中 国 :CNOOC Ltd., 今 後 も 快 進 撃 は 続 く < 更 新 日 :2004/2/4> < 企 画 調 査 部 : 竹 原 美 佳 > (CNOOC ウェブサイト 他 各 紙 ) 中 国 NOC 子 会 社 の CNOOC Ltd.は 2001 年 の 株 式 上 場 以 降 大 規 模 な 国 外 資 産 の 買 収 に 加 え, 国 内 海 洋 油 田 が 相 次 いで 操 業 を 開 始 したことにより 高 い 成 長 を 維 持 してきた 2005 年 までに 国 内 の13 油 ガス 田 が 操 業 を 開 始 し,2006 年 から LNG 輸 入 事 業 などがスタートする 特 にガスビジネスの 発 展 により 同 社 の 快 進 撃 は 今 後 も 続 くと 思 われる 1.CNOOC Ltd. 上 場 後 の 成 長 中 国 第 3 位 1 の 石 油 生 産 会 社 CNOOC Ltd.は 2001 年 2 月 のニューヨーク 香 港 市 場 への 株 式 上 場 以 降, 生 産 量 埋 蔵 量 共 に 高 い 成 長 を 維 持 し 続 けてきた それはLNG 資 産 を 中 心 とした 積 極 的 な 国 外 油 ガ ス 田 の 買 収 に 加 え, 国 内 油 ガス 田 が 相 次 いで 操 業 を 開 始 したためである 同 社 は 株 式 上 場 により 調 達 し た 豊 富 なキャッシュで 2002 年 に 3 件,2004 年 に 1 件 の 国 外 資 産 買 収 を 行 った このうち 2002 年 に 行 っ たRepsolYPFのインドネシアにおける 操 業 会 社 を 含 む 保 有 権 益 の 買 収 ( 約 700 億 円 )を 除 く 3 件 がLNG 資 産 の 買 収 である 買 収 により, 生 産 量 埋 蔵 量 の 増 加 だけではなく 中 国 におけるLNGビジネスのリーディ ングカンパニーとしての 地 位 を 確 立 した (1) LNG ビジネスで 他 の 2 社 をリード 1インドネシアTangguh(タングー) 2002 年 にBPからインドネシアのタングーLNG プロジェクトの 油 ガス 田 上 流 権 益 12.5%を 約 330 億 円 で 買 収 した タングーガス 田 の LNG は CNOOC が 地 方 企 業 と 共 同 で 福 建 省 嵩 嶼 (Gaoyu)に 建 設 する LN G 輸 入 プロジェクトに 供 給 される CNOOC はインドネシア Pertamina との 間 で 2007 年 から 25 年 間 260 万 t/ 年 の LNG を 購 入 する 契 約 を 締 結 している なお, 福 建 の LNG 受 け 入 れターミナルは 2012 年 を 目 途 に 供 給 能 力 を 500 万 t/ 年 に 拡 張 する 計 画 である 2 豪 州 北 西 大 陸 棚 (NWS) 同 社 はタングーに 続 き, 豪 州 北 西 大 陸 棚 (NWS)ガス 田 の 上 流 権 益 5.56% 及 び 中 国 向 け LNG ジョイント 1 現 在 中 国 国 内 の 石 油 天 然 ガスの 生 産 規 模 は 約 350 万 b/dであるが,cnooc Ltd.のシェアはそのうち 約 10%を 占 めている PetroChina(CNPC 子 会 社 )は 約 70%,Sinopec Corp.(Sinopec)は 約 20%のシェアを 占 めている - 1 -
