1 二 一三年度一三年度一三年度一三年度のスタートスタートスタートスタートにあたってにあたってにあたってにあたって ~ 子どもにとってのどもにとってのどもにとってのどもにとっての最善最善最善最善の利益保障利益保障利益保障利益保障を追い求めてめてめてめて ~ 今年度も槇の木学園の運営目標として すべての子どもが大切にされ 育っていける社会づくりに 児童福祉施設として取り組む としました この運営目標の持つ意味は 大変大きなものではありますが 現在の児童を取り巻く社会的状況を捉えながら 足固めをする年にしたいと考えております 子どもを取り巻く社会的な状況の中で とりわけ大きな問題として取り上げられていることの一つ目が 子どもの貧困の問題です 我が国の子どもの相対的貧困率は O E C D 三十五カ国中 九番目に高い貧困率であり 比較的一人あたりの G D P が高い先進二十カ国の中では 日本は上から四番目に高い貧困率を示しております 世界的にも豊かな国と言われている我が国で 約六 ~ 七人に一人の割合で子どもの貧困が進んでおり 世代間の貧困の連鎖の問題も含め 先進諸国の中でも最悪な状況を示してきておりますま た こういった状況を国民がどう受け止めているかという 朝日 ベネッセ保護者アンケート 調査によると 豊かな家庭の子どもほど より良い教育を受けられること に対して やむをえない と答えた保護者が 二〇〇四年調査では四二. 五 % だったのに対して 二〇一二年の調査では五二. 八 % にのぼったと先月新聞等で報じられておりました このような格差を 当たり前 と考える社会的風潮が国民全体に拡がっているということは 格差是正のための所得再分配等の社会保障政策に対しても 国民の理解が得られにくい状況が 更に拡がっていくのではないかと危惧しています 二つ目に 児童虐待の状況も更に深刻です 二〇一二年度の全国の児童相談所での相談対応件数は約六万件にものぼり 調査を開始して以来最も高い数値を記録したと報じられておりました 同じく千葉県内の児童相談所においての相談対応件数も例外ではなく 二〇一二年度の速報値として前年度比の約一. 五倍増にまでのぼっているということでありました この要因として 以前から言われているのが 地域社会の崩壊や核家族化の進行 離婚率の増加等が挙げられています こういった子どもの置かれている社会的環境等を背景に 社会的養護として入所する児童の養育課題は 年々多様化 複雑化してきているのが現状です 国連児童憲章には すべての児童は 家庭で正しい愛情と知識と技術をもって育てられ 家庭的に恵まれない児童には これにかわる環境が与えられる とあります また 国連児童の権利に関する条約の中にも 同様に 子どもの最善の利益保障 が謳われております これは 子育てに関して 保護者や家庭を中心としつつも 自助 ( 私的責任 ) のみに重点を置きすぎず 国や市町村 福祉施設 個々人等 社会全体で子どもの育ちにより責任を負う 共助社会を新たにつくり上げていくというものであります 社会的な子育てとしての様々な支援の必要性が 新たな児
2 童家庭福祉の構築における重要な課題となっている今 子育てにおける家庭と社会との連携や協力関係のネットワークの構築が 私たち児童福祉施設職員に課せられた社会的使命の一つでもあります 障害児福祉の分野では 障害児施設の状況はここ数年改善の傾向が見られており 二〇一一年の 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 の改正では 居室面積が従来の三. 三平方メートルから 四. 