シンポジウム「『女性と年金』~女性活躍と出産育児配慮の在り方を求めて~」



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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

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(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

女性のための年金学

[ 組 合 員 期 間 等 の 特 例 ] 組 合 員 期 間 等 については 年 齢 職 種 などにより 過 去 の 制 度 からの 経 過 措 置 が 設 けられ ており 被 用 者 年 制 度 の 加 入 期 間 ( 各 共 済 組 合 の 組 合 員 期 間 など)については 生 年 月 日

年 間 収 入 が 130 万 円 未 満 (60 歳 以 上 75 歳 未 満 の 人 や 一 定 障 害 者 の 場 合 は 180 万 円 未 満 )であって かつ 被 保 険 者 の 年 間 収 入 の 2 分 の 1 未 満 である 場 合 は 被 扶 養 者 となります ( 同 居 の

資料2 年金制度等について(山下委員提出資料)

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社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

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減 少 率 ) と 平 均 余 命 の 伸 びを 勘 案 した 一 定 率 (0.3%) の 合 計 である スライド 調 整 率 を 差 し 引 いて 年 金 額 の 改 定 が 行 われる( 図 表 ) ただし マクロ 経 済 スライドが 完 全 に 実 施 されるのは 賃 金 や 物 価 があ

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

    平成11年度余市町私立幼稚園就園奨励費補助金交付要綱

総論

年 金 払 い 退 職 給 付 制 度 における 年 金 財 政 のイメージ 積 立 時 給 付 時 給 付 定 基 (1/2) で 年 金 を 基 準 利 率 で 付 利 給 付 定 基 ( 付 与 利 の ) 有 期 年 金 終 身 年 金 退 職 1 年 2 年 1 月 2 月 ( 終 了 )

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も く じ 1 税 源 移 譲 1 2 何 が 変 わったのか 改 正 の 3 つ の ポイント ポイント1 国 から 地 方 へ 3 兆 円 規 模 の 税 源 が 移 譲 される 2 ポイント2 個 人 住 民 税 の 税 率 構 造 が 一 律 10%に 変 わる 3 ポイント3 個 々の 納

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プラス 0.9%の 年 金 額 改 定 が 行 われることで 何 円 になりますか また どのような 計 算 が 行 われているのですか A これまでの 年 金 額 は 過 去 に 物 価 が 下 落 したにもかかわらず 年 金 額 は 据 え 置 く 措 置 をと った 時 の 計 算 式 に 基

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越前米

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別紙3

不 動 産 所 得 の 赤 字 < 土 地 等 の 取 得 の 負 債 利 子 なら 300 万 500 万 不 動 産 所 得 の 赤 字 300 万 のうち 利 子 分 の500 万 は 通 算 できない = 赤 字 分 の300 万 は 全 額 通 算 できないことになる = 損 益 通 算

m07 北見工業大学 様式①

年 支 給 開 始 年 齢 図 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 ( 給 料 比 例 部 分 ) 昭 和 29 年 10 月 1 日 生 まれ 以 前 ~ 特 別 支 給 の 退 職 共 済 年 老 齢 厚 生 年 昭 和 25 年 10 月 1 日 生 まれ 以 前 ~ 退 職 共 済 年

3 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 及 び の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 ( ベース) ,9 47,78 369,884 崎 県 , , ,

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Ⅰ 年 金 制 度 昭 和 37 年 12 月 1 日 に 地 方 公 務 員 等 共 済 組 合 法 が 施 行 され 恩 給 から 年 金 へ 昭 和 61 年 4 月 から 20 歳 以 上 60 歳 未 満 のすべての 国 民 が 国 民 年 金 に 加 入 厚 生 年 金 基 金 職 域

ほかに パート 従 業 員 らの 厚 生 年 金 加 入 の 拡 大 を 促 す 従 業 員 五 百 人 以 下 の 企 業 を 対 象 に 労 使 が 合 意 すれば 今 年 十 月 から 短 時 間 で 働 く 人 も 加 入 できる 対 象 は 約 五 十 万 人 五 百 人 超 の 企 業

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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

第25回税制調査会 総25-1

らの 内 容 について 規 定 することとしております 今 回 お 示 しする 整 理 は 現 時 点 の 案 ですので あらかじめご 承 知 おき 下 さい 同 令 等 の 改 正 規 定 が 確 定 し 次 第 改 めてご 連 絡 をさせていただきます 記 1 軽 減 措 置 の 具 体 的 な

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共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

平成16年度

(2) 国 民 年 金 の 保 険 料 国 民 年 金 の 第 1 号 被 保 険 者 および 任 意 加 入 者 は, 保 険 料 を 納 めなければなりま せん また,より 高 い 老 齢 給 付 を 望 む 第 1 号 被 保 険 者 任 意 加 入 者 は, 希 望 により 付 加 保 険

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

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国民年金

公営住宅法施行令の一部を改正する政令―公営住宅法施行令例規整備*

2 職 員 の 平 均 給 与 額 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 額 及 び 平 均 給 与 額 の 状 況 ( 平 成 27 年 4 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 東 京 二 十 三 清 掃 一 部 事 務 組 合 平 均 年 齢 平 均 給 料 額

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

Q1 4 月 から 児 童 手 当 の 支 給 額 はどうなるのですか? Q2 児 童 手 当 には 所 得 制 限 が 設 けられるとのことですが 具 体 的 な 基 準 はどのよう になるのですか? Q3 4 月 以 降 児 童 手 当 を 受 け 取 るためには 手 続 きが 必 要 ですか?

