金 融 ニューズレター 2009 年 12 月 資 金 決 済 法 及 び 関 連 政 令 内 閣 府 令 案 の 概 要 1. はじめに 本 年 6 月 24 日 資 金 決 済 に 関 する 法 律 ( 以 下 資 金 決 済 法 又 は 単 に 法 といいます )が 公 布 され これによって 一 定 金 額 以 下 の 送 金 業 務 が 銀 行 及 びそれに 準 じる 金 融 機 関 ( 以 下 便 宜 上 銀 行 と 総 称 します ) 以 外 の 企 業 にも 広 く 開 放 されることとなりました 言 い 換 えれば 銀 行 法 等 の 重 い 規 制 に 服 する フルライン バンク 及 び ナロー バンク (セブン 銀 行 等 の 決 済 専 業 銀 行 )の 他 に 送 金 業 務 のみを 行 う 超 ナ ロー バンク ( 資 金 移 動 業 者 )が 資 金 決 済 法 に 基 づく 軽 い 規 制 の 下 で 事 業 を 展 開 することが 認 められることとなりまし た また 現 行 の 前 払 式 証 票 の 規 制 等 に 関 する 法 律 ( 以 下 プリカ 法 といいます )は 資 金 決 済 法 に 吸 収 され プリカ 法 で 規 制 の 対 象 とされていた 紙 型 IC 型 の 前 払 式 支 払 手 段 (プ リペイド カード 等 )に 加 えて サーバ 型 の 前 払 式 支 払 手 段 ( 現 在 一 般 に 電 子 マネー として 利 用 されているもの)について も 資 金 決 済 法 の 下 で 新 たに 規 制 の 対 象 とされることとなりま した 同 法 の 公 布 を 受 けて 既 に 米 ネット 決 済 大 手 の PayPal がわが 国 への 本 格 参 入 の 検 討 を 開 始 した 旨 報 じられており また NTT ドコモが みずほ 銀 行 を 所 属 銀 行 とする 銀 行 代 理 業 ( 銀 行 法 52 条 の 36 以 下 )の 許 可 を 取 得 した 上 で 1 か 月 2 万 円 を 限 度 に 相 手 の 携 帯 番 号 を 指 定 するだけで 送 金 が 可 能 となる ケータイ 送 金 サービス を 開 始 する 等 関 連 業 界 の 動 きも 活 発 になってきています この 資 金 決 済 法 は 本 年 6 月 24 日 から 1 年 以 内 に 別 途 施 行 期 日 政 令 で 定 める 日 に 施 行 されますが 本 年 12 月 7 日 金 融 庁 は 同 法 に 関 連 する 政 令 及 び 内 閣 府 令 案 を 公 表 し 資 金 決 済 法 に 基 づく 関 連 規 制 の 全 貌 が 漸 く 明 らかになりました (なお 金 融 庁 は 本 年 12 月 14 日 事 務 ガイドライン( 第 三 分 冊 : 金 融 会 社 関 係 5 前 払 式 支 払 手 段 発 行 者 関 係 14 資 金 移 動 業 者 関 係 )( 案 ) ( 以 下 当 該 事 務 ガイドライン 第 三 分 冊 の 案 を 事 務 ガイドライン 第 三 分 冊 案 といいます )を 公 表 し パブリック コメント 手 続 に 付 しています ) 関 連 する 政 令 内 閣 府 令 案 についてのパブリック コメントは 来 年 2010 年 1 月 8 日 まで 受 け 付 けられますが 本 ニューズレターでは 資 金 決 済 法 並 びにパブリック コメント 手 続 に 付 された 政 令 案 及 び 内 閣 府 令 案 を 前 提 に 資 金 決 済 法 に 基 づく 関 連 規 制 の 概 要 を 紹 介 することとします 2. 