シリーズ 日 本 経 考 える 夫 婦 世 帯 の 貯 蓄 額 は 単 身 男 性 と 単 身 女 性 の 中 間 に 位 置 すること である 本 稿 の 構 成 は 以 下 の 通 りとなる 第 2 節 では 高 齢 者 の 貯 蓄 に 関 する 先 行 研 究 紹 介 する 第 3 節 では

過 去 の シリーズ シリーズ 日 本 経 日 考 本 える については 経 考 える 財 務 総 合 政 策 研 究 所 ホームページに 掲 しています http://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/index.html 日 シ 本 リ 経 ー ズ 考 え る 44 高 齢 者 の 貯 蓄 の 実 態 全 国 消 費 実 態 調 査 の 個 票 による 分 析 *1 財 務 総 合 政 策 研 究 所 研 究 部 財 政 経 計 量 分 析 室 研 究 員 菊 田 和 晃 1.はじめに ライフ サイクル 仮 説 に 基 づけば 高 齢 者 は 勤 労 期 に 蓄 えてきた 資 産 取 り 崩 して 生 活 すること になるが 毎 月 どの 程 度 の 資 産 取 り 崩 している のだろうか 日 本 の 貯 蓄 研 究 の 第 一 人 者 であるC. Y. Horioka 教 授 の 近 年 の 研 究 Horioka(2010) では 平 成 20 年 の 家 計 調 査 ( 総 務 省 )の 集 計 *2 表 用 いて 退 職 後 の 高 齢 夫 婦 世 帯 が 月 に4.94 万 円 取 り 崩 していると 指 摘 している では 本 当 に 日 本 の 高 齢 者 世 帯 は 平 均 的 に 見 て 月 4.94 万 円 も 資 産 取 り 崩 しているのであろうか ここで 家 計 調 査 は 調 査 対 象 となる 各 世 帯 の 家 計 簿 *3 集 計 することにより 作 成 される 統 計 である この 家 計 調 査 の 家 計 簿 にお いて 高 齢 者 世 帯 の 主 な 収 入 源 である 公 的 年 金 の 受 給 記 録 している 世 帯 の 割 合 は 実 際 の 公 的 年 金 受 給 権 者 の 割 合 よりも 低 い75% 程 度 であること が 指 摘 されている *4 つまり 家 計 調 査 にお いて 集 計 された 公 的 年 金 の 平 均 受 給 額 は 年 金 受 給 正 しく 記 録 していない 世 帯 の 受 給 額 0 円 と して 計 算 していることから 過 少 に 推 計 されてい ると 考 えられる したがって Horioka(2010) において 示 されている 月 に4.94 万 円 という 資 産 の 取 り 崩 し 額 は 過 大 に 推 計 されたものとなってい る 可 能 性 がある これら 踏 まえれば 高 齢 者 の 貯 蓄 の 実 態 把 握 するためには 集 計 表 ではなく 集 計 のもととなる 家 計 簿 などの 個 票 用 いて 一 定 の 調 整 行 った 上 で 高 齢 者 の 資 産 取 り 崩 し 額 貯 蓄 額 ( 以 下 合 わせて 貯 蓄 額 という *5 ) 再 計 算 する 必 要 があると 考 えられる 本 稿 では 家 計 調 査 よりもサンプルが 大 きく 収 入 に 関 する 情 報 も 充 実 した 全 国 消 費 実 態 調 査 ( 総 務 省 )の 個 票 用 いて 統 計 上 のバイアス 考 慮 して 高 齢 者 の 貯 蓄 額 再 集 計 する 本 稿 の 主 な 分 析 結 果 は (1) 世 帯 主 の 年 齢 が65 歳 以 上 の 夫 婦 世 帯 及 び 単 身 世 帯 ( 以 下 高 齢 独 立 世 帯 と いう)は 就 業 している 場 合 は 平 均 的 に 貯 蓄 し 非 就 業 の 場 合 は 資 産 取 り 崩 すこと (2) 非 就 業 の 場 合 の 資 産 取 り 崩 し 額 は 月 1.44 万 円 と Horioka(2010)で 示 されている 月 4.94 万 円 より 明 らかに 小 さいこと (3) 単 身 男 性 は 就 業 非 就 業 ともに 単 身 女 性 よりも 毎 月 の 貯 蓄 額 が 高 く *1) 本 稿 の 執 筆 にあたっては 財 務 総 合 政 策 研 究 所 の 宇 南 山 卓 総 括 主 任 研 究 官 大 関 由 美 子 財 政 経 計 量 分 析 室 長 酒 井 才 介 主 任 研 究 官 より 有 益 なご 助 言 頂 いた ここに 記 して 深 く 感 謝 の 意 表 したい さらに 本 稿 で 用 いた 全 国 消 費 実 態 調 査 のデータ 提 供 については 総 務 省 の 関 係 各 位 国 民 生 活 基 礎 調 査 のデータ 提 供 については 厚 生 労 働 省 の 関 係 各 位 にご 協 力 頂 いた ここに 記 して 心 より 感 謝 申 し 上 げる ただし 本 稿 における 誤 りはすべて 筆 者 に 帰 するものである *2) 夫 が65 歳 以 上 妻 が60 歳 以 上 の 無 職 夫 婦 世 帯 *3) 各 世 帯 は 家 計 簿 に 収 入 支 出 項 目 とその 金 額 自 由 記 入 している *4)Stephens and Unayama(2011) 参 照 *5) 資 産 取 り 崩 し 額 は 負 の 貯 蓄 額 として 解 釈 できる 76 ファイナンス 2015.1

シリーズ 日 本 経 考 える 夫 婦 世 帯 の 貯 蓄 額 は 単 身 男 性 と 単 身 女 性 の 中 間 に 位 置 すること である 本 稿 の 構 成 は 以 下 の 通 りとなる 第 2 節 では 高 齢 者 の 貯 蓄 に 関 する 先 行 研 究 紹 介 する 第 3 節 では 本 稿 で 扱 う 全 国 消 費 実 態 調 査 の 概 要 説 明 し 高 齢 独 立 世 帯 の 貯 蓄 の 具 体 的 な 分 析 手 法 分 析 結 果 示 す 第 4 節 は 本 稿 の 結 論 と 今 後 の 課 題 まとめる 2. 