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したがって, 本件売却は,362 条 4 項 1 号に基づき取締役会決議が必要である 2) 利益相反取引に該当するか (356 条 1 項 2 号,3 号 ) 甲社は取締役会設置会社であるから, 本件売却が甲社において直接取引または間接取引に該当するときも,356 条 1 項 2 号または3 号,3

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利益相反取引規制 1 利益相反取引 承認を要しない利益相反取引 LQ220 頁, 田中 239 頁 ⑴ 利益相反取引会社と取締役の利益が相反する場合, 取締役が私心を去って会社の利益のために自己を犠牲にすることを常に期待することが困難であり, 会社が害されるおそれがある そこで, 利益相反取引 (

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示して, 理事会の招集を請求することができる ( 同条第 2 項 ) この請求のあった日から 5 日以内に, 当該請求があった日から 2 週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合には, 当該請求をした理事は, 理事会を招集することができる ( 同条第 3 項 ) 監事は,

(2) 変更の内容 定款変更の内容は別紙のとおりであります (3) 日程 定款変更のための株主総会開催日平成 28 年 6 月 17 日 ( 金曜日 ) 定款変更の効力発生日平成 28 年 6 月 17 日 ( 金曜日 ) 以上 - 2 -


取締役会規定


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指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

平成  年(行ツ)第  号

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とを条件とし かつ本事業譲渡の対価全額の支払と引き換えに 譲渡人の費用負担の下に 譲渡資産を譲受人に引き渡すものとする 2. 前項に基づく譲渡資産の引渡により 当該引渡の時点で 譲渡資産に係る譲渡人の全ての権利 権限 及び地位が譲受人に譲渡され 移転するものとする 第 5 条 ( 譲渡人の善管注意義

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できない状況になっていること 約 6 分間のテレビ番組中で 2 分間を超える放映を し たこと等を理由に損害賠償請求が認容された X1 X2 および Y の双方が上告受理申立て 2 判旨 :Y1 敗訴部分破棄 請求棄却 X1,X2 敗訴部分上告却下ないし上告棄却最高裁は 北朝鮮の著作物について日本国

て 次に掲げる要件が定められているものに限る 以下この条において 特定新株予約権等 という ) を当該契約に従つて行使することにより当該特定新株予約権等に係る株式の取得をした場合には 当該株式の取得に係る経済的利益については 所得税を課さない ただし 当該取締役等又は権利承継相続人 ( 以下この項及

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社法の成立に伴い行われた法改正 ) により 10 万円を特定目的会社の最低資本金の額としていた最低資本金制度の規定は削除されたため 法律上は 特定資本金の額はいくらでもよい (1 円でもよい ) しかし 現在でも特定資本金の額を 10 万円としているケースが多い もっとも 資産の流動化に係る業務の終

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69 判示事項 一取締役会の招集は 各取締役に到達することを要するものと解されるところ 招集通知が各取締役に到達したというためには 当該通知が当該取締役の了知可能な状態に置かれることを要するものと解される 二その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認められるべき特段の事情があるときには 上記瑕疵は決議に影響がないものとして 決議は有効になると解するのが相当である 参照条文 民法九七条一項 会社法三六八条一項 三六九条一項 事実 Y社(被告)は パン 菓子類等の製造 加工 販売その他の事業を営む会社およびこれに相当する事業を営む外国会社の株式を保有することにより 当該会社の事業活動を支配 管理することを目的とする株式会社である Y社招集手続に法令違反があるため取締役会決議には瑕疵があるが その瑕疵が決議の結果に影響がないと認められるべき特段の事情があるとして 当該決議が有効とされた事例 商法六〇二 (東京地判平成二九年四月一三日判時二三七八号二四頁 金判一五三五号五六頁 平成二七年(ワ)第二七八〇六号取締役会決議無効確認等請求事件)

