Vol.9 No.4 pp.573-581 2010 Reason and Kansei on Human Resource Management Consulting Possibility in Ethnography of Genba Morio ITOH HRM consultant, 1-5-101 Nishikoen, Chuo-ku, Fukuoka-shi, Fukuoka 810-0061, Japan Abstract : The purpose of this paper is to clarify the applied possibility and the meaning of the ethnography to Understanding of the genba in a human resource management consulting from the viewpoint of the kansei communication. As a result of consideration, the following conclusions were obtained. In Understanding of the genba biased to rational recognition in a past human resource management consulting, the possibility of causing the problem in the consensus building process with the client is high. The consultant puts his body on the genba spending fixed time to avoid it, and the experience of sharing the space of the client organization is indispensable. The obtained inclusive understanding through it, enables the emergent collaboration, and promotes the consensus building in the customizing process with the person in charge of the client organization. Keywords : Human resource management consulting, Ethnography of genba, Kansei communication 1. 1.1 1990 1 1 2 2 Received 2009.12.10 Accepted 2010.04.12 573
574 Vol.9 No.4 1.2 4 3 6 7 8 9 10 Leonard 6 11 2. 2.1 4 12 5
575 14 2.2 middleman 2 15 16 17 3. 3.1 18 1 18 4
日本感性工学会論文誌 Vol.9 No.4 ンに重要な役割を果たすことを指摘する そして 資料に基 反省的 理性的認識 づく言葉や理性的思考による議論を テーブルコミュニケー ション 討議コミュニケーション として 一方 現場に出て そこでの空間の体験を共有して行うコミュニケーションを C 明確化領域 フィールドコミュニケーションとして対比する 20 B 推測領域 フィールドコミュニケーションにおいては 同じ空間を他 者とともに共有するが その同じ体験を共有することによる 落ち つき 動揺 相互理解が可能であるとする つまり 共通の体験による 思 い の共有や日常において自明とされていることへの気づ D 自明化領域 A 違和感領域 き さらに 相互の価値観への気づきなどが可能となりうる のである このフィールドコミュニケーションは 空間的協 働行為としてのコミュニケーション行為であり 非言語的な 感性コミュニケーション であると言える 注 6 非反省的 感性的認識 桑子 20 が指摘するように その空間に住みつき生活 している内部者だけでは その空間が持つ意味はわからず そこを訪れる外部者の視点から捉えられた情報とつきあわせ 図1 認識の様態モデル 伊藤 18 p.61 を一部改変 ていかなければ その空間に関する理解が得られず そこに 生活する内部者の意見の奥底にあるものまでを掘り起こすこ が そのときどきの状況に応じてそれらの割合を変更しなが とはできない 一方 外部者は このようなフィールドコミュ ら認識の様態を形作ることを示し 特定の空間 現場 に住 ニケーションによる空間共有 現場の共有 という 感性コ みついている内部者の認識様態の特徴は 自明化領域が大き ミュニケーション なしに 理性的認識に基づくテーブルコ いものであり 非反省的な感性的認識に依拠しながら時々の ミュニケーションのみで 内部者の言語化困難な 思い や 状況に応じた実践を生み出しているとする したがって 内 その背景を理解することは不可能であると言える 部者は 実践していることがらを常に反省的に認識している 前節で指摘した内部担当者とコンサルタントの認識様態の わけではなく そのため その実践についての意味ある言明 特徴と 本節での議論を踏まえるならば 両者による 創発 には困難が伴うと指摘する 的協働 の具体的方法についての示唆が得られたものと思わ 一方 エスノグラフィーにおけるエスノグラファーの認識 れる 次節において これらを踏まえた人事コンサルティン 様態の特徴は 自らの仮説に基づく 観察者の視点 で現場 グにおける 現場の理解 と それに基づく 創発的協働 を解釈することにあるが その解釈の妥当性を高めるため のモデルを提示したい に 現場における自らの身体感覚 実感による仮説検証を行 仮説 明確化領域 と身体がその空間に なじんでいる と 3.3 理性と感性の往還による 創発的協働 3.1 節および 3.2 節の議論から 図 2 に示すような現場理解 いう身体感覚 自明化領域 による仮説検証という 理性的 を前提とする 創発的協働 モデルを提示することが可能で 認識と感性的認識との往還を繰り返す中で その解釈の妥当 あ る な お 図 2 に お け る 領 域 区 分 は 図 1 に 示 さ れ た 性を高めることができると指摘する 身体感覚という感性的 ABCD4領域の各特徴を代表して示すものとして捉えている 認識による状況理解の可能性を示したこと さらに なじむ 従来の人事コンサルティングにおいては ベストプラク という身体性の変容に着目し 一定の時間をかけて現場に身 ティス仮説 を有するコンサルタント a1 が クライアン