研 究 ノート 概 要 コンピュータリテラシーにおける WebClass の 活 用 Use of WebClass in the Computer Literacy * 渡 邊 光 太 郎 WATANABE, Kohtaro * e-learning システムは 実 技 科 目 の 学 習 評 価 は 向 いていないといわれている コンピュータリテラシーの 毎 回 の 講 義 で Excel の 課 題 を,e-learning システム(WebClass)を 用 いて 提 供 し, 次 回 講 義 までに 採 点 をし,メッセージをフィードバ ックとして 送 信 した これを WebClass と 自 作 した 試 験 採 点 システムとを 補 完 的 に 用 いておこなった 課 題 の 提 供 を 適 切 に 行 うことで 学 習 効 果 が 向 上 したので 報 告 する 1.はじめに 現 在, 学 生 生 活 や 社 会 人 としてもコンピュータの 活 用 は 必 須 である 本 学 センター 講 座 では,コン ピュータの 活 用 を 促 すためにコンピュータリテラシーⅠ Ⅱ( 前 期 後 期 )を 設 置 している コンピ ュータリテラシーⅠでは, 本 学 情 報 システムの 紹 介 や 基 本 的 な 使 用 方 法, 電 子 メール Web 検 索 など の ICT の 利 活 用,Word や Excel の 基 本 操 作 の 習 得 を,コンピュータリテラシーⅡでは,おもに Excel や PowerPoint の 操 作 方 法 や 各 機 能 を, 実 技 を 通 して 習 得 する しかし,Excel は 多 機 能 であり 基 本 と なる 機 能 だけでもコンピュータ 操 作 に 不 慣 れな 学 生 には 習 得 が 難 しい 特 に,グラフの 作 成 や 関 数 な どはわかりづらい グラフの 作 成 は,どのデータ(セル 範 囲 )を 選 択 するか?グラフツールのデザイ ン レイアウト 書 式 の 各 メニューにどのような 機 能 があるかなど 多 くの 設 定 があり, 覚 えることも 多 い 関 数 は, 関 数 の 種 類 も 豊 富 で, 引 数 をどのように 設 定 するかがわかりづらい また, 本 学 セン ター 講 座 は 学 部 横 断 的 で,コンピュータリテラシーⅡには 経 済 学 部 経 営 学 部 理 学 部 と 社 会 学 系 と 理 系 の 学 生 が 混 在 している また, 本 学 はe-learningシステムとして,WebClassを 採 用 している e-learningシステムはit 系 科 目 や 資 格 系 科 目 には 向 いているが 実 技 科 目 (コンピュータリテラシーⅡでは 主 にExcelの 操 作 )を 学 習 評 価 するのには 向 いていない 1) 大 学 全 入 時 代 を 経 て, 学 生 間 の 学 力 格 差 は 開 き, 講 義 を 行 うに 当 たりこの 程 度 は 理 解 しているだろ うという 前 提 は 崩 壊 している 2) よって 集 団 講 義 だけで 学 生 の 理 解 度 を 向 上 させることは 難 しくなっ てきている 講 義 を 行 うにあたり 予 習 復 習 自 学 習 を 促 すことでその 講 義 に 対 する 学 力 知 識 の 前 提 を 構 築 することは 重 要 である e-learningシステムは 学 習 履 歴 学 習 状 態 が 把 握 でき,この 講 義 前 後 の 学 習 を 促 すのに 適 している しかし,e-learning 教 材 だけでは 如 何 にマルチメディア 教 材 だとしても 飽 きてしまい,モチベーションを 持 続 できずに 学 習 効 果 は 低 い 講 義 とe-learningとを 合 わせたブレン デッドラーニングを 行 うことで 学 習 効 果 の 向 上 が 期 待 できる しかし, 学 生 間 の 学 力 格 差 が 大 きく, * 情 報 科 学 研 究 センター 非 常 勤 講 師 19 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