70 法学研究 92 巻 11 号 (2019:11) は 株式譲渡制限会社であり 取締役会 監査役および会計監査人を設置している X(原告)は 日本および韓国を中心として 菓子の製造販売事業など幅広い事業を営んでいるYグループの創業者であり 平成二七年七月二八日当時Y社の代表取締役の地位にあった者であり Yグループ内部では総括会長と呼ばれていた Xの息子であるA(Y社の代表取締役であるBの兄)は 平成二七年一月八日 Y社の株主総会決議によってY社の取締役を解任され これ以降Yグループの経営陣と対立するようになった 平成二七年七月二七日午後〇時頃 AおよびXの娘であるC(Bの姉)その他親族数名は 車いすに乗ったXとともに 合計約一〇名で新宿区所在のY社の本社を訪れた Xらは Y社本社内に入構後 一二階の大会議室に滞在し Y社の部長職にある者約一〇名を呼び出し さらに Y社の顧問弁護士に要請の上 D(Y社の社長として招聘される形でY社の代表取締役に就任し 以後 日本におけるYグループの経営を担当 平成二三年頃以降生活の拠点を韓国に移したXの下に毎月一回の頻度で訪れ Y社の業績等の報告のほか 人事の相談等をしていた)とXとの面談の席を設けさせるなどした後 Y社の全従業員がアクセス可能な社内ネット上に 同日付で 1Xを除くY社の取締役D B E F GおよびHがいずれも解任され 2Aが執行役員社長に 従前役員の地位にあったI J Kらがいずれも執行役員専務にそれぞれ選任されたとの内容の役員人事が発令された旨( 本件人事発令 という)を掲載した その後 Aは 館内放送で社員を社員食堂に招集し そこに参集した従業員らに対し 本件人事発令の内容を説明し 今後の経営に向けた抱負を述べた 本件人事発令の内容(役員の選任および解任)は Y社の社内手続や会社法上の手続(取締役会決議 株主総会決議等)を経たものではなかった BおよびDらは Xらが去った後 同日午後七時頃にY社の幹部社員を招集し Xらの来訪にかかる事実経過の説明のほか 本件人事発令は法的効果がないこと 現行経営体制および今後の経営方針に変更がないことなどを説明し 取締役らは 社内ネット上で 本件人事発令が有効なものではない旨の通達を発出したのち 本件人事発令を削除した さらに Xを除く取締役は 翌日以降の対応策を協議し 同日のXらの行動 本件人事発令は Aが判断能力の衰えた高齢のXを利用した暴挙であると判断し 今後このような事態が発生することを防止するにはXを代表取締役から解職する必要があるとの結論に達し 出席者全員がこ

71 れに賛成した Xを除く取締役らは 翌日二八日に臨時取締役会を開催することとし Y 社の人事総務部長Lは Dの指示に基づき七月二七日午後一一時二三分 Xを含む全取締役および監査役MのY社社内において割り当てられている各メールアドレスにあてて 1同月二八日午前九時三〇分からY社本社一一階役員会議室において 臨時取締役会を開催すること 2前記1の日程で取締役会を開催するのは 緊急の必要に基づくものであり Y社の定款二一条三項ただし書に基づく短縮された期間での招集となることなどを記載した電子メール(以下 本件メール という)を送信した Y社の定款二一条三項は 取締役会の招集通知は 会日との三日前までに各取締役及び各監査役に対して発する ただし 緊急の必要があるときは この期間を短縮することができる と規定していた Xは 自らパソコンを操作することがなかったため XのY社社内におけるパソコンは 秘書室において管理されていたが Xに割り当てられていたメールアドレス宛に電子メールが送信されることはなく 秘書室においても同アドレスの受信状況を確認することはなかった 平成二七年七月二八日 取締役会(以下 本件取締役会 という)が開催され Xを除く取締役ら六名およびMがこれに出席し Xを代表取締役会から解職する議案が 出席取締役六名のうちBを除く五名の賛成(Bは自身の父親であるXを代表取締役から解職することに賛成したことが報道された場合の影響等を考慮し 棄権)により可決され 決議(以下 本件決議 という)が成立した Xは 平成二七年七月二八日付取締役会におけるXを代表取締役会における代表取締役から解職する旨の取締役会決議がXに対する適法な招集通知が行われなかった瑕疵により無効であることの確認を求めて訴えを提起した 争点(一)として Xに対して本件取締役会の招集通知を欠いたといえるか 争点(二)として 本件取締役会の開催にあたりY会社の定款二一条三項ただし書が規定する 緊急の必要 があったか 争点(三)として Xが本件取締役会に出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるか が問題となった Xは 当該判決により請求が棄却されたため 控訴を提起した これに対して 東京高裁は 若干第一審判決の文言を改めた部分はあるが ほとんどそのままこれを引用する形で控訴を棄却する判決を下した(東京高判平成二九年一一月一五日金判一五三五号六三頁)

