情勢分析_原油価格下落の状況における中東産油国のインフラストラクチャー整備の動向



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1. 決 算 の 概 要 法 人 全 体 として 2,459 億 円 の 当 期 総 利 益 を 計 上 し 末 をもって 繰 越 欠 損 金 を 解 消 しています ( : 当 期 総 利 益 2,092 億 円 ) 中 期 計 画 における 収 支 改 善 項 目 に 関 して ( : 繰 越

Transcription:

中 東 情 勢 分 析 原 油 価 格 下 落 の 状 況 における 中 東 産 油 国 の インフラストラクチャー 整 備 の 動 向 和 光 大 学 経 済 経 営 学 部 教 授 大 学 院 研 究 科 委 員 長 岩 間 剛 一 予 想 を 超 えた 原 油 価 格 の 下 落 と 石 油 収 入 の 減 少 予 想 を 超 えた 米 国 におけるシェール オイルの 生 産 量 の 増 加, 中 国 経 済 の 減 速 の 長 期 化 を 契 機 として, 原 油 価 格 は2014 年 6 月 をピークとして 急 速 に 下 落 している 特 に,2014 年 11 月 27 日 の OPEC( 石 油 輸 出 国 機 構 ) 総 会 において, 原 油 生 産 量 が 据 え 置 かれ, 米 国 標 準 油 種 である WTI(ウェスト テキサス インターミディエート) 原 油 価 格 は,2014 年 6 月 の1バレル107ドルから2015 年 3 月 には1バレル43ドルまで 大 幅 に 低 下 している ( 図 表 1) 原 油 価 格 の 下 落 は, 原 油 と 天 然 ガスの 輸 出 による 外 貨 収 入 に 国 家 財 政 が 依 存 する 中 東 産 油 国 経 済 にも 大 きな 影 響 を 与 える 中 東 産 油 国 は, 平 均 的 に 名 目 GDP の3 割 ~5 割, 財 政 収 入 の7 割 ~8 割 程 度 を 石 油 収 入 に 依 存 しており, 原 油 価 格 の 下 落 は,サウジアラビア をはじめとした 中 東 産 油 国 の 経 済 成 長 率 の 鈍 化 をもたらす サウジアラビアの 実 質 GDP ( 国 内 総 生 産 ) 成 長 率 は,2015 年 に 年 率 3%を 割 り 込 むと 見 込 まれている( 図 表 2) 原 油 価 格 は,1970 年 代 の2 度 にわたる 石 油 ショックに 対 する 逆 オイル ショックによ り,1990 年 代 には 原 油 価 格 が 低 迷 していた しかし,21 世 紀 に 入 り, 中 国,インドをは ( 図 表 1) 主 要 原 油 価 格 ( 単 位 :ドル/バレル) 中 東 協 力 センターニュース 2015 5

( 図 表 2)サウジアラビアの 実 質 GDP 成 長 率 (%) 出 所 :IMF( 国 際 通 貨 基 金 ) 統 計 じめとした 新 興 経 済 発 展 諸 国 の 高 度 経 済 成 長 とともに, 石 油 の 爆 食 が 始 まり,2003 年 のイ ラク 戦 争 による 世 界 の 産 油 地 帯 である 中 東 産 油 国 の 地 政 学 リスクが 強 まり, 原 油 価 格 は 上 昇 の 一 途 を 辿 った 1990 年 代 に 原 油 価 格 が1バレル10ドル~20ドルで 低 迷 していた 時 期 には, 原 油 価 格 が 高 騰 することはないと, 多 くのエネルギー 専 門 家 は 考 えていた しかし, 21 世 紀 に 入 って, 石 油 を 利 用 する 人 口 が, 先 進 国 の8 億 人 から 新 興 経 済 発 展 諸 国 を 含 めた 30 億 人 に 拡 大 し, 原 油 