バイオ 研 究 グループ コアメンバー 主 任 研 究 員 渡 辺 高 延 研 究 員 信 龍 亮 志 サブリーダー 副 主 席 研 究 員 主 任 研 究 員 田 中 裕 也 研 究 員 竹 本 訓 彦 佐 々 木 朱 実 主 任 研 究 員 須 田 雅 子 研 究 員 渡 邉 彰 副 主 席 研 究 員 稲 富 健 一 主 任 研 究 員 北 出 幸 広 研 究 員 生 出 伸 一 副 主 席 研 究 員 Crispinus A.Omumasaba 主 任 研 究 員 豊 田 晃 一 研 究 員 小 川 昌 規 副 主 席 研 究 員 寺 本 陽 彦 主 任 研 究 員 加 藤 直 人 研 究 員 久 保 田 健 副 主 席 研 究 員 城 島 透 主 任 研 究 員 長 谷 川 智 研 究 員 小 暮 高 久 副 主 席 研 究 員 平 賀 和 三 研 究 員 猿 谷 直 紀 研 究 員 橋 本 龍 馬 グループリーダー 代 行 乾 将 行 研 究 員 前 田 智 也 グリーン 燃 料 グリーン 化 学 品 の 生 産 技 術 開 発 に 向 けた 取 り 組 み 1.はじめに 昨 年 の 世 界 エネルギー 分 野 における 最 大 のトピックスは 昨 年 10 月 以 降 の 原 油 価 格 の 急 激 な 低 下 であり 夏 にはガロン$100を 超 えていた 原 油 価 格 は 今 年 に 入 ってガロン$50 割 れが 続 き さらに 下 がるとの 予 想 もある 当 グループでは バイオマスからバイオ 燃 料 やグリーン 化 学 品 を 製 造 するバイオリファイナリー 技 術 の 研 究 開 発 を 進 めているため この 原 油 価 格 の 低 下 がバイオリファイナリー 産 業 にどのような 影 響 を 与 えるのかを 注 目 している 化 石 燃 料 の 価 格 低 下 でガソリ ンやナフサを 原 料 とする 石 油 化 学 産 業 の 競 争 力 が 回 復 しているが 従 来 型 化 石 資 源 への 依 存 は クリーンエネルギーやグリーン 化 学 品 の 開 発 を 妨 げ CO 2 排 出 量 を 増 加 させることにより 地 球 温 暖 化 がさらに 深 刻 になることは 間 違 いない 2 番 目 のトピックスは 年 産 10 万 KLを 超 えるセルロース 系 エタノールの 大 規 模 商 業 プラントが 欧 州 や 米 国 で 稼 働 したことである 米 国 では 政 府 支 援 によると ころが 大 きいが セルロースエタノールは 従 来 のコーンエタノールよりもCO 2 排 出 削 減 効 果 が 大 きく 資 源 量 も 豊 富 で 食 料 資 源 とも 競 合 しないことから クリー ン 燃 料 の 切 り 札 として 大 きな 期 待 が 寄 せられている 2015 年 にはブラジルでも 同 様 の 設 備 の 稼 働 が 予 定 されている 最 後 は バイオ 素 材 やバイオポリマー 等 のグリーン 化 学 品 の 大 幅 な 市 場 拡 大 で ある 米 国 の 調 査 会 社 によると2017 年 までに 現 在 の 約 倍 の1300 万 トンを 超 え る 生 産 量 に 増 加 する 見 込 みである 従 来 型 のバイオ 化 学 品 の 代 表 である 乳 酸 やコ ハク 酸 アミノ 酸 に 加 えて バイオプラスチックであるバイオポリエチレンテレ フタレート(PET)やバイオポリエチレン(PE)のさらなる 市 場 拡 大 が 予 想 さ れている このように 2015 年 もグリーン 燃 料 化 学 品 の 生 産 拡 大 が 期 待 され るが 前 述 したように 原 油 価 格 の 低 下 がどのような 影 響 を 与 えるかが 注 目 される 28