72 法学研究 92 巻 11 号 (2019:11) 判旨 請求棄却 1.争点(一)について 取締役会の招集通知は 各取締役に到達することを要するものと解されるところ 招集通知が各取締役に到達したというためには 当該通知が当該取締役に実際に了知されることまでは要しないものの 当該取締役の了知可能な状態に置かれること(いわゆる支配権内に置かれること)は要するものと解される 前記認定事実によれば Xは 自らパソコンを操作することがなく Y社内におけるXのパソコンは Y社の秘書室において管理されていた上 (略) Y社においてXに割り当てられていたメールアドレスに電子メールが送信されることがなく 秘書室においても 同アドレスの受信状況を確認していなかったのであり かかる状況が本件メールの送信時までに変化していたことを示す証拠はない その他本件全証拠によっても 本件メール送信当時のXにおいて 上記アドレスに取締役会の招集通知が送信されることを予期し得たというべき事情はうかがわれない 以上のような諸事情を総合考慮すると 本件において 本件メールが上記アドレスに係るメールサママーバに記録されたことをもって Xの了知可能な状態に置かれた(支配圏内に置かれた)ということはできない その他 本件メールの内容がXの了知可能な状態に置かれたものと評価すべき事実は見当たらない 加えて 本件メールの送信(平成二七年七月二七日午後一一時二三分)から本件取締役会開会(翌二八日午前九時三〇分)までの間隔が非常に短く かつ 深夜のメール送信であって メールを確認して当該会議への対応を検討するまでの時間的余裕がほとんどないこと等をも考慮すると 実質的に見ても Xに対し本件取締役会の招集通知がされたと評価することは困難である したがって 本件取締役会についてXに対する招集通知がされたということはできず 争点(二)について検討するまでもなく その招集手続には法令違反の瑕疵があるというべきである 2.争点(三)について 取締役会の開催に当たり 取締役の一部の者に対する招集手続を欠くことにより その招集手続に瑕疵があるときは 特段の事情のないかぎり 上記瑕疵がある招集手続に基づいて開かれた取締役会の決議は無効になると解すべきであるが この場合においても その取締役が出席して

73 もなお決議の結果に影響がないと認められるべき特段の事情があるときは 上記瑕疵は決議に影響がないものとして 決議は有効になると解するのが相当である これを本件についてみると Xは Yグループの創業者であり Y社の総括会長という地位にあった 上 Y社の代表取締役であるDが毎月一回定例報告しており Y社の取締役会に上程される議案については事前にXが上程を承認する決裁をしていたこと に鑑みると 本件取締役会当時のXは Y社の取締役会において 相当に強い影響力を有していたものと認められる しかし 前記認定事実のとおり 本件取締役会には Xを除く取締役ら全員が出席しており その出席した取締役らのうち棄権したBを除く全員の賛成をもって本件決議が成立している Xを除く取締役らは 本件取締役会の前夜 顧問弁護士 (略) らも交えて協議をし Aが判断能力の低下したXを利用してY社に混乱をもたらすことなどを防止するために Xを代表取締役から解職するとの意見を形成するに至っており このことについて 反対の意見を述べたり 賛成することにとまどったり 意見を留保したりした者がいたとの事情はうかがわれない 本件人事発令の内容 その発令前後の経緯等も踏まえれば 本件取締役会当時 Xを除く取締役らにおいて Xの判断能力が低下しており そのようなXをAが利用していると判断することもやむを得ない状況であったというべきである そうすると 本件取締役会前夜にXを除く取締役らが形成していた上記意見は 相当の根拠に基づく強固なものであったと推認される 以上によれば XがY社の取締役会において相当に強い影響力を有していたことなどを考慮しても Xが本件取締役会に出席してもなお本件決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるというべきである 研究 判決の結論には賛成するが その理由づけに疑問がある 一本判決は その取締役会を開催するにあたり招集通知を電子メールで送付したが その招集通知を受け取るべき取締役の一人のメールアドレスには それまで会社から電子メールが送付されたことはなく また 本人が高齢でパソコンを自身で操作してそれを確認することができないという事情がある場合に 当該招集通知の了知可能性がないことを理由に招集手続の瑕疵を認めたが その一方 当該

