国 際 税 務 研 究 会 国 際 税 務 2012 年 11 月 号 掲 載 米 国 連 邦 法 人 所 得 税 制 の 概 要 - 大 統 領 選 挙 を 前 に- PwC 米 国 ニューヨーク 事 務 所 税 務 パートナー 徳 弘 高 明 ワシントン DC 事 務 所 税 務 マネジャー 小 林 徹 来 る 11 月 6 日 ( 火 ), 米 国 大 統 領 選 挙 および 連 邦 議 会 選 挙 が 実 施 される 近 年, 急 速 に 悪 化 する 連 邦 財 政 の 改 善 と 景 気 雇 用 対 策 が 急 務 とされる 社 会 情 勢 のもと, 連 邦 税 制 について, 税 収 確 保, 国 内 雇 用 促 進, 複 雑 になりすぎたとされる 税 法 の 簡 素 化, 多 国 籍 企 業 に 対 する 課 税 強 化 等, 様 々な 観 点 から,1986 年 以 来 となる 抜 本 的 な 税 制 改 正 の 必 要 性 が 議 論 されており, 今 回 の 選 挙 においても 税 制 改 正 が 大 きな 争 点 の 一 つとなっている 2 年 前 の 連 邦 議 会 選 挙 以 後,オ バマ 大 統 領 の 任 期 後 半 の 2 年 間 は, 上 院 は 民 主 党 主 導, 下 院 は 共 和 党 主 導 と, 連 邦 議 会 がねじれ 状 態 にあり, 税 制 改 正 への 動 きが 膠 着 ともいえる 状 況 にあった 今 回 の 選 挙 結 果 次 第 で, 数 々の 課 題 に 対 処 する 税 制 改 正 がいよいよ 本 格 化, 活 発 化 することが 期 待 されている 本 稿 では, 選 挙 に 先 立 ち, 今 後 の 税 制 改 正 の 動 きを 追 うための 予 備 的 情 報 として, 現 行 の 連 邦 法 人 所 得 税 制 の 概 要 に ついて 解 説 する 1. 連 邦 法 人 税 に 関 する 基 礎 知 識 1) 内 国 歳 入 法 および 内 国 歳 入 庁 英 国 による 経 済 的 支 配 への 反 発 を 強 めた 13 植 民 地 の 連 合 体 として 1776 年 に 独 立 を 宣 言 した 米 国 は, 独 立 当 初 の 13 州 に 新 たな 州 を 加 え, 漸 次 拡 大 発 展 していったが, 連 邦 政 府 による 課 税 権 が 合 衆 国 憲 法 に 明 文 化 されたのは 1913 年 の 修 正 第 16 条 においてである その 後,1~2 年 ごとに 独 立 した 税 法 が 制 定 されたが, 年 々 増 加 していく 税 法 を 網 羅 的 に 把 握 することが 困 難 になったため,1939 年,これら 既 定 の 税 法 群 に 代 わる 税 法 典 として, 内 国 歳 入 法 (IRC:Internal Revenue Code)が 制 定 された 以 後,1954 年 に 行 われた 条 文 整 理,1986 年 に 行 われた 抜 本 的 改 正 を 含 め, 頻 繁 に 行 われる 税 制 改 正 を 反 映 してきたのが 現 行 内 国 歳 入 法 である 日 本 では, 法 人 税 法, 所 得 税 法, 相 続 税 法 等 の 別 個 の 税 法 により, 法 人 税, 所 得 税, 相 続 税 等 が 規 定 されるが, 米 国 で は,ひとつの 税 法 典 である 内 国 歳 入 法 により, 法 人 所 得 税, 個 人 所 得 税, 遺 産 税 等 が 規 定 されている 内 国 歳 入 法 においては,より 詳 細 な 内 容 を 財 務 省 規 則 (Regulations)に 委 ねる 委 任 規 定 が 多 々 設 定 されている また, 米 国 連 邦 税 制 を 執 行 する 行 政 機 関 である 内 国 歳 入 庁 (IRS:Internal Revenue Service)は, 米 国 史 上 最 大 の 内 乱 と される 南 北 戦 争 (1861 年 ~1865 年 )の 戦 費 調 達 のため,1862 年,Bureau of Internal Revenue として 設 置 され,1953 年 に 現 名 称 へと 変 更 している 内 国 歳 入 庁 は, 財 務 省 の1 部 局 である PwC 1
