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1. 今回の変更に関する整理 効能 効果及び用法 用量 ( 添付文書より転載 ) 従来製剤 ( バイアル製剤 ) と製法変更製剤 ( シリンジ製剤 ) で変更はない 効能 効果 用法 容量 B 型肝炎の予防通常 0.5mL ずつ4 週間隔で2 回 更に 20~24 週を経過した後に1 回 0.5mL

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も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

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<4D F736F F D208FAC8E A8B858BDB838F834E CC90DA8EED82F08E6E82DF82DC82B7312E646F6378>

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資料の目的 平成 30 年 3 月 7 日の合同部会において 費用対効果評価に関する検討を進めるにあたり 科学的な事項については 医療経済学等に関する有識者による検討を行い 中医協の議論に活用することとされた 本資料は 当該分野の有識者による検討を行い 科学的な観点から参考となる考え方やデータを提示

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使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

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とが知られています 神経合併症としては水痘脳炎 (1/50,000) 急性小脳失調症 (1/4,000) などがあり さらにインフルエンザ同様 ライ症候群への関与も指摘されています さらに 母体が妊娠 20 週までの初期に水痘に罹患しますと 生まれた子供の約 2% が 皮膚瘢痕 骨と筋肉の低形成 白

2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子


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資料 1-1 肺炎球菌ワクチン (PPSV23) について 経緯平成 22 年 7 月第 11 回感染症分科会予防接種部会において 肺炎球菌ポリサッカライドワクチン ( 成人用 ) に関するファクトシート が報告された 平成 23 年 3 月第 6 回感染症分科会予防接種部会ワクチン評価に関する小委員会において 肺炎球菌ポリサッカライドワクチン ( 成人用 ) 作業チーム報告書 および ワクチン評価に関する小委員会報告書 が報告された 平成 26 年 5 月 第 9 回ワクチン分科会予防接種基本方針部会において 平成 31 年度以降の接種対象者については 経過措置対象者の接種状況や接種記録の保管体制の状況等を踏まえ 改めて検討する とされている 平成 26 年 10 月高齢者の肺炎球菌感染症が定期の予防接種の B 類疾病に追加された 平成 29 年 9 月第 19 回予防接種基本方針部会において 平成 31 年度以降の定期接種の対象者について議論するにあたり 下記の方針で進めることについて了承された 平成 31 年度以降の定期接種の対象者について 技術的な観点から ワクチン評価に関する小委員会において検討を行う 同小委員会において検討を行うにあたり 国立感染症研究所に 改めて肺炎球菌ポリサッカライドワクチンに関するファクトシートを作成頂く また 13 価結合型ワクチンについても ある程度内容を含めるべきとの意見があり 国立感染症研究所とも内容を相談していくこととなった 平成 30 年 5 月国立感染症研究所によって 23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンに関するファクトシートが作成された 平成 30 年 5 月第 8 回ワクチン評価に関する小委員会において 23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンに関するファクトシートについて報告した 平成 30 年 6 月第 9 回ワクチン評価に関する小委員会において 23 価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンに関して議論が行われた 第 10 回小委員会において 小委員会における議論の整理案をもとに検討を行うこととなった 1