価 格 は,1バレル100ドルが 当 たり 前 となってきた 特 に,2011 年 年 初 の アラブの 春 以 降 には, 原 油 価 格 1バレル100ドル 超 が,3 年 半 にわたり 続 き, こうした 原 油 価 格 の 上 昇 とともに, 中 東 産 油 国 には 莫 大 なオイルマネーが 流 入 するように なった( 図 表 3) 中 東 産 油 国 の 原 油 輸 出 価 格 の 基 準 となる 中 東 ドバイ 原 油 価 格 は,2003 年 の1バレル ( 図 表 3) 中 東 産 油 国 オイルマネー 流 入 額 ( 単 位 : 億 ドル) 出 所 : 各 種 統 計 をもとに 筆 者 推 計 2 中 東 協 力 センターニュース 2015 5

26.78 ド ル か ら,2014 年 に は 1 バ レ ル 96.72ドルに 上 昇 し, 毎 年 中 東 産 油 国 に 流 入 するオイルマネーは,2014 年 までの4 年 間 にわたって, 平 均 して 年 間 1 兆 ドル 近 く に 達 している しかし, 依 然 として 石 油 天 然 ガスの 輸 出 に 大 きく 依 存 する 中 東 産 油 国 の 輸 出 額 の7 割 ~9 割 程 度 は, 原 油 輸 出 と 天 然 ガス 輸 出 が 占 め,2014 年 6 月 以 降 に おける 原 油 価 格 の 下 落 は, 中 東 産 油 国 のオ イルマネーの 減 少 をもたらしている 筆 者 紹 介 1981 年 東 京 大 学 法 学 部 卒 業, 東 京 銀 行 ( 現 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 ) 入 行, 東 京 銀 行 本 店 営 業 第 2 部 部 長 代 理 (エ ネルギー 融 資, 経 済 産 業 省 担 当 ), 東 京 三 菱 銀 行 本 店 産 業 調 査 部 部 長 代 理 (エネルギー 調 査 担 当 ) 出 向 : 石 油 公 団 ( 現 石 油 天 然 ガス 金 属 鉱 物 資 源 機 構 ) 企 画 調 査 部 ( 資 源 エネルギー チーフ エコノミスト), 日 本 格 付 研 究 所 (チーフ アナリスト:ソブリン, 資 源 エネルギー 担 当 ) 2003 年 から 和 光 大 学 経 済 経 営 学 部 教 授 ( 資 源 エ ネルギー 論,マクロ 経 済 学,ミクロ 経 済 学 ) 東 京 大 学 工 学 部 非 常 勤 講 師 ( 金 融 工 学, 資 源 開 発 プロジェクト ファイナンス 論 ), 三 菱 UFJリサーチ コンサルティング 客 員 主 任 研 究 員, 石 油 技 術 協 会 資 源 経 済 委 員 会 委 員 長 * 著 書 資 源 開 発 プロジェクトの 経 済 工 学 と 環 境 問 題, ガソリン 本 当 の 値 段, 石 油 がわかれば 世 界 が 読 める,その 他, 新 聞, 雑 誌 等 への 寄 稿,テレビ,ラ ジオ 出 演 多 数 2015 年 5 月 時 点 においても 堅 調 な 中 東 産 油 国 経 済 これまで, 中 東 産 油 国 は, 潤 沢 なオイルマネーを 原 資 に, 国 内 のインフラストラクチャー 整 備, 海 外 企 業 の M & A( 合 併 買 収 ), 欧 米 企 業 への 株 式 投 資 を 行 ってきた そのため, 原 油 価 格 の 急 速 な 下 落 は, 国 際 金 融 市 場 におけるマネーの 流 れに 大 きな 変 化 をもたらす 可 能 性 があると 見 るエネルギー 専 門 家 もいる しかし, 原 油 価 格 が 本 格 的 な 下 落 を 始 めて, まだ 数 ヵ 月 であり,2015 年 5 月 時 点 においては,これまでの 潤 沢 なオイルマネーを 原 資 と した 