2) 連 邦 税 収 に 占 める 法 人 所 得 税 の 割 合 2011 年 9 月 30 日 終 了 財 政 年 度 における 連 邦 税 収 2 兆 1,737 億 ドル( 見 込 )の 内 訳 は, 個 人 所 得 税 9,560 億 ドル (44.0%), 法 人 所 得 税 1,984 億 ドル(9.1%), 社 会 保 険 税 8,068 億 ドル(37.1%),その 他 2,125 億 ドル(9.8%)となって いる 2008 年 9 月 以 降 の 経 済 危 機 の 影 響 で, 連 邦 税 収 に 占 める 法 人 所 得 税 の 割 合 は,2008 年 9 月 30 日 終 了 財 政 年 度 の 12.0%(3,043 億 ドル/2 兆 5,240 億 ドル)から, 翌 年 は 6.6%(1,382 億 ドル/2 兆 1,050 億 ドル)に 減 少 した 1 2012 年 9 月 30 日 終 了 財 政 年 度 における 連 邦 税 収 2 兆 4,491 億 ドルの 内 訳 は, 個 人 所 得 税 1 兆 1,322 億 ドル(46.2%), 法 人 所 得 税 2,423 億 ドル(9.9%), 社 会 保 険 税 8,453 億 ドル(34.5%),その 他 2,293 億 ドル(9.4%)となっており 2, 回 復 基 調 ではあ るものの, 以 前 の 水 準 までは 戻 っていない 3) 連 邦 税 および 地 方 税 米 国 では, 連 邦 政 府 に 一 定 の 権 限 が 与 えられている 一 方, 州, 郡, 市 などが 広 範 な 権 利 を 有 しており, 税 制 についても, 内 国 歳 入 法 による 連 邦 税 制 と, 各 州 固 有 の 税 法 による 地 方 税 制 が 並 立 している 日 本 においても, 国 税 と 地 方 税 の 区 分 はあるが, 地 方 税 も 国 会 により 制 定 された 地 方 税 法 に 則 っているため, 各 地 方 自 治 体 間 における 税 制 の 差 異 は 限 定 的 で, 例 えば, 法 人 課 税 について, 都 道 府 県 法 人 住 民 税 ( 均 等 割 および 法 人 税 割 ), 都 道 府 県 法 人 事 業 税, 市 町 村 法 人 住 民 税 ( 均 等 割 および 法 人 税 割 )という 課 税 の 枠 組 みは 各 地 方 自 治 体 に 共 通 で, 申 告 様 式 も 各 地 方 自 治 体 間 で 共 通 で ある 等, 税 率 の 差 異 等 はあるものの, 地 方 自 治 体 間 の 共 通 性 は 高 い これに 対 し, 米 国 においては, 各 州 および 地 方 自 治 体 が, 納 税 義 務 者, 課 税 対 象, 税 額 計 算, 税 率 等 について, 他 との 整 合 性 に 拘 束 されることなく, 独 自 の 税 制 を 設 け ているのが 一 般 的 である 極 端 な 例 として,ネバダ 州,サウスダコタ 州,ワシントン 州,ワイオミング 州 においては, 法 人 所 得 課 税 制 度 自 体 が 設 けられていない このため, 日 本 企 業 についても, 米 国 子 会 社 が,いずれの 州 に 生 産 販 売 拠 点 を 設 け,いずれの 州 に 顧 客 を 有 するかというような 事 業 展 開 次 第 で, 適 用 される 州 税 が 全 く 異 なり, 申 告 手 続 および 税 額 が 大 きく 変 わってくることになる 米 国 の 法 人 所 得 課 税 における 法 定 税 率 は, 日 本 と 並 び,OECD 加 盟 諸 国 中 最 高 水 準 にあり,しばしば, 税 負 担 を 忌 避 した 多 国 籍 企 業 の 海 外 移 転 を 招 いているのではないかとの 議 論 がされている 後 述 のとおり, 連 邦 法 人 所 得 税 の 法 定 最 高 税 率 は 35%である 州 の 法 定 税 率 は 各 州 により 異 なるが, 仮 に8%とした 場 合, 連 邦 税 と 州 税 を 合 わせた 法 定 実 効 税 率 は, 州 税 が 連 邦 法 人 税 所 得 計 算 において 損 金 算 入 項 目 であることから, 35% + 8% (1-35%)=40.2% と 計 算 される 4) 納 税 者 番 号 米 国 において 申 告 および 納 税 を 開 始 する 場 合,まず,IRS から 納 税 者 番 号 (FEIN:Federal Employer Identification Number)を 取 得 する 必 要 がある 納 税 者 番 号 は,9 桁 の 数 字 から 成 っており( 例 12 3456789), 連 邦 税 法 上 の 各 種 手 続 1 U.S. Census Bureau 発 行 Statistical Abstract of the United States:2012 による 2 Department of the Treasury 発 行 Final Monthly Treasury Statement of Receipts and Outlays of the United States Government For Fiscal Year 2012 Through September 30, 2012, and Other Projects による PwC 2