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 最 高 号 給 の 給 料 月 額 243,7 37,8 35

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

児童扶養手当(大阪府)

平 成 9 年 2 月 号 税 制 改 正 情 報 第 0 号 今 回 のテーマ 大 久 保 久 美 子 年 末 調 整 の 今 年 の 変 更 点 今 年 も 残 すところヶ 月 ほどとなり 年 末 調 整 の 時 期 となりました そこで 今 回 は 今 年 の 年 末 調 整 における 変 更

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◆併給の調整◆

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子ども手当見直しによる家計への影響~高所得者層の可処分所得は大幅減少に

所 得 税 と 住 民 税 の 税 率 表 所 得 税 と 住 民 税 の 税 率 は 以 下 の 通 りです 退 職 所 得 の 場 合 も この 税 率 表 を 使 います 1. 平 成 19 年 1 月 1 日 以 降 ( 所 法 891) 課 税 所 得 所 得 税 率 控 除 額 ~195

後期高齢者医療制度

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

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公表資料02【案1】0806印刷用<厚生年金・国民年金の平成26年度収支決算の概要>

波佐見町の給与・定員管理等について

給 与 所 得 者 の 住 民 税 は 特 別 徴 収 されますが 退 職 で 給 与 が 支 払 われなくなった 場 合 給 与 からの 天 引 きを することができなくなります この 場 合 特 別 徴 収 ができなくなる 残 額 について 普 通 徴 収 の 方 法 で 納 付 していた だく

申 請 免 除 申 請 免 除 ( 学 生 以 外 ) 学 生 納 付 特 例 制 度 若 年 者 納 付 猶 予 制 度 法 定 免 除 世 帯 構 成 図 表 1 国 民 年 金 保 険 料 の 免 除 の 種 類 と 所 得 基 準 本 人 世 帯 主 配 偶 者 の 所 得 に 応 じて 免

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(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

資料1-2 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案要綱

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一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 3 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 級 3 級 4 級 5 級 6 級 単 位 : ( ) 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 137, 163,7 4,9 31,4 71, 33,3 359,7 最 高 号 給 の 給 料 月 額

平成21年10月30日


遡及処理

第 2 問 問 4 問 5 1ロ 2チ 3ヲ 4ホ ⅰ)Aさんは 今 年 の 誕 生 日 で 40 歳 となるので 公 的 介 護 保 険 の(1 第 2 号 ) 被 保 険 者 資 格 を 取 得 し 介 護 保 険 料 を 負 担 することになる 40 歳 以 上 65 歳 未 満 の 医 療

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公 的 年 金 等 控 除 額 とは 年 金 収 入 から 差 し 引 くことのできる 金 額 で 差 引 後 の 金 額 が 雑 となります 公 的 年 金 等 収 入 金 額 - 公 的 年 金 等 控 除 額 = 雑 これまでは この 公 的 年 金 等 控 除 額 は 65 歳 以 上 の

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 現 況 ( 平 成 22 1 号 給 の 給 料 月 額 137,9 188,9 226,7 266,4 294,3 最 高 号 給 の 給 料 月 額 247,9 314,9 362,8 399,9 415,1 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制

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国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

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3

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

種 類 控 除 額 小 規 模 企 業 共 済 等 掛 金 控 除 生 命 保 険 料 控 除 地 震 保 険 料 控 除 支 払 った 小 規 模 共 済 心 身 障 害 者 扶 養 共 済 の 掛 金 の 金 額 生 命 保 険 料 控 除 額 = 一 般 生 命 保 険 料 控 除 額 + 個

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技 能 労 務 職 平 均 年 齢 歳,7 平 均 給 料 月 額 歳 7,,8, 歳,9,57, 7,7 7,9 9,5 - (8,85) (5,) 類 似 団 体 5. 歳 9,8 9, 85, ( 注 ) 平 均 給 料 月 額 とは 平 成 5 年 月 日 現 在 における

資料1:勧告の仕組みとポイント 改【完成】

養 老 保 険 の 減 額 払 済 保 険 への 変 更 1. 設 例 会 社 が 役 員 を 被 保 険 者 とし 死 亡 保 険 金 及 び 満 期 保 険 金 のいずれも 会 社 を 受 取 人 とする 養 老 保 険 に 加 入 してい る 場 合 を 解 説 します 資 金 繰 りの 都

1 総括

Transcription:

