分 子 イメージング 研 究 戦 略 推 進 プログラムの 概 要 背 景 分 子 イメージングとは 特 定 物 質 を 生 体 内 の 病 変 部 等 に 対 して 分 子 レベルで 反 応 させ 画 像 化 する 医 療 技 術 である 中 でも PET(ポジトロン エミッ ション トモグラフィ)は 主 に 形 態 を 観 察 するCTやMRI 等 と 違 い 質 的 診 断 が 可 能 であることから 現 在 ではがん 診 断 で 保 険 収 載 される 等 既 に 実 用 化 さ れている 今 後 新 たなPETプローブ( 薬 剤 ) 開 発 により 超 早 期 画 像 診 断 や 予 防 への 応 用 医 薬 品 開 発 等 が 可 能 になる 等 臨 床 展 開 が 最 も 期 待 される PET 撮 像 の 実 際 特 定 物 質 + ラジオ アイソトープ 標 識 本 プログラムの 目 的 放 射 性 薬 剤 (PETプローブ) 投 与 撮 影 PET-CT 装 置 臨 床 現 場 への 応 用 医 薬 品 開 発 への 応 用 画 像 化 PET 画 像 がんや 認 知 症 等 特 定 の 疾 患 に 対 して 早 期 診 断 等 に 応 用 可 能 本 プログラムは PET 技 術 を 応 用 し 新 たなPETプローブ( 薬 剤 )の 研 究 開 発 とヒトでのPOC(Proof of Concept)を 取 得 することにより がんや 認 知 症 を 対 象 とした 疾 患 病 態 解 明 や 革 新 的 診 断 治 療 法 を 確 立 するとともに 医 薬 品 開 発 における 創 薬 候 補 物 質 の 標 識 化 による 薬 物 動 態 評 価 や 薬 効 薬 理 評 価 等 を 可 能 とする 新 たな 創 薬 プロセス 技 術 を 確 立 することを 目 的 とする 基 礎 的 研 究 動 物 でのPOC 取 得 ヒトでのPOC 取 得 臨 床 応 用 ラジオ アイソトープ + 特 定 物 質 標 識 PETプローブ 開 発 ( 共 通 プロセス) 放 射 性 薬 剤 (PETプローブ) 結 合 例 ) 18 F-FDG( 保 険 収 載 ) 11 C-PBB3 Cu-ATSM Cu-DOTA-TRMab 特 定 の 細 胞 や 物 質 に 対 して 分 子 レベルで 結 合 例 ) 疾 患 特 異 性 の 核 酸 タンパク 等 創 薬 候 補 物 質 各 疾 患 研 究 及 び 創 薬 開 発 に 応 じた 特 定 物 質 と 各 アイソトープの 組 合 わせと 最 適 化 PETプローブ 静 脈 投 与 他 の 画 像 診 断 では 難 しい 分 子 レベル の 高 い 質 的 診 断 薬 剤 の 集 積 分 布 代 謝 等 のリアル タイムでの 画 像 化 Ⅰ 臨 床 現 場 への 応 用 難 治 性 がんの 超 早 期 診 断 がんや 認 知 症 の 進 行 度 重 症 度 診 断 他 の 画 像 診 断 では 得 られない 高 い 質 的 鑑 別 診 断 等 現 場 ニーズに 見 合 った 画 像 診 断 Ⅱ 医 薬 品 開 発 への 応 用 ヒトの 生 体 を 用 いた 薬 物 動 態 評 価 ヒトの 生 体 を 用 いた 薬 効 薬 理 評 価 非 臨 床 試 験 を 廃 した 創 薬 プロセスの 効 率 化 と 質 の 向 上 を 目 指 す 1