準 備 金 の 取 り 崩 し 等 により, 財 政 赤 字 を 補 填 していることから, 中 東 産 油 国 経 済 の 成 長 率 に 極 端 な 鈍 化 は 見 られない( 図 表 4) ただし, 原 油 価 格 の 下 落 に 伴 ってオイルマネーが 減 少 を 始 めて,まだ 半 年 程 度 であるた めに, 現 時 点 においては, 中 東 産 油 国 経 済 に 大 きな 打 撃 はなく, 先 進 国 企 業 への 株 式 の 巨 額 な 売 却 による 資 産 構 成 (ポートフォリオ) 変 更 等 はないものの, 原 油 価 格 低 迷 が1 年 ~ ( 図 表 4) 中 東 産 油 国 の 経 済 成 長 率 (%) 出 所 :IMF( 国 際 通 貨 基 金 )による2014 年 10 月 推 計 3 中 東 協 力 センターニュース 2015 5

( 図 表 5)IMF による 世 界 経 済 見 通 し(%) 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 2015 年 2016 年 世 界 -0.7 5.1 3.9 3.4 3.4 3.4 3.5 3.8 日 本 -6.3 4.5-0.6 1.5 1.6-0.1 1.0 1.2 米 国 -3.5 3.0 1.8 2.3 2.2 2.4 3.1 3.1 ユーロ -4.3 2.0 1.5-0.7-0.5 0.9 1.5 1.6 中 国 9.2 10.4 9.3 7.7 7.8 7.4 6.8 6.3 インド 6.8 10.1 6.3 4.7 6.9 7.2 7.5 7.5 ブラジル -0.6 7.5 2.7 1.0 2.7 0.1-1.0 1.0 アセアン5 1.7 7.0 4.5 6.2 5.2 4.6 5.2 5.3 中 東 アフリカ 2.6 5.0 3.9 4.8 2.4 2.6 2.9 3.8 出 所 :IMF 世 界 経 済 見 通 し2015 年 4 月 2 年 と 長 期 化 した 場 合 には, 石 油 収 入 の 減 少 に 伴 って, 海 外 への 株 式 投 資 の 見 直 しは, 十 分 に 考 えられる さらに, 都 市 鉄 道 をはじめとしたインフラストラクチャー 整 備 計 画 の 見 直 しの 可 能 性 も 考 えられる こうした 原 油 価 格 下 落 による 石 油 収 入 の 減 少 を 踏 まえ,IMF ( 国 際 通 貨 基 金 )は,2015 年 4 月 に 世 界 経 済 の 見 通 しを 下 方 修 正 し, 世 界 経 済 の 成 長 率 は 年 率 3% 台 に 低 迷 し, 中 東 アフリカ 諸 国 の 経 済 成 長 率 も 鈍 化 するとしている( 図 表 5) 原 油 価 格 の 下 落 は LNG 輸 出 価 格 にも 影 響 中 東 産 油 国 経 済 にとって, 原 油 輸 出 とともに,カタールをはじめとした 天 然 ガス 生 産 国 にとっては,LNG( 液 化 天 然 ガス) 輸 出 も 重 要 な 外 貨 収 入 源 となっている 2014 年 のLNG 世 界 貿 易 量 は,3 年 ぶりに 前 年 と 比 較 して 増 加 の2 億 3,918 万 トンに 達 し,カタールは 世 界 最 大 の LNG 輸 出 国 となっている( 図 表 6) 特 に,LNG 価 格 は,1990 年 代 に 百 万 Btu(ブリティッシュ 熱 量 単 位 ) 当 たり3ドル 程 度 であったものが, 東 日 本 大 震 災 以 降 は, 原 油 価 格 の 上 昇 とともに 百 万 Btu 当 たり16ドル ~18ドルとなり( 図 表 7),LNG 価 格 の 上 昇 と 日 本 への 輸 出 の 増 加 は,カタール,UAE, オマーンをはじめとした 中 東 産 油 国 の