管 理 図 目 次 管 理 図 とは 工 程 のバラツキについて 管 理 図 の 種 類 (1) 統 計 量 による 分 類 (2) 使 用 目 的 による 分 類 データの 性 質 と 管 理 図 の 選 択 管 理 図 の 見 方 (1) 統 計 的 管 理 状 態 の 判 断 (2) 統 計 的 管 理 状 態 にない 場 合 の 判 定 基 準 (3) 工 程 の 変 化 と 管 理 図 の 点 の 動 き 方 (4) 参 考 8つの 異 常 判 定 のルール 実 現 確 率 について 管 理 図 の 使 い 方 規 格 と 管 理 図 との 関 係 - 1 -
管 理 図 とは 目 次 へ 管 理 図 は, 工 程 を 管 理 または 解 析 する 道 具 として,アメリカの 統 計 学 者 であるシューハート (W.A.Shewhart)によって 考 案 された.これは, 工 程 の 異 常 を 検 出 するため, 工 程 が 偶 然 原 因 によっての みばらつく 状 態 ( 安 定 状 態 という)であるか 否 かを 統 計 的 に 見 分 けるものである. 管 理 図 では, 工 程 が 安 定 状 態 であるかどうかを 見 極 めるための 判 断 基 準 である 管 理 限 界 が 設 けられる. いずれの 管 理 図 においても 管 理 限 界 は, ( 平 均 値 )±3 ( 標 準 偏 差 ) によって 計 算 され,3 シグマ 法 の 管 理 図 といわれる. シューハート 管 理 図 は,ほぼ 規 則 的 な 間 隔 で 工 程 からサンプリングされたデータから 作 成 される こ の 間 隔 は, 時 間 ( 例 えば1 時 間 ごと) 又 は 量 ( 例 えばロットごと)によって 決 める サンプリングされ たデータのかたまりを 群 といい,それぞれの 群 は, 同 じ 測 定 単 位 で 群 の 大 きさが 同 じ 製 品 又 はサービス からなる 各 群 から, 平 均 値 X と 範 囲 R 又 は 標 準 偏 差 sのような 群 についての 一 つ 以 上 の 特 性 値 を 得 る ことができる シューハート 管 理 図 は, 群 番 号 の 順 に 打 点 した 群 の 特 性 値 のグラフで, 中 心 線 (CL)の 両 側 に 統 計 的 に 求 められた 上 方 管 理 限 界 (UCL), 下 方 管 理 限 界 (LCL)の 二 つの 管 理 限 界 がある この 管 理 限 界 線 は 対 象 として 取 り 上 げた 特 性 値 の 中 心 線 の 上 下 にその 特 性 値 の 標 準 偏 差 の3 倍 の 幅 をとっているこ とから,3シグマ 法 管 理 図 ともいわれている このように 管 理 限 界 を 設 定 すると, 約 99.7%の 打 点 値 が 限 界 幅 の 内 側 に 入 ることが 統 計 的 に 知 られている 安 定 状 態 又 は 統 計 的 管 理 状 態 とは, 見 逃 せない 原 因 が 取 り 除 かれ, 偶 然 原 因 のみによって 品 質 特 性 にばらつきが 生 じて いる 状 態 をいう 工 程 のバラツキについて 目 次 へ 工 場 などで 製 造 される 製 品 の 品 質 は, 必 ずばらつきをもつ. 工 程 において, 品 質 のばらつきをもたら す 原 因 には 多 くのものがある.これらの 原 因 には 偶 然 原 因 と 異 常 原 因 がある. (1) 偶 然 原 因 によるばらつき 原 材 料, 作 業 方 法, 機 械 設 備 などについて, 技 術 的 に 十 分 検 討 した 標 準 に 基 づき 製 造 してもなお, 発 生 するばらつき. 技 術 的 にも 経 済 的 にも,これを 除 去 する 必 要 のないばらつき. 不 可 避 な 原 因 によるばらつき. (2) 異 常 原 因 によるばらつき 標 準 通 りの 作 業 ができていない, 標 準 が 適 当 でないなどのために 生 ずるばらつき. 