資 金 移 動 業 について (1) 収 納 代 行 等 の 取 扱 い 資 金 決 済 法 の 制 定 前 より コンビニ 等 が 公 共 料 金 等 につい て 行 っている 収 納 代 行 業 務 や 宅 配 業 者 が 行 っている 代 金 引 換 え (いわゆる 代 引 き ) 方 式 による 通 販 商 品 の 配 送 代 金 回 収 業 務 等 については 銀 行 法 により 銀 行 のみが 営 むこ とができるとされている 為 替 取 引 に 該 当 するのではないか と 指 摘 されてきました この 点 判 例 は 為 替 取 引 とは 顧 客 から 隔 地 者 間 で 直 接 現 金 を 輸 送 せずに 資 金 を 移 動 する 仕 組 みを 利 用 して 資 金 を 移 動 することを 内 容 とする 依 頼 を 受 けて これを 引 き 受 けること 又 はこれを 引 き 受 けて 遂 行 する こと ( 最 高 裁 平 成 13 年 3 月 12 日 決 定 (1) )であると 解 してい ますが この 判 示 によっても 上 記 の 収 納 代 行 や 代 引 き サービスが 為 替 取 引 に 該 当 するか 否 かは 必 ずしも 明 らか 本 ニューズレターの 執 筆 者 お お た 太 田 よう 洋 パートナー 弁 護 士 まつした 松 下 よしひで 由 英 アソシエイト 弁 護 士 本 ニューズレターは 法 的 助 言 を 目 的 とするものではなく 個 別 の 案 件 については 当 該 案 件 の 個 別 の 状 況 に 応 じ 弁 護 士 の 助 言 を 求 めて 頂 く 必 要 があります また 本 稿 に 記 載 の 見 解 は 執 筆 担 当 者 の 個 人 的 見 解 であり 当 事 務 所 または 当 事 務 所 のクライ アントの 見 解 ではありません 西 村 あさひ 法 律 事 務 所 広 報 室 ( 電 話 :03-5562-8352 E-mail:info@jurists.co.jp) - 1 -
ではありません 資 金 決 済 法 では 為 替 取 引 を 金 額 によって 区 分 し 一 定 金 額 以 下 の 為 替 取 引 は 軽 い 資 金 移 動 業 の 登 録 を 得 れ ば 営 むことができるとして 規 制 緩 和 が 図 られる 一 方 それより 大 きな 金 額 の 為 替 取 引 については 従 来 通 り 重 い 銀 行 免 許 を 得 ない 限 りは 営 むことができないとする 規 制 が 維 持 さ れました 資 金 決 済 法 施 行 令 案 では この 両 者 を 分 ける 境 界 は 100 万 円 とされ (2) それ 以 下 の 金 額 の 為 替 取 引 であれ ば 資 金 移 動 業 の 登 録 を 得 るだけで 営 むことができるとされ ています 以 上 のような 規 制 の 整 理 がなされた 結 果 資 金 移 動 の 金 額 が 例 え 1 円 であっても 為 替 取 引 に 当 たることが 明 確 化 され た 一 方 1 原 因 取 引 に 付 随 して 行 われる 資 金 移 動 や 2 回 収 を 行 う 者 が 代 理 受 領 権 限 を 有 する 場 合 の 当 該 代 理 受 領 に 伴 う 資 金 移 動 が 為 替 取 引 に 該 当 するか 否 かは 従 来 通 り 解 釈 に 委 ねられることとなりました しかしながら 立 法 の 経 緯 に 鑑 みれば 銀 行 業 の 許 可 や 資 金 移 動 業 の 登 録 なしに 収 納 代 行 業 務 や 代 引 き サービスを 行 っても 監 督 当 局 がこれらを 問 題 視 することは 非 常 に 考 えにくいと 思 われます もっとも 収 納 代 行 業 者 や 代 引 き サービスを 行 う 業 者 が 資 金 移 動 業 の 登 録 を 取 得 すること 自 体 は 何 ら 禁 じられていない ので 資 金 決 済 法 の 施 行 後 は これらの 業 者 の 中 から お 墨 付 き 効 果 に 基 づく 他 の 業 者 との 差 別 化 等 を 狙 って 資 金 移 動 業 の 登 録 を 取 得 する 動 きが 出 てくることも 十 分 に 予 想 さ れるところです なお 資 金 移 動 業 の 登 録 を 取 得 した 場 合 には 資 金 移 動 に 関 与 する 場 合 に 従 前 から 問 題 とされてきた 出 資 法 上 の 預 り 金 規 制 との 関 係 でも 資 金 移 動 サービスに 当 然 に 附 随 する 限 度 であればかかる 規 制 の 対 象 外 と 解 されることになると 思 わ れ この 点 でも 従 来 の 法 的 リスクの 払 拭 が 可 能 となります (2) 資 金 移 動 業 者 の 登 録 