経 常 研 究 無 機 材 料 の 遠 赤 外 線 放 射 特 性 と 応 用 製 品 に 関 する 研 究 研 究 開 発 科 山 口 典 男 高 松 宏 行 九 州 大 学 栃 原 裕 要 約 遠 赤 外 線 放 射 率 が 高 い 材 料 の 開 発 および 遠 赤 外 線 が 及 ぼす 生 体 への 生 理 学 的 作 用 の 解 明 を 目 的 に セメント と 釉 薬 の 遠 赤 外 線 放 射 特 性 の 評 価 および 低 温 域 で 放 射 される 遠 赤 外 線 の 生 理 学 的 作 用 の 評 価 を 行 なった 材 料 の 遠 赤 外 線 放 射 特 性 の 評 価 では セメントは 種 類 によらず 約 93%という 高 い 積 分 放 射 率 を 示 し 波 長 依 存 性 は 確 認 されなかった また 釉 薬 の 評 価 では 長 石 が 析 出 し 光 沢 度 の 低 い 石 灰 釉 において 放 射 率 が 高 く 白 色 の 釉 薬 として 初 めて90% 以 上 の 積 分 放 射 率 を 示 した さらに この 白 色 釉 薬 は 金 属 酸 化 物 により 着 色 しても 著 しい 放 射 率 の 低 下 は 認 められなかった 一 方 生 体 への 生 理 学 的 評 価 では 遠 赤 外 線 放 射 量 の 少 ない 低 温 域 での 遠 赤 外 線 が 生 体 に 及 ぼす 作 用 は 全 身 ではなく 照 射 部 の 局 所 的 なものであることが 明 らかとなった キーワード: 遠 赤 外 線 積 分 放 射 率 波 長 依 存 性 釉 薬 生 理 学 的 作 用 1.はじめに 遠 赤 外 線 は 輻 射 により 中 間 の 空 気 層 を 温 めること なく 対 象 物 を 直 接 加 熱 するため エネルギー 効 率 に 優 1) れるといった 特 徴 があり 塗 膜 の 乾 燥 やスポット 暖 房 として 利 用 され 発 展 してきた 技 術 である これまで に 遠 赤 外 線 を 利 用 した 商 品 のブームが 何 度 かあり 数 多 くの 研 究 がなされてきた 2 7) 近 年 岩 盤 浴 を 中 心 とした 健 康 癒 しグッズなどの 遠 赤 外 線 商 品 などが 数 多 く 見 られるようになり 再 びブームとなっている こ のような 中 で 遠 赤 外 線 高 放 射 材 料 の 材 質 や 放 射 メカ ニズム また 生 体 に 対 する 遠 赤 外 線 の 生 理 学 的 作 用 などについて 不 明 な 点 が 多 く 残 されている 筆 者 らは これまでの 基 礎 的 実 験 でセメント 材 料 が 高 い 積 分 放 射 率 を 示 すことを 確 認 している そこで セメント 硬 化 体 を 対 象 として 遠 赤 外 線 の 放 射 率 に 影 響 する 化 学 組 成 について 検 討 した さらに 得 られた 知 見 を 基 に 釉 薬 への 応 用 について 検 討 した また 放 射 材 料 が50 の 低 温 領 域 で 遠 赤 外 線 が 生 体 に 及 ぼ す 生 理 学 的 作 用 について 検 討 した 2. 実 験 方 法 2. 1 セメント 硬 化 体 の 遠 赤 外 線 放 射 率 評 価 セメントの 種 類 が 遠 赤 外 線 放 射 率 に 及 ぼす 影 響 を 検 討 するために 普 通 ポルトランドセメント( 普 通 PC) 早 強 ポルトランドセメント( 早 強 PC) 白 色 セメント ア ルミナセメントの 各 硬 化 体 を 作 製 した 混 練 水 はセメ ント 粉 末 の50mass%とし 室 温 で1 日 養 生 した 硬 化 体 は 一 辺 が 約 45mm 厚 さが 約 4mmになるように 両 面 を#220のダイヤモンドパッドで 