LNG 輸 出 収 入 の 増 加 に 大 きく 寄 与 した しかし, 日 本 が 輸 入 する LNG の7 割 ~8 割 は 原 油 価 格 連 動 の 長 期 契 約 であり, 原 油 価 格 の 下 落 とともに,LNG の 長 期 契 約 分 の LNG 価 格 も 低 下 する 原 油 価 格 が1バレル50 ドルでは,LNG 価 格 は 百 万 Btu 当 たり7ドル~9ドル 程 度 と,2014 年 2 月 の LNG スポ ット( 随 時 契 約 ) 価 格 が 百 万 Btu 当 たり20.5ドルと 過 去 最 高 を 記 録 したことと 比 較 して3 分 の1 程 度 の 価 格 となっており,LNG の 輸 出 に 伴 う 外 貨 収 入 も 減 少 している 4 中 東 協 力 センターニュース 2015 5

( 図 表 6) 国 別 LNG 輸 出 量 ( 単 位 : 万 トン) 出 所 : 国 際 LNG 輸 入 者 協 会 統 計 ( 図 表 7) 日 本 の LNG 輸 入 価 格 ( 単 位 :ドル/ 百 万 Btu) 出 所 :BP 統 計 2014 年 6 月 イスラム 国 の 台 頭 も 中 東 産 油 国 に 大 きな 影 響 2011 年 年 初 から 始 まった アラブの 春 は,もともとは2010 年 年 末 におけるチュニジ アの 青 年 の 焼 身 自 殺 を 契 機 としている チュニジア,エジプト,リビアと 次 々と 民 主 化 運 動, 反 政 府 運 動 が 伝 播 (Contagion)し, 中 東 諸 国 の 独 裁 政 権 が 崩 壊 した しかし, 当 初 考 えられていた 欧 米 流 の 民 主 主 義 国 家 の 樹 立 という 期 待 とは 裏 腹 に, 中 東 情 勢 が 混 迷 し, 逆 に 反 欧 米 的 なイスラム 過 激 派 組 織 の 台 頭 を 招 く 結 果 となった チュニジアのベンアリ 政 権,エジプトのムバラク 政 権,リビアのカダフィ 政 権 という 長 期 独 裁 政 権 が 次 々と 崩 壊 することによって, 当 初 の 民 主 主 義 の 勝 利 とは 逆 に, 従 来 は 独 裁 5 中 東 協 力 センターニュース 2015 5

政 権 によって 押 さえつけられていたイスラム 教 スンニー 派 とシーア 派 との 宗 派 間 対 立, 部 族 間 対 立 が 顕 在 化 し, 国 内 は 混 乱 状 態 となった こうした 中 東 情 勢 の 混 迷 が, 原 油 価 格 の 高 値 推 移 を 生 み 出 し, 結 果 として 巨 額 のオイルマネーを 中 東 産 油 国 にもたらした 面 もある 中 東 情 勢 の 混 迷 は,エジプトをはじめとした 石 油 資 源 の 乏 しい, 貧 しい 国 で 勃 発 し, 中 東 産 油 国 は, 潤 沢 なオイルマネーを 原 資 に, 教 育 費, 医 療 費 をはじめとした 社 会 保 障 を 手 厚 くして, 社 会 不 安 が 醸 成 しない 政 策 をとった しかし, 想 定 外 だったことは, アラブの 春 が アラブの 冬 となり, 中 東 情 勢 の 混 迷 が 長 期 化 し,シリアにおける 権 力 構 造 の 崩 壊 の 隙 を 突 くように,イスラム 教 スンニー 派 過 激 派 組 織 であるイスラム 国 (IS)が 台 頭 し, 極 端 なイスラム 教 の 解 釈 に 立 ってテロが 頻 発 するようになったことである イラク 戦 争 後 のイラクの 混 乱 は,スンニー 派 とシーア 派,クルド 人 による 宗 派 間, 民 族 間 の 国 内 対 立 で あり, 自 爆 テロも 国 内 に 限 定 して 発 生 していた しかし,イスラム 国 は, 過 激 な 思 想 のも とに, 国 