多 くの 学 生 に 適 した 教 材 をe-learningを 通 して 提 供 するのは 難 しい 学 力 の 高 い,もしくは, 低 い 学 生 には 教 材 のレベルが 適 していないので 学 習 意 欲 が 向 上 しない WebマーケティングのようにOne To Oneとなるような 各 学 生 に 適 した 教 材 を 提 供 することは 必 要 である 学 生 の IT に 対 する 環 境 を 把 握 し, 講 義 ごとの 理 解 度 を 知 り, 学 生 にフィードバックすることで, 学 生 の 理 解 度 の 向 上 と 講 義 に 対 する 満 足 度 の 向 上 を 図 ったので 報 告 する 本 研 究 では,WebClass を 用 いてコンピュータリテラシーで 学 習 する Excel の 各 単 元 において 課 題 演 習 をすることで 学 習 効 果 がどのように 変 化 するか 期 末 試 験 の 結 果 と 比 較 することで 学 習 効 果 を 測 定 し, 講 義 改 善 の 資 料 を 作 成 することを 目 的 とする 2. 実 験 方 法 2.1 実 態 アンケート 学 習 者 の 環 境 を 知 るために WebClass を 用 いて 講 義 1 回 目 終 了 時 から 2 回 目 終 了 時 まで 任 意 に 記 名 式 でアンケートを 行 った WebClass でのアンケート 画 面 を 図 1 に 示 す 図 1 アンケート 画 面 ( 一 部 ) 学 習 者 のコンピュータおよび 携 帯 電 話 の 環 境,インターネット 環 境, 高 校 での 情 報 科 目 など 現 在 ま でにおける 学 習 者 の IT に 関 する 環 境 を 質 問 とした ( 付 録 ) 2.2 講 義 内 課 題 Excel の 各 単 元 (グラフの 作 成, 関 数 1, 関 数 2(IF 関 数 など))について 課 題 データを WebClass を 用 いて 学 生 に 配 布 し, 解 答 後 WebClass で 提 出 する これを 講 義 時 間 内 に 行 った コンピュータリテラ シーⅡの 第 2 回 から 第 10 回 までの 講 義 において,その 時 学 習 した 内 容 を 10 分 から 30 分 程 度 で 解 答 し 提 出 させた WebClass を 用 いて 講 義 開 始 1 時 間 後 以 降 にファイルをダウンロードできるように 設 定 し, 学 習 者 はファイルをダウンロードし, 解 答 後 WebClass でファイルをアップロードし, 提 出 させた e-learningシステムだけではなくクライアント 側 で 処 理 をすることで 機 能 を 補 完 した 試 験 採 点 シス 3) テムの 試 作 を 改 良 し,WebClassのメッセージ 機 能 に 対 応 したメッセージ 作 成 機 能 を 追 加 した 20 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
講 義 内 課 題 の 実 施 手 順 を 表 1 に 示 す 表 1 講 義 内 実 施 手 順 手 順 1 課 題 (Excel ファイル)の 用 意 および 採 点 基 準 の 作 成 教 員 2 WebClass の 設 定 と 課 題 のアップロード 3 WebClass で 課 題 のアップロード 4 学 習 者 課 題 の 解 答 5 WebClass で 解 答 のアップロード 6 WebClass から 学 習 者 の 解 答 のダウンロード 7 試 験 採 点 システムで 採 点 ( 採 点 結 果 ファイルの 生 成 ) 教 員 8 試 験 採 点 ファイルでメッセージファイルの 作 成 9 WebClass でメッセージの 送 信 10 学 習 者 (メッセージの 確 認 ) Excel の 問 題 を 作 成 し, 試 験 採 点 システムで 採 点 基 準 を 設 定 した 配 点 ファイルを 作 成 する 講 義 開 始 までに WebClass の 設 定 ( 日 時 設 定 )と 添 付 ファイル( 課 題 ファイルのアップロード)とを 行 う 講 義 時 間 に 学 習 者 が 課 題 を 解 答 し, 講 義 終 了 後,そのファイルをダウンロードし, 試 験 採 点 システムで 採 点 を 行 う この 採 点 結 果 ファイルを 試 験 採 点 システムで 読 み 込 み,WebClass の 一 括 送 信 メッセージ 用 に CSV 形 式 のファイルを 作 成 する 図 2 に WebClass での 講 義 内 課 題 の 提 供 画 面 を 示 す 図 2 WebClass による 講 義 内 課 題 の 提 供 ( 一 部 ) 21 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