2. 世 界 のバイオ 燃 料 生 産 状 況 と 次 世 代 バイオ 燃 料 への 期 待 2014 年 の 世 界 バイオエタノール 生 産 量 は F.O. Licht 社 などによると238 億 ガ ロ ン(9000 万 KL) を 超 え 従 来 生 産 量 を 上 回 る 予 測 で あ る( 図 1) Renewable Fuels Association によると 米 国 の 昨 年 のバイオエタノール 生 産 量 も 一 昨 年 より 増 加 して 過 去 最 大 の142 億 ガロンと 予 測 され 世 界 生 産 量 の 約 60%を 占 める 見 込 みである 図 1 世 界 燃 料 用 エタノール 生 産 量 2.1 米 国 での 再 生 可 能 燃 料 基 準 (RFS)とセルロースエタノール 商 業 生 産 の 開 始 米 国 では バイオ 燃 料 ( 再 生 可 能 燃 料 )の 製 造 消 費 拡 大 を 行 うため 2005 年 に 制 定 した 再 生 可 能 燃 料 基 準 (Renewable Fuel Standard:RFS)により 米 国 環 境 保 護 庁 (EPA)が 毎 年 の 使 用 義 務 量 を 決 定 して バイオ 燃 料 の 普 及 を 推 進 していた しかし ここ 数 年 の 米 国 でのガソリン 消 費 の 低 下 やブレンドウォール (RITE Today 2014 参 照 )のため EPAでは2014 年 度 や2015 年 度 の 使 用 義 務 量 を 低 減 する 模 様 である 一 方 非 可 食 バイオマスへの 原 料 転 換 については 前 述 したように 漸 く 昨 年 からセルロース 系 エタノールの 大 規 模 プラントが 稼 働 を 始 め 今 年 にはさらに 最 大 規 模 のプラントがアイオワ 州 で 稼 働 する 予 定 である こ れらのプラントはコーンストーバー 等 の 農 業 残 渣 を 酵 素 加 水 分 解 して 得 られた 混 合 糖 を 原 料 としてエタノール 発 酵 を 行 う 一 方 従 来 型 コーンエタノールの 生 産 も 昨 年 末 にかけて 米 国 では 過 去 最 高 になった この 理 由 は 原 料 であるトウモロ コシ 価 格 がこの 数 年 豊 作 で$4/ブッシェルと 低 下 していることやバイオエタノー ル 価 格 の 高 止 まり 米 国 産 バイオエタノール 輸 出 の 増 大 などが 原 因 と 言 われてい る 2.2 次 世 代 バイオ 燃 料 の 現 状 エタノールに 続 く 次 世 代 バイオ 燃 料 として 注 目 されているのが バイオブタ ノールである ブタノールは 熱 密 度 が 高 く 水 にはほとんど 溶 けないために 製 油 所 で 混 合 し 既 存 のインフラ 設 備 (パイプライン)で 輸 送 できるという 大 きな 利 点 がある(バイオブタノールの 生 産 方 法 についてはRITE Today 2014を 参 照 ) 29
研究活動概説 バイオ研究グループ グリーン燃料 グリーン化学品の生産技術開発に向けた取り組み RITE Today 2015 米国では トウモロコシを原料とした商業レベルでのイソブタノール生産設備が 昨年から稼働を開始している この設備では 既存のバイオエタノールプラント の発酵と蒸留工程を改造することによりバイオブタノールを生産している 現状 では 米国バイオエタノールの収益性が高く バイオブタノールの急拡大は難し いが ブタノールは燃料だけではなく C4化学品やジェット燃料等への原料と しても有望なため 今後の発展が期待されている 3 世界のグリーン化学品生産の現状と期待 コハク酸や乳酸 バイオPETなどのバイオベース化学品 グリーン化学品 の 市場が拡大しており 今年は世界化学品市場の10%を占めるという予想もある 昨年も欧州大手化学品メーカーが バイオアクリル酸から高吸水性樹脂の生産に 成功したとして話題になった このアクリル酸の原料は グルコースを原料とし た発酵産物である3-ヒドロキシプロピオン酸である この他 タイヤメーカーと バイオ企業によるバイオイソプレン生産や 米国バイオベンチャーによるポリア ミド原料 