社会セミナー 2011 年 1 月 18 日 気候変動影響への適応支援のための資金メカニズムの衡平性の考え方について 社会環境システム研究領域環境経済 政策研究室久保田泉 1
国際レベルでの適応策支援の諸要素 実施のためのリソース Buenos Aires programme of work, National Adaptation Programmes of Action, Funding 科学的 技術的知見 Nairobi work programme, Research, Technology transfer, Systematic Observation 能力構築 Support for vulnerability & adaptation assessments Capacity-building, Education and Training 2
適応策の実施に係る主体間の役割分担 国際機関 国際枠組み 資金支援 技術支援 情報集積 能力構築 地域 地域内の調整 能力構築 国家 地方 地方政府 / 地域機関等との調整 国際制度構築への参画 適応策の実施 3
報告の概要 1. 適応関連制度の現状 2. 現行の適応関連資金メカニズムと適応の 費用 に関連した研究 3. 適応関連資金供与の公平性 衡平性に着目した研究
気候変動枠組条約の適応関連規定 主体内容 全締約国 適応を容易にするための措置を含む 自国 / 地域の計画の作成 実施 公表 定期的更新 (4 条 1 項 (b)) 適応のための準備についての協力 (4 条 1 項 (e)) 自国の政策措置における考慮 (4 条 1 項 (f)) 気候変動の悪影響または対策措置の実施による悪影響を受ける途上国への資金供与 保険 技術移転等についての十分な考慮 (4 条 8 項 ) 資金供与及び技術移転における LDC の個別のニーズ及び特別な事情についての十分な考慮 (4 条 9 項 ) 附属書 Ⅱ 国 ( 先進国 ) 途上国がインベントリ及び国別報告書の提出 (12 条 1 項 ) 並びに条約 4 条 1 項の約束を履行するための費用負担の支援を目的とした新規かつ追加的な資金の供与 (4 条 3 項 ) 気候変動の悪影響を特に受けやすい途上国の適応費用の支援 (4 条 4 項 )
京都議定書の適応関連規定 主体内容 全締約国 附属書 Ⅰ 国 ( 先進国 + 経済移行国 ) COP/MOP 適応を容易にするための措置 ( 適応技術及び国土に関する計画を改善するための方法等 ) を含む 自国 / 地域の計画の作成 実施 公表 定期的更新 (10 条 (b)) 悪影響 ( 気候変動の悪影響 国際貿易への影響 並びに途上国への社会上 環境上 経済上の影響 ) を最小限にするような方法で政策措置 ( 議定書 2 条 ) を実施するよう努力 (2 条 3 項 ) 途上国に対する社会上 環境上 経済上の悪影響を最小限にするような方法で 排出削減約束を履行するよう努力 (3 条 14 項 ) CDM の認証事業活動からの収益の一部が気候変動の悪影響を特に受けやすい途上国への適応費用の支援に用いられるよう確保 (12 条 8 項 )
適応関連の現行制度の問題点 いかなる措置 / 行動をもって気候変動の影響への適応とするかが曖昧 締約国がとるべき適応措置の具体性に欠ける 適応に関する事項が様々な議題の下で扱われている 時間枠が不明確
カンクン合意 長期的協力の行動のための特別作業部会 (AWG- LCA) の成果 京都議定書附属書 B 国の更なる約束に関する特別作業部会 (AWG-KP) の成果 カンクン合意とは AWG-LCA の成果と AWG-KP の成果の総称 AWG-LCA の成果には コペンハーゲン合意の主要な内容が盛り込まれている COP15: コペンハーゲン合意に 留意 COP17 までの 宿題 が記されている 写真出典 :http://unfccc.int/8
将来枠組みに関する 2 つの作業部会 気候変動枠組条約締約国会議 (COP) 長期的協力の行動のための特別作業部会 (AWG- LCA)(2007 年 ~) 議定書未批准の米国 議定書上 GHG の削減責務を課されていない途上国の緩和策についても検討の対象にすることができる 法的性質は不明確 共有ビジョン 緩和 ( 先進国 途上国 ) 適応 技術 資金 REDD+ 能力構築について議論 京都議定書締約国会合 (CMP) 京都議定書附属書 B 国の更なる約束に関する特別作業部会 (AWG-KP) (2005 年 ~) 主に 附属書 Ⅰ 国 (OECD 加盟国 - 韓国 メキシコ ) の議定書第 1 約束期間後の GHG の削減責務について議論する 法的性質は明確 先進国の第 1 約束期間後の削減目標 ( 先進国全体 & 個別 ) LULUCF 対象ガス 市場メカニズム等について議論
カンクン合意 : 適応関連事項 (1) 適応は すべての国が直面する challenge である カンクン適応フレームワークの設置 : 適応策の強化 適応活動の計画 優先順位づけ 実施 影響 脆弱性 適応策の評価 institutional capacity の強化 対応力 (resilience) の構築 気候変動関連災害リスク低減戦略の強化 適応関連での技術協力 能力構築 データ 情報 教育普及啓発の強化 気候関連の研究及び観測 データ収集 モデリングの向上
カンクン合意 : 適応関連事項 (2) LDC が国内適応計画を作成 実施することを可能にするプロセスの設置 NAPA のグレードアップ 国内適応計画に関するモダリティとガイドラインの作成を SBI に要請 COP17 で採択 すべての国は すべてのレベル ( グローバル リージョナル 国内 ローカル ) において適応策を実施する 適応委員会の設置 適応委員会に関する各国意見の募集
カンクン合意 : 資金関連事項 資金援助 : コペンハーゲン合意と同じ Fast-start finance 先進国は 2010~2012 年の間に 300 億ドルに近づく新規かつ追加的な資金の供与を共同で行う 長期の資金供与 先進国は 2020 年までには年間 1,000 億ドルの資金を共同で調達することを目指す COP のガイダンスの下 気候変動枠組条約の資金供与の制度の実施機関として緑の気候基金 (Green Climate Fund) を設置
現行の UNFCC 及び京都議定書下の資金メカニズム 特別気候変動基金 (SCCF) 発展途上国 先進国の自主的拠出 LDC 基金 LDC 先進国の 自主的拠出 149 million USD 132 mil. USD for Adaptation 224 million USD 適応基金 とりわけ脆弱な発展途上国 CDM の収益の一部 (2%), 先進国の自主的拠出など 10,231,778C ER 80-300 million USD??? 13
