G-221 (1) 出 願 商 標 山 岸 一 雄 大 勝 軒 審 決 取 消 請 求 事 件 : 知 財 高 裁 平 成 28( 行 ケ)10065 平 成 28 年 8 月 10 日 (4 部 ) 判 決 < 請 求 棄 却 > (2) 出 願 商 標 山 岸 一 雄 審 決 取 消 請 求 事 件 : 知 財 高 裁 平 成 28( 行 ケ)10066 平 成 28 年 8 月 10 日 (4 部 ) 判 決 < 請 求 棄 却 > キーワード 山 岸 一 雄 ( 他 人 の 氏 名 / 商 標 法 4 条 1 項 8 号 ), 他 人 の 人 格 的 利 益 の 侵 害 (1) 事 案 の 概 要 1 特 許 庁 における 手 続 の 経 緯 (1) 原 告 ( 株 式 会 社 大 勝 軒 )は, 平 成 25 年 11 月 19 日, 山 岸 一 雄 大 勝 軒 の 文 字 を 標 準 文 字 で 表 して 成 る 商 標 ( 以 下 本 願 商 標 という )につい て, 商 標 登 録 出 願 をした( 商 願 2013-90519 号 以 下 本 願 とい う 甲 7) (2) 原 告 は, 上 記 商 標 登 録 出 願 に 対 して, 平 成 26 年 8 月 22 日 付 けで 拒 絶 査 定 を 受 けたので, 同 年 11 月 26 日, 拒 絶 査 定 に 対 する 不 服 の 審 判 を 請 求 す るとともに, 指 定 商 品 又 は 指 定 役 務 を 第 30 類 つけ 麺 用 の 中 華 麺, 調 理 済 みのつけ 麺,ラーメンの 麺,つけ 麺 用 のスープ,ラーメンスープ,ぎょうざ, しゅうまい, 第 43 類 つけ 麺 を 主 とする 飲 食 物 の 提 供 に 補 正 した( 甲 9,11,17) (3) 特 許 庁 は, 原 告 の 請 求 を 不 服 2014-24042 号 事 件 として 審 理 し, 平 成 28 年 1 月 29 日, 本 件 審 判 の 請 求 は, 成 り 立 たない とする 別 紙 審 決 書 ( 写 し) 記 載 の 審 決 ( 以 下 本 件 審 決 という )をし, 同 年 2 月 1 5 日,その 謄 本 は 原 告 に 送 達 された (4) 原 告 は, 平 成 28 年 3 月 16 日, 本 件 審 決 の 取 消 しを 求 めて 本 件 訴 訟 を 提 起 した 2 本 件 審 決 の 理 由 の 要 旨 本 件 審 決 の 理 由 は, 別 紙 審 決 書 ( 写 し)のとおりである 要 するに, 本 願 商 標 は, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 であり,かつ, 本 願 商 標 を 登 録 することについ て, 当 該 他 人 の 承 諾 を 得 ているものとは 認 められないから, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 に 該 当 し, 商 標 登 録 を 受 けることができない,というものである 3 取 消 事 由 本 願 商 標 の 商 標 法 4 条 1 項 8 号 該 当 性 の 判 断 の 誤 り (1) 判 断 1 商 標 法 4 条 1 項 8 号 の 趣 旨 について 商 標 法 4 条 1 項 8 号 は, 他 人 の 肖 像 又 は 他 人 の 氏 名 若 しくは 名 称 若 しくは 1
著 名 な 雅 号, 芸 名 若 しくは 筆 名 若 しくはこれらの 著 名 な 略 称 を 含 む 商 標 (その 他 人 の 承 諾 を 得 ているものを 除 く ) については, 商 標 登 録 を 受 けることが できない 旨 を 規 定 している 商 標 法 4 条 1 項 は, 商 標 登 録 を 受 けることができない 商 標 を 各 号 で 列 記 して いるが, 需 要 者 の 間 に 広 く 認 識 されている 商 標 との 関 係 で 商 品 又 は 役 務 の 出 所 の 混 同 の 防 止 を 図 ろうとする 同 項 10 号,15 号 等 の 規 定 とは 別 に,8 号 の 規 定 が 定 められていることからみると,8 号 が, 他 人 の 肖 像 又 は 他 人 の 氏 名, 名 称, 著 名 な 略 称 等 を 含 む 商 標 は,その 他 人 の 承 諾 を 得 ているものを 除 き, 商 標 登 録 を 受 けることができないと 規 定 した 趣 旨 は, 人 ( 法 人 等 の 団 体 を 含 む 以 下 同 じ )の 肖 像, 氏 名, 名 称 等 に 対 する 人 格 的 利 益 を 保 護 すること,すなわ ち, 自 らの 承 諾 なしにその 氏 名, 名 称 等 を 商 標 に 使 われることがないという 利 益 を 保 護 することにあると 解 される( 最 高 裁 平 成 15 年 ( 行 ヒ) 第 265 号 同 16 年 6 月 8 日 第 三 小 法 廷 判 決 裁 判 集 民 事 214 号 373 頁, 最 高 裁 平 成 1 6 年 ( 行 ヒ) 第 343 号 同 17 年 7 月 22 日 第 二 小 法 廷 判 決 裁 判 集 民 事 21 7 号 595 頁 参 照 ) そうすると,ある 氏 名 を 有 する 他 人 にとって,その 氏 名 を 同 人 の 承 諾 なく 商 標 登 録 されることは, 同 人 の 人 格 的 利 益 を 害 されることに なると 考 えられる 2 本 願 商 標 の 商 標 法 4 条 1 項 8 号 該 当 性 について (1) 本 願 商 標 ア 本 願 商 標 は, 山 岸 一 雄 大 勝 軒 の 文 字 を 標 準 文 字 で 表 して 成 るものであ るところ,その 構 成 中 山 岸 一 雄 の 文 字 部 分 は, 我 が 国 における 氏 名 表 記 の 実 情 に 照 らし, 山 岸 が 氏 を 表 し, 一 雄 が 名 を 表 し,そして,その 全 体 が 山 岸 一 雄 なる 氏 名 を 表 したものとして 認 識 されるものである イ 証 拠 ( 乙 3~17 枝 番 を 含 む )によれば, 山 岸 一 雄 を 氏 名 とする 者 が,1NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 長 野 県 長 野 版 に 14. 9 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 6 月 11 日 現 在 のもの) 及 び 15.9 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 6 月 11 日 現 在 のもの)を 通 じて2 名,2NTT 西 日 本 作 成 の ハローページ 京 都 市 南 部 版 に 14.6 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 2 月 28 日 現 在 のもの) 及 び 15.6 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 2 月 27 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,3NTT 西 日 本 作 成 の ハローページ 石 川 県 のと 版 に 14.8 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 5 月 2 日 現 在 のもの) 及 び 15.8 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 4 月 24 日 現 在 のもの)を 通 じて2 名,4NTT 西 日 本 作 成 の ハローページ 福 井 県 嶺 北 版 に 14.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 9 月 1 日 現 在 のもの) 及 び 15.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 9 月 4 日 現 在 のも の)を 通 じて1 名,5NTT 西 日 本 作 成 の ハローページ 石 川 県 かなざわ 版 に 14.8 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 5 月 2 日 現 在 のもの) 及 び 15.8 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 4 月 24 日 現 在 のもの)を 通 じて 2 名,6NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 新 潟 県 長 岡 版 に 14. 2
