子 宮 頚 がんはワクチンで 予 防 できる 50 歳 代 に 多 い 子 宮 体 がん 子 宮 体 がんは 女 性 ホルモンのエストロゲンの 割 合 がプロゲステロンより 高 くなる 状 態 が 長 く 続 くと 発 生 します ちょうど 更 年 期 から 閉 経 期 がその 時 期 に 一 致 するので 50 歳 代 がピークとなるわけです エストロゲンは 卵 巣 だけ でなく 脂 肪 からも 作 られるため 肥 満 も 危 険 な 因 子 と 言 えるでしょう また 妊 娠 や 出 産 の 期 間 中 はエストロゲン が 低 下 しますが その 機 会 がなかった 人 も 要 注 意 です 体 がんの 発 生 率 はそれほど 多 くはありません けれども 異 常 な 性 器 出 血 があったときは 子 宮 内 膜 を 採 取 する 検 査 を 受 けてください( 図 -1) 若 い 女 性 に 増 えてきた 子 宮 頚 がん 子 宮 頚 がんは 世 界 的 にがんで 死 亡 する 女 性 の 第 2 位 を 占 めています 早 期 に 見 つけさえすれば 死 ぬこともなく 初 期 の 段 階 で 完 治 できるのですから どの 国 も 定 期 検 診 を 予 防 策 の 第 1 としています 日 本 ではこれまで 40 代 の 発 生 率 が 高 かったのですが 近 年 では 25~29 歳 の 世 代 に 急 増 し 30~34 歳 の 世 代 では 20 年 前 の 3 倍 以 上 に 35~39 歳 は 1.5 倍 に 達 しました( 図 -2) 子 宮 頚 がんとは 子 宮 の 膣 部 の 粘 膜 ( 重 層 扁 平 上 皮 )と 頚 部 の 粘 膜 ( 高 円 柱 上 皮 )の 境 界 の 部 分 は びらん 状 になっていて 傷 つきやすい ので 常 に 修 復 が 繰 り 返 されています この 移 行 帯 ( 図 -3)の 部 分 に 性 行 為 の 刺 激 と ヒトパピローマウイルス(HPV) の 感 染 が 長 期 間 重 なったとき 細 胞 の 顔 つきが 悪 くなったのが 前 がん 状 態 の 異 形 成 軽 度 と 中 等 度 の 少 し 進 ん だ 異 形 成 は 自 然 に 治 癒 する 可 能 性 が 高 いと 言 われています 異 形 成 が 高 度 になれば 治 療 をしなければなりません このとき 細 胞 内 に 遺 伝 子 の 異 常 が 4 ヶ 所 あると がん 細 胞 がまだ 粘 膜 の 上 皮 に 限 局 している 上 皮 内 がんに また 9 ヶ 所 あると 進 行 して 周 囲 に 浸 潤 するがんになると 考 えられています( 図 -4)
ヒトパピローマウイルス(HPV) ヒトパピローマウイルスはありふれたウイルスで これまで 90 以 上 のタイプが 見 つかっています パピローマと は 乳 頭 腫 イボ という 意 味 で この 6 11 型 は 外 陰 部 のイボである 尖 圭 コンジローマを 1 2 型 は 皮 膚 のイボ を 作 ります 頚 がんに 関 与 するのはこれらとは 別 の 16 や 18 型 ( 図 -5)を 含 めた 6 つのタイプであることがわかりま した しかも 頚 がんを 起 こすウイルスは 性 行 為 によって 男 性 からほとんどの 女 性 に 感 染 するのです 男 性 はこれら のウイルスを 持 っていても 自 覚 症 状 はなく 陰 茎 がんにかかるわけではありません また パピローマウイルスに 感 染 した 女 性 が 必 ず 発 病 するわけでもないのです 女 性 の 9 割 は 免 疫 の 働 きで 1~2 年 の 間 にウイルスを 体 外 に 排 出 し 一 過 性 で 終 わってしまうので 性 行 為 感 染 症 とも 言 えません 前 述 のように 細 胞 内 に 遺 伝 子 の 異 常 を 持 つ 人 あるいは 性 交 年 齢 が 早 くてその 後 に 多 数 のパートナーとの 性 行 為 があれば それだけ 感 染 率 が 上 昇 するわけ で これらが 発 症 の 原 因 となるのでしょう