学 習 者 は 添 付 ファイルをクリックし, 講 義 内 課 題 をダウンロードし, 解 答 後, 上 書 き 保 存 し, 参 照 ボタンでそのファイルを 選 択 する レポート 提 出 ボタンをクリックしファイルをアップロードする このファイルは 毎 回 一 括 で 圧 縮 ファイルとしてダウンロードできるので 解 凍 後, 試 験 採 点 システムで 採 点 を 行 う 試 験 採 点 システムによる 採 点 画 面 を 図 3 に 示 す 図 3 試 験 採 点 システムによる 採 点 配 点 ファイルを 開 き, 採 点 ファイルのフォルダボタンをクリックし 学 習 者 が 解 答 した 圧 縮 ファイル を 解 凍 したフォルダ 内 のファイルを 選 択 する フォルダ 内 の Excel ファイルがすべて 開 く 採 点 結 果 を 記 録 するファイルを 新 規 に 作 成 し, 採 点 ボタンをクリックすると 採 点 を 開 始 する 採 点 後 保 存 ボタ ンをクリックすると 記 録 ファイルに 採 点 結 果 が 記 録 される コメントボタンをクリックすると WebClass 用 のメッセージ 作 成 フォームが 表 示 される メッセージ 作 成 フォームを 図 4 に 示 す 22 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
図 4 メッセージ 作 成 フォーム 参 照 ボタンで 採 点 結 果 を 記 録 したファイルを 選 択 する 件 名 にメッセージの 件 名 を 入 力 し, 評 価 の 基 準 として 点 数 を 入 力 しその 点 数 以 上 の 場 合 のメッセージを 入 力 する 評 価 A を 0 点 以 上 とすれば 全 員 同 じメッセージとなる 評 価 B を 0 点 以 上 とすると 2 種 類 のメッセージとなる 3 通 りのメッセー ジを 一 括 で 作 成 することが 可 能 である メッセージを 入 力 したら CSV 作 成 ボタンで WebClass の 一 括 メッセージ 用 CSV ファイルを 作 成 する 図 5 にメッセージ 用 CSV ファイルを 示 す 図 5 WebClass の 一 括 メッセージ 用 CSV ファイル( 一 部 ) to が 宛 先 (WebClass のユーザ ID)なので 学 籍 番 号 である これは 提 出 ファイルのファイル 名 から 抽 出 している subject はメッセージの 件 名 で 全 員 同 一 である message は 本 文 で 採 点 結 果 によって 3 通 23 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
りの 設 定 ができる この CSV ファイルを WebClass で 読 み 込 みメッセージを 一 括 送 信 する WebClass でのメッセージ 送 信 画 面 を 図 6 に 示 す 図 6 WebClass のメッセージ 一 括 送 信 参 照 ボタンで CSV ファイルを 指 定 し, 送 信 ボタンでメッセージの 確 認 後,メッセージを 送 信 する この 手 順 は 問 題 が 作 成 できていれば, 学 習 者 の 解 答 ファイルのダウンロードからメッセージの 送 信 まで 数 分 から 十 数 分 程 度 で 完 了 するので 毎 回 の 講 義 で 課 題 を 行 っても 多 くの 労 力 は 必 要 ない 24 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
