平成 26 年度公害防止管理者研修 ( 化学物質関係 ) (11 月 21 日 ) 千葉県環境保全協議会殿 独立行政法人製品評価技術基盤機構化学物質管理センター
タイムスケジュール リスクコミュニケーションとは何か? 13:00 14:00 60 分 アイスブレイク 14:10 14:20 10 分 ワーク 1 質問作成 14:20 15:05 45 分 ( 適宜 休憩 ) ワーク 2 回答作成 15:05 15:50 45 分 (10 分休 設営 ) ワーク 3 模擬リスコミ 16:00 17:00 60 分
リスクとは? リスク評価及びリスク管理に関する米国大統領 議会諮問委員会報告書 (1997) リスクは 物質または状況が一定の条件のもとで害を生じる可能性 1 良くない出来事が起きる可能性 ( 確率 ) 2 良くない出来事の重大さ ( 被害の大きさ ) の 2 つの要素の組み合わせ 例えば 3.11 級の巨大津波 生起確率 (1000 年に 1 回 ) 3
風速 :60 メートル時間雨量 :100 ミリを予想 ( リスク ) 3 日後 円の中に 中心が来る確率は 70% 最大風速 60 メートルです!( ハザード ) 強風のため 停電中大雨で土砂崩れ発生 ( ハザード ) リスクとハザード 4
リスクとハザード 危険性 有害性は ハザード 例えば 化学物質の毒性や爆発性 津波や地震動による災害 薬の副作用 たばこや酒の害 快適さや便利さなどの有用性は ベネフィット 薬で病気が治る 酒で気持ちが良くなる 5
リスク認知 わたしたちがハザードを受け止め 主観的 直感的に認識すること 一次バイアス 小さなリスクを過大視 大きなリスクを過小視 二因子モデル 恐ろしさ と 未知性 6
一次認知のバイアス (Lichtenstein, et al., 1978) 7
二因子モデル http://gc.sfc.keio.ac.jp/class/2005_14440/slides/05/8.html 8
パーセプションギャップ 客観的リスク (=) 主観的リスク : 食品添加物 エスカレーター 自転車など 客観的リスク (<) 主観的リスク : 原子力 鎮痛剤の服用 大気汚染など 客観的リスク (>) 主観的リスク : コーヒー スキー 電車 タバコ アルコールなど ( 草間ほか 1985 を改変 ) コーヒーはなぜ主観的リスクが小さいのですか? 9
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損失余命 ( 日 ) のリスク 喫煙 ( 全死因 ) >1000 喫煙 ( 肺がん ) 370 受動喫煙 ( 虚血性疾患 ) 120 ディーゼル粒子 ( 上限値 ) 58 ディーゼル粒子 14 受動喫煙 ( 肺がん ) 12 ラドン 9.9 ホルムアルデヒド 4.1 ダイオキシン類 1.3 ヒ素 0.62 トルエン 0.61 ベンゼン 0.16 http://www.env.go.jp/chemi/entaku/kaigi06/shiryo/gamo/gamo23.pdf 11
リスクコミュニケーションの考え方 NRC の報告書 (1989) 基本的考え方を示したもの 個人とグループそして組織間でリスクに関する情報や意見を交換する相互作用的プロセス 利害関係者間の理解と信頼のレベルの向上 NRC (National Research Council). 1989. Improving Risk Communication, National Academy Press, 1989: 邦訳 リスクコミュニケーション : 前進への提言, 林裕造 関沢純訳, 化学工業日報社 1997 年. 知る権利 や意思決定の主体が専門家のみではなく リスクに曝される人たちにもあるといった考え方が背景に存在 似ているけど違う パブリック リレーションズ (PR) 個人や組織体が最短距離で目標や目的を達成する 倫理観 に支えられた 双方向性コミュニケーション と 自己修正 をベースとしたリレーションズ活動である 井之上喬 パブリック リレーションズ ( 日本評論社 2006) 12
リスクコミュニケーションの考え方 リスクコミュニケーションの最終目標は 専門知識 合理的マネジメント戦略 公衆の好み (preference) の一致である OECDワークショップ資料 化学物質リスク管理のリスクコミュニケーションエグゼクティブサマリー (2000) 科学的な リスク評価 の結果を踏まえて 技術的な実行可能性 費用対効果 国民感情など様々な事情を考慮し 関係者との十分な対話を行った上で適切な政策 措置を決定 実施する作業が リスク管理 です リスク評価 科学的 専門的 中立リスク管理 政治的 社会的 行政上の意思決定 ( ガバナンス マネジメント ) リスクコミュニケーション リスク管理のための情報の流通 調整 手続き リスク評価の独立性と中立性に関する食品安全委員会委員長談話 ( 平成 21 年 7 月 1 日 ) 13
リスクコミュニケーションの考え方 クライシスコミュニケーション 発生した被害を軽減する ハザードが発現し 災害が進行している時のコミュニケーション 新型インフルエンザが蔓延している ( 現在 ) 風水害 地震などの発生後の避難誘導や支援 食品への異物混入による食中毒の発生 リスコミと表現していることもあるが違う リスコミにクライシスコミュニケーションを含むとする考え方もある リスクコミュニケーション 被害を避ける ( 発生していない ) ハザードが発現していない時 ( リスク ) のコミュニケーション 新型インフルエンザが他国で発生しているとき 台風が接近している 地震予知が為されたとき 異物混入の可能性が事業者から報告されたとき PRTR データが公開されたとき 14