境 を 越 えて, 欧 米 先 進 国 からも 戦 闘 員 を 集 め, 自 爆 テロを 展 開 し,イラク,リビ ア,ナイジェリア 等 にも,イスラム 国 に 賛 同 する 過 激 派 組 織 を 生 み 出 し, 日 本 人 にも 犠 牲 者 が 出 るようになっている イスラム 国 の 特 徴 は,インターネットを 通 じて, 過 激 な 思 想 と 行 動 を 喧 伝 し, 欧 米 先 進 国 から 社 会 に 不 満 を 持 つ 戦 闘 員 を 多 数 集 め, 軍 事 訓 練 を 行 い, 従 来 の 国 境 という 枠 を 越 えて, 無 差 別 に 自 爆 テロを 行 い, 中 東 諸 国 における 歴 史 的 な 文 化 遺 産 の 破 壊 を 行 っていることである こうしたイスラム 国 の 台 頭 は, 多 くの 中 東 専 門 家 の 予 想 を 超 えたものとなっており,これまで 社 会 不 安 が 発 生 していなかった 中 東 産 油 国 にも テロ 発 生 の 可 能 性 が 出 てきており, 中 東 産 油 国 の 持 続 的 な 経 済 発 展 にも 影 響 を 与 えている アラブの 春 によって 負 担 が 増 加 する 社 会 保 障 費 中 東 産 油 国 にとって 共 通 する 悩 みは, 年 率 2%に 達 する 人 口 増 加 と 若 年 層 の 雇 用 問 題 で ある 原 油 価 格 の 高 騰 によって 経 済 成 長 が 続 き, 生 活 水 準 が 向 上 するともに, 人 口 も 急 速 に 増 加 している( 図 表 8) サウジアラビアをはじめとした 中 東 産 油 国 は, 急 速 に 人 口 が 増 加 し,それとともに, 若 年 層 に 十 分 な 雇 用 機 会 を 与 える 必 要 が 強 まっている 状 況 である そのため, 自 国 民 の 雇 用 義 務 (サウダイゼーション) 等 を 外 国 企 業 に 求 め, 公 務 員 の 給 与 を 引 き 上 げ, 教 育 費 等 の 社 会 保 障 費 を 拡 大 している 中 東 産 油 国 の 経 済 成 長 率 の 引 き 上 げと 若 年 層 への 雇 用 機 会 の 創 出 において,インフラストラクチャー 整 備 は,より 重 要 なものとなっている 石 油 化 学 プラント, 天 然 ガス 火 力 発 電 所 建 設 と 保 守 点 検 は, 多 くの 雇 用 機 会 を 中 東 産 油 国 にもた らす イスラム 国 の 台 頭 をはじめとした 中 東 諸 国 におけるテロ, 反 政 府 運 動 の 広 がりは, 中 東 産 油 国 に 大 きな 衝 撃 を 与 え, 一 段 と 手 厚 い 社 会 保 障 を 行 うようになっている そのた め, 中 東 産 油 国 における 原 油 生 産 コストは,1バレル 当 たり4ドル~10ドルと, 米 国 のシ ェール オイルの 生 産 コストである1バレル30ドル~50ドルと 比 較 して, 極 めて 安 価 であ 6 中 東 協 力 センターニュース 2015 5

( 図 表 8) 中 東 産 油 国 の 人 口 見 通 し( 単 位 : 千 人 ) 出 所 : 国 連 人 口 統 計 るものの, 中 東 産 油 国 の 財 政 を 均 衡 させる 原 油 価 格 の 水 準 が 切 り 上 がっている( 図 表 9) 現 状 においては,サウジアラビアにおける 財 政 均 衡 原 油 価 格 も1バレル80ドルを 超 えて おり,ほとんどの 中 東 産 油 国 は, 現 在 の 原 油 価 格 においては 財 政 赤 字 となっている 2015 年 の 予 算 については,これまでの 原 油 価 格 の 高 値 推 移 によって 積 み 上 がった 準 備 金 を 取 り 崩 すことによって, 財 政 均 衡 させている その 意 味 では, 現 状 の1バレル50ドルという 原 油 価 格 は, 中 東 産 油 国 にとって 持 続 可 能 (Sustainable)で,インフラストラクチャー 整 備 を 十 分 に 行 える 水 準 とはいえない 面 がある ( 図 表 9) 中 東 産 油 国 財 政 均 衡 原 油 価 格 ( 単 位 :ドル/バレル) 出 所 :IMF2014 年 推 計 7 中 東 協 力 センターニュース 2015 5