平 面 研 磨 した 加 工 したサンプルをアセトンに 約 1 日 浸 漬 し 水 和 を 停 止 し80 で 乾 燥 した 後 遠 赤 外 線 放 射 率 の 測 定 に 供 し た また ケイ 酸 分 (SiO2)の 影 響 を 検 討 するために 普 通 PCにシリカ(SiO2)を0 60mass% 添 加 し 硬 化 体 を 作 製 した また このときの 混 練 水 量 は 粉 末 (セ メント シリカ)に 対 し50mass%とした 遠 赤 外 線 放 射 率 ( 以 下 放 射 率 )は 日 本 電 子 製 JIR-E500( 図 1)を 用 い ヒーター 温 度 50 波 長 範 囲 3.33 25.42μmで 測 定 した サンプル 温 度 は サンプ ル 表 面 にK 型 熱 電 対 を 取 り 付 け 測 定 した 測 定 はサン プルを 加 熱 ステージに 固 定 した 後 熱 的 平 衡 を 得 るた めに1h 以 上 経 過 してから 測 定 を 行 なった 40.4 およ び161.3 の2つの 黒 体 炉 を 測 定 し 2 点 温 度 標 準 検 量 法 により 遠 赤 外 線 放 射 率 曲 線 ( 以 下 放 射 率 曲 線 ) を 得 た また 遠 赤 外 線 積 分 放 射 率 ( 以 下 積 分 放 射 率 ) は 波 長 範 囲 3.33 25.42μmにて 算 出 した 無 機 材 料 の 遠 赤 外 線 放 射 特 性 と 応 用 製 品 に 関 する 研 究 1
表 2 添 加 した 金 属 酸 化 物 図 1 遠 赤 外 線 放 射 率 測 定 装 置 ( 日 本 電 子 製 JIR-E500) 表 1 石 灰 釉 およびリン 含 有 釉 の 調 合 組 成 (ゼーゲル 式 ) 図 2 遠 赤 外 線 が 生 体 に 及 ぼす 生 理 学 的 作 用 の 評 価 手 順 射 率 測 定 に 使 用 した 遠 赤 外 線 放 射 率 測 定 は ヒーター 温 度 100 とし その 他 の 条 件 は 2.1と 同 じとした 2. 2 釉 薬 の 調 製 および 遠 赤 外 線 放 射 率 評 価 釉 薬 中 のケイ 酸 成 分 量 の 影 響 を 検 討 するために ケ イ 酸 成 分 の 異 なる 石 灰 釉 と リン 酸 (P2O5) を 含 むリン 含 有 釉 を 調 製 した 調 製 した 各 釉 薬 の 成 分 組 成 を 表 1に 示 す 石 灰 釉 は 多 以 良 長 石 益 田 長 石 朝 鮮 カオリン 石 灰 石 珪 石 を 原 料 とした また リン 含 有 釉 は 下 水 ス ラグの 組 成 を 参 考 とし 石 灰 釉 で 使 用 した 原 料 に 炭 酸 マグネシウムおよび 骨 灰 を 用 いた さらに 放 射 率 が 良 好 であった 石 灰 釉 Dの 試 料 において 組 成 を 変 化 させ 最 適 な 組 成 についても 検 討 した 調 製 した 釉 薬 を 約 50mm 角 の 素 焼 き 陶 板 に 施 釉 し SK10 で 還 元 焼 成 し た 裏 面 を 研 磨 し 平 滑 化 したサンプルを 遠 赤 外 線 放 射 率 測 定 に 使 用 した 遠 赤 外 線 放 射 率 測 定 は ヒーター 温 度 100 とし その 他 の 条 件 は 2.1と 同 じとした 2. 3 金 属 酸 化 物 を 添 加 した 石 灰 釉 の 調 製 着 色 するために 添 加 する 金 属 酸 化 物 が 放 射 率 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 するために 表 2に 示 す 金 属 酸 化 物 を 石 灰 釉 の 乾 粉 に 対 して 外 割 で 1mass%および 5mass% 添 加 し 乳 鉢 にて 粉 砕 し 調 製 した 調 製 した 釉 薬 を 約 50mm 角 の 素 焼 き 陶 板 に 施 釉 し SK10 により 還 元 焼 成 した 裏 面 を 研 磨 し 平 滑 化 したサンプルを 遠 赤 外 線 放 2. 