高 齢 者 の 貯 蓄 に 関 する 先 行 研 究 まず 高 齢 者 の 貯 蓄 に 関 する 先 行 研 究 について 整 理 する 家 計 の 貯 蓄 行 動 に 関 する 理 論 整 理 し たものとしては ホリオカ(1996) 八 代 前 田 (1994) 挙 げることができる 高 齢 者 が 資 産 取 り 崩 すかどうかについて いずれの 先 行 研 究 も ライフ サイクル 仮 説 と 王 朝 モデルの2つの 理 論 挙 げている ライフ サイクル 仮 説 では 家 計 は 勤 労 期 に 資 産 積 み 立 て 引 退 期 に 取 り 崩 すと いった 行 動 とるものと 考 え 高 齢 者 は 資 産 取 り 崩 すとしている 一 方 王 朝 モデルでは 親 の 世 代 は 利 他 主 義 によって 子 供 に 遺 産 遺 すこと 前 提 とした 行 動 とるものと 考 える この 場 合 高 齢 者 は 必 ずしも 資 産 取 り 崩 すとは 限 らない ただし 利 己 主 義 的 な 動 機 によって 遺 産 遺 すの であれば 遺 産 は 子 世 代 から 世 話 してもらうこ とに 対 する 対 価 の 支 払 いと 考 えられるので ライ フ サイクル 仮 説 と 整 合 的 であると 解 釈 される また 実 証 研 究 においては まずホリオカ 他 (1996) Horioka(2010) な ど C. Y. Horioka 教 授 の 一 の 業 績 挙 げることができる ホリオ カ 他 (1996)では 平 成 4 年 に 実 施 された 第 3 回 金 融 資 産 選 択 調 査 ( 郵 政 省 郵 政 研 究 所 )の 個 票 用 いて 資 産 残 高 の 過 去 1 年 間 の 増 減 額 Horioka(2010)では 家 計 調 査 の 集 計 表 用 いて 世 帯 の1か 月 当 たりの 収 入 支 出 差 額 そ れぞれ 分 析 し いずれも 退 職 後 の 高 齢 者 は 資 産 取 り 崩 していること 明 らかにした *6 特 に 直 近 の 研 究 となるHorioka(2010)では 平 成 20 年 の 家 計 調 査 用 いて 退 職 後 の 高 齢 夫 婦 世 帯 が 月 に 4.94 万 円 の 取 り 崩 ししていること 指 摘 してい る 他 の 実 証 的 な 先 行 研 究 では 八 代 前 田 (1994) 大 竹 (1991)も 高 齢 者 による 資 産 の 取 り 崩 し 支 持 している 例 えば 八 代 前 田 (1994)では 平 成 元 年 の 全 国 消 費 実 態 調 査 用 いて 高 齢 無 職 世 帯 の 資 産 の 取 り 崩 し 指 摘 している また 大 竹 (1991)では 昭 和 61 年 の 国 民 生 活 基 礎 調 査 ( 厚 生 労 働 省 ) 用 いて 子 供 と 別 居 している ま たは 子 供 がいない 非 就 業 の 高 齢 者 は 75 歳 以 上 に なると 概 ね 資 産 取 り 崩 すこと 示 している 一 方 Hayashi et al.(1988) 大 野 他 (2013a) のように 必 ずしも 高 齢 者 は 資 産 取 り 崩 してい ないこと 指 摘 する 先 行 研 究 もある 例 えば Hayashi et al.(1988)では 昭 和 59 年 の 全 国 消 費 実 態 調 査 の 個 票 用 いて 高 齢 単 身 世 帯 及 び 世 帯 主 が80 歳 以 上 の 核 家 族 世 帯 除 けば 高 齢 者 は 貯 蓄 していること 示 している また 大 野 他 (2013a)では 全 国 消 費 実 態 調 査 家 計 調 査 国 民 生 活 基 礎 調 査 の 個 票 用 いて 3 統 計 の 比 較 通 したファクト ファインディング 行 っている その 中 で 家 計 調 査 では 年 間 収 入 調 査 票 全 国 消 費 実 態 調 査 では 年 収 貯 蓄 等 調 査 票 それぞれ 用 いて 世 帯 収 入 とし 収 入 支 出 差 額 集 計 した 結 果 世 帯 主 が65 歳 以 上 であっても 低 所 得 世 帯 除 けば 貯 蓄 している こと 指 摘 している これらの 先 行 研 究 において 留 意 すべき 点 として は 以 下 指 摘 することができる まず Horioka(2010) 八 代 前 田 (1994)では い ずれも 貯 蓄 の 算 出 に 家 計 調 査 や 全 国 消 費 実 態 調 査 の 家 計 簿 方 式 で 調 査 された 収 入 デ ー タ 用 い て い る 点 で あ る Stephens and Unayama(2011)によると 公 的 年 金 の 支 給 月 において 家 計 簿 に 受 給 記 録 している 世 帯 が 平 成 2 年 3 月 以 前 は 約 60% 平 成 2 年 3 月 以 降 *6) 例 えば Horioka(2010)p.155, Table 3 参 照 ファイナンス 2015.1 77

は 約 75%となる *7 しかし 平 成 10 年 の 公 的 年 金 加 入 状 況 等 調 査 ( 厚 生 労 働 省 )によると 65 歳 以 上 の 個 人 2,044 万 人 に 対 して 公 的 年 金 受 給 権 者 は1,960 万 人 と95.9%の 割 合 で 存 在 する つ まり 家 計 簿 方 式 採 用 している 家 計 調 査 や 全 国 消 費 実 態 調 査 においては 公 的 年 金 受 給 しているにもかかわらず 家 計 簿 に 記 入 し ていない 世 帯 が 多 く 存 在 している 可 能 性 がある したがって 集 計 データでみると 家 計 簿 の 収 入 データは 実 態 よりも 過 少 になると 考 えられ る また 先 述 した 先 行 研 究 では 貯 蓄 額 算 出 す る 際 に 家 計 調 査 や 全 国 消 費 実 態 調 査 の 家 計 簿 に 記 された 消 費 支 出 未 調 整 のまま 用 い ている 一 方 宇 南 山 (2009)では 家 計 調 査 は 自 由 記 入 の 家 計 簿 方 式 採 っているため 事 前 に 選 定 された 品 目 ごとに 購 入 金 額 記 入 する プリコード 方 式 の 家 計 消 費 状 況 調 査 ( 総 務 省 ) よりも 世 帯 の 消 費 支 出 が 過 少 になること 指 摘 し ている したがって 家 計 簿 の 消 費 支 出 そ のまま 用 いた 先 行 研 究 では 貯 蓄 額 が 過 大 に 推 計 されていると 考 えられる 他 にも ホリオカ 他 (1996)で 用 いられている 金 融 資 産 選 択 調 査 では 世 帯 主 の 年 齢 が60 歳 以 上 の 世 帯 のサンプルが300 程 度 と 小 さい また 大 竹 (1991)が 貯 蓄 額 算 出 する 際 に 用 いている 国 民 生 活 基 礎 調 査 では 1か 月 間 の 消 費 支 出 しか 調 査 していない そのため 国 民 生 活 基 礎 調 査 の 消 費 支 出 が 一 年 間 通 した 家 計 の 消 費 の 姿 とは 必 ずしも 一 致 しないと 考 えられる *8 さらに 高 齢 者 世 帯 の 区 分 について Hayashi et al.