74 法学研究 92 巻 11 号 (2019:11) 取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき 特段の事情 があったと判断して当該取締役会決議を有効と判断している 会社法には 招集通知の方法について直接具体的には規定されていないが 本判決が 電子メールによる取締役会の招集通知の到達について判断をした点と 特段の事情 を認めた先例として 実務上参照すべき判決といえる(谷本誠司 銀行法務21 八二八号六九頁 金田聡 ビジネス法務一九巻二号一〇頁)ため 以下二および三でこの点につき検討する また 取締役会に出席できない特別利害関係人である取締役は 取締役会の議決に加わることはできず(会社法三六九条二項 以下法令名省略の場合は会社法) また 議決に加わることができる取締役の過半数が出席していないと決議の定足数が満たされない(三六九条一項) 当事者は この訴訟において招集通知を受けていない代表取締役がその解職決議において特別利害関係人であることについて争っていないので 判決もこれについて言及してはいないが 当該取締役が代表取締役解職決議において特別利害関係人と解されるならば その取締役が議決に加わることができないことは当該決議の結果に影響がないと認めるべき 特段の事情 にあたると解する可能性があるように思うので 四においてこれについても検討し 五で結論を述べたい なお 本判決及び控訴審判決には それぞれ評釈が出されている(第一審判決について 藤嶋肇 判批 金判一五五三号二頁以下 鳥山恭一 判批 法セミ七六七号一二五頁 近藤光男 判批 法と政治六九巻四号一頁以下 控訴審判決について 弥永真生 判批 ジュリスト一五一九号二頁以下 飯田秀総 判批 法教四五四号一三九頁 矢崎淳司 判批 私法判例リマークス五八号(二〇一九上)九〇頁以下) 二取締役会を招集する場合には 原則として会日の一週間(これを下回る期間を定款で規定した場合にはその期間)前までに 各取締役(監査役設置会社においてはこれに加えて監査役)に対して招集通知を発しなければならないと規定されている(三六八条一項) これらの者の全員の同意があるときには 招集手続を経ることなく開催することができる(同条二項) また 招集通知の方法については 取締役会では 取締役会設置会社の株主総会の場合のような 書面でしなければならないという規制(二九九条二項三項)もないため 書面のほか 口頭による通知も