原 油 価 格 の 回 復 基 調 はインフラストラクチャー 整 備 に 好 影 響 上 述 のように, 原 油 価 格 が 下 落 をして 半 年 程 度 の 短 い 時 間 しか 経 過 していないために, 現 時 点 において 中 東 産 油 国 による 先 進 国 企 業 の 株 式 売 却 等 について, 大 きな 動 きは 行 われ ていない また, 実 体 経 済 においても, 雇 用 面, 生 産 面 における 影 響 は 小 さい サウジア ラビアの 原 油 生 産 量 は,2015 年 3 月 に1,030 万 b/d と 過 去 最 高 を 記 録 している さらに, 1バレル 当 たり4ドル~5ドル 程 度 と 生 産 コスト 面 で 優 れたサウジアラビアの 油 田 と 比 較 して, 生 産 コストが 高 い, 米 国 のシェール オイルの 新 規 開 発 が,2015 年 に 入 って 停 滞 し 始 めた 2015 年 1 月 に 原 油 価 格 が1バレル50ドルを 割 り 込 むと,サウジアラビアをはじ めとした 中 東 産 油 国 の 原 油 生 産 量 に 影 響 が 出 ないものの, 米 国 のノースダコタ 州 のバッケ ン シェール 油 田,テキサス 州 のイーグルフォード シェール 油 田 等 の 優 良 油 田 以 外 の 生 産 コストが 高 いシェール オイルの 新 規 開 発 への 動 きが 鈍 くなる 米 国 におけるシェール オイル 生 産 の 先 行 指 標 といえるリグ( 油 田 開 発 のための 掘 削 装 置 )の 稼 動 数 が, 急 速 に 減 少 している( 図 表 10) こうした 米 国 国 内 におけるリグの 稼 動 数 減 少 を 受 けて,2015 年 5 月 の 米 国 におけるシ ェール オイルの 生 産 量 は, 減 退 に 転 じる 可 能 性 が 強 く,WTI 原 油 価 格 は, 再 び1バレ ル60ドルに 回 復 する 動 きにある 原 油 価 格 の 回 復 は, 中 東 産 油 国 の 石 油 収 入 の 増 加 を 通 じ て, 中 東 産 油 国 の 財 政 状 況 を 改 善 する 効 果 を 持 つ 中 東 産 油 国 は, 人 口 の 増 加 と 都 市 化 によって, 電 力, 水 が 不 足 し, 今 後 とも 発 電 所, 上 下 水 道 設 備 をはじめとしたインフラストラクチャーの 一 層 の 整 備 が 求 められる 中 東 産 油 国 における 電 力 需 要 は,エアコンの 普 及, 産 業 構 造 の 高 度 化 によって, 経 済 成 長 率 を 大 幅 に 超 える 年 率 10%を 超 える 伸 びが 続 いており,2020 年 以 降 についても, 電 力 需 要 の 急 速 な 増 加 が 見 込 まれており( 図 表 11), 火 力 発 電 所, 原 子 力 発 電 所 の 新 設 が 喫 緊 の 課 題 とい ( 図 表 10) 米 国 のリグ 稼 動 数 出 所 : 米 国 ベーカー ヒューズ 社 統 計 8 中 東 協 力 センターニュース 2015 5