もっとも 資 金 移 動 業 の 登 録 を 行 うことができる 主 体 は 株 式 会 社 又 は 国 内 に 営 業 所 を 有 する 外 国 会 社 に 限 られており ( 法 40 条 1 項 1 号 ) 公 益 法 人 や 一 般 社 団 法 人 は 登 録 を 受 けることができません この 点 で 公 益 法 人 や 一 般 社 団 法 人 でも 登 録 が 可 能 とされている 後 述 の 第 三 者 型 前 払 式 支 払 手 段 の 発 行 者 についての 登 録 規 制 ( 法 8 条 1 項 1 号 10 条 参 照 )と 異 なります また 日 本 国 内 に 営 業 所 を 有 しない 外 国 会 社 ( 例 えば ネット 決 済 会 社 )が 資 金 移 動 業 の 登 録 を 受 けるこ ともできません (3) 履 行 保 証 金 の 保 全 資 金 移 動 業 者 には 1 か 月 以 内 の 期 間 で 内 閣 府 令 が 定 め る 期 間 毎 に 分 配 費 用 を 含 む 滞 留 資 金 の 100%の 額 ( 要 履 行 保 証 額 ) 以 上 の 履 行 保 証 金 を 保 全 すべき 義 務 が 課 されていま す( 法 43 条 ) その 保 全 の 方 法 は 原 則 的 には1 供 託 です が その 場 合 上 記 期 間 における 要 供 託 額 以 上 の 額 の 保 証 金 を その 期 間 の 末 日 から 1 週 間 以 内 に 本 店 の 最 寄 りの 供 託 所 に 供 託 すべきものとされています( 法 43 条 1 項 ) この 他 保 全 の 方 法 としては 2 信 託 会 社 等 との 間 で 履 行 保 証 金 信 託 契 約 を 締 結 する 方 法 が 認 められており 資 金 移 動 サービ スの 国 内 における 利 用 者 を 信 託 財 産 の 元 本 の 受 益 者 とする こと 及 び 受 益 者 代 理 人 を 置 いていること 等 を 内 容 とする 信 託 契 約 を 締 結 することにより 供 託 に 代 えることが 可 能 とされて いますが 信 託 法 の 改 正 によって 新 たに 利 用 可 能 となった 自 己 信 託 の 方 法 は 保 全 の 方 法 としては 認 められていません 信 託 会 社 等 に 支 払 うコスト 等 の 関 係 で この 点 は 将 来 の 見 直 しの 際 の 課 題 であると 思 われます この 他 の 保 全 の 方 法 とし ては 3 銀 行 との 間 で 履 行 保 証 金 保 全 契 約 を 締 結 する 方 法 が 認 められています 資 金 移 動 業 者 府 令 案 11 条 1 項 では 上 記 1 か 月 以 内 の 期 間 は 1 週 間 と 定 められました 従 って この 府 令 案 が 確 定 す れば 資 金 移 動 業 者 は 1 週 間 毎 に 履 行 保 証 金 額 を 算 定 した 上 で 次 の 1 週 間 の 間 に 要 履 行 保 証 額 を 供 託 しなければなら ないことになります (4) 資 金 移 動 業 者 の 義 務 資 金 移 動 業 者 が 登 録 を 受 けた 場 合 その 義 務 として 1 情 報 の 安 全 管 理 措 置 を 講 じるべき 義 務 ( 法 49 条 ) 2 資 金 移 動 業 を 第 三 者 に 委 託 した 場 合 の 委 託 業 務 の 適 正 且 つ 確 実 な 遂 - 2 -
行 を 確 保 するために 必 要 な 措 置 を 講 じるべき 義 務 ( 法 50 条 ) 並 びに3 利 用 者 の 保 護 等 に 関 する 措 置 として (a) 銀 行 等 が 行 う 為 替 取 引 との 誤 認 を 防 止 するための 説 明 (b) 手 数 料 その 他 の 資 金 移 動 業 に 係 る 契 約 の 内 容 についての 情 報 の 提 供 及 び(c)その 他 の 必 要 な 措 置 を 講 じるべき 義 務 を 負 うもの とされています( 法 51 条 ) その 裏 面 として これらの 遵 守 の ために 必 要 な 体 制 の 整 備 や 資 金 移 動 業 の 遂 行 のための 