シンポジウム 女 性 と 年 金 ~ 女 性 活 躍 と 出 産 育 児 配 慮 の 在 り 方 を 求 めて~ 日 時 : 平 成 27 年 11 月 26 日 ( 木 )14:00~17:00 会 場 : 東 海 大 学 校 友 会 館 第 1 部 論 点 提 示 女 性 と 年 金 の 問 題 永 瀬 伸 子 (お 茶 の 水 女 子 大 学 基 幹 研 究 院 人 間 科 学 系 教 授 日 本 年 金 学 会 幹 事 ) 1. 女 性 と 年 金 : 論 点 整 理 <シンポジウムの 意 図 > 現 在 安 倍 政 権 では 103 万 円 の 壁 あるいは 103 万 円 の 壁 をどういうふうに 変 えようかとい うことが 話 し 合 われています このシンポジウムを 企 画 した 昨 年 は 今 ほど 新 聞 に 取 り 上 げられていま せんでしたが 女 性 と 年 金 の 在 り 方 を 考 えるシンポ ジウムをぜひ 開 きたいということで 今 回 諸 先 生 方 にお 集 まりいただきました 実 は 私 は 2000 年 に 厚 生 労 働 省 で 開 かれた 通 称 女 性 と 年 金 検 討 会 の 委 員 でした その 当 時 ものすごく 活 発 な 議 論 がありまして 新 聞 にも 毎 回 取 り 上 げられました 第 3 号 被 保 険 者 制 度 はどうなのだろうかという 否 定 的 な 意 見 と 第 3 号 被 保 険 者 制 度 は 重 要 であるという 意 見 とがあり 結 局 は 第 3 号 被 保 険 者 制 度 は 変 わりませんでし た そのときに 出 てきた 幾 つかの 案 としては 例 えば 年 金 を 夫 婦 で 分 割 する 案 ある いは 第 3 号 被 保 険 者 の 期 間 は 子 どもが 幼 いうちだけに 限 定 する 案 あるいは 第 3 号 被 保 険 者 がいる 人 といない 人 で 保 険 料 を 変 える 案 などがありました 結 局 離 婚 分 割 は 国 会 を 通 り 法 律 となりましたが その 他 はなかなか 変 えられなかったというのが 当 時 だったのではないかと 思 います それから 15 年 たち 日 本 の 年 金 をめぐる 状 況 は 一 層 変 わってきました 一 つは 働 く 女 性 が 増 加 してきたこと 一 方 で 当 時 と 比 べても 男 性 も 女 性 も 雇 用 が 不 安 定 化 し 非 正 規 雇 用 が 増 えてきたこと それから 家 族 という 点 では 無 配 偶 男 女 が 増 えて 生 涯 シングルも 増 えてきたこと そして 高 齢 期 に 子 ども 夫 婦 と 同 居 する 者 が 大 幅 に 減 少 したこと さらに これから 先 を 見 通 すと 25 年 後 には 65 歳 以 上 人 口 が 4 割 にな ると 予 想 されており その 点 からも 女 性 と 年 金 の 在 り 方 を 新 たに 考 えていく 必 要 があると 思 われます 老 後 の 年 金 は 手 厚 いことに 越 したことはないわけですが こういった 変 化 の 中 で 現 役 女 性 の 年 金 加 入 はどういうものを 考 えていったらいいのか それから 高 齢 期 の 2

女 性 の 年 金 給 付 上 の 配 慮 はどういうふうに 変 えていったらいいのかということです 現 在 女 性 への 配 慮 としては 第 3 号 被 保 険 者 制 度 遺 族 年 金 離 婚 分 割 育 児 期 間 などがあります サラリーマンの 妻 に 対 する 配 慮 は 比 較 的 ありますが 低 賃 金 の 単 身 の 方 非 正 規 雇 用 のご 夫 婦 母 子 世 帯 の 母 等 への 年 金 上 の 配 慮 はかなり 薄 いものと なっており 老 後 の 年 金 が 不 十 分 な 場 合 は 生 活 保 護 に 行 かざるを 得 ない 状 況 です 生 涯 シングルの 女 性 が 増 え 低 所 得 世 帯 の 妻 や 離 別 女 性 母 子 世 帯 も 増 えていく 中 で 女 性 が 自 分 で 老 後 に 備 えられる 仕 組 みをもっと 拡 大 していく 必 要 があるのではない かと 考 えます ただし 女 性 と 年 金 ということになると 2000 年 の 会 議 のときも そうだったのですが ご 自 身 のご 家 族 自 分 の 奥 さんの 働 き 方 がどうであるかによっ てそれぞれのお 一 人 お 一 人 の 考 え 方 がかなり 変 わると 思 うのです 私 は 大 学 の 教 員 をしているので 永 瀬 さんには 分 からないよ と 言 われるのです が 私 は 結 婚 してから 途 中 までは 第 3 号 被 保 険 者 で 第 2 子 が 2 歳 になったときに 第 2 号 被 保 険 者 になりました その 途 中 に 第 1 号 被 保 険 者 の 期 間 があります です から 第 3 号 被 保 険 者 第 1 号 被 保 険 者 第 2 号 被 保 険 者 を 経 験 した 当 事 者 でもあ ります あまり 年 齢 は 言 いたくないのですが 生 まれ 年 がどの 辺 かというのはとても 重 要 だと 思 います 私 は 均 等 法 の 前 に 就 職 していて つまり 1960 年 ごろに 生 まれま した その 頃 の 私 の 同 級 生 の 多 くは 結 婚 退 職 か 出 産 退 職 をしています 友 人 たちのそ の 後 はいろいろでして 生 涯 シングルの 方 もいますし 私 のように 仕 事 に 本 格 的 に 戻 った 人 もいます それから 主 婦 として 103 万 円 ぐらいまでで 働 いている 方 もいま す 日 本 全 体 の 統 計 を 見 ると いったん 辞 めた 妻 は 大 体 103 万 円 ぐらいまでで 働 い ている 方 が 多 いというのが 私 の 世 代 の 日 本 の 女 性 像 です そういう 女 性 像 を 支 えているのが 男 性 の 長 期 雇 用 の 安 定 的 な 働 き 方 であり 女 性 については 第 3 号 被 保 険 者 制 度 をはじめとする 社 会 保 障 制 度 です しかしながら 今 後 現 役 人 口 が 大 きく 減 り 高 齢 人 口 が 増 えるような 社 会 において また 子 どもが 持 ち にくい 状 況 を 緩 和 すべき 社 会 において 社 会 保 障 女 性 と 年 金 についてどういうふう に 考 え 直 す 必 要 があるのか 新 たに 議 論 討 論 することが 重 要 と 考 えています こんなことを 考 えていたときに 年 金 と 経 済 という 雑 誌 から 2014 年 の 政 府 の 財 政 検 証 について 特 にパートの 厚 生 年 金 への 適 用 拡 大 オプション 試 算 の 結 果 につ いての 論 文 依 頼 がありました これから 先 年 金 水 準 がどんどん 下 がっていくだろう という 試 算 結 果 についてです 注 意 深 く 読 むと 経 済 成 長 が 中 位 の 試 算 において 私 の 世 代 すなわち 1960 年 生 まれですが 65 歳 になったときに 今 の 賃 金 で 夫 婦 で 20 万 2000 円 ぐらいをモデル 年 金 で 頂 けると 試 算 されていました しかしながら その 後 はマクロ 経 済 スライドでどんどん 年 金 水 準 は 下 がっていき ありそうな 経 済 のケー スでも 85 歳 のときに 夫 婦 で 14 万 円 ぐらいに 下 がるとの 検 証 結 果 が 示 されていた のです なお 財 政 検 証 では 現 役 の 代 替 率 としてのパーセンテージしか 出 されていま せんのでこの 金 額 そのものが 示 されていたわけではありません 代 替 率 から 現 在 の 賃 金 をもとに 賃 金 表 示 したものです モデル 年 金 というのは 夫 が 40 年 平 均 賃 金 で 働 いて 奥 さんも 専 業 主 婦 という 世 帯 ですが そこの 年 金 が 85 歳 ぐらいになるまで に 20 万 円 から 14 万 円 ぐらいにまで 下 がっていくという 見 通 しが 出 されたわけです 3

