6. APEC エコノミーにおける 農 業 食 料 安 全 保 障 に 関 するその 他 調 査 本 章 では APEC エコノミーにおける 気 温 降 水 量 及 び 砂 漠 化 進 行 の 将 来 見 通 しと 災 害 (ここ では 大 規 模 な 自 然 災 害 を 想 定 する)の 状 況 について 情 報 を 整 理 する 6.1 気 温 降 水 量 及 び 砂 漠 化 進 行 の 将 来 見 通 し 6.1.1 調 査 整 理 の 方 針 以 下 に 本 調 査 における 調 査 整 理 の 方 針 を 示 す IPCC の Fourth Assessment Report(Climate Change 2007)においては 気 候 変 動 にとも なう 地 球 全 体 の 温 暖 化 の 傾 向 地 域 ごとの 気 温 降 水 量 の 将 来 予 測 及 び 異 常 気 象 としての 砂 漠 化 進 行 予 測 に 関 するシミュレーション 結 果 が 示 されている 当 該 報 告 書 は 気 候 変 動 対 策 評 価 に 関 して 権 威 ある 報 告 書 であり 気 温 降 水 量 砂 漠 化 進 行 等 の 将 来 の 予 測 について 世 界 レベルで 包 括 的 に 把 握 することを 可 能 にする 情 報 を 提 供 している したがって 気 温 降 水 量 及 び 砂 漠 化 進 行 の 将 来 見 通 しについては IPCC の Fourth Assessment Report (Climate Change 2007)に 示 されている 将 来 予 測 評 価 を 利 用 するものとする 米 国 農 務 省 のアメリカ 農 務 省 の 自 然 資 源 保 全 局 (NRCS)においては 気 候 変 動 にともなう 世 界 砂 漠 化 危 険 性 予 測 マップを 公 表 しており 非 常 に 参 考 になる したがって 砂 漠 化 進 行 の 将 来 見 通 しについては アメリカ 農 務 省 の 世 界 砂 漠 化 危 険 性 マップを 利 用 するものとする 6.1.2 調 査 整 理 結 果 6.1.2.1 気 温 上 昇 の 将 来 見 通 し 図 6.1に IPCC の Fourth Assessment Report(Climate Change 2007)より 抜 粋 した 気 候 変 動 に 伴 う 世 界 の 地 域 レベルでの 気 温 上 昇 予 測 評 価 図 を 示 す また 表 6.1に IPCC の 気 候 変 動 に 伴 う 気 温 上 昇 予 測 評 価 図 に 示 された 世 界 地 域 区 分 と APEC エコノミーとの 対 応 表 を 示 す 表 6.1 IPCC の 気 候 変 動 に 伴 う 気 温 上 昇 予 測 評 価 図 に 示 された 世 界 エリア 区 分 (NAS~SAU) と APEC エコノミーとの 対 応 IPCC の 世 界 地 域 区 分 ( 注 ) NAS EAS EAS EAS アジア APEC エコノミー ロシア 中 国 香 港 日 本 韓 国 ブルネイ インドネシア マレーシア パプアニューギニア フィリピン シンガポール タイ ベトナム 151
IPCC の 世 界 地 域 区 分 ( 注 ) 北 アメリカ 中 央 南 アメリカ オーストラリア ニュ ージーランド CNA CGI CAM AMZ SSA SAU SAU APEC エコノミー 米 国 カナダ メキシコ ペルー チリ オーストラリア ニュージーランド ( 注 ) 表 中 の NAS~SAU は 図 6.1に 示 された 気 温 上 昇 予 測 評 価 図 群 (NAS~SAU)に 対 応 する これらの 図 から 各 APEC エコノミーとも 今 後 顕 著 な 気 温 上 昇 が 予 測 されるが その 中 でも 特 に ロシア(NAS に 対 応 ) 米 国 (CAN に 対 応 ) カナダ(CGI に 対 応 ) メキシコ(CAM に 対 応 ) ペルー(AMZ に 対 応 ) 等 における 気 温 上 昇 が 顕 著 になると 予 測 される 6.1.2.2 降 水 量 の 将 来 見 通 し 図 6.2に IPCC の Fourth Assessment Report(Climate Change 2007)より 抜 粋 した 気 候 変 動 に 伴 う 世 界 の 地 域 レベル(アジア ロシア 北 米 中 米 南 米 オセアニア)での 降 水 量 増 減 予 測 評 価 図 を 示 す これらの 図 から アジア ロシア カナダ 等 においては 降 水 量 が 顕 著 に 増 加 する 一 方 メキシ コ ペルー オーストラリア 等 では 降 水 量 が 減 少 することが 予 測 される 6.1.2.3 砂 漠 化 進 行 の 将 来 見 通 し 図 6.3に 米 国 農 務 省 の 世 界 砂 漠 化 危 険 性 マップを 示 す 図 中 赤 色 のエリアが 砂 漠 化 する 危 険 性 の 高 いエリアであり 米 国 メキシコ チリ ペルー 中 国 タイ オーストラリア 等 が 砂 漠 化 する 地 域 が 拡 大 する 可 能 性 がある 152