技 術 的 にも 経 済 的 にも,これを 見 逃 すことのできないばらつき. (3) 自 然 のばらつきと 異 常 原 因 によるばらつき 工 程 から 生 み 出 される 製 品 の 品 質 特 性 は, 必 ずばらつきをもっている これは,その 品 質 特 性 に 影 響 を 及 ぼす 要 因 がばらつくからである 品 質 特 性 に 影 響 を 及 ぼす 要 因 は 非 常 にたくさんあるが, 及 ぼして いる 影 響 の 程 度,すなわち 寄 与 率 は 大 小 いろいろである そこで, 通 常 我 々は 品 質 特 性 のばらつきをあ る 値 以 下 に 抑 えるために, 影 響 の 大 きい 要 因 をあるばらつき 以 下 に 抑 えこみ, 影 響 の 小 さい 要 因 は 自 然 のばらつきのままに 放 置 して 作 業 を 行 っている この 場 合 に 品 質 特 性 に 生 じるばらつきをやむを 得 ない ばらつきといい,このばらつきが 生 じる 原 因 ( 要 因 と 同 じ)を 偶 然 原 因 (chance cause), 不 可 避 原 因, 突 き 止 められない 原 因 という また,あるばらつき 以 下 に 抑 えこむことに 決 めた 要 因 が,その 位 置 を 超 えてばらついたり, 自 然 のま まに 放 置 することを 決 めた 要 因 が, 実 は 寄 与 の 大 きい 要 因 でときたま 大 きくばらつくなどのばらつきを いつもと 違 った, 意 味 のあるばらつき といい,このばらつきが 生 じる 原 因 を 突 き 止 められる 原 因 (assignable cause), 見 逃 せない 原 因, 異 常 原 因 という - 2 -
管 理 図 の 種 類 目 次 へ 管 理 図 は, 統 計 量 および 使 用 目 的 から 一 般 的 に 次 のように 分 類 される (1) 統 計 量 による 分 類 目 次 へ 管 理 図 は 使 用 する 統 計 量 によって 次 のように 分 類 される データの 種 類 使 用 される 管 理 図 の 種 類 理 論 分 布 計 量 値 の 場 合 計 数 値 の 場 合 長 さ 重 さ 時 間 強 さ 成 分 収 率 純 度 etc. 不 適 合 品 率 ( 不 良 率 ) 不 適 合 品 数 ( 不 良 個 数 ) 不 適 合 数 ( 欠 点 数 ) 単 位 当 たりの 不 適 合 数 ( 欠 点 数 ) 平 均 値 ( X )と 範 囲 (R) メディアン( 中 央 値 ) ( X ~ ) と 範 囲 (R) 個 々のデータ nが 一 定 でないとき nが 一 定 のとき 欠 点 の 現 れる 範 囲 の 大 きさが 一 定 のとき 欠 点 の 現 れる 範 囲 の 大 きさが 一 定 でないとき X R 管 理 図 メディアン 管 理 図 (Me 管 理 図 ) X-Rs 管 理 図 p 管 理 図 np 管 理 図 c 管 理 図 u 管 理 図 正 規 分 布 二 項 分 布 ポアソン 分 布 (2) 使 用 目 的 による 分 類 目 次 へ 管 理 図 には, 工 程 の 現 状 把 握 や 要 因 解 析 などに 用 いる 解 析 用 管 理 図 と, 工 程 の 管 理 に 用 いる 管 理 用 管 理 図 がある. 管 理 図 は 使 用 目 的 によって 次 の2 種 類 に 分 類 される (a) 標 準 値 が 与 えられていない 場 合 ( 解 析 段 階 の 管 理 図 ) ( 管 理 線 を 工 程 の 測 定 データから 求 めた 値 を 用 いる) 工 程 から 生 み 出 される 製 品 の 品 質 特 性 と,その 特 性 に 影 響 を 及 ぼす 要 因 との 関 係 を 明 らかにするこ とを 工 程 解 析 という この 工 程 解 析 に 用 いられる 管 理 図 が 解 析 段 階 の 管 理 図 である また, 管 理 のための 管 理 図 を 計 画 する 段 階 で, 層 別 や 群 分 けのやり 方, 管 理 限 界 線 の 決 定 など, 管 理 のやり 方 を 決 めるために 作 られる 管 理 図 も, 解 析 段 階 の 管 理 図 といわれる (b) 標 準 値 が 与 えられている 場 合 ( 管 理 段 階 の 管 理 図 ) ( 管 理 線 を 過 去 の 実 績 による 平 均 値 又 は 目 標 値 ±3シグマ(μ0±3σ0)を 用 いる) 管 理 図 によって 工 程 を 管 理 するために 用 いられるもので, 管 理 図 本 来 の 目 的 に 沿 った 管 理 図 である 解 析 用 管 理 図 は 標 準 値 の 与 えられていない 管 理 図, 管 理 用 管 理 図 は 標 準 値 が 与 えられている 管 理 図 と いえる. 標 準 値 が 与 えられているとは, 工 程 平 均 やばらつきの 値 が 与 えられている,またはわかってい る 場 合 をいい, 管 理 用 管 理 図 は 解 析 用 管 理 図 からその 値 が 与 えられていると 考 えればよい. 1 枚 の 紙 に 解 析 用 と 管 理 用 の 管 理 図 を 並 べて 書 くなど 二 つを 区 別 する 必 要 がある 場 合 には, 解 析 用 管 理 図 の 管 理 限 界 線 と 管 理 用 管 理 図 の 管 理 限 界 線 は 区 別 しておいたほうがよい 一 般 には, 解 析 用 管 理 図 の 管 理 限 界 線 は 破 線 で, 管 理 用 管 理 図 での 管 理 限 界 線 は 一 点 鎖 線 で 記 入 する ただし, 中 心 線 は 両 管 理 図 とも 実 線 とする - 3 -
データの 性 質 と 管 理 図 の 選 択 目 次 へ 管 理 図 は 品 質 特 性 を 表 わすデータの 性 質 と 群 の 大 きさに 応 じて 次 のように 選 択 される n=1 X-Rs 管 理 図 計 量 値 群 の 数 ( 試 料 数 ) n n 2 X の 計 算 が 面 倒 か? Yes ~ X R 管 理 図 (Me-R 管 理 図 ) No X R 管 理 図 n: 群 の 大 きさ( 試 料 数 ) Rs: 移 動 範 囲 Me:メディァン 不 適 合 品 ( 不 良 品 ) の 場 合 n= 一 定 n= 不 定 不 適 合 品 数 ( 不 良 個 数 ) 不 適 合 品 率 ( 不 良 率 ) np 管 理 図 p 管 理 図 計 数 値 不 適 合 数 ( 欠 点 数 ) の 場 合 範 囲 = 一 定 範 囲 = 不 定 不 適 合 数 ( 欠 点 数 ) 単 位 当 たりの 不 適 合 数 ( 欠 点 数 ) c 管 理 図 u 管 理 図 n: 群 の 大 きさ( 検 査 試 料 個 数 ) 範 囲 : 欠 点 の 現 れる 範 囲 - 4 -
* X R 管 理 図 品 質 特 性 値 が 計 量 値 で, 比 較 的 データが 数 多 く 得 られやすい 工 程 を 管 理 する 場 合 に 用 いる 例 えば, 1 日 に5 個 のデータを 採 り,この5 個 のデータの 平 均 値 ( X )と 範 囲 (R)を 求 め, X 管 理 図 で 工 程 平 均 の 変 化 を,R 管 理 図 で 工 程 のばらつきの 変 化 を 管 理 するのに 用 いる この2つの 管 理 図 を 併 用 して 用 いることが 一 般 的 であるため, 通 常, X R 管 理 図 と 呼 ばれている 工 程 についての 情 報 が 最 も 多 く 得 られる 管 理 図 である 各 群 ごとに 取 られるサンプル 数 が 大 きいときには, X R 管 理 図 ではなく, X s 管 理 図 を 用 いる ことがある X s 管 理 図 は X R 管 