低 油 価 に 呻 吟 する リビア イラク イラン ( 一 財 ) 国 際 開 発 センター エネルギー 環 境 室 研 究 顧 問 畑 中 美 樹 油 価 下 落 を 放 置 する GCC 主 要 産 油 国 と 対 応 策 を 模 索 するイラン 油 価 の 下 落 がさらに 進 展 するなか 石 油 輸 出 国 機 構 (OPEC)の 加 盟 国 でも 最 も 影 響 を 受 けると 見 られるベネズエラのマドゥロ 大 統 領 が,2015 年 1 月 4 日,テレビ 中 継 された 演 説 で 次 のように 語 り, 中 国 とOPEC 諸 国 を 訪 問 のうえ 対 応 策 を 協 議 する ことを 明 らかにした 1 私 は 本 日, 各 国 の 歴 訪 に 出 発 する 2 ( 油 価 急 落 による) 歳 入 減 に 直 面 している 我 が 国 にとって, 今 回 の 海 外 訪 問 は 新 規 事 業 を 如 何 に 始 めるかの 点 からも 極 めて 重 要 となる 3 最 初 の 訪 問 国 の 中 国 では 資 金 確 保 策 やエネル ギー 情 勢 について 協 議 する 4 OPEC 諸 国 の 訪 問 で は 油 価 回 復 戦 略 及 び OPEC 強 化 策 を 協 議 する 因 みに, 原 油 価 格 が10ドル 下 落 すればベネズエ ラの 歳 入 は 年 間 7 億 ドル(840 億 円 ) 減 少 すると 言 われる ベネズエラの 場 合,2014 年 第 3 四 半 期 (7 ~9 月 )までの 国 内 総 生 産 (GDP) 成 長 率 が 四 半 期 ごとに 4.8%, 4.9%, 2.3%と3 四 半 期 連 続 でマイナスとなっているだけに 国 民 の 不 満 をい つまで 抑 えられるのか 懸 念 される そのベネズエラのマドゥロ 大 統 領 も,1 月 10 日, 訪 問 したイランの 首 都 テヘランでロウハニ 大 統 領 と 会 談 し, 下 落 を 続 ける 油 価 の 打 開 策 に 向 け 協 力 していくことを 確 認 している なお,ロウハニ 大 統 領 はマドゥロ ベネズエラ 大 統 領 との 会 談 で, OPEC 加 盟 国 間 の 協 力 が 反 対 勢 力 の 計 画 を 無 効 に した 上 で 油 価 の 適 正 水 準 への 回 復 を 間 違 いなく 助 けることになるとの 考 えを 表 明 した 下 落 する 原 油 価 格 の 責 任 が 湾 岸 のライバル 国 サ ウジアラビアにあるとの 批 判 を 強 めているのがイ ランである イランについては 米 欧 経 済 制 裁 によ る 自 国 経 済 の 落 ち 込 みの 中 での 油 価 急 落 であるだ けに, 政 府 当 局 はベネズエラ 同 様, 国 民 の 反 応 を ことのほか 気 にしている 度 重 なるサウジ 批 判 に は 国 民 の 不 満 をそらすとの 側 面 があるのかもしれ ない ザンガネ イラン 石 油 相 は2015 年 1 月 4 日, 予 算 を 巡 る 国 会 での 議 員 たちとのやり 取 りの 中 で 油 価 下 落 の 背 後 にはサウジアラビアがいると 国 名 を 挙 げて 批 判 した 因 みに, 翌 1 月 5 日 のイラン 紙 は 原 油 価 格 の 下 落 について 次 のように 報 じた 1 ザンガネ 石 油 相 はサウジ 政 府 高 官 たちが 彼 ら の 一 時 的 な 政 治 目 的 を 達 成 するために 油 価 を 引 き 下 げ 続 けていると 発 言 した 2 多 くの 政 治 評 論 家 は,サウジアラビアがシリ アとイラクの 反 政 府 勢 力 への 支 援 に 何 度 も 失 敗 してきたことが,テヘランに 対 する 復 讐 と して 油 価 急 落 政 策 に 走 らせた 要 因 と 見 てい る 27 中 東 協 力 センターニュース