75 可能であり また 定款または取締役会決議で合理的な招集通知の方法についても定めることができると解釈されている(上柳克郎ほか編 新版注釈会社法(6 ) (有斐閣 昭和六二年)九六 九七頁[堀口亘] 落合誠一編 会社法コンメンタール8 (商事法務 平成二一年)二七五頁 二七六頁[森本滋])ため ファクシミリ 電子メール 電話によって行うことも問題はないと考えられる(龍田節=前田雅弘 会社法大要(第二版) (有斐閣 平成二九年)一二二頁) 招集通知の発送時期についての規定する三六八条一項に関して 発信主義を規定したものであるとの説もあるが(松田二郎=鈴木忠一 条解株式会社法(上)(再版) (弘文堂 昭和二六年)二七七頁) 通説は 到達主義をとると解する(上柳ほか編 前掲九六頁[堀口] 落合編 前掲二七三頁[森本])等) 株主総会においては株主に対する招集通知の発送についての規定があり(二九九条) また 株主に対する通知は通常到達すべきであった時に 到達したものとみなす と規定されているが(一二六条二項) 当該株主に対する通知到達擬制の規定は 隔地者に対する意思表示に関する到達主義を前提に 多数の株主に対する通知を画一的に処理するため会社に便宜を図り 到達を擬制する特則と解するべきであろう これに対して このような特別の規定がない 取締役会の招集通知においては 当然 取締役に対する招集通知は到達することを必要とすると考えるべきである 招集通知の法的性質は観念の通知であり準法律行為と考えられるが 特定の相手方に伝達されることを要する限り 民法九七条の規定が準用される(川島武宜= 平井宜雄編 新版注釈民法(3 ) (有斐閣 平成一五年)五一四頁[須永醇]) (なお 現行民法は 隔地者間の意思表示について規定しているが 平成二九年改正民法九七条一項は 隔地者間の意思表示の場合に限る文言を削除して 対話者の場合も含めすべての場合において到達主義をとる旨を明らかにしている) この 到達 について 判例 通説は 必ずしも相手方の了知は必要とせず 了知可能な状態 すなわち 相手方の支配圏内に入っていれば到達したものと考えている(最判昭和三六年四月二〇日民集一五巻四号七七四頁 最判昭和四三年一二月一七日民集二二巻一三号二九九八頁 最判平成一〇年六月一一日民集五二巻四号一〇三四頁) しかし 電子メールによる取締役会招集通知の到達が問題となった先例は乏しい(藤嶋 前掲四頁)ため 電子メール

76 法学研究 92 巻 11 号 (2019:11) 通知がされた場合 その通知が到達した すなわち了知可能な状態に入ったと解される時点はどのような状況であるかを改めて考えてみる必要がある すなわち その意思表示が相手方のメールボックスに即時に到達する点は電話に近いが 相手方が自己のメールボックスにアクセスしなければ 事務所にファクシミリが到達しても見ていない場合と同様であるため 手紙などと同様に考えられる(松本恒夫ほか編 電子商取引法 (勁草書房 平成二五年)一四頁) 電子メールによる意思表示にもこの一般的な解釈を当てはめれば 電子メールが相手方のメールボックスに到達すれば その電子メールを読んでいなくても了知可能な状態に置かれたと考えられる (藤田勝利=工藤聡一編 現代商取引法 (弘文堂 平成二三年)一二九頁)ことになろう しかし 平成一四年に経済産業省が策定し公表した 電子商取引に関する準則 (平成一九年の改訂で 電子取引および情報財取引等に関する準則 と名称変更 令和元年に至るまで一六回の改訂が行われている)においては 電子契約法四条が電子契約の成立時期として定めている 承諾通知が到達した時点 の解釈指針として 電子メールが用いられた場合 受信者(申込者)が指定した又は通常使用するメールサーバー中のメールボックスに読み取り可能な状態で記録された時点 としており これをさらに敷衍すると それ以外の場合においては 受信者がその情報通信機器から情報を取り出してはじめて到達が認められると解するべきとの見解もあり(松本恒雄編 平成二八年版電子商取引及び情報財取引等に関する準則と解説 (別冊NBL一五八号)六一頁) 参考に値する(藤嶋 前掲四頁以下) 本件で X は自らパソコンを操作することがなく 社内にあるX のパソコンは秘書室が管理を行い X に割り当てられていたメールアドレスに電子メールが送信されることはなく 秘書室も同アドレスの受信状況を確認していなかったという事情においては 本件における電子メールによる招集通知は X においてはまさに不意打ちであり 電子メールが到達したと評価できるような了知可能性はないと判断したことについては妥当であると考えられる(この点について 藤嶋 前掲五頁 鳥山 前掲一二五頁 近藤 前掲五頁 弥永 前掲三頁 矢崎 前掲九二頁は それぞれ理由づけは異なるもののこの結論には賛成している) また 会議開催までに招集通知が到達していると解することができる場合においても 判決がさらに述べているように 一般論としては 電子メールの送信から会議開催ま

