オランダ Bergen 便 り Vol.01 こんにちは オランダの 北 西 部 にある 小 さな 村 Bergen(ベルゲン)に 住 んでいる 田 中 千 桃 子 と 申 します 住 んで 暮 らしてみて 発 見 した オランダの 行 事 や 文 化 教 育 の 違 いなど を Earth8ight の 保 護 者 のみなさまに ご 紹 介 します 12 月 は オランダ 式 のサンタクロースとクリスマスの 話 題 です オランダのサンタは にぎやかな 行 進 とともに! ~ 暗 く 寒 い 冬 を 希 望 とともに 乗 り 切 ろうというオランダ 人 の 心 意 気 ~ オランダでは 11 月 に 入 るとめっきり 日 が 短 くなり 町 の 街 路 樹 の 広 葉 樹 の 葉 もすっか り 散 ってさみしくなります いよいよ 寒 くて 暗 い 冬 の 本 格 的 な 始 まりです こうした 季 節 の 移 り 変 わりとは 対 照 的 に 子 どもたちにとっては 心 躍 る 待 ち 遠 しい 季 節 の 到 来 でもあります オランダでは アメリカや 日 本 で 盛 んに 行 われるハロウィンの 代 わりに 聖 マーチン 祭 (11 月 11 日 )が 行 われ 11 月 の 半 ばには 早 くもオランダ 版 のサン タクロース シンタクラース がやってくるんですよ 街 のおもちゃ 屋 のウインドウより 左 : 本 を 読 むシンタクラース/ 右 : 威 厳 のあるシンタクラース 像 シンタクラースがスペインからやってくる 日 オランダのシンタクラースは なんとスペインから 蒸 気 船 に 乗 って ピートと 呼 ばれる 黒 い 肌 をした 大 勢 のヘルパーを 従 えてやってきます これは オランダが 17 世 紀 から 世 界
有 数 の 海 運 国 として 栄 えた 国 であるという 歴 史 と 結 び 付 いています 毎 年 シンタクラースがその 年 最 初 にオランダに 上 陸 する 日 は National Intocht と 呼 ばれ 一 大 イベントです 子 ども 向 けのシンタクラース TV で 上 陸 の 様 子 が 中 継 され 上 陸 地 に 選 ばれた 街 では 市 長 や 地 元 人 がこぞって 出 迎 えにいき 音 楽 とともに 盛 大 に 迎 えます 子 どもの 寝 ている 間 にやってきてプレゼントを 置 いて 去 ってゆく 日 本 やアメリカのサン タと 違 い オランダのシンタクラースは 楽 しくにぎやかに 街 にやってくるのです 街 でシンタクラースを 出 迎 える 子 どもたちには シンタを 歓 迎 する 意 味 で ヘルパーで あるピートやシンタクラースの 衣 装 を 身 にまとう 子 も 多 く 熱 狂 ぶりがうかがえますね シンタクラースを 迎 えるために 歌 う みんなにおなじみの 歌 もたくさんあって 大 人 も 子 どもも 歌 って 踊 ってシンタクラースを 待 っている 様 子 は 見 ていても 楽 しいものです シンタクラースを 待 っている 間 陽 気 なピートたちが 子 どもたちにペパノーチェと 呼 ばれる 小 さい 粒 型 のクッキーを 配 ったり 握 手 をしたり まるでサーカスの 一 行 が 到 着 す る 前 のような 雰 囲 気 です 中 には リクエストするプレゼントを 書 いた 手 紙 を 持 って 待 っ ている 子 どももいて シンタクラースに 手 紙 を 渡 そうとする 姿 は ほほえましい 光 景 です
初 日 の 上 陸 式 を 終 えると シンタクラースの 一 行 は オランダ 国 内 の 各 地 に 出 かけてい って 同 じような 行 進 を 週 末 ごとに 繰 り 返 し 大 歓 迎 を 受 けます 私 たちの 住 む Bergen はアムステルダムから 北 西 に 車 で 50 分 ほどの 小 さな 街 ですが シンタクラース 上 陸 の 翌 日 にあたる 11 月 15 日 の 土 曜 日 にパレードが 行 われました 小 雨 の 降 るどんよりとした 天 気 にもかかわらず このパレードには 地 域 の 消 防 隊 やブ ラスバンド そして 子 どもたちの 習 い 事 のグループなどいろいろな 人 が 参 加 して オラン ダ 国 王 の 日 に 続 くにぎわいぶりでした シンタクラースが 持 つ 本 