ミニレポート 2010-033 平 成 23 年 2 月 21 日 世 界 の 石 油 産 業 及 び 輸 送 用 燃 料 の 将 来 展 望 ~ 米 ハート 社 による 2030 年 までの 長 期 予 測 ~ 本 レポートでは 2010 年 11 月 に 米 国 ハート エネルギー コンサルティング 社 が 発 表 した 2030 年 までの 世 界 の 石 油 需 給 と 精 製 業 界 輸 送 用 燃 料 の 展 望 (A Global Crude, Refining and Clean Transportation Fuel Outlook Through 2030 2011 版 )の 概 要 を 報 告 する 1. 2030 年 までの 展 望 の 要 点 1 精 製 業 界 と 燃 料 油 市 場 は 世 界 不 況 による 大 きな 落 ち 込 みから 回 復 の 兆 しが 見 え 始 めた が 今 後 5 年 間 程 度 の 原 油 需 給 は 供 給 過 剰 で 推 移 する 22009 年 に 歴 史 的 低 水 準 に 落 ち 込 んだ 精 製 マージンは 2015 年 まで 低 迷 が 続 くが 2015 年 以 降 は 石 油 製 品 の 需 要 増 加 により 設 備 過 剰 が 解 消 され 改 善 にむかう 3 今 後 アジア 太 平 洋 地 域 は 世 界 最 大 の 石 油 製 品 消 費 地 域 となり 2030 年 には2,600 万 BPD ( 世 界 の 31%)を 消 費 すると 予 測 され 増 加 分 の 60% 以 上 は 中 国 によるものである 4 世 界 不 況 等 により 現 在 減 少 傾 向 にある 先 進 諸 国 の 石 油 需 要 は 中 長 期 的 にも 減 少 を 続 け 北 米 欧 州 日 本 のガソリン 需 要 は 2030 年 までに 合 計 約 300 万 BPD 減 少 する 5 石 油 製 品 の 需 要 構 成 の 変 化 や 徐 々に 厳 しくなる 燃 料 品 質 基 準 により 国 際 的 な 石 油 精 製 業 の 再 編 が 進 む 6 輸 送 用 燃 料 は 軽 質 低 硫 黄 化 へと 向 う しかし 石 油 由 来 の 燃 料 は 将 来 的 にも 輸 送 用 燃 料 の 太 宗 を 占 める 2. 精 製 業 界 の 経 営 環 境 の 見 通 し 世 界 景 気 の 後 退 により 2009 年 には 石 油 製 品 市 場 は 約 1.6% 縮 小 したが 以 前 の 需 要 予 測 に 基 づく 設 備 拡 張 や 現 在 建 設 中 で 5 年 以 内 に 完 成 予 定 の 製 油 所 が 数 多 く 存 在 することか ら 当 分 の 間 は 石 油 製 品 の 供 給 過 剰 は 解 消 されず 精 製 マージンの 低 迷 が 続 くことになる 1
しかし 長 期 的 な 石 油 製 品 需 要 の 伸 び 率 は 1.3%と 予 測 されることから 現 在 の 世 界 的 な 生 産 能 力 の 過 剰 状 態 は 徐 々に 緩 和 される 2015 年 以 降 には 余 剰 精 製 能 力 は 解 消 されて 再 び 設 備 拡 大 が 必 要 となる 精 製 マージンはその 後 回 復 に 向 かい 長 期 的 にはさらに 向 上 する 一 方 中 間 留 分 は 世 界 的 に 供 給 不 足 となり 特 に 欧 州 では 超 クリーンディーゼルの 供 給 不 足 が 顕 著 となる 今 後 10 年 間 精 製 業 者 にとって 中 間 留 分 は 最 重 要 課 題 であると 同 時 に 最 も 利 益 を 得 ることができる 製 品 になると 予 測 される 3. 原 油 NGL 等 の 生 産 見 通 し 政 治 的 な 安 定 により 原 油 が 安 定 的 に 開 発 / 生 産 され 原 油 価 格 が1 バレルあたり75~125 ドルを 維 持 するという 政 治 安 定 シナリオ の 場 合 世 界 の 原 油 生 産 能 力 と 埋 蔵 量 は 2030 年 に 予 測 される 原 油 需 要 9,350 万 BPD を 十 分 に 満 たすことができる ( 図 1. 