き( 申 告, 納 税, 届 出 等 )とともに, 州 税 の 手 続 きにおいても 用 いられることも 多 く, 納 税 者 の ID 番 号 として 広 く 活 用 され ている 2. 連 邦 法 人 課 税 の 概 要 1) 総 論 課 税 対 象 および 課 税 方 法 連 邦 法 人 課 税 における, 課 税 対 象 および 課 税 方 法 ( 申 告 課 税 または 源 泉 徴 収 課 税 )は, 表 1 のとおりである 表 1 米 国 事 業 活 動 課 税 対 象 課 税 方 法 内 国 法 人 * 全 世 界 所 得 申 告 課 税 (Form 1120) (C corporation) 外 国 法 人 行 う 場 合 米 国 実 質 関 連 所 得 申 告 課 税 (Form 1120 F) 米 国 実 質 関 連 所 得 以 外 の 所 得 のうち 源 泉 徴 収 課 税 米 国 源 泉 の 定 期 的 所 得 (FDAP 所 得 ) 行 わない 場 合 米 国 源 泉 の 定 期 的 所 得 (FDAP 所 得 ) 源 泉 徴 収 課 税 (*) 税 務 上, 株 主 構 成 等 の 要 件 により, 内 国 法 人 は, 事 業 体 課 税 の 対 象 となる C corporation と,パススルー 課 税 ( 後 述 )の 対 象 とな る S corporation に 大 別 される C corporation および S Corporation の 呼 称 は, 関 連 税 法 が,それぞれ 内 国 歳 入 法 Chapter 1の Subchapter C および Subchapter S に 規 定 されていることによる 本 稿 においては,C Corporation を 内 国 法 人 とし,S Corporation を 小 規 模 法 人 とする 内 国 法 人 は, 全 世 界 所 得 ( 米 国 内 源 泉 所 得 および 米 国 外 源 泉 所 得 )が 課 税 対 象 とされる 米 国 を 除 く 全 ての G 7 諸 国, および,7 割 以 上 の OECD 加 盟 諸 国 は, 平 成 21 年 度 税 制 改 正 により 外 国 子 会 社 配 当 益 金 不 算 入 制 度 を 導 入 した 日 本 も 含 め, 源 泉 地 国 課 税 (Territorial Tax System)を 採 用 しており, 今 なお 全 世 界 所 得 課 税 (Worldwide Tax System)を 維 持 する 米 国 は 少 数 派 である なお, 二 重 課 税 の 排 除 の 観 点 から, 後 述 のとおり, 米 国 外 源 泉 所 得 に 課 税 された 外 国 法 人 税 は, 外 国 税 額 控 除 の 対 象 となる 上 記 における 米 国 実 質 関 連 所 得 とは, income which is effectively connected with the conduct of a trade or business within the United States 3 のことである 内 国 歳 入 法 または 財 務 省 規 則 に trade or business within the United States( 米 国 事 業 活 動 ) を 明 確 に 定 義 する 規 定 は 無 いが, 判 例 によると 直 接 または( 代 理 人 を 通 じた) 間 接 を 問 わず, 定 期 的, 実 質 的,および 継 続 的 な 米 国 内 における 営 利 活 動 とされる 米 国 実 質 関 連 所 得 は,このような 米 国 事 業 活 動 により 生 じた 所 得 のことである なお, 米 国 実 質 関 連 所 得 は, 米 国 での 事 業 活 動 に 実 質 的 に 関 連 している 限 り, 米 国 外 で 使 用 される 無 形 固 定 資 産 に 関 する 受 取 使 用 料 その 他 の 米 国 外 源 泉 所 得 をも 含 む また, 定 期 的 所 得 とは, fixed, determinable, annual or periodical gains, profits, and income 4 のことである 各 語 の 頭 文 字 から FDAP 所 得 とも 呼 ばれ, 配 当, 利 息, 賃 貸 料, 使 用 料, 報 酬,その 他 の 定 期 的 な 所 得 等 が 該 当 する 3 内 国 歳 入 法 第 882 条 (a)(1) 4 内 国 歳 入 法 第 881 条 (a)(1) PwC 3