イランのサウジ 批 判 については 同 国 外 務 省 のホ セイン アミル アブドゥラヒアン 副 外 相 も2014 年 12 月 31 日, 次 のような 厳 しい 見 方 を 述 べていた 同 副 外 相 の 発 言 のうち 原 油 情 勢 に 関 する 部 分 のみ を 紹 介 すれば 以 下 の 通 りである 1 原 油 価 格 の 下 落 には 幾 つかの 理 由 があるが, サウジアラビアはこの 状 況 下 で 生 産 的 な 役 割 を 果 たすことができる 2 もしサウジアラビアが 原 油 価 格 の 下 落 防 止 策 を 取 らなければ, 中 東 の 全 諸 国 にマイナス 影 響 を 与 える 重 大 な 過 ちとなる 3 イランはOPECでの 高 官 同 士 の 協 議 や 外 務 省 経 由 での 協 議 を 通 じてサウジアラビアともっ と 話 し 合 っていく さらに 同 国 のロウハニ 大 統 領 は1 月 13 日,ブー シェルでの 演 説 で 次 のように 述 べ, 原 油 安 はイラ ンよりもサウジアラビアやクウェートにとって 大 きな 打 撃 になると 主 張 した(ブルームバーグ 通 信 2015 年 1 月 13 日 ) 1 原 油 価 格 の 下 落 に 責 任 を 負 う 諸 国 は 何 れ 後 悔 することになる 2 イランが 油 価 下 落 に 苦 しむのであれば,クウ ェートやサウジアラビアといった 産 油 国 はそ れ 以 上 に 厳 しい 状 況 に 置 かれよう 3 ( 何 故 ならば)イランはクウェートやサウジア ラビアよりも 原 油 輸 出 への 依 存 度 合 いが 低 い からだ 他 方, 油 価 下 落 を 放 置 する 姿 勢 を 見 せているの が 主 要 な GCC 産 油 国 である 例 えば,アラブ 首 長 国 連 邦 (UAE)のマズルーイ エネルギー 相 は 2015 年 1 月 13 日,アブダビのエネルギー フォー ラムで 概 要 次 のように 述 べ,6 月 総 会 前 の OPEC 緊 急 会 合 開 催 はないとの 考 えを 明 らかにした(ロ イター 通 信 2015 年 1 月 13 日 ) 筆 者 紹 介 慶 應 義 塾 大 学 経 済 学 部 卒 業 (1974 年 3 月 ),1974~1980 年 富 士 銀 行 勤 務 後,1980~1983 年 中 東 経 済 研 究 所 出 向 1983 年 富 士 銀 行 復 職 後 (1 月 ), 同 行 を 退 職 (10 月 ) 中 東 経 済 研 究 所 カイロ 事 務 所 長 を 経 て,1990 年 同 研 究 所 退 職 1990 年 12 月 ~2000 年 9 月 国 際 経 済 研 究 所 勤 務 ( 主 席 研 究 員 ),2000 年 10 月 ~2005 年 3 月 国 際 開 発 センター エネルギー 環 境 室 長,2005 年 4 月 よりエネ ルギー 環 境 室 研 究 顧 問 中 東 や 北 アフリカ 諸 国 の 王 族, 政 治 家, 政 府 関 係 者,ビジネスマンに 知 己 が 多 く, 中 東 全 域 に 豊 富 な 人 的 ネットワークを 有 する 専 門 領 域 は 中 東 経 済 論 著 書 イスラムマネー がわかると 経 済 の 動 きが 読 めてくる! (すばる 舎,2010 年 ) 中 東 のクール ジ ャパニーズ ( 同 友 館,2009 年 ) 中 東 湾 岸 ビジネス 最 新 事 情 ( 同 友 館,2009 年 ) 南 地 中 海 の 新 星 リビア ( 同 友 館,2009 年 ) 今 こそチャンスの 中 東 湾 岸 ビジネス ( 同 友 館,2009 年 ), オイルマネー ( 講 談 社 現 代 新 書, 2008 年 ), 石 油 地 政 学 ( 中 公 新 書 ラクレ,2003 年 ) 1 OPEC 全 体 生 産 枠 の 引 き 下 げを 見 送 った2014 年 11 月 のOPEC 総 会 の 決 定 は 正 しい 判 断 であ った 2 ( 国 際 石 油 市 場 は)シェールオイルが 要 因 で 供 給 過 剰 となっており 供 給 体 制 の 修 正 が 必 要 で ある 3 但 し,シェールオイルを 市 場 から 完 全 に 閉 め 出 すべきではない またオメール クウェート 石 油 相 は1 月 14 日, 議 会 で 記 者 団 に ( 国 際 石 油 市 場 での 原 油 の) 余 剰 分 が 吸 収 され 世 界 経 済 が 改 善 されるまで 今 の(よ うな 低 水 準 の 油 価 の) 状 況 は 続 くと 見 