参 照 ) 図 1. 世 界 の 原 油 および NGL 生 産 量 (2009 年 -2030 年 ) ( 百 万 BPD) この 価 格 帯 を 前 提 にすると 原 油 及 び NGL の 供 給 は 2010 年 から 2030 年 までの 間 に 2,260 万 BPD 増 加 すると 予 測 される 原 油 の 供 給 者 としては 2030 年 には OPEC が 世 界 の 石 油 の 約 50%を 供 給 し CIS ブラジ ル そしてカナダが 残 りの 大 部 分 を 供 給 すると 予 想 される 北 米 の 原 油 生 産 はカナダの 重 2
質 原 油 と 合 成 原 油 等 の 増 産 により 340 万 BPD 増 加 する 一 方 欧 州 およびアジア 太 平 洋 地 域 の 原 油 生 産 量 は 減 少 する 2020 年 末 までの 原 油 生 産 増 加 の 多 くは 非 OPEC 産 油 国 によっておこなわれるため OPEC の 世 界 シェアは 2020 年 末 まで 低 下 するが 2020 年 以 降 は OPEC による 大 規 模 な 増 産 がおこ なわれるため OPEC シェアは 再 び 上 昇 する 4. 原 油 の 性 状 の 変 化 2020 年 までに 軽 質 低 硫 黄 コンデンセートとカスピ 海 産 軽 質 油 の 生 産 量 が 急 増 すると 予 想 される そのため 欧 州 およびアジア 太 洋 地 域 における 従 来 の 低 硫 黄 原 油 生 産 の 減 少 は 相 殺 され 生 産 される 原 油 の 平 均 比 重 および 硫 黄 分 は 比 較 的 安 定 する しかし 2020 年 以 降 は 低 硫 黄 原 油 生 産 量 の 減 退 に 加 えて 重 質 高 硫 黄 原 油 の 需 要 が 増 加 するため 原 油 の 平 均 硫 黄 分 はやや 上 昇 する また GTL バイオ 燃 料 MTBE 等 の 供 給 量 は 2030 年 までに 世 界 で 480 万 BPD 増 加 すると 予 想 される 2009 年 の 供 給 量 200 万 BPD から 約 3.4 倍 に 増 加 となるが それでも 2030 年 で 石 油 の 供 給 量 に 対 して 約 6.0%に 留 まる ( 表 1. 参 照 ) 表 1. 液 体 燃 料 の 原 材 料 の 需 要 と 供 給 (2009 年 -2030 年 ) ( 百 万 BPD) 見 通 しおよび 予 測 2009 年 2010 年 2015 年 2020 年 2025 年 2030 年 原 油 73.46 73.79 79.54 84.12 88.42 93.52 NGL 8.14 8.74 10.18 10.86 11.34 11.59 GTL/CTL 0.22 0.25 0.61 1.25 1.49 1.56 バイオ 燃 料 1.49 1.75 2.80 3.90 4.58 4.99 MTBE/ETBE 0.32 0.33 0.33 0.28 0.27 0.26 その 他 2.16 2.27 1.02 1.16 1.51 1.74 合 計 85.79 87.13 94.48 101.57 107.61 113.66 ( 内 ) 生 焚 き 原 油 0.72 0.71 0.49 0.34 0.18 0.18 3