2) 申 告 課 税 申 告 手 続 き 申 告 課 税 について, 上 の 内 国 法 人 および 外 国 法 人 も 含 め, 事 業 体 の 種 類 (LLC については LLC による 課 税 選 択 の 有 無 )に 応 じ, 表 2 のとおり, 申 告 書 様 式, 課 税 方 式 ( 事 業 体 課 税 または パススルー 課 税 ), 申 告 期 限 が 定 められて いる 表 2 申 告 期 限 *** LLC による 延 長 申 請 延 長 申 請 した 事 業 体 様 式 課 税 方 式 課 税 選 択 しない 場 合 場 合 事 業 年 度 終 了 から 内 国 法 人 8 ヶ 月 15 日 内 (C corporation) 1120 事 業 体 課 税 2 ヶ 月 15 日 国 (6 ヶ 月 延 長 ) 有 り 事 LLC* 無 し 8 ヶ 月 15 日 業 1065 3 ヶ 月 15 日 体 パートナーシップ (5 ヶ 月 延 長 ) パススルー 課 税 小 規 模 法 人 8 ヶ 月 15 日 1120-S 2 ヶ 月 15 日 ( S corporation) (6 ヶ 月 延 長 ) 外 国 法 人 ** 事 業 体 課 税 8 ヶ 月 15 日 1120-F 2 ヶ 月 15 日 (6 ヶ 月 延 長 ) (*) Limited Liability Company LLC は, 事 業 体 課 税 または パススルー 課 税 を 選 択 出 来 る (**) 米 国 実 質 関 連 所 得 を 有 する 場 合 に 限 る (***) 申 告 期 限 延 長 申 請 は, 申 告 期 限 までに IRS に Form 7004 を 提 出 すれば, 自 動 的 に 認 められる 例 えば 内 国 法 人 について, 暦 年 事 業 年 度 であれば, 申 告 期 限 は 3 月 15 日 ( 延 長 申 請 した 場 合 は 6 ヶ 月 延 長 により9 月 15 日 ),3 月 31 日 終 了 事 業 年 度 であれ ば, 申 告 期 限 は6 月 15 日 ( 延 長 申 請 した 場 合 は 6 ヶ 月 延 長 により 12 月 15 日 )となる 事 業 体 課 税 内 国 法 人, 外 国 法 人,および 課 税 選 択 有 り の LLC は, 事 業 体 が 稼 得 した 課 税 所 得 について, 申 告 納 税 義 務 を 負 う パススルー 課 税 パートナーシップ, 小 規 模 法 人,および 課 税 選 択 無 し の LLC が 該 当 する パススルー 課 税 とは, 事 業 体 が 稼 得 した 課 税 所 得 について, 事 業 体 は 申 告 義 務 を 負 うものの 納 税 義 務 を 負 わず, 代 わりに 出 資 者 であるパートナーまたは 株 主 が 持 分 比 率 等 に 応 じ 納 税 義 務 を 負 い, 出 資 者 レベルで 課 税 義 務 が 生 じる 課 税 方 式 である パススルー 課 税 が 適 用 されるこれらの 事 業 体 は, 連 邦 税 法 上 は 導 管 事 業 体 に 過 ぎず, 課 税 所 得 ( 事 業 体 全 体 の 額, 5 および, 各 パートナーまたは 株 主 への 帰 属 額 )を 情 報 申 告 するが, 納 税 は 行 わない 一 方, 出 資 者 であるパートナーま たは 株 主 は, 導 管 事 業 体 から 帰 属 させられた 課 税 所 得 と,それ 以 外 の 課 税 所 得 を 合 算 して, 自 身 の 課 税 所 得 を 計 算 す る パートナーまたは 株 主 が 導 管 事 業 体 に 該 当 しない 限 り, 併 せて 税 額 も 計 算 し, 申 告 納 税 を 行 う 5 パートナーまたは 各 株 主 への 帰 属 額 は,Schedule K 1 という 様 式 により,IRS に 申 告 されるとともに,パートナーまたは 各 株 主 に 通 知 される PwC 4