( 注 ) 図 中 の NAS~SAU と APEC エコノミーとの 対 応 は 表 6.1を 参 照 図 6.1 気 候 変 動 に 伴 う 世 界 地 域 レベルでの 気 温 上 昇 予 測 評 価 図 ( IPCC Fourth Assessment Report: Climate Change 2007 より 抜 粋 ) 153
アジア ロシア 図 6.2 南米 北米 中米 オセアニア 世界地域レベルでの降水量増減予測評価図 IPCC Fourth Assessment Report: Climate Change 2007 より抜粋 154
砂漠化の危険性 地域の気候特性 低 乾燥地帯 中 寒冷地帯 高 湿潤地帯 超高 氷床 図 6.3 世界における砂漠化進行予測評価図 米国農務省による Global esertification Vulnerability Map より 155
災害の状況 6.2 調査 整理の方針 6.2.1 以下に 本調査における調査 整理の方針を示す 地球全体の視点から APEC エコノミーにおける自然災害リスクの相対的な比較とエコノミ ー別の自然災害の特徴を捉えることに焦点を置く APEC エコノミーにおける自然災害の発生状況については 災害の特徴と最近の自然災害事 例 の視点で整理する APEC エコノミーにおける自然災害の発生率と損害額については 国際的な再保険企業であ る Swiss Re が整備している 損害保険料の合計に対する保険損害額の割合に基づく 自然 災害被害リスクマップ 1970 年 2008 年の平均 を利用する 図 6.4参照 このマップ は 地震等の災害ハザードの発生頻度 ハザードの発生に起因する被害確率に基づいて計算 されたものではないが 国別の損害保険料の合計に対する保険損害額の割合を数値化するこ とにより 国の大規模自然災害発生による被害の起こりやすさ すなわち 災害被害リスク を相対的に示す指標として利用することができる リスクランク E C B A 図 6.4 6.2.2 Swiss Re による自然災害被害リスクマップ 1970 年 2008 年の平均 1 調査 整理結果 表 6.2に APEC エコノミーにおける自然災害の特徴 過去の代表的な大規模自然災害の例及 びリスクランクを示す 1 Swiss Re sigma, No2/2009 156
表中の リスクランク は Swiss Re による自然災害被害リスクマップに基づくものであり 被害リスクは A E の順に大きくなる この指標でみると 年間を通して自然災害の多い 米 国 メキシコ チリ オーストラリアのリスクが高い その一方で 特に 中国 ロシアのリス クが低いが これは これらの国の規模が非常に広大であり 損害保険の対象とならない人口密 度の低い過疎地での災害が多数含まれていることによるものと想定される 157
表 6.2 APEC エコノミーにおける自然災害の特徴 過去の代表的な大規模自然災害の例及びリスクランク 国名 中国 韓国 自然災害の特徴2 地震 極端な気候変化 洪水 暴風 高潮 森林火災 干ばつ 虫害 地滑り 斜面崩壊 など多種多様な災害が起きている と りわけ 地震 干ばつ 台風により大きな被害が出ている 台風による大雨が洪水をもたらすことがある 豪雪 地すべり 暴風 干ばつ 黄砂などの災害が起こっている チャイニーズ タ ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの衝突帯上にある イペイ ため 地震が多い また 北太平洋亜熱帯季節風地帯にあって 水蒸気が豊富であるため 世界でも豪富が最も発生する地域で もある 台風の襲来回数も年に 3 4 回である フィリピン 毎年 20 個程度 そのうち 5 個が大被害を与える の台風が襲 来する太平洋台風ベルトの一角をなしている また環太平洋火 山帯に位置しており 地震や噴火が起きやすい さらに地理的 地形的に津波 海面上昇 土砂災害 鉄砲水 洪水 干ばつな どの被害を受けやすい インドネシア 洪水 地すべり 旱魃 津波 地震 火山活動 山火事が主な 脅威である 特に洪水 地震が頻発している 過去の代表的な大規模自然災害の例3 四川地震 2008 年 5 月 台風 Bilis 2006 年 7 月 雲南地震 1996 