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Transcription:

Titleトゥルシーダース 作 ドーハーヴァリー (2) Author(s) 長 崎, 広 子 Citation 印 度 民 俗 研 究. 12 P.56-P.71 Issue 2013-03-30 Date Text Version publisher URL http://hdl.handle.net/11094/50060 DOI Rights Osaka University

トゥルシーダース 作 ドーハーヴァリー (2) 長 崎 広 子 訳 注

101 シヴァ 神 にとって 愛 しくとも 私 (ラーマ)の 敵 で シヴァ 神 の 敵 でありながら 私 の 僕 である 者 は 一 劫 中 おそろしい 地 獄 に 住 む ことになる 102 [ 俗 世 とは そこから] 離 れていれば 幸 せで まみれていれば 不 幸 せなもので それは 生 死 の 理 である ラーマが[この 世 に 我 々を] 置 いて 下 さった そのままに 暮 らすべきである 悪 行 から 離 れるの がよろしい 103 行 いを 伴 わない 言 葉 など 無 駄 なだけだ 安 息 のないヨーガ 行 も 無 駄 だ トゥルシーダースは 語 る ラーマの 御 足 の 愛 がなければ すべての 方 法 は 無 駄 である 104 人 々はみなヨーガに 没 頭 するが 安 息 を 得 られないヨーガは 無 駄 である 同 様 に トゥルシーダースの 考 えでは ラーマの 愛 の ない 規 則 は 無 駄 である 105 ああラーマ 神 よ あなたの 親 切 はすべての 者 にとって 親 切 で す これが 永 遠 の 真 理 であれば トゥルシーダースにとっても 親 切 なのです 106 トゥルシーダースは 語 る ラーマ 神 が 尊 んだ 者 は 善 人 であ れ 悪 人 であれ 善 人 となる 灯 明 が 煤 を 頭 上 にいただけば 何 度 で もいただき 続 けるように [ラーマ 神 は 何 度 でも 救 って 下 さる] 107 姿 は 色 とりどりで 声 は 臆 病 で へびを 食 糧 とし 心 は 堅 固 である トゥルシーダースの 主 はその 羽 根 を[ 頭 上 に] 抱 く 者 (クリ モ ー ラ シュナ)となり そのため すべての 人 々は[ 主 を] 私 のもの (モー ラ=クジャク 私 のもの)とよぶ 108 かけたビタ 銭 ひとつ 得 られない 者 を 誰 が 何 のために 必 要 とす るだろうか? 価 値 のない 者 を 慈 しむラーマ 神 はそんな[わたくしめ] トゥルシーを 価 値 ある 者 として 下 さった 109 トゥルシーダースは 語 る 家 々で 食 糧 を 恵 んでもらった 私 の 足 をいまでは 王 が 崇 拝 する 私 はかつてはラーマ 神 を 知 らなかった 57

が いまやラーマ 神 が 守 護 者 となって 下 さった 110 トゥルシーダースは 語 る ラーマ 神 の 良 い 眼 差 しによって 弱 者 が 強 者 となる ヴァーリンとスグリーヴァが 敵 対 した 時 にハヌ マーンは 何 ができただろうか? 1 111 トゥルシーダースは 語 る ラーマ 神 を 思 う 以 上 にラーマ 信 者 を 心 で 思 うべきである [ 忠 義 を 果 たした]ハヌマーンが 富 める 者 と なり ラーマ 王 は[それに 感 謝 し] 負 債 者 となられた 2 112 猿 ハヌマーンはよい 奉 仕 者 としての 義 務 を 果 たした 主 [ラー マ]は 心 でそれを 思 い 感 謝 した 恩 恵 をもたらす 者 に 恩 恵 を 与 える ラーマは 合 掌 して[ハヌマーンの 前 に]お 立 ちになった 113 信 者 のために 神 ラーマは 王 の 姿 を 纏 われた 一 般 の 人 間 とし て 最 高 に 神 聖 な 行 いをなされた 114 知 と 言 葉 と 感 官 を 超 越 し 始 まりがなく 迷 妄 と 意 識 と 属 性 を 越 えた 真 の 喜 びの 宝 庫 である 神 は 人 として 慈 悲 深 い 行 いをなさ る 115 ヒラニヤークシャを 兄 [ヒラニヤカシプ] 3 とともに また 強 力 なマドゥとカイタバ 4 を 倒 した 慈 悲 の 海 である 神 は[ラーマとして] 1 主 君 スグリーヴァがヴァーリンと 敵 対 していた 時 に ハヌマーンは 何 もせずに 逃 げ 回 っていたが ラーマと 出 会 ったことによって スグ リーヴァは 救 われ その 後 ハヌマーンが 大 活 躍 したことを 指 してい る 2 ラーマは 自 らの 信 者 ハヌマーンの 奉 仕 に 対 して 神 の 権 化 や 人 間 や 賢 者 の 中 にもハヌマーンに 並 ぶものはないと 称 賛 し 大 いに 感 謝 して いる また その 功 績 に 対 して 自 らは 負 債 者 であり それに 報 いるこ とは 到 底 できないと 語 る[Rāmacaritamānasa 5.31] この 文 脈 では ラ ーマ 自 身 をも 超 える 信 者 (バクト)をラーマ 以 上 に 重 んじよという 意 味 になる 3 ヒラニヤークシャとヒラニヤカシプは ヴィシュヌの 化 身 ヴァラー ハとナラシンハに 倒 された 双 子 の 悪 魔 4 マドゥとカイタバは ブラフマーを 困 らせた 時 に ヴィシュヌによ 58