理 図 の R の 代 わりに 標 準 偏 差 (s)を 用 いたもので,おおむね n=10 以 上 であれば X s 管 理 図 がよい *Me-R 管 理 図 X R 管 理 図 の X の 代 わりに Me(メディアン)( X ~ )を 用 いたもので, X の 計 算 がいらないという 便 利 性 がある メディアン 管 理 図 も X R 管 理 図 と 同 様 に R 管 理 図 を 併 用 する * X Rs 管 理 図 X R 管 理 図 と 同 様 に 計 量 値 のデータであるが, 破 壊 検 査 を 伴 うなど データの 数 が 多 く 得 られな い 場 合, 群 の 内 部 が 均 一 で 多 くのデータを 得 てもあまり 意 味 の 無 い 場 合, 又 は 測 定 値 を 得 るのに 時 間 がかかるため,1 個 の 測 定 結 果 でできるだけ 早 く 工 程 の 安 定 状 態 の 判 定 をしたい 場 合 などに 用 いられ る 生 データを 用 いてX 管 理 図 として 工 程 平 均 の 変 化 を 管 理 し,また, 生 データの 移 動 範 囲 (Rs )を 用 いてRs 管 理 図 として 工 程 のばらつきの 変 化 を 管 理 するのに 用 いる 移 動 範 囲 とは 互 いに 隣 あった2 つのデータの 差 である. *np 管 理 図,p 管 理 図 製 品 を1 個 ごとに 適 合 品, 不 適 合 品 に 判 別 できる 場 合,サンプル 全 体 の 中 に 不 適 合 品 数 ( 不 良 品 数 ) (np)または 不 適 合 品 率 ( 不 良 品 率 ) (p )の 値 を 用 いて 工 程 を 管 理 する 場 合 に 用 いる サンプルの 大 きさn ( 適 合 不 適 合 の 判 別 の 対 象 となる 製 品 の 数 ) が 一 定 で 不 適 合 品 数 ( 不 良 品 数 ) (np)で 工 程 を 管 理 する 場 合 にはnp 管 理 図 を 用 いる サンプルの 大 きさn が 一 定 ではなく 不 適 合 品 率 ( 不 良 品 率 ) (p)で 工 程 を 管 理 する 場 合 にはp 管 理 図 を 用 いるとよい *c 管 理 図,u 管 理 図 塗 装 むら, 織 物 の 織 りむら, 電 線 のピンホールなど 製 品 の 中 のキズの 数 電 気 製 品 のはんだキズの 数 設 備 のトラブル 回 数 など 不 適 合 数 ( 欠 点 数 )によって 工 程 を 管 理 する 場 合 に 用 いる 製 品 のサンプルの 大 きさ( 検 査 範 囲 ) が 一 定 の 場 合 には 不 適 合 数 ( 欠 点 数 )で 管 理 するc 管 理 図 を 用 いる 製 品 のサンプルの 大 きさ( 検 査 範 囲 ) が 一 定 でない 場 合 には, 単 位 当 たりの 不 適 合 数 ( 欠 点 数 )に 換 算 した 値 (1 単 位 当 たり 不 適 合 数 )で 管 理 するu 管 理 図 を 用 いる - 5 -
管 理 図 の 見 方 目 次 へ 工 程 の 管 理 では, 管 理 図 によって 工 程 が 統 計 的 管 理 状 態 にあるかどうかを 正 しく 判 断 することが 重 要 であり, 異 常 が 発 見 された 場 合 は,すぐにその 原 因 を 調 査 し, 処 置 をとる 必 要 がある. 