514 日本画像学会誌第 50 巻第 6 号 :514-520(2011) 2011 The Imaging Society of Japan 論 文 デジタルカメラ近赤外画像による植生指数推定の試み 尾崎 * 敬二 (2011.8.10 受理 ) An Attempt to Estimate a Vegetation Index with Characteristics of Near-infrared Images Captured by Digital Camera Keiji OSAKI * Usefulness of near infrared image acquired by commercial digital cameras is undisputable in remote sensing analysis for vegetation estimates and detection of faded black strokes on archeological wooden materials. It has not been so clear that what region of chromaticity space near infrared light signal would be reproduced in images of visible light. Is it possible for infrared images of foliage to be used to estimate vegetation activity of plant in captured images without using a high-cost and professional spectral radio-photometer? The main purpose of this research is to clarify the characteristics of infrared images by the digital camera and to utilize its special features for a lower-cost detection of vegetation activity from the infrared images. It was manifested that an artificial sunlight lamp shows several peaks in infrared spectral region and its reflection could be detected in the infrared images by digital cameras. The detection and estimation of foliage activity seems to be feasible to generate NDVI(Normal Difference Vegetation Index)distribution from near infrared image and visible red image acquired by the digital camera. Results from the NDVI distribution map show high correlation with the NDVI derived by measured spectral reflectance of green foliage. Keywords : Near infrared image, chromaticity diagram, digital camera, vegetation index 商用デジタルカメラによる画像には近赤外域の光が含まれるため, この近赤外画像を植物緑葉の活性度推定に用いる試みが行われてきた. しかし, 不可視の近赤外光が取得画像の可視光赤に影響を及ぼすなら, 植生指数の算出に問題が生じる. そのため, 近赤外光源画像を分析して, 色度図上での分布を調べた結果, 近赤外光源は xy 色度図の紫色領域に現れることを確認した. 可視光をほぼ遮断する赤外レンズフィルタを使用して取得の近赤外画像と可視光赤の画像の画素値を組み合わせて, 正規化差分植生指数 (NDVI) の分布を表す画像を作成し, 分光放射輝度計による分光反射率測定値から算出の NDVI と比較した結果, 両者は,0.96 の高い相関を示した. 