九五平方メートルに改正される等 最低基準の一部引き上げが進められました また二 一一年度の厚生労働省の障害者総合福祉推進事業として 障害児入所施設における小規模ケア化 地域分散化を推進する上での課題に関する調査 等も進められた状況です 槇の木学園では 一九八六年から 子どもたちにとってより良い養育環境とは何か を 職員間で議論する中から生まれた かわのべ寮 ( 施設の敷地外に一般住宅を借りて 住み込み職員と児童三名の暮らし ) という実践を通して 早くから小規模ケア化 地域分散化を進め この取り組みも今年で二十八年目を迎えた所です 槇の木学園の起ち上げから今日まで 多くの先輩職員の方々が積み上げてきたこの取り組みが ようやく制度としても追いついてきたことに対して ある意味感慨深いものではあります また 二 一年から始められた建て替え工事とそれに伴う小舎制の取り組みについても この かわのべ寮 の実践なくしては考えられないものでありました 私たちがこれらの実践を通して大切にしてきたものは 1 子どもの心の拠り所を明確にするため 交替制勤務による弊害を極力少なくし 少数の特定された職員との関係性の継続と構築を図る 2 より家庭に近い住環境の中で 子どもが安心して暮らすことのできる空間的な拠り所 居場所を保障する 3 子どもが生活の主体者として食事作り等を中心とした様々な生きた生活体験と社会経験の積み重ねを図るでありました この三つの大切にしてきたことが 毎日の暮らしの中での積み重ねによって 子どもたちの真の生きる力や 人間的な成長に 必ずやつながっていくといった 信念のようなものでありました 以前から児童福祉施設のあり方を検討していく中から出されてきた意見や要望が ようやく現実のものになってきた訳ではありますが 先にも述べたように 居室面積が拡がったり 最低基準が改正されることだけでは 本当の意味での子どもの最善の利益の保障につながっているという訳ではありません 子どものおかれた状況を子どもの立場に立って考えた上で 槇の木学園として今後どういった実践に取り組むべきなのか 新たな児童福祉施設としてのあり方を 様々な角度から見据えていかなければなりません そしてそれは 二十八年前の かわのべ寮 の取り組みが始められた時と同様に 目の前にいる子どもたちと向き合う中からでしか 導き出されることのない答えなのかもしれません ( 施設長岩瀬靖典 )
3 これからのこれからのこれからのこれからの槇の木学園木学園木学園木学園はどうなるはどうなるはどうなるはどうなる ~ よりよいよりよいよりよいよりよい暮らしをらしをらしをらしを求めてめてめてめて ~ 槇の木学園が小舎制を始めて十数年になります 以前の大舎制での暮らしぶりを知っている職員は 現在の槇の木には数名しか残っていません 暮らしの様子を比べることが難しくなっているのです そこで 過去の 機関誌まきのき の中で何度も記されてきましたが いま一度歴史を思い返してみることにします 大舎制の頃の建物は 廊下をはさみ片側に居室六部屋 反対側にはトイレや洗面所 倉庫などがあり いわゆるハーモニカ型施設でした 居室は 八畳程の広さに四 ~ 五人の子どもが寝ていたのでプライベートな空間などありません トイレや押し入れにこもる子どもが多かったのも当然でしょう 食事は厨房で作られ 時間になれば総勢三十人程が食堂に集まり一斉に食べていました 人数が多い分騒々しいですし テーブルに配膳されているものを見るまではメニューも知り得なかったのです 食堂には鍵がかかっているので自由に出入りができませんでした 暑い夏の日は誰もがのどが渇きます しかし 職員にその旨を伝えても ちょっと待ってて の一言で後回しにされたり すぐに聞いてくれても鍵を開け食堂に入り厨房職員に伝えるまでのどが潤おされることはなかったのです 麦茶一杯でこれですから 希望のメニューが叶うのは一ヶ月も先のことでした 職員勤務は交代制でした 子どもには おはよう と起こしてくれる人と おやすみ と言ってくれる人が別々な人だったのです 担当制でもありましたから職員側は あなたの担当は私です という意識はありましたが 子どもにとっては だったと思われます だって 相談したい時担当がいない日もあるのですから 自分の思いを伝える先がわかりにくい体制だったと言えます 施設という暮らしの中で 子ども達は誰を信頼すれば良いのか 安心できる場所はどこなのか やりたいことをどう伝えればいいのか といった生活の中では単純なことが不明確だったのです このはっきりしないことが 成長の芽を摘んでいたように思います 施設だけど 本当の家ではないけれど 彼らの成長を妨げることがないようにしたい そんな思いから小舎制が始まりました 改善したかったことのひとつは 食 を身近に感じることです 冷蔵庫がそばにあることで 夏の渇きもすぐ解消されましたし 包丁やガスコンロの危険性は想定しましたが 意外と危ないものと知っていました なにより子どもが見ているそばでご飯が作られるので匂いや音が直接五感を刺激するのです 調理に不慣れな職員も多かったので