には 子 どもが 善 い 行 いをしたかどうかが 書 かれている オランダのシンタクラースは 日 本 のサンタとはかなり 雰 囲 気 が 違 うので びっくりし ませんか ローマ 法 王 のような 尖 がった 帽 子 とローブ 姿 は まるで 教 会 でまつられている 聖 人 のようです お 供 には トナカイではなく アメリコという 名 前 の 馬 を 連 れてくるこ とになっています このため 子 どもたちは 寝 る 前 に 馬 のエサになるニンジンを 暖 炉 のそばや 家 の 中 にお 供 えして 寝 るという 習 わしがあります わが 家 には 10 歳 になる 息 子 がいますが この 時 期 になると 毎 晩 寝 る 前 に 冷 蔵 庫 からニンジンを 取 り 出 して 熱 心 にお 供 えをしています
シンタクラースがオランダ 国 内 に 滞 在 しているおよそ 20 日 間 の 間 なんと 街 には シン タクラースの 家 が 臨 時 にオープンします! ピートがプレゼントを 準 備 している 様 子 や シンタクラースとピートたちが 食 事 をする 部 屋 寝 室 などを 子 どもが 訪 れることができる ようになっているんですよ また 子 どもたちが 一 番 楽 しみにしているのは オランダでは 12 月 5 日 の 晩 です 家 族 が 集 まって ごちそうを 食 べ そして お 待 ちかねの 家 族 でのプレゼントの 交 換 です こ の 日 は オランダ 語 で 別 名 pakketjes avond( 英 語 に 直 訳 すると packets evening) つまり プレゼント 箱 の 夕 べ とも 呼 ばれていて 子 どもだけでなく 大 人 もみんなびっ.... くりプレゼントをもらえます 面 白 い 包 み 方 に 工 夫 を 凝 らしたり 本 物 のプレゼントはど こかに 隠 してヒントだけを 小 さな 箱 に 入 れてあげたりと 相 手 を 驚 かせることを 互 いに 競 い 合 って 楽 しく 過 ごすのがオランダ 流 です 11 月 の 半 ばから 長 きにわたってオランダに 滞 在 したシンタクラースは 12 月 5 日 の 晩 に 子 どもたちにプレゼントを 残 して 再 びスペインに 帰 ります 子 どもを 楽 しませることはもちろん 黒 い 肌 をしたピートに 扮 する 大 人 たちも 一 緒 にな って 暗 く 長 い 冬 を 思 いっきり 楽 しく 過 ごそうというオランダ 人 の 心 意 気 さえ 感 じます ただ ここ 数 年 は ある 意 味 オランダの 伝 統 として 受 け 入 れられてきたヘルパーのピ ートのいでたちや 振 る 舞 いが 人 種 差 別 につながるという 批 判 が 大 きくなり 毎 年 議 論 が 交 わされています 長 い 間 伝 統 として 楽 しんできた 行 事 を 変 更 することには 一 般 のオラ ンダ 人 の 中 に 抵 抗 感 がある 人 も 多 く 時 間 がかかる 問 題 のようです
サンタクロースのイメージはどこから? ところで 私 たち 日 本 人 にとっておなじみのサンタのイメージは どこから 来 たかご 存 知 ですか ふくよかな 体 格 のサンタクロースは 1930 年 代 にコカコーラのクリスマス 向 け のキャンペーンによって 定 着 したとされています 1930 年 代 のコカコーラのクリスマスキャンペーン 用 ポスター また アメリカで 聖 ニコラスのお 祝 いをするようになったのも もともとは 今 のニュ ーヨーク(かつてのニューアムステルダム)に 渡 ったオランダ 系 の 移 民 の 間 で 祝 われてい たものを 新 しい 国 の 伝 統 として 国 民 的 行 事 に 広 げていったという 経 緯 があるようです 国 が 変 わるとサンタクロースも 変 わる! すっかり アメリカのサンタクロースのイメ ージに 慣 らされていた 私 にとっては 当 たり 前 のこの 違 いが 目 からうろこの 驚 きでした シンタクラースシーズンの 定 番 のオランダのお 菓 子 左 :アルファベット 型 のチョコレート/ 右 :アーモンドフィリングの 入 った 焼 き 菓 子