このような 状 況 に 対 抗 する 方 法 として 厚 生 労 働 省 はオプション 試 算 1 2 という のを 出 しています オプション 試 算 2 というのは 月 5.8 万 円 以 上 稼 ぐ 人 は 全 員 が 第 2 号 被 保 険 者 になり 第 1 号 被 保 険 者 の 人 も 月 5.8 万 円 以 上 稼 ぐ 人 は 全 員 が 第 2 号 被 保 険 者 に 入 るという 試 算 です そうすると 第 2 号 被 保 険 者 が 1200 万 人 増 え 年 金 財 政 がかなり 改 善 され 年 金 低 下 ももう 少 し 小 幅 で 済 むという 試 算 でした なおオ プション 試 算 1 とはほんの 少 しパートの 年 金 加 入 がすすむという 試 算 で 影 響 は 小 さ いものです そういう 試 算 を 読 んだわけですが そのような 大 きな 変 更 をルール 化 すればそれ で 女 性 たちが 喜 んで 第 2 号 被 保 険 者 になるでしょうか これを 疑 問 に 思 いました 現 在 では 103 万 円 103 万 円 までの 方 が 得 だということで 就 業 調 整 が 起 きているよ うな 状 況 があるので ルールをつくっただけではそう 簡 単 に 第 2 号 被 保 険 者 には 移 動 しないでしょう 第 3 号 被 保 険 者 制 度 を 含 めて 年 金 の 在 り 方 を 大 きく 再 考 する 必 要 があるというと 思 うということをその 雑 誌 に 書 きました そのための 工 夫 とし て 少 しでも 収 入 がある 人 には 同 じように 社 会 保 険 料 を 賦 課 する しかしベンドポイ ント 制 をとり 低 賃 金 の 人 には 相 対 的 に 高 い 給 付 を 与 える 加 えて 育 児 期 間 の 考 慮 再 就 職 の 評 価 といったような 試 案 を 書 きました これは1つの 試 案 にすぎませんが 女 性 が 年 金 に 入 るのに どういう 課 題 があっ て また 高 齢 化 のすすむ 社 会 に 向 けてどういうことを 考 えていったらいいのかは 重 要 な 課 題 です すぐさまの 一 致 した 答 えは 出 ないかもしれませんが 大 勢 の 先 生 方 の 知 恵 を 絞 り 議 論 できればと 存 じます まず 現 在 の 制 度 についてお 話 しするのが 私 の 役 目 ですので そのようにさせてい ただきます 2. 女 性 への 年 金 配 慮 : 第 3 号 被 保 険 者 制 度 <1985 年 改 正 の 制 度 設 立 当 時 の 意 味 > 1985 年 の 年 金 の 大 改 正 は ちょうど 私 が 20 代 のころです その 時 に 第 3 号 被 保 険 者 制 度 が 通 りました 図 1の 左 側 をご 覧 ください 厚 生 労 働 省 の 資 料 からです が 定 額 部 分 というのは 賃 金 が 低 い 人 でも 高 い 人 でも 雇 用 者 であれば 同 じように もらえる 部 分 で 当 時 のモデル 年 金 では 32 年 加 入 で 7 万 6800 円 でした また 奥 さんがいる 人 には 1 万 5000 円 の 加 給 年 金 がありました それから 報 酬 比 例 部 分 は 給 料 が 高 い 人 はたくさん 低 い 人 は 少 しもらえるという 年 金 の 部 分 で 当 時 のモ デル 年 金 では 81300 円 でした 1985 年 改 正 の 後 は 図 1の 右 側 ですが すぐさま 給 付 が 変 わるわけではありません 当 時 の 20 代 の 人 つまり 私 の 世 代 ですが が 60 歳 になったときにはこういう 制 度 が 完 成 するという 改 正 です その 完 成 図 ですが 具 体 的 には 妻 分 に 月 5 万 円 の 年 金 ができ 夫 分 に 5 万 円 の 基 礎 年 金 ができるとされました これが 現 在 では 一 人 あ たり 月 約 6 万 5000 円 になっている 基 礎 年 金 のことです それから 報 酬 比 例 部 分 は 昔 は 32 年 加 入 だったのが 40 年 加 入 がモデル 年 金 となり 1 年 あたりの 加 入 に 4