降 臨 された 116 純 粋 で 真 の 喜 びに 満 ちた 根 ( 喜 びを 与 えるもの)であり 太 陽 族 の 御 旗 である[ラーマは ] 人 として[ふさわしい] 行 いをなされ た それは 生 死 流 転 の 海 にかかる 橋 である 117 ラグ 族 の 主 (ラーマ)はすばらしい 子 供 の 衣 装 と 装 身 具 を 身 に 纏 い その 手 足 は 埃 にまみれ 少 年 たちや 弟 たち 全 員 とともに 子 供 の 遊 びに 興 じる 118 毎 日 アヨーディヤーでは 祝 いの 歌 が 鳴 り 響 き 日 々 新 たな 幸 福 と 喜 びが 祝 われる ラグ 族 の 主 (ラーマ)の 子 供 の 遊 びを 見 て 父 も 母 も 人 々も 喜 んだ 119 コーサラ 国 の 守 護 者 である 少 年 たちは 膝 と 手 ではいはいし すばらしい 遊 戯 をし 吉 兆 と 繁 栄 の 首 飾 りのように 王 の 中 庭 を 美 しく 飾 る 120 ラグ 族 の 主 (ラーマ)の 名 は 愛 らしい 遊 びも 愛 らしい 姿 も 愛 らしい 衣 装 も 愛 らしい 装 身 具 も 愛 らしい 愛 らしい 弟 と 子 供 たちともに 121 ラーマ バラタ ラクシュマナ シャトルグナというめでた く 愛 らしい 名 をもつダシャラタ 王 のすべての 息 子 たちを 念 想 すれば あらゆる 心 の 願 いは 叶 うだろう 122 コーサラ 国 の 守 護 者 の 息 子 は 家 来 を 守 り 親 切 である ト ゥルシーダースの 心 の 湖 5 に 吉 兆 の 美 しい 白 鳥 として 住 んでおられ る って 倒 された 悪 魔 5 心 の 湖 mana mānasa の mānasa とは チベットのマーナサ 湖 であるが 白 鳥 が 住 む 美 しく 聖 なる 湖 として 作 品 の 題 名 ラームチャリットマ ーナス(ラーマ 神 の 聖 なる 行 いの 湖 ) のように トゥルシーダースが 好 んで 用 いる 比 喩 表 現 である 59

123 [ラーマ 神 は] 信 者 大 地 バラモン 牝 牛 神 のために 親 切 で 人 間 の 姿 となって 遊 戯 を 行 なわれる それを 聞 けば この 世 の 束 縛 は 消 滅 する 124 神 大 地 牝 牛 バラモンのために 自 らの 意 思 で 神 は 降 臨 された そこに 徳 を 備 えた 信 者 がすべての 盲 迷 を 捨 てて 付 き 従 う 125 最 高 の 喜 びであり 慈 悲 の 住 処 であり 心 を 希 望 で 満 たす 方 聖 なるラーマ 神 よ 私 に 不 滅 の 信 愛 バクティ をお 与 えください 126 たとえ 水 をかきまぜてギー( 精 製 バター)ができ たとえ 砂 から[ 食 用 ] 油 ができたとしても 確 かな 原 則 は ハリを 称 賛 しなけ れば この 世 を 渡 ることはできないということだ 127 ハリの 幻 影 によってなされた 功 罪 は ハリを 称 賛 せずに 消 え ることはない こう 心 の 中 で 考 えて すべての 欲 望 を 捨 て ラーマ を 称 えるべきである 128 意 識 を 無 意 識 とし 無 意 識 を 意 識 あるものとする そのよう な 力 のあるラグ 族 の 主 を 称 える 魂 は 幸 運 である 129 ラグ 族 の 英 雄 (ラーマ)の 威 光 によって 海 に 石 が 浮 かんだ 6 そのラーマを 捨 てて 他 の 神 のもとに 行 き 称 賛 する 者 は 愚 かである 130 心 よ どうしてラーマ 神 を 称 賛 しないのか! 彼 の 時 代 は 弓 で あり わずかな 時 間 瞬 間 微 細 な 時 ユガ 年 劫 はその 鋭 い 矢 であるのに 131 悲 しみの 住 処 である 欲 望 を 捨 て ラーマを 称 えないかぎりは 魂 に 安 寧 はなく 夢 にも 心 に 安 息 を 得 ることはない サ ト サンガ 132 真 実 の 集 会 なしのハリの 講 話 はない それなしに 盲 迷 は 消 えな い 盲 迷 が 消 えることなしに ラーマの 御 足 に 強 い 愛 着 は 生 まれな 6 ラーヴァナ 征 伐 のために ラーマの 軍 勢 がランカー 島 まで 石 を 海 に 浮 かばせて 橋 をかけた 逸 話 60