77 でには適切な時間の余裕があるべきであり かつ 電子メールの送信時刻も深夜である場合には 招集手続に瑕疵があると解するのが自然であろう なお 後程検討するが 解職審議の対象となっている代表取締役自身が特別利害関係人に該当するとの解釈を前提としても 通説は 特別利害関係人にも招集通知をする必要がある(大隅健一郎=今井宏 会社法論中巻(第三版) (有斐閣 平成四年)一九二頁等) その理由は 当該取締役会においては 招集通知において示された取締役会の目的事項以外の事項についても審議し 決議することができるためである(落合編 前掲二七四頁[森本]等) 三一部の取締役への招集通知が欠けた場合においては 招集通知を受けなかった取締役の説得的な雄弁が他の取締役の考えを変更させたかもしれないから 原則 取締役会決議は無効と解されるが 当該取締役が出席しても決議の結果に何等の影響がないことが証明された場合には かかる手続の不備は いわゆる 無害の過失(harmless error ) として 決議の効力は影響を受けないと解する説が提唱された(大濱信泉 取締役と取締役会 田中耕太郎編 株式会社法講座第三巻 (有斐閣 昭和三一年)一〇五八頁) 特段の事情がある場合に 決議の効力を認めるさまざまな見解がある 最高裁も 一部の取締役に招集通知を欠いた場合でも それが決議の結果の影響を与えないと解することができる場合には特段の事由があるとして決議を有効であるとの判決を下し(最判昭和四四年一二月二日民集二三巻一二号二三九六頁) その後の下級審でも この考え方を踏襲したものが多数見られる(東京高判昭和四八年七月六日判時七一三号一二二頁 高松高判昭和五五年四月二四日判タ四一四号五三頁 東京地判昭和五六年九月二二日判タ四六二号一六四頁 東京高判昭和六〇年一〇月三〇日判時一一七三号一四〇頁 近藤 前掲六頁以下は これらを詳しく検討している) これに対して 特段の事由を広く認めることについては 学説は以前から否定的な見解を示してきた(鈴木竹雄=竹内昭夫 会社法(第三版) (有斐閣 平成六年)二八一頁 さらに現行法の解釈として 江頭憲治郎 会社法(第七版) (有斐閣 平成二九年)四二五頁 四二六頁) さらに 特段の事情を認めるとしてもそれを慎重にあるいは限定的に用いるべきことについても 以下のような見解が示されている(大隅=今井 前掲一九三頁は 特段の事情を認めるとしても その証明は通