5. 石 油 製 品 需 要 予 測 世 界 の 石 油 製 品 の 需 要 は 2010 年 から2030 年 までの 間 年 率 1.3%で 安 定 的 に 伸 びるため この 20 年 間 で 33% 増 加 すると 予 測 される 成 長 が 最 も 顕 著 な 地 域 はアジア 太 平 洋 地 域 とそ の 他 発 展 途 上 地 域 となり その 需 要 量 は 2009 年 から 2030 年 の 間 に 1,600 万 BPD 増 加 (62% 増 )する 世 界 の 需 要 に 占 めるアジア 太 平 洋 地 域 の 割 合 は 現 在 の 31%から 2030 年 までに 37%に 増 加 するが そのうち 中 国 での 需 要 増 の 1,060 万 BPD が 圧 倒 的 に 大 きく 中 国 以 外 の 地 域 の 需 要 増 加 の 合 計 を 上 回 る ( 図 2. 参 照 ) 図 2. 世 界 における 石 油 製 品 需 要 の 増 加 (2009 年 -2030 年 ) ( 百 万 BPD %/ 年 増 加 率 ) 油 種 別 の 変 化 をみると 世 界 的 に 輸 送 用 ディーゼル 需 要 が 堅 調 に 伸 びるとともに 天 然 ガスが 重 油 に 代 替 していく 傾 向 が 続 く 石 油 製 品 の 需 要 構 成 ではガソリンと 重 油 が 減 少 し て 中 間 留 分 へ 移 行 する 2009 年 から 2030 年 の 間 に 中 間 留 分 需 要 は 1,430 万 BPD 増 加 ( 毎 年 1.9% 増 加 )し 石 油 製 品 の 中 では 最 大 の 伸 びを 示 す 世 界 のガソリン 需 要 の 高 い 伸 び 率 は 毎 年 0.7% 程 度 へと 大 幅 に 鈍 化 する また 重 油 需 要 が 減 少 するため 分 解 改 質 装 置 等 の 増 設 が 必 要 となる ( 図 3. 参 照 ) 4
その 他 LPG 残 渣 燃 料 油 中 間 留 分 ジェット 燃 料 / 灯 油 ナフサ ガソリン 図 3. 世 界 における 石 油 製 品 需 要 構 成 (2009 年 -2030 年 ) 6. 燃 料 品 質 (1) 自 動 車 用 燃 料 自 動 車 からの 汚 染 物 質 排 出 量 の 削 減 は 特 に 発 展 途 上 地 域 において 確 実 に 進 むとみられ るが 先 進 国 では 大 気 環 境 改 善 目 標 の 設 定 やエンジン 技 術 の 進 歩 により 燃 料 品 質 の 改 善 が 促 進 され 粒 子 状 物 質 排 出 量 (PM) 低 減 の 対 策 も 進 められる 先 進 国 では 気 候 変 動 問 題 が 時 に 大 きな 問 題 になる 考 えられることから 今 後 は 自 動 車 の 排 出 規 制 や 燃 料 効 率 ばかりではなく 気 候 変 動 問 題 によっても 燃 料 品 質 規 格 が 左 右 される 可 能 性 が 高 い 1 世 界 燃 料 憲 章 (WWFC)による 品 質 改 善 目 標 : WWFC の 先 進 燃 料 設 計 における 改 善 目 標 は 原 則 としてガソリンとディーゼルについては 硫 黄 分 ゼロであり さらにガソリンについて は 蒸 留 性 状 走 行 性 能 指 数 (DI) 見 直 し ディーゼルについてはセタン 価 の 引 き 上 げが 含 まれる 尚 ガソリン 芳 香 族 分 の 水 準 についても 更 なる 見 直 しが 行 われるであろう また 燃 料 品 質 目 標 にはガソリンとディーゼルの 両 方 について 燃 料 品 質 規 格 の 蒸 留 範 囲 を 狭 め 世 界 の 仕 様 を 一 致 させることが 含 まれている 2 温 室 効 果 ガス 対 策 : 欧 州 では 再 生 可 能 燃 料 指 令 や 燃 料 品 質 指 令 によって 既 にその 対 策 を 進 めている 米 国 では 2007 年 エネルギー 自 立 安 全 保 障 法 により 自 動 車 燃 費 基 準 という 形 で 燃 料 消 費 量 削 減 を 目 指 す 政 策 を 導 入 している 温 室 効 果 ガス 対 策 のために 二 酸 化 炭 素 排 出 量 を 管 理 する 先 進 国 の 政 策 は 地 域 ごとに 多 種 多 様 となる 可 能 性 が 高 い 5