い 133 信 頼 のない 信 愛 はない その 信 愛 なしにラーマが 慈 悲 をかけ ることはない ラーマの 慈 悲 なしに 夢 にも 魂 は 安 息 を 得 ることはな い 134 こう 考 えて 落 ち 着 いた 考 えを 持 つ 者 (ガルダ)よ すべての 悪 い 論 理 と 疑 念 を 捨 てなさい 憐 れみ 深 く 美 しく 幸 福 を 与 える 方 であるラグ 族 の 英 雄 ラーマを 讃 えなさい 135 幸 福 の 蔵 慈 悲 の 館 である 神 は 愛 の 支 配 者 である 執 着 誇 り 高 慢 を 捨 てて 常 にシーターの 夫 (ラーマ)を 讃 えなさい 136 けがれのない 心 をもつサントは ヴェーダやプラーナを 吟 味 して 語 る シーターの 夫 (ラーマ)が 慈 悲 をかけて 下 されば この 世 の 悲 しみから 解 放 される 137 ヴェーダとプラーナは 語 る 師 なしに 知 識 が 得 られるだろう か 遁 世 せずに 知 識 が 得 られるだろうか ハリへの 信 愛 なしに 幸 福 が 得 られるだろうか 138 ラーマチャンドラを 讃 えずに 解 脱 の 境 地 を 望 む 者 は たとえ 知 者 でも 角 と 尾 のない 獣 のようなものである 139 財 産 家 幸 福 友 父 母 兄 弟 など 燃 えてしまえばいい! ラーマの 御 足 の 前 で 何 千 もの 奉 仕 をしないのならば 140 トゥルシーダースは 語 る 正 しい 聖 者 と 師 に 奉 仕 し ラーマ への 信 愛 が 不 動 である 教 えを 学 んで 理 解 しなさい 子 供 のころに 身 に 付 けた 泳 ぎは 忘 れることはないのだから 141 トゥルシーダースは 語 る すべての 者 はラーマの[ 信 者 ]といわ れ すべての 者 がラーマを 期 待 する トゥルシーダースよ ラーマ 神 が 自 らの[ 信 者 ]と 認 める 者 を 讃 えよ 61

142 ラーマに 愛 情 を 抱 く 姿 を 高 貴 な 人 々は 尊 敬 する 愛 情 ゆえに ルドラの 姿 を 捨 てて ハヌマーンは 猿 になったのだ 143 ラーマの 奉 仕 を 最 上 のものと 知 り なすべきことを 推 察 し 理 解 しなさい 祖 先 (マハーデーヴァ 神 )が 奉 仕 者 (ジャーンバヴァ ン) 7 になり シヴァ 神 がハヌマーンになったのだから 144 トゥルシーダースは 語 る 悪 人 がラーマの 奉 仕 者 に 悪 意 をも って 咎 めるのは 大 鷹 の 子 にウズラが 目 をむくようなものである 145 ラーヴァナの 敵 であるラーマの 僕 に 臆 病 者 は 悪 事 を 働 く カ ラ ドゥーシャナ マーリーチャのように 卑 しい 者 はすぐさま 滅 びる 8 146 善 と 罪 名 誉 と 不 名 誉 の 将 来 の 担 い 手 はあふれている トゥ ルシーダースは 語 る [ラーマの] 僕 の 災 厄 は ラーマが 取 り 除 いて 下 さるだろう 147 子 供 が 蛇 と 遊 んだり 火 に 手 を 突 っ 込 めば 両 親 が 子 供 を 助 けるように 父 母 であるラーマとシーターはトゥルシーダースを 守 って 下 さる 148 トゥルシーダースは 語 る 金 貸 しにとっては 昼 が 好 ましく 泥 棒 にとっては 夜 が 好 ましい ラーマの 命 令 を 守 る 者 には 昼 も 夜 も 好 ましい 149 トゥルシーダースは ラグ 族 の 王 (ラーマ)は 慈 悲 の 海 であ る と 聞 いて 理 解 し 納 得 した この 世 で ( 金 持 ちのための) 宝 石 と 金 を 高 価 なものとし (すべての 者 のための) 水 と 穀 物 を 安 価 にして 下 さったのだから 150 愛 しい 人 [への 執 着 ]を 捨 てて [ 神 への] 奉 仕 と 美 徳 と 愛 を 意 の 7 ラーマ 軍 で 活 躍 する 熊 と 解 釈 される 8 カラ ドゥーシャナ マーリーチャはラーマに 倒 されたラーヴァナ の 家 来 62