12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 9 月 9 日 現 在 のもの) 及 び 15.1 2 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 9 月 8 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,7NT T 東 日 本 作 成 の ハローページ 新 潟 県 新 潟 版 に 14.6 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 3 月 11 日 現 在 のもの) 及 び 15.6 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 3 月 11 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,8NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 新 潟 県 上 越 版 に 14.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 9 月 9 日 現 在 のもの) 及 び 15.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 2 7 年 9 月 8 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,9NTT 東 日 本 作 成 の ハローペ ージ 新 潟 県 魚 沼 版 に 14.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 9 月 9 日 現 在 のもの) 及 び 15.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 9 月 8 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,10NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 新 潟 県 糸 魚 川 版 に 14.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 9 月 9 日 現 在 のも の) 及 び 15.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 9 月 8 日 現 在 のもの) を 通 じて1 名,11NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 群 馬 県 桐 生 地 区 版 に 14.7 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 3 月 20 日 現 在 のもの) 及 び 15.7 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 4 月 3 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,12NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 春 日 部 加 須 久 喜 市 版 に 14.8 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 5 月 8 日 現 在 のもの) 及 び 1 5.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 9 月 3 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名, 13NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 市 原 木 更 津 君 津 市 版 に 1 4.7 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 4 月 4 日 現 在 のもの) 及 び 15.7 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 4 月 3 日 現 在 のもの)を 通 じて2 名,14NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 千 葉 四 街 道 市 版 に 14.7 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 4 月 4 日 現 在 のもの) 及 び 15.7 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 4 月 3 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,15NTT 東 日 本 作 成 の ハ ローページ 町 田 市 版 に 15.1 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 10 月 9 日 現 在 のもの) 及 び 16.2 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 10 月 26 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名, 掲 載 されていることが 認 められる 上 記 事 実 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれば, 本 願 商 標 の 登 録 出 願 時 ( 平 成 25 年 11 月 19 日 ) 及 び 本 件 審 決 時 ( 平 成 28 年 1 月 29 日 )において, 亡 山 岸 ( 生 前 の 住 所 地 は 東 京 都 豊 島 区 甲 19)とは 別 に, 山 岸 一 雄 を 氏 名 と する 者 が, 複 数 生 存 していたものと 推 認 される ウ 以 上 によれば, 本 願 商 標 は, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 であると 認 められる (2) 山 岸 一 雄 を 氏 名 とする 者 の 承 諾 の 有 無 証 拠 ( 甲 19,38) 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれば, 原 告 の 取 締 役 であった 亡 山 岸 は, 本 願 商 標 の 登 録 出 願 時 において, 原 告 が 本 願 商 標 の 登 録 出 願 をし,そ の 商 標 登 録 を 受 けることを 承 諾 していたこと,その 後, 亡 山 岸 は, 平 成 27 年 4 月 1 日 死 亡 したことが 認 められる しかし, 前 記 (1)イのとおり, 本 願 商 標 の 登 録 出 願 時 及 び 本 件 審 決 時 におい 3