日 本 企 業 の 場 合 日 本 企 業 が 米 国 において 営 業 活 動 を 行 う 場 合,(a) 米 国 子 会 社 を 設 立 する,(b) 支 店 を 設 置 する,(c)ジョイント ベンチ ャーを 設 立 する, 等 のオプションがある 例 えば,(a) 日 本 企 業 の 米 国 子 会 社 は, 通 常, 内 国 法 人 に 該 当 し,Form 1120 により, 課 税 所 得 ( 全 世 界 所 得 )および 税 額 を 計 算 し, 申 告 納 税 する 次 に,(b) 米 国 に 支 店 を 設 置 し 米 国 におい て 事 業 を 行 っている 日 本 企 業 ( 日 本 法 人 )は, 外 国 法 人 に 該 当 し, 日 本 企 業 が 納 税 義 務 者 として,Form 1120 F によ り, 課 税 所 得 ( 米 国 実 質 関 連 所 得 ただし, 日 米 租 税 条 約 の 要 件 を 満 たす 日 本 法 人 が 米 国 支 店 等 の 恒 久 的 施 設 を 通 じ て 米 国 で 直 接 事 業 活 動 を 行 う 場 合,その 恒 久 的 施 設 に 帰 せられる 所 得 のみが 申 告 課 税 の 対 象 となる)および 税 額 を 計 算 し, 申 告 納 税 する また,(c) 日 本 企 業 の 米 国 子 会 社 が 米 国 企 業 (C corporation とする)と 共 同 設 立 したジョイント ベ ンチャーが LLC の 場 合,LLC が 課 税 選 択 を 行 わなければ,パススルー 課 税 が 適 用 され,LLC が Form 1065 により 課 税 所 得 のみの 情 報 申 告 を 行 い,その 株 主 である 日 本 企 業 の 米 国 子 会 社 と 米 国 企 業 が,それぞれ Form 1120 により,LLC の 課 税 所 得 の 帰 属 額 も 含 め, 課 税 所 得 ( 全 世 界 所 得 )および 税 額 を 計 算 し, 申 告 納 税 する 税 率 申 告 課 税 においては, 税 率 15%~35%の 累 進 課 税 が 適 用 され, 表 3 のとおり, 課 税 所 得 に 応 じ 税 額 計 算 を 行 う 例 ) 課 税 所 得 16,000,000 ドルの 場 合 の 税 額 計 算 5,150,000 +(16,000,000-15,000,000) 38% = 5,530,000(ドル) (このときの 実 効 税 率 は,5,530,000 / 16,000,000 = 34.5625%) 表 3 ( 単 位 : ドル) 課 税 所 得 税 額 計 算 - 50,000 0 0 15% 50,000-75,000 7,500 50,000 を 25% 75,000-100,000 13,750 75,000 超 34% え 100,000-335,000 22,250 100,000 39% + る 335,000-10,000,000 113,900 335,000 34% 額 10,000,000-15,000,000 3,400,000 10,000,000 の 35% 15,000,000-18,333,333 5,150,000 15,000,000 38% 18,333,333-0 0 35% 代 替 ミニマム 税 日 本 の 法 人 税 法 には 無 い 制 度 として, 代 替 ミニマム 税 (AMT:Alternative Minimum Tax)がある これは, 通 常 の 課 税 所 得 および 税 額 (15%~35%の 累 進 税 率 による)の 計 算 とは 別 に, 代 替 課 税 所 得 および 代 替 税 額 ( 定 率 20%による)の 計 算 も 行 い,いずれか 多 い 税 額 が 最 終 的 な 申 告 納 税 額 となる,というものである 2つの 計 算 では, 税 率 のみならず, 有 形 固 定 資 産 の 減 価 償 却 費 等 の 額 も 異 なる よって, 米 国 法 人 税 の 申 告 書 上,2 種 類 の 課 税 所 得 および 税 額 を 計 算 すること になる 代 替 ミニマム 税 は, 代 替 税 額 のうち, 通 常 税 額 を 超 過 した 金 額 を 指 す この 代 替 ミニマム 税 は, 法 人 税 の 前 払 い 的 性 格 を 有 している すなわち, 代 替 ミニマム 税 の 当 期 支 払 額 は, 翌 事 業 年 度 以 降 に 無 期 限 で 繰 り 越 され, 通 常 税 額 が 代 替 税 PwC 5