対 する 給 付 乗 率 が 下 がる そのため 報 酬 比 例 部 分 は 少 し 小 さくなり モデル 年 金 で 76200 円 となると 示 されています しかし 離 婚 しなければ 改 正 前 も 改 正 後 も 夫 婦 世 帯 のモデル 年 金 は 17 万 円 強 と 変 わらず ただし 奥 さん 名 義 の 年 金 ができるのだと 1985 年 改 正 は 説 明 されました 1985 年 の 40 代 の 女 性 というと 主 婦 が 多 かったので この 改 正 は 比 較 的 歓 迎 され ました しかしその 後 この 改 正 は 専 業 主 婦 優 遇 なのではないか と 言 う 単 身 女 性 の 方 たちも 増 えました 図 2をご 覧 ください 改 正 前 は 賃 金 が 低 い 人 も 高 い 人 も 働 く 者 が 共 通 にもらう 定 額 部 分 が 7 万 6800 円 でした それが 単 身 だと 5 万 円 に 縮 小 し てしまいます それから 報 酬 比 例 部 分 ですが 女 性 は 平 均 では 男 性 の 賃 金 の 半 分 程 度 しか 得 られていませんので 報 酬 比 例 部 分 も 小 さい つまり 夫 婦 世 帯 であれば 1985 年 改 正 でも 年 金 給 付 水 準 は 変 わらなかったのですが 単 身 もしくは 共 働 きの 場 合 はプラス 5 万 円 の 分 がありません その 上 で 定 額 部 分 が 縮 小 し 乗 率 が 下 がった ので 共 働 きおよび 単 身 特 に 低 所 得 の 層 の 単 身 については 時 間 をかけながら 年 金 水 準 が 下 がる 改 正 でもあったわけです < 第 3 号 被 保 険 者 制 度 の 当 時 の 評 価 と 将 来 社 会 に 向 けての 評 価 > これについてどう 評 価 するかですが 当 時 はそれほどシングルが 増 えると 思 われ ていなかったのです 当 時 はこの 改 正 はとても 歓 迎 されたものでした しかしなが ら その 後 は 共 働 きおよび 単 身 の 方 たちが 増 えていったのです 日 本 の 女 性 の 年 金 配 慮 は 第 3 号 被 保 険 者 制 度 が 中 心 で 扶 養 されているサラリー マンの 配 偶 者 の 年 収 が 現 在 は 130 万 円 未 満 であれば 社 会 保 険 料 を 自 分 では 負 担 せ ず かわりに 厚 生 年 金 全 体 が 負 担 して 基 礎 年 金 権 を 得 られます これにより 確 かに 主 婦 にとって 老 後 の 年 金 を 得 られる 者 が 拡 大 しました そして 夫 婦 2 人 分 の 基 礎 年 金 がもらえるので 専 業 主 婦 世 帯 の 年 金 水 準 が 安 定 するという 役 割 がありました 半 面 で 今 後 のように 労 働 力 がどんどん 減 っていき しかも 寿 命 が 延 びていて 子 ども 数 が 減 っていて 中 年 期 の 働 ける 時 代 が 長 くなったような 時 期 には 大 変 問 題 が 大 きいと 思 います 主 婦 が 社 会 保 険 料 免 除 のために 年 間 130 万 円 に 非 課 税 のため に 年 間 103 万 円 までに 仕 事 を 調 整 する そこまでしか 働 かないような 要 因 になって いることが 大 きな 問 題 です さらに 本 人 がそうするだけではなく そういう 働 き 方 を 提 示 すれば 企 業 は 年 金 保 険 料 を 払 わなくて 済 むので 企 業 が 短 時 間 で 働 く 人 を 募 集 して 短 時 間 の 働 かせ 方 をするわけです そして 長 期 で 見 れば 主 婦 は 自 分 で 負 担 しなくても 基 礎 年 金 ならばもらえるという 見 方 もできますが 基 礎 年 金 しかもら えないということにもなります また 年 間 103 万 円 未 満 で 比 較 的 優 秀 な 主 婦 の 方 たちが 働 くので シングルの 非 正 規 の 人 たちが 同 じような 賃 金 水 準 つまり お 小 遣 い 賃 金 に 過 ぎない 水 準 の 賃 金 しか 得 られない 一 つの 原 因 にもなり 得 ます そういった 意 味 で 女 性 の 基 礎 年 金 の 第 3 号 被 保 険 者 制 度 というのは 女 性 の 年 金 拡 充 の 重 要 な 役 割 を 持 ってはいますものの 大 きい 問 題 が 積 み 上 がってきているわけです ですから 85 年 改 正 は 専 業 主 婦 世 帯 の 給 付 は 変 わらなかったけれども そうではない 世 帯 の 給 付 を 下 げたということで 5