て, 亡 山 岸 とは 別 に, 山 岸 一 雄 を 氏 名 とする 者 が, 複 数 生 存 していたもの と 推 認 されるところ, 亡 山 岸 以 外 の 山 岸 一 雄 を 氏 名 とする 者 が 本 願 商 標 の 登 録 について 承 諾 していたとの 事 実 を 認 めるに 足 りる 証 拠 はない (3) 小 括 以 上 によれば, 本 願 商 標 は, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 に 該 当 し, 商 標 登 録 を 受 け ることができないものというべきである 3 原 告 の 主 張 について (1) 原 告 は, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 において, 氏 名 を 含 む 商 標 の 登 録 が 許 され ないのは,1 他 人 のパブリシティの 権 利 を 侵 害 する 場 合 ( 当 該 他 人 の 氏 名 等 に 少 なくとも 周 知 性 が 認 められる 場 合 ),2パブリシティの 権 利 以 外 の 氏 名 専 用 権 の 侵 害 になる 場 合 ( 商 標 出 願 の 願 書 の 記 載 から 客 観 的 類 型 的 に 判 断 し, 氏 名 保 持 者 が 不 快 感 を 感 じると 判 断 すべき 場 合 )に 限 られると 解 すべきところ, 本 願 商 標 は, 上 記 1 及 び2のいずれにも 該 当 しない 旨 主 張 する しかし, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 の 趣 旨 は, 前 記 1のとおり, 人 の 氏 名 に 対 する 人 格 的 利 益 の 保 護,すなわち, 自 らの 承 諾 なしにその 氏 名, 名 称 等 を 商 標 に 使 われることがないという 利 益 を 保 護 することにある そして, 同 号 は,その 規 定 上, 著 名 な 雅 号, 芸 名 若 しくは 筆 名 若 しくはこれらの 著 名 な 略 称 とし, これらについては 著 名 なものを 含 む 商 標 のみを 不 登 録 事 由 とする 一 方 で, 他 人 の 肖 像 又 は 他 人 の 氏 名 若 しくは 名 称 については, 著 名 又 は 周 知 なものであ ることを 要 するとはしていない また, 同 号 は, 人 格 的 利 益 の 侵 害 のおそれが あることそれ 自 体 を 要 件 として 規 定 するものでもない したがって, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 の 趣 旨 やその 規 定 ぶりからすると, 同 号 にいう 他 人 の 氏 名 が, 著 名 又 は 周 知 なものに 限 られるとは 解 し 難 く,また, 同 号 の 適 用 が, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 の 登 録 により, 当 該 他 人 の 人 格 的 利 益 が 侵 害 され, 又 はそのおそ れがあるとすべき 具 体 的 事 情 の 証 明 があったことを 要 件 とするものであるとも 解 し 難 い すなわち, 同 号 は, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 については,そのこと 自 体 によって, 上 記 人 格 的 利 益 の 侵 害 のおそれを 認 め,その 他 人 の 承 諾 を 得 た 場 合 でなければ, 商 標 登 録 を 受 けることができないとしているものと 解 される 原 告 の 上 記 主 張 は, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 が,その 規 定 上, 他 人 の 氏 名 につい ては 著 名 な ものであることを 要 するとはしていないこと, 他 人 の 人 格 的 利 益 を 侵 害 し, 又 はそのおそれがあるとすべき 具 体 的 事 情 の 証 明 があったことを 要 件 としているとも 解 し 難 いことに 照 らし, 文 理 解 釈 の 範 囲 を 超 えるものとい わざるを 得 ない また, 同 号 の 趣 旨 は, 上 記 のとおり, 人 の 氏 名 に 対 する 人 格 的 利 益 の 保 護 にあるところ,この 人 格 的 利 益 の 保 護 の 要 否 を, 顧 客 吸 引 力 の 有 無 ( 周 知 性 や 著 名 性 の 有 無 )により 分 けるというのも, 同 号 が 商 品 又 は 役 務 の 出 所 の 混 同 のおそれを 要 件 としていないことに 照 らし, 相 当 でない さらに, 自 己 の 氏 名 を 含 む 商 標 が 登 録 されることにより 氏 名 保 持 者 が 精 神 的 苦 痛 や 不 快 感 を 感 じるか 否 かを 商 標 出 願 の 願 書 の 記 載 のみから 判 断 すれば 足 りるというの も, 氏 名 保 持 者 ごとに 人 格 的 利 益 に 係 る 事 情 は 異 なるにもかかわらず,その 個 4
別 的 事 情 を 一 切 捨 象 するものであって, 相 当 でない なお, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 について, 当 該 氏 名 を 有 する 他 人 から 登 録 異 議 の 申 立 てや 無 効 審 判 請 求 が されたときに 初 めて, 当 該 商 標 の 商 標 法 4 条 1 項 8 号 該 当 性 を 判 断 すれば 足 り るとするのは, 同 号 が 商 標 の 不 登 録 事 由 として 規 定 されていることにそぐわな いのみならず, 登 録 異 議 の 申 立 期 間 が 商 標 掲 載 公 報 の 発 行 の 日 から2 月 以 内 に 限 られ( 同 法 43 条 の2), 同 項 8 号 に 違 反 してされたことを 理 由 とする 無 効 審 判 は 商 標 権 の 設 定 の 登 録 の 日 から5 年 を 経 過 した 後 は 請 求 することができな いとされていることから( 同 法 47 条 1 項 ), 人 は, 自 らの 承 諾 なしにその 氏 名 を 商 標 に 使 われることがないという 利 益 を 確 保 するために, 自 己 の 氏 名 が 含 まれる 商 標 の 登 録 の 有 無 を 常 に 確 認 しなければならないことになる かかる 解 釈 は, 商 標 に 含 まれる 氏 名 を 有 する 他 人 に 負 担 を 強 いるものであって, 相 当 で ないといわざるを 得 ない 以 上 の 諸 点 に 照 らし, 原 告 の 上 記 主 張 は, 採 用 することができない なお, 本 件 において, 亡 山 岸 以 外 の 山 岸 一 雄 が 不 快 感 を 感 じることがないとまで は 認 めるに 足 りない (2) 原 告 は, 学 説 の 状 況 及 び 氏 名 を 含 む 商 標 が 登 録 されている 例 が 存 在 する ことを 挙 げ, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 について, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 について は,そのこと 自 体 によって, 上 記 人 格 的 利 益 の 侵 害 のおそれを 認 め,その 他 人 の 承 諾 を 得 た 場 合 でなければ, 商 標 登 録 を 受 けることができないものと 解 釈 す ることは 不 当 である 旨 主 張 する しかし, 原 告 の 挙 げる 学 説 の 内 容 は, 当 裁 判 所 の 判 断 を 拘 束 するものではな いし, 過 去 に 氏 名 を 含 む 商 標 が 登 録 されている 例 があるからといって, 本 件 審 決 における 本 願 商 標 の 商 標 法 4 条 1 項 8 号 該 当 性 の 判 断 が,これに 左 右 される ものではない (3) 原 告 は, 被 告 が,NTT ハローページ 電 話 帳 を 検 索 して 同 姓 同 名 者 を 発 見 し,これを 出 願 人 に 通 知 して, 拒 絶 や 審 決 の 根 拠 とするのは, 現 実 に 同 姓 同 名 者 が 存 在 する 蓋 然 性 が 高 いにもかかわらず, 氏 名 を 含 む 商 標 が 登 録 