子 宮 頚 がんの 検 査 と 症 状 治 療 運 悪 く 移 行 帯 への 性 行 為 の 刺 激 とパピローマウイルスの 感 染 が 長 期 間 に 重 なったとしても 子 宮 頚 がんになるま でには 平 均 10 年 かかります 最 近 は 若 い 女 性 に 頚 がんが 増 えてきましたので 平 成 16 年 厚 生 労 働 省 は 20 歳 に なったら 2 年 に 1 回 は 定 期 検 診 を 受 けるようにと 勧 告 を 出 しました 細 胞 診 は 綿 棒 やブラシで 子 宮 膣 部 の 移 行 部 分 を 擦 って 細 胞 をとり( 図 -6) 染 色 して 顕 微 鏡 で 細 胞 質 に 比 べて 核 が 大 きくなっていないか 細 胞 分 裂 の 傾 向 が 増 え ていないかなどを 調 べます( 表 ) 細 胞 診 による 子 宮 頚 がんの 発 見 率 は 6 割 程 度 です しかし 1 回 の 検 診 で 見 つから なくても 定 期 検 査 を 繰 り 返 せばそれだけ 見 逃 す 頻 度 も 減 るでしょう アメリカでは 細 胞 診 とパピローマウイル スの DNA 検 査 を 併 用 して 100% 子 宮 がんが 発 見 できるそうです 細 胞 診 のクラス 2 は 核 や 分 裂 像 などに 少 し 異 常 が あるけれど 正 常 の 範 囲 内 である クラス 3a は トリコモナス 膣 炎 やポリープ 頚 管 の 炎 症 があるせいで 悪 性 を 少 し 疑 う 3b は かなり 悪 性 を 疑 うという 判 定 です 3a になると 精 密 検 査 を 行 いますが 2 から 3a さらに 3b に 進 むのはごくわずかで しかも 急 には 進 行 しません 鉗 子 で 異 常 な 部 分 の 組 織 をとったり 子 宮 頚 部 を 円 錐 状 に 切 除 して 診 断 した 結 果 ( 図 -7) がんが 子 宮 の 筋 層 に 入 り 込 んでいるような 場 合 には 多 分 性 交 時 の 出 血 もあったでしょう こうなると 子 宮 を 摘 出 するだけでなく 周 囲 の 付 属 器 やリンパ 節 を 広 範 囲 に 摘 除 したり 化 学 療 法 や 放 射 線 治 療 法 を 併 用 します ヒトパピローマウイルス 感 染 を 予 防 するワクチンが 開 発 された 欧 米 の 女 性 の 子 宮 がんの 原 因 は ほとんどが 16 や 18 型 のパピローマウイルスです 今 この 2 つのウイルスをタ ーゲットにしたワクチンが 11~12 歳 の 女 性 に 公 費 で 接 種 されています 6 カ 月 間 に 3 回 の 接 種 で 10 年 以 上 の 予 防 効 果 が 期 待 できるのですが 問 題 は 性 行 為 があってからの 接 種 では 予 防 効 果 が 落 ちること それに 少 ないとは 言 え 16 や 18 型 以 外 のウイルスによる 頚 がんを 予 防 できないことです 日 本 人 の 場 合 16 や 18 型 のほかに 52 58
の 4 つの 型 をカバーしなければなりません ここ 1~2 年 の 内 に 国 内 向 けのワクチンが 開 発 されて わが 国 の 女 性 も 子 宮 頚 がんから 解 放 される 日 がきっと 来 るでしょう 子 宮 頚 癌 ワクチン(サーバリックス) 1) 子 宮 頸 がん 発 症 の 主 要 な 原 因 である 発 がん 性 ヒトパピローマウイルス(HPV)の 16 型 と 18 型 の 感 染 を 予 防 するワク チンです 2)GSK 独 自 のアジュバント( 免 疫 増 強 剤 )AS04 を 使 用 することで 自 然 感 染 の 11 倍 の 抗 体 価 を 長 期 間 維 持 します 3)HPV 16 型 と 18 型 の 持 続 感 染 HPV 16 型 もしくは 18 型 が 関 与 する 前 がん 病 変 (CIN2+ CIN3+)の 発 症 を 92.3~100% 予 防 します Cervical intraepithelial neoplasia( 子 宮 頸 部 上 皮 内 腫 瘍 ) 上 皮 内 に 限 局 する 異 形 成 と 上 皮 内 がんのこと 子 宮 頸 部 表 面 の 細 胞 が 異 常 増 殖 したのが 子 宮 頸 部 異 形 成 で 前 がん 状 態 と 考 えられます