海 外 レポート 第 3 号 2013 年 11 月 15 日 ファニーメイとフレディマックの 2013 年 第 3 四 半 期 決 算 と 公 的 資 金 の 現 況 住 宅 金 融 支 援 機 構 調 査 部 主 席 研 究 員 ( 海 外 市 場 担 当 ) 小 林 正 宏 要 旨 2013 年 11 月 7 日 ファニーメイとフレディマックが 2013 年 第 3 四 半 期 の 決 算 を 発 表 した ファニーメイは 87 億 ドル フレディマックは 65 億 ドルの 黒 字 で フレデ ィマックは 今 期 に 繰 延 税 金 資 産 に 係 る 評 価 性 引 当 金 を 取 り 崩 す 決 定 をした ため 米 財 務 省 への 配 当 として ファニーメイが 86 億 ドル フレディマッ クは 304 億 ドルを 2013 年 12 月 末 までに 支 払 うことになった 今 回 の 配 当 支 払 いにより 米 財 務 省 への 配 当 支 払 い 額 の 累 計 はファニーメイ が 1,139 億 ドル フレディマックが 713 億 ドルとなり これまでの 公 的 資 金 注 入 額 (ファニーメイ 1,161 億 ドル フレディマック 713 億 ドル)にほ ぼ 並 ぶことになる 米 財 務 省 への 配 当 の 支 払 いは 注 入 された 公 的 資 金 の 返 済 とは 看 做 されない ものの 納 税 者 負 担 を 理 由 とする 両 社 の 改 革 案 が 黒 字 化 によりどう 変 化 する のか なお 予 断 を 許 さない 本 稿 の 意 見 にわたる 部 分 については 執 筆 者 個 人 の 見 解 であって 住 宅 金 融 支 援 機 構 の 見 解 ではありません 1
海 外 レポート 第 3 号 ファニーメイとフレディマックの 2013 年 第 3 四 半 期 決 算 と 公 的 資 金 の 現 況 住 宅 金 融 支 援 機 構 調 査 部 主 席 研 究 員 ( 海 外 市 場 担 当 ) 小 林 正 宏 1988 年 東 京 大 学 法 学 部 卒 業 住 宅 金 融 公 庫 入 庫 海 外 経 済 協 力 基 金 (OECF)マニラ 事 務 所 駐 在 員 国 際 協 力 銀 行 (JBIC) 副 参 事 役 ファニーメイ 特 別 研 修 派 遣 等 を 経 て 2011 年 4 月 より 現 職 著 書 に 通 貨 の 品 格 円 高 円 安 を 超 えて ( 中 央 公 論 新 社 2012 年 ) 通 貨 で 読 み 解 く 世 界 経 済 ドル ユーロ 人 民 元 そして 円 ( 中 央 公 論 新 社 2010 年 共 著 ) 等 がある 2011 年 4 月 より 中 央 大 学 経 済 研 究 所 客 員 研 究 員 2012 年 2 月 より アジア 太 平 洋 住 宅 金 融 連 合 (APUHF) Advisory Board Member 2012 年 度 日 本 不 動 産 学 会 賞 ( 論 説 賞 ) 受 賞 1.ファニーメイとフレディマックの 2013 年 第 3 四 半 期 決 算 2013 年 11 月 7 日 ファニーメイとフレディマックが 2013 年 第 3 四 半 期 の 決 算 を 発 表 し た 税 引 前 利 益 はファニーメイが 87 億 ドル フレディマックが 65 億 ドルの 黒 字 となり ファニーメイが7 四 半 期 連 続 フレディマックは8 四 半 期 連 続 の 黒 字 となった 図 表 1 図 表 1 両 社 の 税 引 前 利 益 の 推 移 ( 単 位 : 億 ドル) ( 資 料 ) 両 社 決 算 資 料 より 2
フレディマックは 今 期 に 繰 延 税 金 資 産 (Deferred Tax Assets)に 係 る 評 価 性 引 当 金 (Valuation Allowance)を 239 億 ドル 取 り 崩 す 決 定 をした ファニーメイは 同 引 当 金 を 2013 年 第 1 四 半 期 に 506 億 ドル 取 り 崩 していたが フレディマックは 収 益 の 将 来 見 通 しを より 慎 重 に 判 断 していた しかし 収 益 が 安 定 したと 判 断 した 結 果 今 期 取 り 崩 し 当 期 純 利 益 (Net Income)は 305 億 ドルとなった 図 表 2 図 表 2 両 社 の 当 期 純 利 益 の 推 移 ( 単 位 : 億 ドル) ( 資 料 ) 両 社 決 算 資 料 より 2. 