4 遠 赤 外 線 が 及 ぼす 生 体 への 生 理 学 的 作 用 の 評 価 遠 赤 外 線 ヒートパネルの 使 用 が 座 位 安 静 時 における 生 理 応 答 に 及 ぼす 影 響 を 検 討 するために 成 人 男 性 6 名 ( 年 齢 22±1yrs)を 被 験 者 とし 図 2に 示 す 実 験 を 行 なった 具 体 的 には 実 験 室 入 室 前 に 体 重 測 定 皮 膚 セ ンサー 等 の 貼 付 けを 行 った 室 温 を 31 50%RH に 制 御 した 実 験 室 に 入 室 後 10 分 間 で 局 所 発 汗 量 測 定 用 の プローブおよび 皮 膚 血 流 量 センサーを 貼 り 付 けた 入 室 10 分 後 から 測 定 を 開 始 し 10 分 間 座 位 安 静 にした 後 ヒートパネル 前 に 移 動 し 60 分 間 座 位 安 静 にした この とき 直 腸 温 皮 膚 温 (12 箇 所 ) 全 身 発 汗 量 ( 体 重 変 化 ) 局 所 発 汗 量 (3 箇 所 ) 皮 膚 血 流 量 (3 箇 所 ) 血 圧 心 拍 数 を 測 定 した また 全 身 温 冷 感 局 所 温 冷 感 温 熱 的 快 適 感 発 汗 感 について 主 観 申 告 を 行 なった ヒー トパネル 条 件 は 高 放 射 低 放 射 コントロールの3 条 件 とし 各 被 験 者 が 3 条 件 を 異 なる 実 験 日 の 同 一 時 刻 に 行 な っ た 全 条 件 に お い て 被 験 者 の 背 中 か らヒート パ ネ ルまでの 距 離 を 30cm とした( 図 3) なお ヒートパネ ル 表 面 の 材 質 がセメントからなるものを 高 放 射 条 件 とし て その 上 にアルミニウムテープを 貼 り 付 けたものを 低 放 射 条 件 として 使 用 した コントロールは 加 熱 していな い セ メントパ ネ ル とし た ま た 表 3に ヒート 2 無 機 材 料 の 遠 赤 外 線 放 射 特 性 と 応 用 製 品 に 関 する 研 究
表 4 各 種 セメントの 化 学 組 成 図 3 生 理 学 的 作 用 の 評 価 におけるヒートパネル と 被 験 者 の 配 置 表 3 各 照 射 条 件 におけるヒートパネルの 表 面 温 度 と 遠 赤 外 線 放 射 量 図 4 各 種 セメント 硬 化 体 の 遠 赤 外 線 放 射 率 曲 線 トパネルの 表 面 温 度 およびヒートパネルから30cm の 距 離 における 放 射 量 を 示 す 3. 結 果 及 び 考 察 3. 1 各 種 セメントの 遠 赤 外 線 放 射 特 性 各 種 セメントの 化 学 組 成 を 蛍 光 X 線 分 析 のファンダメ ンタルパラメータ(FP) 法 により 求 めた 結 果 を 表 4に 示 す 普 通 PCは 一 般 的 なセメントであり 早 強 PCは 普 通 PCとほぼ 同 じ 化 学 組 成 であるが 構 成 鉱 物 割 合 が 異 なる 白 色 セメントは セメント 特 有 の 灰 色 を 呈 す る 要 因 である 酸 化 鉄 (Fe2O3)が 少 なくなっている アル ミナセメントは アルミナ (Al 2O3) が 他 のセメントよりも かなり 多 く シリカ (SiO2) カルシア(CaO) が 少 なくなっ ている 各 種 セメント 硬 化 体 の 放 射 率 曲 線 を 図 4に 示 す 化 学 組 成 は 上 述 のように 異 