コンピュータリテラシーⅡの 第 1 回 から 第 9 回 までの 講 義 内 容 と 講 義 内 課 題 を 表 2 に 示 す 表 2 講 義 内 容 と 講 義 内 課 題 講 義 内 容 課 題 1.ガイダンス 復 習 教 科 書 4) ( 演 習 1) 2.ホーム( 書 式 5 関 数 ) ホームメニュー( 書 式 や 関 数 ) 3. 関 数 1(5 関 数 その 他 の 関 数 ) 関 数 4.グラフ グラフ 5.グラフ 応 用 グラフ 応 用 6.IF 関 数 と 条 件 付 き 書 式 IF 関 数 7.IF 関 数 2(AND OR 関 数 ) 文 字 列 関 数 関 数 の 入 れ 子 8.DB( 並 べ 替 え フィルタ)テーブル データメニュー 9. 関 数 3(VLOOKUP 関 数 IFERROR 関 数 など) VLOOKUP 関 数 講 義 内 課 題 は, 第 1 回 目 以 外 は Excel ファイルに 問 題 文 ものせた コンピュータリテラシーⅡを 9 クラス 担 当 しているので, 理 解 度 が 低 い 学 生 の 演 習 を 任 意 とするク ラス, 演 習 を 提 出 としたクラス, 課 題 を 前 回 の 課 題 の 理 解 度 によって 変 更 するクラスの 3 パターンに 3 クラスずつ 割 り 当 てて 行 った 表 3 にクラスと 講 義 内 課 題 の 実 施 の 仕 方 を 示 す 表 3 講 義 内 課 題 の 実 施 実 施 クラス 違 い 金 曜 日 2 3 4 時 限 教 科 書 の 演 習 をやってみてください 火 曜 日 3 4 時 限, 水 曜 日 2 時 限 教 科 書 の 演 習 を 解 答 後, 提 出 してください 水 曜 日 3 4 5 時 限 A B C レベルに 課 題 を 分 ける 金 曜 日 2~4 時 限 は, 講 義 内 課 題 の 採 点 結 果 が 良 くなかった 学 習 者 にメッセージで, 教 科 書 の 演 習 を 行 うように 促 す 程 度 だが, 火 曜 日 3 4 時 限 と 水 曜 日 2 時 限 は 提 出 するようにメッセージで 指 示 した しかし, 提 出 しない 場 合 のペナルティは 設 定 しなかった 水 曜 日 3~5 時 限 は, 講 義 第 4 回 目 以 降, 前 回 の 課 題 が 出 来 ていた 学 習 者 は C のファイルを 解 答, 前 回 欠 席 または 違 うファイルを 提 出 した, 結 果 が 良 くなかった 学 習 者 は A のファイルを 解 答 するようにメッセージで 指 示 した 水 曜 日 3~5 時 限 以 外 は 複 数 のワークシートで 問 題 数 もあるが, 時 間 内 での 学 習 とし, 提 出 をさせた このファイルを 分 割 し 1 ワークシートとして 水 曜 日 3~5 時 限 はレベル 分 けをした 25 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
3. 実 験 結 果 および 考 察 3.1 アンケート 集 計 コンピュータリテラシーⅡの 第 1 回 講 義 終 了 時 から 第 2 回 講 義 終 了 時 までに 学 習 者 の IT 環 境 を 知 る ために WebClass でのアンケートを 実 施 した 図 7 にアンケートへの 回 答 率 をクラス 別 に 示 す 図 7 クラス 別 回 答 率 アンケートへの 回 答 は 任 意 としたため 回 答 率 が 低 いクラスもあるが, 全 体 では 第 1 回 目 の 講 義 出 席 者 336 名 中 169 名 で 50.3%の 回 答 率 となった 図 8 に 学 習 者 の PC の 所 有 状 況 を 示 す 図 8 学 習 者 の 自 宅 での PC 環 境 (N=169) 26 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
80% 以 上 (141 名 )の 学 習 者 が PC を 所 有 し,インターネットの 環 境 も 備 えていることがわかる 自 宅 に PC があれば 講 義 の 復 習 が 可 能 であるが,WebClass を 用 いることを 考 えればインターネット への 接 続 環 境 が 必 要 である 自 宅 に PC はあるがインターネットへの 接 続 をしていない 学 習 者 も 4%( 7 名 )いる USB メモリなどのメディアを 通 じれば 大 学 でデータをダウンロードし, 持 ち 帰 ればいいが, 講 義 毎 の 学 習 環 境 としては 難 しいかも 知 れない 図 9 に 自 宅 での PC の 利 用 者 環 境 を 示 す 図 9 PC の 利 用 者 環 境 (N=148) 自 宅 での PC の 保 有 者 (148 名 )について 自 宅 での 主 な PC 利 用 者 が 誰 か 設 問 した 学 習 者 専 用 と 主 に 学 習 者 が 使 用 とを 合 わせると 80% 以 上 (108 名 )で, 自 宅 での 学 習 に 支 障 はないと 考 えられる 27 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