CIN1 CIN2 および CIN3 の 3 段 階 があります 4)10 歳 以 上 の 女 性 が 接 種 対 象 です 通 常 0 1 6 ヵ 月 後 に 3 回 上 腕 三 角 筋 部 に 筋 肉 内 接 種 します 5)< 副 反 応 > 国 内 臨 床 試 験 において 本 剤 接 種 後 7 日 間 に 症 状 調 査 日 記 に 記 載 のある 612 例 のうち 局 所 ( 注 射 部 位 )の 特 定 した 症 状 の 副 反 応 は 疼 痛 606 例 (99.0%) 発 赤 540 例 (88.2%) 腫 脹 482 例 (78.8%)であった また 全 身 性 の 特 定 した 症 状 の 副 反 応 は 疲 労 353 例 (57.7%) 筋 痛 277 例 (45.3%) 頭 痛 232 例 (37.9%) 胃 腸 症 状 ( 悪 心 嘔 吐 下 痢 腹 痛 等 )151 例 (24.7%) 関 節 痛 124 例 (20.3%) 発 疹 35 例 (5.7%) 発 熱 34 例 (5.6%) 蕁 麻 疹 16 例 (2.6%)であった 海 外 臨 床 試 験 において 本 剤 接 種 後 7 日 間 に 症 状 調 査 日 記 に 記 載 のある 症 例 のうち 局 所 ( 注 射 部 位 )の 特 定 した 症 状 の 副 反 応 は 7870 例 中 疼 痛 7103 例 (90.3%) 発 赤 3667 例 (46.6%) 腫 脹 3386 例 (43.0%)であった また 全 身 性 の 特 定 した 症 状 の 副 反 応 は 疲 労 頭 痛 胃 腸 症 状 ( 悪 心 嘔 吐 下 痢 腹 痛 等 ) 発 熱 発 疹 で 7871 例 中 それぞれ 2826 例 (35.9%) 2341 例 (29.7%) 1111 例 (14.1%) 556 例 (7.1%) 434 例 (5.5%) 筋 痛 関 節 痛 蕁 麻 疹 で 7320 例 中 それぞれ 2563 例 (35.0%) 985 例 (13.5%) 226 例 (3.1%)であった 局 所 の 上 記 症 状 は 大 部 分 が 軽 度 から 中 等 度 で 3 回 の 本 剤 接 種 スケジュール 遵 守 率 へ 影 響 はなかった また 全 身 性 の 上 記 症 状 は 接 種 回 数 の 増 加 に 伴 う 発 現 率 の 上 昇 はみられなかった ( 承 認 時 ) 6) 重 大 な 副 反 応 注 ショック アナフィラキシー 様 症 状 ( 頻 度 不 明 1) ):ショック 又 はアナフィラキシー 様 症 状 を 含 むアレルギー 反 応 血 管 浮 腫 が あらわれることがあるので 接 種 後 は 観 察 を 十 分 に 行 い 異 常 が 認 められた 場 合 には 適 切 な 処 置 を 行 うこと サーバリックスは 子 宮 頸 がん 発 症 リスクの 高 い HPV 16/ 18 の 感 染 を 防 ぎ 子 宮 頸 がんを 予 防 します 効 能 効 果 ヒトパピローマウイルス(HPV)16 型 及 び 18 型 感 染 に 起 因 する 子 宮 頸 癌 ( 扁 平 上 皮 細 胞 癌 腺 癌 ) 及 びその 前 駆 病 変 ( 子 宮 頸 部 上 皮 内 腫 瘍 (CIN)2 及 び 3)の 予 防 効 能 効 果 に 関 連 する 接 種 上 の 注 意 HPV-16 型 及 び 18 型 以 外 の 癌 原 性 HPV 感 染 に 起 因 する 子 宮 頸 癌 及 びその 前 駆 病 変 の 予 防 効 果 は 確 認 されていない 接 種 時 に 感 染 が 成 立 している HPV の 排 除 及 び 既 に 生 じている HPV 関 連 の 病 変 の 進 行 予 防 効 果 は 期 待 できない 本 剤 の 接 種 は 定 期 的 な 子 宮 頸 癌 検 診 の 代 わりとなるものではない 本 剤 接 種 に 加 え 子 宮 頸 癌 検 診 の 受 診 や HPV への 曝 露 性 感 染 症 に 対 し 注 意 することが 重 要 である 本 剤 の 予 防 効 果 の 持 続 期 間 は 確 立 していない 図 :サーバリックスの 効 果