ベンチャー(CLNG)の 権 益 25%を 約 14 百 億 円 で 買 収 した NWS ガス 田 の LNG は CNOOC が BP 並 び に 広 東 や 香 港 のエネルギー 企 業 と 共 同 で 広 東 省 大 鵬 (Dapeng) 湾 に 建 設 する LNG 輸 入 プロジェクトに 供 給 される CNOOC は CLNG と 2005 年 後 半 ないし 2006 年 初 頭 から 25 年 間 330 万 t/ 年 の LNG を 購 入 することで 合 意 している なお, 広 東 の LNG 受 け 入 れターミナルは 2008 年 を 目 途 に 供 給 能 力 を 500 万 t/ 年 に 拡 張 する 計 画 である 3 豪 州 Gorgon(ゴーゴン) 同 社 は 2003 年 10 月 に ChevronTexaco と 豪 州 Gorgon プロジェクトの LNG 購 入 に 係 る 包 括 契 約 に 調 印 した 供 給 開 始 時 期 は 未 定 だが 320~400 万 t/ 年 の LNG を 25 年 間 購 入 する また,CNOOC Ltd. は 12.5%の 権 益 を 約 300 億 円 で 取 得 する 予 定 である 同 ガス 田 の 既 存 パートナーは ChevronTexaco (57.1%),R/DShell(28.6%),ExxonMobil(14.3%)であるが,それぞれの 権 益 持 分 を 比 例 配 分 式 で 売 却 する 予 定 である 中 国 国 内 の 供 給 先 について,CNOOC Ltd.がマーケティングを 行 うことが 決 まっている のみで 現 在 は 明 らかではないが,CNOOC が 計 画 している 中 国 東 部 ( 上 海, 浙 江 省 周 辺 )における LNG 輸 入 プロジェクトへ 供 給 されることになると 思 われる 同 社 の 買 収,とりわけ 国 外 LNG 資 産 の 買 収 についてはいわゆる 資 源 の 囲 い 込 み ではなく, 中 国 国 内 において 天 然 ガスビジネスを 発 展 させていく 戦 略 の 一 環 として 行 われている その 戦 略 とは 経 済 の 発 展 が 著 しい 国 内 の 東 部 南 部 沿 海 地 域 ( 大 連 から 広 東 )にガスパイプラインネットワーク( 図 1 参 照 )を 構 築 し, 輸 入 LNG と 自 社 が 国 内 海 洋 で 開 発 している 天 然 ガスを 有 機 的 に 結 合 させてマーケットシェアを 獲 得 するというものである CNOOC Ltd.はパイプライン 南 部 区 間 ( 浙 江 省 から 海 南 省 )のF/Sに 着 手 して おり, 早 ければ 2010 年 頃 には 建 設 される 可 能 性 がある 買 収 により,CNOOC Ltd.は 中 国 国 内 におけるLNG 事 業 について 他 の 2 社 (PetroChina,Sinopec)を 大 きくリードしたと 言 える IEAによる 需 要 予 測 ( 表 1 参 照 )では 中 国 の 一 次 エネルギー 需 要 に 占 める 天 然 ガ スの 割 合 は 2020 年 時 点 に 5%( 石 油 換 算 で 約 1 億 2 百 万 t)であるが, 上 述 の 通 り 同 社 のLNG 取 得 予 定 量 は 2020 年 時 点 で 約 1,200 万 ~1,500 万 t/ 年 ( 石 油 換 算 )となり, 国 内 ( 陸 海 ) 生 産 の 天 然 ガス 約 96 百 万 t/ 年 2 ( 石 油 換 算 ) 及 びロシア(コビクタガス 田 )からのパイプラインによる 輸 入 天 然 ガス 約 18 百 万 t/ 年 ( 石 油 換 算 )と 合 わせ 天 然 ガスの 供 給 量 は 約 1 億 3 千 万 t/ 年 ( 石 油 換 算 )に 達 するため, 必 要 量 は 十 分 に 確 保 されていると 考 えられる 現 在 PetroChina,Sinopec,CNOOC Ltd.のそれぞれが 別 個 に 第 3 の LNG 輸 入 基 地 建 設 を 計 画 しているが,CNOOC Ltd.はLNGの 供 給 者 である 立 場 を 生 かし, 中 国 政 府 へ の 働 きかけで 優 位 に 立 つ 事 ができると 思 われる 2 政 府 予 測 によると 2015 年 時 点 の 国 内 生 産 量 は 石 油 換 算 で 約 128 百 万 t, 油 ガス 田 の 自 家 消 費 ( 生 産 のための 再 圧 入 )を 25%とする - 2 -