体 制 整 備 等 が 行 われていない 等 の 場 合 には 登 録 が 拒 否 される ものとされ( 法 40 条 1 項 4 号 5 号 ) 登 録 後 に 必 要 な 体 制 整 備 を 欠 いていた 場 合 には 登 録 取 消 事 由 に 該 当 するものとさ れています( 法 56 条 1 項 1 号 ) 上 記 の 具 体 的 な 内 容 として 資 金 移 動 業 者 府 令 案 では 上 記 1 所 定 の 情 報 の 管 理 に 関 しては 資 金 移 動 業 に 係 る 電 子 情 報 処 理 組 織 の 管 理 を 十 分 に 行 うための 措 置 ( 府 令 案 24 条 ) 及 び 個 人 利 用 者 情 報 の 漏 えい 等 の 防 止 を 図 るための 措 置 ( 府 令 案 25 条 )を 講 じることが 上 記 2 所 定 の 委 託 業 務 関 連 では 委 託 業 務 を 適 切 且 つ 確 実 に 遂 行 することができる 能 力 を 有 する 者 に 委 託 するための 措 置 等 を 講 じること( 府 令 案 27 条 参 照 )が それぞれ 求 められています また 資 金 移 動 業 者 府 令 案 では 上 記 3(c) 所 定 のその 他 の 措 置 として 犯 罪 行 為 が 行 われた 疑 いがあると 認 める 場 合 に 当 該 為 替 取 引 の 停 止 等 を 行 う 措 置 及 びインターネットによる 利 用 者 が 資 金 移 動 業 者 と 他 の 者 を 誤 認 することを 防 止 するための 措 置 等 が 定 められています( 府 令 案 31 条 ) 更 に 事 務 ガイドライン 第 三 分 冊 案 では その 14 資 金 移 動 業 者 関 係 において 資 金 移 動 業 者 の 監 督 上 の 評 価 項 目 監 督 に 係 る 事 務 処 理 上 の 留 意 点 が 明 らかにされています (5) 資 金 決 済 法 の 制 定 によって 新 たに 切 り 拓 かれるビジネ ス 分 野 資 金 決 済 法 の 制 定 により 特 に C to C の 分 野 における 送 金 事 業 について 新 たな 展 開 が 生 じる 可 能 性 があります 例 えば 銀 行 口 座 間 で 送 金 を 行 うのではなく 送 金 業 者 の 設 定 するアカウント 間 で 送 金 を 行 うことを 可 能 にすることで 送 金 手 数 料 を 低 く 抑 える 送 金 サービスが 登 場 する 可 能 性 がありま す 実 際 現 在 PayPal が 米 国 等 で 展 開 しているサービスに おいては 支 払 先 の PayPal アカウントを 指 定 する(なお ebay の 出 品 者 が PayPal を 支 払 手 段 として 指 定 している 場 合 には 送 金 者 は 別 途 PayPal アカウントを 指 定 する 必 要 はあり ません また 他 の 場 合 でも 支 払 先 の e-mail アドレスの 指 定 で PayPal アカウントを 指 定 したことになります )ことで 自 己 の PayPal アカウントから 低 額 の 送 金 手 数 料 ( 支 払 先 が 負 担 ) で 送 金 することが 可 能 とされており ネット オークションの 落 札 者 出 品 者 間 の 送 金 等 で 広 く 利 用 されています このサー ビスでは 送 金 受 領 者 の e-mail アドレス 情 報 のみで 送 金 が 可 能 であって 銀 行 口 座 又 はクレジットカード 番 号 を 決 済 の 相 手 方 に 知 らせる 必 要 がない 点 で 利 用 者 にとっての 利 便 性 も 高 いとされています (3) もっとも この 点 に 関 しては 資 金 決 済 法 の 附 則 31 条 によ り 犯 罪 による 収 益 の 移 転 防 止 に 関 する 法 律 が 改 正 されてお り 資 金 移 動 業 者 は 特 定 事 業 者 として 本 人 確 認 義 務 が 課 せら れていることに 留 意 が 必 要 です 3. 