され ている 例 が 多 く 存 在 していること,NTT 電 話 帳 は,プライバシー 保 護 等 の 観 点 から, 近 時 掲 載 者 数 が 激 減 しており,また, 戸 籍 名 で 登 録 されている 可 能 性 もますます 少 なくなっていること 等 に 照 らし, 不 当 である 旨 主 張 する しかし, 前 記 2(1)イのとおり, 本 件 においては,NTT ハローページ 電 話 帳 の 掲 載 内 容 によれば, 本 願 商 標 の 登 録 出 願 時 及 び 本 件 審 決 時 において, 亡 山 岸 とは 別 に, 山 岸 一 雄 を 氏 名 とする 者 が, 複 数 生 存 していたものと 推 認 されるのであるから, 本 件 審 決 が, 本 願 商 標 の 商 標 法 4 条 1 項 8 号 該 当 性 に ついて,NTT ハローページ 電 話 帳 を 検 索 し,その 結 果 に 基 づき 判 断 した ことが, 不 当 であるということはできない そして,これら 同 姓 同 名 者 の 承 諾 を 得 ていないにもかかわらず, 山 岸 一 雄 の 氏 名 を 含 む 商 標 が 登 録 されるこ とにより,それらの 者 の 人 格 的 利 益 を 侵 害 するおそれがおよそ 存 在 しないとま でいうことはできない 5
(4) 原 告 は, 米 国, 欧 州,ドイツ,イギリス,フランス, 韓 国, 台 湾,シン ガポール, 中 国 などでは,ある 人 物 の 氏 名 について, 同 姓 同 名 の 他 人 が 存 在 す ることのみを 理 由 に,その 他 人 の 同 意 がなければ 一 律 に 商 標 登 録 を 受 けられな いとはしておらず,これらの 国 や 地 域 では 本 願 商 標 に 相 当 するような 商 標 の 登 録 は 可 能 であるから, 本 件 審 決 の 商 標 法 4 条 1 項 8 号 の 解 釈 は, 国 際 協 調, 国 際 調 和 の 理 念 に 反 する 旨 主 張 する しかし, 諸 外 国 における 商 標 保 護 に 関 する 法 制 と 我 が 国 におけるそれとが 異 なることがあり 得 べきことは,パリ 条 約 6 条 (1)が 商 標 の 登 録 出 願 及 び 登 録 の 条 件 は, 各 同 盟 国 において 国 内 法 令 で 定 める 旨 規 定 していることに 照 らして も, 国 際 的 にも 当 然 に 予 定 されているということができる したがって,いか なる 規 定 とするかは, 立 法 政 策 の 問 題 にほかならず, 仮 に 商 標 法 4 条 1 項 8 号 について 前 記 1 及 び2のとおり 解 釈 することにより, 原 告 が 挙 げる 諸 外 国 にお ける 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 の 登 録 に 関 する 法 制 と 我 が 国 におけるそれとに 異 な る 面 があったとしても,それゆえに, 当 該 解 釈 が, 国 際 協 調, 国 際 調 和 の 理 念 に 反 するものであるなどということはできない (5) 原 告 は,パリ 条 約 6 条 の5によれば, 諸 外 国 に 営 業 所, 住 所 又 は 国 籍 を 有 し, 本 国 で 商 標 登 録 を 得 た 者 であれば, 本 願 商 標 のように 氏 名 を 含 む 商 標 を 日 本 において 登 録 することができるにもかかわらず, 日 本 にのみ 営 業 所, 住 所 又 は 国 籍 を 有 する 者 の 場 合 は, 登 録 することができないというのは, 日 本 人 や 日 本 法 人 を 不 当 に 不 利 に 扱 うことにほかならず, 憲 法 14 条 に 反 する 旨 主 張 する しかし,パリ 条 約 6 条 の5は, 外 国 登 録 商 標 については, 原 則 として, 本 国 において 正 規 に 登 録 された 商 標 は 他 の 同 盟 国 においてもそのままその 登 録 を 認 められかつ 保 護 されるとしつつ(6 条 の5A), 当 該 商 標 が, 保 護 を 要 求 され る 国 における 第 三 者 の 既 得 権 を 害 するようなものである 場 合 等 には, 本 国 にお いて 正 規 に 登 録 された 商 標 であっても,その 登 録 を 拒 絶 され 又 は 無 効 とされる ことがある 旨 規 定 している(6 条 の5B) そして, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 は, 前 記 1のとおり, 人 の 肖 像, 氏 名, 名 称 等 に 対 する 人 格 的 利 益 を 保 護 する 趣 旨 の 規 定 であるところ,かかる 人 格 的 利 益 は, 上 記 にいう 第 三 者 の 既 得 権 に 相 当 するものであると 解 される そうすると, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 について, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 については,そのこと 自 体 によって, 上 記 人 格 的 利 益 の 侵 害 のおそれを 認 め,その 他 人 の 承 諾 を 得 た 場 合 でなければ, 商 標 登 録 を 受 け ることができないものと 解 釈 することで, 日 本 人 や 日 本 法 人 を 不 当 に 不 利 に 扱 う 結 果 をもたらすなどということはできない (6) 原 告 は, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 であっても, 長 年 にわたる 当 該 商 標 の 使 用 や 指 定 商 品 又 は 指 定 役 務 と 関 連 付 けられた 報 道 等 での 当 該 氏 名 の 露 出 等 の 結 果, 需 要 者 が 何 人 かの 業 務 に 係 る 商 品 又 は 役 務 であると 認 識 することができ, 他 人 の 業 務 に 係 るものと 認 識 しない 状 態 となった 場 合 には, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 の 規 定 にかかわらず, 商 標 登 録 を 受 けることができると 解 すべきである 旨 主 張 する 6
しかし, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 について, 同 法 3 条 2 項 に 相 当 する 規 定 は 存 し ない 原 告 の 上 記 主 張 は, 独 自 の 見 解 であって, 採 用 の 限 りでない 4 結 論 以 上 によれば, 原 告 の 本 訴 請 求 は 理 由 がないから,これを 棄 却 することとし て, 主 文 のとおり 判 決 する (2) 事 実 の 概 要 1 特 許 庁 における 手 続 の 経 緯 (1) 原 告 は, 平 成 25 年 11 月 19 日, 山 岸 一 雄 の 文 字 を 標 準 文 字 で 表 して 成 る 商 標 ( 以 下 本 願 商 標 という )について, 商 標 登 録 出 願 をした ( 商 願 2013-90418 号 以 下 本 願 という 甲 7) (2) 原 告 は, 上 記 商 標 登 録 出 願 に 対 して, 平 成 26 年 8 月 22 日 付 けで 拒 絶 査 定 を 受 けたので, 同 年 11 月 26 日, 拒 絶 査 定 に 対 する 不 服 の 審 判 を 請 求 す るとともに, 指 定 商 品 又 は 指 定 役 務 を 第 30 類 つけ 麺 用 の 中 華 麺, 調 理 済 みのつけ 麺,ラーメンの 麺,つけ 麺 用 のスープ,ラーメンスープ,ぎょうざ, しゅうまい, 第 43 類 つけ 麺 を 主 とする 飲 食 物 の 提 供 に 補 正 した( 甲 9,11,17) (3) 特 許 庁 は, 原 告 の 請 求 を 不 服 2014-24079 号 事 件 として 審 理 し, 平 成 28 年 2 月 1 日, 本 件 