収 益 改 善 の 背 景 ファニーメイとフレディマックのビジネスモデルは 基 本 的 に 同 じである 類 似 の 機 関 が 2つあるのは 競 争 を 通 じてより 低 利 の 住 宅 ローンを 供 給 させようとしたことによる 両 社 は 民 間 金 融 機 関 から 住 宅 ローン 債 権 を 買 い 取 り それをそのままバランスシートに 保 有 して 社 債 等 で 資 金 調 達 を 行 うか 自 己 信 託 により MBSに 変 換 して 証 券 化 する ファニー メイの 場 合 前 者 をポートフォリオ 投 資 事 業 と 呼 び 後 者 を MBS 信 用 保 証 事 業 と 呼 んでい る 前 者 においては 資 産 と 負 債 の 期 間 構 造 のミスマッチ(ALM 1 リスク)が 生 じうること から これをコントロールする 高 度 な 金 融 知 識 が 必 要 とされる 後 者 においては ALMリ スクは MBSの 投 資 家 に 転 嫁 される 一 方 住 宅 ローン 債 権 が 焦 げ 付 いた 場 合 の 信 用 リスク は 両 事 業 において 発 生 しうる 後 者 においても 民 間 の 証 券 化 とは 異 なり MBSの 投 資 家 に 元 利 払 いを 両 社 が 保 証 しているためである 図 表 3 1 Asset and Liability Management: 資 産 と 負 債 の 総 合 管 理 などと 訳 される 3
図 表 3 ファニーメイの 事 業 ラインとリスク 配 分 ALMリスク 信 用 リスク ポートフォリオ 投 資 事 業 ファニーメイ ファニーメイ MBS 信 用 保 証 事 業 投 資 家 ファニーメイ ( 資 料 ) 筆 者 作 成 上 記 の 事 業 ラインは 主 力 の 個 人 向 け 住 宅 ローン(Single-Family)に 係 るものであり 両 社 とも 賃 貸 住 宅 向 けの 住 宅 ローン(Multi-Family)についても 買 取 や 証 券 化 を 実 施 し ている ファニーメイの 場 合 は 事 業 部 門 別 の 収 益 を1Single-Family 2Multi-Family 3Capital Markets( 資 本 市 場 )の3 部 門 に 分 解 して 公 表 している 1は 主 に 信 用 リスク を 管 理 し MBS 信 用 保 証 事 業 にほぼ 相 当 する 2は 上 記 のとおり 賃 貸 部 門 である 3は 主 に ALMリスクを 管 理 し ポートフォリオ 投 資 事 業 にほぼ 相 当 する ファニーメイの 部 門 別 収 益 の 推 移 を 見 ると 前 期 と 比 較 すると 今 期 は Single-Family 部 門 が 若 干 減 少 した 貸 倒 引 当 金 の 戻 入 額 が 前 期 よりは 減 ったのが 主 な 要 因 である Capital Markets 部 門 は 安 定 的 に 推 移 している Multi-Familyは 事 業 量 が 少 ないため 収 益 に 与 え る 影 響 は 小 さい 2 Capital Markets 部 門 は 公 的 管 理 下 に 置 かれた 2008 年 第 3 四 半 期 と 翌 期 に 巨 額 の 赤 字 を 計 上 した 3 が それ 以 降 はほぼ 安 定 的 に 黒 字 を 計 上 している 図 表 4 2 Multi-Familyについても 税 効 果 会 計 の 関 係 で 60 億 ドルを 超 える 損 失 を 計 上 したことが あるが 通 常 各 期 の 収 益 が 絶 対 値 で 10 億 ドルを 超 えることは 稀 である 3 当 時 は 保 有 する 有 価 証 券 の 時 価 評 価 見 直 しに 加 え 急 激 に 政 策 金 利 (Federal Fund 金 利 : 4