ドデカン2酸 の商業生産プロジェクトなどが報告された グリーン 化学品の中でも特に生産が急拡大しているのはバイオプラスチック分野で 上述 したバイオPETとバイオPEが市場を牽引している 国内でも今年のバイオプラ スチックの市場規模は4万トンを超えると予想されている 用途は 飲料用ペッ トボトルやレジ袋である 一方 従来型生分解樹脂の代表であるポリ乳酸も シェールガス採掘における目止め剤や採掘量を増やすための支持材料 ドリリン グケミカル として新たな市場の開拓が進んでいる 4 RITEの技術開発 4 1 RITEバイオプロセスの特徴 バイオ研究グループでは これまでに新規技術コンセプトに基づく革新バイオ プロセス RITEバイオプロセス 増殖非依存型バイオプロセス を確立し バ イオ燃料や有機酸を始めとしたグリーン化学品を 高経済性で製造する技術開発 に大きな成果を上げ 国内外から高い評価を得ている 図2 RITEバイオプロセス 増殖非依存型バイオプロセス の特徴 30
本 プロセスの 特 徴 は 目 的 物 質 を 効 率 的 に 生 産 できるように 代 謝 設 計 した 微 生 物 (コリネ 型 細 菌 )を 大 量 に 培 養 し 細 胞 を 反 応 槽 に 高 密 度 に 充 填 後 嫌 気 的 な 条 件 で 細 胞 の 分 裂 を 停 止 させた 状 態 で 反 応 を 行 う( 図 2) 高 効 率 化 の 鍵 は 微 生 物 の 増 殖 を 抑 制 した 状 態 で 化 合 物 を 生 産 させることにあ り このため 増 殖 に 必 要 な 栄 養 やエネルギーが 不 要 である これにより 微 生 物 細 胞 をあたかも 化 学 プロセスにおける 触 媒 のように 利 用 することが 可 能 で 通 常 の 化 学 プロセスと 同 等 以 上 の 高 い 生 産 性 (space time yield;sty, 単 位 反 応 容 積 の 時 間 あたりの 生 産 量 )を 備 えたバイオプロセスが 実 現 した また セルロース 系 バイオマスの 加 水 分 解 物 である 混 合 糖 には セルロース 由 来 のC6 糖 類 と ヘミセルロース 由 来 のC5 糖 類 (キシロース アラビノース)が 共 存 しているため 発 酵 工 程 に 用 いる 微 生 物 は 混 合 糖 中 のC6 糖 類 とC5 糖 類 を 同 時 利 用 できることが 効 率 的 物 質 生 産 に 必 須 の 条 件 となる 我 々は コリネ 型 細 菌 の 代 謝 系 の 改 良 により C6 糖 類 およびC5 糖 類 の 完 全 同 時 利 用 を 達 成 し 効 率 的 なセルロース 系 バイオマス 利 用 を 可 能 とした さらに セルロース 系 バイオマスを 加 水 分 解 した 混 合 糖 に 存 在 する 発 酵 阻 害 物 質 (フェノール 類 やフラン 類 有 機 酸 類 など)に 対 しても RITEバイオプロセ スは 高 い 耐 性 を 示 す この 理 由 は 発 酵 阻 害 物 質 の 作 用 機 構 は 微 生 物 の 増 殖 阻 害 であり 我 々のプロセスは 非 増 殖 状 態 で 物 質 生 産 が 行 われているため 発 酵 阻 害 物 質 から 影 響 を 受 けにくいと 考 えられる( 詳 細 はRITE Today 2013~2014 参 照 ) 現 在 コリネ 型 細 菌 のゲノム 情 報 に 基 づいたメタボローム 解 析 や 代 謝 設 計 シ ステムバイオロジーを 駆 使 した 遺 伝 子 改 良 により 本 プロセスを 利 用 したバイオ 燃 料 やグリーン 化 学 品 の 拡 大 を 進 めている エタノール L- D- 乳 酸 アミノ 酸 等 の 高 効 率 生 産 に 加 えて ブタノールやフェノール 等 の 芳 香 族 化 合 物 など 幅 広 い 展 開 を 図 っている 次 章 では 従 来 の 発 酵 生 産 では 細 胞 に 対 する 毒 性 が 