スペースガード観測の現状



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No.7 アメリカ 合 衆 国 小 規 模 事 例 (そ4) 助 金 も 財 源 になっている しかし 小 規 模 事 業 体 では 連 邦 政 府 から 基 金 はもちろん 市 から 補 助 金 もまったくない が 実 状 である すなわち 給 人 口 が25 人 から100 人 規 模 小 規

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3 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 ( ベース) 43.7 歳 32, , ,321

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調査結果の概要


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高松市緊急輸送道路沿道建築物耐震改修等事業補助金交付要綱(案)

Transcription:

222 日本惑星科学会誌 Vol. 22, No. 4, 203 特集 チェリャビンスクイベントと天体衝突リスク スペースガード観測の現状 浦川 聖太郎 高橋 典嗣 浅見 敦夫 西山 広太,2,3 奥村 真一郎 坂本 強 橋本 就安 三輪田 真 布施 哲治,2 吉川 真 要旨 スペースガードとは 地球へ接近する太陽系小天体 Near Earth Object = NEO の発見 衝突回避の 研究を行う活動である 990 年頃より NEO の早期発見と軌道導出を行うスペースガード観測が世界各地 で行われており 現在では 万を超える NEO が発見されている 美星スペースガードセンターは国内唯一 のスペースガード観測に特化した施設であり NEO を始めとする太陽系小天体の発見 追観測 科学観測 を行っている 本稿では スペースガード観測の現状と 美星スペースガードセンターで行われている実際 の観測 さらに将来の展望について紹介する. スペースガード観測 なエネルギーを有している 今後は 2030 年頃まで に直径 40 m km 絶対等級で 7.75 22.00 等級に 994 年に起こったシューメーカー レビー第 9 彗星 相当 の NEO の 90 を発見することが 新たな目標 の木星衝突を一つのきっかけとし 彗星や小惑星とい として設定されている [3][4] チェリャビンスク隕石 った太陽系小天体が地球へ衝突する脅威について広く の元になった NEO の直径は約 20 m と推定されている 認識されるようになった そして 203 年 2 月 5 日 [5] この大きさの NEO は 地球に非常に近づいたタ のチェリャビンスク隕石落下により 衝突の脅威はよ イミングで 運良くサーベイ網にかかることでしか発 り現実的なものであると改めて知らされた スペース 見できないのが現状である ガ ー ド と は 地 球 へ 接 近 す る 太 陽 系 小 天 体 Near 将来地球に接近する NEO の状況について述べる Earth Object=NEO に対する発見 衝突回避の研究 203 年 0 月 25 日時点では 200 RF2 が 2095 年 9 月 5 を行う活動である. このうち NEO の発見観測 以下 日に地球に衝突する確率が最も高く 8.% である スペースガード観測 は 990 年頃より様々な観測プ しかし万が一衝突したとしても この NEO の推定直 ロジェクトにより実施されている 初期のスペースガ 径は 7 m であり被害はほとんど起こらない この直径 ード観測の国際的な目標は 地球に衝突すれば人類存 は唯一落下予測に成功した 2008 TC3 と同程度である 続に致命的な影響を与える 直径 km 以上の NEO の [6] NEO の危険性を評価する為には衝突確率だけで 90% を発見することと設定された [][2] 現在までの なく 衝突エネルギー NEO の直径や衝突速度 を考 NEO の 発 見 数 を 表 に ま と め る 86 天 体 が 直 径 慮しなければならない 直径が比較的大きい NEO の km 以上 絶対等級で 7.75 等級以上に相当 の NEO で =0955 う ち 衝 突 確 率 が 高 い も の は 999 RQ36 ある これはサイズ分布から推定される直径 km 以 Bennu 2007 VK84 2009 FD である これらの NEO 上の NEO 数のほぼ 90% に達しており 初期の目標は の推定直径はそれぞれ 560 m 30 m 30 m 衝突 達成されたと言える 一方 直径 km 以下の NEO で 確率は 0.054% 0.055% 0.8% 最接近日時は 282 年 あっても 国 / 都市レベルの壊滅をもたらすには十分 9 月 24 日 2048 年 6 月 3 日 285 年 3 月 29 日 で あ る. 日本スペースガード協会 2. 宇宙航空研究開発機構 3. 情報通信研究機構 urakawa@spaceguard.or.jp この NEO の推定直径は 440 m 衝突確率は 0.03% 203遊星人Vol22-4_製版.indd 222 さらに ごく最近になって 203 TV35 が発見された 最接近日時は 2032 年 8 月 26 日である かつて 地球 203/2/3 4:0:

スペースガード 観 測 の 現 状 / 浦 川 他 223 表 : 203 年 0 月 7 日 時 点 でのNEOの 発 見 状 況 (http://www.iau.org/public/themes/neo/nea/). 発 見 数 の 括 弧 内 は,278 年 までに 地 球 に0.05AU 以 内 に 接 近 する 天 体 (Potentially Hazardous Asteroids = PHA)の 数.アルベド=0.5を 仮 定. 直 径 D(m) > 000 000-40 40-40 40 - 全 体 絶 対 等 級 H < 7.75 7.75-22.00 22.00-24.75 > 24.75 推 定 存 在 数 966±45 4000 285000 --- --- 発 見 数 86(55) 4923(260) 264 909 0307(45) 発 見 割 合 89%±4 35% % --- --- 表 2: 主 な 観 測 プロジェクト プロジェクト 名 場 所 口 径 F 値 視 野 Spacewatch アメリカ アリゾナ 0.9 m.8 m 3.0 2.7.9.8 0.6 0.6 LINEAR/GEODSS アメリカ ニューメキシコ m 2 2.2.2.6 CSS アメリカ アリゾナ アメリカ アリゾナ 68 cm.5 m.9 2.0 2.9 2.9.. オーストラリア ニューサウスウェールズ.0 m 3.5 2 2 Pan-STARRS(PS) アメリカ ハワイ.8 m 4.4 φ3.0 ADAS イタリア アシアゴ 67 cm 3.2 0.8 0.8 LSSS スペイン ラサグラ 45 cm 3 2.8.6.6 TOTAS スペイン テネリフェ 島 m 4.5 0.7 0.7 KLENOT チェコ Klet. m 2.7 0.55 0.55 YSTAR,NEOPAT 韓 国 50 cmなど 2 2 など への 衝 突 が 話 題 となった 小 惑 星 アポフィスの 衝 突 確 率 は 無 視 できる 程 小 さくなっている. 衝 突 確 率 が 減 少 し た 要 因 は, 追 観 測 で 軌 道 精 度 が 向 上 した 為 である[7]. NEOの 発 見 情 報 や 軌 道 情 報 はMinor Planet Center 注 (MPC) やNASA/JPLのNear Earth Object 注 Program 2 に 詳 しく 紹 介 されている. 2. 世 界 のスペースガード 観 測 NEOの 発 見 を 行 っている 観 測 プロジェクトは, 発 見 数 の ほ と ん ど を 占 め るLINEAR(Lincoln Near Earth Asteroid Research),CSS(Catalina Sky Survey)などの 大 規 模 サーベイグループとそれ 以 外 に 大 きく 分 けることができる. 大 規 模 サーベイはすべてア メリカ 合 衆 国 における 組 織 であり, 事 実 上,アメリカ における 大 規 模 サーベイとそれ 以 外 の 国 での 小 規 模 サ ーベイに 分 かれる.990 年 代 2000 年 代 初 頭 にかけ ての 代 表 的 な 観 測 プロジェクトは,LINEAR,NEAT (Near-Earth Asteroid Tracking),Spacewatch などで ある.これらのプロジェクトは 口 径 mクラスの 望 遠 注 :http://minor.planetcenter.net 注 2:http://neo.jpl.nasa.gov 鏡 に 広 視 野 CCDカメラの 組 み 合 わせというシステム で 観 測 を 行 っている. 現 在 のスペースガード 観 測 の 中 心 は,CSS と Pan-STARRS(Panoramic Survey Telescope and Rapid Response System)に 移 っている. CSSはアリゾナ 州 ツーソンのSteward 天 文 台 を 中 心 に, 同 じアリゾナ 州 のレモン 山 天 文 台 とオーストラリアの Siding Spring 天 文 台 で 連 携 して 行 っているプロジェ クトである.203 年 の 前 半 期 までに4500を 超 える NEO を 発 見 している.Pan-STARRS は,ハワイ ハ レアカラ 山 頂 で 行 われているサーベイプロジェクトで ある(NEOの 発 見 だけを 目 的 としていない). 口 径.8 m 望 遠 鏡 と 広 視 野 カメラからなる 観 測 システムで, 約 7 平 方 度 ( 直 径 3 度 の 円 形 状 視 野 )の 領 域 を 一 度 に 撮 像 する 事 ができる[8]. 計 画 ではこの 観 測 システムを4 台 稼 働 させる 予 定 であり,200 年 からプロトタイプを 兼 ねた 台 目 (PS)での 本 格 稼 働 が 始 まっている. 現 在, PSだけで 年 間 のNEO 発 見 数 の 約 半 分 を 占 めるまで になっているが,さらに2 台 目 のPS2も 完 成 している. アメリカ 以 外 では,イタリア,スペイン,チェコ, 韓 国 などで 観 測 が 行 われている. 一 例 として,スペイン の LSSS(La Sagra Sky Survey)では,チェリャビンス ク 隕 石 落 下 の 翌 日 に 地 表 から27700 kmの 距 離 まで 接

