S-6-3 アジアにおける 低 炭 素 社 会 実 現 のため の 制 度 に 関 する 研 究 東 京 工 業 大 学 蟹 江 憲 史 (チームリーダー) 金 丹 井 口 正 彦 ( 研 究 協 力 者 ) 国 立 環 境 研 究 所 亀 山 康 子 / 久 保 田 泉 / 森 田 香 菜 子 関 西 大 学 鈴 木 政 史 アフリカ 開 発 銀 行 須 藤 智 徳 ( 研 究 協 力 者 ) 1
目 的 アジアにおいて 低 炭 素 社 会 を 確 立 していくための 中 長 期 的 国 際 国 内 制 度 のあり 方 を 提 示 し その 実 現 のための 具 体 的 政 策 オプ ションを 提 案 する 1. 低 炭 素 社 会 実 現 へ 向 けた 排 出 削 減 必 要 量 と 現 状 とのギャップ の 検 討 : 低 炭 素 社 会 実 現 のためにどの 程 度 の 削 減 が 必 要 とな るか だれが 減 らすべきか 現 状 の 中 長 期 目 標 の 状 況 はどう なっているかを 検 討 2. 制 度 設 計 とプロセス:1で 示 されたギャップを 埋 め アジア および 世 界 規 模 で 効 果 的 に 低 炭 素 社 会 を 実 現 するためには 低 炭 素 技 術 の 国 際 的 移 転 や 低 炭 素 製 品 の 普 及 が 不 可 欠 し たがって 主 にアジア 地 域 において 低 炭 素 技 術 移 転 や 技 術 の 普 及 を 行 うための 国 際 制 度 資 金 メカニズムを 検 討 また 制 度 実 現 のための 中 長 期 的 プロセスのあり 方 を 提 案 2
1 低 炭 素 社 会 実 現 へ 向 けた 排 出 削 減 必 要 量 と 現 状 とのギャップの 検 討
主 要 国 の 中 長 期 排 出 削 減 目 標 国 名 中 期 目 標 (~2020) 長 期 目 標 (~2050) 日 本 1990 年 比 -25% (コペンハーゲン 合 意 への 誓 約 ; 温 暖 化 対 策 基 本 法 案 ) *すべての 主 要 国 による 公 平 かつ 実 効 性 のある 国 際 的 な 枠 組 み の 構 築 及 び 意 欲 的 な 目 標 の 合 意 が 前 提 米 国 2005 年 比 -17% 2005 年 比 -83% (コペンハーゲン 合 意 への 誓 約 ) 1990 年 比 -80% ( 温 暖 化 対 策 基 本 法 案 ) *すべての 主 要 国 による 公 平 かつ 実 効 性 のある 国 際 的 な 枠 組 みの 構 築 及 び 意 欲 的 な 目 標 の 合 意 が 前 提 (オバマ 大 統 領 2010 年 度 予 算 会 計 基 本 方 針 2009 年 2 月 ) EU 1990 年 比 -20% ただし 他 の 先 進 国 が 同 程 度 の 努 力 を するならば -30% (EU climate and renewable energy package 2008 年 12 月 ;コペン ハーゲン 合 意 への 誓 約 ) 究 極 目 標 : 産 業 革 命 以 前 よりも2 以 上 気 温 を 上 昇 させな い ( 欧 州 環 境 理 事 会 で 合 意 1996 年 6 月 ) 先 進 国 全 体 で1990 年 比 -80%~-95% (EU position for the Copenhagen climate conference 2009 年 12 月 ) イギリス 少 なくとも1990 年 比 -34%(Climate Change ACT 2008) 少 なくとも1990 年 比 -80%(Climate Change ACT 2008) オランダ 1990 年 比 -30%( 政 府 公 式 発 表 ) 1990 年 比 -80%(Dutch COOL Project 2001 年 6 月 に 終 了 ) ノルウェー 1990 年 比 -30%から-40% (コペンハーゲン 合 意 への 誓 約 ) * 主 要 排 出 国 が2 目 標 に 沿 った 包 括 的 な 次 期 枠 組 みに 合 意 す れば 40% 削 減 を 目 指 す 中 国 2005 年 でGDP 当 たり-40%~-45% 45% インド ブラジル インドネシア (コペンハーゲン 合 意 への 誓 約 ) 2005 年 比 でGDP 当 たり-20%~-25% (コペンハーゲン 合 意 への 誓 約 ) BaU 比 -36.1%~-38.9% (コペンハーゲン 合 意 への 誓 約 ) 出 典 : (BaU 比 )-26%(コペンハーゲン 合 意 への 誓 約 ただし 同 文 書 にはBaU 比 の 言 及 なし) 国 際 社 会 からの 資 金 支 援 が 得 られればBaU 比 -41% (ユドヨノ 大 統 領 スピーチ 2009 年 9 月 25 日 ) 2030~2050 年 までにカーボン ニュートラル ( 2007 年 6 月 に 政 府 によって 承 認 ) http://www.valdes.titech.ac.jp/~kan ie/newdb2009/index.html
Source: The Emissions Gap report (UNEP 2010) www.unep.org/publications/ebooks/ emissionsgapreport Copenhagen Accord pledge estimates inconsistent with 1.5 C or 2 C (both medium and likely chance) Implementing and strengthening of 2020 pledges 5