なるが 放 射 率 曲 線 はどのセ メントにおいても 同 じような 傾 向 を 示 し 波 長 による 放 射 率 の 著 しい 増 減 ( 波 長 依 存 性 )はほとんど 示 さな いことが 明 らかとなった また 積 分 放 射 率 はセメン トの 種 類 によらず 約 93%であり 有 意 な 差 は 見 られな 図 5 一 般 的 な 石 灰 釉 を 施 した 磁 器 の 遠 赤 外 線 放 射 率 曲 線 かった このことより セメント 硬 化 体 は 遠 赤 外 線 の 高 放 射 素 材 であることが 明 らかとなった 3. 2 シリカを 添 加 したセメント 硬 化 体 の 遠 赤 外 線 放 射 特 性 ケイ 酸 成 分 (SiO2)を 有 する 材 料 は 一 般 的 に 波 長 域 約 8 10μmにおいて ケイ 素 と 酸 素 間 (Si-O)の 結 合 に 由 来 する 放 射 率 の 低 減 領 域 が 見 られる 図 5に 放 射 率 の 低 減 が 特 徴 的 な 石 灰 釉 を 施 した 磁 器 の 放 射 率 曲 線 を 示 す 波 長 が 9μm では 放 射 率 が 70% 以 下 となっ ていることが 分 かる しかしながら 図 4からも 分 か るように ケイ 酸 成 分 を 含 む 各 種 セメント 硬 化 体 では 8 10μmにおける 放 射 率 の 低 下 は 見 られない そこで 無 機 材 料 の 遠 赤 外 線 放 射 特 性 と 応 用 製 品 に 関 する 研 究 3
図 6 石 英 を 混 合 した 普 通 ポルトランドセメント 硬 化 体 の 遠 赤 外 線 放 射 率 曲 線 図 8 ケイ 酸 量 の 異 なる 石 灰 釉 の 遠 赤 外 線 放 射 率 曲 線 図 7 ケイ 酸 量 の 異 なる 石 灰 釉 を 施 した テストピース 普 通 ポルトランドセメントに 石 英 (SiO2) を 添 加 した 硬 化 体 の 放 射 率 を 測 定 した 放 射 率 曲 線 を 図 6に 示 す 添 加 量 が 増 加 するにつれて Si-O に 由 来 する 放 射 率 の 低 下 が 確 認 された 以 上 のことから 一 般 的 な 石 灰 釉 ではケイ 酸 成 分 が 約 70mass% 含 まれており 放 射 率 曲 線 に 影 響 を 及 ぼ すが セメントのケイ 酸 成 分 は 約 20mass%であること から 放 射 特 性 への 影 響 が 少 ないことが 推 察 された このことから 石 灰 釉 においてもケイ 酸 成 分 を 少 なくす ることで 放 射 率 を 改 善 することができるとともに 波 長 依 存 性 の 少 ない 材 料 を 開 発 できる 可 能 性 が 示 唆 さ れた 3. 3 釉 薬 中 のケイ 酸 が 遠 赤 外 線 放 射 率 に 及 ぼす 影 響 図 9 石 灰 釉 リン 含 有 釉 の 積 分 放 射 率 ケイ 酸 量 の 異 なる 石 灰 釉 を 施 した 概 観 を 図 7に ま た それらの 放 射 率 曲 線 を 図 8に 示 す ケイ 酸 成 分 の 多 い 釉 薬 は 表 面 に 光 沢 があり ケイ 酸 成 分 が 少 なくな るにつれて 光 沢 は 少 なくなった また 石 灰 釉 Fでは 溶 融 が 十 分 ではなく 表 面 が 荒 れた 状 態 となっていた 放 射 率 曲 線 より ケイ 酸 成 分 の 多 い 釉 薬 において8 10 μmの 放 射 率 の 低 下 がはっきりと 確 認 された しかしな がら ケイ 酸 成 分 の 少 ない 石 灰 釉 Dでは 放 射 率 の 低 下 は 確 認 されず 波 長 依 存 性 が 著 しく 改 善 されている ことが 明 らかとなった 3.33 25.42μmの 積 分 放 射 率 を 図 9に 示 す 石 灰 釉 Dのみで90%を 越 える 積 分 放 射 率 を 示 していることが 分 かり 積 分 放 射 率 が90%を 越 4 無 機 材 料 の 遠 赤 外 線 放 射 特 性 と 応 用 製 品 に 関 する 研 究