前 払 式 支 払 手 段 について (1) 資 金 決 済 法 による 規 制 の 拡 大 プリカ 法 では 前 払 式 支 払 手 段 の 金 額 が 記 載 又 は 記 録 され る 媒 体 が 証 票 その 他 の 物 に 限 られていましたが 資 金 決 済 法 により 電 子 機 器 が 加 わりました これにより 現 在 急 速 に 普 及 しつつあるカードが 不 要 な 電 子 マネー(サーバ 型 の 前 払 式 支 払 手 段 )が 新 たに 規 制 対 象 とされることとなりました (4) (2) 前 払 式 支 払 手 段 及 び 前 払 式 支 払 手 段 発 行 者 の 分 類 前 払 式 支 払 手 段 は 物 又 は 役 務 等 の 提 供 の 代 金 支 払 に 使 用 するもの( 例 えば 商 品 券 等 )と 物 又 は 役 務 等 の 提 供 の 給 付 請 求 が 可 能 なもの( 例 えば ビール 券 等 )に 分 類 されます ( 法 3 条 1 項 ) 前 払 式 支 払 手 段 には 1 自 家 型 前 払 式 支 払 手 段 ((a)その 発 行 者 ( 密 接 関 係 者 を 含 みます )に 対 してのみ 代 金 支 払 の 用 に 供 することが 可 能 なもの 又 は(b) 発 行 者 ( 密 接 関 係 者 を 含 みます )に 対 してのみ給 付 請 求 が 可 能 なもの( 法 3 条 4 項 ))と それ 以 外 の 汎 用 性 がある 点 でより 通 貨 に 類 - 3 -
似 した 2 第 三 者 型 前 払 式 支 払 手 段 ((a)その 発 行 者 以 外 に 対 して 代 金 支 払 の 用 に 供 することが 可 能 なもの 又 は(b) 給 付 請 求 が 可 能 なもの)( 法 3 条 5 項 )とがあり 後 述 の 通 り 両 者 で 規 制 の 程 度 に 差 が 設 けられています この 点 は プリカ 法 の 規 制 構 造 と 同 様 です (3) 前 払 式 支 払 手 段 発 行 者 の 届 出 登 録 上 記 1 所 定 の 自 家 型 前 払 式 支 払 手 段 の 発 行 者 は 届 出 制 の 規 制 ( 法 5 条 ) 上 記 2 所 定 の 第 三 者 型 前 払 式 支 払 手 段 の 発 行 者 は 登 録 制 の 規 制 ( 法 7 条 )に それぞれ 服 するものとされ ており この 点 はプリカ 法 と 同 様 です 但 し 1の 自 家 型 前 払 式 支 払 手 段 の 発 行 者 については 基 準 日 未 使 用 残 高 ( 法 3 条 2 項 毎 年 3 月 末 と 9 月 末 までに 発 行 した 前 払 式 支 払 手 段 の 当 該 各 末 日 現 在 の 未 使 用 残 高 の 合 計 額 として 内 閣 府 令 (5) で 定 めるところにより 算 出 した 額 )が 基 準 額 ( 法 14 条 1 項 資 金 決 済 法 施 行 令 案 6 条 では 1,000 万 円 とされています ) を 超 えない 限 り 届 出 が 不 要 とされています( 法 5 条 1 項 ) こ の 点 プリカ 法 では 自 家 型 発 行 者 は 基 準 日 未 使 用 残 高 が 700 万 円 の 基 準 額 (プリカ 法 施 行 令 7 条 )を 超 えない 限 り 届 出 が 不 要 とされていた(プリカ 法 4 条 1 項 )ところですので 今 回 の 施 行 令 案 が 確 定 すれば 若 干 の 規 制 緩 和 が 図 られること になります (4) 発 行 保 証 金 の 保 全 上 記 1 所 定 の 自 家 型 前 払 式 支 払 手 段 及 び 上 記 2 所 定 の 第 三 者 型 前 払 式 支 払 手 段 のいずれの 発 行 者 も 基 準 日 未 使 用 残 高 が 基 準 額 ( 上 記 の 通 り 施 行 令 案 では 1,000 万 円 ) 以 上 の 場 合 には 当 該 未 使 用 残 高 の 50% 以 上 の 額 の 発 行 保 証 金 を 供 託 等 することが 必 要 とされています( 法 14 条 ) 発 行 保 証 金 の 保 全 の 方 法 に 関 しては プリカ 法 の 規 制 が 緩 和 さ れ 供 託 及 び 銀 行 等 との 発 行 保 