商用デジタルカメラによる近赤外画像と可視光赤色域の画像間の演算で植物の葉の活性度把握に有用な NDVI 分布画像を作成でき, 植物緑葉の活性度の推定に利用可能となるので, 環境状況把握等に有用と考えられる. キーワード : 近赤外画像, 色度図, 紫色領域, デジタルカメラ, 植生指数 1. はじめに多くの市販のデジタルカメラでは, 可視光以外の電磁波も捉えることができる. これを利用して, リモートセンシングの分野において, デジタルカメラをマルチスペクトルセンサのよう * 国際基督教大学 181-8585 東京都三鷹市大沢 3-10-2 * International Christian University 3-10-2, Osawa, Mitaka-shi, Tokyo, 181-8585, Japan に用いて植生指数を算出する試みがなされている 1). また, 赤外線写真は考古学でよく使われ, 発掘された木簡などに書かれている, 消えかかった墨文字の判別に威力を発揮することや, 可視光と近赤外光の組み合わせによる航空写真によって, 古代ローマの都市が発見されている 2). このようにデジタルカメラによる近赤外光画像の有用性は, 近年, 大いに注目を浴びている. 植物の活性状況の特徴として, 植物緑葉の葉緑体の活動が高いと可視光赤色の光を吸収し, 近赤外域の光を強く反射する独 ( 18 )
515 Fig. 2 Spectral efficiency of CCD colorsensor 4). Fig. 1 Typical spectral reflectance curves for vegetation 3). Table 1 Devices and software for measurement and analysis. Item Foruse Specification Infrared Sensor Bar Emit infrared source Wavelength=940nm Blue LED Emit blue light Wavelength=467 nm Infrared Filter Block visible light PRO1D R72 artificial sunlight lamp Emit sunlight SOLAX XC-100 AF Spectroradiometer Measure emission/reflection FieldSpecHH Spectrolino Measure color attributes Gretagmacbeth Scan-T Colorchart Calibrate display color Digital camera color chart 240 Software Make colorprofile ProfileMaker 5.0 Software Process images PhotoshopCS LCD display Display color FlexScan L887 Digital camera Capture digital images CANON Powershot 710IS 特な分光反射率特性がある (Fig. 1 参照 ). しかし, デジタルカメラにより取得される近赤外画像からこの特性を表わす植生指数を算出する試みでは, 推定される植生指数の評価等の問題点がある. 特に大きな問題点は, デジタルカメラ画像における人の目に不可視の近赤外光域の可視光域への出現である. 近赤外波長域の光がデジタルカメラの受光素子 (CCD あるいは CMOS) に捉えられ, どの可視光域に再現されるかを確認するために必要な特性データ, 資料等の公開は十分でなく困難である. そこで, 本報告ではデジタルカメラによる近赤外光源 ( 赤外光発信源 ) の可視光画像から, 可視光域への色再現域を特定することと, 可視光域を遮断できる赤外レンズフィルタを用いて, 植物緑葉の近赤外光画像と可視赤色画像を組み合わせ, 植物緑葉の活性度を示す植生指数を推定できるかの検証を目指した試みである. 2. 赤外光源画像の分析商用デジタルカメラの中で, 高級機と呼ばれる機種では, 近 赤外光や紫外線光を遮断するフィルタが装備されている場合が多いが, いわゆるコンパクトデジカメでは近赤外光に対するイメージセンサ ( 受光素子 ) の感度が残されていることが多い. 数少ない公開されているひとつの CCD イメージセンサの分光感度特性を Fig. 2 に示す. 本研究で使用した CANON 製のデジタルカメラの CCD 特性ではないが, 可視光を超えて近赤外域までの分光感度が示されており, 近赤外画像の特性を考察する上で有用である. これによると, 波長が 700(nm) を超える近傍の帯域で, 赤色のセンサの感度は高く保持され, 赤, 緑, 青の感度はそろっていないので, 何らかの 偽の色 を可視光域に再現することになると推測される. 近赤外域の色情報を含むデジタルカメラ画像を液晶ディスプレイ上に表示, 測色, 分析するために使用した機器やソフトウェア, さまざまな光源等の一覧を Table 1 に示す. 本研究のおおよその処理の流れは, デジタルカメラによる可視光画像の取得後, 対象とする光源や物体の領域を切り出し, カラープロ 5) ファイルにそった表色系での色情報の変換を行い, 色度図上の分布を求め分析するものである. ( 19 )