額 を 上 回 る 将 来 の 事 業 年 度 において, 税 額 控 除 の 対 象 となる なお, 代 替 課 税 所 得 計 算 では, 課 税 所 得 に 応 じ, 最 大 40,000 ドルの 非 課 税 枠 が 設 けられている 例 ) 通 常 の 課 税 所 得 が 75,000 ドル, 代 替 課 税 所 得 が 120,000 ドルの 場 合 通 常 税 額 の 計 算 :13,750 ドル 7,500 + (75,000 50,000) 25% 代 替 税 額 の 計 算 :16,000 ドル (120,000 非 課 税 枠 40,000) 20% この 場 合, 申 告 税 額 は 16,000 ドルとなり, 代 替 ミニマム 税 2,250(16,000 13,750)ドルは, 翌 事 業 年 度 以 降 に 繰 り 越 され, 将 来 の 代 替 ミニマム 税 額 控 除 の 対 象 となる 期 限 後 申 告 期 限 後 申 告 は, 加 算 税 および 利 息 の 賦 課 対 象 となる また, 日 本 の 法 人 税 と 同 様 に, 申 告 期 限 の 延 長 は, 納 税 期 限 の 延 長 を 認 めるものではない よって, 延 長 された 申 告 期 限 内 の 申 告 であっても, 納 税 不 足 額 が 生 じた 場 合, 加 算 税 およ び 利 息 の 賦 課 対 象 となる 除 斥 期 間 連 邦 税 法 上 の 除 斥 期 間 は, 通 常, 申 告 書 を 提 出 した 日 から3 年 間 である よって, 申 告 書 を 提 出 していない 場 合, 除 斥 期 間 は 起 算 されない また, 申 告 した 総 収 入 の 25% 超 に 相 当 する 重 要 な 収 入 の 申 告 漏 れがあった 場 合, 除 斥 期 間 は 6 年 間 に 延 長 される さらに, 脱 税 や 故 意 の 虚 偽 申 告 の 場 合, 後 日 の 修 正 申 告 の 有 無 にかかわらず, 除 斥 期 間 は 起 算 さ れず,IRS は 何 時 でも 更 正 することが 出 来 る 予 定 納 税 納 税 者 は, 各 四 半 期 (4 ヶ 月 目,6 ヶ 月 目,9ヶ 月 目,および 12 ヶ 月 目 の 15 日 )に, 年 間 見 込 税 額 に 基 づく 予 定 納 税 を 行 う 必 要 がある 事 業 年 度 が 終 了 した 段 階 で,その 年 の 確 定 税 額 等 に 応 じて 予 定 納 税 必 要 額 が 遡 及 して 計 算 され, 各 四 半 期 における 予 定 納 税 額 が 必 要 額 より 不 足 していた 場 合,ペナルティー( 利 息 )の 賦 課 対 象 となる ただし, 四 半 期 決 算 に 基 づく 年 間 見 積 もり 税 額 をベースに 予 定 納 税 を 行 っていた 場 合,ペナルティーは 免 除 される なお, 予 定 納 税 額 が 確 定 年 税 額 を 上 回 る 場 合 の 超 過 額 は, 納 税 者 の 選 択 により, 翌 事 業 年 度 の 予 定 納 税 額 に 充 当 さ れるが 納 税 者 に 還 付 される 3) 源 泉 課 税 税 率 米 国 実 質 関 連 所 得 に 該 当 しない 米 国 源 泉 の FDAP 所 得 は, 税 率 30%により 源 泉 徴 収 の 対 象 となる ただし, 日 本 居 住 者 に 対 する 支 払 いについては, 日 米 租 税 条 約 の 要 件 に 応 じ, 表 4 の 軽 減 税 率 が 適 用 される PwC 6
表 4 配 当 ( 受 取 人 が 法 人 の 場 合 ) 議 決 権 株 式 の 保 有 割 合 ( 直 接 / 間 接 ) 50% 超 (12 ヶ 月 以 上 保 有 ) 0% 10% 以 上 50% 以 下 5% 10% 未 満 10% 利 子 金 融 機 関 向 け 0% その 他 10% 使 用 料 0% 納 税 義 務 および 申 告 義 務 これらの FDAP 所 得 の 支 払 者 ( 源 泉 徴 収 義 務 者 )は, 源 泉 徴 収 税 額 に 応 じ,(a) 各 四 半 月 ( 各 月 7 日,15 日,22 日,お よび 最 終 日 ) 後 3 日,(b) 各 月 後 15 日,または,(c) 翌 年 3 月 15 日,を 期 限 とした 納 税 義 務 を 負 う また, 源 泉 徴 収 義 務 者 は, 毎 暦 年 の FDAP 所 得 支 払 額 および 源 泉 徴 収 税 額 を, 日 本 の 所 得 税 法 上 の 支 払 調 書 合 計 表 および 支 払 調 書 に 相 当 する Form 1042 および Form1042 S により, 翌 年 3 月 15 日 を 期 限 とした 報 告 義 務 を 負 う 3. 