( 図 表 11) 中 東 産 油 国 電 力 需 要 見 通 し( 単 位 : 万 キロワット) 出 所 :GCC( 湾 岸 協 力 会 議 ) 推 計 える 中 東 産 油 国 においては, 天 然 ガス 火 力 発 電 と 発 電 時 の 廃 熱 による 海 水 淡 水 化 である 発 電 造 水 プロジェクトが 相 次 いで 構 想 されている 2015 年 2 月 には 東 京 電 力 と 三 菱 商 事 が,カ タールで240 万 キロワットの 発 電 造 水 プロジェクトの 優 先 交 渉 権 を 取 得 している さら に, 丸 紅 がカタールの 政 府 系 発 電 造 水 会 社 (QEWC)の 子 会 社 であるネブラスカパワーと 海 外 の 発 電 事 業 で 包 括 提 携 し,オマーンの 天 然 ガス 火 力 発 電,ドバイの 石 炭 火 力 発 電 の 事 業 展 開 を 構 想 している これまでも, 日 本 の 総 合 商 社 をはじめとした 日 本 企 業 は, 中 東 に おける 発 電 海 水 淡 水 化 プロジェクト(IWPP)を 数 多 く 手 掛 けてきた( 図 表 12) さらに, 中 東 産 油 国 では,ライフ スタイルの 向 上, 産 業 構 造 の 高 度 化 とともに, 淡 水 化 需 要 も 増 加 している 経 済 産 業 省 の 見 通 しでは, 中 東 諸 国 における 水 ビジネスは,2007 ( 図 表 12) 中 東 産 油 国 の IWPP 事 業 中 東 産 油 国 日 本 企 業 総 事 業 費 サウジアラビア 双 日 2,000 億 円 UAE 住 友 商 事 1,200 億 円 UAE 丸 紅 2,650 億 円 クウェート 住 友 商 事 1,450 億 円 カタール 三 井 物 産, 中 部 電 力, 四 国 電 力 4,000 億 円 カタール 東 京 電 力, 三 菱 商 事 4,000 億 円 オマーン 丸 紅, 中 部 電 力 1,200 億 円 出 所 : 各 種 新 聞 報 道 9 中 東 協 力 センターニュース 2015 5

( 図 表 13) 中 東 の 水 ビジネス 市 場 規 模 中 東 水 ビジネス 市 場 規 模 2025 年 ( 単 位 : 兆 円 ) 事 業 分 野 EPC 関 連 管 理 運 営 サービス 合 計 上 水 1.3 海 水 淡 水 化 1.1 2.3 4.5 下 水 処 理 2.1 0.7 2.8 合 計 4.3 3.0 7.3 出 所 : 経 済 産 業 省 統 計 年 の3 兆 1,000 億 円 から2025 年 に7 兆 3,000 億 円 に 拡 大 すると 見 込 まれている( 図 表 13) 今 後 も 拡 大 が 見 込 まれる 中 東 産 油 国 のインフラストラクチャー 整 備 中 東 産 油 国 は,2020 年 に UAE(アラブ 首 長 国 連 邦 ) 第 2の 首 長 国 であるドバイで 万 国 博 覧 会 が 開 催 され,2022 年 にはカタールでワールド カップが 開 催 される 世 界 的 なイベ ントの 開 催 に 伴 って, 巨 額 のインフラストラクチャー 整 備 特 需 が 大 いに 期 待 される 中 東 産 油 国 のインフラストラクチャー 整 備 は,2030 年 までに1 兆 ドルを 超 える 投 資 が 見 込 まれ ている 中 東 産 油 国 においては, 発 電 所, 都 市 鉄 道, 上 下 水 道 をはじめとした 数 多 くのイ ンフラストラクチャー 整 備 計 画 が 構 想 されている( 図 表 14) 中 東 産 油 国 における 日 本 の 優 れた 省 エネルギー 技 術, 環 境 技 術 への 期 待 は 強 く, 海 水 の ( 図 表 14) 中 東 産 油 国 のインフラストラクチャー 整 備 計 画 例 中 東 産 油 国 インフラストラクチャー 整 備 計 画 2015 