ARIB TR-B43 準拠の SDR から HLG へのマッピング 2018 年 5 月 21 日 グラスバレー株式会社 HDR 編集を行う場合に 当面は一部に既存の SDR(BT.709) 素材を使用することが必要になると思われます その場合 SDR を HDR にマッピングする必要があります SDR 素材は HDR より狭い輝度レンジしか持っていませんが 少なくとも SDR が持っている範囲の輝度と色は HDR ディスプレイ上で正しく再現できる必要があります そのための手法として ARIB の 高ダイナミックレンジ映像を用いた番組制作の運用ガイドライン (ARIB TR-B43 1.0 版 ) に SDR から HLG へのマッピング方式が記述されています これにはシーン参照型マッピングとディスプレイ参照型マッピングの 2 種類の方式があります 本資料では この両方式に準拠した SDR から HLG への変換を EDIUS 9.2 で行う手順についてご説明します 1. EDIUS のプロジェクト設定の注意点変換元が SDR とはいっても HDR への変換を行うので 10bit の分解能が必要です EDIUS のプロジェクト設定の ビデオ量子化ビット数 が 10bit であることを確認します 8bit になっている場合は 10bit に変更してください 2. SDR 素材をタイムラインに置いて HLG に変換する SDR 素材をタイムラインに置いて 必要なら時間長のトリミングを行います クリップにプライマリーカラーコレクションを適用し 次のように設定して HLG に変換します
色空間 の ソース には自動で素材のカラースペース( BT.709 * など) が設定されるので そのままにします 色空間 の 出力/LUT は プロジェクトカラースペース が付いた表記になっていますが プロジェクトカラースペース が付いていない BT.2020/BT.2100HLG に変更します 変換基準 は マッピング方式に シーン参照型 を使用する場合には シーンライト ディスプレイ参照型 を使用する場合には ディスプレイライト を選択します その他のカラーコレクションに関する項目は初期値のままにし OK をクリックしてプライマリーカラーコレクションの設定画面を閉じます
3. スケーリングを行うスケーリングを行うために 同じクリップにもう一度プライマリーカラーコレクションを適用します その結果 インフォメーションパレットには 次のように2つのプライマリーカラーコレクションが重ねられます 下側の スケーリングを行うプライマリーカラーコレクションは 次のように設定します
色空間 の ソース には 自動 が付いていますが 自動 が付いていない BT.2020/BT.2100HLG に変更します 色空間 の 出力/LUT は プロジェクトカラースペース が付いていない BT.2020/BT.2100HLG に変更します スケーリングを行うために 露出 を変更します ARIB TR-B43 に規定されたスケーリングを行うには シーン参照型の場合は 41 ディスプレイ参照型の場合は 21 に設定します ただし これとは異なる値を使用することもあります 5. 基準白の表示輝度とプライマリーカラーコレクションの露出の値の項を参考にしてください
その他の項目は初期値のままにして いったん設定画面を閉じます 以上の 2 つのプライマリーカラーコレクションは まとめてひとつのユーザープリセットとして保存で きます そうしておけば 次に同様の変換を行う場合に 設定操作を繰り返す必要がないので便利です ちょっと一言 以上のようにプライマリーカラーコレクションを 2 段に重ねて使用しなくても ひとつのプライマ リーカラーコレクションを次のように設定して使用すれば 同じことが実現できるように思えます しかし この方法ではうまくいきません なぜなら プライマリーカラーコレクションで外部 LUT を使わずにカラースペースを変換する場合 露出 などの信号調整は ソース 側の信号に対して行われるからです そのため 今回のように BT.709 の範囲を超えて輝度レベルを上げる必要がある場合には BT.709 信号規格の上限で頭打ちになってしまい 意図どおりの操作になりません 本文の手順では プライマリーカラーコレクションを 2 段に重ねて 上段では輝度を上げずに HLG への変換のみを行います 下段のほうでは 入力信号はすでに HLG に変換されているので HLG の上限まで輝度を上げることができます 4. 必要な場合は映像調整を行う以上の操作により ARIB TR-B43 に規定されたマッピングができます すなわち シーン参照型を用いると SDR カメラの映像信号を HDR にマッピングしたときの色と階調が HDR カメラの映像信号の色と階調に一致します SDR と HDR のカメラを混在してマルチカメラ編集を行う場合などに利用できます ディスプレイ参照型を用いると SDR から HDR にマッピングした映像信号を HDR ディスプレイで表示した際の色と階調が SDR の映像信号を SDR ディスプレイで表示した際の色と階調に一致します SDR で制作された既存の素材を HDR 編集の際の素材として利用する場合などに利用できます ただし これは SDR と HDR のカメラがそれぞれの規格どおりの特性を持っている場合の結果です 実際には 個々のカメラで多少のクセがあったり 独自の味つけがしてあったりして 多少の調整が必要になる場合も考えられます その場合は 2 段に重ねたプライマリーカラーコレクションのうち 下側を開いて 露出 や ホワイトバランス 以下のカラーコレクション項目を調整してください
5. 基準白の表示輝度とプライマリーカラーコレクションの露出の値 ARIB TR-B43 では 100%SDR 信号を 75%HLG 信号に割り当てる場合のスケーリングゲインが書かれています それは HLG コンテンツを制作するにあたり 基準白を 75%HLG( ピーク輝度 1000 cd/m 2 のディスプレイの場合に 203 cd/m 2 で表示される ) にすることが目安とされており SDR 信号を HLG に変換した結果もそれに合わせるためです しかし 制作意図によって 基準白の信号レベルとして 75% より多少上下の値を選ぶ場合も考えられます その場合は 100%SDR 信号を割り当てる HLG 信号レベルも それに合わせるのが自然です HLG 信号レベルで示しても実感がないため 対応する表示輝度を加えた表を作成しました 100%SDR は SDR の基準白ですので 実際に家庭内のテレビで視聴されている状態は別として 標準の表示輝度は 100 cd/m 2 です これが変換された結果の HLG の表示輝度と元の 100 cd/m 2 との比が 0 から 12 デシベルの場合について記載しています たとえばこれが 0 デシベルであれば HLG の表示輝度も同じ 100 cd/m 2 となります 6 デシベルのときは HLG の表示輝度は 2 倍の 200 cd/m 2 となるので ARIB
TR-B43 の標準値とほぼ同じになります この表から使用する HLG の基準白のレベルを選び SDR を HLG に変換する際の 露出 の設定値に 表の プライマリーカラーコレクションの露出 の欄の値を使用してください つまり 3. スケーリングを行うの項での 露出 の設定値として 上の表の値を使用します 以上