込 んでいる (ブルームバーグ 通 信 2015 年 1 月 14 日 )と 語 り, 2015 年 下 半 期 以 前 に 原 油 価 格 が 回 復 する 可 能 性 は 低 いとの 見 方 を 示 した ヤブーニUAE 代 表 OPEC 理 事 も 同 日,アブダビで 記 者 団 に 需 要 が 主 導 す る 石 油 市 場 の 回 復 は2015 年 7~12 月 期 ( 下 半 期 ) になりそうである ( 同 上 )と 述 べ,クウェートのオ メール 石 油 相 と 同 様 の 見 方 を 明 らかにしている 原 油 価 格 の 下 落 が 当 面 止 まりそうもないことを 示 すように,アラブ 首 長 国 連 邦 (UAE)は1 月 上 旬,クウェート 及 びイラクに 追 随 する 形 でアジア 28 中 東 協 力 センターニュース
向 けの 原 油 価 格 をサウジアラビアの 販 売 価 格 を 下 回 る 水 準 に 設 定 している(ロイター 通 信 2015 年 1 月 13 日 ) 湾 岸 主 要 産 油 国 間 でのアジア 市 場 の 確 保 を 目 指 した 値 引 き 戦 争 の 激 化 は 油 価 のさらなる 下 落 の 圧 力 となりそうだ 在 外 公 館 の 一 部 閉 鎖 を 検 討 中 のリビア 低 水 準 の 原 油 価 格 が 続 いている 中 東 主 要 産 油 国 が2015 年 予 算 を 編 成 した 時 点 では 既 に 油 価 は 下 落 していたので, 各 国 とも 一 定 程 度 油 価 の 下 落 要 因 を 織 り 込 んで 策 定 した しかし,その 後 も 油 価 の 下 落 が 続 いたことから 多 くの 国 では 改 めて 見 直 しが 行 われている 石 油 輸 出 国 機 構 (OPEC)の 一 員 であるリビア は, 東 のトブルクとアルベイダーに 拠 点 を 置 く 世 俗 派 リベラル 派 勢 力 ( 以 下, 東 部 勢 力 と 呼 称 する 国 連 及 び 国 際 社 会 が 承 認 但 し,リビア 最 高 裁 は 無 効 判 決 )と 西 の 首 都 トリポリに 拠 点 を 置 くイスラム 穏 健 派 勢 力 ( 以 下, 西 部 勢 力 と 呼 称 する)が 対 立 し 国 内 を 東 西 にほぼ 二 分 する 状 態 が 続 いている 国 外 での 開 催 となった 国 連 リビア 支 援 代 表 団 (UNSMIL)が 進 める 東 西 融 和 を 目 指 した1 月 中 下 旬 の 対 話 集 会 には 残 念 ながら 東 部 勢 力 しか 出 席 しなかった 何 故 ならば 西 部 勢 力 が 出 席 反 対 派 と 賛 成 派 に 二 分 されているからだ し かし, 西 部 勢 力 のアブシャーマイン 制 憲 議 会 議 長 は,1 月 30 日,リビア 国 内 で 開 催 するのであれ ば 出 席 を 決 定 したと 表 明 している このような 状 況 にあるため,リビア 中 央 銀 行 は 独 立 性 を 維 持 し 何 れの 政 府 にも 偏 らないとの 方 針 を 貫 くなか 不 急 不 要 以 外 の 支 出 を 全 面 停 止 し 今 日 を 迎 えている リビアの 予 算 上 の 支 出 は5 項 目 に 分 類 されている だが 現 在 中 央 銀 行 から 遅 滞 なく 支 出 されているのは,5つの 項 目 のうちの 項 目 1の 国 家 公 務 員 の 給 与 及 び 項 目 4の 補 助 金 の み であり,これら 以 外 の 支 出 は 全 て 限 定 条 件 下 での 支 出 となっている リビア 中 央 銀 行 が 項 目 1 及 び 項 目 4 以 外 の 予 算 費 目 について 人 道 的 或 いは 緊 急 的 必 要 性 のない 限 り 支 出 を 停 止 しているのは, 東 西 に 分 裂 中 の 政 府 及 び 議 会 の 争 いが 継 続 しているためである また 仮 に 支 出 を 行 った 場 合, 適 正 に 使 途 目 的 に 充 当 さ れているのか 否 かが 確 認 できないことも 理 由 とし て 挙 げられている 但 し,リビア 中 央 銀 行 が 一 部 の 項 目 を 除 いて 支 出 を 