分 子 イメージング 研 究 戦 略 推 進 プログラムの 概 要 これまでの 取 り 組 み 第 1 期 プログラム ( 平 成 17~21 年 度 ): 分 子 イメージング 研 究 の 基 盤 技 術 開 発 施 設 設 備 整 備 人 材 育 成 を 行 う 研 究 拠 点 を 設 置 特 に 大 学 等 との 共 同 研 究 を 実 施 し 分 子 イメージング 研 究 分 野 でオールジャパン 研 究 体 制 を 構 築 創 薬 候 補 物 質 探 索 拠 点 理 化 学 研 究 所 ライフサイエンス 技 術 基 盤 研 究 センター 共 同 研 究 大 学 等 PET 疾 患 診 断 研 究 拠 点 放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 分 子 イメージング 研 究 センター 共 同 研 究 大 学 等 第 2 期 プログラム ( 平 成 22~26 年 度 ): 社 会 的 ニーズの 高 いがんと 認 知 症 の 研 究 分 野 に 重 点 化 がんと 認 知 症 の 機 能 解 明 を 促 進 し 革 新 的 早 期 診 断 治 療 技 術 の 実 用 化 に 向 けたPOC (Proof of Concept) 取 得 を 目 標 に 推 進 がん 分 野 と 認 知 症 分 野 に 重 点 化 臨 床 に 向 けたPOC 取 得 若 手 研 究 者 に 対 する 高 度 専 門 人 材 育 成 臨 床 現 場 への 応 用 医 薬 品 開 発 への 応 用 2
分 子 イメージング 研 究 戦 略 推 進 プログラムの 実 施 体 制 プログラムディレクター 創 薬 候 補 物 質 探 索 拠 点 がん 分 野 の 共 同 研 究 機 関 プログラムオフィサー(がん 分 野 ) プログラムオフィサー( 認 知 症 分 野 ) 創 薬 候 補 物 質 探 索 拠 点 運 営 委 員 会 拠 点 運 営 のあり 方 の 助 言 等 ( 年 に2 回 程 度 実 施 ) 認 知 症 分 野 の 共 同 研 究 機 関 人 材 育 成 分 野 の 実 施 機 関 PET 疾 患 診 断 研 究 拠 点 がん 分 野 の 共 同 研 究 機 関 認 知 症 分 野 の 共 同 研 究 機 関 拡 大 運 営 委 員 会 プログラムの 運 営 方 針 の 検 討 策 定 等 ( 年 に2 回 程 度 実 施 ) PET 疾 患 診 断 研 究 拠 点 運 営 委 員 会 拠 点 運 営 のあり 方 の 助 言 等 ( 年 に2 回 程 度 実 施 ) 人 材 育 成 分 野 の 実 施 機 関 中 間 評 価 委 員 会 ( 平 成 24 年 度 に 開 催 ) プログラム 全 体 各 拠 点 個 別 研 究 課 題 の 評 価 (3 年 目 )を 実 施 課 題 公 募 審 査 委 員 会 ( 平 成 22 年 度 に 開 催 ) 共 同 研 究 機 関 等 の 選 定 3
創 薬 候 補 物 質 探 索 拠 点 の 実 施 体 制 創 薬 候 補 物 質 探 索 拠 点 独 立 行 政 法 人 理 化 学 研 究 所 研 究 代 表 者 名 中 核 拠 点 長 : 渡 辺 恭 良 がん 分 野 認 知 症 分 野 がん 分 野 A がん 分 野 B 認 知 症 分 野 A 認 知 症 分 野 B 抗 がん 抗 体 の 適 合 性 評 価 のための 分 子 イメージ ング 臨 床 研 究 国 立 がん 研 究 センター 田 村 研 治 癌 幹 細 胞 を 標 的 とした 癌 根 絶 療 法 の 創 出 北 海 道 大 学 近 藤 亨 国 立 がん 研 究 センター 栗 原 宏 明 愛 知 県 がんセンター 谷 田 部 恭 認 知 症 用 の 炎 症 PET プローブの 臨 床 開 発 先 端 医 療 振 興 財 団 千 田 道 雄 神 戸 大 学 山 本 泰 司 分 子 イメージングによる タウ 凝 集 阻 害 薬 開 発 京 都 大 学 萩 原 正 敏 大 阪 市 立 大 学 三 木 隆 巳 東 京 医 科 歯 科 大 学 細 谷 孝 充 国 立 長 寿 医 療 研 究 センター 滝 川 修 人 材 育 成 分 野 岡 山 分 子 イメージング 高 度 専 門 人 材 育 成 事 業 研 究 代 表 者 岡 山 大 学 谷 本 光 音 小 動 物 から 霊 長 類 までのPET 研 究 人 材 育 成 研 究 代 表 者 浜 松 医 科 大 学 間 賀 田 泰 寛 4