証 金 保 全 契 約 の 他 新 たに 信 託 会 社 等 との 発 行 保 証 金 信 託 契 約 の 方 法 が 認 められるこ ととなりましたが 資 金 移 動 業 者 の 履 行 保 証 金 の 保 全 の 場 合 と 同 様 に 自 己 信 託 の 方 法 は 認 められていません (5) 前 払 式 支 払 手 段 発 行 者 の 義 務 上 記 2 所 定 の 第 三 者 型 前 払 式 支 払 手 段 の 発 行 者 には 情 報 の 安 全 管 理 措 置 を 講 じるべき 義 務 が 課 されるものとされて おり( 法 21 条 ) かかる 義 務 の 遵 守 のために 必 要 な 体 制 の 整 備 が 行 われていない 等 の 場 合 には 登 録 拒 否 事 由 ( 法 10 条 1 項 5 号 )に 該 当 するものとされています また 登 録 後 に 必 要 な 体 制 整 備 を 欠 くに 至 った 場 合 には 登 録 取 消 事 由 に 該 当 する ことになります( 法 27 条 1 項 1 号 ) この 点 プリカ 法 では 第 三 者 型 発 行 者 には 業 務 を 適 格 に 遂 行 するに 足 りる 財 産 的 基 礎 を 有 しないことが 登 録 拒 否 事 由 とされるのみで 情 報 の 安 全 管 理 措 置 体 制 整 備 の 義 務 は 規 定 されていなかったとこ ろですので この 点 では 規 制 の 強 化 が 図 られています 更 に 事 務 ガイドライン 第 三 分 冊 案 では その 5 前 払 式 支 払 手 段 発 行 者 関 係 において 前 払 式 支 払 手 段 発 行 者 の 監 督 上 の 評 価 項 目 監 督 に 係 る 事 務 処 理 上 の 留 意 点 が 明 らか にされています 4. 企 業 ポイントについて 小 売 クレジット 航 空 等 に 係 る 事 業 者 が 販 売 促 進 又 は 顧 客 囲 込 み 等 を 目 的 として 発 行 する 企 業 ポイント( 例 えば TSUTAYA の T ポイントや 航 空 会 社 のマイル 等 )は 原 則 とし て 資 金 決 済 法 (のプリカ 法 を 継 承 した 部 分 )による 規 制 を 受 け ませんが 一 定 の 場 合 には 資 金 決 済 法 の 下 で 企 業 ポイン トの 発 行 者 に 対 し 前 述 の 前 払 式 証 票 発 行 者 についての 規 制 が 及 びます 企 業 ポイントが 資 金 決 済 法 の 適 用 を 受 けるか 否 かのメルク マールは それが 有 償 で 発 行 されたか 否 かです 即 ち 前 払 式 支 払 手 段 は 対 価 を 得 て 発 行 される ものであるとされてい る( 法 3 条 1 項 )ことから 無 償 で 発 行 される 企 業 ポイントは 前 払 式 支 払 手 段 に 当 たらず 資 金 決 済 法 の 適 用 を 受 けないこと が 明 らかです もっとも 境 界 領 域 事 例 として 無 償 で 発 行 された 企 業 ポイ ントとの 交 換 によって 別 の 企 業 ポイントが 発 行 された 場 合 (い わゆるポイント 交 換 の 場 合 ) 新 たに 発 行 された 企 業 ポイント は 対 価 を 得 て 発 行 されるもの に 該 当 するかどうかについて - 4 -
は 争 いがあります この 点 対 価 を 得 て 発 行 されるもの に 該 当 しないという 考 え 方 は 交 換 のために 利 用 された 企 業 ポ イント( 旧 ポイント)が 無 償 で 発 行 されており 交 換 によって 発 行 される 企 業 ポイント( 新 ポイント)についても 同 様 に 無 償 で 発 行 されるものであることから 新 ポイントは 旧 ポイントと 無 償 で 発 行 された という 点 において 性 質 が 変 わるものではないこ と 等 を 根 拠 にします (6) しかしながら このような 比 較 的 リベラルな 見 解 (7) に 立 って も 例 えば ポイント 交 換 が 有 償 で 発 行 された 企 業 ポイント X (= 前 払 式 支 払 手 段 に 該 当 する)を 