法 人 課 税 所 得 計 算 の 主 要 項 目 法 人 課 税 所 得 の 計 算 法 人 課 税 所 得 は, 会 計 上 の 利 益 に, 税 務 調 整 項 目 を 加 減 算 して 計 算 する 日 本 の 法 人 税 申 告 書 における 別 表 四 所 得 の 金 額 の 計 算 に 関 する 明 細 書 と 同 様 に, Schedule M 1 または Schedule M 3 により, 会 計 上 の 利 益 と 法 人 課 税 所 得 の 間 の 税 務 調 整 項 目 と 併 せて 申 告 される 連 邦 法 人 税 法 における 一 般 的 な 税 務 調 整 項 目 として, 未 払 費 用, 貸 倒 引 当 金 等 の 引 当 金, 税 務 上 の 有 形 無 形 固 定 資 産 の 償 却 ( 後 述 ) 等 の 一 時 差 異 項 目,および, 交 際 費, 米 国 内 製 造 活 動 特 別 控 除 ( 後 述 ), 加 算 税 等 の 永 久 差 異 項 目 がある 連 邦 法 人 所 得 税 は 損 金 不 算 入 項 目 である 一 方, 州 地 方 法 人 所 得 税 は 損 金 算 入 項 目 である 棚 卸 資 産 個 別 評 価 法, 先 入 先 出 法,あるいは 後 入 先 出 法 により 評 価 されるが, 選 択 により 低 価 法 の 採 用 も 認 められる ただし, 後 入 先 出 法 は, 財 務 報 告 上 採 用 している 場 合 に 限 り, 税 務 上 も 適 用 が 認 められる また, 会 計 上 の 販 売 管 理 費 の 一 部 を, 税 務 上, 期 末 棚 卸 資 産 に 配 賦 することが 求 められる 減 価 償 却 費 日 本 の 法 人 税 法 上 の 減 価 償 却 費 の 損 金 経 理 要 件 に 相 当 する 規 定 は 設 けられておらず, 会 計 上 の 減 価 償 却 費 にか かわらず, 税 法 に 基 づき 計 算 された 減 価 償 却 費 を 損 金 算 入 する 税 務 上 の 減 価 償 却 費 は, 一 般 に, 修 正 加 速 度 償 却 法 (MACRS:Modified Accelerated Cost Recovery System)に 則 り 計 算 される PwC 7
2001 年 以 降, 景 気 対 策 として, 複 数 回 に 亘 る 時 限 立 法 により, 固 定 資 産 の 特 別 償 却 制 度 (bonus depreciation)が 設 けら れており, 特 別 償 却 率 は 30%,50%,または 100%である 2008 年 以 降 の 特 別 償 却 制 度 の 特 別 償 却 率 は, 原 則 として, 取 得 年 月 日 および 供 用 開 始 年 月 日 に 応 じ, 表 5 のとおりである 特 別 償 却 の 適 用 の 有 無 は 事 業 年 度 毎 に 選 択 出 来 る 表 5 2008 年 1 月 1 日 ~ 2010 年 9 月 8 日 50% 2010 年 9 月 9 日 ~ 2011 年 12 月 31 日 100% 2012 年 1 月 1 日 ~ 2012 年 12 月 31 日 50% 繰 越 欠 損 金 繰 越 欠 損 金 の 繰 戻 期 間 は2 年 間, 繰 越 期 間 は 20 年 間 である(1997 年 8 月 5 日 以 前 開 始 事 業 年 度 については, 繰 戻 期 間 3 年 間, 繰 越 期 間 15 年 間 とされていた) M&A, 企 業 再 編 などにより 株 主 に 大 幅 な 変 動 があった 場 合, 繰 越 欠 損 金 の 使 用 が 制 限 されることがある キャピタル 損 益 売 掛 金, 棚 卸 資 産,その 他 の 事 業 用 資 産 以 外 のいわゆるキャピタル 資 産 (Capital assets)の 売 却 や 交 換 による 損 失 ( キ ャピタル 損 失 )の 損 金 算 入 は, 同 様 の 取 引 による 利 益 ( キャピタル ゲイン )を 上 限 とする すなわち,キャピタル 損 失 は,キャピタル ゲインのみとの 相 殺 が 認 められ,キャピタル ゲイン 以 外 の 通 常 所 得 (Ordinary Income)との 相 殺 は 認 め られない 各 事 業 年 度 において,キャピタル 損 失 がキャピタル ゲインを 超 過 する 金 額 は, 繰 越 キャピタル 損 失 として,3 年 間 の 繰 戻,あるいは5 年 間 の 繰 越 が 認 められる キャピタル ゲインに 対 する 課 税 は, 個 人 所 得 税 制 上 は 軽 減 税 率 が 適 用 されているのに 対 し, 法 人 所 得 税 制 上, 軽 減 税 率 は 設 けられておらず,その 他 の 通 常 所 得 と 合 算 の 上, 通 常 の 累 進 税 率 (15%~35%)により 課 税 される 米 国 内 製 造 活 動 特 別 控 除 本 税 制 は, 一 定 の 要 件 を 満 たす 適 格 米 国 内 製 造 活 