(1988)では 高 齢 者 の 就 業 状 況 考 慮 し ていない しかし 後 述 する 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 報 告 によれば 高 齢 者 が 就 業 か 非 就 業 かによって 貯 蓄 額 が 変 わることが 示 されている したがって 高 齢 者 の 貯 蓄 の 実 態 把 握 するため には 高 齢 者 就 業 か 非 就 業 かによって 区 分 し 分 析 する 必 要 があると 考 えられる また Hayashi et al.(1988)によれば 高 齢 独 立 世 帯 は 概 ね 貯 蓄 しているが うち 高 齢 単 身 世 帯 は 資 産 取 り 崩 すことが 示 されている したがって 高 齢 独 立 世 帯 夫 婦 世 帯 と 単 身 世 帯 に 区 分 し 分 析 する 必 要 があると 考 えられる 以 上 のような 先 行 研 究 の 留 意 点 踏 まえ 本 稿 では (1)サンプルが 相 対 的 に 大 きく 収 入 支 出 についても 比 較 的 情 報 が 充 実 している 全 国 消 費 実 態 調 査 の 個 票 用 いて (2) 家 計 簿 方 式 の 調 査 における 収 入 支 出 の 過 少 性 など 考 慮 し (3) 高 齢 独 立 世 帯 が 就 業 か 非 就 業 か *9 夫 婦 か 単 身 か 明 確 に 区 分 して 高 齢 者 の 貯 蓄 分 析 する 3.データと 分 析 3.1 データ: 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 全 国 消 費 実 態 調 査 は 統 計 法 に 基 づく 基 幹 統 計 調 査 であり 5 年 に 一 度 の 大 規 模 調 査 により 家 計 の 収 支 及 び 貯 蓄 負 債 耐 久 消 費 財 住 宅 宅 地 などの 家 計 資 産 総 合 的 に 調 査 し 消 費 所 得 資 産 に 係 る 水 準 構 造 分 布 など 明 らかに すること 目 的 としている( 表 1 参 照 ) 調 査 対 象 が 約 57,000 世 帯 と 多 く 収 入 家 計 簿 と 年 収 貯 蓄 等 調 査 票 の2つの 調 査 票 で 調 査 し ており さらに 支 出 も 家 計 簿 において9~11 月 の3か 月 にわたって 調 査 していることに 特 徴 が ある 現 時 点 で 利 用 可 能 な 最 新 のデータは 平 成 21 *7)Stephens and Unayama(2011)では 昭 和 61 年 3 月 から 平 成 6 年 2 月 までの 家 計 調 査 の 個 票 用 いて 世 帯 主 が65 歳 以 上 無 職 の 夫 婦 世 帯 について 平 成 2 年 3 月 に 公 的 年 金 の 支 給 頻 度 が 変 わる 前 後 の 公 的 年 金 受 給 状 況 分 析 している *8) 全 国 消 費 実 態 調 査 と 家 計 調 査 の 平 成 21 年 調 査 国 民 生 活 基 礎 調 査 の 平 成 22 年 調 査 比 較 している 大 野 他 (2013a)では 国 民 生 活 基 礎 調 査 の 消 費 支 出 合 計 が14.6 万 円 と 他 の2 統 計 ( 全 国 消 費 実 態 調 査 :17.3 万 円 家 計 調 査 :17.6 万 円 )よりも 低 くなっていることが 示 されている *9) 勤 め 先 からの 収 入 農 林 漁 業 収 入 事 業 収 入 内 職 収 入 のいずれかがある 世 帯 員 がいる 場 合 には 就 業 いない 場 合 には 非 就 業 に 区 分 78 ファイナンス 2015.1

シリーズ 日 本 経 考 える 表 1: 全 国 消 費 実 態 調 査 の 概 要 総 務 省 全 国 消 費 実 態 調 査 国 民 生 活 の 実 態 について 家 計 の 収 支 及 び 貯 蓄 負 債 耐 久 消 費 財 住 宅 宅 地 などの 家 計 資 産 総 合 的 に 調 査 し 調 査 目 的 消 費 所 得 資 産 に 係 る 水 準 構 造 分 布 など 明 らかにする 調 査 頻 度 5 年 おきに 実 施 全 国 の 世 帯 調 査 対 象 ( 約 57,000 世 帯 うち 単 身 世 帯 4,400 世 帯 ) 家 計 簿 : 勤 労 者 世 帯 及 び 無 職 世 帯 は 収 入 と 支 出 個 人 営 業 世 帯 などの 勤 労 者 以 外 の 世 帯 は 消 費 支 出 のみ 耐 久 財 等 調 査 票 : 全 ての 調 査 世 帯 調 査 事 項 年 収 貯 蓄 等 調 査 票 : 全 ての 調 査 世 帯 世 帯 票 : 全 ての 調 査 世 帯 家 計 簿 : 二 人 以 上 世 帯 は9-11 月 の3ヶ 月 間 単 身 世 帯 は10-11 月 の2ヶ 月 間 耐 久 財 等 調 査 票 :10 月 末 現 在 調 査 時 期 年 収 貯 蓄 等 調 査 票 : 年 間 収 入 は 過 去 1 年 分 ( 前 年 12 月 ~ 当 年 11 月 ) 貯 蓄 借 入 金 残 高 は11 月 末 現 在 世 帯 票 : 二 人 以 上 世 帯 は9 月 1 日 現 在 単 身 世 帯 は10 月 1 日 現 在 調 査 方 法 調 査 世 帯 が 記 入 の 上 調 査 員 が 回 収 する 調 査 系 統 都 道 府 県 市 町 村 からの 調 査 員 ( 注 ) 大 野 他 (2014)の 表 2もとに 作 成 図 1: 高 齢 者 世 帯 の1か 月 平 均 収 入 及 び 支 出 ( 二 人 以 上 の 高 齢 勤 労 者 世 帯 ) 高 齢 勤 労 者 世 帯 図 2: 高 齢 者 世 帯 の1か 月 平 均 収 入 及 び 支 出 ( 二 人 以 上 の 高 齢 無 職 世 帯 ) 高 齢 無 職 世 帯 実 収 入 363,064 円 (100%) 実 収 入 181,946 円 (100%) 勤 収 入 224,755 円 61.9% 118,263 円 32.6% の 他 20,046 円 5.5% 146,686 円 80.6% の 他 19.4% 97,489 円 