強 く 発 酵 生 産 が 不 可 能 と 言 われていた 高 細 胞 阻 害 物 質 製 造 技 術 へのチャレンジについて 紹 介 する 4.2 高 細 胞 阻 害 物 質 の 生 産 技 術 開 発 への 挑 戦 高 細 胞 阻 害 物 質 とは 微 生 物 による 発 酵 生 産 を 阻 害 する 物 質 であり 主 に 微 生 物 細 胞 への 毒 性 により 増 殖 停 止 など 生 産 性 に 影 響 を 与 える 物 質 を 指 す 具 体 的 には フェノールやブタノール 等 のアルコール 類 がよく 知 られている このよう な 物 質 を 発 酵 法 で 生 産 させると 増 殖 阻 害 のため 低 い 生 産 性 ( 生 成 速 度 の 低 下 最 終 生 成 物 濃 度 の 低 下 等 )を 示 し 実 用 生 産 は 困 難 とされてきた しかし 我 々が 開 発 したRITEバイオプロセスは 増 殖 非 依 存 型 バイオプロセスであるため 増 殖 を 伴 う 従 来 型 発 酵 法 と 比 較 して 阻 害 物 質 による 影 響 が 少 なく さらにコリネ 型 細 菌 は 芳 香 族 化 合 物 やアルコールに 対 する 耐 性 が 高 い( 図 3) これらの 特 徴 を 生 かして 高 細 胞 阻 害 物 質 の 生 産 技 術 開 発 を 行 った 次 章 で 独 自 に 開 発 した2 段 工 程 法 によるフェノール 生 産 について 解 説 する 31
研究活動概説 バイオ研究グループ グリーン燃料 グリーン化学品の生産技術開発に向けた取り組み RITE Today 2015 図3 高細胞阻害物質の生産技術開発への挑戦 4 3 2段工程法によるグリーンフェノール生産技術開発 フェノールは フェノール樹脂やポリカーボネート等の原料として幅広い用途 があり そのグリーン化が期待されていたが 細胞毒性が強く グリーン化は困 難と言われてきた しかし 我々が開発した 増殖非依存型バイオプロセス は 増殖とリンクせず物質生産が可能なため フェノール生産においても増殖阻害の 回避が期待できること さらにコリネ型細菌は 0.2%のフェノール存在下でも 良好に増殖を示し 0.24%のフェノール存在下においても増殖可能であるなど 大腸菌等の微生物と比較してフェノールに対して高い耐性を示した 我々は こ の組み合わせに加えて 実用生産を達成するためには生産プロセスのさらなる改 良が必要と考え 増殖非依存型バイオプロセスを利用した 2段工程法 による フェノール生産法を考案した 図4 図4 2段工程法によるグリーンフェノール製造プロセス 2段 工 程 法 で は 細 胞 毒 性 の 少 な い 中 間 体 4-ヒ ド ロ キ シ ベ ン ゾ エ ー ト 4-HBA を増殖非依存型バイオプロセスで高生産し 続いてこの中間体を原 料としてフェノールを生産する 4-HBAからフェノールへの変換は 4-HBA脱 炭酸酵素による一段反応であり フェノールによる該反応への阻害は低く グル コースからのフェノール直接生産に比べて非常に高い生産性が可能になった 今 回開発したグリーンフェノール生産システムは 既存の報告を大幅に上回り 最 終フェノール濃度22 g/lを達成した 今回開発した2段工程法は これまでにな 32
い 高 濃 度 フェノール 生 産 を 可 能 とし グリーンフェノール 製 造 技 術 の 実 用 化 を 実 証 するものである この2 段 工 程 法 の 展 開 については5 章 及 びトピックスで 紹 介 する 4.4 100%グリーンジェット 燃 料 生 産 技 術 開 発 IEA( 国 際 エネルギー 機 関 )によると 2050 年 に 運 輸 部 門 で 最 大 のCO 2 排 出 量 割 合 (40 %) を 占 め る の は 航 空 機 部 門 と の 予 想 で あ る(IEA Energy Technology Perspective 2010) 現 在 航 空 機 