審 判 の 請 求 は, 成 り 立 たない とする 別 紙 審 決 書 ( 写 し) 記 載 の 審 決 ( 以 下 本 件 審 決 という )をし, 同 年 2 月 15 日,その 謄 本 は 原 告 に 送 達 された (4) 原 告 は, 平 成 28 年 3 月 16 日, 本 件 審 決 の 取 消 しを 求 めて 本 件 訴 訟 を 提 起 した 2 本 件 審 決 の 理 由 の 要 旨 本 件 審 決 の 理 由 は, 別 紙 審 決 書 ( 写 し)のとおりである 要 するに, 本 願 商 標 は, 他 人 の 氏 名 から 成 る 商 標 であり,かつ, 本 願 商 標 を 登 録 することについ て, 当 該 他 人 の 承 諾 を 得 ているものとは 認 められないから, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 に 該 当 し, 商 標 登 録 を 受 けることができない,というものである 3 取 消 事 由 本 願 商 標 の 商 標 法 4 条 1 項 8 号 該 当 性 の 判 断 の 誤 り (2) 判 断 1 商 標 法 4 条 1 項 8 号 の 趣 旨 について 商 標 法 4 条 1 項 8 号 は, 他 人 の 肖 像 又 は 他 人 の 氏 名 若 しくは 名 称 若 しくは 著 名 な 雅 号, 芸 名 若 しくは 筆 名 若 しくはこれらの 著 名 な 略 称 を 含 む 商 標 (その 他 人 の 承 諾 を 得 ているものを 除 く ) については, 商 標 登 録 を 受 けることが できない 旨 を 規 定 している 商 標 法 4 条 1 項 は, 商 標 登 録 を 受 けることができない 商 標 を 各 号 で 列 記 して いるが, 需 要 者 の 間 に 広 く 認 識 されている 商 標 との 関 係 で 商 品 又 は 役 務 の 出 所 7
の 混 同 の 防 止 を 図 ろうとする 同 項 10 号,15 号 等 の 規 定 とは 別 に,8 号 の 規 定 が 定 められていることからみると,8 号 が, 他 人 の 肖 像 又 は 他 人 の 氏 名, 名 称, 著 名 な 略 称 等 を 含 む 商 標 は,その 他 人 の 承 諾 を 得 ているものを 除 き, 商 標 登 録 を 受 けることができないと 規 定 した 趣 旨 は, 人 ( 法 人 等 の 団 体 を 含 む 以 下 同 じ )の 肖 像, 氏 名, 名 称 等 に 対 する 人 格 的 利 益 を 保 護 すること,すなわ ち, 自 らの 承 諾 なしにその 氏 名, 名 称 等 を 商 標 に 使 われることがないという 利 益 を 保 護 することにあると 解 される( 最 高 裁 平 成 15 年 ( 行 ヒ) 第 265 号 同 16 年 6 月 8 日 第 三 小 法 廷 判 決 裁 判 集 民 事 214 号 373 頁, 最 高 裁 平 成 1 6 年 ( 行 ヒ) 第 343 号 同 17 年 7 月 22 日 第 二 小 法 廷 判 決 裁 判 集 民 事 21 7 号 595 頁 参 照 ) そうすると,ある 氏 名 を 有 する 他 人 にとって,その 氏 名 を 同 人 の 承 諾 なく 商 標 登 録 されることは, 同 人 の 人 格 的 利 益 を 害 されることに なると 考 えられる 2 本 願 商 標 の 商 標 法 4 条 1 項 8 号 該 当 性 について (1) 本 願 商 標 ア 本 願 商 標 は, 山 岸 一 雄 の 文 字 を 標 準 文 字 で 表 して 成 るものであるとこ ろ,その 構 成 である 山 岸 一 雄 の 文 字 は, 我 が 国 における 氏 名 表 記 の 実 情 に 照 らし, 山 岸 が 氏 を 表 し, 一 雄 が 名 を 表 し,そして,その 全 体 が 山 岸 一 雄 なる 氏 名 を 表 したものとして 認 識 されるものである イ 証 拠 ( 乙 3~17 枝 番 を 含 む )によれば, 山 岸 一 雄 を 氏 名 とする 者 が,1NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 長 野 県 長 野 版 に 14. 9 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 6 月 11 日 現 在 のもの) 及 び 15.9 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 6 月 11 日 現 在 のもの)を 通 じて2 名,2NTT 西 日 本 作 成 の ハローページ 京 都 市 南 部 版 に 14.6 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 2 月 28 日 現 在 のもの) 及 び 15.6 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 2 月 27 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,3NTT 西 日 本 作 成 の ハローページ 石 川 県 のと 版 に 14.8 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 5 月 2 日 現 在 のもの) 及 び 15.8 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 4 月 24 日 現 在 のもの)を 通 じて2 名,4NTT 西 日 本 作 成 の ハローページ 福 井 県 嶺 北 版 に 14.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 9 月 1 日 現 在 のもの) 及 び 15.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 9 月 4 日 現 在 のも の)を 通 じて1 名,5NTT 西 日 本 作 成 の ハローページ 石 川 県 かなざわ 版 に 14.8 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 5 月 2 日 現 在 のもの) 及 び 15.8 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 4 月 24 日 現 在 のもの)を 通 じて 2 名,6NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 新 潟 県 長 岡 版 に 14. 12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 9 月 9 日 現 在 のもの) 及 び 15.1 2 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 9 月 8 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,7NT T 東 日 本 作 成 の ハローページ 新 潟 県 新 潟 版 に 14.6 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 3 月 11 日 現 在 のもの) 及 び 15.6 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 3 月 11 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,8NTT 東 日 本 作 成 の 8