分 所 得 310,585 円 消 費 支 出 295,586 円 (100%) 分 所 得 151,075 円 消 費 支 出 248,564 円 (100%) 非 消 費 支 出 52,479 円 の 他 の 14,999 円 非 消 費 24.3% 14.4% 11.7% 消 費 支 出 支 出 25.6% 11.6% 12.8% 25.0% 30,872 円 の 他 の 消 費 支 出 22.7% 住 住 水 道 水 道 家 家 事 用 及 び 家 家 事 用 及 び ( 出 所 ) 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 報 告 第 7 巻 高 齢 者 世 帯 編 p.41 ( 出 所 ) 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 報 告 第 7 巻 高 齢 者 世 帯 編 p.41 年 調 査 であることから 本 稿 ではこれ 利 用 する なお 総 務 省 では 本 統 計 用 いて 高 齢 勤 労 者 世 帯 は14,999 円 の 黒 字 であるのに 対 し 高 齢 無 職 世 帯 は97,489 円 の 赤 字 であり 不 足 分 は 資 産 など 取 り 崩 して 賄 っていると 分 析 している *10 ( 図 1 図 2 参 照 ) 次 に 本 稿 で 用 いる 全 国 消 費 実 態 調 査 と 貯 蓄 に 関 する 先 行 研 究 で 用 いられている 統 計 と 比 較 する 全 国 消 費 実 態 調 査 は 家 計 調 査 や 金 融 資 産 選 択 調 査 に 比 べてサンプルが 明 らか に 大 きい( 表 2 参 照 ) また 国 民 生 活 基 礎 調 査 が1か 月 間 の 消 費 しか 調 査 していないのに 対 し *10) 二 人 以 上 世 帯 のうち 世 帯 主 の 年 齢 が65 歳 以 上 の 世 帯 高 齢 者 世 帯 として 高 齢 者 世 帯 の1か 月 平 均 収 入 及 び 支 出 の 集 計 結 果 が 分 析 されている 詳 しくは 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 報 告 第 7 巻 高 齢 者 世 帯 編 p.40 参 照 ファイナンス 2015.1 79

表 2: 先 行 研 究 が 利 用 している 統 計 の 比 較 全 国 消 費 実 態 調 査 家 計 調 査 国 民 生 活 基 礎 調 査 金 融 資 産 選 択 調 査 実 施 主 体 総 務 省 総 務 省 厚 生 労 働 省 旧 郵 政 省 郵 政 研 究 所 実 施 時 期 5 年 おきに 実 施 毎 月 実 施 3 年 おきに 実 施 ( 大 規 模 調 査 ) 2 年 おきに 実 施 第 1 回 の 調 査 年 1959 年 1953 年 1986 年 1988 年 直 近 公 表 の 調 査 年 2009 年 2012 年 ( 年 報 ) 2010 年 2006 年 ( 大 規 模 調 査 ) ( 以 降 調 査 継 続 せず) 調 査 対 象 世 帯 数 約 57,000 世 帯 約 9,000 世 帯 約 36,000 世 帯 ( 所 得 貯 蓄 票 ) 約 19,000 世 帯 単 身 世 帯 含 むか 含 む 含 む 含 む 含 む 住 宅 宅 地 の 資 産 額 情 報 含 むか 含 む 含 まない 含 まない 含 まない 利 用 されている 論 文 Hayashi et al.(1988), 大 野 他 (2013a), 八 代 前 田 (1994) ( 注 ) 各 実 施 主 体 のホームページ 参 照 の 上 筆 者 作 成 Horioka(2010), 大 野 他 (2013a) 大 竹 (1991), 大 野 他 (2013a) ホリオカ 他 (1996) 全 国 消 費 実 態 調 査 では 二 人 以 上 世 帯 では3か 月 間 単 身 世 帯 では2 ヶ 月 間 に 渡 って 家 計 簿 方 式 で 消 費 支 出 調 査 しており 情 報 が 比 較 的 充 実 している 一 方 非 消 費 支 出 のうち 税 社 会 保 険 料 については 全 国 消 費 実 態 調 査 では 家 計 簿 に 記 されている 情 報 用 いること となるが 国 民 生 活 基 礎 調 査 で は 税 社 会 保 険 料 の 項 目 ごとに 年 間 の 支 払 額 報 告 するよう 調 査 対 象 世 帯 に 求 めてい ることから 国 民 生 活 基 礎 調 査 のほうがより 正 確 なデータになっていると 考 えられる 3.2 データセットの 作 成 総 務 省 から 提 供 受 けた 個 票 データは52,787 世 帯 (うち 二 人 以 上 世 帯 48,828 世 帯 単 身 世 帯 3,959 世 帯 )であるが まず データセットの 作 成 にあたってはサンプルの 選 定 行 なう 必 要 があ *11 る 具 体 的 には 年 間 収 入 が 不 詳 である 世 帯 は 収 入 正 確 に 把 握 できないため 除 外 する 次 に 調 査 期 間 中 に 世 帯 構 成 等 が 変 更 された 世 帯 世 帯 としての 貯 蓄 額 の 把 握 が 困 難 な 単 身 赴 任 出 稼 ぎ 世 帯 及 び 家 計 主 に 支 える 家 族 が 不 在 の 世 帯 除 外 する この 結 果 50,571 世 帯 (うち 二 人 以 上 表 3: データセットの 選 定 世 帯 数 総 世 帯 うち 二 人 以 上 世 帯 うち 単 身 世 帯 提 供 データ 52,787 48,828 3,959 年 間 収 入 不 詳 世 帯 1,285 1,209 76 調 査 期 間 中 に 世 帯 構 成 等 が 変 更 された 世 帯 157 157 0 単 身 赴 任 出 稼 ぎ 世 帯 137 0 137 家 計 主 に 支 える 家 族 が 不 在 の 世 帯 637 602 35 分 析 対 象 50,571 46,860 3,711 (うち 高 齢 独 立 世 帯 ) (10,939) (8,918) (2,021) ( 注 ) 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 の 個 票 データより 作 成 世 帯 46,860 世 帯 単 身 世 帯 3,711 世 帯 ) 本 稿 の 分 析 対 象 とした( 表 3 参 照 ) 3.3 高 齢 独 立 世 帯 の 貯 蓄 