現在の接種対象者 予防接種法施行令 ( 昭和 23 年 7 月 31 日政令第 197 号 ) 第 1 条の3 第 1 項肺炎球菌感染症 1 65 歳の者 ( 高齢者がかか 2 60 歳以上 65 歳未満の者であって 心臓 腎臓若しくは呼吸るものに限る ) 器の機能の障害又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害を有するものとして厚生労働省令 ( ) で定めるもの 予防接種法施行規則 ( 昭和 23 年 8 月 10 日厚生省令第 36 号 ) ( 略 ) 厚生労働省令で定める者は 心臓 腎臓又は呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害を有する者及びヒト免疫不全ウイルスにより免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害を有する者とする 予防接種法施行令附則 ( 平成 26 年 7 月 2 日政令第 247 号 ) ( 施行期日 ) 1 この政令は 平成 26 年 10 月 1 日から施行する ( 経過措置 ) 2 この政令の施行の日から平成 27 年 3 月 31 日までの間における改正後の第 1 条の 3 第 1 項の規定の適用については 同表肺炎球菌感染症 ( 高齢者がかかるものに限る ) の項第 1 号中 65 歳の者 とあるのは 平成 26 年 3 月 31 日において 100 歳以上の者及び同年 4 月 1 日から平成 27 年 3 月 31 日までの間に 65 歳 70 歳 75 歳 80 歳 85 歳 90 歳 95 歳又は 100 歳となる者 とする 3 平成 27 年 4 月 1 日から平成 31 年 3 月 31 日までの間における改正後の第 1 条の 3 第 1 項の規定の適用については 同項の表肺炎球菌感染症 ( 高齢者がかかるものに限る ) の項第 1 号中 65 歳の者 とあるのは 65 歳 70 歳 75 歳 80 歳 85 歳 90 歳 95 歳又は 100 歳となる日の属する年度の初日から当該年度の末日までの間にある者 とする 2

接種率の推移 ( 第 8 回小委員会資料より ) H26 年度 H27 年度 H28 年度 65 歳相 70 歳相 75 歳相 80 歳相 85 歳相 90 歳相 95 歳相 100 歳相 当 当 当 当 当 当 当 当 接種者数 903,804 624,406 492,306 357,483 216,844 105,300 31,949 6,157 接種率 42.6% 40.9% 37.2% 31.4% 27.5% 24.4% 21.9% 12.7% 接種者数 749,073 441,240 492,203 330,513 192,150 94,627 29,487 5,178 接種率 38.3% 33.3% 33.3% 27.7% 23.5% 21.1% 20.2% 10.7% 接種者数 736,802 670,773 547,497 343,779 201,398 98,610 31,049 5,700 接種率 40.4% 40.6% 36.8% 28.3% 23.5% 20.9% 20.7% 11.3% 定期接種化以降の接種者数の実績であり 任意接種による接種者数は含 んでいない 血清型分布について 疾病 著者 年代 PCV13 血清型 PPSV23 血清型 IPD Ubukata K 2010 年 73.8% 82.2% et al.(2015) 2012 年 54.2% 72.2% 肺炎球菌性肺炎 市中発症肺炎 ( 参考 ) IPD Akata K et al.(2017) Morimoto K et al.(2015, 2018) 厚労科研大石班 (2018) 2011 年 71.4% 71.4% 2015 年 33.3% 50% 2011-13 年 54% 67% 2016-17 年 32% 49% 2014 年 44.9% 68.8% 2015 年 45.5% 67.6% 2016 年 32.0% 62.9% 2017 年 29.4% 66.7% 2018 年 32.8% 63.3% 3

ワクチンの有効性 ( 初回接種 ) ファクトシートの知見著者対象疾病対象年齢 VE (95% CI) 厚労科研大石班 (2018) Suzuki M et al. (2017) ( 文献番号 58) IPD (vaccine type) 肺炎球菌性肺炎 (vaccine type) 肺炎球菌性肺炎 (All type) 15-64 歳 60% (21-79) 65 歳以上 39% (1 63) 65 歳以上 33.5%(5.6-53.1) 27.4%(3.2-45.6) 4