自 宅 で 学 習 するための 時 間 が 確 保 できるかアルバイトと 部 活 動 サークル 活 動 についてのアンケー ト 結 果 を 図 10 に 示 す 図 10 放 課 後 の 活 動 (N=168) アンケート 項 目 の 設 問 13 および 設 問 14 をクロス 集 計 して 求 めた 放 課 後 何 らかの 活 動 をしている 学 習 者 が 66%(111 名 )であり,アルバイトや 部 活 動 の 頻 度 や 通 学 時 間 などにもよるので 一 概 には 言 えないが, 多 くの 学 習 時 間 をとることは 難 しいと 考 えられる PC を 初 めて 利 用 した 時 期 を 図 11 に 示 す 図 11 PC の 初 利 用 時 期 (N=168) 小 学 生 またはそれ 以 前 に PC を 利 用 したことがある 学 習 者 が 67%(112 名 )と 多 い 学 習 者 の 多 くが 28 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
PC を 初 めて 利 用 してから 5 年 以 上 たっていることがわかる 小 学 校 中 学 校 での 授 業 で 触 れただけと いう 学 習 者 もいれば, 幼 い 時 から PC が 自 宅 にあるという 学 習 者 もいると 考 えられるので 一 概 にはい えないが PC へのアレルギーのようなものは 少 ないと 考 えられる 高 校 での 情 報 科 目 を 図 12 に 示 す 図 12 高 校 での 情 報 科 目 (N=125) アンケートの 設 問 16 で 出 身 高 校 について 回 答 してもらっているので, 普 通 科 卒 業 の 学 習 者 について 質 問 した コンピュータリテラシーⅡは, 経 済 学 部, 経 営 学 部 が 履 修 しているので 商 業 科 卒 業 の 学 習 者 もいると 考 え 別 の 設 問 を 用 意 した 多 くの 学 習 者 が 情 報 Aを 高 校 時 に 受 講 したと 考 えられる 情 報 A は 表 計 算 やプレゼンテーションなどのソフトウェアを 実 習 するので, 操 作 の 基 礎 はできていると 考 え られる 5 )6) 29 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
3.2 試 験 結 果 コンピュータリテラシーⅡの 最 終 講 義 日 に 試 験 を 行 った 試 験 得 点 の 分 布 を 図 13 に 示 す 図 13 試 験 得 点 分 布 (N=386) 横 軸 の 得 点 は 0 点 以 上 10 点 未 満 を 0 とした 10 点 未 満 の 学 習 者 はいない 平 均 得 点 は 61.9 点 とな った この 試 験 得 点 は 試 験 の 採 点 結 果 で 成 績 点 ではない 平 均 点 近 くの 得 点 が 一 番 多 い 形 とはならな かった 低 い 得 点 のグループと 高 い 得 点 のグループとみることもでき, 学 力 差 があることがあること が 考 えられる クラスごとの 平 均 点 の 分 布 を 図 14 に 示 す 図 14 クラス 別 平 均 点 30 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
クラスは 曜 日 と 時 限 を 表 す 火 曜 日 3 時 限 4 時 限 水 曜 日 2 時 限 は 講 義 内 課 題 で 出 来 なかった 学 習 者 に 教 科 書 の 演 習 問 題 を 解 答 後, 提 出 を 促 したクラス, 金 曜 日 2 時 限 3 時 限 4 時 限 は 演 習 問 題 を 任 意 としたクラスである 水 曜 日 3 時 限 4 時 限 5 時 限 は 講 義 内 課 題 をレベル 分 けして 出 題 したクラス である 午 前 中 (2 時 限 )だと 成 績 が 悪 いなどの 時 間 帯 による 得 点 の 違 いや 曜 日 による 得 点 の 違 いは 見 られなかった 講 義 内 課 題 の 実 施 方 法 別 の 得 点 分 布 を 図 15 に 示 す 図 15 