額 の 算 出 次 に 全 国 消 費 実 態 調 査 の 平 成 21 年 調 査 の 個 票 に 対 し 所 要 の 調 整 加 えることにより 高 齢 者 の 毎 月 の 貯 蓄 額 算 出 する 統 計 データから 家 計 の 貯 蓄 算 出 する 方 法 は 先 行 研 究 によって 大 きく2つの 方 法 に 分 かれる 1つはHorioka(2010)のように 世 帯 の 収 入 支 出 差 額 算 出 する 方 法 であり もう1つはホリオ カ 他 (1996)のように2 時 点 の 資 産 残 高 の 差 と ることによって 算 出 する 方 法 である 全 国 消 費 実 態 調 査 は 資 産 残 高 1 時 点 でのみ 調 査 するた め 資 産 の 差 額 として 貯 蓄 計 算 することが 不 可 *11) 年 間 収 入 の 項 目 は 勤 め 先 からの 年 間 収 入 農 林 漁 業 収 入 農 林 漁 業 以 外 の 事 業 収 入 内 職 などの 年 間 収 入 家 賃 地 代 の 年 間 収 入 公 的 年 金 恩 給 企 業 年 金 個 人 年 金 受 取 金 利 子 配 当 金 親 族 などからの 仕 送 り 金 その 他 の 年 間 収 入 現 物 消 費 の 年 間 見 積 り 額 がある ここでは 現 物 消 費 の 年 間 見 積 り 額 以 外 の 全 ての 項 目 が 空 欄 で ある 世 帯 年 間 収 入 不 詳 世 帯 としている 80 ファイナンス 2015.1

シリーズ 日 本 経 考 える 能 である そこで 本 稿 では 世 帯 の1か 月 当 たり の 収 入 支 出 差 額 貯 蓄 とする 具 体 的 には ま ず 収 入 から 税 社 会 保 険 料 などの 非 消 費 支 出 控 除 して 可 処 分 所 得 とし そこからさらに 消 費 支 出 差 し 引 いて 貯 蓄 額 とする *12 なお 収 入 については 全 国 消 費 実 態 調 査 では 家 計 簿 から 得 られる 情 報 と 年 収 貯 蓄 等 調 査 票 から 得 られる 情 報 があることから ど ちらの 情 報 用 いるのか 決 める 必 要 がある また 非 消 費 支 出 及 び 消 費 支 出 についても それぞれ 先 行 研 究 踏 まえた 所 要 の 調 整 行 う 必 要 がある 3.3.1 収 入 の 把 握 収 入 については Horioka(2010)では 家 計 簿 に 基 づく 情 報 用 いている しかし 本 稿 では 以 下 の2 点 踏 まえ 貯 蓄 額 の 算 出 にあた っては 年 収 貯 蓄 等 調 査 票 に 記 されてい る 年 間 収 入 12か 月 で 割 って 月 平 均 の 収 入 に 直 し たもの 用 いることとする まず Stephens and Unayama (2011)が 算 出 した 家 計 調 査 の 家 計 簿 上 の 公 的 年 金 の 受 給 率 は 実 際 の 公 的 年 金 の 受 給 権 者 の 人 口 比 に 比 べ 過 少 となっている つまり 公 的 年 金 収 入 の 家 計 簿 への 記 入 漏 れが 相 当 数 発 生 していると 考 え られる 一 方 年 収 貯 蓄 等 調 査 票 は 収 入 項 目 ごとに 金 額 書 く 欄 が 定 められていることか ら 記 入 漏 れが 家 計 簿 に 比 べ 少 なくなるもの と 考 えられる *13 2 点 目 として 全 国 消 費 実 態 調 査 の 家 計 簿 において 二 人 以 上 世 帯 の 調 査 期 間 は9~11 月 の 3か 月 間 となっているが 年 金 受 給 世 帯 は 公 的 年 金 偶 数 月 に2か 月 分 受 け 取 り 家 計 簿 に 記 入 することとなる 公 的 年 金 が 高 齢 者 の 主 な 収 入 源 であること 踏 まえると 家 計 簿 に 基 づく 情 報 用 いた 場 合 3か 月 間 の 調 査 期 間 に 対 して2 か 月 分 の 公 的 年 金 給 付 しか 反 映 されず 1か 月 当 たりの 収 入 が 明 らかに 過 少 となる 実 際 にデータセットのうち 世 帯 主 が65 歳 以 上 の 世 帯 対 象 に 年 収 貯 蓄 等 調 査 票 と 家 計 簿 のそれぞれについて 公 的 年 金 の 受 給 記 録 がある 世 帯 とない 世 帯 の 割 合 確 認 する その 際 自 営 業 中 心 とした 勤 労 者 以 外 の 世 帯 (ただし 無 職 世 帯 除 く)は 家 計 簿 において 収 入 調 査 していないため 集 計 から 除 外 する *14 その 結 果 公 的 年 金 の 受 給 がある 世 帯 は 年 収 貯 蓄 等 調 査 票 が94.27% 家 計 簿 が90.09%と 家 計 簿 への 公 的 年 金 受 給 の 記 入 割 合 が 明 らかに 少 なくな っている( 表 4 参 照 ) 一 方 比 較 対 象 として 平 成 22 年 公 的 年 金 加 入 状 況 等 調 査 みると 65 歳 以 上 の 公 的 年 金 受 給 者 は 全 体 の96.97%であ り 年 収 貯 蓄 等 調 査 票 のほうがより 実 態 に 近 い 数 値 であると 考 えられる また 公 的 年 金 の ある 世 帯 に 限 定 した 上 で 公 的 年 金 の 月 平 均 受 給 額 みると 年 収 貯 蓄 等 調 査 票 が20.86 万 円 家 計 簿 が15.54 万 円 と 受 給 額 で 見 ても 家 計 簿 のほうが 少 なく 先 述 の 調 査 期 間 と 公 的 年 金 受 給 表 4: 収 入 の 把 握 公 的 年 金 のある 世 帯 数 ( 割 合 ) 公 的 年 金 のない 世 帯 数 ( 割 合 ) 公 的 年 金 のある 世 帯 の 月 平 均 公 的 年 金 額 ( 万 円 ) 年 収 調 査 票 12,181 (94.27%) 741 (5.73%) 家 計 簿 11,641 (90.09%) 1,281 (9.91%) 20.86 15.54 ( 注 ) 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 の 個 票 データより 作 成 *12) 収 入 と 支 出 の 分 類 については 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 報 告 参 照 なお 本 稿 における 収 入 には 預 貯 金 引 出, 有 価 証 券 売 却 などの 資 産 の 減 少,あるいは 借 入 金, 月 賦 など 負 債 の 増 加 となる 収 入 集 めた 実 収 入 以 外 の 受 取 は 含 まない また 本 稿 における 支 出 には 預 貯 金, 借 金 返 など 資 産 の 増 加 あるいは 負 債 の 減 少 とな る 支 出 集 めた 実 支 出 以 外 の 支 払 は 含 まない さらに Hayashi et al.