6 衡 平 な 排 出 量 目 標 設 定 には 多 様 な 指 標 がありうる 責 任 ( 温 暖 化 寄 与 度, 大 気 への 権 利 ) 気 温 上 昇 への 歴 史 的 貢 献 一 人 当 たり 排 出 量 国 の 絶 対 排 出 量, 等 能 力 ( 支 払 能 力 ) GDP あるいは 一 人 当 たりGDP 人 間 開 発 指 標 (HDI) ( 注 ) と 一 人 当 たり GDPの 組 合 せ, 等 ( 注 ) 人 間 開 発 指 標 : 人 々の 生 活 の 質 や 発 展 の 度 合 いを 示 す 指 標 実 効 性 ( 削 減 ポテンシャル) 生 産 原 単 位 当 たり 排 出 量 GDP 当 たり 排 出 量 限 界 削 減 費 用 一 定, 等 多 様 な 複 合 指 標 トリプティ ク マルチステージアプローチ 多 部 門 収 斂 参 考 ECコミュニケーション (2009.1.28)の4 指 標 1 一 人 当 たりGDP( 能 力 ) 2 原 単 位 排 出 量 ( 実 効 性 ) 3 温 室 効 果 ガス 排 出 傾 向 (1990~ 2005)( 責 任 ) 4 人 口 動 向 (1990~2005)( 責 任, 実 効 性 ) 目 標 に 関 する 国 際 合 意 形 成 は 当 分 困 難 か?
Source: The Emissions Gap report (UNEP 2010) www.unep.org/publications/ebooks/ emissionsgapreport Copenhagen Accord pledge estimates inconsistent with 1.5 C or 2 C (both medium and likely chance) Implementing and strengthening of 2020 pledges(, but negotiation takes some time ) Diffuse and strengthen the norm on the necessity for low-carbon future(, which takes some time ) Start with things that are possible 7
2 制 度 設 計 : 技 術 普 及 とそれを 支 える 2 制 度 設 計 : 技 術 普 及 とそれを 支 える 資 金 のマッチングへ 向 けて
短 中 期 的 国 際 合 意 形 成 の 如 何 にかかわらず 低 国 際 交 渉 は 炭 素 社 会 を 実 現 には 低 国 家 間 炭 素 技 術 の 国 際 的 移 転 や 低 炭 素 製 品 の 普 及 が 不 可 の 交 渉 欠 技 術 を 実 際 に 持 つのは 企 業 ( 非 国 家 ) 企 業 やセクターが 国 家 と 連 携 し パートナーシップを 組 みながら ネット ワークを 活 用 する 形 で 公 共 的 使 命 を 果 たす 新 たなガバナンスの 形 態 を 検 討
Technology Governance for LCS Types of product Mt Material il Electricity it Consumer Products /process (end user) Stages Examples of sectors and technologies Steel and Iron, Cement Coal, CCS, Renewables Building, Car (transport), Innovation / Development Diffusion / Key concepts for research Transfer Functions: information exchange (on low carbon technology) / Norm creation / Policy coordination? Forms: Private Network / Partnerships / Standard / Intergovernmental (Sectoral crediting / Transnational sectoral approach / Policy based approach) Evaluation criteria Environmental Impact/effects (additional emissions reduction) Efficiency (create a level playing field) Incentives (to get private actors involved) Actors involved: Private (informal) / Inter governmental (formal) / Hybrid
実 施 中 のケーススタディ 技 術 のタイプ 技 術 のステージ マテリアル 発 電 系 消 費 財 技 術 セクターの 例 鉄 鋼 セメント 石 炭, CCS, 再 生 可 能 エネルギー 建 築, 自 動 車 ( 交 通 ), イノベーション/ 開 発 普 及 / 移 転 鉄 鋼 バイオガス 発 電 (インド タイ) 太 陽 光 自 動 車 技 術 普 及 の 国 内 国 際 的 障 害 (barrier)に 関 する 既 存 研 究 の 整 理 Actors involved: Private (informal) / Inter governmental (formal) / Hybrid
技 術 移 転 普 及 の 障 害 京 都 議 定 書 (マラケシュ 合 意 )で 定 められたCDMや 排 出 量 取 引 制 度 は 温 室 効 果 ガスの 削 減 技 術 の 普 及 につながっていない 新 たな 制 度 の 必 要 性 1. 技 術 普 及 における 障 害 1 ファイナンス( 特 にプライベートな 投 資 家 )の 欠 如 2 3 途 上 国 サイドの 制 度 的 政 策 的 サポートの 欠 如 技 術 移 転 後 の 運 営 管 理 の 問 題 4 イノベーションにおける 知 的 財 産 権 の 保 護 の 問 題 2. その 他 これまでに 得 られた 知 見 1. 南 - 南 の 技 術 移 転 が 進 んでいるケースがある( 中 国 インドの 超 臨 界 圧 発 電 ) 2. 地 場 産 業 技 術 が 育 っているケースがある(インドのバイオガス 風 力 発 電 や 中 国 のコークス 乾 式 消 火 設 備 技 術 ) 3. 技 術 移 転 に 関 しては 移 転 後 の 障 害 が 大 きいにも 関 わらず これまで 研 究 されていない 例 :タイのバイオガス 発 電 ; 工 場 建 設 後 に 想 定 された 発 電 量 が 確 保 されていない ケース