1. 1 回接種者における再接種を含む複数回接種の有効性 安全性 医療経済学的評価について どのようなことが言えるか 1 ワクチンの効果の持続性について どのように評価するか 2 ワクチンの効果の持続性の評価を踏まえ 再接種を行う対象者 接種間隔 期待される効果について 十分に明らかとなっているか 1. ファクトシートの知見 < ワクチン効果の持続性 > 効果の持続性について ファクトシートに引用されている論文には 以下の記述が含まれている 著者 Ohshima N et al.(2014) ( 文献番号 42) Kawakami K et al.(2016) ( 文献番号 44) Andrews NJ et al. (2012) ( 文献番号 54) Gutierrez Rodriguez MA et al. (2014) ( 文献番号 55) Suzuki M et al.(2017) ( 文献番号 58) 主な結果 すべての serotype を 50% 死滅させるのに必要な血清型特異的 IgG 抗体価は 初回接種の後 有意に減少する ( 初回接種から2 回目接種までの間隔は 平均 7 年 7ヶ月であった ) ワクチン接種前の血清型特異的 IgG 抗体価およびオプソニン活性は いずれの血清型でも再接種群の方が初回接種群よりも高かった ( 初回接種から2 回目接種までの間隔は 5 年から 11 年 ( 中央値 7 年 ) 65 歳以上の高齢者において IPV に対する PPSV23 の VE は 接種後 2 年未満 48%(32-60%) 2 年から 5 年未満 21% (3-36%) 接種後 5 年以上で VE 15%(-3% to 30%) であっ た 60 歳以上の高齢者において IPV に対する PPSV23 の VE は 接種後 5 年以下で 44.5%(19.4-61.8%) 接種後 5 年以降 で 32.5%(-5.6% to 56.9%) であった PPSV23 がカバーする serotype に起因する肺炎球菌性肺炎に対する有効性 (VE) は 接種後 1 ヶ月から 2 年後は 37.7% であるが 2 年から 5 年 5 年以降で 34.7% 26%( いずれも有意でない ) となる 5

< 再接種を含む複数回接種の有効性 > (PPSV23 の再接種を含む複数回による発症予防効果 ) PPSV23 の再接種を含む複数回接種による発症予防効果について検討した報告はない 日本感染症学会肺炎球菌ワクチン再接種問題検討委員会は 再接種の免疫原性が初回接種時と同等であるとする所見から 初回時と同等の予防効果が期待されるとしている (PPSV23 の再接種および複数回接種の免疫原性 ) 著者 Study の概要 Ohshima N et al.(2014) 慢性肺疾患患者 40 名 6B, 14, 19F, 23F に対する特異的 IgG 濃度 OPA ( 文献番号 42) Torling J et al.(2003) 高齢者 61 名 GMC, GMFI ( 文献番号 43) Kawakami K et al. (2016) 70 歳以上の高齢者 242 名 IgG 濃度 OPA 主な結果 4 血清型すべてにおいて再接種後の血清型特異的 IgG 濃度の血中ピークは初回接種後の血中ピークを超えることはなかった 血清オプソニンは 4 血清型中の 3 つで 再接種後の血中ピークが初回接種後の血中ピークを越えており 血清オプソニンの低応答は認められなかった 過去に報告された PPSV23 再接種後の血清型特異的 IgG の低応答成績と矛盾しなかった ( 事務局追補 :2 回目接種により抗体価の上昇を認めるものの 1 回目の数値より低い 著者らは PPSV23 の再接種は 大部分の者にとっては有意な免疫応答を導く と結論付けている ) 再接種後の血清型特異的 IgG 抗体濃度及び血清オプソニン活性の幾何平均値はいずれも初回接種後と同等であり 低応答は認められなかった ( 事務局追補 :GMC は 14 Serotype のうち 5 Serotype で再接種群のほうが高かった OPA は GMT, GMFR ともに再接種後の数値が 初回を上回ることはなかった ) ( 文献番号 44) Hammitt et al. (2011) 55-74 歳の成人 315 名 IgG 濃度 OPA ( 文献番号 45) PPSV23 の複数回接種後の血清特異 IgG 抗体および血清オプソニン活性の幾何平均値は 初回接種者に比較して 同等であった 6