図 10 リン 含 有 釉 の 遠 赤 外 線 放 射 率 曲 線 図 12 各 種 石 灰 釉 の 薄 膜 X 線 回 折 パターン 様 に 高 い 積 分 放 射 率 を 示 し 最 大 で91.5%であった しかしながら 石 灰 釉 D-1からD-3は 釉 薬 の 溶 融 状 態 があまりよくなく 若 干 ざらざらとした 質 感 であり 岩 盤 浴 などの 陶 板 としては 好 ましくないと 思 われるもの となった また 一 辺 約 45mm 厚 さ 約 4mmのサン プルは 焼 成 後 素 地 の 方 に 大 きく 反 った 状 態 になり 釉 薬 の 熱 膨 張 が 非 常 に 小 さいことが 推 察 され 釉 薬 と しては 適 切 ではないことが 分 かった このことから 釉 薬 Dの 組 成 が 適 切 であると 判 断 された 図 11 石 灰 釉 Dシリーズの 遠 赤 外 線 放 射 率 曲 線 える 石 灰 釉 を 初 めて 作 製 できた 一 方 リン 酸 により ケイ 酸 成 分 を 減 じたリン 含 有 釉 の 放 射 率 曲 線 を 図 10に 示 す ケイ 酸 成 分 が30 40% 台 と 極 端 に 少 ないにもかかわらず 8 10μmでの 放 射 率 の 低 下 抑 制 には 効 果 がほとんど 無 いことが 明 らかと なった また 積 分 放 射 率 も86 88%となり 90% 以 上 を 示 さなかった( 図 9) このことから リン 酸 を 用 い ケイ 酸 成 分 の 量 を 抑 えた 釉 薬 は 放 射 率 の 改 善 策 とし て 適 切 ではないことが 分 かった 積 分 放 射 率 が90%を 越 えた 石 灰 釉 Dのアルミナ 成 分 とシリカ 成 分 を 変 化 させた 釉 薬 の 放 射 率 曲 線 を 図 11に 示 す 石 灰 釉 D-1からD-3においては 石 灰 釉 Dと 同 3. 4 釉 薬 の 放 射 率 に 及 ぼす 因 子 の 検 討 石 灰 釉 において 釉 薬 の 組 成 の 相 違 により 放 射 率 が 著 しく 影 響 された 原 因 を 検 討 するために 薄 膜 X 線 回 折 装 置 を 用 いて 釉 薬 層 の 構 成 鉱 物 を 測 定 した 結 果 を 図 12に 示 す 石 灰 釉 A B C Eにおいて 主 相 はガ ラス 相 であり 結 晶 相 の 析 出 はわずか または ほと んどないことが 分 かった これに 対 し 高 い 積 分 放 射 率 を 示 した 石 灰 釉 Dでは ガラス 相 の 存 在 を 示 すハロー は 確 認 されず 長 石 の 結 晶 が 生 成 していることが 明 らか となった また 石 灰 釉 Fは 擬 珪 灰 石 が 析 出 していた このことから 長 石 が 析 出 し ガラス 相 がほとんどない 釉 薬 において 放 射 率 が 高 くなることが 分 かった また ケイ 酸 成 分 を 少 なくすることで 放 射 率 の 改 善 に 繋 がる と 期 待 し 上 述 のように 各 種 釉 薬 の 試 作 を 行 なった ケイ 酸 成 分 量 と 積 分 放 射 率 の 関 係 を 図 13 示 す この 図 より ケイ 酸 成 分 の 量 が 少 なくても 積 分 放 射 率 の 著 し い 改 善 にはなっておらず ケイ 酸 成 分 量 が 約 50% 付 近 で 高 い 放 射 率 を 示 していることが 分 かった 高 い 積 分 放 射 率 を 示 すサンプルに 共 通 する 点 は 表 面 の 光 沢 が 比 較 的 少 ないことである そこで 各 サンプルの 光 沢 無 機 材 料 の 遠 赤 外 線 放 射 特 性 と 応 用 製 品 に 関 する 研 究 5