Cervical intraepithelial neoplasia( 子 宮 頸 部 上 皮 内 腫 瘍 ) 上 皮 内 に 限 局 する 異 形 成 と 上 皮 内 がんのこと 子 宮 頸 部 表 面 の 細 胞 が 異 常 増 殖 したのが 子 宮 頸 部 異 形 成 で 前 がん 状 態 と 考 えられます CIN1 CIN2 および CIN3 の 3 段 階 がありま す サーバリックスは HPV 16/18 の L1 タンパクを 抗 原 としています サーバリックスは 子 宮 頸 がん 発 症 リスクの 高 い HPV 16/18 の L1 タンパクのみからできたウイルス 様 粒 子 (VLPvirus-like particle)を 抗 原 としています L1 タンパクは HPV の 殻 (カプシド)の 主 な 成 分 で 強 い 免 疫 原 性 を 持 ちます VLP には HPV の 遺 伝 物 質 が 含 まれていないため 感 染 性 はありません Stanly M:Vaccine 24(supple 1):S16-S22, 2006 サーバリックスには グラクソ スミスクラインが 独 自 に 開 発 した 長 期 間 にわたり 強 力 な 免 疫 応 答 を 維 持 させる AS04 アジ ュバントが 含 まれています
MPL:モノホスホリル 脂 質 A ある 細 菌 の 外 膜 の 成 分 を 無 毒 化 したもので 抗 原 に 対 する 免 疫 応 答 を 増 強 します サーバリックスの 接 種 対 象 は 10 歳 以 上 の 女 性 で 0 1 6 ヵ 月 後 の 3 回 接 種 が 必 要 です サーバリックスの 接 種 対 象 は 10 歳 以 上 の 女 性 であり その 効 果 は 成 人 より 小 児 で 高 いと 考 えられています(3/5 参 照 ) 十 分 な 抗 体 価 を 得 るためには 上 腕 三 角 筋 部 の 筋 肉 内 に 0 1 6 ヵ 月 後 の 3 回 接 種 することが 必 要 です 三 原 からの この 予 防 接 種 のお 勧 めは 10 歳 以 上 の 女 性 に3 回 接 種 する 1 回 目 2 回 目 (1 回 目 の1ヶ 月 後 ) 3 回 目 (1 回 目 の6ヶ 月 後 ) 初 交 開 始 年 齢 前 に 注 射 するのが 一 番 良 いと 言 われています だから 海 外 では12 歳 前 後 の 小 児 に 対 する 優 先 的 な 接 種 が 行 われています 日 本 人 女 性 の 初 交 歴 は 都 市 部 でも 地 方 でも 70% 以 上 は 高 校 生 時 代 ということを 考 慮 す ると 遅 くとも 中 学 卒 業 前 までにサーバリックスを 接 種 するのが 良 いのではないかと 思 います 海 外 での 12 歳 前 後 での 接 種 を 日 本 でも 実 施 するのが 良 いとおもいます 問 題 はワクチンの 値 段 が 高 額 であることです グラクソ スミスクライン 社 のワクチン 希 望 小 売 価 格 が1 回 分 12,600 円 ( 消 費 税 込 み)なので それに 診 察 料 や 技 術 料 等 を 加 えると 医 療 機 関 での 接 種 料 金 は 1 回 が15,000 円 位 になり 自 費 接 種 であることを 考 え ると 日 本 で 接 種 が 進 まないのではないかと 案 じております 公 費 での 接 種 になるように 運 動 をしていかなければ いけないと 思 います これには 医 療 関 係 者 だけでなく 生 徒 や 親 も 一 緒 になって 声 を 上 げていかなければいけませ ん 用 法 用 量 10 歳 以 上 の 女 性 に 通 常 1 回 0.5mL を 0 1 6 ヵ 月 後 に 3 回 上 腕 の 三 角 筋 部 に 筋 肉 内 接 種 する 用 法 用 量 に 関 連 する 接 種 上 の 注 意 他 のワクチン 製 剤 との 接 種 間 隔 : 生 ワクチンの 接 種 を 受 けた 者 は 通 常 27 日 以 上 また 他 の 不 活 化 ワクチンの 接 種 を 受 けた 者 は 通 常 6 日 以 上 間 隔 を 置 いて 本 剤 を 接 種 すること 図 :サーバリックスの 接 種 スケジュール