ままにしなさい トゥルシーダースは 語 る すべてはラーマ[の 思 し 召 し]によって 出 会 いと 別 れにおいて 喜 びを 与 えるものとなるのだ から 151 心 は 四 つ( 法 財 愛 欲 解 脱 )を 欲 するが それらは 到 達 できないもので 四 粒 のチャナ 豆 を 得 られるだけだ 四 つ[の 目 的 を 欲 する 気 持 ち]を 捨 てて 四 つ[の 目 的 ]を 与 えて 下 さる 方 を[ 内 と 外 の] 四 つの 目 で 見 て 望 みなさい 152 真 っ 直 ぐな 心 正 直 な 言 葉 すべての 正 しい 行 い トゥルシ ーダースは 語 る ラーマの 愛 を 生 み 出 すすべての 方 法 は 真 っ 直 ぐで ある 153 トゥルシーダースは 語 る きれいな 服 を 着 て 甘 い 言 葉 を 語 っても 心 がきつくて 行 いが 卑 しく 享 楽 という 水 に 住 む 魚 になっ た 者 が ラーマを 獲 得 することはない 154 言 葉 と 着 物 で 輝 く 者 は 最 後 に 落 ちぶれる トゥルシーダー スは 語 る 心 で 輝 く 者 はラーマによっていつまでも 輝 き 続 ける 155 トゥルシーダースは 語 る 卑 しい 者 よ ラーマの 命 を 受 けて たとえ 死 がお 前 を 連 れ 去 ろうとも お 前 は 幸 せ 者 である さもなけ れば お 前 はずっと 不 幸 なのだから 156 ジャーティが 低 く 卑 しい 土 地 に 生 まれたのに そのような 女 (シャーブリー) 9 を[ラーマは] 救 済 された 愚 かな 心 よ!そのよ うな 主 を 忘 れてお 前 は 幸 福 を 望 むのか 157 弟 の 妻 に 恋 慕 したとヴァーリンに 語 り 言 い 返 せないように された 10 トゥルシーダースは 語 る (しかし) 主 はスグリーヴァの 9 シャーブリーは 篤 い 信 愛 によって ラーマに 会 うことができた 部 族 民 の 女 性 自 ら 味 わって 甘 かった 果 物 を 差 し 出 し それをラーマが 臆 することなく 食 べたというエピソードで 知 られる 10 ラーマに 倒 された 猿 のヴァーリンが 死 に 際 になぜ 自 分 が 倒 されなけ ればならないのかを 問 うと ラーマは 弟 の 妻 に 恋 した 罰 だと 答 えた 63

悪 事 には 全 く 目 を 向 けられなかった 158 力 持 ちで [ 軍 隊 等 の] 力 を 有 するヴァーリンを 倒 して 猿 の 王 (スグリーヴァ)を 友 とした トゥルシーダースは 語 る 慈 悲 深 い ラーマのすばらしさは 貧 しい 者 をお 助 けになることである 159 ヴィビーシャナは 何 を 土 産 に[ラーマに] 会 っただろうか ヴァ ーリンはどんな 悪 事 を 働 いたのか?トゥルシーダースは 語 る 主 は 庇 護 を 求 める 者 をいつも 守 って 来 られた 160 トゥルシーダースは 語 る コーサラ 国 の 守 護 者 (ラーマ) 以 上 に 救 いを 求 めに 来 た 者 を 守 ってくださる 方 が 他 にいるだろうか ヴィビーシャナが 兄 に 対 する 恐 怖 から[ 逃 げてラーマを] 讃 えると [ラーマは 彼 の] 貧 窮 と 死 [の 恐 怖 ]を 打 ちのめされた 161 [ 自 らの] 意 思 はダイヤモンドよりも 固 く [ 信 者 に 対 しては] 花 よりも 柔 らかい ガルダよ ラーマの 意 思 を 誰 が 理 解 できようか 162 樹 皮 が 着 物 で 果 実 が 食 事 で 草 が 寝 台 で 愛 でるのは 木 だ けであった 時 に [ヴィビーシャナに]ランカーをお 与 えになった これがラーマのなさり 方 なのである 163 十 の 頭 を 差 し 出 したことで ラーヴァナにシヴァ 神 が 授 けら れた 財 産 と 同 じ 富 (ランカー 島 )を ラグ 族 の 主 (ラーマ)は 恥 じ らいながらヴィビーシャナに 授 けられた 164 トゥルシーダースは 語 る ラグ 族 の 支 配 者 ラーマはゆるぎな い 王 国 をヴィビーシャナに 授 けられた 今 でも 自 らの 集 団 とともに [ヴィビーシャナは]ランカー 島 におられる 165 ヴィビーシャナは 何 を 土 産 に[ラーマに] 会 ったか ラグ 族 の 主 は[ 彼 に] 何 をお 与 えになったか トゥルシーダースは 語 る このこ とを 知 らずして 愚 かな 者 は 後 悔 する 166 [ヴィビーシャナは] 敵 の 弟 で 卑 しい 羅 刹 で 悪 名 に 満 ちてい たが ラーマは 見 捨 てられなかった トゥルシーダースは 語 る [し 64