実 地 方 法 別 得 点 分 布 水 は 水 曜 日 3 時 限 4 時 限 5 時 限 のクラス, 火 + 水 2 は 火 曜 日 3 時 限 4 時 限 水 曜 日 2 時 限 のク ラス, 金 は 金 曜 日 2 時 限 3 時 限 4 時 限 のクラスである 平 均 得 点 はそれぞれ 63.5 60.3 61.8 と 水 が 一 番 良 い 得 点 となった 他 のクラスに 比 べ, 水 の 3 クラスは 講 義 内 課 題 の 問 題 数 は 少 ない より 多 くの 問 題 を 行 った 火 + 水 2 や 金 のほうが 良 い 得 点 となるとも 考 えられるが, 学 習 者 に 適 した 問 題 を 解 答 することが, 学 習 効 果 が 高 いと 考 えられる 演 習 の 提 出 は 対 象 者 をあまり 多 くしなかったことによ り 効 果 がみられなかった 31 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
コンピュータリテラシーⅡは 学 部 横 断 的 講 義 であるので, 学 部 別 の 平 均 点 を 図 16 に 示 す 図 16 学 部 別 平 均 点 Excel( 表 計 算 )による 試 験 なので 理 学 部 ( 数 学 科 )の 平 均 点 が 高 い また, 経 営 学 部 は 1 年 次 に 他 の 科 目 でコンピュータの 操 作 を 行 っているようなので,より 多 く Excel の 操 作 を 行 っているが 経 済 学 部 とそれほど 変 わらない 結 果 となった 水 のクラスに 理 学 部 が 多 くいたことも 考 えられるので, 講 義 内 課 題 の 実 施 方 法 別 の 学 部 の 比 率 を 図 17 に 示 す 図 17 実 施 方 法 と 学 部 水 のクラスに 理 学 部 が 多 くないことがわかる これによりも, 適 した 問 題 を 解 答 することが, 学 習 32 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
効 果 が 高 いとわかる 3.3 アンケート 結 果 と 試 験 得 点 アンケート 結 果 と 試 験 得 点 とから 学 習 者 の 環 境 で 何 がコンピュータリテラシーの 習 得 に 影 響 するか 検 討 してみた アンケート 結 果 と 試 験 得 点 の 分 布 を 図 18 に 示 す 図 18 アンケート 結 果 と 試 験 得 点 分 布 全 体 が 試 験 を 受 験 した 学 習 者 の 試 験 得 点 分 布 である PC 所 有 は,アンケートの 設 問 4 の PC ありと 答 えた 学 習 者 の 試 験 得 点 分 布 で, 専 有 度 が 設 問 5 の 自 分 専 用 または 主 に 自 分,ネットが 設 問 7 の 2 時 間 以 内 または 2 時 間 以 上,PC 歴 は 設 問 15 の 中 学 生 未 満, 自 由 時 間 は 設 問 13 と 設 問 14 共 にしていな いと 答 えた 学 習 者 の 試 験 得 点 分 布 である 0 が 0 点 以 上 20 点 未 満 と 階 級 を 20 点 とした いずれの 分 布 も 全 体 に 比 べて 高 得 点 側 に 分 布 されていることがわかる 平 均 点 も 全 体 に 比 べ 6.4~10.7 点 高 くなっ ているので,どの 項 目 も 試 験 点 に 影 響 していると 考 えられる しかし,アンケートの 回 答 率 は 50.3% と 半 分 程 度 なので, 回 答 した 学 習 者 は 講 義 への 参 加 意 欲 が 強 いとも 考 えられる その 中 でもこれらの 項 目 は 元 々コンピュータへの 興 味 がある 学 習 者 ともいえるので 試 験 得 点 も 高 いとも 考 えられる 次 年 度 以 降 での 継 続 した 検 討 が 必 要 である 33 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