4 すが 文句も言わず食べてくれました 子どもにとってご飯を作ってくれる人がいかに大きな存在かということに気付いたのは 今日のご飯はなあに と聞かれた時でした 単なる調理人ではなく 共に暮らす人と思ってくれたのでしょう 一緒にスーパーへ買い物に行き 一緒に作り 食べる こんな何気ない暮らしが一番大切だったのです 勤務体制の主が交代制であることは改善できませんでした しかし 暮らしを共にする人を固定したことで 常に担当がいる状況ができました 勤務時間を工夫し おはよう いってらっしゃい おかえり おやすみ と言葉を交わす人が一日のなかで変わらないようにしました 朝 出かける時に様子が気になった子どもも 下校後にしっかり関わることで 大きな問題にならずにすむことも多くなりました 小舎制がスタートして数ヶ月が過ぎた頃 その成果が実感されました 毎日のようにガラスを割っていた子がそうしなくなったり 職員に無断で外へ行くことが多かった子が出て行かなくなったり 押し入れにこもっていた子が自室でゆったりできたり と明らかに彼らの様子が変わってきたのです これらを感じた時は 大舎制の頃から小舎制への検討を重ね 施設内に建て替え検討委員会を組織し スタートした経緯を思い出し 選択が間違っていなかったことが確認できました しかし 良いことばかりではありません 他人が一つの家に暮らすのですから 人間関係が濃くなり 子どもも職員も逃げ場がなく行き詰ってしまうことも多くありました また 職員個人の育ってきた環境が強く反映され 冷蔵庫内の整理や戸の開け方ひとつにも自分と違うやり方が気になり トラブルとなったこともあったのです 大人らしく話し合いで解決しましたが もやもや感が残ったことも事実です さて 過去を振り返り反省した後は今後を見つめなければなりません この十数年の間で浮き彫りにされた課題があります 本当に小舎と呼べる人数なのか 子どもの思いは叶っているのか 大人側の話をするなら職員の思いも反映されているか これらの課題をクリアにすることが急務です 住環境が改善されただけでは 暮らしが良い方向へ向かうことはありません 職員が子ども達と向き合い 今何が必要なのかを子ども目線でとらえ 実践していくことが大切です 槇の木がどうなっていくか どうなるべきか それを今年度は職員一同気持ちを改めて考えていくつもりです ( 詳細は次号以降でお知らせします ) ( 主任指導員永森朋之 )
寮紹介 ( もくせい寮 ) 担当職員麻生今井宮城 今年度 もくせい寮は女の子 4 人 男の子 2 人 職員 3 人です 笑顔がかわいらしく 元気いっぱいのメンバーです スローガンは 思いやり です! あっという間に過ぎていく日々の中にも 1 つ 思いやり があるだけで 温かい気持ちになれる瞬間が増えるのだろうなと思います 皆が温かい気持ちでいられる時間の多い もくせい寮 を目指していきたいと思います ( はなみずき寮 ) 担当職員鷹取三橋栗原今年度 男の子 2 人 女の子 3 人でスタートしました 今年の寮のスローガンははちにんでなかよくみんな笑顔で今よりずーっときずなを深めていこう!! です ( つばき寮 ) 担当職員井上玉川荒井今年度 つばき寮は男の子 3 人 女の子 2 人 職員 3 人の 8 人でスタートします 自分らしく生活し 明るく元気に清潔感のある寮にしていきたいと思います 子ども達は みんな優しく明るい子ばかりなので ぜひつばき寮に遊びに来て下さい 5