停 止 しているのは,サディック エル カビー ル 中 央 銀 行 総 裁 が 西 部 勢 力 の 重 鎮 の 一 人 であるか らとの 見 方 がないわけではない つまり, 東 部 勢 力 が 後 ろ 盾 としているエジプトなどの 諸 外 国 にリ ビア 予 算 の 資 金 が 流 出 するのを 防 ぐためではない かとの 見 方 である 何 れにせよ 現 時 点 でのリビア の 予 算 項 目 ごとの 支 出 対 応 状 況 を 一 表 に 整 理 すれ ば 次 のようになる 図 表 1 リビア 予 算 の 項 目 ごとの 支 出 状 況 項 目 番 号 ( 主 な 内 容 ) 支 出 状 況 項 目 1 (Salaries: 国 家 公 務 員 給 与 ) 項 目 2 (Operational Expenditure: 一 般 消 費 材 予 算 ) 項 目 3 (Development & Reconstruction Projects: インフラ 開 発 及 び 復 興 プロジェクト 予 算 ) 予 算 通 りに 支 出 中 基 本 的 に 支 出 を 止 めている 但 し, 人 道 的 な 対 象 及 び, 緊 急 を 要 する 対 象 に 限 り 支 出 している 原 則 支 出 を 止 めている 但 し, 病 院 学 校 の 修 復 再 建 や 人 道 的 な 対 象 に 限 り 支 出 している 29 中 東 協 力 センターニュース
項 目 4 (Subsidies & Price Stabilization Fund: 燃 料 費 食 糧 電 気 料 金 などの 補 助 金 物 価 安 定 のための 基 金 ) 項 目 5 (The General Reserve including the Child Benefit: 子 供 手 当 を 含 む 一 般 共 通 予 備 費 ) 市 民 生 活 に 不 可 欠 であるため, 削 減 することなく 予 算 通 りに 支 出 されている 子 供 手 当 以 外 支 出 を 止 めている そのリビア 中 央 銀 行 は2015 年 1 月 15 日, 声 明 を 発 表 し2014 年 の 財 政 収 支 が251 億 リビア ディナー ル(186 億 ドル,2 兆 2,300 億 円 弱 )に 上 ったこと を 明 らかにすると 共 に, 中 央 銀 行 は 全 ての 関 係 当 事 者 に 対 して 拡 大 する 危 機 への 対 応 で 協 力 するこ とを 呼 び 掛 ける 安 定 を 回 復 しリビアの 将 来 を 守 るためには 国 民 が 国 家 の 直 面 する 危 機 を 認 識 して 欲 しい (ロイター 通 信 2015 年 1 月 16 日 )と 訴 え, 次 のような 費 目 の 削 減 を 提 案 した 同 時 に 中 央 銀 行 は 具 体 的 な 金 額 には 触 れずに 外 貨 準 備 が 大 きく 減 少 していることを 明 らかにした 1 海 外 駐 在 外 交 官 数 の 削 減 2 新 規 外 交 官 の 任 命 の 停 止 3 学 術 奨 学 金 の 停 止 4 家 族 子 ども 手 当 の 中 止 5 国 家 負 担 による 海 外 医 療 措 置 の 見 直 し それから5 日 後 の1 月 20 日, 東 部 勢 力 のア ル シンニ 内 閣 は 低 水 準 の 油 価 と 産 油 量 の 結 果, 財 政 赤 字 に 対 処 するために 歳 出 削 減 が 必 要 となっ た (ロイター 通 信 2015 年 1 月 21 日 )と 語 り, 海 外 の 幾 つかの 大 使 館 の 閉 鎖 及 び 在 外 勤 務 の 外 交 官 数 の 削 減 を 計 画 中 であることを 発 表 している 前 提 油 価 を56ドルに 引 き 下 げたイラク イラク 議 会 は2015 年 1 月 29 日, 総 額 119 兆 イラ ク ディナール( 約 996 億 ドル,12 兆 円 弱 )の2015 年 度 予 算 を 承 認 した 修 正 前 の 予 算 総 額 は 米 ドル 表 示 では1,025 億 ドルであったので,2.8%の 縮 小 と なった 財 政 収 支 では 約 25 兆 ディナール( 約 220 億 ドル, 約 2 兆 6,400 