(1988)に 倣 い 仕 送 り 金 は 収 入 と 支 出 の 双 方 から 除 く *13) 宇 南 山 (2009)では 家 計 消 費 状 況 調 査 と 家 計 調 査 との 比 較 通 して あらかじめ 決 められた 項 目 埋 めていく 形 で 記 入 するプリコード 方 式 に 比 べ 自 由 記 入 形 式 である 家 計 簿 のほうが 記 入 漏 れしやすいこと 指 摘 している *14) 世 帯 主 が65 歳 以 上 の 世 帯 15,731 世 帯 のうち 無 職 世 帯 除 く 勤 労 者 以 外 の 世 帯 2,809 世 帯 除 いた ファイナンス 2015.1 81

のタイミングの 問 題 反 映 していることがわか る 以 上 踏 まえ 収 入 については 年 収 貯 蓄 等 調 査 票 の 情 報 用 いることとする 3.3.2 非 消 費 支 出 の 調 整 非 消 費 支 出 については 全 国 消 費 実 態 調 査 の 各 税 社 会 保 険 料 負 担 の 水 準 が 国 民 生 活 基 礎 調 査 の 各 税 社 会 保 険 料 負 担 の 水 準 よりも 概 ね 一 律 に 低 く 過 少 になっていることが 大 野 他 (2013b)で 指 摘 されている これは 全 国 消 費 実 態 調 査 では 支 払 った 税 社 会 保 険 料 家 計 簿 に 自 由 記 入 するのに 対 し 国 民 生 活 基 礎 調 査 では 税 社 会 保 険 料 の 項 目 ごとに 年 間 の 支 払 額 記 入 する 欄 が 定 められていることによる と 考 えられる そこで 非 消 費 支 出 については 勤 労 非 勤 労 *15 の 別 及 び 制 度 上 社 会 保 険 料 負 担 が 変 化 する 年 齢 区 切 りとした 世 帯 主 の 年 齢 階 層 ごとに 本 稿 のデータセットにおける 世 帯 の 税 社 会 保 険 料 の *16 1か 月 当 たり 平 均 値 平 成 22 年 国 民 生 活 基 礎 調 査 の1か 月 当 たり 平 均 値 に 合 わせる 調 整 行 う *17 ( 表 5 参 照 ) ただし 全 国 消 費 実 態 調 査 では 自 営 業 が 中 心 となる 勤 労 者 以 外 の 世 帯 ( 無 職 世 帯 除 く)については 非 消 費 支 出 調 査 していないため データセットから 除 外 し 勤 労 者 世 帯 及 び 無 職 世 帯 対 象 とする *18 3.3.3 消 費 支 出 の 調 整 消 費 支 出 について 宇 南 山 (2009)では 家 計 調 査 は 自 由 記 入 の 家 計 簿 方 式 採 ってい るため プリコード 方 式 の 家 計 消 費 状 況 調 査 よりも 世 帯 の 平 均 消 費 支 出 が 過 少 になること 指 摘 している 全 国 消 費 実 態 調 査 においても 消 費 支 出 の 記 入 には 家 計 調 査 と 同 様 に 家 計 簿 方 式 採 用 しているため 家 計 消 費 状 況 調 査 よ りも 世 帯 の 平 均 消 費 支 出 が 過 少 になるものと 考 え られる そこで 世 帯 主 の 年 齢 階 層 ごとに 本 稿 のデー タセットにおける 世 帯 の 消 費 支 出 の1か 月 当 たり 表 5: 税 社 会 保 険 料 の 調 整 ( 単 位 : 円 ) 25~59 歳 60~64 歳 65~69 歳 70~74 歳 75 歳 以 上 全 国 消 費 実 態 調 査 78,435 57,296 45,989 33,626 38,741 勤 労 国 民 生 活 基 礎 調 査 105,552 89,022 59,623 67,070 96,572 倍 率 ( 国 民 / 全 消 ) 1.35 1.55 1.30 1.99 2.49 全 国 消 費 実 態 調 査 18,901 20,950 25,578 22,205 19,746 非 勤 労 国 民 生 活 基 礎 調 査 18,730 21,084 28,494 24,350 27,278 倍 率 ( 国 民 / 全 消 ) 0.99 1.01 1.11 1.10 1.38 ( 注 ) 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 の 個 票 データ 及 び 平 成 22 年 国 民 生 活 基 礎 調 査 の 個 票 データより 作 成 *15) 勤 め 先 からの 収 入 がある 世 帯 員 がいる 場 合 には 勤 労 いない 場 合 には 非 勤 労 に 区 分 *16) 国 民 生 活 基 礎 調 査 では 前 年 の 所 得 に 対 する 税 社 会 保 険 料 の 金 額 記 入 するため 平 成 22 年 調 査 における 税 社 会 保 険 料 は 平 成 21 年 の 所 得 に 対 するものである *17) 勤 め 先 からの 収 入 に 対 する 税 社 会 保 険 料 は 源 泉 徴 収 されるため 勤 労 非 勤 労 で 世 帯 分 ける また 年 齢 に よって 社 会 保 障 負 担 の 制 度 は 変 化 するため 国 民 年 金 保 険 料 の 納 付 の 義 務 がなくなる60 歳 公 的 年 金 の 受 給 が 始 まる65 歳 厚 生 年 金 保 険 料 の 納 付 が 終 わる70 歳 後 期 高 齢 者 医 療 制 度 に 移 行 する75 歳 で 年 齢 区 分 する *18) 全 国 消 費 実 態 調 査 のデータセットの50,571 世 帯 のうち 無 職 世 帯 除 く 勤 労 者 以 外 の 世 帯 8,266 世 帯 除 いた また 国 民 生 活 基 礎 調 査 のサンプルについても 同 様 に 個 票 用 いて データセットの 性 質 が 全 国 消 費 実 態 調 査 と 合 うように 加 工 した 上 で 平 均 値 算 出 した まず 世 帯 主 について 全 国 消 費 実 態 調 査 で は 世 帯 の 主 たる 収 入 得 ている 者 と 定 義 され 国 民 生 活 基 礎 調 査 では 世 帯 の 中 心 となって 物 事 とりはかるも のとして 世 帯 側 から 報 告 された 者 と 定 義 されているため 国 民 生 活 基 礎 調 査 の 世 帯 主 最 多 所 得 者 に 定 義 し 直 した さらに 厚 生 労 働 省 から 提 供 受 けた26,115 世 帯 から 最 多 所 得 者 の 年 齢 が 不 詳 の2 世 帯 税 社 会 保 険 料 の 世 帯 合 計 が 不 詳 の6,694 世 帯 除 いた 最 後 に 最 多 所 得 者 が 稼 働 所 得 ( 雇 用 者 所 得 事 業 所 得 農 耕 畜 産 所 得 家 内 労 働 所 得 ) 得 ていない 世 帯 ( 無 職 世 帯 ) または 役 員 以 外 の 雇 用 者 である 世 帯 ( 勤 労 世 帯 ) 残 す と14,046 世 帯 となった 82 ファイナンス 2015.1