年 2 月 台風イーウィニャ ビリス 2006 年 7 月 台風マエミ 2003 年 9 月 台風ルサ 2002 年 8 月 台風モーラコット 2009 年 8 月 10 日 集集大地震 1999 年 9 月 21 日 台南東北地震 1964 年 1 月 18 日 リスクランク 注 E ピナトゥボ火山噴火 1991 年 6 月 台風 泥流災害 2006 年 11 月 ルソン地震 1990 年 7 月 C ジャワ地震 2006 年 5 月 スマトラ島地震 2005 年 3 月 スマトラ島沖地震 津波 2004 年 12 月 パプアニューギニ 地震 火山噴火 河川氾濫 地滑り ダム決壊 海岸浸食 津 サイクロン 2007 年 11 月 ア 波が主な災害となっている アイタベ津波 1998 年 7 月 火山噴火 1994 年 9 月 マレーシア 洪水 地すべり 斜面崩壊 煙霧 森林火災が主な災害である 洪水 2007 年 12 月 スマトラ沖地震 津波 2004 年 12 月 熱帯低気圧 1996 年 12 月 タイ 洪水 地滑り 森林火災 風害 干ばつ 落雷 雹 伝染病が 台風メーカラ 2008 年 9 月 2 3 アジア防災センター メンバー防災情報 http://www.adrc.asia/disaster_j/index.html 及び CIA Fact book に基づく アジア防災センター メンバー防災情報 http://www.adrc.asia/disaster_j/index.html 等に基づく 158 E C データなし
国名 ベトナム シンガポール ブルネイ ロシア メキシコ ペルー チリ 米国 カナダ オーストラリア 自然災害の特徴2 主な災害となっている 過去の代表的な大規模自然災害の例3 台風レキマ 2007 年 10 月 インド洋津波 2004 年 12 月 5 月から 1 月にかけて時折台風に襲われる 台風と同時にメコ 熱帯低気圧カムリ 2008 年 8 月 ン川が洪水に襲われることがある その他 風害 干ばつ 虫 中部ベトナム洪水 1999 年 害 地滑り 森林火災などが起こりやすい 台風リンダ 1997 年 11 月 シンガポールは地震 台風 火山の噴火などの自然災害は免れ 不明 ているが 非常事態対応業務の課題は 高層ビルが林立する高 度に都市化された環境や危険物取扱い産業における人為的な災 害の予防と軽減にある 台風 地震 大洪水の発生はまれである 不明 永久凍土が大部分を占めるシベリアでは春に洪水が起こる他 洪水 1998 年 5 月 夏と秋には森林火災が起こることがある 東部のカムチャッカ サハリン大地震 1995 年 5 月 半島では火山活動と地震の恐れがある その他 干ばつ 異常 洪水 1994 年 9 月 気温 地滑り 風害による被害がある 太平洋岸では津波 中央と南部では火山と規模の大きい地震 ハリケーン ウィルマ 2005 年 10 月 太平洋 メキシコ湾 カリブ海沿岸では台風の被害がある メキシコ地震 1985 年 9 月 エルチチョン山噴火 1982 年 3 月 地震 津波 洪水 地すべりなどの災害と軽度の火山活動が起 ペルー地震 2007 年 8 月 15 日 こっている ペルー地震 2001 年 6 月 23 日 アンカシュ地震 1970 年 5 月 31 日 大規模地震 活発な火山活動 津波などの災害が発生している チリ地震 2010 年 2 月 27 日 チリ地震 1960 年 5 月 22 日 地震 津波 洪水 土砂災害 火山噴火 ハリケーン 竜巻 洪水 2008 年 6 月 干ばつ 熱波 豪雪 森林火災 海岸浸食など多種多様な大規 ハリケーンカトリーナ 2005 年 8 月 模災害が起きている 地震 1994 年 1 月 ファン デ フーカプレートと北米大陸プレートの 2 つのプレ セント ヘレン山の噴火 1980 年 5 月 ートがぶつかっているため 地震の発生地帯となっている ま クイーン シャーロット島の地震 1949 年 8 た 洪水や山火事 火山の噴火 津波なども発生する 月 森林火災 サイクロン 暴風雨 洪水 鉄砲水 地すべり ト 森林火災 2009 年 2 月 ルネード 地震 津波 熱波 干ばつ等の災害が多い 暴風雨 2007 年 6 月 サイクロントレーシー 1974 年 12 月 159 リスクランク 注 データなし データなし E B A B E B
国名 ニュージーランド 自然災害の特徴2 中央部に火山地帯があり地震が頻発している 過去の代表的な大規模自然災害の例3 洪水 2004 年 2 月 火山泥流災害 1953 年 12 月 地震 1931 年 2 月 注 Swiss Re による自然災害被害リスクマップに基づく 図 6.4参照 160 リスクランク 注 C