78 法学研究 92 巻 11 号 (2019:11) 常困難であるとし 田中誠二 会社法詳論上巻(三全訂) (勁草書房 平成五年)五九八頁も 権利濫用や信義則違反にあたる場合などごく限定的な事例に限定する 落合編 前掲三〇〇頁[森本]も同旨) 前掲最高裁昭和四四年一二月二日判決の調査官解説は 学説からの批判を考慮して 決議の結果に影響を及ぼさない事情といっても 本判決が 通知漏れの取締役が出席したと仮定した場合に その取締役の議決権の行使の結果が賛否いずれであっても すなわち 決議と反対の側に投票されていても 票数の上で決議を動かすに足りないという場合までを含む趣旨ではな いとして 事案を限定する必要性を主張しており 少数の会議体では 人的意見が重視されることにかんがみれば右の例のように その取締役が他の取締役との関係で取締役会において占める実質的影響力 その取締役について予想される意見 立場と決議の関係から判断して 同人の意見が決議の結果を動かさないであろうことが確実に認められるような場合がこれにあたるといえようか としており( 最高裁判所判例解説民事篇昭和四四年度(下) (法曹会 昭和四七年)六九二頁 六九三頁) 特段の事情 を慎重に判断することを求めている 本判決の評釈においても 判決の考え方を支持して決議の効力を有効と解したことに賛成する見解もある一方(矢崎 前掲九三頁) おそらく 当該事例のような招集手続の違反ある場合には 法の予定する取締役会の趣旨を逸脱する程度の甚だしい瑕疵と解して 瑕疵そのものが重大であれば 結果への影響の有無を問わず その取締役会決議は無効になると解するべきであるとの見解(前田雅弘 判批(前掲東京高判昭和六〇年一〇月三〇日判決の評釈) 商事法務一一八四号四四頁)と同様の考え方により 本件評釈においても 取締役会の招集通知の欠缺は重要な法令違反であるため 特段の事情を認めることはできず 決議は無効と解するべきであるとする見解(飯田 前掲一三九頁) および 取締役会の外側で多数派の取締役が強固な意思決定を行えば 常に 決議の結果に影響がないことになるため 取締役会制度を認めた法の趣旨が没却されることになるとの見解(弥永 前掲三頁)も見られる これらのことを勘案すると 特段の事情 を認めるためには 本判決のように取締役会が開催される前の事実関係を前提とし 解職の対象となっている代表取締役がもし出席したとしても 結果として他の取締役の意思には変更がなかったであろうとの仮定の下であったとしても 特段の事情

79 を認めて決議を有効としたことについては 疑問が残る 四代表取締役の解職決議において解職の対象となっている代表取締役が特別利害関係人であるか否かについては 学説 判例の見解は激しく対立している論点である 最高裁昭和四四年三月二八日判決(民集二三巻三号六四五頁)は 代表取締役の解任(解職)決議において当該代表取締役は特別利害関係人にあたると判示し その理由を けだし 代表取締役は 会社の業務を執行 主宰し かつ会社を代表する権限を有するものであって(商法二六一条三項 七八条) 会社の経営 支配に大きな権限と影響力を有し したがって 本人の意志に反してこれを代表取締役の地位から排除することの当否が論ぜられる場合においては 当該代表取締役に対し 一切の私心を去って 会社に対して負担する忠実義務(商法二五四条三項 二五四条ノ二参照)に従い公正に議決権を行使することは必ずしも期待し難く かえって自己個人の利益を図って行動することすらあり得るのである それゆえ かかる忠実義務違反を予防し 取締役会の決議の公正を担保するため 個人として重大な利害関係を有する者として 当該取締役の議決権の行使を禁止するのが相当だからである と述べている(ただし この判例は 昭和五六年改正前商法下におけるものである) この判例を肯定する学説は 取締役会決議における特別利害関係人を 特定の取締役が 当該決議について 会社に対する忠実義務を誠実に履行することが定型的に困難とみられる個人的利害関係ないしは会社外の利害関係 と解し 取締役会の決議の公正を担保することに力点を置く立場(肯定説)が相変わらず多数説であろう(落合編 前掲二二一頁 二二二頁[落合]等) これに対して 特別利害関係人を議決から排除しなければならない事由は取締役の忠実義務と矛盾する個人的利害関係に限るべきであり 当該事例は取締役間の利害対立はあっても 会社と取締役間の利害対立はないことを根拠として特別利害関係人ではないとする否定説(鈴木=竹内 前掲二八〇頁 北沢正啓 会社法(第六版) (青林書院 平成一三年)三九〇頁 龍田=前田 前掲一二二頁 一二三頁 江頭 前掲四二二頁は 閉鎖会社においてはこの立場をとる) 当該代表取締役の解職が一般的な取締役会の業務執行の一環によりなされるか あるいは取締役会の監督権としてなされるか等の場合を分けて 特別利害関係人に該当するか否かを考える 折衷説がある(稲田俊信 取締役会の解任権とその手続 法律のひろば三六巻三号四八頁 出