対 価 として 企 業 ポイント Y を 発 行 するものであるような 場 合 には 新 たに 発 行 された 企 業 ポイント Y も 同 じく 前 払 式 支 払 手 段 に 該 当 し その 発 行 者 は 資 金 決 済 法 の 規 制 に 服 することになると 解 されます な お 対 価 を 得 て 発 行 される 企 業 ポイント Z と 無 償 で 付 与 さ れる 企 業 ポイント Z とが 混 在 する 場 合 これらの 分 別 管 理 が できない 場 合 には 無 償 発 行 分 を 含 めて 全 てが 前 払 式 支 払 手 段 に 該 当 すると 考 えられる 可 能 性 が 高 い (8) ことには 注 意 が 必 要 です なお ポイント 発 行 に 関 する 会 計 処 理 については 種 々 議 論 がなされているところであり 近 時 では 無 償 で 発 行 された 企 業 ポイントについても 会 計 上 引 当 金 処 理 を 行 っている 例 も 増 加 していますが 更 に 進 んで 一 部 の 先 進 的 な 企 業 では 引 当 金 相 当 額 の 現 金 を 信 託 財 産 として 分 別 管 理 するなどして ポイントを 獲 得 した 消 費 者 の 保 護 を 図 っています (9) これとの 関 係 で 無 償 で 発 行 された 企 業 ポイントについても 先 進 的 な 事 業 者 の 中 には 一 定 の 範 囲 で 消 費 者 保 護 のため 前 払 式 支 払 手 段 に 該 当 するものとして 規 制 すべきではないかとの 意 見 が 出 てくるようになってきています 企 業 ポイントについて 消 費 者 保 護 の 見 地 からの 対 応 が 必 要 となってきている 中 傾 聴 に 値 する 意 見 であると 思 われます 以 上 (6) (7) (8) (9) 平 成 21 年 1 月 14 日 付 け 金 融 庁 金 融 審 議 会 金 融 分 科 会 第 二 部 会 資 金 決 済 に 関 する 制 度 整 備 について イノベーションの 促 進 と 利 用 者 保 護 別 添 金 融 審 議 会 金 融 分 科 会 第 二 部 会 決 済 に 関 するワーキング グループ 報 告 6 頁 野 村 修 也 教 授 はこの 見 解 を 採 られています( 落 合 誠 一 ほか 資 金 決 済 法 と 電 子 商 取 引 実 務 への 影 響 ( 下 ) NBL908 号 65 頁 野 村 修 也 発 言 (2009)) 旧 法 下 の 解 説 として 大 蔵 省 銀 行 局 内 プリペイドカード 研 究 会 編 前 払 式 証 票 商 品 券 ギフト 券 プリペイドカード 等 規 制 法 の 実 務 解 説 (1991 年 日 本 法 令 )69 頁 資 金 決 済 法 の 議 論 でも かかる 見 解 を 変 更 するような 解 釈 は 不 見 当 です 落 合 ほか 前 掲 注 (7)の 文 献 65 頁 太 田 洋 発 言 参 照 (1) (2) (3) (4) (5) 刑 集 55 巻 2 号 97 頁 資 金 決 済 法 施 行 令 案 2 条 NTT ドコモの ケータイ 送 金 サービス では 外 観 上 この PayPal アカウン トを 携 帯 番 号 に 置 き 換 えた 形 でのドコモ 利 用 者 間 での 送 金 が 可 能 とされて います なお Edy については 本 来 はここでいうサーバ 型 の 前 払 式 支 払 手 段 として 整 理 することも 可 能 であったように 思 われますが 従 来 からカードを 証 票 とすることで プリカ 法 の 規 制 を 受 けることを 任 意 に 選 択 していたところです 前 払 式 支 払 手 段 府 令 案 4 条 ( 当 事 務 所 の 連 絡 先 ) 107-6029 東 京 都 港 区 赤 坂 1-12-32 アーク 森 ビル( 総 合 受 付 28 階 ) 電 話 :03-5562-8500( 代 ) FAX:03-5561-9711~9714 E-mail:info@jurists.co.jp URL:http://www.jurists.co.jp/ja/ - 5 -