からのCO 2 排 出 量 は 運 輸 部 門 の 約 20%を 占 めるが 航 空 機 は 液 体 燃 料 を 使 用 するため 抜 本 的 な 改 善 策 が 容 易 ではなく 機 体 の 軽 量 化 などの 対 策 が 進 んでも 旅 客 数 やLCCの 増 加 によりCO 2 排 出 量 が 増 え 続 けることが 大 きな 理 由 とされている( 図 5) 従 って 航 空 機 からのCO 2 排 出 削 減 対 策 として バイオマスを 原 料 とするバイ オジェット 燃 料 に 大 きな 期 待 が 寄 せられている 現 在 使 用 されている 石 油 系 ジェット 燃 料 は 炭 素 数 C10~C15の 分 岐 および 環 状 飽 和 炭 化 水 素 と 芳 香 族 化 合 物 を 主 成 分 とする 混 合 物 で その 物 理 的 性 質 は 規 格 化 されている しかし 植 物 油 を 水 素 化 した 代 表 的 なバイオジェット 燃 料 は 飽 和 炭 化 水 素 化 合 物 のみから 構 成 され 芳 香 族 化 合 物 を 添 加 するために 石 油 系 ジェット 燃 料 とブレンドしなけれ ば 利 用 できない そこで 我 々はジェット 燃 料 の 規 格 に 適 合 する 多 様 な 分 岐 およ び 環 状 飽 和 炭 化 水 素 化 合 物 と 芳 香 族 化 合 物 の 全 てを バイオマス 由 来 の 混 合 糖 か ら 製 造 可 能 な 世 界 初 の100%グリーンジェット 燃 料 生 産 方 法 を 提 案 した( 図 6) 本 提 案 では 前 述 した 化 合 物 の 全 てをバイオマス 由 来 の 混 合 糖 から 製 造 可 能 な 微 生 物 を 創 製 し 従 来 の 発 酵 生 産 法 では 製 造 が 困 難 な100%グリーンジェット 燃 料 製 造 技 術 を 開 発 する 図 5 航 空 機 からのCO 2 排 出 量 の 予 測 図 6 100%グリーンジェット 燃 料 生 産 技 術 開 発 5. 実 用 化 への 取 り 組 み 5.1 グリーンフェノール 開 発 株 式 会 社 の 設 立 前 章 で 述 べた 世 界 初 のグリーンフェノール 製 造 技 術 である2 段 工 程 法 による フェノール 生 産 を 早 期 実 用 化 するため 住 友 ベークライト 社 と 共 同 で 平 成 26 年 5 月 にグリーンフェノール 開 発 株 式 会 社 を 設 立 した 詳 細 はトピックスを 参 照 された い 33
5.2 ブタノール 次 世 代 バイオ 燃 料 として 期 待 されているブタノールについては ブタノール 生 合 成 系 遺 伝 子 を 導 入 したコリネ 型 細 菌 を 用 いたRITEバイオプロセスにより 非 可 食 バイオマス 由 来 の 混 合 糖 を 原 料 とした 生 産 技 術 開 発 を 継 続 している 混 合 糖 からの 高 変 換 率 ( 対 糖 収 率 )を 目 指 し 代 謝 工 学 を 駆 使 してコリネ 型 細 菌 の 育 種 を 行 い ブタノール 生 成 における 高 いSTYを 実 現 している ブタノールはフェノー ルと 同 様 に 微 生 物 の 増 殖 に 対 し 強 い 細 胞 毒 性 を 有 し ブタノール 生 産 を 阻 害 する ことが 知 られているが コリネ 型 細 菌 は 他 の 微 生 物 よりもブタノール 耐 性 が 優 れ ている 我 々は さらに 膜 を 利 用 した 効 率 的 なブタノール 回 収 法 と 組 み 合 わせて ブタノール 濃 度 (~ 数 %)を 効 率 的 に 濃 縮 する 生 産 システムの 開 発 に 着 手 してい る( 図 7) また 昨 年 紹 介 した 航 空 機 燃 料 素 材 としての 利 用 をめざしたプロジェ クトについては 米 国 立 再 生 可 能 エネルギー 研 究 所 (NREL) 等 との 国 際 共 同 