を置くことの必要性を指摘した点に 注目する必要がある ト組織における状況を主に理性的認識を基にして把握したう うものであるとする つまり エスノグラファーは 自らの 上記のモデルによれば 本稿の議論で示された内部担当者 えで カスタマイズの提案をしていたと考えられる a2 の の認識様態は 内部者 の特徴を有するものとして また 位置 その際の 現場の理解 とは あくまでも理性的な コンサルタントにおける認識様態は エスノグラファー 範疇を超えるものではなかったと思われる 一方 通常 組 の特徴を有するものとして捉えることが可能である 両者の 織内のことがらが自明化している内部担当者 b1 にとっ このような認識様態の特徴を踏まえることから 効果的な 創 て 自ら問題を明確化することを求められた状態で 図中の 発的協働 の方法を検討することが可能となる 感性コミュニケーションを経ずに b3 の位置に達し コ ンサルタント a2 との討議に臨むことには 困難が伴った 3.2 テーブルコミュニケーションとフィールドコミュニ ケーション ものと考えられる もちろん ここには 両者間の 討議コミュニケーション 感性を 外界すなわち環境と身体的自己との相関関係を感 があるが 内部担当者においては状況の自明化 言語化の限 コミュニケーショ 知する能力 であると捉える桑子 19 は 界により 現場の状況や組織成員の 思い を十分説明する ンの中に織り込まれた感性に着目し 感性がコミュニケーショ ことに困難が見られたものと思われる 一方 現場に身を置 576
人事コンサルティングにおける理性と感性 a1 コンサルタント 外部者 組織境界 a1 仮説 明確化された空間 b3 a5 a2 a2 仮説 推測 感性 コミュニケーション b2 b1 a4 仮説 a3 内部担当者 自明化した空間 a3 実感 仮説 検証 b1 自明化 図 2 創発的協働 のモデル いた経験がないコンサルタントにおいては 内部担当者に よって言語化しにくい現場の状況や組織成員の 思い など 明確化 仮説 a4 を 包括的に 理解することは困難であったことが推測され る そして このような 現場の理解 における微妙なズレ 実感 仮説 検証 b2 仮説 b3 自明化 が 制度設計における合意形成プロセスに影響を及ぼしてい たと思われる 一方 コンサルタントが一定の時間 内部担当者とともに 現場に身を置き空間を共有することで行われる 感性コミュ ニケーション を経て a4 および b2 の位置を経験したうえ a5 明確化 自明化 で a5 と b3 の間で行われる 討議コミュニケーショ ン は 従来のものとは質的に大きく異なるものであると言 図 3 認識様態の変容 える 内部担当者の言語化しにくい 思い は 空間を共有 する同じ体験から相互理解がもたらされる可能性が広がる グラフィーを 現場エスノグラフィー と称し それは エ また その際の コンサルタントによる問いかけが 内部担 スノグラファーが現場における事の進行に内在し 時々刻々 当者における問題の明確化を促進していく と変化し 生成し続ける状況の中に参入することを示すもの 同時に コンサルタントが有する ベストプラクティス仮 であること つまり アクチュアルな現場 の一部となる 説 についても 現場を共有する中で実感を伴った仮説検証 ことであるとした この指摘は 時間的な意味合いが強いも が行われ 当初の内容と異なるものとなってカスタマイズへ のではあるが 桑子 21 が指摘するように 同じ空間を の提示が可能となるのである このような理性と感性の往還 経験することは 同じ履歴を共有することを意味するもので を基盤とする ミドルマン 相互における 創発的協働 が あり それは同一の空間と時間の共有であると考えることが 翻訳的適応 を可能にするものと考える なお このときの両者の認識様態の変容は 図 1 のモデル を用いて 図 3 のように示すことが可能である 可能であろう 現場エスノグラフィー における現場とは 対象とする フィールドの人々の問題を空間的 時間的に共有し そこで 協働する ところである これまで論じてきた ミドルマン 3.4 現場エスノグラフィー と合意形成の方法論 小田 5 は 現場とは歴史的文脈によって すでに 決 相互による 創発的協働 とは このような 現場エスノグ 定されている側面と 不確定で予測不可能な これから に ンサルティングにおけるエスノグラフィーの可能性は ここ 向けて開かれている側面があり これまで と これから にあるものと思われる ラフィー の捉え方の中で見出すことが可能であり 人事コ の間で進行し続ける 現在進行形の社会的状況 であると指 さて 本稿における問題意識は 従来の人事コンサルティ 摘する そして このような現場の特異性を踏まえたエスノ ングの 現場理解 の方法に由来する コンサルタントとク 577
Vol.9 No.4 7 4. 4.1 S S 1500 80% 50 40 S P P P 4.2 P P4 8 P 8 7 6 7 6 5 6 5 5 4 4 4 3 3 3 2 2 2 1 1 1 4 578
579 5 6 7 P P 9 11 5. 25 26 10 11 1 2 3 3 5
Vol.9 No.4 4 ODA NGO 5 13 6 18 7 22 23 8 9 24 10 27 11 28 1 2006 2 2008 3 24 1 pp.46-59 1991 4 159 1 pp.55-87 1989 5 85 pp.11-34 2009 6 Leonard, D. and Rayport, J.F.: Spark innovation through empathic design, Harvard Business Review, 75, 6, pp.102-113, 1997. 7 27 2 pp.18-28 2007 8 TOTO 2005 9 3 pp.2-9 2002 10 SE FUJITSU 59 6 pp.630-635 2008 11 580
2009 12 2000 13J. 2003 14 14 4 pp.12-15 2008 15 112 pp.4-7 2006 16 17 2 pp.1-7 2008 17 14 4 pp.8-11 2008 18 6 4 pp.59-66 2006 19 2 pp.3-16 2002 20 21 2 pp.177-182 2006 21p.67 2001 22 976 pp.4-22 2005 23 2007 24 1983 25 A 4 pp.29-50 1993 26 A A 470 pp.14-40 1998 27 49 1 pp.132-150 2001 28 42 4 pp.21-36 2009 2001 581