以 下 に 管 理 図 の 見 方 を 述 べる. (1) 統 計 的 管 理 状 態 の 判 断 目 次 へ 管 理 図 から 工 程 の 安 定 状 態 ( 統 計 的 管 理 状 態 )を 判 断 する 基 準 は 以 下 の 二 通 りである. 1 点 が 管 理 限 界 線 の 外 に 出 ない( 管 理 はずれの 点 がない) 2 点 の 並 び 方 にくせがない 注 ) 点 が 管 理 限 界 線 上 にある 場 合 は 外 に 出 たものとみなさない 管 理 図 に 打 点 した 点 のほとんど 全 部 が, 管 理 限 界 内 におさまっており, 点 の 並 び 方 にくせがない 状 態 を 安 定 状 態 又 は 統 計 的 管 理 状 態 という 工 程 が 安 定 状 態 というのは, 工 程 に 偶 然 原 因 のみが 生 じていて 突 き 止 められる 原 因 が 生 じていない 状 態 のことをいう 一 方, 点 が 管 理 限 界 線 の 外 側 に 出 た 場 合, 及 び/ 又 は 点 が 管 理 限 界 線 の 内 側 でも 点 の 並 び 方 にくせ がある 場 合 には, 工 程 は 管 理 されていない 状 態,または 工 程 異 常 といい, 異 常 になった 原 因 を 追 究 し, 除 去 し, 工 程 を 安 定 状 態 に 戻 すことが 必 要 である.このように 工 程 の 異 常 を 示 す 点 のことを, 管 理 外 れ, 管 理 アウト,あるいはアウト オブ コントロールという. 上 記 の 管 理 限 界 外 の 点 の 見 方 では, 次 のような 場 合 に, 工 程 は 安 定 状 態 にあると 判 断 する 1 連 続 25 点 全 部 が 管 理 限 界 内 にある 場 合 2 連 続 35 点 中 管 理 限 界 外 の 点 が 1 点 以 内 である 場 合 3 連 続 100 点 中 管 理 限 界 外 の 点 が 2 点 以 内 である 場 合 ただし, 上 記 の 点 数 以 内 ならば 点 が 限 界 外 に 出 ても, 原 因 探 究 をしなくてもよいということではない 管 理 限 界 外 に 点 が 出 た 場 合 には,いかなる 場 合 でも,その 原 因 を 探 究 し, 処 置 をとらなければならない 3 シグマ 法 の 管 理 図 では, 工 程 に 異 常 がないのに, 異 常 があると 判 断 してしまう 誤 り( 第 1 種 の 誤 り という) は 非 常 に 小 さく( 約 0.3%) 抑 さえてあるので, 打 点 が 限 界 外 に 出 た 場 合 は 異 常 があると 判 断 し てほぼ 問 題 ない.しかし 一 方, 工 程 に 異 常 があるのに, 異 常 がないと 判 断 してしまう 誤 り( 第 2 種 の 誤 りという) もあるので,この 誤 りを 小 さくするために, 点 の 並 び 方 やちらばり 方 のクセによる 判 断 を 行 う. (2) 統 計 的 管 理 状 態 にない 場 合 の 判 定 基 準 目 次 へ 管 理 図 から 工 程 の 状 態 を 判 断 する 基 準 ( 判 定 ルール)は,JIS Z 9021:1998 シューハート 管 理 図 に, ( X 管 理 図 の 例 として)8つのルールがあることを 示 している.そのルールは 以 下 に 記 する. ただし,これらの 判 定 ルールはあくまでも 一 つのガイドラインである. 自 社 で 判 断 ルールを 決 めると きには, 工 程 固 有 の 変 動 を 考 慮 して 決 めることが 望 ましいとされている. シューハート 管 理 図 "では, 点 の 動 きのパターンを 解 釈 するために, 次 の8つの 異 常 判 定 のルールを 示 している 上 方 管 理 限 界 と 下 方 管 理 限 界 は 中 心 線 から3シグマの 距 離 にあるので,ルールを 適 用 する ために, 次 の 図 のように 上 方 管 理 限 界 と 下 方 管 理 限 界 の 間 を 1 シグマ 間 隔 で6つの 領 域 に 分 け,その 領 域 を 上 方 管 理 限 界 から 順 に A,B,C,( 中 心 線 ),C,B,A とする 以 下 のルールは X 管 理 図 とX 管 理 図 に 適 用 できる これらの 基 準 は 正 規 分 布 を 仮 定 している - 6 -