ハローページ 新 潟 県 上 越 版 に 14.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 2 6 年 9 月 9 日 現 在 のもの) 及 び 15.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 9 月 8 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,9NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 新 潟 県 魚 沼 版 に 14.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 9 月 9 日 現 在 のもの) 及 び 15.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 9 月 8 日 現 在 のも の)を 通 じて1 名,10NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 新 潟 県 糸 魚 川 版 に 14.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 9 月 9 日 現 在 のもの) 及 び 15.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 9 月 8 日 現 在 のもの)を 通 じ て1 名,11NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 群 馬 県 桐 生 地 区 版 に 14.7 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 3 月 20 日 現 在 のもの) 及 び 15. 7 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 4 月 3 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,12NT T 東 日 本 作 成 の ハローページ 春 日 部 加 須 久 喜 市 版 に 14. 8 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 5 月 8 日 現 在 のもの) 及 び 15.12 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 9 月 3 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,13NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 市 原 木 更 津 君 津 市 版 に 14.7 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 4 月 4 日 現 在 のもの) 及 び 15.7 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 4 月 3 日 現 在 のもの)を 通 じて2 名,14NTT 東 日 本 作 成 の ハローページ 千 葉 四 街 道 市 版 に 14.7 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 4 月 4 日 現 在 のもの) 及 び 15.7 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 4 月 3 日 現 在 のもの)を 通 じて1 名,15NTT 東 日 本 作 成 の ハローペー ジ 町 田 市 版 に 15.1 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 26 年 10 月 9 日 現 在 のもの) 及 び 16.2 版 ( 掲 載 情 報 は 平 成 27 年 10 月 26 日 現 在 の もの)を 通 じて1 名, 掲 載 されていることが 認 められる 上 記 事 実 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれば, 本 願 商 標 の 登 録 出 願 時 ( 平 成 25 年 11 月 19 日 ) 及 び 本 件 審 決 時 ( 平 成 28 年 2 月 1 日 )において, 亡 山 岸 ( 生 前 の 住 所 地 は 東 京 都 豊 島 区 甲 19)とは 別 に, 山 岸 一 雄 を 氏 名 と する 者 が, 複 数 生 存 していたものと 推 認 される ウ 以 上 によれば, 本 願 商 標 は, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 であると 認 められる (2) 山 岸 一 雄 を 氏 名 とする 者 の 承 諾 の 有 無 証 拠 ( 甲 19,38) 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれば, 原 告 の 取 締 役 であった 亡 山 岸 は, 本 願 商 標 の 登 録 出 願 時 において, 原 告 が 本 願 商 標 の 登 録 出 願 をし,そ の 商 標 登 録 を 受 けることを 承 諾 していたこと,その 後, 亡 山 岸 は, 平 成 27 年 4 月 1 日 死 亡 したことが 認 められる しかし, 前 記 (1)イのとおり, 本 願 商 標 の 登 録 出 願 時 及 び 本 件 審 決 時 におい て, 亡 山 岸 とは 別 に, 山 岸 一 雄 を 氏 名 とする 者 が, 複 数 生 存 していたもの と 推 認 されるところ, 亡 山 岸 以 外 の 山 岸 一 雄 を 氏 名 とする 者 が 本 願 商 標 の 登 録 について 承 諾 していたとの 事 実 を 認 めるに 足 りる 証 拠 はない (3) 小 括 以 上 によれば, 本 願 商 標 は, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 に 該 当 し, 商 標 登 録 を 受 け 9
ることができないものというべきである 3 原 告 の 主 張 について (1) 原 告 は, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 において, 氏 名 を 含 む 商 標 の 登 録 が 許 され ないのは,1 他 人 のパブリシティの 権 利 を 侵 害 する 場 合 ( 当 該 他 人 の 氏 名 等 に 少 なくとも 周 知 性 が 認 められる 場 合 ),2パブリシティの 権 利 以 外 の 氏 名 専 用 権 の 侵 害 になる 場 合 ( 商 標 出 願 の 願 書 の 記 載 から 客 観 的 類 型 的 に 判 断 し, 氏 名 保 持 者 が 不 快 感 を 感 じると 判 断 すべき 場 合 )に 限 られると 解 すべきところ, 本 願 商 標 は, 上 記 1 及 び2のいずれにも 該 当 しない 旨 主 張 する しかし, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 の 趣 旨 は, 前 記 1のとおり, 人 の 氏 名 に 対 する 人 格 的 利 益 の 保 護,すなわち, 自 らの 承 諾 なしにその 氏 名, 名 称 等 を 商 標 に 使 われることがないという 利 益 を 保 護 することにある そして, 同 号 は,その 規 定 上, 著 名 な 雅 号, 芸 名 若 しくは 筆 名 若 しくはこれらの 著 名 な 略 称 とし, これらについては 著 名 なものを 含 む 商 標 のみを 不 登 録 事 由 とする 一 方 で, 他 人 の 肖 像 又 は 他 人 の 氏 名 若 しくは 名 称 については, 著 名 又 は 周 知 なものであ ることを 要 するとはしていない また, 同 号 は, 人 格 的 利 益 の 侵 害 のおそれが あることそれ 自 体 を 要 件 として 規 定 するものでもない したがって, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 の 趣 旨 やその 規 定 ぶりからすると, 同 号 にいう 他 人 の 氏 名 が, 著 名 又 は 周 