図 表 4 ファニーメイの 部 門 別 収 益 の 推 移 ( 単 位 : 億 ドル) ( 資 料 )ファニーメイ 決 算 資 料 より 図 表 5 公 的 管 理 以 降 のファニーメイの 部 門 別 収 益 累 計 額 ( 単 位 : 億 ドル) ( 資 料 )ファニーメイ 決 算 資 料 より 以 下 FF 金 利 と 略 )が 引 き 下 げられたため 金 利 ヘッジ 目 的 で 保 有 していた 金 利 スワッ プ 等 のデリバティブの 評 価 損 が 大 きく 膨 らんだ 2008 年 12 月 16 日 に FF 金 利 が 0~0.25% レンジの 誘 導 目 標 水 準 に 設 定 されて 事 実 上 のゼロ 金 利 政 策 が 導 入 されて 以 降 は 更 なる 短 期 金 利 の 低 下 余 地 が 限 定 的 となったため そのような 評 価 損 も 発 生 し 難 くなり ポートフ ォリオ 投 資 事 業 の 収 益 のボラティリティー( 変 動 )が 低 下 した 5
公 的 管 理 下 に 置 かれた 2008 年 第 3 四 半 期 から 今 期 までの5 年 間 (+1 四 半 期 )の 部 門 別 収 益 の 累 計 額 を 見 ると Single-Family 部 門 が 1,173 億 ドルの 赤 字 に 対 し Capital Markets 部 門 は 240 億 ドルの 黒 字 となっている 図 表 5 金 融 危 機 前 は 両 社 のポートフォリオ 投 資 事 業 がシステミックリスクの 観 点 から 批 判 されていたが 実 際 に 住 宅 バブルが 崩 壊 して 両 社 の 経 営 を 傾 けたのは 住 宅 ローンの 焦 げ 付 きという 信 用 リスクの 顕 在 化 であり ALMリ スクの 管 理 の 失 敗 ではなかった Single-Family 部 門 の 累 計 赤 字 額 1,173 億 ドルは 米 財 務 省 からの 公 的 資 金 注 入 額 1,161 億 ドルにほぼ 見 合 う 水 準 である なお ポートフォリオ 投 資 事 業 においては 住 宅 ローン 債 権 を 買 い 取 るのみならず 民 間 の 投 資 銀 行 等 が 組 成 した 証 券 化 商 品 (いわゆる PLS 4 )も 投 資 家 として 保 有 している PLS の 価 格 下 落 に 伴 う 評 価 損 は Capital Markets 部 門 に 計 上 される 一 方 民 間 金 融 機 関 から 買 い 取 った 住 宅 ローン 債 権 が 焦 げ 付 いた 場 合 の 損 失 は 当 該 債 権 を 証 券 化 しているか 否 か に 係 わらず Single-Family 部 門 で 計 上 している その Single-Family 部 門 も 足 下 では4 四 半 期 連 続 で 黒 字 となっている 信 用 関 連 コスト は デフォルト 率 (PD:Probability of Default)とデフォルト 時 損 失 (LGD:Loss Given Default)に 分 解 できるが PD に 繋 がる 延 滞 率 は 雇 用 環 境 の 改 善 とともに 低 下 してきて おり ファニーメイはピーク 時 (2010 年 2 月 :5.59%)の 半 分 以 下 (2013 年 9 月 :2.55%) まで 低 下 している 図 表 6 図 表 6 両 社 の 延 滞 率 の 推 移 ( 注 )Serious Delinquency Rates の 数 字 (90 日 以 上 延 滞 + 差 押 手 続 き 中 ) ( 資 料 ) 両 社 月 次 報 告 資 料 より 債 務 者 がデフォルトした 場 合 最 終 的 には 担 保 物 件 の 処 分 により 回 収 が 図 られる 5 ファ 4 Private Label Securities の 略 海 外 レポート 第 2 号 参 照 5 担 保 物 件 を 処 分 しても 不 足 が 発 生 した 場 合 は ニューヨークなど 州 法 により 可 能 な 州 に 6