224 日本惑星科学会誌 Vol. 22, No. 4, 203 図2 美星スペースガードセンター観測システム 注3 図 観測プロジェクト別のNEO発見数の推移 MPCの公開デー タ http://www.minorplanetcenter.net/iau/mpcorb. htmlより作成 203年は9月7日までの発見数 で 2000 年から開始した [0] BSGC は 口径 m 望 遠鏡 口径 50 cm 望遠鏡 口径 25 cm 望遠鏡からなり 通常は口径 m 望遠鏡と口径 50 cm 望遠鏡を用いて観 測を実施している 図 2 口径 m 望遠鏡の検出器は 近した 202 DA4 を発見している 主な観測プロジェ 4096 2048 ピクセルの 4 枚の CCD からなり その視 クトを表 2 にまとめる 野は約 2.6 平方度である 口径 50 cm 望遠鏡の検出器 近 年 で は 宇 宙 か ら の 観 測 も 実 施 さ れ て い る は 2048 2048 ピクセルの CCD であり その視野は約 NASA の 宇 宙 望 遠 鏡 WISE Wide-field Infrared 2.8 平方度である BSGC では NEO とともにスペー Survey Explorer は 口径 40 cm の赤外望遠鏡であり スデブリの観測も行っている 観測は 6 人の観測者に その観測波長は 3.4 μm 4.6 μm 2 μm 22μm である より 2 人 組の交代制で 午後 6 時から翌朝午前 6 時 冷却剤がなくなり当初の観測計画は終了したが 冷却 まで 365 日体制で行っている メインとなる口径 m なしでも比較的問題の少ない 3.4 μm 帯と 4.6μm 帯を 望遠鏡は 2002 年に完成し その後も改良と改修を重 用いた NEO サーベイを NEOWISE と名付け運用期間 ねて 2007 年から十分な性能を発揮できるようになっ を延長して実施した WISE による観測で 29 の NEO た これまでの NEO の発見は 25 cm 望遠鏡による が発見された また 直径 km 以下の NEO のサイズ =20826 と m 望遠鏡による 2007 YZ の 2 2000 UV3 分布の再調査を行い これまで予測されていたより 天体に留まっている 直径 km 以下の NEO が少ない事を明らかにした [9] BSGC における NEO の観測の実際について述べる 延長運用は 20 年 2 月に終了したが チェリャビンス NEO は メインベルト小惑星と異なり 黄道面付近 ク隕石落下により スペースガード観測の重要性が再 に存在しているとは限らない しかし それでも存在 認識され 203 年 9 月に再運用を行うという発表があ 確率は黄道面付近が一番高い 従って 黄道面付近の った 図 は観測プロジェクト別の NEO の発見数を 衝の位置を観測すると NEO を発見しやすい ただし 示す 990 年代後半から 2000 年代初頭にかけて主要 この領域は他の観測プロジェクトも観測するため なプロジェクトであった LINEAR や NEAT での発 BSGC ではやや高黄緯の領域を観測することが多い 見数は近年減少しており CSS や Pan-STARRS によ このようにして決めた領域を一晩に 4 回程度撮像し る発見数が増加している 200 年に Other が急増し その 4 枚の画像をパラパラ漫画のように比較する事で ているが これは WISE による発見である NEO の検出を行う 恒星は視野内で動かないが NEO は移動する これをブリンク法という BSGC 3. 日本におけるスペースガード観測 では 移動天体の検出を目視で行っている これは 他の観測プロジェクトと比較して劣っている限界等級 日本におけるスペースガード観測は 岡山県井原市 美星町の美星スペースガードセンター 以下 BSGC 203遊星人Vol22-4_製版.indd 224 注3 BSGCの施設は 一般財団法人日本宇宙フォーラムが所有 し 日本スペースガード協会 JSGA が観測を行っている 203/2/3 4:0:2