知 なものに 限 られるとは 解 し 難 く,また, 同 号 の 適 用 が, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 の 登 録 により, 当 該 他 人 の 人 格 的 利 益 が 侵 害 され, 又 はそのおそ れがあるとすべき 具 体 的 事 情 の 証 明 があったことを 要 件 とするものであるとも 解 し 難 い すなわち, 同 号 は, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 については,そのこと 自 体 によって, 上 記 人 格 的 利 益 の 侵 害 のおそれを 認 め,その 他 人 の 承 諾 を 得 た 場 合 でなければ, 商 標 登 録 を 受 けることができないとしているものと 解 される 原 告 の 上 記 主 張 は, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 が,その 規 定 上, 他 人 の 氏 名 につい ては 著 名 な ものであることを 要 するとはしていないこと, 他 人 の 人 格 的 利 益 を 侵 害 し, 又 はそのおそれがあるとすべき 具 体 的 事 情 の 証 明 があったことを 要 件 としているとも 解 し 難 いことに 照 らし, 文 理 解 釈 の 範 囲 を 超 えるものとい わざるを 得 ない また, 同 号 の 趣 旨 は, 上 記 のとおり, 人 の 氏 名 に 対 する 人 格 的 利 益 の 保 護 にあるところ,この 人 格 的 利 益 の 保 護 の 要 否 を, 顧 客 吸 引 力 の 有 無 ( 周 知 性 や 著 名 性 の 有 無 )により 分 けるというのも, 同 号 が 商 品 又 は 役 務 の 出 所 の 混 同 のおそれを 要 件 としていないことに 照 らし, 相 当 でない さらに, 自 己 の 氏 名 を 含 む 商 標 が 登 録 されることにより 氏 名 保 持 者 が 精 神 的 苦 痛 や 不 快 感 を 感 じるか 否 かを 商 標 出 願 の 願 書 の 記 載 のみから 判 断 すれば 足 りるというの も, 氏 名 保 持 者 ごとに 人 格 的 利 益 に 係 る 事 情 は 異 なるにもかかわらず,その 個 別 的 事 情 を 一 切 捨 象 するものであって, 相 当 でない なお, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 について, 当 該 氏 名 を 有 する 他 人 から 登 録 異 議 の 申 立 てや 無 効 審 判 請 求 が されたときに 初 めて, 当 該 商 標 の 商 標 法 4 条 1 項 8 号 該 当 性 を 判 断 すれば 足 り るとするのは, 同 号 が 商 標 の 不 登 録 事 由 として 規 定 されていることにそぐわな いのみならず, 登 録 異 議 の 申 立 期 間 が 商 標 掲 載 公 報 の 発 行 の 日 から2 月 以 内 に 10
限 られ( 同 法 43 条 の2), 同 項 8 号 に 違 反 してされたことを 理 由 とする 無 効 審 判 は 商 標 権 の 設 定 の 登 録 の 日 から5 年 を 経 過 した 後 は 請 求 することができな いとされていることから( 同 法 47 条 1 項 ), 人 は, 自 らの 承 諾 なしにその 氏 名 を 商 標 に 使 われることがないという 利 益 を 確 保 するために, 自 己 の 氏 名 が 含 まれる 商 標 の 登 録 の 有 無 を 常 に 確 認 しなければならないことになる かかる 解 釈 は, 商 標 に 含 まれる 氏 名 を 有 する 他 人 に 負 担 を 強 いるものであって, 相 当 で ないといわざるを 得 ない 以 上 の 諸 点 に 照 らし, 原 告 の 上 記 主 張 は, 採 用 することができない なお, 本 件 において, 亡 山 岸 以 外 の 山 岸 一 雄 が 不 快 感 を 感 じることがないとまで は 認 めるに 足 りない (2) 原 告 は, 学 説 の 状 況 及 び 氏 名 を 含 む 商 標 が 登 録 されている 例 が 存 在 する ことを 挙 げ, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 について, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 について は,そのこと 自 体 によって, 上 記 人 格 的 利 益 の 侵 害 のおそれを 認 め,その 他 人 の 承 諾 を 得 た 場 合 でなければ, 商 標 登 録 を 受 けることができないものと 解 釈 す ることは 不 当 である 旨 主 張 する しかし, 原 告 の 挙 げる 学 説 の 内 容 は, 当 裁 判 所 の 判 断 を 拘 束 するものではな いし, 過 去 に 氏 名 を 含 む 商 標 が 登 録 されている 例 があるからといって, 本 件 審 決 における 本 願 商 標 の 商 標 法 4 条 1 項 8 号 該 当 性 の 判 断 が,これに 左 右 される ものではない (3) 原 告 は, 被 告 が,NTT ハローページ 電 話 帳 を 検 索 して 同 姓 同 名 者 を 発 見 し,これを 出 願 人 に 通 知 して, 拒 絶 や 審 決 の 根 拠 とするのは, 現 実 に 同 姓 同 名 者 が 存 在 する 蓋 然 性 が 高 いにもかかわらず, 氏 名 を 含 む 商 標 が 登 録 され ている 例 が 多 く 存 在 していること,NTT 電 話 帳 は,プライバシー 保 護 等 の 観 点 から, 近 時 掲 載 者 数 が 激 減 しており,また, 戸 籍 名 で 登 録 されている 可 能 性 もますます 少 なくなっていること 等 に 照 らし, 不 当 である 旨 主 張 する しかし, 前 記 2(1)イのとおり, 本 件 においては,NTT ハローページ 電 話 帳 の 掲 載 内 容 によれば, 本 願 商 標 の 登 録 出 願 時 及 び 本 件 審 決 時 において, 亡 山 岸 とは 別 に, 山 岸 一 雄 を 氏 名 とする 者 が, 複 数 生 存 していたものと 推 認 されるのであるから, 本 件 審 決 が, 本 願 商 標 の 商 標 法 4 条 1 項 8 号 該 当 性 に ついて,NTT ハローページ 電 話 帳 を 検 索 し,その 結 果 に 基 づき 判 断 した ことが, 不 当 であるということはできない そして,これら 同 姓 同 名 者 の 承 諾 を 得 ていないにもかかわらず, 山 岸 一 雄 の 氏 名 を 含 む 商 標 が 登 録 されるこ とにより,それらの 者 の 人 格 的 利 益 を 侵 害 するおそれがおよそ 存 在 しないとま でいうことはできない (4) 原 告 は, 米 国, 欧 州,ドイツ,イギリス,フランス, 韓 国, 台 湾,シン ガポール, 中 国 などでは,ある 人 物 の 氏 名 について, 同 姓 同 名 の 他 人 が 存 在 す ることのみを 理 由 に,その 他 人 の 同 意 がなければ 一 律 に 商 標 登 録 を 受 けられな いとはしておらず,これらの 国 や 地 域 では 本 願 商 標 に 相 当 するような 商 標 の 登 録 は 可 能 であるから, 本 件 審 決 の 商 標 法 4 条 1 項 8 号 の 解 釈 は, 国 際 協 調, 国 11