49 Least Developed Countries Afghanistan Angola Bangladesh Benin Bhutan Burkina Faso Burundi Cambodia Central African Republic Chad Comoros Democratic Republic of the Congo Djibouti Equatorial Guinea Eritrea Ethiopia Gambia Guinea Guinea-Bissau Haiti Kiribati Lao People s Democratic Republic Lesotho Liberia Madagascar Malawi Maldives Mali Mauritania Mozambique Myanmar Nepal Niger Rwanda Samoa São Tomé and Principe Senegal Sierra Leone Solomon Islands Somalia Sudan Timor-Lesté Togo Tuvalu Uganda United Republic of Tanzania Vanuatu Yemen Zambia 14
LDC による国家適応戦略計画 (NAPA) 策定状況 LDCF の支援を得て ほぼすべての LDC が作成 公表済み LDC は 自国の NAPA の中で優先プロジェクトを選定 アジア太平洋地域の LDC の優先プロジェクトに必要とされる額の合計は 345,329,237USD となる
適応関連資金メカニズムの拡充 課題 適応のための資金が不足している 適応にかかるコストに対する評価が不足している 追加的な資金支援のあり方について検討する コスト評価にかかる研究をさらに推進する 適応に必要な資金の準備 調達に係る経済的手法 制度の整備に関する研究を推進する 16
Additional investment and financial flows needed for adaptation in 2030, by sector Sector Agriculture, forestry and fisheries Areas/adaptation measures considered Production and processing, research and development, extension activities Global cost (2005 USD billion) Proportion needed in developing countries (%) 14 50 Water supply Water supply infrastructure 11 80 Human health Coastal zones Treating increased cases of diarrhoeal disease, malnutrition and malaria 5 100 Beach nourishment and dykes 11 45 Infrastructure New infrastructure 8-130 25 Source:UNFCCC(2008) Investment and financial flows to address climate change: an update (FCCC/TP/2008/7). 17
国際的な資金メカニズム : Multi-Channel System Trustees Sources National Budgets & International Sources of Finance 気候投資基金 (CIFs) CTF SCF NEW? Channel 1 Channel 2 Channel 3 UNFCCC 気候変動関連基金 GEF, AF & NEW? Others BFIs Implementing Bodies IFIs BFIs? BFIs? IFIs? 途上国 : 国家予算 プログラム プロジェクト 企業 市民社会 18
適応の 費用 に関連した研究 費用の定義 適応費用と影響費用の区別 気候変動への適応策と 通常のインフラ整備 開発との区別 個別適応策の費用 効果等の調査 データベース化 適応策 適応プロジェクトの事前評価 個別の適応策の費用便益分析 最適適応投資量 / 時期の分析 国際的な適応費用負担 各国が現在 ~ 将来に要する適応の費用はいかほどか 誰が適応の費用を負担する義務があるのか 財政的な観点からの適応の限界の把握 長期の気候安定化目標検討に関連して 高橋潔さん ppt 資料 (2010)
全球規模の適応費用推計 Source USD billion p. a. comments World Bank(2006) 9-41 Cost of climate-proofing FDI, GDI and ODA flows Stern(2006) 4-37 Update, with slight modification of World Bank (2006) Oxfam(2007) >50 Based on World Bank, plus extrapolation of costs from NAPAs and NGO projects UNDP(2007) 86-109 World Bank, plus costing of PRS targets better disaster response Agrawala and Fankhauser (2007)
Additional investment and financial flows needed for adaptation in 2030, by sector Sector Agriculture, forestry and fisheries Areas/adaptation measures considered Production and processing, research and development, extension activities Global cost (2005 USD billion) Proportion needed in developing countries (%) 14 50 Water supply Water supply infrastructure 11 80 Human health Coastal zones Treating increased cases of diarrhoeal disease, malnutrition and malaria 5 100 Beach nourishment and dykes 11 45 Infrastructure New infrastructure 8-130 25 Source:UNFCCC(2008) Investment and financial flows to address climate change: an update (FCCC/TP/2008/7). 21
環境制度評価指標と衡平性指標 環境保全性 費用効果性 衡平性 実現可能性
適応関連資金メカニズムの公平性及び 衡平性 正義の範囲倫理的規範正義の原則クライテリア 手続 交渉プロセス 公平な参加 認識 参加 権限配分 配分 資金源の分担 責任 同等性 差異化 F1 すべての国の参加 F2 参加の権利の確保の可能性 F3 富める国から貧しい国への支援のコミット E1 差異化された責任 配分 資金配分 社会的脆弱性 応能負担 E2 人間の安全保障の欠 如 出典 :Grasso (2010)