かし] 偽 りの 罪 で 疑 いを 抱 いて 主 はシーターをお 捨 てになった 167 カイラーサ 山 を[ 手 で] 測 った 者 (ラーヴァナ)の 宮 廷 で [ア ンガダ 11 は] 困 難 な 誓 いをたてた トゥルシーダースは 語 る それは 主 の 威 光 というべきか 奉 仕 者 の 信 念 というべきなか 168 トゥルシーダースは 語 る [ドラウパディーはカウラヴァの] 集 会 と 廷 臣 を 見 て サリーを 押 さえ [ 神 を 呼 ぶために]もう 片 手 を 挙 げた ヤーダヴァ 族 の 主 (クリシュナ)は[ドラウパディーのため に] 着 物 の 姿 となって 第 11 番 目 の 権 化 となられた 169 トゥルシーダースは 語 る 王 国 の 宮 廷 でドラウパディーは3 回 助 けて と 叫 んだ 一 回 目 で 着 物 が 伸 び 二 回 目 で[クリシュナ 神 はどうしたものかと]あわて [ 三 回 目 で] 震 えながら 自 らのなすべ き 事 (カウラヴァ 征 伐 )をしようと 思 われた 12 170 幸 福 な 人 生 を 誰 もが 望 むが 幸 福 な 人 生 は 神 の 手 のうちにあ る トゥルシーダースは 語 る [その 手 のなかでは] 与 える 者 も 乞 食 も 愚 かで 主 人 を 持 たない 者 に 見 える 171 吝 嗇 家 は 与 え 落 ちている 財 を 拾 い 策 を 弄 せずとも 成 就 す る シーターの 夫 (ラーマ)の 前 で[その 恩 恵 を] 理 解 しなければな らない なされたことの 結 果 は 必 ず 吉 兆 となるのだから 172 ダンダカの 森 を 神 聖 にする 方 (ラーマ)のハスの 御 足 のおか げで 荒 地 に 芽 が 生 え 悪 人 が 輪 廻 の 海 を 渡 り 哀 れな 者 が 王 にな る 173 ラーマ ラクシュマナ シーターが 情 け 深 く 見 ると そこで 11 ヴァーリンの 息 子 で ラーマの 信 者 となり シーター 捜 索 で 活 躍 した 猿 の 忠 臣 12 マハーバーラタの 逸 話 カウラヴァとパーンダヴァ 間 の 賭 博 で 取 られたドラウパディーは 皆 の 前 でサリーを 剥 がされそうになるが ク リシュナを 念 じたことによって サリーが 伸 び 決 してサリーが 脱 げ ることはなかった 65