図 突 き 止 められる 原 因 による 変 動 の 判 定 ルール(JIS Z 9021:1998) 正 常 で 安 定 した 工 程 で ルール1の 管 理 アウトの 発 生 する 確 率 は 0.27%であり 非 常 に 低 い 確 率 であ るから 管 理 アウトが 発 生 した 場 合 には 工 程 は 統 計 的 管 理 状 態 にはないと 判 断 する 他 のルール2~7についても 正 常 で 安 定 した 工 程 では その 発 生 する 確 率 は ルール1と 同 様 に 非 常 に 低 い 確 率 である - 7 -
ルール 1 管 理 アウト 又 は 管 理 外 れ 点 が 管 理 限 界 線 の 外 に 出 た 場 合 点 が 上 方 管 理 限 界 線 より 上 側,または 下 方 管 理 限 界 線 より 下 側 に 出 た 場 合 は, 工 程 は 異 常 と 判 断 する. ルール 2 9の 連 点 が 中 心 線 に 対 して 同 じ 側 に 連 続 して 現 われる 場 合 点 が 中 心 線 に 対 して 同 じ 側 に 連 続 して 並 んだ 状 態 を 連 といい, 連 を 構 成 する 点 の 数 を 連 の 長 さ という. 長 さ 9 の 連 が 現 われた 場 合 に 工 程 は 異 常 と 判 断 する. ルール 3 傾 向 点 が 上 昇 または 下 降 傾 向 にある 場 合 点 の 並 び 方 が, 次 々に 前 の 点 より 大 きくなる,または 小 さくなる 場 合,その 工 程 に 傾 向 がある と 判 断 する. 連 続 する 6 点 が 増 加 または 減 少 している 場 合 に 工 程 は 異 常 と 判 断 する. ルール 4 14 点 が 交 互 に 増 減 点 が 周 期 的 に 上 下 に 変 動 する 場 合 で,14 点 が 交 互 に 増 減 する 場 合 に 工 程 は 異 常 と 判 断 する. ルール 5 限 界 線 に 接 近 点 が 管 理 限 界 線 に 接 近 して 現 われる 場 合 安 定 状 態 の 場 合 には, 点 が 管 理 限 界 線 の 近 くに 現 われる 確 率 は 小 さい.3 シグマ 管 理 限 界 線 に 接 近 しているという 判 断 基 準 として 2 シグマを 超 えているかどうかで 判 断 する.したがって, 2 シグマと 同 じ 側 の 3 シグマ 限 界 線 との 間 に, 連 続 3 点 中 2 点 以 上 が 現 われる 場 合 に 工 程 は 異 常 であると 判 断 する. ルール 6 点 が 中 心 線 のまわりに 少 ない 場 合 (5 点 中 4 点 が 領 域 A,B にある) 点 が 中 心 線 のまわりに 少 ない 場 合 は, 群 間 のばらつきが 群 内 のばらつきに 比 べて 大 きすぎるこ とが 考 えられる. 群 分 けのやり 方 を 工 夫 するとよい. 連 続 する 5 点 中 4 点 が 同 じ 側 の 1 シグマ を 超 えた 領 域 A,B にある 場 合, 工 程 は 異 常 と 判 断 する. ルール 7 中 心 化 傾 向 多 くの 点 が 中 心 線 の 近 くに 集 まる 場 合 点 が 中 心 線 の 近 くに 集 まる 場 合 は, 群 分 けのやり 方 が 不 適 当 で, 群 内 に 異 質 なデータが 混 在 し ている 場 合 が 多 い. 連 続 する 15 点 が 1 シグマの 領 域 ( 領 域 C)にある 場 合 に 工 程 は 異 常 と 判 断 する.データの 分 布 からいって 一 番 内 側 の 中 に 多 くの 点 が 入 るのは 当 然 のことではあるが, 連 続 15 点 以 上 も 集 まるというのは 逆 に 異 常 である. 群 内 に( 各 群 の 中 に) 異 質 なデータがないか, 層 別 しなくてはならないかを 考 える 必 要 がある. ルール 8 点 が 中 心 部 にない 場 合 連 続 する 8 点 が 1 シグマを 超 えた 外 の 領 域 A,B にある 場 合 は, 通 常 では 確 率 的 に 非 常 に 低 い 値 であり 工 程 は 異 常 であると 判 定 する. その 他 の 見 方 として 週 単 位 で 大 波 のある 場 合 などの 周 期 的 な 変 動 がある - 8 -