516 Fig. 3 Spectral transmittance of infrared lens filter( R72 ). Visual light and infrared images of blue LED and infrared light source captured by digital camera 7). Fig. 4 Digital colorcamera colorcharts(240 patches)and artificial sunlight. 一方, 可視光を遮断し, 近赤外光による画像を取得するには, 可視光遮断フィルタ ( この赤外レンズフィルタを, ここでは以後, 赤外フィルタと呼ぶ ) を使用する.Table 1 に示した赤外レンズフィルタは, 波長 720(nm) での透過率が 50% であるため, 可視光が透過している. そのため, このフィルタを通して取得のデジタルカメラ画像は, 偽カラー画像 となっている. フィルタのカットオフ波長の違いにより, この偽カラーの色合いは違ってくる. また, カットオフ波長が長くなるほど, 感度は下がるため撮影時の絞り, 露光時間および焦点距離の調整は難しくなる. 赤外フィルタ (R72) の分光透過率, 赤外フィルタなしで取得した近赤外光源と青色 LED の可視光画像および, 赤外フィルタ使用により取得した近赤外光源のみの近赤外画像を Fig. 3 に示す. 近赤外画像は, ピンクがかった 偽カラー画像 となっている. これらの光源画像の取得時には, 暗室において光源以外の光をデジタルカメラが受光しないように十分注意を払った. xy 色度図の作成では, カラープロファイルは srgb に基づいた. srgb は通常の機器に依存する RGB ではなく, 標準化された色情報が扱える機器独立の色空間であるが, 色再現域 (gamut) はかなり狭い規格である. しかし, デジタルカメラ等で標準的に用いられ, 機器に依存しない表色系との変換が容易な利点を有する. デジタルカメラ画像の画素値 (Digital Number) を,sRGB の規格に従って, 標準化, 線形化を行い, XYZ 表色系を経由して xy 色度を算出した. その後,CIELAB の a*b* 色度図も XYZ から求めた. srgb に基づいた変換式の中で srgb から XYZ への変換に用いた式の部分を記す 6). デジタルカメラ画像の RGB 値から標準化と線形化を行う必要があり,RGB をそれぞれ 255 で割り, 標準化した数値を, 次の式 (1) によって,g 変換により,R G B に変換する. 線形化された R G B から一次変換によって XYZ が得られる. R'=fPR#255Q, G'=fPG#255Q, B'=fPB#255Q fpxq= 1 x, 2<0.04045 12.92 r x+0.055 1.055 2.4, 2B0.04045 (1) 一次変換では,3 3 の行列 Mとして,CIE の XYZ ITU (D65) 規格の一次変換行列を使用した. 以下の式 (2) に一次変換行列 Mを示す. 0.342 0.178 M= 0.431 0.222 0.707 0.071 0.020 0.130 0.939 X R' Y G' (2) Z =M B' 単一波長の単色光との比較には xy 色度図が必要であり, 知覚色として色相角を利用するには CIELAB 表色系が有用であるため, 色度図を 2 種類作成し検討した. 植物緑葉などの対象物体の撮影は, 物体色の取り扱いなので, 照明光の白色点を確認するために, 標準デジタルカメラ用色票を人工太陽灯の下で撮影し,xy 色度図上に分布を表示, 分析した. 他の環境光の影響を除くため, 暗室において人工太陽灯のみで撮影した. その撮影状況を Fig. 4 に示す. 標準デジタルカメラ用色票中央部の白色票の撮影画像により, 人工太陽灯の白色点の推定が可能である. 3. 近赤外画像の特性 近赤外域光が可視光域のどの色域に出現するかを xy 色度図上で確認することが, 目標のひとつであり, その分析手法を 2. で述べた. ここでは, まず近赤外光源の画像の色特性を xy 色度図上での分布状況によって考察する. まず, 光源色を分析した理由として, 近赤外光源の存在がわかっている画像でなければ, 近赤外領域の特定はほぼ不可能な点がある. その後に, 物体色を分析するために, 人工太陽灯下で, 標準デジタルカメラ用色票や植物緑葉の撮影を行った. その場合も暗室において, 人工太陽灯のみを使用し, 他の環境光の影響を除いた. ( 20 )