は 美 しい 木 に 季 節 外 れの 実 がなり 岩 から 水 が 勢 いよく 流 れだす 174 岩 が 美 しい 女 性 (アハルヤー) 13 になり [ 海 に] 山 が 浮 かび 死 者 が 生 き 返 ったことを 世 間 は 知 っている ラーマの 恩 恵 で 吉 兆 と すべての 安 寧 が 得 られる 175 岩 (にかえられたアハルヤー)を 呪 縛 から 解 放 した[ラーマの] 御 足 を 念 想 しなさい トゥルシーダースは 語 る 思 い 患 うなかれ 災 厄 は 消 えて 心 の 願 いは 叶 うだろう 176 トゥルシーダースは 語 る 死 んだ 熊 と 猿 アヨーディヤーの バラモンの 息 子 を 生 き 返 らせ 風 神 の 子 (ハヌマーン)を 忠 臣 とす る その 方 (ラーマ)を 念 想 しなさい 177 トゥルシーダースは 語 る 時 代 業 徳 罪 この 世 の 生 類 はあなたの 手 のうちにあります ラグ 族 の 主 シーターの 夫 (ラー マ)よ 私 があなたのもの( 信 者 )であることを 知 ってください 178 トゥルシーダースは 語 る 老 体 は 病 のかたまりで 悪 人 とも 付 き 合 いがあります ラーマよ 憐 れんで 私 を 救 ってください こ の 哀 れな 者 は 救 われるに 値 いします 179 ラグ 族 の 英 雄 よ! 私 のように 哀 れな 者 はいません あなたの ように 哀 れな 者 を 救 済 する 方 はいません こう 考 えて ラグ 族 の 宝 (ラーマ)よ 輪 廻 の 苦 しい 恐 怖 を 取 り 除 いてください 180 輪 廻 という 蛇 がトゥルシーダースというマングースを 噛 んで すべての 知 識 を 奪 った [しかし 聖 地 ]チトラクータ 14 は 薬 草 である 13 ガウタマ 仙 の 妻 アハルヤーは 岩 に 変 えられていたが ラーマが 足 で 触 れたことによって その 呪 いから 解 放 された 本 編 の 174 175 189 が 同 一 の 逸 話 に 基 づいている 14 ラーマが 森 に 追 放 された 時 に 暮 らした 聖 地 トゥルシーダースも 実 際 にそこに 暮 らし ラームチャリットマーナス を 執 筆 したとい う 詳 しくは 拙 稿 に 記 している ラーマ 信 仰 の 聖 地 チットラクート, 説 話 伝 承 学,9, pp. 133-150, 2001 年 チットラクートの 事 跡 と 伝 承, 説 話 伝 承 文 化 研 究 II,pp. 3-19,2001 年 66

それを 見 れば 意 識 が 戻 る 181 シーターの 夫 (ラーマ)が 主 人 で トゥルシーダースはその 奉 仕 者 であると 私 も 言 うし 皆 も 言 う ラーマはこの 愚 弄 に 耐 え てくださっている 182 ラーマの 王 国 では 男 も 女 も 皆 ダルマに 没 頭 し 輝 いている 執 着 怒 り 罪 悲 しみがなく 四 つの 目 的 ( 法 財 愛 欲 解 脱 ) が 得 られる 183 ラーマの 王 国 では 満 足 と 喜 びがあり 家 と 森 はあらゆる 幸 せを 与 えてくれる 木 は 如 意 樹 で 大 地 は 願 いを 叶 える 牝 牛 で 望 んだ 享 楽 と 贅 沢 が 手 に 入 る 184 トゥルシーダースは 語 る ラーマの 王 国 では 農 夫 労 働 者 商 人 召 使 職 人 (その 他 の) 美 しい 仕 事 が 如 意 樹 のように す べてすばらしい 実 を 付 ける 185 ラーマの 王 国 では 棒 は 出 家 者 の 手 にあり 15 差 別 は 踊 り 子 の 踊 りの 世 界 にしかない 勝 て は 心 に 打 ち 勝 てとしか 聞 かれない 186 トゥルシーダースは 語 る ラーマの 王 国 では 慈 しみのならわ しは 極 みまで 達 している [ 誰 かが] 怒 っても 叱 られることなく[ 逆 に] 心 配 される 仕 事 は 頼 まなくてもしてくれる 187 鏡 でラーマは[ 自 らの] 顔 を 見 て トゥルシーダースのような 悪 い 奉 仕 者 には 怒 っているように 見 えると 思 い 美 徳 に 数 えられる[ 弧 を 描 く] 眉 を 責 められる 188 賢 者 が 語 った 千 の 名 の 中 で トゥルシーを 愛 する 方 という ( 自 らの) 名 を 聞 き 卓 越 したダルマを 持 てるラーマは シーター の 方 を 見 て 笑 い ( 妻 以 外 の 者 を 愛 しているということに) 心 の 中 で 恥 じ 入 られた 15 棒 の 原 文 は daṇḍa で 刑 罰 と 棒 の 意 味 があるため ラーマの 王 国 で は 刑 罰 はなく 棒 が 苦 行 者 の 手 にあるのみという 掛 詞 になっている 67