ニーメイの 差 押 え 物 件 (Real Estate Owned:REO)からの 回 収 率 は 住 宅 価 格 の 動 きと 軌 を 一 にしており 市 場 の 回 復 に 伴 い 回 収 率 も 上 昇 してきた ただし 今 期 は 横 ばいとな った 図 表 7 図 表 7 ファニーメイの 差 押 え 物 件 からの 回 収 率 ( 資 料 )ファニーメイ 決 算 資 料 より この 数 年 信 用 関 連 コストが 膨 らんでいたのは 2005 年 から 2008 年 にかけてのバブル 期 から 公 的 管 理 下 に 入 る 前 までに 組 成 された 住 宅 ローンという 負 の 遺 産 (Legacy Assets) の 影 響 が 大 きかった ファニーメイは 当 時 もサブプライムローンを 直 接 的 に 購 入 すること は 極 めて 限 定 的 で 低 所 得 者 向 けの 住 宅 ローン 供 給 支 援 という 政 策 目 的 達 成 は むしろ 民 間 の 投 資 銀 行 が 組 成 した PLS を 購 入 する 経 路 で 行 われ 6 ピーク 時 の 2006 年 と 2007 年 に おいてさえ 購 入 した 住 宅 ローン 債 権 に 占 めるサブプライムローンの 比 率 は 0.7%に 過 ぎな かった ただし ファニーメイの 場 合 サブプライムローンの 購 入 は 限 定 的 であった 半 面 オルト A 7 と 呼 ばれる 収 入 証 明 等 の 提 出 書 類 に 不 備 のある 住 宅 ローンの 比 率 が 高 く 2006 年 には2 割 を 超 えていた 図 表 8 日 本 では 収 入 証 明 書 なしで 住 宅 ローンを 貸 し 出 すなど 到 底 想 像 もできないが アメリカ では 過 去 のクレジットカードの 支 払 い 履 歴 等 をベースに 組 成 されるクレジットスコアが おいては 欠 損 判 決 (Deficiency Judgment)を 取 得 し 個 人 の 資 産 に 遡 及 する カリフォ ルニア 等 一 部 の 州 では 一 定 の 条 件 の 下 欠 損 判 決 が 禁 止 されており 事 実 上 のノンリコ ースとなっている 場 合 もあるが 全 米 でノンリコースとなっているわけではなく 遡 及 可 能 な 州 では 然 るべき 手 続 きを 採 るよう 当 局 も 指 導 している 6 その 後 PLS 購 入 を 通 じた 流 動 性 供 給 は 政 策 目 標 の 指 標 にはカウントされないことにな った なお PLSをより 積 極 的 に 購 入 したのはフレディマックであった( 海 外 レポート 第 2 号 参 照 ) 7 Alternative A の 略 A(プライム)に 準 じる( 代 替 する)という 意 味 7
与 信 審 査 では 広 く 利 用 されている その 代 表 的 な 指 標 が FICO スコアであり 一 般 的 に FICOスコアが 620(ないし 660) 未 満 はサブプライムと 看 做 される その FICOスコアは 2007 年 までは 平 均 で 710 台 であったのが 2009 年 以 降 は 760 を 超 えるなど 債 務 者 属 性 が 大 きく 改 善 している 図 表 9 が 710 台 という 数 字 も 決 して 悪 い 数 字 ではない 当 時 は 民 間 金 融 機 関 の 融 資 審 査 基 準 がおしなべて 劣 化 しており ファニーメイにおいても 政 策 的 な 要 請 もあり 基 準 を 緩 和 していったのは 多 くの 識 者 が 指 摘 している しかし 住 宅 バ ブルの 崩 壊 がなければ ここまでの 苦 境 に 立 つこともなかったであろう 図 表 8 ファニーメイのサブプライム オルト A 比 率 ( 資 料 )ファニーメイ 決 算 資 料 より 図 表 9 ファニーメイの 平 均 FICOスコアと 変 動 金 利 利 用 比 率 ( 資 料 )ファニーメイ 決 算 資 料 より 8
そのことは 足 下 の 好 決 算 にまさに 反 映 されていると 言 える 過 去 の 劣 悪 な 債 権 の 償 還 が 進 み 8 公 的 管 理 下 で 厳 しい 審 査 を 通 った 債 権 の 比 率 が 高 まるにつれ 図 表 10 信 用 関 連 コストが 低 下 し 黒 字 化 してきた そして 当 面 は 黒 字 が 継 続 するという 見 込 みから 評 価 性 引 当 金 も 取 り 崩 し 前 述 のようにファニーメイは 第 1 四 半 期 に 約 600 億 ドル フレ ディマックは 今 期 に 約 300 億 ドルという 巨 額 の 当 期 純 利 益 を 計 上 することとなった 図 表 10 ファニーメイの 組 成 年 別 住 宅 ローン 債 権 残 高 ( 単 位 : 億 ドル) ( 資 料 )ファニーメイ 決 算 資 料 より 3. 