シリーズ 日 本 経 考 える 平 均 値 家 計 消 費 状 況 調 査 の1か 月 当 たり 円 と 推 計 されているのに 対 して 大 幅 に 少 ない 額 と 平 均 値 に 一 致 させるように 調 整 する( 表 6 参 なる 照 ) また 高 齢 独 立 世 帯 夫 婦 世 帯 と 単 身 世 帯 に 区 分 して 貯 蓄 額 算 出 した 結 果 みると 表 7の 3.4 分 析 結 果 *19 以 上 の 方 法 で 高 齢 独 立 世 帯 の 毎 月 の 貯 蓄 額 算 出 した 結 果 は 表 7の 通 りとなる 平 均 的 には 0.91 万 円 の 資 産 の 取 り 崩 しに 対 し 就 業 世 帯 で 貯 蓄 (1.37 万 円 ) 非 就 業 世 帯 で 資 産 の 取 り 崩 し(1.44 万 円 )が 観 察 される これは Horioka(2010) などと 同 様 ライフ サイクル 仮 説 と 整 合 的 な 結 果 と 考 えられる ただし 非 就 業 世 帯 による 資 産 の 取 り 崩 しの 水 準 は Horioka(2010)で4.94 万 表 6: 消 費 支 出 の 調 整 通 り 単 身 女 性 よりも 単 身 男 性 のほうが 就 業 非 就 業 ともに 貯 蓄 額 が 高 くなっている 夫 婦 世 帯 の 貯 蓄 額 は 単 身 男 性 と 単 身 女 性 の 中 間 に 位 置 す ることとなる 4.おわりに 本 稿 では 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 の 個 票 用 いて 先 行 研 究 踏 まえながら 非 消 費 支 出 及 び 消 費 支 出 の 値 に 所 要 の 調 整 加 え 世 帯 の1 ( 単 位 : 円 ) 25~29 歳 30~34 歳 35~39 歳 40~44 歳 45~49 歳 全 国 消 費 実 態 調 査 209,420 243,023 260,794 284,996 317,254 家 計 消 費 状 況 調 査 212,344 245,123 289,333 313,794 358,180 倍 率 ( 家 消 / 全 消 ) 1.01 1.01 1.11 1.10 1.13 50~54 歳 55~59 歳 60~64 歳 65 歳 全 体 全 国 消 費 実 態 調 査 326,516 304,218 273,511 222,732 260,787 家 計 消 費 状 況 調 査 366,696 339,916 325,162 264,251 297,173 倍 率 ( 家 消 / 全 消 ) 1.12 1.12 1.19 1.19 1.14 ( 注 ) 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 の 個 票 データ 及 び 平 成 21 年 家 計 消 費 状 況 調 査 年 報 より 作 成 表 7: 高 齢 独 立 世 帯 の 平 均 貯 蓄 額 高 齢 独 立 世 帯 ( 夫 婦 世 帯 及 び 単 身 世 帯 ) 夫 婦 単 身 の 別 夫 婦 世 帯 単 身 世 帯 全 体 単 身 男 性 単 身 女 性 ( 単 位 : 万 円 ) 平 均 貯 蓄 額 標 準 誤 差 サンプル( 世 帯 ) 全 体 0.91 0.17 9,343 就 業 1.37 0.44 2,081 非 就 業 1.44 0.18 7,262 全 体 0.47 0.23 7,469 就 業 1.58 0.54 1,836 非 就 業 1.13 0.25 5,633 全 体 1.37 0.27 1,874 就 業 0.97 0.74 245 非 就 業 1.74 0.29 1,629 全 体 0.07 0.69 348 就 業 3.23 1.52 60 非 就 業 0.54 0.77 288 全 体 1.92 0.29 1,526 就 業 0.12 0.83 185 非 就 業 2.18 0.31 1,341 ( 注 ) 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 の 個 票 データより 作 成 *19) 高 齢 独 立 世 帯 10,939 世 帯 のうち 無 職 世 帯 除 く 勤 労 者 以 外 の 世 帯 1,596 世 帯 除 いた ファイナンス 2015.1 83

シリーズ 日 本 経 考 える か 月 当 たり 収 入 支 出 差 額 算 出 することで 高 齢 者 の 毎 月 の 貯 蓄 額 推 計 した 本 稿 の 主 な 分 析 結 果 は (1) 高 齢 独 立 世 帯 は 就 業 している 場 合 は 平 均 的 に 貯 蓄 し 非 就 業 の 場 合 は 資 産 取 り 崩 すこと (2) 非 就 業 の 場 合 の 資 産 取 り 崩 し 額 は 月 1.44 万 円 と Horioka(2010)で 示 されて いる 月 4.94 万 円 より 明 らかに 小 さいこと (3) 単 身 男 性 は 就 業 非 就 業 ともに 単 身 女 性 よりも 貯 蓄 額 が 高 く 夫 婦 世 帯 の 貯 蓄 額 は 単 身 男 性 と 単 身 女 性 の 中 間 に 位 置 すること である なお 全 国 消 費 実 態 調 査 では 自 営 業 等 の 勤 労 者 以 外 の 世 帯 ( 無 職 世 帯 除 く)について 非 消 費 支 出 のデータが 調 査 されていないため 本 稿 では 分 析 対 象 から 除 外 しており 自 営 業 等 の 貯 蓄 の 実 態 については 今 後 の 