年 中 東 産 油 国 名 サウジアラビア サウジアラビア サウジアラビア UAE UAE UAE オマーン バーレーン カタール カタール インフラストラクチャー 計 画 リヤド,ジェッダに 地 下 鉄 建 設 16 基 の 原 子 力 発 電 所 建 設 低 所 得 者 層 に 向 けた50 万 戸 の 住 宅 建 設 アブダビの 地 下 鉄 建 設 高 速 鉄 道 建 設 2020 年 の 万 国 博 覧 会 投 資 9,000 億 円 LNG プラント 建 設 火 力 発 電 所 2022 年 W カップ 下 水 道 トンネル 首 都 ドーハの 地 下 鉄 建 設 出 所 : 各 種 新 聞 報 道 10 中 東 協 力 センターニュース 2015 5

( 図 表 15) 世 界 の 逆 浸 透 膜 シェア(%) 出 所 : 各 種 新 聞 報 道 淡 水 化 プロジェクトにおいても, 日 本 は, 長 年 にわたり 培 ってきた 繊 維 と 膜 技 術 を 応 用 し た 逆 浸 透 膜 の 分 野 において 高 度 な 技 術 を 誇 っている( 図 表 15) 天 然 ガス 火 力 発 電 においても, 高 効 率 の 天 然 ガス コンバインド サイクル 発 電 (IGCC) の 技 術 において, 日 本 は 世 界 最 高 の60%を 超 える 発 電 効 率 を 誇 っている 世 界 の 天 然 ガス 火 力 発 電 は, 天 然 ガスの 燃 焼 時 の 炭 酸 ガス 排 出 量 が, 石 炭 の 半 分 程 度 であることから, 世 界 的 にもアジアを 中 心 に 天 然 ガス 火 力 発 電 の 大 きな 伸 びが 見 込 まれている( 図 表 16) 2030 年 に 向 けて, 中 東 産 油 国 においては, 電 力 需 要 の 大 きな 伸 びとともに, 天 然 ガスを 燃 料 とした 天 然 ガス 火 力 発 電 と 海 水 淡 水 化 プロジェクトが 大 幅 に 増 加 することが 見 込 まれ ている また,ドバイ メトロの 成 功 によって, 外 気 温 が 高 い 中 東 産 油 国 における 都 市 鉄 道 の 分 野 においても 成 長 機 会 は 大 きい 2015 年 5 月 に 入 り, 原 油 価 格 は 安 定 化 への 兆 しを 見 せている 原 油 価 格 の 安 定 化 は, 中 東 産 油 国 の 財 政 基 盤 を 健 全 化 するのみならず, 持 続 ( 図 表 16) 出 所 :IEA( 国 際 エネルギー 機 関 ) 統 計 11 中 東 協 力 センターニュース 2015 5

的 経 済 成 長 の 基 盤 となるインフラストラクチャー 整 備 の 経 済 的 基 礎 を 強 固 とする 効 果 をも たらす これまで 日 本 は, 火 力 発 電 の 発 電 機 をはじめとした 製 品 の 売 り 切 りという 分 野 に おいて, 価 格 の 安 さを 武 器 とする 中 国, 韓 国 企 業 の 攻 勢 を 受 ける 局 面 があったものの, 製 品 の 品 質, 個 々の 製 品 の 売 り 切 りだけではなく,パッケージとしての 製 品 の 保 守 管 理, 納 期 の 正 確 さという, 日 本 の 強 みを 最 大 限 に 生 かし,2020 年 までにインフラ 輸 出 を 現 在 の 10 兆 円 から30 兆 円 に 拡 大 する 成 長 戦 略 の 実 現 とともに, 中 東 産 油 国 の 長 期 的 な 経 済 発 展 に 貢 献 していくことが 一 段 と 求 められるのである * 本 稿 の 内 容 は 執 筆 者 の 個 人 的 見 解 であり, 中 東 協 力 センターとしての 見 解 でないことをお 断 りします 12 中 東 協 力 センターニュース 2015 5