米 財 務 省 への 配 当 支 払 いと 公 的 資 金 今 期 の 決 算 を 受 け 2013 年 12 月 末 までに 米 財 務 省 に 対 してファニーメイが 86 億 ドル フレディマックは 304 億 ドルを 配 当 として 支 払 うことになる 今 回 の 配 当 支 払 いにより 米 財 務 省 への 配 当 の 支 払 い 額 の 累 計 はファニーメイが 1,139 億 ドル フレディマックが 713 億 ドルとなり これまでの 公 的 資 金 注 入 額 (ファニーメイ 1,161 億 ドル フレディマック 713 億 ドル)にほぼ 並 ぶことになった 図 表 11 2008 年 9 月 に 公 的 管 理 下 に 置 かれた 際 同 時 に 米 財 務 省 との 間 でシニア 優 先 株 購 入 契 約 (Senior Preferred Stock Purchase Agreement:SPSPA)を 締 結 し 米 財 務 省 は 両 社 が 債 務 超 過 に 陥 ることを 回 避 するために 公 的 資 金 を 注 入 できることとなった 同 時 に 両 社 は 米 財 務 省 による 公 的 資 金 注 入 のコミットの 当 初 手 数 料 として 10 億 ドル 相 当 の 清 算 時 優 先 弁 済 権 (Liquidation Preference)とワラント( 普 通 株 の 79.9%に 転 換 する 権 利 ) 付 きの 優 先 株 を 米 財 務 省 に 発 行 しており この 金 額 を 含 める 場 合 と 含 めない 場 合 により 公 的 資 金 の 累 計 注 入 額 も 異 なる( 上 記 の 1,161 億 ドルは 含 めない 数 字 ) 8 金 利 の 低 下 により 借 換 が 促 進 され 返 済 負 担 が 軽 減 した 効 果 も 大 きいと 考 えられる 9
従 来 は 公 的 資 金 注 入 額 の 残 高 に 対 し 年 率 10%の 配 当 を 米 財 務 省 に 支 払 う 契 約 となってい たが 2012 年 8 月 に SPSPAが 改 定 された 際 各 期 の 両 社 の 純 資 産 額 から 30 億 ドル(2013 年 の 場 合 : 翌 年 以 降 は 毎 年 6 億 ドル 縮 小 )を 控 除 した 金 額 を 配 当 として 支 払 うこととされ た この 結 果 評 価 性 引 当 金 を 含 めた 巨 額 の 黒 字 が 全 て 米 財 務 省 に 配 当 として 支 払 われる こととなった 図 表 11 公 的 資 金 注 入 額 と 配 当 支 払 額 の 累 計 ( 資 料 ) 両 社 決 算 資 料 より 繰 り 返 しになるが これらの 米 財 務 省 への 支 払 いは 公 的 資 金 注 入 の 見 返 りとしての 配 当 の 支 払 いであって 公 的 資 金 を 返 済 したわけではない 契 約 上 は 公 的 資 金 を 償 還 するこ とは 事 実 上 不 可 能 となっており 今 後 黒 字 が 継 続 しても 注 入 された 公 的 資 金 の 残 額 は 現 在 の 水 準 を 維 持 したまま 米 財 務 省 への 配 当 のみが 続 くという 構 図 となる ファニーメイはオバマ 大 統 領 が 段 階 的 縮 小 廃 止 の 方 針 を 打 ち 出 した8 月 ホーム ページのトップに 配 当 として 納 税 者 に 1,050 9 億 ドル 払 います と 掲 示 し 今 期 決 算 発 表 後 配 当 として( 年 末 までに)1,140 億 ドル 払 います と 打 ち 出 している これに 呼 応 す るかのように 前 期 は 沈 黙 を 守 っていたフレディマックも ホームページの2 番 目 に 2009 年 以 降 (2013 年 12 月 分 の 支 払 いも 含 め)713 億 ドルを 配 当 として 納 税 者 に 支 払 いました とアップしている 一 部 のヘッジファンドは 2012 年 8 月 の SPSPA 改 定 を 一 方 的 な 不 利 益 変 更 として 訴 訟 を 提 起 しており 7 月 に 上 程 された 上 院 の 法 案 では 両 社 の 事 業 の 一 部 をスピンオフして 民 間 に 売 却 することも 可 能 とするなど 再 民 営 化 に 向 けた 動 きも 散 見 される アメリカの 有 9 Billion(10 億 ドル) 単 位 の 表 示 のため 日 本 語 での 億 ドル 表 示 とは 数 字 が 異 なる 次 の 1,140 億 ドルも 同 じ フレディマックは 小 数 点 第 一 位 まで 表 示 しているので 一 致 している 10