課 題 となる また 勤 労 者 世 帯 と 無 職 世 帯 の 非 消 費 支 出 についても 本 稿 では 税 社 会 保 険 料 の 平 均 値 国 民 生 活 基 礎 調 査 に 合 わせる 形 で 調 整 している これらの 点 については 田 中 四 方 駒 村 (2013)で 行 わ れているように 収 入 や 世 帯 属 性 から 理 論 的 に 税 社 会 保 険 料 の 金 額 推 計 し 可 処 分 所 得 計 算 す る 方 法 用 いれば 勤 労 者 以 外 の 世 帯 ( 無 職 世 帯 除 く)の 貯 蓄 額 算 出 でき 勤 労 者 世 帯 と 無 職 世 帯 についても 税 社 会 保 険 料 の 調 整 方 法 の 妥 当 性 検 討 することができる 本 稿 では 非 就 業 の 高 齢 独 立 世 帯 の 資 産 取 り 崩 し 額 について 先 行 研 究 と 大 きく 異 なる 結 果 示 した 今 後 の 課 題 は 残 されるものの 高 齢 者 の 貯 蓄 行 動 は 社 会 保 障 政 策 のあり 方 と 密 接 に 結 びつい ていること 踏 まえれば 本 稿 で 示 した 分 析 結 果 は 今 後 の 政 策 議 論 に 貢 献 するものであろう なお 本 稿 の 内 容 は 日 本 財 政 学 会 第 71 回 大 会 報 告 論 文 に 基 づくものであるが 詳 細 は 近 刊 の 中 澤 菊 田 米 田 (2015) 参 照 していただきたい また 本 稿 の 内 容 や 意 見 はすべて 筆 者 の 個 人 的 見 解 であり 財 務 省 あるいは 財 務 総 合 政 策 研 究 所 の 公 式 見 解 示 すものではない 参 考 文 献 Hayashi, Fumio, Albert Ando and Richard Ferris (1988), Life cycle and bequest savings A study of Japanese and US households based on data from the 1984 NSFIE and the 1983 survey of consumer finances Journal of the Japanese and International Economies 2.4, pp.450-491. Horioka, Charles Yuji (2010), The (dis)saving behavior of the aged in Japan Japan and the World Economy 22.3,pp.151-158. Stephens Jr., Melvin and Takashi Unayama (2011), The Consumption Response to Seasonal Income: Evidence from Japanese Public Pension Benefits American Economic Journal: Applied Economics 3.4,pp.86-118. 宇 南 山 卓 (2009), SNAと 家 計 調 査 における 貯 蓄 率 の 乖 離 日 本 の 貯 蓄 率 低 下 の 要 因,RIETI Discussion Paper Series 10-J-003, 独 立 行 政 法 人 経 産 業 研 究 所. 大 竹 文 雄 (1991), 遺 産 動 機 と 高 齢 者 の 貯 蓄 労 働 供 給 経 研 究 第 42 巻 第 1 号, 岩 波 書 店,pp.21-30. 大 野 太 郎 中 澤 正 彦 松 田 和 也 菊 田 和 晃 増 田 知 子 (2014), 家 計 の 税 保 険 料 負 担 : 全 国 消 費 実 態 調 査 用 いた 計 測 フィナンシャル レビュー 通 巻 第 118 号, 財 務 省 財 務 総 合 政 策 研 究 所,pp.77-94. 大 野 太 郎 中 澤 正 彦 三 好 向 洋 松 尾 浩 平 松 田 和 也 片 岡 拓 也 高 見 澤 有 一 蜂 須 賀 圭 史 増 田 知 子 (2013a), 家 計 の 所 得 消 費 貯 蓄 : 全 国 消 費 実 態 調 査 家 計 調 査 国 民 生 活 基 礎 調 査 の 比 較,KIER Discussion Paper Series No.1307, 京 都 大 学 経 研 究 所. 大 野 太 郎 中 澤 正 彦 三 好 向 洋 松 尾 浩 平 松 田 和 也 片 岡 拓 也 高 見 澤 有 一 蜂 須 賀 圭 史 増 田 知 子 (2013b), 家 計 の 税 保 険 料 負 担 : 全 国 消 費 実 態 調 査 家 計 調 査 国 民 生 活 基 礎 調 査 の 比 較,KIER Discussion Paper Series No.1309, 京 都 大 学 経 研 究 所. 田 中 聡 一 郎 四 方 理 人 駒 村 康 平 (2013), 高 齢 者 の 税 社 会 保 障 負 担 の 分 析 - 全 国 消 費 実 態 調 査 の 個 票 データ 用 いて- フィナンシャル レビュー 通 巻 第 115 号, 財 務 省 財 務 総 合 政 策 研 究 所,pp.117-133. 中 澤 正 彦 菊 田 和 晃 米 田 泰 隆 (2015), 高 齢 者 の 貯 蓄 の 実 態 - 全 国 消 費 実 態 調 査 の 個 票 による 分 析 -, KIER Discussion Paper Series( 近 刊 ), 京 都 大 学 経 研 究 所. ホリオカ チャールズ ユウジ (1996), 貯 蓄 と 遺 産 相 続 の 経 学, 高 山 憲 之 チャールズ ユウジ ホリオカ 太 田 清 編 高 齢 化 社 会 の 貯 蓄 と 遺 産 相 続, 日 本 評 論 社, pp.2-8. ホリオカ チャールズ ユウジ 春 日 教 測 山 崎 勝 代 渡 部 和 孝 (1996), 高 齢 者 の 貯 蓄 行 動 日 本 の 高 齢 者 は 貯 蓄 取 り 崩 しているか? マイクロ データによる 分 析 踏 まえて, 高 山 憲 之 チャールズ ユウジ ホリオカ 太 田 清 編 高 齢 化 社 会 の 貯 蓄 と 遺 産 相 続, 日 本 評 論 社, pp.55-111. 八 代 尚 宏 前 田 芳 昭 (1994), 日 本 における 貯 蓄 のライフ サイクル 仮 説 の 妥 当 性 日 本 経 研 究 No.27, 日 本 経 研 究 センター,pp.57-76. 84 ファイナンス 2015.1