スペースガード 観 測 の 現 状 / 浦 川 他 225 図 3: NEOの 発 見 等 級 の 分 布 (MPCの 公 開 データ,http://www. minorplanetcenter.net/iau/mpcorb.htmlより 作 成 ). 現 在 では, 短 時 間 の 露 出 で20 等 級 を 検 出 できなければNEO の 発 見 は 困 難 である. を 補 うためには,ノイズと 同 レベル 程 度 の 信 号 を 判 別 することが 可 能 な 目 視 による 検 出 が 必 要 だからである. 一 般 に,NEOはメインベルト 小 惑 星 より 天 球 上 での 動 きが 速 い.また,その 動 きの 速 さや 方 向 は 決 まって いない.このような 条 件 は,NEOを 発 見 するために, 長 時 間 の 露 出 をかけて 限 界 等 級 を 上 げる 事 は 難 しく, 30 秒 から60 秒 程 度 の 短 い 露 出 時 間 で 観 測 を 実 施 する 必 要 があることを 示 す.BSGCの 場 合,30 秒 露 出 を 行 った 場 合 の 典 型 的 な 限 界 等 級 は8 等 級 である.この 限 界 等 級 で 発 見 できるような, 大 型 のNEOの 大 半 は 発 見 されている. 図 3は202 年 以 降 のNEOの 発 見 時 の 等 級 を 示 す. 現 在 のNEOの 発 見 時 の 等 級 は20.5 等 級 にピークがある.また, 図 4は 発 見 されたNEOの 絶 対 等 級 ( 直 径 に 相 当 )の 年 次 推 移 を 示 す.ごく 稀 に 絶 対 等 級 6 等 程 度 ( 直 径 2 km)のneoが 発 見 されるも のの, 平 均 すると 年 を 経 るごとに 発 見 されるNEOの 直 径 は 小 さくなっている. 現 在 では 絶 対 等 級 22.5 等 ( 直 径 00 m)のneoの 発 見 が 多 い. 従 って, 現 在 では BSGCでNEOを 発 見 する 事 は 困 難 な 状 況 であり, NEOの 発 見 を 目 指 した 積 極 的 な 観 測 は 行 っていない. 一 方,Pan-STARRS などで 発 見 されたNEOの 暫 定 的 注 な 軌 道 情 報 はMPCのNEO Confirmation Page 4 で 公 開 される.この 暫 定 的 な 軌 道 に 基 づきNEOの 動 きに 合 わせて 望 遠 鏡 を 追 尾 させれば, 長 時 間 の 露 出 が 可 能 となり,BSGCでも 暗 いNEOを 検 出 することが 可 能 となる.このような, 即 時 追 観 測 はNEOの 正 確 な 軌 道 導 出 をする 上 で 重 要 である. 例 えば,203 年 9 月 2 日 までの 一 年 間 に 月 軌 道 の5 倍 以 内 の 距 離 まで 地 球 に 注 4: http://www.minorplanetcenter.net/iau/neo/toconfirm_ tabular.html 図 4: 発 見 されるNEOの 絶 対 等 級 の 年 次 推 移 (MPC の 公 開 デー タ,http://www.minorplanetcenter.net/iau/MPCORB. htmlより 作 成 ). 近 づいたNEOは0 天 体 ある.このうち07 天 体 が 発 見 前 後 の 数 日 の 間 に 地 球 へ 最 接 近 している. 発 見 され たNEOが 次 の 回 帰 で 必 ず 観 測 できるとは 限 らない( 多 くの 場 合, 大 型 望 遠 鏡 でも 観 測 不 可 能 な25 等 級 以 下 になる). 従 って,BSGCのような 常 に 観 測 体 制 にあ る 観 測 所 において 即 時 追 観 測 を 実 施 し, 可 能 な 限 り 正 確 に 軌 道 を 求 めておくことが 重 要 である.NEOの 追 観 測 に 加 え, 既 知 のNEOであっても 軌 道 精 度 を 改 良 するためにある 程 度 の 期 間 ごと( 典 型 的 には 数 ヶ 月 か ら 数 年 程 度 毎 )に 位 置 測 定 観 測 を 実 施 する 必 要 がある. 表 3: 美 星 スペースガードセンターで 実 施 した 観 測 のうち, Minor Planet Centerへ 報 告 した 天 体 数 の 推 移. 即 時 追 観 測 を 実 施 したNEO 数 とは,NEO Confirmation Pageに 公 表 されたNEO 候 補 天 体 に 対 する 観 測 数 である. 発 見 候 補 天 体 は, 観 測 時 点 において 未 発 見 であった 太 陽 系 小 天 体 であり, 主 にメインベルト 小 惑 星 である.MPCに 集 約 されている 過 去 のデータとの 精 査 の 結 果, 必 ずしもすべての 発 見 候 補 天 体 が 発 見 とならない.BSGCで 発 見 したNEO,-2007 YZ-, は2007 年 の 発 見 候 補 天 体 に 含 まれる.200 年 よりNEOCP 天 体 の 即 時 追 観 測 に 観 測 の 重 点 を 移 している. 年 即 時 追 観 測 を 実 施 した NEO 数 観 測 をした 既 知 の NEO 数 発 見 候 補 天 体 数 202 89 76 40 20 22 97 33 200 92 32 503 2009 39 3 47 2008 24 4 30 2007 7 22 5