力 シンクタンク AEI(American Enterprise Institute)の 客 員 研 究 員 James K. Glassman 氏 ( 元 国 務 次 官 )も 両 社 を 廃 止 するよりも 政 府 保 証 をなくして 完 全 民 営 化 して 再 上 場 す る 方 がよい と Bloombergに 寄 稿 している 10 2013 年 11 月 13 日 には Fairholme Capital Management, LLC.というファンドが 両 社 の MBS 信 用 保 証 事 業 を 520 億 ドルで 買 収 すると いう 提 案 も 発 表 した 11 一 方 両 社 が 黒 字 を 上 げているのは 連 邦 政 府 の 庇 護 にあり 低 利 の 資 金 調 達 が 可 能 となっ ている 状 況 が 背 景 にあり 米 財 務 省 との SPSPA を 解 消 して 自 立 しようとした 途 端 に 調 達 コ ストが 跳 ね 上 がり 黒 字 化 による 上 場 復 帰 は 絵 に 描 いた 餅 という 厳 しい 声 も 聞 かれる 財 政 事 情 が 逼 迫 している 米 財 務 省 にすれば 両 社 からの 配 当 は 連 邦 政 府 の 資 金 繰 りの 観 点 か ら 軽 々に 契 約 変 更 に 応 じるとも 思 われない 米 財 務 省 にすれば 公 的 資 金 を 注 入 するために 米 国 債 の 発 行 で 資 金 調 達 をする 必 要 があ り その 利 払 い 負 担 くらいは 配 当 として 支 払 う 必 要 があると 主 張 するのなら 合 理 性 がある しかし 米 国 債 の 利 回 りは 10 年 物 で2% 台 後 半 であり 当 初 契 約 の 10%はこの 理 屈 では 高 すぎることになる また 2008 年 10 月 3 日 に 成 立 した 緊 急 経 済 安 定 化 法 (Emergency Economic Stabilization Act of 2008:EESA)に 基 づき 銀 行 に 公 的 資 金 12が 注 入 された 際 の 配 当 負 担 は5%であったこととの 均 衡 も 失 している しかし 配 当 負 担 を 引 き 下 げようと 目 論 む 両 社 の 動 きに 対 しては 過 去 に 下 院 で 配 当 負 担 引 き 下 げを 禁 止 する 法 案 が 提 案 され ている 今 年 8 月 6 日 にオバマ 大 統 領 が 両 社 の 段 階 的 縮 小 廃 止 の 方 針 を 打 ち 出 した 当 時 は 住 宅 ローン 金 利 は 上 昇 してきていたものの 住 宅 着 工 や 住 宅 価 格 の 動 きはなお 底 堅 いという 経 済 情 勢 の 判 断 があったと 思 われる その 後 FOMC( 連 邦 公 開 市 場 委 員 会 )の 声 明 でも 住 宅 ローン 金 利 の 更 なる 上 昇 が 住 宅 市 場 の 回 復 を 阻 害 しつつあるという 状 況 認 識 の 変 化 が ある 中 で 9 月 の FOMCでは 事 前 に 予 想 された 量 的 緩 和 第 3 弾 (QE3)の 減 速 (Tapering) が 見 送 られ 今 般 の 決 算 発 表 という 流 れとなっている 納 税 者 負 担 を 理 由 とする 両 社 の 改 革 案 が 黒 字 化 によりどう 変 化 するのか なお 予 断 を 許 さない 10 http://www.aei.org/article/economics/dont-kill-frannie-and-freddie/ AEIは 特 定 の 政 治 的 立 場 は 取 らないとされているが 比 較 的 保 守 系 であると 一 般 的 には 評 価 されている