3ガソリン 品 質 向 上 の 動 き オクタン 価 向 上 への 要 望 が 北 米 以 外 の 多 くの 地 域 特 に 燃 費 効 率 や 温 室 効 果 ガス 排 出 量 の 問 題 に 敏 感 な 地 域 で 強 くなっている 主 に 欧 州 CIS およびアジア 太 平 洋 地 域 で 圧 縮 比 引 き 上 げや 燃 費 を 改 善 するガソリン 直 接 噴 射 エンジン(GDI)のような 技 術 を 可 能 にす るために 高 オクタン 化 (および 超 低 硫 黄 分 )を 求 める 動 きが 顕 著 である ガソリン 中 の 硫 黄 分 については アフリカを 除 く 世 界 の 全 地 域 で 2020 年 までに 平 均 150 ppm 以 下 に 削 減 される 世 界 のほとんどの 国 でガソリン 中 の 硫 黄 分 は 2030 年 までに 50ppm 以 下 になると 予 測 される 2015 年 までに 世 界 のガソリン 需 要 の 80%が 硫 黄 分 50ppm 以 下 になり 2020 年 までに 需 要 の 69%が 硫 黄 分 10ppm 以 下 で 硫 黄 分 が 500ppm 以 上 のガソリンの 需 要 はほぼなくなる 2030 年 までには 硫 黄 分 が 50ppm 以 上 のガソリンへの 需 要 はわずか 3.6%になる ガソリン 中 のベンゼン 含 有 量 は 2015 年 までに 世 界 (アフリカを 除 く)で 1.6vol% 以 下 に なり 大 部 分 は 2025 年 までに 1.0vol% 以 下 となる 4ディーゼルの 品 質 向 上 への 動 き 今 後 ディーゼルの 硫 黄 分 削 減 のために 二 次 装 置 増 強 が 必 要 となり 精 製 業 界 にとって 操 業 上 財 政 上 の 最 大 の 課 題 となるだろう 先 進 国 では 2010 年 までにオンロード 用 ディーゼルは 超 低 硫 黄 分 (10-50ppm)へと 移 行 す るだろう 発 展 途 上 国 は50ppm 以 下 へ 移 行 する 前 に まず 硫 黄 分 350-500ppmを 目 指 すと 考 えられる 2015 年 までには アフリカを 除 く 全 世 界 で 平 均 硫 黄 分 が 500ppm 以 下 になる アフリカについては 南 アフリカ 共 和 国 とその 他 の 数 ヶ 国 でディーゼル 中 の 硫 黄 分 を 50-500ppm へ 移 行 する 計 画 をもっているが その 他 のアフリカ 諸 国 では 2025 年 までに 硫 黄 分 を 500ppm 以 下 に 引 き 下 げることはないと 予 測 される (2) IMO( 国 際 海 事 機 関 )による 海 上 での 排 出 規 制 の 動 き 現 在 各 国 で ECA( 排 出 規 制 海 域 : Emission Control Area)を 指 定 しようとする 動 きが 進 んでいる 国 際 海 事 機 関 (IMO)は 2005 年 に 付 属 書 VI を 批 准 したが これは 海 上 での 排 出 規 制 のた めの 初 期 の 規 制 の 枠 組 みを 規 定 するものである 6
IMO の 取 り 組 みによって SO X PM NO X に 関 わる 三 種 類 の ECA の 根 拠 が 設 定 された しか し 現 在 のところ 硫 黄 酸 化 物 排 出 規 制 海 域 (SECA)が 欧 州 のバルト 海 と 北 海 が 指 定 されて いるだけである また 2008 年 4 月 IMO の 海 洋 環 境 保 護 委 員 会 (MEPC)はバンカー 重 油 の 硫 黄 分 に 対 し 世 界 的 により 厳 しい 規 制 を 課 すために 付 属 書 VI の 改 定 を 決 定 している これを 受 けた 同 年 10 月 の MEPC の 決 定 により 2010 年 7 月 以 降 SECA 内 で 使 用 する 船 舶 用 燃 料 の 硫 黄 分 は 1.5wt%から 1.0wt%に 引 き 下 げられ さらに 2015 年 1 月 以 降 はさらに 引 き 下 げられ 0.1wt%となる また 2009 年 7 月 の IMO 会 議 で 米 国 とカナダが 提 出 した 北 米 の 海 岸 線 を ECA に 指 定 する 提 案 が 承 認 されたことから 2012 年 8 月 以 降 北 米 では 舶 用 燃 料 中 の 硫 黄 含 有 量 1.0wt% 制 限 が 実 施 される 一 方 一 般 海 域 での 硫 黄 分 の 上 限 は 2012 年 1 月 以 降 現 在 の 4.5wt%から 3.5wt%に 引 き 下 げられ 2020 年 (または 2025 年 )1 月 以 降 はさらに 0.5wt%に 引 き 下 げられる 硫 黄 分 の 上 限 3.5wt%は バンカー 燃 料 の 大 半 がすでにこの 基 準 を 満 たしているため 影 響 は 小 さい が 上 限 が 0.5wt%になれば 大 きな 影 響 がでるだろう これに 関 しては 付 属 書 Ⅵに 基 づいて 2018 年 に 見 直 しが 予 定 されており その 時 点 で 低 硫 黄 燃 料 油 の 供 給 量 が 十 分 であるか 否 かを 判 断 する 供 給 量 が 十 分 でない 場 合 船 舶 用 燃 料 における 硫 黄 分 の 0.5wt%への 引 き 下 げは 2025 年 まで 延 期 される 当 報 告 書 での 2025 年 と2030 年 の 予 測 は 0.5wt%の 硫 黄 分 が 適 用 されるとの 想 定 に 基 づい ているおり バンカー 市 場 の 一 部 は 船 舶 向 け 中 間 留 分 に 切 り 替 わり 残 りの 船 舶 用 燃 料 市 場 は 引 き 続 き 重 油 が 供 給 されると 想 定 している 7. 精 製 能 力 の 増 加 と 製 油 所 装 置 構 成 の 変 化 アジア 太 平 洋 地 域 の 石 油 製 品 需 要 の 増 加 および 品 質 基 準 の 強 化 により 今 後 精 製 業 者 は 精 製 能 力 の 増 強 や 製 油 所 装 置 構 成 の 高 度 化 を 余 儀 なくされることになろう 常 圧 蒸 留 能 力 は(2009 年 の 8,938 万 BPD から)2015 年 までに 620 万 BPD の 拡 張 が 必 要 と なるが 現 在 確 認 されている1,040 万 BPDの 拡 張 計 画 はこの 必 要 を 満 たすのに 十 分 である 7
2015 年 から 2030 年 の 間 に 処 理 能 力 はさらに 1,720 万 BPD の 拡 張 が 必 要 になる 常 圧 蒸 留 必 要 量 は 2009 年 から 26% 増 の 1 億 1,280 万 BPD となる ( 図 4. 参 照 ) 図 4. 世 界 における 常 圧 蒸 留 能 力 (2009 年 -2030 年 ) ( 百 万 BPD) 処 理 能 力 の 拡 大 製 品 間 における 需 要 のシフトおよび 原 油 品 質 の 重 質 化 により 2009 年 から 2030 年 の 間 に 製 油 所 設 備 における 分 解 改 質 能 力 ( 接 触 分 解 水 素 化 分 解 およびコー カー)は 約 46%の 増 強 が 必 要 になるだろう ガソリンの 製 造 能 力 ( 改 質 アルキル 化 および 異 性 化 )も 需 要 増 および 製 品 品 質 の 変 化 に 合 わせるため 大 幅 な 拡 大 が 必 要 となる バイオ 燃 料 高 オクタン 基 材 の 増 加 がガソリ ン 製 造 能 力 の 一 部 を 補 うことになるが 世 界 的 なガソリン 製 造 能 力 は 2030 年 までに 24% 増 加 する 低 硫 黄 超 低 硫 黄 のガソリン 及 び 中 間 留 分 の 需 要 増 により 世 界 の 脱 硫 能 力 の 大 幅 な 拡 大 が 必 要 になる 2030 年 までには 水 素 化 脱 硫 装 置 の 必 要 能 力 が 2,410 万 BPD(49%) 増 加 し そのなかでも 中 間 留 分 の 脱 硫 能 力 は 1,420 万 BPD 増 加 (65% 増 )が 必 要 となる ( 図 5. 参 照 ) 8