尾崎 デジタルカメラ近赤外画像による植生指数推定の試み Fig. 5 517 Spectral distribution of several lights. Fig. 7 xy Chromaticity diagram for 240 color patches under an artificial sunlight. の両側の端の点と白色点を結び 純紫軌跡で囲まれる三角形の 領域である 黒丸で示す近赤外光源の分布は色名では 紫 から 赤味紫 に相当する 同じ近赤外光源を異なる可視光遮断特性フィルタを持つ他の メーカ製のデジタルカメラで取得した画像でも xy 色度図上 の近赤外光源の分布は同様に紫色領域に存在し 色度座標で区 分けされている色名は 白 に相当している 比較のために青色 LED の画像の xy 色度分布を表示すると 紫色領域の外側で 色名は 青 に相当している 結局 近赤外光源の画像は可視光画像において可視光赤色域 には重なりあっていないことを確認できた このことから 少 Fig. 6 なくとも 後の植生指数推定において必要となる可視光赤色と xy Chromaticity diagram for several illuminants. の干渉は ほとんどないと推測した 植物緑葉のデジタルカメラによる撮影画像は物体色であるの Fig. 5 に スペクトル放射輝度計 測定波長範囲は 325 nm から 1075 nm による複数の光源の分光分布を示す 人工太陽 灯では近赤外光域でピークが数本見られ 近赤外光の分布は およそ 800 nm 前後の波長域にある リモコン用赤外線センサバーの近赤外光源の波長は 940 nm であった 一般の可視光源として電源ランプの青色発光ダ イオードを測定したところ 467 nm にピークを示した Fig. 5 の蛍光灯の分光分布からは 別の赤外ランプの照射なしで 蛍 光灯照明のみでは デジタルカメラによる近赤外画像は得られ ないことがわかる Fig. 6 に 近赤外光源 電源ランプ 青色 LED の xy 色度 図を示す 近赤外光源の画像は単色光軌跡 spectrum locus 近 傍 の 赤 色 域 に は 分 布 し て い な い 純 紫 軌 跡 purple boundary 8)に平行な紫寄りの近傍から白色点に向かって分布 している xy 色度図上での近赤外光源の分布は 紫色領域 9)に出現す ることが示された 紫色領域 は Fig. 6 では 単色光軌跡 日本画像学会誌 日本画像194_04_4.13.mcd Page 5 で 人工太陽灯のもとで 標準デジタルカメラ用色票を撮影し た画像の分析が画像の色校正において重要となる Fig. 4 に示 す暗室での撮影において 中央の白色票の測色値から 人工太 陽灯の白色点を求めた 白色票の可視光画像では x 0.35 y 0.36 で人工太陽灯は およそ 5000 K の照明光と推定され た Fig. 7 に 白色票を可視光と近赤外光で撮影した デジタル カメラ標準色票 240 枚の xy 色度分布を示した 赤外レンズフィルタ R72 を装着した場合の近赤外光で得 られる 偽カラー画像 false color における白色色票の xy 色度は 白色点と単色光軌跡の赤色側の端を結ぶ線上の途中に あり 発光色の色名では 橙ピンク 寄りの ピンク に相当 している Fig. 7 の 印 xy 色度図では明らかではない色相角の確認には CIE LAB の a*b*色度の分布図が必要で Fig. 8 に近赤外光源と青色 LED の光源色の a*b*色度分布を示した 近赤外光源の色度分 布は 撮像イメージセンサの特性が異なる 2 つのデジタルカメ ラで取得した画像から求めたところ 彩度 Chroma の大き 第 50 巻 第 6 号 2011 ( 21 ) 11/11/29 19:24 v4.13
518 Fig. 8 Chromaticity diagram in CIE-a*b*plane for infrared source and blue LED. Fig. 9 Spectral reflectance curves for leaves in different conditions. さは異なるものの, 色相角はほぼ, 同一の 330 度近傍となった. 4. 植生指数の推定 植物緑葉の活性度は, さまざまな植生指数で推定できるが, 算出には, スペクトル放射輝度計による分光反射率の測定値が求められ, 簡便な算出は容易ではない. 手近なデジタルカメラ画像により植生, 特に, 植物緑葉の活性度 ( 健康度 ) が推定できるとすれば, さまざまな方面への活用が期待できよう. Fig. 1 に示したように, 植物緑葉の近赤外光と可視光赤色に対する反射率の違いから植物の活性度の推定が可能で, 多くは両者の反射率の差あるいは比, または両者を組み合わせた算出式を用いる 10). 最も良く用いられる植生指数は,Rouse らにより 1974 年に提唱された正規化差分植生指数 NDVI(Normalized Difference Vegetation Index) である 11). 近赤外光と可視赤色光の反射率の差分を, それらの和で正規化した指数で, NDVI= PrNIR rredq (3) PrNIR+rredQ で定義される. ここで,rNIR と rred は, それぞれ近赤外域と可視赤色光域の反射率である. 