BCP(Business Continuity Plan) とリスコミ 3.11 東日本大震災を経験して 3.11 東日本大震災の経験を踏まえて 1 広域巨大災害時の企業活動への影響 想定外の被害 ( 低頻度の巨大災害 :1000 年に一度の津波 ) 間接的な影響 ( 福島第一原発事故 : エネルギー 放射能汚染 ) グローバリゼーション ( 拡大するサプライチェーンの維持 ) 組織のマネジメント ガバナンス体制の見直し (BCP の構築 ) 2 化学物質管理制度への影響 環境省は 震災前平成 21 年度に 自治体環境部局における化学物質に係る事故対応マニュアル策定の手引き を公開 震災後 幾つかの自治体で 化学物質に係る事故対応マニュアル ( 事業者向け ) を策定 ( 和歌山県など ) 東京都と大阪府は 漏えい後の化学物質のリスク評価をシミュレートし 独自条例 化学物質管理指針 事業者向けマニュアル等を見直し 環境省は 2012 年に各自治体の化学物質管理制度 ( 条例 事業者対策マニュアル ) の見直しの状況について 調査を実施 (64 自治体のうち 16 自治体が見直し ) 横浜国立大学環境情報学府客員准教授 NITE 化学物質管理センター竹田宜人 15
爆発炎上するコスモ石油千葉製油所の LPG タンク (2011 年 3 月 11 日 ) フジニュースネットワーク (3.11 忘れない ) http://www.fnn-news.com/311/articles/201103110044.html
炎上する金属加工会社 シバタテクラム の町田工場 ( 消防法 東京都環境確保条例等無許可操業 ) http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/photos/20140514/dms1405141204005-p1.htm
平成 24 年度当機構調査 リスクコミュニケーションプログラムの変化 図 1 実施プログラムの比較 90% 80% コミュニケーション重視 70% 60% 50% 40% 20 年度 24 年度 30% 20% 10% 0% 会社紹介環境活動工場見学意見交換講演講評その他無回答
事業者から説明された内容 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 化学物質には関心はない 排出量 リスク 法令遵守 騒音 図 2 説明項目の比較 臭気 植栽緑化 排水処理 震災対策 省エネ 廃棄物 その他 図 3 質問項目の比較 無回答 震災対策 排水処理 (ALPS?) エネルギー ( 原発 ) 廃棄物 ( 放射性 ) 20 年度 24 年度 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 排出量リスク 法令順守 騒音臭気 植栽緑化排水処理 震災対策省エネ対策 廃棄物対策 従業員マナー交通マナーその他無回答 20 年度 24 年度 平成 24 年度当機構調査
ワーク 1 ワークショップと模擬リスコミ 市民の立場になって 質問を考える ワーク 2 その質問に 事業者として 回答を考える ワーク 3 作成した回答を使って 模擬リスコミを行う
アイスブレイク ( 自己紹介 ) 14:10 14:20 10 分 時計係を講師側で指名します 所属 お名前 時事問題の関心事 社内の関心事を 1 分お話しください 最後に 班ごとに司会 ( チームリーダー ) を選出してください
ワーク 1 45 分 14:20 15:05 仮想の工場の環境管理者として 市民からの質問を想定する 工場に対してどんなことを考えているのだろう? 何を聞きたいだろうなどを市民の立場で考える 各個人が考える時間 :10 分 ポストイットに 書く 各自 10 問以上 各班で分類して 質問を作文する KJ 法 20 問程度 模造紙に 20 問 質問を書く
千葉環保化学工業 環境管理者 基礎化学品を製造しており 備蓄用のタンクやプラント 排気用の煙突がある 海岸部に立地し 東日本大震災の際には津波被害を受けた PRTR 対象物質のトルエン ベンゼンを大気に排出し 亜鉛を下水道に排出している 河川放流はない 大防法 水濁法 騒音振動規制法等の対象事業所である 首都圏に近く 周辺は急速に宅地化してきた 特にトラブルはないが 最近 煙突高ほどのマンションが建設された 緑化対策に熱心で 多くの木が敷地内に植えられている 従業員のほとんどは車通勤であり 正門近くにコンビニがある プラントの増設が行われており 建設用車両の出入りがある 年に 1 回 住民向け工場見学会を開催している 災害時は一時避難所に指定されている
ワーク 2 15:05 15:50 45 分 ワーク 1 で作成した市民からの質問を交換する (A E C D B スタッフ ) わかりやすく 事業所の環境対策やリスク削減につなげるように回答を作成する ワーク 2 の最後に ワーク 3 模擬リスコミの司会 ( ファシリテータ ) を決める 回答は 仮想のことなので 所属する組織のリアルな姿にとらわれない 回答は 模造紙に大きく書く
ワーク 3 模擬リスコミ 16:00 17:00 60 分 市民役は質問をし 事業者役は答える 1 1 回戦は A( 市民 )-C B( 事業者 ) ファシリテーションはBの司会者 (10 分 ) 2 講師から講評 解説 (5 分 ) 3 2 回戦は C E( 市民 ) D( 事業者 ) ファシリテーションは講師 (15 分 ) 4 3 回戦はB D( 市民 )-E A( 事業者 ) ファシリテーション インタプリタを講師 (20 分 ) 5 振り返り (5 分 ) 6 まとめ (5 分 )