す それから 非 正 規 雇 用 者 や 自 営 業 の 妻 については 第 3 号 被 保 険 者 という 制 度 は ないのです 日 本 では 女 性 の 6 割 ぐらいは 出 産 した 後 にいったん 無 職 になっている のですが そうした 自 営 世 帯 では 出 産 後 無 業 になった 女 性 は 自 身 で 年 金 保 険 料 を 払 わない 限 り 年 金 がないことになります < 遺 族 年 金 > 次 にサラリーマンの 配 偶 者 の 遺 族 年 金 です 遺 族 年 金 は 日 本 において 老 後 の 女 性 の 暮 らしに 非 常 に 重 要 な 役 割 を 果 たしています というのは 女 性 の 賃 金 が 低 く 自 分 の 年 金 が 低 いからです 現 在 は 夫 の 死 亡 時 に 自 分 の 厚 生 年 金 か 夫 の 遺 族 年 金 を 選 ぶ もしくは 両 方 の 2 分 の 1 かを 選 ぶ 制 度 ですが ほとんどの 方 は 夫 の 遺 族 年 金 を 選 んだ 方 が 年 金 が 高 いのです そうしますと 例 えばパートで 20 年 働 いて 自 分 の 年 金 が 2 万 円 付 いたとします ああ よかった と 思 っていると 夫 が 亡 くなった ときにはその 2 万 円 を 実 質 的 には 放 棄 して 夫 の 遺 族 年 金 だけになるということが 制 度 上 あります これは 給 付 という 面 から 女 性 の 年 金 加 入 のメリットを 引 き 下 げてい ます このように 日 本 の 年 金 制 度 は なぜか 女 性 が 働 くことについては 結 構 厳 しい 制 度 を 持 つのですが 妻 への 配 慮 はあり たとえば 高 齢 者 と 少 しの 期 間 であっても 結 婚 し 未 亡 人 となれば 遺 族 年 金 が 来 ます つまり 結 婚 については 優 しいが 女 性 が 働 くこ とには 冷 たい 制 度 ともいえます < 年 金 と 育 児 期 間 > それから 年 金 上 の 育 児 期 の 配 慮 です 最 近 は 育 児 期 間 の 無 業 や 低 収 入 は 年 金 上 社 会 的 に 評 価 するのが 世 界 の 年 金 の 流 れです 子 どもが 育 つということは 年 金 を 維 持 する 上 でとても 重 要 なことです しかし 子 どもを 育 てることで 賃 金 が 下 がったり 無 業 になれば 年 金 は 下 がってしまう そこで 育 児 は 社 会 的 に 年 金 上 評 価 するという 方 向 です 日 本 の 場 合 も 育 児 休 業 中 の 保 険 料 の 免 除 等 の 改 正 はされているのですが 過 半 数 の 女 性 は 辞 めてしまっています それから 非 正 規 の 方 も 多 いため 育 児 期 の 配 慮 は 厚 生 年 金 加 入 者 でかつ 育 児 休 業 を 取 った 人 には 行 われているのですが 多 くの 出 産 女 性 には 届 いていないという 問 題 があります < 離 婚 分 割 > 離 婚 分 割 は 2004 年 改 正 で 導 入 されました これ 以 前 は 離 婚 分 割 がなかったので これは 離 婚 した 方 にとってはよかったのではないかと 思 います 3. 女 性 と 年 金 の 課 題 < 現 在 の 年 金 給 付 > 現 在 の 高 齢 期 の 年 金 はどのくらいもらえているのかというのが 皆 さんのご 関 心 が あるところだと 思 いますが 実 は 結 構 高 いのです 厚 生 労 働 省 年 金 制 度 基 礎 調 査 平 成 23 年 によれば 夫 婦 世 帯 の 方 は 年 金 300 万 ~400 万 円 というところにピークが 6