適 応 緩 和 に 関 する 資 金 源 ( 現 況 ) Financial Mechanisms under the UNFCCC / KP name Amount (USD) GEF 2,700,000,000 1991-2009 LDCF 180,800,000 as of Sep. 30, 2009 SCCF 123,000,000 as of Sep. 30, 2009 Adaptation Fund 23,530,000 as of Nov. 30, 2009 Source: GEF, Focal Area: Climate Change (GEF Fact Sheet) (Washington D.C.: GEF, 2009); GEF, Status Report on the Special Climate Change Fund and the Least Developed Countries Fund, GEF/LDCF.SCCF.7./Inf.2, Oct. 14, 2009; World Bank, Financial Status of the Adaptation Fund Trust Fund (As at 30 November 2009, 2009. Climate Investment Funds (World Bank) Contributions, as of Sep. 30, 2009 United States 32% United Kingdom 20% Australia 2% Canada Denmark 2% 0% France 5% Germany 13% Japan 19% Netherlands Norway 1% Switzerland Sweden Spain 1% 2% 3% 0% Source: Climate Investment Funds Administrative Unit, Building Partnerships for Climate Action (CIF Annual Report 2009) (Washington D.C.: The World Bank, 2009). 種 々の 資 金 源 が 分 散 Institution Australia Other Financial Sources Name of Fund Adaptation to Climate Change Initiative Amount (USD) Institution 150,000,000 World Bank Name of Fund Forest Investment Program Amount (USD) 300,000,000 ADB Asia Pacific Carbon Fund 152,000,000 ADB Future Carbon Fund 100,000,000 World Bank Carbon Fund for Europe 68,120,000 World Bank BioCarbon Fund 91,900,000900 000 The European Commission's Cooperation Office European Commission ADB Clean Energy Financing Partnership Facility 250,000,000 Australia ADB Climate Change Fund 40,000,000 Germany World Bank Climate Investment Fund 6,300,000,000 Australia World Bank World Bank African Development Bank Global Climate Change Alliance Global Energy Efficiency and Renewable Energy Fund Global Initiative on Forests and Climate International Climate Initiative International Forest Carbon Initiative MDG Achievement Fund Carbon Partnership Spain, UNDP, 500,000,000 Facility UNICEF, FAO Fund Community Development Carbon Fund 128,600,000 ADB Poverty and Environment Fund 81,000,000 146,000,000 200,000,000 324,500,000 200,000,000 710,000,000 3,600,000 Congo Basin Forest Fund 160,000,000 World Bank Prototype Carbon Fund 219,800,000 Japan Cool Earth Partnership 10,000,000,000 ADB Environmental United Kingdom Transformation Fund 1,219,000,000 World Bank International window World Bank