226 日 本 惑 星 科 学 会 誌 Vol. 22, No. 4, 203 月 明 かりがあり, 暗 い NEOの 検 出 が 難 しい 状 況 下 では, この 種 の 観 測 もBSGCで 実 施 している.2007 年 以 降, BSGC で 行 った 観 測 の 状 況 について 表 3にまとめる. 2007 年 より BSGCm 望 遠 鏡 には,SDSSのg, r, i, z フィルターと,860 nmと020 nmに 中 心 波 長 を 持 つ 狭 帯 域 フィルターが 導 入 された.これらのフィルター を 用 いる 事 で 多 色 測 光 による 小 惑 星 のスペクトル 型 決 定 といった 科 学 観 測 が 可 能 となった.また 従 来 から, ライトカーブ 観 測 は 可 能 である.これまで,イトカワ や999 JU 3 のような 探 査 天 体 のライトカーブ 観 測 や, 07P/Wilson-Harringtonのライトカーブ 観 測 及 び 多 色 測 光 観 測 を 実 施 してきた[][2].BSGCでは365 日 観 測 体 制 にあるので, 太 陽 系 小 天 体 の 突 発 現 象 にも 即 時 対 応 できる.この 利 点 を 生 かした 科 学 観 測 を 今 後 も 行 う 予 定 である.BSGC 以 外 での 国 内 における 小 惑 星 の 観 測 状 況 について 述 べる. 常 時 の 観 測 体 制 にはないも のの,JAXA 入 笠 山 観 測 所 で 小 惑 星 の 観 測 が 行 われて いる.また,アマチュア 天 文 家 も 観 測 を 実 施 している. 特 に, 世 界 各 地 の 大 規 模 サーベイプロジェクトが 本 格 的 に 稼 働 するまで, 小 惑 星 の 発 見 報 告 数 は 日 本 のアマ チュア 天 文 家 が 世 界 をリードしてきた. 小 惑 星 の 発 見 報 告 は,MPC に 集 約 される. 未 知 の 小 惑 星 は,2 日 分 の 観 測 でその 存 在 が 確 認 されて 初 めて 発 見 と 認 められ る 定 義 であった(200 年 3 月 まで). 特 定 の 天 球 上 の 領 域 を2 日 に 渡 り 望 遠 鏡 を 向 けるような 入 念 な 観 測 は, アマチュア 天 文 家 の 得 意 とするところであり, 十 分 な 観 測 技 術 を 有 した 日 本 のアマチュア 天 文 家 の 貢 献 は 非 常 に 大 きかった.しかし,MPCは 夜 だけの 観 測 報 告 を 認 めるようになった(200 年 4 月 より).さらに, その 後 の 追 観 測 で 小 惑 星 を 確 認 できた 時, 発 見 者 は 最 初 に 夜 目 の 観 測 を 行 った 者 と 定 義 が 変 更 された.こ の 変 更 により, 小 惑 星 の 発 見 はほとんど 大 規 模 サーベ イプロジェクトのものとなり,アマチュア 天 文 家 の 楽 しみはなくなってしまった. 著 者 自 身 の 印 象 では,こ の 変 更 は, 様 々な 観 測 プロジェクトによるNEOの 発 見 の 増 加 に 伴 い 効 率 的 なスペースガード 観 測 のため に 世 界 中 の 観 測 者 が 協 力 すべき というMPCの 姿 勢 を 反 映 したものであり,スペースガード 観 測 の 点 では 良 かったと 思 っている.しかし, 結 果 として 小 惑 星 の 発 見 を 行 うアマチュア 天 文 家 が 減 少 してしまった.も っとも, 小 惑 星 のライトカーブ 観 測 に 重 点 を 移 した 者 もおり,その 分 野 で 素 晴 らしい 貢 献 を 引 き 続 き 行 って いる [3]. 4. 今 後 のスペースガード 観 測 チェリャビンスク 隕 石 落 下 により, 改 めてスペース ガードの 重 要 性 が 認 識 されたように 思 う.しかし, 現 状 ではチェリャビンスク 隕 石 の 元 になったような 小 型 のNEOの 網 羅 的 な 発 見 は 難 しく, 今 後 5-20 年 の 期 間 で, 直 径 40 m km の NEO の 90% を 発 見 し, 軌 道 決 定 しようという 段 階 である.Pan-STARRS に 加 え, 計 画 中 で あ る LSST(Large Synoptic Survey Telescope)では, 口 径 8.4 m, 視 野 9.6 平 方 度 の 観 測 システ ムでサーベイ 観 測 を 実 施 する 予 定 である.