4.まとめ WebClassを 用 いて,アンケートを 実 施, 講 義 内 課 題 の 配 布 提 出 メッセージの 送 信, 試 験 データ の 配 布 提 出 を 行 い, 試 験 得 点 とアンケート 項 目 や 試 験 得 点 と 講 義 内 課 題 の 実 施 方 法 との 関 係 を 検 討 した アンケートは 全 員 回 答 とはならなかったので 課 題 を 残 したが, 学 習 者 の 環 境 を 知 ることで 教 材 の 提 供 や 作 成 の 資 料 とすることができた また, 多 くの 演 習 を 行 うことで 学 習 効 果 が 上 がるものと 考 えていたが 適 切 な 演 習 を 行 うことが 重 要 であることもわかった 事 前 テストによるクラス 分 けによる 7) 教 育 効 果 も 考 えられるが,クラス 分 けした 場 合 でもそのクラス 内 での 学 習 者 の 学 力 格 差 がある 本 センター 講 座 のコンピュータリテラシーⅡはクラス 分 けを 行 わず, 演 習 中 に 学 力 の 高 い 学 習 者 が 他 の 学 習 者 に 教 える 場 面 も 見 られた 教 えるほうも 教 わるほうも 学 習 効 果 が 高 いと 思 われ,それに 加 え 学 習 者 ごとに 適 切 な 問 題 を 行 えることでより 学 習 効 果 を 高 められると 思 われる コンピュータリテラシーⅡでは,これ 以 外 にも 出 席 の 確 認 講 義 用 資 料 データの 配 布 授 業 アンケ ートなどで WebClass を 活 用 している しかし, 講 義 内 課 題 の 採 点 やメッセージの 作 成 など WebClass だけでは 難 しいことは, 他 のツールで 補 う 必 要 がある 参 考 文 献 1) 日 本 イーラーニングコンソシアム,e ラーニング 白 書 2008/2009 年 版, 東 京 電 機 大 学 出 版 局,(2008) 2) 金 子 元 久, 大 学 の 教 育 力 何 を 教 え 学 ぶか, 筑 摩 書 房,(2010) 3) 渡 邊 光 太 郎, 城 西 情 報 研 究,18 号,15-24,(2008) 4) 渡 邊 光 太 郎 望 陀 芙 美 子,PC の 基 礎 コンピュータリテラシー, 学 術 図 書 出 版 社,(2010) 5) 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領, 文 部 科 学 省,http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/990301d/990301k.htm 6) 岡 本 敏 雄 ほか, 最 新 情 報 A, 実 教 出 版 株 式 会 社,(2010) 7) 山 下 泰 生 陳 那 森 窪 田 八 州 洋, 関 西 国 際 大 学 研 究 紀 要, 第 11 号,77-87,( 2010) 34 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
付 録 学 生 実 態 アンケート 設 問 1 設 問 2 設 問 3 設 問 4 設 問 5 設 問 6 設 問 7 設 問 8 設 問 9 設 問 10 現 時 点 についてお 尋 ねします このアンケートには パソコン 携 帯 電 話 (iphoneなどのスマートフォンを 含 む)どちらからお 答 えしていますか 1.パソコン 2. 携 帯 電 話 なぜ パソコンからアクセスしましたか? 最 も 当 てはまる 理 由 をお 選 びください 1.たまたまパソコンを 利 用 していたから 2.パソコンの 方 が 使 いやすいから 3. 携 帯 電 話 を 利 用 していないから 4. 携 帯 電 話 だとパケット 代 が 気 になるから 5.その 他 なぜ 携 帯 電 話 からアクセスしましたか? 最 も 当 てはまる 理 由 をお 選 びください 1.たまたま 携 帯 電 話 を 利 用 していたから 2. 携 帯 電 話 の 方 が 使 いやすいから 3.パソコンをもっていないから または パソコンでインターネット 接 続 する 環 境 がないから 4.パケット 定 額 サービス(パケホーダイなど)に 加 入 しているから 5.その 他 現 在 のパソコン インターネットの 利 用 環 境 についてお 尋 ねします ご 自 宅 ( 大 学 への 通 学 時 のお 住 まい)にパソコンはありますか? 1.ある インターネットも 使 える 2.ある インターネットは 使 えない 3.ない その 利 用 環 境 は 以 下 のどれに 該 当 しますか? 1. 自 分 専 用 で 利 用 している 2. 主 に 自 分 で 使 用 するが 家 族 ( 兄 弟 など)と 共 有 している 3. 