あります これは 70~74 歳 層 を 見 たものです 60 代 はまだ 仕 事 をしている 人 もい ますし 年 金 年 齢 の 引 き 上 げ 途 上 でもありますので 70~74 歳 で 厚 労 省 の 調 査 で 見 ました ただ 先 ほども 述 べたとおり 今 後 の 年 金 はもっとずっと 下 がっていくこと が 予 想 されているわけです 男 女 別 に 見 ると 厚 生 労 働 省 国 民 生 活 基 礎 調 査 平 成 24 年 という 別 の 調 査 から ですが 同 じく 70-74 歳 層 について 男 性 は 200 万 ~300 万 円 ぐらいにピークがあ って 女 性 は 基 礎 年 金 ぐらいである 60 万 ~80 万 円 あるいは 少 し 厚 生 年 金 をもら っている 80 万 ~100 万 円 ぐらいにピークがあります 両 者 が 夫 婦 であれば 300 万 ~ 400 万 円 の 年 金 になるわけです しかし 単 身 だけで 見 ますと 単 身 女 性 の 4 割 が 年 間 100 万 円 未 満 の 年 金 しかも らっていませんし 61%が 年 間 150 万 円 未 満 の 年 金 しかもらっていません 同 じく 厚 生 労 働 省 年 金 制 度 基 礎 調 査 平 成 23 年 からです なぜか この 年 齢 層 の 方 たち は 第 3 号 の 保 険 者 制 度 ができたときに 40 代 だった 方 たちです 当 時 はまだ 女 性 の 家 族 従 業 者 がかなりいて 自 営 世 帯 も 多 かったのです つまり 1 号 の 方 々も 多 かった それから サラリーマンでずっと 働 き 続 けていたシングルの 女 性 の 場 合 は 男 性 よ りかなり 賃 金 が 低 く しかも 正 社 員 を 続 けられなくて 途 中 から 非 正 規 になってしま うような 方 も 比 較 的 多 かった このような 諸 要 因 のために 年 金 が 低 くなってしまい ます 単 身 の 中 では 遺 族 年 金 を 受 給 している 方 はそれでも 年 金 水 準 が 高 いのですが 生 涯 シングルの 方 の 年 金 がかなり 低 いことが 分 かっています またここまでの 統 計 に は 示 されていませんが 年 金 がすごく 低 い 方 たちは 子 同 居 世 帯 の 女 性 にも 多 いです < 現 役 女 性 の 就 業 調 整 の 実 態 > 現 役 の 働 き 方 への 影 響 ですが 厚 生 労 働 省 21 世 紀 成 年 者 縦 断 調 査 という 1968 ~1982 年 生 まれの 方 たちの 調 査 で 見 たものがパワーポイントの 図 です 結 婚 してい る 方 と 未 婚 の 方 で 分 け それぞれを 正 社 員 の 方 と 他 の 就 業 形 態 の 方 に 分 けています 左 側 の 有 配 偶 女 性 をみると 正 社 員 の 方 たちは 200 万 ~700 万 円 ぐらいに 年 収 が 分 布 していますが 時 間 給 で 働 く 人 たちは 103 万 円 のところに 非 常 に 大 きなピークがあ り そこに 就 業 調 整 しています 130 万 円 はより 小 さなピークですが そこにもピー クはあります そして 単 身 の 方 も 右 の 図 のようにやはり 103 万 円 のところに 調 整 する 小 さいピ ークはありますが 調 整 とは 無 関 係 の 正 社 員 就 業 の 方 が 全 般 にずっと 多 いです これ に 対 して 有 配 偶 女 性 については 就 業 調 整 のピークにいる 方 の 数 は 大 きくて 時 給 で 働 く 妻 の 多 くが 税 金 や 社 会 保 険 のことを 考 えつつ 就 業 調 整 をしていることが 分 かる と 思 います 女 性 の 年 金 の 課 題 としては 現 役 世 代 について 働 く 人 が 就 業 調 整 したくなるよう な 徴 収 構 造 はなくすべきです 現 状 では 他 の 統 計 等 を 見 ますと 子 どもが 義 務 教 育 を 修 了 しだんだん 母 親 がより 長 時 間 働 けるようになったときに 103 万 の 壁 にぶつか り 就 業 調 整 が 増 えるとわかっています また 夫 の 収 入 が 高 い 方 が 就 業 調 整 をしてい 7