189 ガウタマ 仙 の 妻 (アハルヤー)の 解 脱 を 思 い 出 し シーター は 手 で[ラーマの] 御 足 には 触 れない 16 ラグ 族 の 宝 (ラーマ)は[ 夫 に 対 するシーターの] 世 俗 を 越 えた 愛 情 を 知 って 心 の 中 で 微 笑 まれ た 190 トゥルシーダースは 語 る 月 の 出 た 秋 の 夜 は 星 がまたたき 美 しい あたかもラーマの 高 名 という 子 供 の 手 に 真 珠 の 飾 りが 輝 いて いるようだ 191 ラグ 族 の 主 の 誉 れという 美 女 をどうして 語 ることができよう か 中 秋 の 名 月 でさえ 彼 女 のあごの 綺 麗 なほくろにすぎない 192 主 [ラーマ]の 徳 の 山 は ラーマの 誉 れという 美 女 の 装 身 具 と 服 であり ひときわ 美 しい トゥルシーダースの 勤 めは [それを 飾 る] 髪 である 193 ラーマの 行 いは 月 光 のように 皆 に 喜 びを 与 える 善 人 と いうスイレンと 心 というチャコール 鳥 には 特 に 有 益 で 大 きな 恩 恵 がある 194 ラグ 族 の 英 雄 の 誉 れは 善 人 に 涼 しさを 与 え 悪 人 を 熱 く 苦 し める トゥルシーダースは 語 る あたかも 月 夜 がチャコール 鳥 の 群 れにとって 涼 しく カモには 熱 いように 195 トゥルシーダースは 語 る ラーマの 講 話 はマンダーキニー 川 で 美 しい 心 は[ 聖 地 ]チトラクータである 美 しい 愛 は 森 で シー ター 妃 とラーマ 神 が 散 歩 なさる 196 黒 い 牝 牛 のミルクはとても 清 潔 で 滋 養 があって 皆 が 飲 むよ うに 善 人 は 田 舎 のことば 17 でも シーターとラーマの 名 声 を 歌 い 16 岩 に 変 えられたアハルヤーにラーマの 足 が 触 れたことで 彼 女 が 昇 天 したことから まだ 死 にたくない 思 いで シーターは 夫 の 足 に 手 で 触 れるという 妻 がする 丁 寧 な 挨 拶 をすることをためらっている 17 田 舎 のことばとは ここでは 古 典 サンスクリットと 対 象 させて 68

聞 くのである 197 すばらしい 詩 人 たちはシヴァとヴィシュヌの 名 声 を 神 の 言 葉 (サンスクリット)と 人 間 の 言 葉 で 語 る 土 鍋 であろうと 金 ででき た 容 器 であろうと [どちらで] 調 理 しても 良 い 穀 物 はおいしいよう に 198 トゥルシーダースは 語 る [ラーマが] 瞳 に 全 世 界 を 置 かれたこ とを 人 々は 見 て 知 っている ラーマの 偉 大 さを 誰 が 理 解 すること ができようか 199 ラーマよ あなたのお 姿 は 言 葉 で 語 れず 知 覚 できない ヴ ェーダ 聖 典 で これでもなく あれでもない といつも 言 われるよ うに 不 可 知 で 語 れず 限 りない 200 幻 力 個 我 特 質 徳 時 代 業 偉 大 さなど すべては 神 という 数 から 増 える 神 という 数 がなければ 無 意 味 である 訳 者 解 説 本 編 は トゥルシーダース (1532?-1623) 作 ドーハーヴァリー の 101 から 200 までの 翻 訳 である トゥルシーダースはヒンディー 文 学 史 上 高 く 評 価 されるバクティ 詩 人 であるが 彼 自 身 について 多 くは 知 られていない しかし 本 編 にはトゥルシーダースが 自 身 について 語 った 詩 節 が 含 まれている 点 が 注 目 される たとえば 108 と 109 であるが 乞 食 をしていた 当 時 のことを 語 っており 星 のめぐりが 悪 いために 家 族 に 災 いをも たらすとして 家 を 出 されたこと(Kavitāvalī 6.73, 7.57, Vinaya Patrikā 275.1-3)が 背 景 にあるとみられる 非 常 に 苦 労 した 末 に ラーマ 神 との 出 会 いをとおして 王 が 足 下 に 額 ずくほどの 名 声 を 獲 得 したこ とが 描 かれている トゥルシーダースと 同 時 代 のナーバーダースが トゥルシーダースが 自 らの 用 いたヒンディー 語 のブラジ バーシャー やアワディー 方 言 を 指 している 69