PET 疾 患 診 断 研 究 拠 点 ( 放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 )の 実 施 体 制 PET 疾 患 診 断 研 究 拠 点 独 立 行 政 法 人 放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 研 究 代 表 者 名 中 核 拠 点 長 : 藤 林 康 久 がん 分 野 認 知 症 分 野 がん 分 野 C がん 分 野 D 認 知 症 分 野 C 認 知 症 分 野 D 難 治 性 がん 治 療 に 向 け た 機 能 画 像 法 の 開 発 福 井 大 学 岡 沢 秀 彦 国 立 がん 研 究 センター 藤 井 博 史 横 浜 市 立 大 学 立 石 宇 貴 秀 新 しい 細 胞 塊 培 養 による 癌 難 治 性 部 位 の 探 索 大 阪 府 立 成 人 病 センター 井 上 正 宏 東 京 工 業 大 学 蓮 池 利 章 奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大 学 矢 野 重 信 特 異 的 プローブによる タウおよびアミロイドβ 蓄 積 メカニズムの 解 明 東 北 大 学 工 藤 幸 司 アミロイドβ 代 謝 蓄 積 と 炎 症 反 応 の 相 互 作 用 の 解 明 理 化 学 研 究 所 西 道 隆 臣 人 材 育 成 分 野 医 薬 理 工 連 携 によるPET 教 育 研 究 拠 点 形 成 研 究 代 表 者 大 阪 大 学 畑 澤 順 連 携 大 学 院 による 組 織 融 合 的 研 究 教 育 の 推 進 研 究 代 表 者 東 北 大 学 谷 内 一 彦 医 薬 工 連 携 を 活 かしたPET 専 門 家 人 材 育 成 拠 点 研 究 代 表 者 北 海 道 大 学 玉 木 長 良 5
がん 分 野 認 知 症 分 野 における 主 な 成 果 医 療 現 場 への 実 装 PETプローブ 開 発 の 進 捗 状 況 P O C 取 得 ヒ ト で の 臨 床 研 究 先 進 医 療 や 医 師 主 導 治 験 ライセンスアウトして 企 業 治 験 へ 多 数 の 患 者 PET ( 大 規 模 検 証 ) 確 固 たるエビデンスの 取 得 患 者 PET( 有 効 性 の 確 認 ) 少 数 の 健 常 者 患 者 PET( 安 全 性 の 確 認 ) がん 分 野 Cu-DOTA-TRMab(3 件 ) 62 Cu-ATSM 認 知 症 分 野 11 C-PBB3(3 件 ) 18 F-THK5117(1 件 ) 11 C-S-KTP-Me(1 件 ) 臨 床 に 向 けた POC 取 得 数 :8 件 など () 内 はPOC 取 得 数 合 計 17 種 P O C 取 得 動 物 で の 非 臨 床 研 究 基 礎 基 盤 研 究 安 全 性 試 験 薬 効 試 験 中 型 動 物 (サルなど)PET ( 安 全 性 有 効 性 の 確 認 ) 小 動 物 (マウスなど)PET ( 安 全 性 有 効 性 の 確 認 ) 基 盤 的 研 究 開 発 サイクロトロン 開 発 ジェネレーター 開 発 等 基 礎 的 研 究 開 発 トレーサー 開 発 疾 患 別 プローブシーズ 開 発 等 がん 分 野 Cu-DOTA-Glim 抗 体 89 Zr- 標 識 抗 HER3 抗 体 認 知 症 分 野 ABP688 11 C-TMD-592 理 化 学 研 究 所 ライフサイエンス 技 術 基 盤 研 究 センター ステップは 上 に 進 む 一 方 向 とは 限 らず より 良 いプローブを 得 るために 