対象物をそれが存在する現場において, 直接, スペクトル放射輝度計等によって分光反射率を測定することは, 状況においては困難な場合が多い. そこで, 分光反射率と高い相関を示す他の量によって, 近似的に植生指数を推定することが, 一般的に行われる. 例えば, 地球観測衛星データは直接, 地表面の対象物体の反射率を観測値として示しているのではなく, マルチスペクトルセンサの数値 (digital number) から, 多くの近似, 補正式を経て, 目的の対象物の物理量を推定している 12). デジタルカメラによる近赤外画像と可視光赤色画像の差分画像が, 測定された分光反射率から算出の植生指数の分布図と類似のグレースケール画像となっていることは, デジタルカメラ画像を利用した植生指数推定の試みの出発点となっている. 今回, デジタルカメラで取得の近赤外および可視光赤色画像 の画素値 (DN 値 ) を式 (3) において, 対応する反射率の部分に代入し, 求めた NDVI と分光放射計による反射率測定値から算出した NDVI は, かなり近い値を示した. デジタルカメラ画像から植生分布図を作成する過程を以下に簡単に述べる. 暗室において, 人工太陽灯下での植物緑葉のデジタルカメラ画像を 2 種類取得する. ひとつは赤外フィルタなしの通常の可視光画像で, 他方は, 赤外フィルタをレンズに装着して, ほぼ可視光を遮断した近赤外画像である. 撮影条件は, 自動露出, 自動白色点, 自動焦点機能を動作させたモードで CANON 製のデジタルカメラを使用した. 差分画像および植生指数 NDVI 分布に相当する画像の作成には, 画像処理ソフトを利用した. カラープロファイルが srgb となっていることを確認し, 可視光および近赤外画像ともに,R チャンネルのグレースケール画像の画素値をテキストファイルとして出力し, 簡易プログラムにより差分あるいは, NDVI 画像を作成した. 一方, 分光放射計により, さまざまな状態の植物緑葉の分光反射率を測定し, 正規化差分植生指数 NDVI 等を算出した. この場合に分光反射率曲線から読み取る分光反射率の値は, 可視光赤色で 670 nm, 近赤外で 770nmの波長における反射率の値である. まず, 人工太陽灯下における 4 種類の植物緑葉の分光反射率を測定した. その理由は, 自然の太陽光下の測定では, 天候, 照度の不安定さから測定条件の調整は困難であるが, 暗室において, 人工太陽灯のみの下で測定すると, 他の騒擾要因を抑制できるからである. Fig. 9 に植物緑葉の分光反射率測定結果を示す. サンプルとして選んだ植物緑葉は, アイビーの一種 ( ダーク ナイト ) で, 緑色の濃いものから薄いもの, そして枯れ葉 ( 落ち葉 ) の 4 種類である. 典型的な植物緑葉の分光反射率特性のグラフとして紹介した Fig.1と良く似た特徴を示している. Table 2 にこの分光反射率測定値から算出した植生指数 NDVI と, 近赤外域, 可視赤色域の反射率の差分値の結果を示 ( 22 )
519 Table 2 Reflectance of foliage at wavelength of 670 nm and 770 nm, also vegetation index NDVI and difference in reflectance between near infrared and visible red. Foliage R670 NIR770 NDVI Nir-Red Leaves_1 0.126 0.375 0.50 0.249 Leaves_2 0.055 0.154 0.47 0.099 Dead leaves 0.126 0.222 0.27 0.096 Leaves_3 0.076 0.456 0.72 0.38 Fig. 12 Correlation of vegetation indices between near infrared and visible red images and measured reflectance correlation of NDVI between difference picture and measured reflectance. Fig. 10 Visual light image of foliage(left)and near infrared image of the leaves(right). Fig. 11 Difference picture of leaves between visual red and near infrared(left), and color assigned NDVI map of leaves(right). す.NDVI の値の違いが植物緑葉の活性度の違いを反映していることが示された. 