ます 就 業 調 整 をしないと 年 間 20 万 ~30 万 円 ぐらいの 社 会 保 険 料 が 突 然 掛 かる ようになるのです そのため 就 業 調 整 をするのが 大 変 合 理 的 なような 徴 収 構 造 にな ってしまっているわけです さらに 遺 族 年 金 からも せっかく 年 金 を 積 み 立 てたと 思 っても 夫 が 亡 くなると 自 分 の 年 金 分 がなくなってしまう そういうことで もう 少 し 女 性 が 就 業 するという 前 提 で 社 会 保 障 を 再 考 した 方 がよろしいのではないだろう か 4. 試 案 をもとに 山 本 克 也 氏 によるシミュレーション そこで 先 ほどの 私 の 論 文 をもとに 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 の 山 本 克 也 先 生 が 年 金 シミュレーションしてくださいました お 配 りした 冊 子 には 間 に 合 わなくて 追 加 資 料 として 資 料 集 に 入 っています 私 の 考 えた 案 とは 年 金 と 経 済 の 2014 年 第 34 巻 第 1 号 24-39 頁 にありますが 米 国 のようなベンドポイント 式 の 年 金 を 考 えました 米 国 のベンドポイント 式 とは 例 えば 月 収 8 万 円 までは 年 金 代 替 率 が 9 割 すなわち 9 割 の 金 額 を 年 金 としてもらえる 月 収 が 高 くなると 代 替 率 は 32%と 下 がり さらに 高 くなると 16%に 下 がる 仕 組 みです たとえば 生 涯 8 万 円 で 働 く 人 は 年 金 を 7 万 2000 円 もらいます そのように 低 賃 金 に 厚 い 給 付 構 造 ですが かわり にわずかな 収 入 でも 原 則 としてすべて 社 会 保 険 料 を 課 します 米 国 の 制 度 にならっ た 事 例 ですが こういう 形 にしたらどういうことになるか その 上 で 第 3 号 のよう な 配 慮 を 子 育 て 期 間 だけにしたらどういうことになるか さらに 育 児 理 由 で 退 職 し 再 就 職 した 人 には 年 金 が 加 算 されるような 就 業 奨 励 の 工 夫 をしたらどういうことに なるか また 女 性 が 遺 族 年 金 をもらうときに 自 分 の 年 金 が 完 全 にカットされるので はなくて 低 い 人 には 自 分 の 年 金 が 上 がるにつれてだんだん 遺 族 年 金 は 下 がるよう な 形 で 自 分 の 年 金 の 上 に 遺 族 年 金 が 載 る 形 にしたらどうなるだろうかということを 書 き その 案 に 基 づいてそれを 簡 略 化 し 山 本 先 生 がシミュレーションをしてくださ いました そのシミュレーションの 結 果 についてご 紹 介 します 山 本 先 生 は 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 の 研 究 者 で 年 金 の 財 政 のシミュレーションがご 専 門 です 今 日 は 残 念 な がら 来 られませんでしたので 私 がどこまできちんとご 説 明 できるか 分 かりません が 先 生 が 今 回 の 財 政 検 証 のもう 1 回 前 の 2009 年 の 財 政 検 証 のプログラムを 使 い 中 位 の 物 価 上 昇 率 中 位 の 賃 金 上 昇 率 中 位 の 運 用 利 回 りの 仮 定 の 下 で 厚 生 労 働 省 が 当 時 行 ったのと 同 じような 初 期 値 で 計 算 をしてくださいました 年 金 加 入 者 が 毎 年 どのように 変 化 していくか 報 酬 がどのように 変 化 していくかを 試 算 に 入 れて 計 算 してくださったものです 私 の 案 は 育 児 期 間 の 保 険 料 の 免 除 という 仕 組 みがありますが 山 本 先 生 の 案 では 第 3 号 被 保 険 者 を 廃 止 して 第 3 号 被 保 険 者 は 全 員 が 原 則 新 2 号 となる( 育 児 期 も 第 2 号 と 評 価 する)ものとして 計 算 されています 先 ほど 説 明 したようなベンドポ イント 制 を 仮 定 したので 低 収 入 の 人 には 保 険 料 納 付 の 割 に 給 付 が 高 い 形 になってい ます 旧 制 度 の 方 は 旧 制 度 で 計 算 されていますが 新 制 度 に 移 ったらその 時 から 新 制 8

度 として 給 付 されるということです そして マクロ 経 済 スライドをここでは 適 用 さ せていません 年 収 が 低 い 人 は 9 割 ぐらい 年 金 をもらえ そして そこから 先 は 少 しベンドして もっと 年 収 が 高 いともっと 代 替 率 が 下 がる 方 式 です 例 えば 3 号 の 方 も 1 号 の 方 も 生 涯 10.5 万 円 で 働 いたと 仮 定 すると 年 金 が 8 万 円 ぐらいになりま す それでどういうことになるかを 見 てみましょう 私 の 論 文 では 再 就 職 の 加 算 などありますが その 辺 は 全 部 端 折 って 計 算 されてい ます 結 果 として 第 1 号 被 保 険 者 の 方 の 年 金 給 付 はかなり 上 がります 第 3 号 被 保 険 者 の 方 は 少 し 年 金 給 付 が 上 がります 第 2 号 被 保 険 者 の 方 は 時 代 がかなりた って 年 金 給 付 が 上 がるという 形 になっています そうすると 高 齢 化 がすすむ 2040 年 には 現 在 の 制 度 に 比 べて 7 兆 円 ぐらいのお 金 が 掛 かって 年 金 給 付 は 全 体 に 上 が るという 結 果 になりました また 第 2 号 被 保 険 者 が 新 制 度 に 移 行 しない 場 合 には 第 1 号 と 第 3 号 の 変 化 だけになります 結 論 としては 低 所 得 の 方 たちの 年 金 を 拡 充 することで 2040 年 には 約 9 兆 円 ( 消 費 税 3% 分 相 当 )のお 金 が 掛 かるとなりました また 第 2 号 被 保 険 者 制 度 を 変 えない と 仮 定 すると 5 兆 円 ぐらいで 消 費 税 2% 分 の 支 出 に 当 たるというのが 山 本 克 也 先 生 の 試 算 でした この 他 にもう 少 し 試 算 があるのですが 時 間 の 制 約 から 説 明 はここ まででとさせていただきたいと 思 います これは 一 つの 試 算 ですが これから 大 きく 高 齢 化 に 向 かっていく 中 で 女 性 の 働 き 方 それから 子 育 て 期 の 年 金 の 考 え 方 を 女 性 の 就 業 を 奨 励 する 方 向 に 再 考 する 必 要 があると 思 います 一 番 貧 困 になりやすいのは 高 齢 女 性 です 女 性 の 老 後 の 年 金 と 女 性 の 現 役 期 の 保 険 料 負 担 についてどういうふうに 考 えるか ここで 議 論 したいと いうことで 論 点 整 理 と 問 題 提 起 をいたしました ( 参 考 資 料 ) 永 瀬 伸 子 (2015) 特 集 公 的 年 金 改 革 について パートの 厚 生 年 金 の 適 応 拡 大 について 年 金 の 財 政 検 証 と 適 用 拡 大 オプションの 試 算 から 年 金 と 経 済 第 34 巻 第 1 号 24-39 頁 9