非 臨 床 研 究 臨 床 研 究 の 結 果 を 基 礎 基 盤 研 究 にフィードバックする( 下 に 降 りてくる)こともある また 全 てのステップを 踏 むとは 限 らず これ 以 外 のステップを 踏 むこともあり 1つのステップにかかる 時 間 や 内 容 にも 幅 がある など PETプローブ 400 以 上 世 界 最 大 PETプローブ データベース 放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 分 子 イメージング 研 究 センター 6
がん 分 野 における 成 果 1 抗 体 医 薬 の 患 者 適 合 性 に 資 するPET 研 究 従 来 の 針 生 検 に 代 わる 非 侵 襲 のPETイメージングで 抗 体 医 薬 の 選 択 適 合 性 判 定 に 資 するPET 研 究 HER2 陽 性 乳 がんの 原 発 巣 をPETイメージングにより 捉 える 事 に 成 功 HER2 陽 性 乳 がん 患 者 に 開 発 したPETプ ローブ( Cu-DOTA-TRMab)を 静 脈 注 射 し PET 検 査 を 実 施 した その 結 果 左 乳 房 の 原 発 巣 の 位 置 に 一 致 したシグナルを 観 察 した( 矢 印 ) なお 左 下 の 赤 い 部 分 は 血 中 のシグナル( 心 臓 )を 示 す 分 子 イメージング 技 術 を 用 いた がん 幹 細 胞 のイメージング 現 在 がん 幹 細 胞 をターゲットとした 新 薬 の 開 発 が 進 んでいる がん 幹 細 胞 の 特 異 的 な 検 出 が 適 正 な 評 価 に 必 要 かつ ごく 少 数 しか 存 在 しないがん 幹 細 胞 を 高 感 度 に 検 出 する 事 が 必 要 分 子 イメージングを 用 いたがん 幹 細 胞 イメージングの 開 発 を 実 施 がん 治 療 に 用 いる 抗 体 量 の 1/5,000でイメージングを 達 成 = 安 全 HER2 陽 性 乳 がんの 脳 転 移 をPETイメージングにより 捉 えることに 成 功 Cu-DOTA-TRMabの 体 内 動 態 を 全 身 にわたって 追 跡 したところ 脳 転 移 が 疑 われるシグナルを 観 察 した( 矢 印 ) マウスにおいて がん 幹 細 胞 をPETイメージングに より 特 異 的 に 捉 える 事 に 成 功 ( 矢 印 ) < 今 後 の 方 向 性 > がん 種 類 別 の 早 期 診 断 のみならず 新 規 抗 体 医 薬 の 開 発 ツールとしての 応 用 を 目 指 す < 今 後 の 方 向 性 > がん 幹 細 胞 イメージングに 関 する 基 盤 技 術 の 開 発 が 進 行 ヒトでのPOC 取 得 を 目 指 す 7
がん 分 野 における 成 果 2 がんの 難 治 性 の 原 因 とされる がん 内 部 の 低 酸 素 領 域 を 捉 えるPETプローブの 研 究 の 推 進 62 Cu-ATSMによる 低 酸 素 領 域 画 像 化 ( 62 Cu: 半 減 期 約 10 分 の 画 像 化 用 核 種 ) * Cu-ATSMとは PET 多 施 設 臨 床 研 究 口 腔 底 がん 62 Cu-ATSMが 多 く 集 まる 予 後 不 良 ( 良 くなる 可 能 性 が 低 い) 右 上 顎 がん 62 Cu-ATSMがあまり 集 まらない 予 後 良 好 ( 良 くなる 可 能 性 が 高 い) 62 Cu-ATSMが 多 く 集 まるがんは 予 後 不 良 である がん 内 部 の 低 酸 素 部 位 はが んの 治 りにくさ の 要 因 となる 低 酸 素 領 域 に 集 積 するプローブ 様 々な 銅 の 放 射 性 同 位 元 素 で 標 識 可 能 * Cu-ATSM 60 Cu, 62 Cu, Cu * Cu-ATSMが 多 く 集 まる 領 域 は 低 酸 素 でがん 幹 細 胞 が 多 い マウスに 移 植 したがん 内 部 のプローブの 分 布 CD133 陽 性 細 胞 の 割 合 (%) 集 積 の 度 合 い CD133:がん 幹 細 胞 マーカー Cu-ATSM FDG 高 中 低 Cu-ATSMが 集 まる 低 酸 素 領 域 には 治 りにくい がんの 原 因 とされるがん 幹 細 胞 が 多 数 存 在 する 難 治 がん 治 療 へ 高 Cu-ATSMによる 低 酸 素 領 域 の 治 療 研 究 治 療 量 の Cu-ATSMの 投 与 により: がんが 明 らかに 小 さくなった がんの 大 きさ コントロール 19 日 目 のがんの 画 像 (マウス) コントロール がん 幹 細 胞 が 減 少 した Cu-ATSMは がん 幹 細 胞 にも 有 効 な 治 療 法 として 期 待 される Cu-ATSM 投 与 Cu-ATSM 投 与 ( Cu: 半 減 期 約 13 時 間 放 射 線 治 療 に 適 し た 核 種 ) CD133 陽 性 細 胞 の 割 合 (%) コントロール Cu-ATSM 投 与 難 治 がんの 悪 玉 細 胞 ( 低 酸 素 細 胞 がん 幹 細 胞 )の 画 像 化 と 治 療 効 果 を 確 認 8
認 知 症 分 野 における 成 果 1 認 知 症 の 神 経 細 胞 死 に 密 接 に 関 わるタウタンパク 質 を 画 像 化 するPETプローブの 開 発 認 知 症 の 脳 内 に 蓄 積 する 異 常 タンパク ヒトで 脳 内 タウ 病 変 を 明 瞭 に 画 像 化 生 体 脳 で 画 像 化 PET 装 置 タウ 蓄 積 アミロイド 蓄 積 異 常 タンパクの 蓄 積 の 有 無 や 蓄 積 場 所 の 違 いにより 多 様 な 認 知 症 を 診 断 鑑 別 水 平 面 矢 状 面 冠 状 面 プローブの 開 発 ヒトやモデルマウスの 脳 切 片 を 用 いて いかなる 構 造 の 薬 剤 が 様 々 なタウ 病 変 に 結 合 するか 構 造 - 活 性 相 関 から 化 合 物 を 選 択 PBB 国 際 出 願 日 : 2012 年 12 月 21 日 国 際 出 願 番 号 : PCT/JP2012/83286 マウスで 脳 内 タウ 病 変 を 明 瞭 に 画 像 化 タウ 病 変 モデルマウス 異 常 タウ 蓄 積 タウ 病 変 に 強 く 結 合 する 低 分 子 化 合 物 の 基 本 構 造 に ついて 特 許 を 出 願 国 内 特 許 登 録 日 : 2013 年 11 月 29 日 国 内 登 録 番 号 : 特 許 第 5422782 号 生 きた 脳 で 薬 剤 がタウ 病 変 に 結 合 することを 証 明 光 による マイクロイメージング PETによる マクロイメージング アルツハイマー 病 (Neuron 2013) 神 経 細 胞 死 を 伴 う 認 知 症 を 含 む 精 神 神 経 疾 患 の 根 本 治 療 法 の 開 発 につながる バイオマーカーとし て 期 待 され 国 内 外 での 多 施 設 共 同 研 究 が 開 始 されている 海 馬 [ 11 C]PBB3(タウイメージング) 出 典 :Nature Reviews Neurology 9, 599 (November 2013) 認 知 症 の 診 断 における 画 期 的 な 成 果 として 紹 介 される 認 知 症 に 密 接 に 関 わるタウタンパク 質 の 画 像 化 に 成 功 実 証 的 臨 床 研 究 へ 移 行 9