億 円 )の 赤 字 を 予 想 している なお, 当 初 案 では 財 政 赤 字 は 米 ドル 表 示 で191 億 ド ルであったので, 赤 字 額 は 約 15% 拡 大 したことに なる 原 油 価 格 の 低 迷 するなか 予 算 承 認 の 遅 れが イスラム 国 との 戦 いに 影 響 の 出 ることを 懸 念 して いたハイデル アル アバディ 首 相 にとっては 一 安 心 となった またイスラム 国 との 戦 いでクルド 自 治 政 府 と 共 闘 せねばならないアバディ 首 相 にと っては, 中 央 政 府 との 関 係 改 善 の 期 待 できる 予 算 の 承 認 となった なお,クルド 自 治 政 府 のバルザニ 首 相 は2015 年 予 算 の 議 会 承 認 を 称 賛 しながらも, 予 算 の 議 会 承 認 は 大 変 良 いことだ しかし, 不 幸 なことにバグ ダッドはお 金 を 持 っていない (ロイター 通 信 2015 年 1 月 30 日 )と 語 り,イラクが 資 金 的 には 苦 しい 状 態 にあることを 明 らかにした 因 みに,イ ラク 政 府 は2015 年 の 財 政 赤 字 については, 政 府 短 期 証 券, 政 府 債 の 発 行 及 び 国 内 銀 行 借 り 入 れで 賄 う 方 針 である このほかイラク 政 府 は 国 際 通 貨 基 金 (IMF)からのSDRを 活 用 した 借 り 入 れや 輸 入 自 動 車 税 の 導 入, 携 帯 電 話 SIMカード 税 及 びイン ターネット 税 の 導 入 なども 併 せて 実 施 する 予 定 で ある なお,クウェート 政 府 はイラクからの 侵 攻 時 の 損 害 補 償 資 金 の 支 払 いを1 年 猶 予 することに 合 意 している イラクの 当 初 予 算 は1バレル70ドルの 原 油 価 格 を 前 提 として 編 成 されていた しかし,その 後 の 原 油 情 勢 を 検 討 した 結 果,イラク 議 会 はまず60ド ルに 前 提 を 引 き 下 げ,さらに 最 終 的 に56ドルにま 30 中 東 協 力 センターニュース
図 表 2 イラクの 財 政 収 支 の 推 移 (2004~2014 年 ) 暦 年 財 政 収 支 2004 年 18 兆 8,443.4 億 ディナール 2005 年 +2 兆 9,918.5 億 ディナール 2006 年 +10 兆 2,382.4 億 ディナール 2007 年 +8 兆 7,310.4 億 ディナール 2008 年 1 兆 3,434.6 億 ディナール 2009 年 16 兆 5,894.5 億 ディナール 2010 年 6 兆 7,725.3 億 ディナール 2011 年 +10 兆 3,109.9 億 ディナール 2012 年 +10 兆 4,081.0 億 ディナール 2013 年 15 兆 8,240.5 億 ディナール 2014 年 8 兆 1,816.4 億 ディナール 出 所 : 国 際 通 貨 基 金 (IMF),2014 年 10 月 推 計 で 引 き 下 げる 案 で 落 ち 着 いた 当 初 の 前 提 油 価 が あまりに 非 現 実 的 と 考 えていた 国 会 議 員 には 最 終 的 な 前 提 価 格 は 満 足 のいくものとなった 因 みに, イスラム 国 との 戦 いのための 支 出 が 主 となる 国 防 費 は 歳 出 の 約 20%を 占 めている なお,イラク 戦 争 後 の 同 国 の 財 政 収 支 実 績 は 図 表 2の 通 りである 原 油 価 格 の 下 落 分 を 埋 め 合 わせるためなのか, 国 際 エネルギー 機 関 (IEA)が1 月 16 日 に 発 表 し た 石 油 市 場 月 報 によれば,イラクの 月 間 平 均 産 油 量 は2014 年 12 月 には 日 量 29 万 バレル 増 の 同 370 万 バレル,1979 年 以 来 の 高 水 準 に 達 している 実 に35 年 ぶりの 高 水 準 を 記 録 したイラクの 原 油 生 産 量 については,クルド 人 自 治 区 の 供 給 が 増 加 し ていることに 加 えて,シーア 派 住 民 が 大 多 数 を 