図 1:CNOOC の 沿 海 部 長 距 離 パイプライン 構 想 出 所 :CNOOC Ltd. Rehearse CNOOC Ltd s strategy 表 1:IEA 需 要 予 測 ( 石 油 換 算 百 万 t) 2000 年 2010 年 2020 年 2030 年 石 炭 659 854 1,059 1,278 石 油 236 336 455 578 天 然 ガス 30 57 102 151 原 子 力 4 23 43 63 水 力 19 29 44 54 その 他 1 4 5 9 合 計 950 1,302 1,707 2,133 出 所 :IEA World Energy Outlook 2002 (2) 国 内 油 田 の 開 発 も 進 展 2002 年 は 渤 海 蓬 莱 (Penglai/PL)19-3 油 田 (1999 年 に 米 Phillips が 発 見 )や 南 シナ 海 文 昌 (Wenchang/WC)13-1/13-2 油 田 など 国 内 3 油 田 (ピーク 時 生 産 量 は 合 計 14.6 万 boe/d)が 開 発 に 移 行 したため,2001 年 から 2002 年 にかけて 油 ガス 生 産 量 は 32.6%(8.5 万 b/d) 増 加 した 埋 蔵 量 リプレース メントは 281%(228.7 百 万 BOE) 増 加 した( 図 2 参 照 ) 2003 年 の 生 産 量 は 第 3 四 半 期 に 前 年 同 期 を 割 り 込 んだものの 原 油, 天 然 ガス 共 に 二 ケタの 伸 びを 示 している - 3 -
図 2: 埋 蔵 量, 生 産 量 の 伸 び(2002 年 ) 出 所 :CNOOC Ltd. Rehearse CNOOC Ltd s strategy 国 内 原 油 生 産 量 は 前 年 比 13% 増 え 2,234 万 t( 約 44 万 b/d), 天 然 ガスは 前 年 比 39% 増 え 37.7 億 m 3 (133Bcf) 海 外 生 産 量 は 前 年 比 20.4% 増 え 原 油 781 万 t(15.6 万 b/d), 天 然 ガス 38.1 億 m 3 (134.5Bcf)で あった 純 利 益 は 国 際 石 油 価 格 の 高 さが 追 い 風 となり, 前 年 比 23.7% 増 の 17.4 億 米 ドルであった 2004 年 の 生 産 量 は 年 初 に 設 定 された 目 標 値 を 下 回 ること 並 びに 2004 年 の 生 産 目 標 が 下 方 修 正 ( 約 500 万 bbl 減 少 )され, 生 産 コストが 上 昇 する 同 社 は 生 産 量 が 当 初 の 目 標 値 を 下 回 る 理 由 について, 国 内 2 油 田 ( 渤 海 の 秦 皇 島 (QHD)32-6 油 田 並 びに 南 シナ 海 東 部 の 番 禺 (PY)5-1/4-2 油 田 )に 技 術 的 な 問 題 が 生 じたためとしている QHD32-6 油 田 は CNOOC が 発 見 し, 開 発 段 階 で 外 資 に 開 放 した 最 初 の 油 田 である BPが 24.5%の 権 益 を 保 有 していたが 2003 年 7 月 に 撤 退 している CNOOC がオペレーターを 務 め,75.5%の 権 益 を 保 有 しており, 残 りの24.5%はChevronTexacoが 保 有 している 2001 年 に 生 産 を 開 始 し, 現 在 の 生 産 量 は 約 16,000boe/d である(2002 年 ) PY5-1/4-2 油 田 はSanta Fe Energy(2000 年 Devonに 吸 収 合 併 )が 発 見 した 油 田 で,2003 年 10 月 に 生 産 を 開 始 した ピーク 生 産 量 は 6 万 b/d(2004 年 第 3 四 半 期 )の 予 定 である 米 Devon Energyがオペレー ターを 務 め 24.5%の 権 益 を 保 有, 残 りの 権 益 は 米 Burlingtonが 24.5%,CNOOCが 51%の 権 益 を 保 有 3 して いる 3 商 業 量 の 発 見 があった 時 点 でCNOOCは 無 条 件 で 51%の 権 益 を 取 得 することができる - 4 -