主 に 家 族 (ご 両 親 など)が 使 用 するが 自 分 も 使 用 する 4.その 他 その 利 用 環 境 は 主 にどのようなことに 利 用 していますか?3つ 以 内 で 選 択 してください 1.インターネット(メールやWebサイト 閲 覧 ) 2 音 楽 のダウンロード.3. 動 画 サイトの 閲 覧 (YouTubeなど) 4. 動 画 の 閲 覧 (DVDなど) 5.ブログやTwitter SNS(mixiなど)の 利 用 6.WordやExcel(レポートなどの 課 題 ) 7. 大 学 情 報 の 閲 覧 (シラバスやJUNaviなど) 8.ゲーム 9.その 他 その 利 用 環 境 は 一 日 平 均 だいたいどの 位 利 用 しますか? 1.0 時 間 (ほとんど 利 用 しない) 2.30 分 以 内 (あまり 利 用 しない) 3.30 分 ~1 時 間 4.1 時 間 ~2 時 間 5. 数 時 間 (2 時 間 以 上 ) 現 在 携 帯 電 話 (スマートフォン iphone 等 を 含 む)についてお 尋 ねします 携 帯 電 話 でインターネット(i-mode EZWeb Yahoo!ケイタイなど)を 利 用 しますか? 1. 利 用 する 携 帯 電 話 2. 利 用 する スマートフォン(iPhoneやブラックベリー IS01など) 3. 利 用 しない (ほとんど 利 用 しないも 含 む) 4. 携 帯 電 話 をもっていない 携 帯 電 話 からインターネットを 利 用 するのはなぜですか? 1.パソコンより 携 帯 電 話 の 方 が 利 用 しやすいから 2. 携 帯 電 話 用 の 音 楽 や 画 像 のダウンロードが 多 いから 3. 外 出 先 など パソコンがない 環 境 でよくインターネットを 利 用 するから 4.パソコンが 自 宅 にないから 5.その 他 現 在 携 帯 電 話 ではパケット 定 額 サービス(パケホーダイなど)を 利 用 していますか? 1. 利 用 している 2. 利 用 していない 3.わからない 35 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b
設 問 11 インターネット(メールやWebサイト 閲 覧 など)を 利 用 する 場 合 主 にパソコンと 携 帯 電 話 のどちらを 利 用 しますか? 1.パソコン 2. 携 帯 電 話 設 問 12 パソコンやインターネット 以 外 の 環 境 についてお 尋 ねします 答 えたくない 場 合 は 無 回 答 を 選 択 してください 現 在 大 学 への 通 学 はどこからですか? 1. 自 宅 ( 家 族 などと 同 居 ) 2. 一 人 暮 らし 3. 寮 4.ルームシェア 5. 無 回 答 6.その 他 設 問 13 現 在 アルバイトはしていますか? 1.アルバイトをしている 2.アルバイトをしていない 3. 無 回 答 設 問 14 現 在 部 活 動 やサークル 等 の 活 動 をしていますか? 1. 活 動 をしている ( 所 属 している ) 2. 活 動 をしていない ( 所 属 していない ) 3. 無 回 答 大 学 入 学 以 前 についてお 伺 いします 設 問 15 パソコンを 初 めて 利 用 したのはいつですか? 1. 中 学 生 未 満 ( 小 学 生 の 時 など) 2. 中 学 生 3. 高 校 生 4. 大 学 入 学 してから 5.その 他 設 問 16 出 身 高 校 は 1. 普 通 高 校 もしくは 普 通 科 2.それ 以 外 ( 商 業 総 合 学 科 工 業 など) 3.その 他 設 問 17 高 校 などで 情 報 処 理 に 関 する 授 業 を 履 修 しましたか? 1. 履 修 した 2. 履 修 していない 3.わからない 設 問 18 高 校 で 履 修 した 情 報 科 目 は 次 のうちどれですか? 1. 情 報 A 2. 情 報 B 3. 情 報 C 4.わからない または 忘 れた 5.その 他 設 問 19 コンピュータリテラシーについて 何 かありましたらお 書 きください なんでもよろしいです ( 自 由 記 入 ) ネ ッ ト 放 課 後 の 自 由 時 間 大 学 入 学 以 前 (Received Feb. 21, 2011) 36 城 西 情 報 科 学 研 究 21 巻 1 号 b