人工太陽灯の下で取得した 2 種類のデジタルカメラ画像を Fig. 10 に, 生成した正規差分植生指数 (NDVI) 値を反映したモノクロ画像を Fig. 11 に示す.Fig. 10 の右が, ほぼ近赤外光のみを透過させる赤外フィルタを用いた近赤外メラ画像で, 左が, 赤外フィルタなしの通常の可視光画像である. Fig. 10 のデジタルカメラ画像取得時の条件の中で,F 値と露出時間を順に記す. 右の近赤外画像が (F=4.0,t=4.0 sec), 左の可視光画像が (F=8.0,t=1/20 sec) である. これらの違いと, 近赤外画像のフォーカスが甘いことは, 画像から生成の NDVI 値の精度を低くしているが, ある領域の範囲での植生活性度はある程度の精度を持って推定できると思われる. 近赤外, 可視光赤色の画素値をテキスト形式で出力したファイルを読み込み, 対応する位置の画素値から NDVI の値を計 算し, グレースケール画像を生成した結果が Fig. 11 の左の画像である. 最も NDVI の高い植物緑葉は明るい白色で, 枯れ葉は背景の黒色に近い暗い灰色領域で示されている. このようにして, 植物緑葉活性度の強さを反映したグレースケール画像が生成できた (Fig. 11 左 ). さらに,NDVI の値は 1.0 から+1.0 の範囲を取るので,0.2 刻みで色を割り当てて, 作成した NDVI 分布図を Fig. 11 の右に示す. 植物緑葉活性度が存在する植生領域の判別には, 観測条件により違いが見られるが, 高解像度衛星リモートセンシングの画像解析では NDVI が+0.1 ないしは+0.2 をその域値とする事例が報告されている 13). Fig. 9 に示す分光反射率測定値から算出の NDVI と,Fig. 11 のデジタルカメラ画像から推定の NDVI を比較検討した. Fig. 9 の Leaves_3 に相当する部分は,Fig. 11 の 0.6 0.8 の領域に, Leaves_1 に対し,0.4 0.6, Leaves_2 に対しては,0.2 0.4 が得られ, 画像から推定の NDVI は,Table 2 の測定値から算出の NDVI に, かなり近い値を示した. これらの結果をまとめ,Fig. 12 に反射率測定から算出の NDVI とデジタルカメラ画像から推定の NDVI の相関を示す. 横軸は Table 2 の NDVI, 縦軸は,Fig. 11 右のカラー分類画像に示す NDVI である. 両者は, かなり高い相関係数 0.96 を示した. しかし,NDVI そのものについては, 直線の回帰式から読み取ると, 測定値からの NDVI=0.5 に対し, 画像から推定の NDVI は 0.41 で, およそ 20% 近くの差がある. 5. まとめ商用デジタルカメラ画像の多くは, 人の目には不可視な赤外光域が出現する画像である. 近赤外光源が撮影された画像の分析の結果,xy 色度図における近赤外光源の可視光域への出現領域は, 単色光軌跡と白色点を結ぶ領域にはなく, いわゆる 紫色領域 にあることを示した. リモコン用赤外線センサバ ( 23 )
520 ーの近赤外光源が可視光画像において出現する領域は,CIE LAB 空間の a*b* 色度図上では色相角 330 度近傍にほぼ, 直線状に分布した. この結果により, 近赤外域の画素値が可視光赤色域の画素値に大きな影響を及ぼさないとして, 植生指数の推定は可能と判断した. 可視光を遮断する赤外レンズフィルタを用いた近赤外画像と可視赤色光画像との差分をモノクロ画像として生成すると, 植物緑葉の活性度分布状況を推定できることに基づき, 両者の画像の画素値から正規差分植生指数 (NDVI) を計算し,NDVI の分布状況を示すグレースケール画像を作成した. 植物緑葉のデジタルカメラ画像から得られた NDVI 推定値の評価のために, スペクトル放射輝度計による分光反射率の測定値から NDVI と比較検討を行った. スペクトル放射輝度計による植物緑葉の反射率の直接測定は簡便には実施できない場合が多くある. 手近なデジタルカメラ画像により植生, 特に, 植物緑葉の活性度 ( 健康度 ) が推定できると, 環境状況把握に有用であり, さまざまな方面への活用が期待できる. 赤外レンズフィルタを装着時に取得の近赤外画像への赤外フィルタの影響については, 複雑な要因の把握が不十分で, デジタルカメラの自動露光等の機能に依存したままである. 異なる撮影条件等のさまざまな状況下でのデジタルカメラ画像から推定する NDVI の評価が, 今後の検討課題である. 参考文献 1) Valentine Lebourgeois : Can Commercial Digital Cameras Be Used as Multispectral Sensors? A Crop Monitoring Test, Sensors, 8, pp. 7300-7322 (2008). 