体 制 で 取 り 組 んでおり 独 自 に 開 発 した 突 然 変 異 導 入 法 による 高 ブタノール 耐 性 株 の 取 得 や 高 機 能 性 酵 素 の 導 入 による 菌 体 改 良 により 糖 類 からの 高 いブタノール 収 率 を 達 成 した ブタノール 製 造 技 術 については 実 用 化 菌 体 の 開 発 は 順 調 に 進 んでおり 今 後 は 回 収 法 を 含 めたブタノール 生 産 システムとして 関 心 のある 企 業 と 共 に 実 用 化 開 発 を 進 めていきたい 図 7 連 続 生 成 反 応 と 膜 回 収 法 を 組 み 合 わせたブタノール 生 産 システム 5.3 シキミ 酸 の 製 造 技 術 開 発 シキミ 酸 は インフルエンザ 治 療 薬 タミフル(oseltamivir) 合 成 の 中 間 体 と して 世 界 的 に 需 要 が 高 まっている タミフルはパンデミック 対 策 のため 備 蓄 が 必 要 であるが 原 料 のシキミ 酸 の 不 足 が 課 題 であった シキミ 酸 は3つの 不 斉 炭 素 原 子 を 有 する 環 状 ヒドロキシ 酸 でありタミフルの 他 様 々な 医 薬 品 化 成 品 化 粧 品 農 薬 等 の 原 料 や 合 成 中 間 体 として 重 要 である 従 来 シキミ 酸 は 植 物 の シキミ(ハッカク)の 乾 燥 果 実 より 抽 出 精 製 されていたため 低 収 量 でコスト が 高 かった また シキミ 生 産 が 中 国 に 集 中 し 乱 獲 などの 問 題 もあったため 安 価 な 再 生 可 能 原 料 からのバイオプロセスによる 生 産 が 望 まれていた RITEで は コリネ 型 細 菌 の 芳 香 族 アミノ 酸 等 の 生 合 成 経 路 の 中 間 体 であるシキミ 酸 に 早 くから 着 目 し( 図 8) 糖 類 の 取 り 込 み 系 やシキミ 酸 生 合 成 経 路 の 強 化 シキミ 34
酸 分 解 経 路 の 遮 断 等 の 改 良 をコリネ 型 細 菌 に 実 施 し 今 まで 報 告 されていた 値 と 比 較 して 大 きく 上 回 るシキミ 酸 生 産 性 を 達 成 した 本 技 術 開 発 は 多 数 の 反 響 を 企 業 から 頂 いており 実 用 化 開 発 を 目 指 した 共 同 研 究 や 共 同 開 発 に 繋 げていきた いと 考 えている 図 8 コリネ 型 細 菌 における 芳 香 族 化 合 物 生 合 成 とシキミ 酸 6. 終 わりに 北 米 で 新 型 天 然 ガス(シェールガス)の 生 産 が 本 格 化 し 世 界 のエネルギー 市 場 や 経 済 産 業 構 造 を 大 きく 変 える シェールガス 革 命 が 進 行 している シェー ルガス 等 を 原 料 とする 新 石 油 化 学 工 業 は 今 後 急 速 な 生 産 規 模 の 拡 大 が 予 測 されている これによるメタンやエチレンベースの 化 学 品 は かなりのコスト 競 争 力 を 持 つと 予 想 されるが 逆 に 炭 素 数 4 以 上 の 化 学 品 および 芳 香 族 化 学 品 は 価 格 上 昇 が 予 測 されている( 図 9) このような 動 きは 将 来 的 にはバイオ リファイナリー 産 業 にとって 追 い 風 になると 予 測 される 図 9 シェールガス 革 命 による 化 学 産 業 への 影 響 今 後 とも 本 誌 面 で 紹 介 した 従 来 の 発 酵 法 では 生 産 が 困 難 であった 高 細 胞 阻 害 物 質 であるフェノール 類 のような 芳 香 族 化 合 物 や ブタノールに 代 表 される グリーンジェット 燃 料 の 生 産 技 術 開 発 などに 注 力 し バイオリファイナリー 産 業 の 拡 大 による 地 球 環 境 保 全 や 持 続 可 能 社 会 の 実 現 に 貢 献 していきたい 35