(3) 工 程 の 変 化 と X R 管 理 図 の 点 の 動 き 方 目 次 へ X 管 理 図 は 工 程 平 均 の 変 化 を,R 管 理 図 は 工 程 のばらつきの 変 化 を 表 す. 工 程 の 変 化 と の 点 の 動 き 方 との 関 連 を 図 に 示 す. この 図 を 理 解 しておくと, 管 理 図 を 見 て 工 程 の 管 理 状 態 を 判 断 することに 役 立 つ. X R 管 理 図 (a) 工 程 が 安 定 状 態 の 場 合 工 程 平 均 も 工 程 のばらつきも 変 化 しない. 安 定 状 態 の 場 合 でも, X R 管 理 図 の 点 は 管 理 限 界 線 内 で 適 当 にばらつく. (b) 工 程 平 均 のみが 変 化 した 場 合 工 程 のばらつきは 変 化 しないで 工 程 平 均 だけが 下 がった 場 合,R 管 理 図 は 安 定 状 態 であるが, X 管 理 図 の 点 は 中 心 線 の 下 側 に 連 が 出 るようになり, 下 方 管 理 限 界 線 から 飛 び 出 すものもある. (c) 工 程 のばらつきのみが 変 化 した 場 合 工 程 平 均 は 変 化 しないで 工 程 のばらつきが 大 きくなった 場 合,R 管 理 図 では 中 心 線 の 上 側 に 連 が でき, 上 方 管 理 限 界 線 から 飛 ぴ 出 す 点 も 出 てくる. 同 時 に X 管 理 図 でもばらつきが 大 きくなり, 時 には 管 理 限 界 線 から 飛 び 出 す 点 もある. (d) 工 程 平 均 も 工 程 のばらつきもともに 変 化 した 場 合 X 管 理 図,R 管 理 図 ともに 点 が 管 理 限 界 線 から 飛 び 出 すようになる. (e) 工 程 が 傾 向 を 持 った 場 合 工 程 のばらつきは 変 化 しないで, 工 程 平 均 のみが 段 々と 上 昇 する 傾 向 がある 場 合,R 管 理 図 は 安 定 状 態 を 示 すが, X 管 理 図 の 点 が 段 々と 上 昇 する. - 9 -
(4) 参 考 8つの 異 常 判 定 のルール 実 現 確 率 について 目 次 へ 管 理 図 から 工 程 の 状 態 を 判 断 する 基 準 ( 判 定 ルール)は,JIS Z 9021:1998 シューハート 管 理 図 に, ( 管 理 図 の 例 として)8つのルールがあることが 示 されている 統 計 的 管 理 状 態 にある 安 定 な 工 程 では 工 程 のデータは 次 のように 正 規 分 布 し 各 領 域 の 確 率 は 次 の 図 のようになる 統 計 的 管 理 状 態 にある 安 定 な 工 程 では 工 程 のデータは 正 規 分 布 をしていると 考 えると 異 常 判 定 ル ールが 実 現 する 確 率 は 上 図 の 分 布 確 率 を 利 用 して 次 表 のように 計 算 される 異 常 判 定 ルール 実 現 確 率 計 算 式 ルール 1: 管 理 アウト 0.0027 ±3σを 超 える 確 率 ルール 2: 連 続 9 点 の 連 0.0039 2 0.5 9 ルール 3: 連 続 6 点 の 増 加 または 減 少 傾 向 - - ルール 4: 連 続 14 点 が 交 互 に 増 減 - - ルール 5: 連 続 3 点 中 2 点 が 限 界 線 と 2σ の 間 0.0009 2 0.0215 2 ルール 6: 連 続 5 点 中 4 点 が 限 界 