2) Hannah Devlin : Italian archaeologists find lost Roman city of Altinum nearvenice, The Times July 31 (2009). 3) http://extnasa.usu.edu/on_target/ot_tutorials_nir.html[s. Chod Stephens : Near Infrared(NIR)Digital Photography]. 4) http://www.argocorp.com/cam/cl/lynx_imperx/spectral/vga120l-spectral.html :[Argo Corp., IPX-VGA120- LC (Colorcamera) and KAI-0340 (Colorsensor) ] 5) Abhay Sharma, Understanding Color Management, Delmar Pub (2004), pp. 84-94. 6) M. Kobayashi, ColorReproduction/Color Management/ColorAppearance, Journal of the color science association of Japan, 26, pp. 18-29 (2002)[in Japanese] 7) http://www.kenko-tokina.co.jp/imaging/filter/pro1d/ 4961607325209.html :[PRO1D R72 spectral transmittance] 8) M. Akimoto, Y. Okuma, G. Kwawakami, Trichromatic Coeffiecients of Complementary Dominant Wavelength on Purple Baoundary, TOKYO KOUGEI DAIGAKU KIYO, 5, pp. 73-85 (1982)[in Japanese]. 9) N. Ohta, SHIKISAI KOGAKU, TOKYO DENKI DAIGAKU SYUPPANKYOKU (2008), pp. 73-80[in Japanese]. 10) Robert A. Schowengerdt, Remote Sensing Models and Methods forimage Processing Second Edition, Academic Press (1997), pp. 182-184. 11) JW Rouse : Monitoring vegetation systems in the Great Plains with ERTS, NASA SP-351, Third ERTS-1 Symposium NASA Washington DC. 1, pp. 309-317 (1974). 12) Thomas M. Lillesand, Ralph W. Kiefer, Jonathan W. Chipman, Remote Sensing and Image Interpretation, John Wiley & Sons, Inc. (2004), pp. 499-517. 13) N. Fujiwara, H. Yamagishi, Researches on technology utilizing artificial satellites for urban green survey, National Institute for Land and Infrastructure Management Ministry of Land, Infrastructure and Transport, 68 (2003), pp. 9-12, 20-27[in Japanese]. 尾崎 敬二 国際基督教大学教養学部アーツ サイエンス学科 教授.1975 年, 九州大学大学院工学研究科修士課程 ( 応用物理 ) 修了,1981 年同博士課程修了, 工学博士 ( 応用物理 ), 1989 年, 九州女子短期大学助教授,1991 年, 九州東海大学工学部情報システム工学科助教授,1992 年, 東海大学宇宙情報センター研究員兼務,1998 年, 国際基督教大学教養学部理学科準教授,2001 年同教授,2008 年より現職. 情報処理教育のためのシステム構築に携わり, 地球観測衛星データのアーカイブおよび情報抽出等のリモートセンシング分野の研究から画像処理 画像色彩関連の研究に関心を持つ.1993 年から 3 年間の福岡県の産学官のプロジェクトリーダとして,1000 種類以上の色再現を絹織物上に 8 種類のよこ糸と織物基本組織の組み合わせにより実現した. 現在は, 空間デジタルデータの統計的特徴抽出等に関心を持つ.1997 年情報処理学会全国大会優秀賞受賞. ( 24 )