2009 年 2010 年 2015 年 2020 年 2025 年 2030 年 図 5. 世 界 における 水 素 化 処 理 能 力 (2009 年 -2030 年 ) ( 百 万 BPD) アジア 太 平 洋 地 域 において 2030 年 までに 増 加 が 必 要 な 原 油 処 理 能 力 は 1,240 万 BPD と 予 測 される アジア 太 平 洋 地 域 の 精 製 業 者 にとっては 中 間 留 分 の 脱 硫 が 最 も 差 し 迫 った 問 題 になるだろう 製 品 需 要 の 高 い 伸 び 原 油 の 重 質 化 低 硫 黄 化 に 向 かう 製 品 規 格 がすべ て 組 み 合 わさった 結 果 として 精 製 業 者 は 2030 年 までに 中 間 留 分 の 水 素 化 処 理 能 力 を 約 60% 拡 大 する 必 要 がある ( 表 2. 参 照 ) 表 2. 世 界 の 精 製 能 力 推 移 の 予 測 (2010 年 ~2030 年 ) ( 百 万 BPD) 2010 年 (1 月 時 点 ) 2010 年 末 2015 年 末 2020 年 末 2025 年 末 2030 年 末 常 圧 蒸 留 装 置 89.38 89.79 95.65 100.96 106.85 112.80 ガソリン 製 造 装 置 16.09 16.12 17.13 17.73 19.11 20.02 リフォーミング 12.36 12.37 13.15 13.65 14.73 15.55 異 性 化 1.45 1.47 1.67 1.73 2.00 2.09 アルキル 化 2.28 2.28 2.31 2.35 2.38 2.38 分 解 装 置 28.21 28.28 31.43 34.17 38.25 41.12 コーカー 5.49 5.55 6.47 7.09 9.08 10.46 接 触 分 解 16.41 16.41 17.44 18.48 19.10 19.56 水 素 化 分 解 6.31 6.32 7.52 8.60 10.07 11.10 水 素 化 脱 硫 装 置 48.98 50.00 56.36 60.83 69.01 73.09 ガソリン 3.30 3.32 3.65 4.59 5.10 5.83 ナフサ 15.48 15.50 16.39 16.87 17.95 19.00 中 間 留 分 21.77 22.68 27.36 30.22 33.80 36.00 重 質 油 / 残 渣 8.43 8.50 8.96 9.15 12.16 12.26 9
アジア 太 平 洋 地 域 の 精 製 業 者 は 製 品 需 要 の 増 加 や ガソリン 中 間 留 分 の 品 質 基 準 を 満 たすため 製 品 輸 入 の 増 加 に 加 えて 分 解 改 質 能 力 の 増 強 (560 万 BPD 67% 増 )やガソリ ン 製 造 能 力 の 増 強 (170 万 BPD 51% 増 ) 必 要 になるだろう また 中 東 では 2009 年 以 降 国 内 需 要 と 輸 出 需 要 がともに 急 増 することから 2030 年 までに 常 圧 蒸 留 能 力 を 680 万 BPD(87% 増 加 )に 大 幅 に 増 強 する 必 要 がある また 自 国 内 の 重 油 生 産 を 最 小 限 にして 自 動 車 用 燃 料 需 要 増 と 製 品 輸 出 の 拡 大 に 対 応 するため 2009 年 から 2030 年 にかけて 分 解 改 質 能 力 は 現 在 の 2 倍 以 上 が 必 要 になる 輸 出 用 石 油 製 品 の 硫 黄 分 規 制 に 対 応 するため 中 間 留 分 の 水 素 化 処 理 能 力 は 2030 年 までに 380 万 BPD の 増 加 が 必 要 になる 8. 