ここでも NEOの 発 見 が 重 要 な 観 測 テーマとして 提 案 されてい る.また,すばる 望 遠 鏡 Hyper-Suprime Cam や 検 討 が 開 始 された 宇 宙 望 遠 鏡 WISH(Wide-field Imaging Survey for High-redshift)など, 今 後 行 われる 大 規 模 サーベイ 観 測 でもNEOの 検 出 が 期 待 できる.この 他 にも, 太 陽 方 向 から 飛 来 する NEO の 発 見 を 目 的 として, カナダ 宇 宙 庁 により 宇 宙 望 遠 鏡 NEOSSat(Near-Earth Object Surveillance Satellite)が 打 ち 上 げられた.また, 宇 宙 望 遠 鏡 NEOCam(Near-Earth Object Camera)が NASAで 検 討 されている.このような 宇 宙 からのス ペースガード 観 測 も 今 後, 重 要 な 役 割 を 果 たすであろ う. 一 方, 日 本 スペースガード 協 会 においては 上 述 した ような 観 測 を 行 ってきたが, mという 望 遠 鏡 の 口 径 は, 直 径 40 m km の NEO の 発 見 を 行 うには 力 不 足 な 感 は 否 めない.この 状 況 を 変 えるには, 次 世 代 の 望 遠 鏡 が 必 要 不 可 欠 である. 現 在, 我 々は 次 期 望 遠 鏡 の 検 討 作 業 を 行 っている.スペースガード 観 測 には, それ 相 応 の 資 金 や 人 的 資 源 が 必 要 である.しかし,こ れは 人 類 存 続 に 対 する 保 険 のようなものであると 思 う. 今 後 ともスペースガード 観 測 の 発 展 のため, 協 力, 理 解 を 頂 ければ 幸 いである. 参 考 文 献 [] Shoemaker, E.M. ed., 995, Report of the Near-Earth Objects Survey Working Group.NASA, Washington DC. (Available on line at http://impact.arc.nasa.gov.) [2] Morrison, D. et al., 2002, in Asteroids III, ed. W. F.

スペースガード 観 測 の 現 状 / 浦 川 他 227 Bottke Jr. et al. (University ofarizona Press, Tucson), 739. [3] Morrison, D. ed., 2006, Report of NASA NEO Workshop. NASA, Washington DC. (Available on line at http://impact.arc.nasa.gov.) [4] Report to Congress, Near-Earth Objcet Survey and Deflection Analysis of Alternatives, 2007, NASA. [5] Boslough, B., 203, DPS meeting abstract 45, 0. 0. [6] Scheirich, P. et al., 200, Meteorit. & Planet. Sci. 45, 804. [7] Bancelin, D. et al., 202, A&A 544, id.a 5. [8] Kaiser, N. et al., 200, Proceedings of SPIE 7733, article id. 77330E. [9] Mainzer, A. et al., 20, ApJ 743, 56. [0] Isobe, S., 999, Adv. Space Res. 23, 33. [] Muller, T. G. et al., 20, A&A 525, 45. [2] Urakawa, S. et al., 20, Icarus 25, 7. [3] Hamanowa, H. et al., 2009, The Minor Planet Bulletin 36, 87.