クリスマスに 向 けてのアドヴェント オランダでのシンタクラースの 日 が 陽 気 でにぎやかな 子 どもと 家 庭 のお 祭 りだとすれば そのあとに 続 くクリスマスは 一 年 でもっとも 暗 く 寒 い 日 に 向 かうための 精 神 性 の 強 い 日 といえるでしょう クリスマスから 数 えて 4 週 間 前 の 日 曜 日 からは(11 月 下 旬 から 12 月 上 旬 ) キリストの 降 誕 を 待 ち 望 む 降 臨 節 アドヴェント の 始 まりです 第 1 アドヴェントの 晩 から 毎 週 一 本 ずつローソクをともし 4 本 目 のローソクがともるクリスマスを 心 待 ちにします もともとは 教 会 の 行 事 ですが 地 理 的 要 因 も 忘 れてはいけません 首 都 のアムステルダ ムでも 北 緯 52 度 30 分 と 日 本 の 北 端 の 択 捉 島 (45 度 33 分 )よりはるかに 北 に 位 置 して います そして この 季 節 は 日 照 時 間 が 短 く 夕 方 の 5 時 にはすっかり 暗 くなって 冷 た い 雨 の 日 も 多 くなります 最 近 では アドヴェントを 祝 わない 家 庭 も 増 えているようですが 街 のスーパーには 色 とりどり 大 小 さまざまなキャンドルが 売 られていて この 時 期 家 庭 でローソクの 灯 をともしている 人 が 多 いのには 驚 かされます デコレーションの 意 味 だけでなく 昼 でも 曇 りの 日 が 多 く 身 心 ともに 落 ち 込 みがちな 季 節 を 少 しでも 明 るく 過 ごそうという 実 際 的 な 役 割 も 持 つ 習 慣 になっているようです アドヴェントクランツ( 冠 ) と 呼 ばれるリース また この 時 期 になると 街 の 花 屋 やガーデンセンターには クリスマスツリー 用 の 本 物 のモミの 木 が 並 び 始 めます もともとは 一 年 でもっとも 日 が 短 くなるこの 日 に 常 緑 樹 に 灯 をともして 太 陽 の 復 活 を 願 う 古 くからの 風 習 で キリスト 教 がヨーロッパに 伝 わる 前 から 行 われていたそうです オランダは 比 較 的 宗 教 色 の 強 くない 国 ではありますが クリスマスが 近 づくと 毎 年 Weihnacht-Oratorium ( 日 本 では クリスマスオラトリオ として 知 られる)という
宗 教 曲 のコンサートが 各 地 域 の 教 会 などで 有 志 のメンバーや 音 楽 愛 好 家 が 参 加 して 企 画 されます この 曲 は テレビも CD もない 時 代 にイエスの 誕 生 にまつわる 聖 書 のお 話 を 朗 読 のような 歌 と 合 唱 で 表 現 したものです オランダの 人 にとってクリスマスは 12 月 25 日 と それに 続 く 26 日 の 2 日 間 遠 く の 親 戚 や 日 ごろ 会 えない 家 族 がともに 集 まって 過 ごす 時 間 を 大 切 にする 日 であり 一 般 的 にプレゼントはありません ほとんどの 人 が 家 族 と 過 ごす 時 間 を 大 切 にしている のがオランダでは 大 きな 価 値 観 の 一 つなので スーパーで 働 く 人 もクリスマスのディナーの 時 間 には 帰 るのが 当 たり 前 このため この 2 日 間 は ほとんどの 店 が 短 めに 営 業 して 閉 店 してしまいます 街 も 案 外 ひっそりとしています 恋 人 同 士 や 若 者 がこぞってパーティーをしたり 街 に 繰 り 出 した りする 日 本 とは 違 い いたって 静 かにクリスマスは 過 ぎていくというのが 実 感 です ではまた 来 月 のオランダ Bergen 便 りをお 楽 しみに! みなさん 楽 しいクリスマスをお 過 ごしください < 参 照 > *2015 年 National Intocht in Mappel Youtube にアップされた 1 分 28 秒 の 映 像 https://www.youtube.com/watch?v=9dl9wm08q9u *この 季 節 だけオープンするシンタクラースハウス http://www.sinterklaashuisbergen.nl/ *サンタクロースとコカコーラについて http://newclassic.jp/4898 * サンタクロースの 大 旅 行 ( 葛 野 浩 昭 著 岩 波 新 書 刊 )