再 生 可 能 燃 料 の 展 望 再 生 可 能 燃 料 開 発 について 現 在 大 きな 進 展 がみられるのは 米 国 ラテンアメリカ(ブ ラジル)と 欧 州 であるが 将 来 はアジア 太 平 洋 地 域 でも 大 きな 発 展 が 見 込 まれる ( 表 3. 参 照 ) 世 界 の 再 生 可 能 バイオ 燃 料 消 費 量 は 2030 年 までに 150 万 BPD から 500 万 BPD に 増 加 す る 再 生 可 能 燃 料 は 2030 年 までに 全 世 界 のガソリン 中 間 留 分 市 場 の 7.1%を 占 めるよう になるだろう 2009 年 から 2030 年 にかけてはエタノールが 世 界 の 再 生 可 能 燃 料 の 使 用 増 加 の 大 半 を 占 めるであろう また 2030 年 までは 北 米 ラテンアメリカおよび 欧 州 が 消 費 量 全 体 の 70% を 占 めることになる バイオディーゼルおよび 再 生 可 能 ディーゼルは 2030 年 までに 再 生 可 能 燃 料 増 加 分 120 万 BPD を 供 給 することになり その 大 半 ( 約 85%)はラテンアメリカ 欧 州 アジア 太 平 洋 地 域 の 市 場 で 消 費 される 2030 年 においても 米 国 は 依 然 として 世 界 最 大 のエタノール 生 産 国 かつ 消 費 国 であると 予 想 される ブラジルは 引 き 続 き 低 価 格 エタノール 生 産 国 であり 世 界 市 場 を 相 手 にした 最 大 のエタノール 輸 出 国 となるだろう 10
表 3. 地 域 別 バイオ 燃 料 消 費 量 (2009 年 -2030 年 ) ( 百 万 BPD) 地 域 別 エタノール 2009 年 2010 年 2015 年 2020 年 2025 年 2030 年 消 費 量 北 米 0.69 0.86 1.12 1.33 1.54 1.42 ラテンアメリカ 0.39 0.38 0.65 0.82 1.00 1.11 欧 州 0.08 0.09 0.16 0.24 0.21 0.19 CIS 0.00 0.00 0.03 0.05 0.09 0.14 アジア 太 平 洋 地 域 0.06 0.08 0.19 0.45 0.56 0.59 中 東 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 アフリカ 0.00 0.00 0.02 0.05 0.07 0.08 合 計 1.22 1.41 2.17 2.94 3.47 3.53 地 域 別 バイオディーゼル 消 費 量 2009 年 2010 年 2015 年 2020 年 2025 年 2030 年 北 米 0.02 0.02 0.06 0.06 0.08 0.08 ラテンアメリカ 0.03 0.06 0.14 0.19 0.21 0.33 欧 州 0.21 0.23 0.30 0.46 0.47 0.47 CIS 0.00 0.00 0.01 0.01 0.02 0.05 アジア 太 平 洋 地 域 0.01 0.03 0.11 0.21 0.27 0.46 中 東 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 アフリカ 0.00 0.00 0.01 0.03 0.06 0.07 合 計 0.27 0.34 0.63 0.96 1.11 1.46 本 資 料 は ( 財 ) 石 油 産 業 活 性 化 センターの 情 報 探 査 で 得 られた 情 報 を 整 理 分 析 したものです 無 断 転 載 複 製 を 禁 止 します 本 資 料 に 関 するお 問 い 合 わせは pisap@plaza.pecj.or.jp までお 願 いします Copyright 2011 Petroleum Energy Center all rights reserved 11