認 知 症 分 野 における 成 果 2 アルツハイマー 型 認 知 症 の 進 行 過 程 1)アミロイドb の 蓄 積 アルツハイマー 型 認 知 症 の 炎 症 病 原 仮 説 に 基 づいた 神 経 炎 症 イメージング 用 PETプローブの 開 発 脳 内 炎 症 に 深 く 関 与 しているタンパク 質 であるCOX-1に 対 して 特 異 的 なPET プローブ( 11 C-KTP-Me)を 開 発 2) 脳 内 炎 症 ミクログリア 活 性 化 老 人 斑 こうしん 3)タウリン 酸 化 酵 素 の 亢 進 11 C-KTP-Meにより ラット 脳 内 の 神 経 炎 症 の 可 視 化 に 成 功 脳 内 で 炎 症 反 応 の 中 心 的 役 割 を 担 うミクログリア(OX-42 陽 性 細 胞 )ではCOX-1が 発 現 していることを 確 認 COX-1はミクロ グリアの 活 性 化 のバイオマー カーであるため 脳 内 炎 症 時 の ミクログリアの 活 性 化 状 態 を 特 異 的 にイメー ジングできると 考 えられる 健 常 者 軽 度 認 知 障 害 既 に 臨 床 研 究 が 進 行 中 4)リン 酸 化 タウの 蓄 積 COX-1を 標 的 分 子 とした 創 薬 により アルツハイマー 病 における 神 経 炎 症 の 制 御 治 療 および 診 断 技 術 への 活 用 が 期 待 される 5)リン 酸 化 タウの 凝 集 分 子 イメージングによる 認 知 症 の 神 経 細 胞 死 に 密 接 に 関 わるタウタンパクの 凝 集 阻 害 薬 の 開 発 6) 神 経 細 胞 死 認 知 機 能 の 低 下 神 経 原 線 維 変 化 リン 酸 化 タウタンパクを 減 少 さ せる 新 規 低 分 子 化 合 物 の 開 発 リン 酸 化 タウタンパ クを 減 少 させる 候 補 化 合 物 の 効 果 タウ 蓄 積 によるアルツハイマー 病 に 対 して タウを 減 らすことで 治 療 する 可 能 性 を 有 している 10
その 他 の 成 果 人 材 育 成 の 状 況 1. 連 携 大 学 院 の 協 定 締 結 理 化 学 研 究 所 と 岡 山 大 学 浜 松 医 科 大 学 放 射 線 医 学 総 合 研 究 所 と 大 阪 大 学 東 北 大 学 北 海 道 大 学 2. 講 義 演 習 等 の 実 施 大 学 院 に 分 子 イメージングの 教 育 コースを 開 講 ( 通 年 ) 学 外 へのオープン 講 義 の 実 施 分 子 イメージング サマーセミナー( 年 1 回 ) 国 際 シンポジウム 画 像 解 析 研 究 会 J-AMPシンポジウム 等 3. 研 究 教 育 PETマイクロドーズ 試 験 実 施 指 導 助 言 GMP 講 習 会 PET 薬 剤 製 造 教 育 訓 練 プログラム 等 機 関 名 博 士 課 程 在 学 修 士 課 程 在 学 博 士 課 程 修 了 修 士 課 程 修 了 修 了 後 キャリアパス ( 予 定 も 含 む) 岡 山 大 学 8 13 0 6 大 学 助 教 製 薬 メーカー 財 団 法 人 博 士 課 程 進 学 浜 松 医 科 大 学 16 0 4 0 大 学 助 教 病 院 勤 務 大 阪 大 学 7 (2) 0 4 1 大 学 助 教 特 任 研 究 員 製 薬 メーカー 東 北 大 学 11 (3) 3 14 (4) 10 大 学 助 教 製 薬 メーカー 財 団 法 人 電 気 工 業 PETメー カー 大 学 医 師 博 士 課 程 進 学 留 学 北 海 道 大 学 5 0 4 2 合 計 47 (5) 16 26 (4) 19 大 学 医 師 放 射 線 技 師 がんセンター 博 士 研 究 員 博 士 課 程 進 学 留 学 ( )は 社 会 人 学 生 の 内 数 平 成 25 年 度 末 時 点 発 表 論 文 数 22 年 度 23 年 度 24 年 度 25 年 度 合 計 81 92 103 104 380 11 C-PBB3の 論 文 が 米 科 学 誌 Neuronに 掲 載 ま た 11 C-PBB3の 論 文 が 注 目 論 文 としてnatureで 紹 介 Cu-DOTA-TRMabの 論 文 が 核 医 学 会 代 表 誌 Journal of Nuclear Medicineに 掲 載 11