80 法学研究 92 巻 11 号 (2019:11) 口正義 株主権法理の展開 (文眞堂 平成三年 三一〇頁 三一一頁等) 最近の判例であるが 取締役の一部に招集通知を欠いて行われた取締役会決議の効力について 前掲昭和四四年一二月二日最高裁判決を引用し ある取締役会決議に関して 特別の利害関係を有する取締役 は 議決に加わることができず(会社法三六九条二項) 定足数にも参入されない(同条一項) そして そのように会議の定足数からも除外されていること 審議と採決とを明確に区分することは通常困難であることなどを考慮すれば 特別利害関係人たる取締役は 当該決議に関しては 議決に加わることができないだけでなく 取締役会の構成員として審議に参加して意見を述べる権限も有しておらず 退席を求められたときは直ちにそれに従わなければならないものと解するのが相当である として 当該取締役会決議には 瑕疵があるものの 上記 その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認められるべき特段の事情 があるものとして 有効と解するのが相当である と結論づけたものがある(東京地判平成二三年一月七日資料版商事法務三二三号六七頁) 会社法は特別利害関係人である取締役は議決に加わることができないこと(三六九条二項)と 議決に加わることができない取締役は取締役会の定足数の算定の基礎から除外されること(同条一項)を規定しているが 特別利害関係人が取締役会の審議にも参加することができるかという点においては 特別利害関係人に取締役会への出席権 意見陳述権を認める説はむしろ少数であり 多数説は 取締役会が特別利害関係人の釈明を聞く必要があるなどの判断があれば審議に参加させることはできるが 特別利害関係人には取締役会の出席あるいは意見陳述に関する権利が認められるのではないとする 前掲東京地判平成二三年一月七日判決も この旨を明らかにしているといってよい 特別利害関係人が取締役会に参加した場合の影響力を考えると 同人が議決権を行使できないということのみでは 決議の結果に影響を与えないとするには足りないが 取締役会が審議参加を否定し審議の過程においても参加しない場合は 取締役会の決議の結果に影響を与える余地はないので 特段の事情 が認められると解することができるのではないだろうか(落合編 前掲三〇一頁[森本] 藤嶋六頁 鳥山 前掲一二五頁 近藤 前掲一二頁および一四頁) (これに対して 来住野究 判批(東京地判平成二三年一月七日の評釈) 明治学院大学法学研究九九号一一

81 四頁は 以上の議論と異なり 行為規範として 特別利害関係にも招集通知は送るべきであることは認めながら 招集通知の議題として予定されていた件の決議については 特別利害関係人は定足数算定の基礎となる取締役総数にも算入されない以上 招集通知を送らなくても 決議を無効とすべき違法はないとする) 五本件においては 当該解職決議においける解職代表取締役に対する招集通知が電子メールでなされた場合 通常は客観的な状況 すなわち メールボックスに電子メールが届いた時点で到達があったと考えるべきであるが 当該事例において 当該会社ではその代表取締役に通常電子メールによる連絡を行っておらず また 代表取締役が電子メールによって通知を受けることを予想もしていなかった そのことから 当該代表取締役に取締役会の招集通知は到達していないと解することができ この瑕疵は重大なものと認めることができるため 原則としては 当該取締役会決議を無効と解するべきである また 本判決は 招集手続の瑕疵があっても 決議の結果に影響を与えないと解することができる 特段の事情 があれば取締役会決議を有効と解しているが この 特段の事情 はあまり広く認めるべきではない 本件のように 解職代表取締役を除いた取締役が前日確認しあった考えが翌日の取締役会決議においても翻意されないであろうということを重視すると 取締役会の外の事情が取締役会に反映されてしまい 結果として取締役会の意義が失わせることにつながるのではないかということが危惧される しかし もしもそうであるならば 当該判決の結論も誤りであるといえるのであろうか 代表取締役が取締役会によって解職されるという場合 当該代表取締役が特別利害関係人に該当するため 当該決議において代表取締役は解職決議において審議に加わることも議決権を行使することもできなかったことを 特段の事情 と解する余地があり この点を考慮にいれるならば 当該取締役会決議の効力を有効と解することができたのではないかと考える 鈴木千佳子