(3)2004 年 は 買 収 より 国 内 の 探 鉱 開 発 を 優 先 CNOOC Ltd.は 2004 年 1 月 中 旬 に 2004 年 の 企 業 戦 略 を 発 表 し, 生 産 量 の 減 少 と 生 産 コストの 上 昇 と いう 問 題 については 2004 年 中 に 解 消 するとしている 2004 年 は 買 収 より 国 内 の 探 鉱 開 発 を 強 化 する 模 様 で, 買 収 の 予 算 枠 は 取 らず( 図 3 参 照 ), 探 鉱 予 算 を 前 年 の 2 倍 ( 約 2.8 億 米 ドル)に 増 やし,2004 年 の 埋 蔵 量 リプレースメント 目 標 を 180%に 設 定 している 開 発 予 算 は 前 年 比 62% 増 やし 約 17 億 米 ドルとする 同 社 は 2005 年 から 2010 年 にかけての 生 産 見 通 しについて 8~10%と 強 気 の 設 定 をしているが,2004 年 から2005 年 にかけて13 油 ガス 田 が 操 業 を 開 始 する 予 定 (ピーク 時 生 産 量 は 計 約 35 万 boe/d)であり, 今 後 も 高 い 成 長 は 続 く 見 通 しである 図 4:Capex 推 移 出 所 :CNOOC Ltd. Rehearse CNOOC Ltd s strategy 同 社 のパフォーマンスの 高 さは 投 資 家 だけではなく 業 界 関 係 者 からも 高 く 評 価 されている 株 価 につ いては 企 業 の 業 績 だけではなく 国 際 原 油 価 格 の 高 さや 好 調 な 中 国 国 内 経 済 (2003 年 の GDP9.1%) 並 び に 人 民 元 切 り 上 げの 可 能 性 や 業 界 全 体 の 動 向 など 様 々な 要 因 が 影 響 しており 簡 単 に 分 析 することはで きないが, 上 場 以 来 同 社 の 株 価 は 約 2.5 倍 値 上 がりしており, 国 際 格 付 け 会 社 ムーディーズは 2002 年 12 月 に 同 社 の 信 用 格 付 けを Baa1 とし,2003 年 10 月 には A2 に 上 方 修 正 している 株 価 の 高 さは 同 社 が 強 気 の 発 展 戦 略 を 進 める 上 で 追 い 風 となっている CEO の 溥 成 玉 (Fu Chengyu 氏 はフィナンシャルタイムズによるインタビューの 中 で, 株 主 とは 同 社 の 大 株 主 ( 約 70% 保 有 )である 中 国 政 府 だけではなく, 株 主 全 体 を 意 味 するとした 上 で, 株 主 価 値 を 高 める - 5 -
ことを 今 後 も 強 化 したいと 発 言 している 同 社 は 上 場 後 メディアへの 対 応 だけではなくウェブの 充 実 を 図 り, 速 やか 且 つ 判 り 易 い 情 報 開 示 を 心 がけているように 見 受 けられる これまで 中 国 の 石 油 関 連 の 情 報 収 集 については 各 社 年 報 や 欧 米 の 報 道 に 頼 らざるを 得 なかったが, 上 場 後 は NOC 各 社 ウェブ 上 のプ レスリリースや Result & Presentations で 詳 しい 情 報 を 得 ることが 出 来 るようになった ウェブ IR の 充 実 ぶり からも 上 場 後 の NOC が 一 般 投 資 家 を 重 視 した 経 営 姿 勢 を 打 ち 出 していることが 実 感 できる - 6 -