用 語 解 説 用 語 解 説 PET 陽 電 子 断 層 撮 影 法 (Positron Emission Tomography)の 略 称 身 体 の 中 の 生 体 分 子 の 動 きを 生 きたままの 状 態 で 外 から 見 ることができる 技 術 の 一 種 特 定 の 放 射 性 同 位 元 素 で 標 識 したPET 薬 剤 を 患 者 に 投 与 し PET 薬 剤 より 放 射 される 陽 電 子 に 起 因 するガンマ 線 を 検 出 することによって 体 深 部 に 存 在 する 生 体 内 物 質 の 局 在 や 量 などを 三 次 元 的 に 測 定 できる ラジオアイソトープ ( 放 射 性 同 位 元 素 ) 放 射 線 を 放 出 する 同 位 元 素 のことをいう 同 位 元 素 とは 同 じ 性 質 で 重 さの 違 う 原 子 のことをいう タウ 神 経 系 細 胞 の 骨 格 を 形 成 する 微 小 管 に 結 合 するタンパク 質 アルツハイマー 病 をはじめとする 様 々な 精 神 神 経 疾 患 において タウが 異 常 にリン 酸 化 して 細 胞 内 に 蓄 積 することが 知 られている PBB3 HER2 脳 内 に 蓄 積 したタウに 対 して 選 択 的 に 結 合 する 薬 剤 PBB3のPBBは Pyridinyl-Butadienyl-Benzothiazoleの 略 称 蛍 光 物 質 であることから 生 体 蛍 光 画 像 を 得 るのにも 利 用 できるが PBB3を 放 射 性 同 位 元 素 で 標 識 することに より PET 薬 剤 として 使 用 できる 生 体 蛍 光 画 像 は 細 胞 レベルの 詳 細 な 観 察 を 可 能 にするが 脳 の 深 部 を 観 察 することは 困 難 である PETは 脳 の 深 部 観 察 を 可 能 にし ヒトにも 応 用 可 能 である 細 胞 表 面 に 存 在 する 上 皮 成 長 因 子 (EGF) 受 容 体 タンパク 質 のサブタイプの 一 つで 細 胞 外 に 分 泌 された 上 皮 成 長 因 子 と 結 合 し 細 胞 の 増 殖 を 活 性 化 す る ハーセプチンと 言 われ 乳 がん 症 例 の20~30%にHER2タンパクの 過 剰 発 現 がみられ 悪 性 度 に 関 与 していると 考 えられている がん 幹 細 胞 がんのなかに 存 在 する 幹 細 胞 様 の 性 質 をもつ 細 胞 自 己 複 製 能 多 分 化 能 造 腫 瘍 能 をもち 抗 がん 剤 放 射 線 療 法 に 耐 性 をもつことから 治 療 後 の 残 存 が 再 発 の 原 因 とする 説 が 提 唱 されている このがん 幹 細 胞 を 破 壊 することで 真 のがん 根 治 をもたらすことが 可 能 になると 考 えられている POC アミロイドβ 老 人 班 ミクログリア proof of conceptの 略 創 薬 開 発 における POC とは 研 究 開 発 段 階 の 新 薬 候 補 に 関 する 有 効 性 や 安 全 性 とそのメカニズムについて あらかじめ 設 定 した 仮 説 が ヒト 試 験 により 検 証 されること アルツハイマー 病 患 者 に 特 徴 的 な 脳 内 老 人 班 の 構 成 成 分 である 約 40 残 基 か らなるペプチド 断 片 であり アルツハイマー 病 の 主 要 病 因 物 質 と 考 えられてい る 凝 集 しやすく 不 溶 性 のアミロイド 線 