 食品メーカー全般

21 実用化に向けた課題 現在 細胞レベルでの作用メカニズムについて詳細な解析を行っている しかし 動物個体レベルでのがん抑制効果の点が未解決である (in vivo での効果を検討中 ) 今後 がんモデル動物について実験データを取得し 投与量 投与方法などの条件設定を行っていく 実用化に向けて ヒトに対する効果を検討する必要がある

22 企業への期待 未解決の動物個体レベルでの効果については がん細胞移植 化学発がんモデルマウスを用いて克服できると考えている 安全性試験 ヒト臨床研究の技術を持つ 企業との共同研究を希望 また 抗癌剤を開発中の企業 医療 食品分野への展開を考えている企業には 本技術の導入が有効と思われる

23 本技術に関する知的財産権 発明の名称 : 細胞死誘導効果を有する中鎖飽和脂肪酸と 不飽和脂肪酸を含有する組成物 出願番号 : 特願 2011-93212 出願人 : 名古屋大学 発明者 : 下村吉治 北浦靖之 井上花菜

24 お問い合わせ先 名古屋大学 産学官連携推進本部鈴木孝征 TEL 052-747-6483 FAX 052-788-6146 e-mail t-suzuki@sangaku.nagoya-u.ac.jp