図 15 金 属 酸 化 物 を 添 加 した 石 灰 釉 Dの テストピース 図 13 ケイ 酸 量 と 積 分 放 射 率 の 関 係 図 14 光 沢 度 と 積 分 放 射 率 の 関 係 図 16 各 種 金 属 酸 化 物 を 添 加 した 石 灰 釉 Dの 積 分 放 射 率 ( 点 線 は 金 属 酸 化 物 未 添 加 である 石 灰 釉 D) 度 を 測 定 し 積 分 放 射 率 との 関 係 について 検 討 した( 図 14) 光 沢 度 が10% 以 上 のサンプルでは 積 分 放 射 率 が 約 87%であり ほぼ 一 定 であるが 光 沢 度 が10% 以 下 では 積 分 放 射 率 が 高 くなっており 相 関 があるこ とが 分 かった このことから 光 沢 度 を 下 げることで 高 い 積 分 放 射 率 を 得 られる 可 能 性 が 示 唆 された 下 しているものもあったが 金 属 酸 化 物 の 添 加 量 が 1mass%では どの 金 属 酸 化 物 においても 著 しい 低 下 は 見 られないことが 分 かった また 図 15に 示 すよう に1mass%でも 陶 板 への 着 色 が 可 能 であり 石 灰 釉 D をベースとすることで 積 分 放 射 率 を 低 下 させることな く 陶 板 に 着 色 できることが 明 らかとなった 3. 5 金 属 酸 化 物 を 添 加 した 石 灰 釉 の 放 射 率 各 種 金 属 酸 化 物 を 石 灰 釉 Dに 添 加 した 陶 板 の 概 観 と 遠 赤 外 線 積 分 放 射 率 を 図 15 図 16にそれぞれ 示 す 金 属 酸 化 物 を 添 加 していない 基 本 となる 釉 薬 の 積 分 放 射 率 は 89.6%であった( 図 16の 点 線 ) 金 属 酸 化 物 を 5mass% 添 加 したサンプルの 中 には 積 分 放 射 率 が 低 3. 6 遠 赤 外 線 が 及 ぼす 生 体 への 生 理 学 的 作 用 の 評 価 背 部 ( 肩 腰 付 近 ) 皮 膚 温 の 変 化 を 図 17に 示 す 背 部 皮 膚 温 は 高 放 射 条 件 で 有 意 に 高 い 値 を 示 し(p<0.05) コ ントロール 条 件 に 比 べて1 2 高 い 値 を 示 した 一 方 直 腸 温 および 平 均 皮 膚 温 の 変 化 に 条 件 間 の 差 は 見 6 無 機 材 料 の 遠 赤 外 線 放 射 特 性 と 応 用 製 品 に 関 する 研 究
図 17 背 部 ( 肩 腰 付 近 )の 皮 膚 温 変 化 図 18 各 部 位 ( 前 額 部 背 部 前 腕 部 )の 皮 膚 血 流 量 られなかった このように 遠 赤 外 線 が 直 接 当 たって いる 部 分 のみに 温 める 効 果 が 確 認 された 皮 膚 血 流 量 は 前 額 部 および 前 腕 部 では 条 件 間 の 差 は 見 られなかったが 背 部 では 高 放 射 条 件 で 他 の 条 件 よりも 高 い 傾 向 (p=0.076)を 示 した( 図 18). 