GSE 問 題 については 強 硬 な 批 判 派 として 知 られる Alex J. Pollock 氏 も 擁 しており その AEI からこのような 記 事 が 出 たことに 驚 きを 禁 じ 得 ない 11 http://www.fairholmefunds.com/news なお 520 億 ドルのうち 346 億 ドルは 既 存 の 優 先 株 ( 米 財 務 省 のシニア 優 先 株 ではない) との 交 換 により 173 億 ドルは 新 規 の 優 先 株 発 行 によるとされる なお 既 往 の 債 権 債 務 は 承 継 せず 人 的 資 源 や 金 融 インフラのみを 引 き 取 り ゼロから 保 険 事 業 を 開 始 する 予 定 のようである 当 然 ながら FHFA( 連 邦 住 宅 金 融 庁 )や 米 財 務 省 の 承 諾 が 前 提 となるが 政 府 筋 からのコメントは 確 認 されていない 12 TARP(Troubled Asset Relief Program)と 呼 ばれる 不 良 債 権 買 取 プログラム 11
図 表 12 FOMC 声 明 文 における 住 宅 関 連 のコメントと 周 辺 状 況 FOMC 声 明 文 2013 年 住 宅 市 場 住 宅 ローン 金 利 その 他 5 月 1 日 the housing sector has strengthened further 5 月 7 日 5 月 8 日 フレディマック Q1 決 算 発 表 (46 億 ドルの 黒 字 ) ファニーメイ Q1 決 算 発 表 (587 億 ドルの 黒 字 ) 6 月 19 日 the housing sector has strengthened further 7 月 31 日 the housing sector has been strengthening but mortgage rates have risen somewhat 8 月 6 日 オバマ 大 統 領 GSE 廃 止 演 説 8 月 7 日 8 月 8 日 フレディマック Q2 決 算 発 表 (50 億 ドルの 黒 字 ) ファニーメイ Q2 決 算 発 表 (101 億 ドルの 黒 字 ) 9 月 18 日 the housing sector has been strengthening but mortgage rates have risen further 8 月 の 着 工 統 計 発 表 ( 年 率 89.1 万 戸 ) 10 月 1 日 連 邦 政 府 機 関 一 部 閉 鎖 (~10/16) 10 月 30 日 the recovery in the housing sector slowed somewhat in recent months 11 月 7 日 両 GSE Q3 決 算 発 表 (ファニーメイ87 億 ド ル フレディマック305 億 ドルの 黒 字 ) ( 資 料 )FRB 等 より 筆 者 作 成 本 稿 の 意 見 にわたる 部 分 については 執 筆 者 個 人 の 見 解 であって 住 宅 金 融 支 援 機 構 の 見 解 ではありません < 参 考 文 献 > Fannie Mae, Freddie Mac Form 10-Q, November 7, 2013 James K. Glassman Don't kill Fannie and Freddie October 22, 2013, Bloomberg Fairholme Capital Management, LLC. Fairholme Capital Management Announces Proposal for Purchase of Insurance Businesses from Fannie Mae and Freddie Mac, November 13, 2013 小 林 正 宏 オバマ 大 統 領 の 米 住 宅 金 融 市 場 改 革 案 と 上 下 院 法 案 の 行 方 ( 海 外 レポート 住 宅 金 融 支 援 機 構 2013 年 9 月 25 日 ) 小 林 正 宏 米 国 における MBS 関 連 訴 訟 アップデート ( 海 外 レポート 第 2 号 住 宅 金 融 支 援 機 構 2013 年 10 月 31 日 ) 12