1600 年 に 信 徒 列 伝 Bhaktamāla の 中 でトゥルシーダースをヴァー ルミーキの 化 身 と 記 していることやこの 詩 節 から 彼 が 存 命 中 にす でに 高 い 評 価 を 得 ていたことが 推 察 できる また トゥルシーダースの 著 作 である ラームチャリットマーナ ス の 評 判 を 妬 む 聖 都 ベナレスのバラモンたちはラーマ 物 語 がサン スクリットではなく ヒンディー 語 のアワディー 方 言 で 語 られたこ とを 非 難 してトゥルシーダースを 迫 害 したという 伝 説 があるが そ の 根 拠 になる 詩 節 が 196 と 197 である 善 人 は 田 舎 のことばでも シーターとラーマの 名 声 を 歌 い 聞 く として 自 らの 言 葉 を 田 舎 の ことばと 卑 下 しているが すばらしい 詩 人 たちはシヴァとヴィシュ ヌの 名 声 を 神 の 言 葉 (サンスクリット)と 人 間 の 言 葉 で 語 る 土 鍋 であろうと 金 でできた 容 器 であろうと [どちらで] 調 理 しても 良 い 穀 物 はおいしいように 197 と 神 のバクティを 語 るうえで 使 用 言 語 は 問 題 にならないとしている ちなみに トゥルシーダースは ラームチャリットマーナス の 中 で 各 巻 の 冒 頭 と 巻 末 の 祝 祷 お よび 人 間 から 神 に 語 りかける 部 分 ではサンスクリットを 用 い それ 以 外 ではアワディー 方 言 を 用 いて 言 語 を 使 い 分 けており 彼 自 身 は サンスクリットも 十 分 に 扱 える 知 識 を 持 っていたことが 伺 える し かし 民 衆 の 用 いるアワディー 方 言 を 主 たる 言 語 として 選 択 し ラ ーマの 聖 なる 行 いを 著 したことが 保 守 的 なベナレスのバラモンた ちの 反 発 を 招 き それは 聖 者 伝 文 学 や 今 日 の 彼 の 伝 記 でも 記 述 され ている トゥルシーダースの 功 績 は 平 明 な 言 語 を 用 いて 聖 典 を 民 衆 に 届 けた 点 にあるが この 詩 節 の すばらしい 詩 人 たち という 言 葉 は 自 らがアワディー 方 言 とサンスクリットの 両 方 を 操 るすば らしい 詩 人 のひとりであることを 自 負 してのもの 言 い 換 えれば バラモンたちの 批 判 に 対 する 反 論 と 解 釈 できる なお ラームチャリットマーナス (5.59.6)の 太 鼓 田 舎 者 シュードラ 家 畜 女 はみな 打 つものである ḍhola gavāra sudra pasu nārī sakala tāṛanā ke adhikārī の 一 節 から トゥルシーダースは 低 カ ーストと 女 性 を 蔑 視 していたと 批 判 されることが 多 いが 部 族 民 の 女 性 シャーブリーを 描 く 本 編 の 156 では ジャーティが 低 く 卑 し い 土 地 に 生 まれたのに そのような 女 (シャーブリー)を[ラーマは] 救 済 された とある シャーブリーが 果 実 を 自 ら 食 べて 味 の 良 い ものだけを 差 し 出 し それをラーマが 食 べたという 逸 話 である イ ンドでは 食 べかけたものは 食 べ 残 しとして 忌 み 嫌 われるため 共 に いた 弟 ラクシュマナは 不 愉 快 な 様 子 を 見 せるが ラーマは 臆 するこ 70

となく 食 べたことを 極 めて 高 徳 だとしているのである つまり 低 カーストでしかも 女 性 であれば 本 来 救 いの 対 象 ではないはずだが 慈 悲 深 いラーマはすべての 者 を 分 け 隔 てなく 救 済 することが 強 調 さ れている トゥルシーダースが 差 別 意 識 を 持 っていなかったとまで は 言 いきれないが 当 時 の 低 カーストと 女 性 に 対 する 一 般 的 な 扱 い が 伺 い 知 れる 一 節 である これら 以 外 に ラーマの 慈 悲 に 関 連 して この 世 で( 金 持 ちのた めの) 宝 石 と 金 を 高 価 なものとし 水 と 穀 物 を 安 価 にして 下 さった 149 と 自 らの 経 済 観 を 述 べている 点 も 興 味 深 い 質 素 であっても 穀 物 と 水 だけあれば 暮 らすことができるのはラーマのおかげと 感 謝 しながら 高 級 品 を 欲 しがる 者 は 好 きにすればよいと 言 わんばかり に 突 き 放 している ラーマと 異 なり 自 らは 金 持 ちに 冷 淡 で 貧 しい 者 に 共 感 していると 言 っているようで ここにトゥルシーダースの 考 えの 一 端 が 垣 間 見 られる 使 用 テキストおよび 注 釈 Śukla, Rāmacandra., ed., 1973-77, Tulasī Granthāvalī, khaṇḍa 2, Vārāṇasī: Nāgarīpracārinī Sabhā. Poddār, Hanunānprasād. n.d., Dohāvalī, Gorakhpur: Gītā Press, (40th ed. saṃvat 2056). Śrīkāntaśaraṇ ed., 1955, Śrīmadgosvāmī kr ta Dohāvalī: siddhānta-tilaka, Banāras: Hindī Sāhitya Kuṭīr. 71