線 と 1σ の 間 0.0012 2 (0.0215+0.1359) 4 ルール 7: 連 続 15 点 が 中 心 線 から 1σ の 間 0.0032 0.6826 15 ルール 8: 連 続 8 点 が 中 心 線 から 1σ の 外 0.0001 (1-0.6826) 8 このように 異 常 判 定 ルールに 相 当 する 事 象 が 発 生 した 場 合 には 管 理 アウトと 同 じような 低 い 確 率 の 事 象 が 発 生 したと 考 えて 工 程 は 安 定 し 状 態 ではないと 判 断 する 管 理 図 の 使 い 方 目 次 へ (1) 群 分 けの 工 夫 群 分 けの 良 し 悪 しが, 使 える 管 理 図 になるかどうかのポイントといえる. 管 理 図 は 偶 然 原 因 によ るばらつきを 基 準 にして 異 常 原 因 によるばらつきを 判 断 することを 目 的 としている.したがって, 群 内 のばらつきが 偶 然 原 因 によるばらつきだけで 構 成 されるように, 同 じ 日 などの 短 い 期 間 のデー タをまとめて 群 にしたり, 作 業 が 同 じ 条 件 で 行 われているロットからのデータをまとめて 群 にした りする. (2) 層 別 管 理 図 においても, 同 じ 製 品 を 複 数 の 機 械 や 何 人 かの 作 業 員 が 製 造 している 場 合 には, 機 械 別, 作 業 員 別 に 層 別 すると, 工 程 の 解 析 や 管 理 が 容 易 になる. - 10 -
規 格 と 管 理 図 との 関 係 目 次 へ 工 程 を 解 析 し,さらに 管 理 をしていく 場 合, 管 理 図 を 作 成 し 解 析 するとともに, 計 量 特 性 値 の 場 合 に は,さらに 個 々のデータを 使 ってヒストグラムを 作 成 し, 規 格 との 比 較 を 行 い,できたら, 工 程 能 力 を 求 め 工 程 の 現 状 が 満 足 すべき 状 態 か 確 認 してみると, 工 程 管 理 に 有 効 な 情 報 が 得 られることが 多 い. そこで,この 管 理 図 とヒストグラムとの 解 析 結 果 を, 図 のように 大 きく 四 つに 大 別 して 考 える, 参 照 資 料 : 日 本 規 格 協 会 新 版 QC 入 門 講 座 7 管 理 図 の 作 り 方 と 活 用 工 程 を 解 析 した 場 合,またこれから 工 程 を 管 理 していこうという 場 合, 図 において 最 も 望 ましい 状 態 は D の 状 態 である.すなわち,データは 規 格 を 十 分 満 足 し( 工 程 能 力 指 数 で 1.3 以 上 が 望 ましい),しか も 管 理 図 は 管 理 状 態 であるという 状 態 である. したがって, 工 程 を 解 析 した 場 合, 大 別 して 図 の A B C D のいずれの 状 態 にあるのか, 現 状 の 確 認 を してみる. 工 程 改 善 のプロセスとしては A B D の 順 序 で 進 めるのが 望 ましい. 上 図 の 各 段 階 での 処 置 方 法 に 関 する 基 本 的 な 事 項 を 以 下 に 示 す. 段 階 工 程 の 管 理 状 態 規 格 値 の 満 足 状 態 ロットの 処 置 管 理 図 / 規 格 値 の 検 討 D 管 理 状 態 規 格 値 を 満 足 無 検 査 チェック 的 抜 取 検 査 Cp>1.6 なら 管 理 図 の 廃 止 を 検 討 C 非 管 理 状 態 規 格 値 を 満 足 抜 取 検 査 管 理 アウトの 原 因 追 及 B 管 理 状 態 不 良 品 発 生 A 非 管 理 状 態 不 良 品 発 生 抜 取 検 査 全 数 検 査 抜 取 検 査 全 数 検 査 管 理 限 界 線 の 引 き 直 し 公 差 の 拡 張 の 可 能 性 検 討 - 11 -