< 再接種を含む複数回接種の安全性 > PPSV23 の初回接種より再接種において 全身 局所の副反応の頻度が多く 程度が強い傾向がある しかし 初回接種 再接種のいずれにおいても副反応の程度は通常は軽度で 自然に軽快する 副反応のリスクと程度は接種間隔が長いほど軽減する < 再接種を含む複数回接種の医療経済学的評価 > Jiang ら (69) は支払者の立場から PPSV23 の接種戦略に関して 1) 2014 年に定期接種の対象となり 接種を受けた群 (2014 年時点で 65,70,75,,95 歳 ) 2) 2019 年に定期接種の対象となる群 (2019 年時点で 65 歳 ) 3) 2014 年に定期接種の対象になったが 接種を受けなかった群の 3 グループに対して 1 回目の接種の有無および再接種の有無を組み合わせた 5 つの戦略の費用対効果を 生涯を分析期間として比較している PPSV23 再接種の有効性は 初回接種と同等と仮定し 非侵襲性肺炎にも Suzuki ら (56) のデータをもとに 33.5% の有効性を仮定している この結果 1)-3) 全ての群に対して再接種まで行う戦略が 最も費用対効果に優れる (ICER が 500 万円 /QALY 未満 ) と推計している PPSV23 の再接種を検討した海外の研究として Falkenhorst ら ( 70) は ドイツにおいてワクチン非接種者を比較対照として 1)PPSV23 単回接種 2)PCV13 単回接種 3)PPSV23 を 6 年おき 8 年おき 10 年おき接種について検討を行っている ( 表 4) 分析期間は生涯とし 医療費以外に生産性損失も考慮している 1) と 3) は 2 万ユーロ /QALY 未満 2) は 10 万ユーロ前後と報告している なお この数値は PPSV23 の肺炎球菌性肺炎への予防効果が一定程度あると仮定した場合の推計であり もしもその効果がゼロと仮定した場合には 1) 3) 共に ICER は 40000 ユーロ /QALY 前後となる 表 4 Falkenhorst ら ( 70) の推計結果 ( 分析期間生涯 生産性損失を含む ) 60 歳 65 歳 70 歳 PPSV23 単回投与 14,383 15,670 15,436 PPSV23 単回投与 ( 肺炎球菌性肺炎 37,746 36,344 37,549 への効果がゼロと仮定 ) PCV13 単回投与 112,606 100,829 96,372 PPSV23 6 年おき 12,839 - - PPSV23 8 年おき 12,294 - - PPSV23 10 年おき 12,195 - - ( 単位 : ユーロ /QALY) Thorrington ら (71) はオランダにおいてワクチン非接種を比較対照として 1)PPSV23 単回接種 2)PCV13 単回接種 3)PPSV23 5 年おきの接種 (60 歳 65 歳 70 歳 ) について検討を行い 1) と 3) は 2 万ユーロ /QALY 未満 2. は 2 万ユーロ /QALY 超と報告している ( 表 5) なお 本分析では PPSV23 の肺炎に対する予防効果が一定程度あると仮定した 7

場合の推計である 表 5 Thorrington ら (71) の推計結果 ( 分析期間 10 年 保健医療費のみ ) 60 歳 65 歳 70 歳 PPSV23 単回投与 14,452 9,553 6,201 PPSV23 単回投与 ( 肺炎への効果 25,454 17,714 記載なし がゼロと仮定 ) PCV13 単回投与 66,796 44,028 35,346 PPSV23 5 年おき 9,887 - - ( 単位 : ユーロ /QALY) 2. 海外の予防接種プログラムにおける再接種の位置づけ 米国では 65 歳未満で PPSV23 を接種し 5 年以上経過して 65 歳を越えた段階で再接種を 1 回のみ認めている オーストラリアでは 50 歳以上の先住民は PPSV23 を接種して 5 年後に再接種を 1 回行う ハイリスク群 ( 慢性肺 心 肝疾患 糖尿病など ) では 5~10 年後に追加接種を 1 回行う 英国では無脾 脾機能不全 慢性腎疾患患者においては 5 年毎に PPSV23 接種を繰り返すことを推奨している ドイツでは高齢者においても 6 年以上の間隔で PPSV23 の追加接種を繰り返してもよいとしており ハイリスク群では 6 年以上の間隔で PPSV23 接種を繰り返すべきであるとしている 日本においては 2 歳以上の脾摘患者における肺炎球菌による感染症の発症予防 のために PPSV23 を使用した場合 保険給付される ) 3. 肺炎球菌ワクチンの再接種のガイダンス ( 改訂版 ) ( 一般社団法人日本感染症学会肺炎球菌ワクチン再接種問題検討委員会 ) 委員会の考え方について PPSV23 の再接種による臨床的な有効性のエビデンスは明確になっていないが 症例によっては追加接種を繰り返すことを考慮してもよいと考える 8