( ゆずのき寮 ) 担当職員武宮杉山岩﨑子ども 6 名 ( 小 1 中 1 高 1 高 3 2 名 18 歳 青年学級 ) 職員 3 名 子どもも大人も男性だけ! 可愛い小学生からおっきいお兄さんまで 男だけでも明るく! 楽しく! 華やかに ( 笑 ) 泣いちゃう時もあるけれど 笑顔いっぱいゆずのき寮 ( かわのべ秋塲寮 ) 担当職員秋塲今のメンバーで敷地外の寮に移り 今年度で三年目となりました 目指すところも変わらず 一人一人が目標に向かい努力しつつも お互いを思いやりながら生活していくということです 三年目を迎え思うことは ご家族 他の寮 関係機関 ご近所の方々などたくさんの人達に支えられて 生活できているということです 職員を含め男子四人で 支えて頂いている人への感謝を忘れずに今年も頑張っていきます どうぞよろしくお願いします ( かわのべ中西寮 ) 担当職員中西 自分らしさ を大切に 日々元気良く生活しています 皆で決めた中西寮のモットーは お友達とケンカした時や辛いこと 大変なことがあっても 1 日 1 回はお腹の底から笑うこと ありがとうをちゃんと言える人になること 素直な自分でいること です 6
Fresh Eye 4 月より法人内のときわぎ工舎 一松工房から異動して参りました 槇の木学園には 1992 年度から 12 年間指導員として働き 2001 年度の小舎制への移行後は もくせい寮の寮長や 敷地内と敷地外の住み込み寮の支援職員等を行っておりました 9 年ぶりに槇の木学園に戻って参りましたが 児童の現場感覚が鈍っておりますので 改めて日々勉強です 30 名の子どもたちをお預かりする立場として 毎日が緊張感の連続ではありますが 職務に専心努力し 九十九会の理念である 障害を持つ者も持たない者も 共に学び共に暮らすことのできる社会の実現 に向けて 日々邁進していく所存です 今後ともご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い致します ( 施設長岩瀬靖典 ) はじめまして 今年度 4 月から はなみずき寮で勤務しています 栗原美紗 ( くりはらみさ ) です 趣味はアイドルのコンサートに行くことです!! 特技は 似てないモノマネです 自分では似ていると思っているのですが... 社会人 1 年目として 社会でのルールを学ぶと共に 先輩方の姿を見て子どもたちとの関わり方を学び 自分なりの関わりをしていけたら良いなと思います 子どもの気持ちを考えて 子ども達と共に 自分も成長していけたらいいなと思います これからも頑張っていきます!! よろしくお願いします ( 保育士栗原美紗 ) 7
皆さんはじめまして 4 月から槇の木学園ゆずのき寮でお世話になっています 岩﨑保典 ( いわさきやすのり ) です 学生の時はバスケットボールに励み 現在はマリンスポーツ アウトドアなど 様々なことにチャレンジしています 槇の木学園に来て一ヶ月が過ぎますが 日々子ども達と遊んだり 食事をしたり お風呂に入ったりと生活を一緒に送るなかで とても大切な時間を共に過ごしていると感じ また責任感も非常に強く感じています 今後の子ども達は 自分の関わり方次第で 生きる道が大きく変わっていく事を常に胸の中に入れて 子ども達と一緒に焦らず一歩一歩支え合いながら自身も成長していき そしてお互いが本当に出会えて良かったと思える瞬間をたくさん築き上げていきたいと思います 勉強不足な点が多くございますが 皆が笑顔で楽しい生活を送っていけるよう努力し続けていきます 宜しくお願いします ( 指導員岩崎保典 ) はじめまして 4 月 1 日から槇の木学園のもくせい寮に指導員としてお世話になっています 宮城尚徳 ( みやぎたかのり ) です 趣味はギターを弾くことと野球観戦です 学生の時は 音楽サークルに所属して ボランティアなどでギターを弾いていたので子どもたちと一緒にギターを使い何か出来ればいいなと考えています もくせい寮で 1 カ月が経ちましたが まだまだ慣れないことが多く 分からない事がたくさんあり 勉強不足であると痛感しています これから 子どもたちと接する中で日々勉強していこうと思います そして 子どもたちとの生活の一瞬一瞬を大切にし 子どもたちが楽しいと思えるような充実した学園生活を送れるように頑張りたいと思っています これから宜しくお願いします ( 指導員宮城尚徳 ) 8
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