Forest Carbon Partnership Facility 155,000,000 UNDP Water Financing Partnership Facility 26,000,000 Umbrella Carbon 1,088,300,00 00 Facility 0 UN-REDD Programme Fund 54,100,000 Main Sources: African Development Bank, Congo Basin Forest Fund (Tunis-Belvedère: African Development Bank, 2009); German Federal Ministry of the Environment, Nature Conservation, and Nuclear Safety, The International Climate Initiative - Review of 2008 and 2009 ; World Bank, Carbon Finance for Sustainable Development 2008 (Washington D.C.: The World Bank, 2008); Asian
表 1: 緩 和 に 関 する 試 算 ( 年 額 ) 試 算 額 ( 米 ドル) 基 準 年 対 象 UNFCCC (2007) 200,000,000,000000 000 000~210,000,000,000000 000 000 2030 年 全 体 EU (2009) 128,000,000,000 2020 年 途 上 国 世 界 銀 行 (2009) 400,000,000,000 2030 年 途 上 国 表 2: 適 応 に 関 する 試 算 ( 年 額 ) 試 算 額 ( 米 ドル) 基 準 年 対 象 世 界 銀 行 (2006) 9,000,000,000~41,000,000,000 現 在 途 上 国 スターン 報 告 (2006) 4,000,000,000~37,000,000,000 現 在 途 上 国 Oxfam (2007) 50,000,000,000 現 在 途 上 国 UNDP (2007) 86,000,000,000 2015 年 途 上 国 UNFCCC (2007) 28,000,000,000~67,000,000,000 2030 年 UNFCCC 非 付 属 書 Ⅰ 国 世 界 銀 行 (2009) 75,000,000,000 2030 年 途 上 国 EU (2009) 13,600,000,000~32,645,000,000 2020 年 途 上 国 表 3: 京 都 議 定 書 及 びUNFCCC 締 約 国 会 議 の 指 導 の 下 に 機 能 している 資 金 メカニズムと 累 計 額 資 金 名 額 ( 米 ドル) 期 間 GEF 2,700,000,000 1991-2009 LDCF 180,800,000 設 立 ~2009 年 9 月 末 SCCF 123,000,000 設 立 ~2009 年 9 月 末 CDM 8,400,000,000,, 2,007 適 応 基 金 62,740,000 設 立 ~2010 年 3 月
表 4: 気 候 変 動 分 野 における2 国 間 多 国 間 の 資 金 メカニズムと 累 計 額 機 関 国 基 金 名 額 ( 米 ドル) 機 関 国 基 金 名 額 ( 米 ドル) アフリカ 開 発 銀 クールアース パートナー コンゴ 盆 地 森 林 基 金 160,000,000000 000 日 本 10,000,000,000000 000 000 行 シップ アジア 開 発 銀 行 アジア 太 平 洋 炭 素 基 金 152,000,000 アジア 開 発 銀 行 クリーンエネルギー 融 資 パートナーシップ ファシリ ティ スペイン, UNDP, UNICEF, FAO アジア 開 発 銀 行 気 候 変 動 基 金 40,000,000 英 国 ミレニアム 開 発 目 標 達 成 基 金 710,000,000 250,000,000 UNDP UN-REDDプログラム 基 金 54,100,000 環 境 変 動 基 金 国 際 ウィンド ウ 1,219,000,000 アジア 開 発 銀 行 未 来 炭 素 基 金 100,000,000000 000 世 界 銀 行 バイオ 炭 素 基 金 91,900,000900 000 アジア 開 発 銀 行 貧 困 及 び 環 境 ファンド 3,600,000 世 界 銀 行 炭 素 パートナーシップ ファシ リティ 500,000,000 アジア 開 発 銀 行 水 融 資 パートナーシップ ファシリティ 26,000,000 世 界 銀 行 気 候 投 資 基 金 6,300,000,000 オーストラリア 気 候 変 動 適 応 イニシアティブ 150,000,000 世 界 銀 行 コミュニティ 開 発 炭 素 基 金 128,600,000 オーストラリア 森 林 気 候 世 界 イニシアティブ 200,000,000 世 界 銀 行 欧 州 炭 素 基 金 68,120,000 オーストラリア 国 際 森 林 炭 素 イニシアティブ 200,000,000 世 界 銀 行 森 林 炭 素 パートナーシップ ファシリティ 155,000,000 欧 州 委 員 会 世 界 気 候 変 動 連 合 81,000,000 世 界 銀 行 森 林 投 資 プログラム 300,000,000 欧 州 委 員 会 世 界 エネルギー 効 率 再 生 可 能 エネルギー 基 金 146,000,000 世 界 銀 行 プロトタイプ 炭 素 基 金 219,800,000 000 ドイツ 国 際 気 候 イニシアティブ 324,500,000 世 界 銀 行 アンブレラ 炭 素 ファシリティ 1,088,300,000