占 める 南 部 の 油 田 は 今 後 もいわゆる イスラム 国 の 攻 撃 を 受 けにくいと 見 られておりさらに 増 産 が 予 想 される 油 価 下 落 と 経 済 制 裁 の 継 続 で 苦 慮 するイラン そのイランのアリ タイイブニア 財 政 経 済 相 は 2015 年 1 月 26 日, 仮 に 経 済 制 裁 が 解 除 されればイ ランは8% 超 の 実 質 経 済 成 長 ができる 但 し,こ の 目 標 を 達 成 するには,イランの 持 つあらゆる 経 済 力 を 活 用 する 必 要 がある (テヘラン タイムズ 2015 年 1 月 26 日 )と 述 べ,イラン 経 済 の 先 行 きに 自 信 を 見 せた イラン 中 央 銀 行 の 発 表 によれば, 2014 年 上 半 期 の 国 内 総 生 産 (GDP) 成 長 率 は4% を 記 録 している だがイランは 米 欧 による 経 済 制 裁 に 加 えて 原 油 価 格 が 半 減 したことから 大 きな 打 撃 を 受 けてい る それでもアリ タイイブニア 財 政 経 済 相 は1 月 18 日, 現 下 のところ, 油 価 は 変 動 しているので 予 測 は 不 可 能 である それ 故, 政 府 は 如 何 なる 事 態 にも 対 応 できるようにしている 仮 に 油 価 が25 ドルに 下 落 しても 何 ら 問 題 はないが, 我 が 国 は 2015 年 度 の 予 算 の 策 定 に 当 たっては 原 油 価 格 が40 ドルという 悲 観 シナリオ,50ドルという 中 庸 シナ リオ,70ドルという 楽 観 シナリオの3 通 りを 想 定 している ( 同 上 2015 年 1 月 20 日 )と 語 り,2015 年 度 予 算 については 状 況 を 見 ながら 柔 軟 に 最 終 判 断 する 考 えを 示 した このように 政 府 高 官 の 強 気 の 発 言 の 続 くイラン だが,ロンドンとテヘランで 活 動 する 投 資 会 社 ACL の 設 立 パートナーであるアミル アリ アミ リ 氏 は, 経 済 現 状 について 次 のように 分 析 してい る 1 原 油 価 格 の 下 落 はイランの 短 期 的 将 来 にとっ て 懸 念 材 料 である 2 イランは 経 済 不 振 の 中 にあり, 経 済 制 裁 と 低 油 価 のために 投 資 家 の 信 頼 は 落 ちている 3 民 間 ビジネス 界 は 流 動 性 の 確 保 に 必 死 で 多 く の 不 確 実 性 がある 4 テヘラン 株 式 市 場 では 取 引 量 がかなり 落 ち 込 んでいる 5 現 在 は 核 交 渉 がどうなるのか 見 極 めようとの 姿 勢 に 終 始 している (http://www.bbc.com/news/world-middleeast-31116440) 31 中 東 協 力 センターニュース
実 際 イラン 国 内 外 の 同 国 経 済 の 専 門 家 は2015 年 の 石 油 輸 出 額 が2011 年 時 の4 分 の1 程 度 の200~ 250 億 ドルと 見 ている また2016 年 の 石 油 輸 出 額 は さらに 下 がると 見 ている このため 主 要 な 支 出 計 画 は 凍 結 されており, 省 庁 の 中 には 予 算 を 削 減 さ れたところも 少 なくない 専 門 家 たちは 補 助 金 改 革, 徴 税 強 化, 民 営 化 で 対 応 する 以 外 にないと 見 るが 何 れも 副 作 用 は 避 けられない イランでは 燃 料 及 び 食 料 品 価 格 の 引 き 上 げと 付 加 価 値 税 の 引 き 上 げが 検 討 されており,2014 年 12 月 以 降 だけでパ ンの 価 格 が30%も 上 昇 しているのはその 先 駆 けと 見 られる ところでイラン 政 府 のムハンマド バケル ノ バクゥト 報 道 官 は1 月 24 日, イラン 政 府 は2015 年 度 (2015 年 3 月 21 日 ~2016 年 3 月 20 日 )の 石 油 収 入 が400 億 ドル 以 下 でもやっていくことができる これは 抵 抗 経 済 の 枠 組 みの 中 