維 を 形 成 するほか 可 溶 性 オリゴマー ( 重 合 体 )を 形 成 する アルツハイマー 病 の 脳 内 で 早 期 から 見 られる 特 徴 的 な 病 理 学 的 変 化 アミロ イドβが 凝 集 して 線 維 状 になり 脳 内 で 斑 点 状 に 沈 着 する アミロイド 斑 とも 呼 ばれる アルツハイマー 病 の2 大 病 理 病 変 で もう 一 つが 神 経 原 線 維 変 化 であ る 神 経 系 を 構 成 する 神 経 細 胞 以 外 の 細 胞 (グリア 細 胞 )の 一 種 脳 の 障 害 時 や 病 原 体 の 感 染 時 に 活 性 化 し 壊 死 細 胞 や 異 物 の 除 去 など 脳 内 の 免 疫 反 応 に 関 わる
リン 酸 化 タウ タウタンパクは 微 小 管 結 合 蛋 白 質 であり 細 胞 の 中 で 細 胞 骨 格 を 形 成 してい る 微 小 管 と 結 合 し 細 胞 骨 格 の 安 定 化 に 寄 与 している タウタンパクがリン 酸 化 酵 素 によってリン 酸 化 されると タウタンパクは 微 小 管 から 離 れタウタンパク 同 士 で 結 合 し 神 経 原 線 維 変 化 を 生 じると 考 えられている アルツハイマー 型 認 知 症 患 者 の 脳 では 過 剰 にリン 酸 化 したタウタンパク 質 の 沈 着 物 ( 神 経 原 線 維 変 化 )が 神 経 細 胞 内 で 観 察 される 神 経 原 線 維 変 化 過 剰 にリン 酸 化 したタウタンパク 質 が 神 経 細 胞 内 に 蓄 積 したもの アルツハイ マー 病 の2 大 病 理 病 変 で もう 一 つが 老 人 班 である GAPDH グリセルアルデヒド-3-リン 酸 デヒドロゲナーゼの 略 称 細 胞 内 呼 吸 の 代 謝 反 応 に 関 わる 酵 素 であり 細 胞 種 に 関 わらず 恒 常 的 に 発 現 しているため 細 胞 内 分 子 を 計 測 する 際 の 指 標 として 用 いられる 低 酸 素 領 域 生 体 内 の 腫 瘍 組 織 では がん 細 胞 が 活 発 に 増 殖 するため 血 管 新 生 が 追 い 付 かず しばしば 低 酸 素 状 態 が 生 じることが 知 られている また 低 酸 素 下 に おかれたがん 細 胞 は 化 学 治 療 放 射 線 治 療 に 対 し 抵 抗 性 を 持 つため しば しばがんの 転 移 再 発 の 原 因 となることが 知 られている FDG FDGとはフルオロデオキシグルコースの 略 で ブドウ 糖 の 中 の 水 素 原 子 を 陽 電 子 を 放 出 する 放 射 性 フッ 素 に 置 き 換 えた 物 質 ブドウ 糖 と 同 様 にがん 細 胞 により 多 く 取 り 込 まれるためPETを 用 いて 体 の 中 のFDGの 分 布 を 撮 影 すること で がんの 場 所 や 大 きさ 状 態 を 診 断 することができる CD133 PET 装 置 バイオマーカー 細 胞 は 種 類 ごとにその 表 面 に 抗 原 と 呼 ばれるタンパク 質 を 発 現 している これ はその 一 種 で ヒトのがん 幹 細 胞 や 造 血 幹 細 胞 などの 表 面 に 存 在 するもの PETに 使 用 する 断 層 画 像 を 出 力 する 装 置 で ポジトロン( 陽 電 子 )を 放 出 する 薬 剤 ( 放 射 性 医 薬 品 ( 放 射 薬 剤 ))から 放 出 されたガンマ 線 を 検 出 し 画 像 化 する 装 置 である バイオマーカーとは 正 常 ( 健 康 ) 状 態 と 異 常 ( 疾 病 ) 状 態 の 違 いを 定 量 的 に 評 価 する 指 標 をいう 疾 病 ( 例 えば がん 糖 尿 病 など)の 診 断 において 広 く 使 わ れている