際 調 和 の 理 念 に 反 する 旨 主 張 する しかし, 諸 外 国 における 商 標 保 護 に 関 する 法 制 と 我 が 国 におけるそれとが 異 なることがあり 得 べきことは,パリ 条 約 6 条 (1)が 商 標 の 登 録 出 願 及 び 登 録 の 条 件 は, 各 同 盟 国 において 国 内 法 令 で 定 める 旨 規 定 していることに 照 らして も, 国 際 的 にも 当 然 に 予 定 されているということができる したがって,いか なる 規 定 とするかは, 立 法 政 策 の 問 題 にほかならず, 仮 に 商 標 法 4 条 1 項 8 号 について 前 記 1 及 び2のとおり 解 釈 することにより, 原 告 が 挙 げる 諸 外 国 にお ける 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 の 登 録 に 関 する 法 制 と 我 が 国 におけるそれとに 異 な る 面 があったとしても,それゆえに, 当 該 解 釈 が, 国 際 協 調, 国 際 調 和 の 理 念 に 反 するものであるなどということはできない (5) 原 告 は,パリ 条 約 6 条 の5によれば, 諸 外 国 に 営 業 所, 住 所 又 は 国 籍 を 有 し, 本 国 で 商 標 登 録 を 得 た 者 であれば, 本 願 商 標 のように 氏 名 を 含 む 商 標 を 日 本 において 登 録 することができるにもかかわらず, 日 本 にのみ 営 業 所, 住 所 又 は 国 籍 を 有 する 者 の 場 合 は, 登 録 することができないというのは, 日 本 人 や 日 本 法 人 を 不 当 に 不 利 に 扱 うことにほかならず, 憲 法 14 条 に 反 する 旨 主 張 する しかし,パリ 条 約 6 条 の5は, 外 国 登 録 商 標 については, 原 則 として, 本 国 において 正 規 に 登 録 された 商 標 は 他 の 同 盟 国 においてもそのままその 登 録 を 認 められかつ 保 護 されるとしつつ(6 条 の5A), 当 該 商 標 が, 保 護 を 要 求 され る 国 における 第 三 者 の 既 得 権 を 害 するようなものである 場 合 等 には, 本 国 にお いて 正 規 に 登 録 された 商 標 であっても,その 登 録 を 拒 絶 され 又 は 無 効 とされる ことがある 旨 規 定 している(6 条 の5B) そして, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 は, 前 記 1のとおり, 人 の 肖 像, 氏 名, 名 称 等 に 対 する 人 格 的 利 益 を 保 護 する 趣 旨 の 規 定 であるところ,かかる 人 格 的 利 益 は, 上 記 にいう 第 三 者 の 既 得 権 に 相 当 するものであると 解 される そうすると, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 について, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 については,そのこと 自 体 によって, 上 記 人 格 的 利 益 の 侵 害 のおそれを 認 め,その 他 人 の 承 諾 を 得 た 場 合 でなければ, 商 標 登 録 を 受 け ることができないものと 解 釈 することで, 日 本 人 や 日 本 法 人 を 不 当 に 不 利 に 扱 う 結 果 をもたらすなどということはできない (6) 原 告 は, 他 人 の 氏 名 を 含 む 商 標 であっても, 長 年 にわたる 当 該 商 標 の 使 用 や 指 定 商 品 又 は 指 定 役 務 と 関 連 付 けられた 報 道 等 での 当 該 氏 名 の 露 出 等 の 結 果, 需 要 者 が 何 人 かの 業 務 に 係 る 商 品 又 は 役 務 であると 認 識 することができ, 他 人 の 業 務 に 係 るものと 認 識 しない 状 態 となった 場 合 には, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 の 規 定 にかかわらず, 商 標 登 録 を 受 けることができると 解 すべきである 旨 主 張 する しかし, 商 標 法 4 条 1 項 8 号 について, 同 法 3 条 2 項 に 相 当 する 規 定 は 存 し ない 原 告 の 上 記 主 張 は, 独 自 の 見 解 であって, 採 用 の 限 りでない 4 結 論 以 上 によれば, 原 告 の 本 訴 請 求 は 理 由 がないから,これを 棄 却 することとし て, 主 文 のとおり 判 決 する 12
論 説 1.まず 本 件 判 決 の 理 由 の 中 で 述 べられている 原 告 主 張 の 学 説 の 状 況 の 内 容 に ついては 準 備 書 面 や 証 拠 を 見 ていないから 不 明 であるけれども 筆 者 において もこの 問 題 について 次 の 著 書 等 において 論 じているので 参 照 されたい 商 標 法 における 著 名 死 者 の 保 護 パブリシティの 権 利 の 効 力 工 業 所 有 権 法 研 究 1989 年 5 月 号 ( 牛 木 理 一 デザイン キャラクター パブリシティの 保 護 悠 々 社 457 頁 ) この 中 で 著 者 は (1) 個 人 の 氏 名 肖 像 の 財 産 的 価 値, (2) 米 国 におけるパブリシティの 権 利 の 発 達,(3)パブリシティの 権 利 の 移 転 性 と 保 護 期 間,(4) 商 標 法 とパブリシティの 権 利 の 保 護 ( 法 4 条 1 項 8 号 の 適 用 性 ),(5) 商 標 法 と 公 序 良 俗 の 保 護 ( 法 4 条 1 項 7 号 の 適 用 性 )について 論 じている しかしながら 本 件 にあっては パブリシティの 権 利 の 考 え 方 は 全 く 無 用 で あり 商 標 法 4 条 1 項 8 号 の 規 定 が 適 用 された 事 案 である 2. 本 件 判 決 は まず 商 標 法 4 条 1 項 8 号 の 規 定 の 適 用 について 最 高 裁 の 判 例 を 紹 介 し 本 件 商 標 の 文 字 標 章 は 山 岸 一 雄 という 氏 名 を 含 むものであること から これについての 多 数 の 証 拠 を 被 告 は 提 出 したところ わが 国 に 多 数 存 する この 氏 名 を 同 人 らの 承 諾 なく 商 標 登 録 することは 同 人 らの 人 格 的 利 益 を 害 す ることになる と 判 断 したのである 3.ところで 裁 判 所 は 法 4 条 1 項 8 号 の 規 定 の 趣 旨 を 人 の 人 格 的 利 益 の 保 護 にあると 説 示 し 財 産 的 利 益 (パブリシティの 権 利 )の 保 護 に 及 ぶものではな いし 死 者 には 及 んでいないから 著 名 死 者 の 氏 名 は 同 条 項 によっては 保 護 され るものではないと 暗 示 している しかしながら 著 名 死 者 の 氏 名 や 肖 像 は その 遺 族 や 遺 産 財 団 が 登 録 出 願 をす れば 登 録 されている 例 を 筆 者 は 著 書 等 で 紹 介 しているし 経 験 もしている 4. 商 標 権 自 体 は 財 産 権 であって 人 格 権 ではないのだから 人 の 氏 名 や 肖 像 等 が 有 する 経 済 的 価 値 (Publicity Value)に 法 は 注 目 し 他 人 による 登 録 に 対 して は 消 極 的 であると 筆 者 は 考 えているが 無 名 な 他 人 の 氏 名 や 肖 像 等 に 対 しては 第 三 者 は 関 心 がないから 登 録 出 願 などはしない 本 件 の 山 岸 一 雄 の 氏 名 は 大 勝 軒 との 結 合 ないし 関 係 で 著 名 であるし 関 係 する 商 品 や 役 務 の 商 標 として 使 用 され 得 る 氏 名 であるとする 出 願 人 の 意 思 は 理 解 することはできる ただ 山 岸 一 雄 という 氏 名 だけではわが 国 に 多 数 い ることが 判 明 したことが 登 録 できない 結 果 となったのであろう しかしながら 事 件 (2)についての 判 決 は 理 解 できても 事 件 (1)につい ての 判 決 は 疑 問 であるが 権 利 不 要 求 の 制 度 をもたないわが 国 商 標 法 の 上 では やむを 得 ない 判 断 といえるだろう 牛 木 理 一 13