局 所 発 汗 量 は 前 額 部, 前 腕 部 および 背 部 において 条 件 間 に 差 は 見 られなかった また 全 身 発 汗 量 心 拍 数 および 血 圧 にも 条 件 間 の 差 は 見 られなかった 温 熱 的 快 適 感 温 冷 感 発 汗 感 は 高 放 射 条 件 で 高 い 傾 向 が 見 られたが 個 人 差 が 大 きく 有 意 差 は 見 られ なかった また 背 部 の 局 所 温 冷 感 は 高 放 射 条 件 で 高 い 傾 向 を 示 したが 有 意 差 は 見 られなかった その 他 の 部 位 の 局 所 温 冷 感 に 条 件 間 の 差 は 見 られなかった このように 深 部 体 温 平 均 皮 膚 温 発 汗 量 全 身 温 冷 感 温 熱 的 快 適 感 などの 全 身 的 な 応 答 に 遠 赤 外 線 の 影 響 は 見 られなかったが 加 熱 部 位 にあたる 背 部 においては 皮 膚 血 流 量 が 高 放 射 条 件 で 他 の 条 件 に 比 べて 高 い 傾 向 を 示 し 個 人 差 が 大 きく 有 意 ではない が 局 所 温 冷 感 も 高 い 傾 向 を 示 した 本 研 究 で 用 いた66 Wm -2 程 度 の 低 い 輻 射 量 の 遠 赤 外 線 は 全 身 的 な 生 理 心 理 反 応 への 影 響 は 及 ぼさないが 加 熱 部 位 での 局 所 的 な 反 応 に 影 響 を 及 ぼすことが 明 ら かになった 4.まとめ 遠 赤 外 線 高 放 射 率 の 条 件 の 解 明 遠 赤 外 線 高 放 射 率 釉 薬 の 開 発 および 遠 赤 外 線 の 生 理 学 的 作 用 について 検 討 し 以 下 の 知 見 を 得 た (1)セメントは 種 類 によらず 90%を 越 える 高 い 積 分 放 射 率 を 示 し 波 長 依 存 性 が 少 ないことが 明 らかとなっ た (2) 長 石 が 析 出 している 釉 薬 で 高 い 積 分 放 射 率 を 示 し 白 色 系 の 釉 薬 でも 積 分 放 射 率 が90%を 越 えた また 一 般 的 な 石 灰 釉 に 比 べ 波 長 依 存 性 が 少 なくなった (3) 釉 薬 において 表 面 の 光 沢 度 が 低 いものほど 高 い 積 分 放 射 率 を 示 す 傾 向 が 見 られた (4) 金 属 酸 化 物 を1mass% 添 加 し 着 色 しても 放 射 率 の 著 しい 低 下 は 確 認 されなかった (5) 遠 赤 外 線 の 放 射 量 が 少 ない 低 温 域 における 遠 赤 外 線 の 生 理 学 的 作 用 は 全 身 的 には 確 認 されず 加 熱 部 位 での 局 所 的 な 反 応 のみであった 文 献 1) 高 嶋 廣 夫 杉 山 豊 彦 セラミックス 23(4) pp.287-293(1988). 2) 高 田 紘 一 セラミックス 23(4) pp.310-315 (1988). 3) 石 黒 智 明 舛 田 純 男 加 藤 一 実 富 山 県 工 業 技 術 センター 研 究 報 告 No.4 pp.14-15(1990). 4) 島 田 忠 加 藤 布 久 倉 知 一 正 岐 阜 県 陶 磁 器 試 験 場 研 究 報 告 pp.12-17(1991). 5) 尾 谷 賢 北 海 道 立 工 業 試 験 場 報 告 No.293 pp. 115-121(1994). 6) 天 野 和 男 浅 井 徹 山 田 義 和 愛 知 県 産 業 技 術 研 究 所 研 究 報 告 pp.95-101(2002). 7) 角 田 世 治 ら 平 成 17 年 度 青 森 県 工 業 総 合 研 究 セ ンター 事 業 報 告 書 pp.70-74(2005). 謝 辞 遠 赤 外 線 が 及 ぼす 生 体 への 生 理 学 的 作 用 の 評 価 にお いて ご 協 力 を 賜 りました 九 州 大 学 大 学 院 芸 術 工 学 院 若 林 研 究 員 ならびに 人 間 工 学 教 室 の 方 々に 心 より 御 礼 申 し 上 げます 無 機 材 料 の 遠 赤 外 線 放 射 特 性 と 応 用 製 品 に 関 する 研 究 7