で 達 成 が 可 能 であ る 石 油 はイラン 経 済 にとって 決 定 的 な 役 割 を 果 たしている それ 故, 石 油 収 入 を 国 民 経 済 におい て 過 小 評 価 してはならず, 我 々はより 効 率 的 に 石 油 収 入 を 活 用 しなければならない ( 同 上 2015 年 1 月 24 日 )と 語 り, 油 価 急 落 で 減 少 する 石 油 収 入 を 効 率 的 に 使 用 していく 必 要 性 を 強 調 した イランは 米 欧 による 経 済 制 裁 の 中 にあったもの の,それでも 近 年 の 石 油 収 入 は550 億 ドルから600 億 ドルに 達 していた 従 って,ムハンマド バケ ル ノバクゥト 報 道 官 の 言 及 した400 億 ドルという 石 油 収 入 はその7 割 弱 から7 割 強 に 過 ぎないこと になる また 同 報 道 官 が 言 及 した 抵 抗 経 済 は,アヤ トラ アリ ハメネイ 最 高 指 導 者 が2014 年 2 月 に 発 出 した 勅 令 の 中 で 説 明 したもので, 知 識 基 盤 の 製 品 の 生 産 輸 出 の 強 化, 戦 略 的 商 品 の 国 内 生 産 の 拡 大, 近 隣 諸 国 市 場 の 開 発 が 主 な 柱 を 構 成 して いる 抵 抗 経 済 がそれなりに 実 績 を 上 げつつあ るのは 事 実 である 2014 年 3~12 月 の10ヵ 月 間 で コンデンセート, 石 油 化 学, 非 石 油 輸 出 が 合 計 420 億 ドルと 前 年 同 期 比 24% 増 となっていることがそ のことを 端 的 に 示 している しかし, 昨 秋 以 降 の 原 油 価 格 の 急 落 が,インフ レを 抑 制 しイラン 通 貨 を 安 定 化 するなど 混 乱 して いたイラン 経 済 に 落 ち 着 きを 取 り 戻 したロウハニ 大 統 領 の 実 績 を 危 ういものにしかねないのも 事 実 である イラン 中 央 銀 行 のゴラマリ カムヤブ 副 総 裁 は 2015 年 1 月 25 日,テヘラン 通 信 に イランは 諸 外 国 との 貿 易 決 済 に 際 して, 中 国 元,ユーロ,ト ルコ リラ,ロシア ルーブル, 韓 国 ウォンな どのその 他 通 貨 を 使 用 する イランはその 他 通 貨 の 利 用 に 関 して 幾 つかの 諸 国 と 二 国 間 金 融 協 定 に 署 名 する 可 能 性 を 検 討 している (テヘラン タイ ムズ 2015 年 1 月 26 日 )と 語 り, 外 国 との 貿 易 で 米 ドルでの 決 済 を 停 止 し, 近 い 将 来 に 新 たな 通 貨 との 二 国 間 スワップ 合 意 を 締 結 する 考 えを 明 らか にした 同 副 総 裁 は 二 国 間 通 貨 スワップ 協 定 が 締 結 され ればイランとその 他 諸 国 との 貿 易 経 済 取 引 が 容 易 になると 見 る 米 ドルによる 取 引 決 済 の 比 率 を 引 き 下 げる 試 みはイランが 初 めて 行 ったものでは なく, 例 えば,ロシアと 中 国 は2014 年, 米 ドルの 影 響 力 を 引 き 下 げ 外 国 為 替 に 伴 うリスクを 小 さく するとの 観 点 から 通 貨 のスワップ 協 定 で 合 意 して いる この 動 きは 米 欧 によるイラン 経 済 制 裁 が 続 くなか, 仮 に 近 い 将 来 において 米 国 を 始 めとする 6ヵ 国 (P6)と 核 交 渉 で 合 意 に 達 したとしても, 制 裁 の 完 全 解 除 までには 何 年 も 要 する 見 込 みであ ることから 取 られた 措 置 と 思 われる イラン 国 民 は 原 油 価 格 についてはサウジアラビアなどのその 他 産 油 国 の 意 向 も 働 くことから 致 し 方 ないと 考 え ている 面 がある 但 し, 成 立 すれば 経 済 の 活 性 化 につながるP6との 核 交 渉 については, 条 件 次 第 で は 成 立 する 可 能 性 も 低 くないだけに 期 待 を 持 って 行 方 を 注 視 している 32 中 東 協 力 センターニュース