動 を, 税 制 上 優 遇 することにより, 米 国 内 の 経 済 活 動, 雇 用 を 促 進 することを 企 図 している 課 税 所 得 を, 納 税 者 が 営 む 企 業 活 動 の 内 容 に 応 じ,(i) 適 格 米 国 内 製 造 活 動 に 帰 属 する 課 税 所 得 と,(ii)その 他 の 企 業 活 動 に 帰 属 する 課 税 所 得,に 配 分 し,(i)に9%を 乗 じた 金 額 の 損 金 算 入 が 認 められてい る 仮 に, 税 率 35%が 適 用 される 納 税 者 の 企 業 活 動 の 全 てが 適 格 米 国 内 製 造 活 動 に 該 当 する 場 合, 実 質 的 な 税 率 は 31.85%(35 (1-9%)= 31.85%)となる 特 別 控 除 額 は, 事 業 年 度 中 に 終 了 した 暦 年 における 給 与 支 払 総 額 の 50%を 上 限 とする すなわち, 十 分 な 給 与 を 支 払 う 雇 用 を 維 持 していないと, 特 別 控 除 額 に 制 限 が 加 えられることとなる 計 算 例 課 税 所 得 合 計 適 格 米 国 内 製 造 活 動 その 他 の 企 業 活 動 特 別 控 除 前 180 100 80 特 別 控 除 (9%) (9) (9) 非 適 用 特 別 控 除 後 171 91 80 PwC 8
なお,この 米 国 内 製 造 活 動 特 別 控 除 は, 恒 久 税 制 として 2005 年 より 実 施 されている 試 験 研 究 費 税 額 控 除 本 税 制 は, 一 定 の 要 件 を 満 たす 適 格 試 験 研 究 費 の 金 額 から 計 算 する 試 験 研 究 費 税 額 控 除 を 認 めることで, 米 国 内 の 試 験 研 究 活 動 を 促 進 し, 科 学 技 術 分 野 における 米 国 の 国 際 優 位 を 確 立 維 持 することを 企 図 している 米 国 外 にお ける 試 験 研 究 活 動 および 人 文 科 学 分 野 における 試 験 研 究 活 動 により 生 じた 試 験 研 究 費 は 適 格 試 験 研 究 費 とはなら ない 適 格 試 験 研 究 費 には, 試 験 研 究 活 動 において 生 じた 人 件 費, 材 料 費, 委 託 研 究 費 (65%) 等 が 含 まれる 控 除 限 度 超 過 額 の 繰 戻 期 間 は1 年 間, 繰 越 期 間 は 20 年 間 である 試 験 研 究 費 税 額 控 除 は, 時 限 立 法 により,1981 年 に 導 入 され,その 後 失 効 期 間 がほぼ 無 いまま 20 年 間 に 亘 り 繰 り 返 し 延 長 されてきたが,いまだ 恒 久 化 はされていない 現 時 点 においては,2011 年 12 月 31 日 をもって 失 効 したままとなっ ているが, 遡 及 的 に 延 長 される 可 能 性 が 高 い 外 国 税 額 控 除 国 外 で 課 税 された 源 泉 所 得 税 等 については, 納 税 者 は, 損 金 算 入 または 外 国 税 額 控 除 を 選 択 適 用 できる 外 国 税 額 控 除 は, 国 外 所 得 に 基 づき 計 算 される 一 定 の 控 除 限 度 額 を 上 限 とし, 控 除 限 度 超 過 額 の 繰 戻 期 間 は1 年 間, 繰 越 期 間 は 10 年 間 である 10% 以 上 の 持 分 を 有 する 外 国 法 人 からの 受 取 配 当 については,その 外 国 法 人 が 支 払 った 外 国 法 人 所 得 税 についても 間 接 外 国 税 額 控 除 が 認 められる 4. その 他 の 主 要 な 事 項 連 結 納 税 共 通 の 米 国 親 会 社 を 通 じて 80% 以 上 の 株 式 保 有 関 係 で 繋 がる 構 成 員 から 成 る 企 業 グループ( 関 連 グループ (affiliated group) 6 は,グループ 内 全 ての 法 人 の 同 意 により, 連 結 納 税 を 選 択 出 来 る 連 結 納 税 は, 一 度 選 択 すると, 以 後 継 続 しなければならず, 原 則 として,IRSの 承 認 を 得 ない 限 り 単 体 納 税 に 戻 すことは 認 められない 連 結 納 税 グループの 構 成 員 として, 内 国 法 人 (C corporation)および LLC は 認 められるが, 小 規 模 法 人 (S corporation) およびパートナーシップは 認 められない また, 外 国 法 人 も 認 められない 連 結 納 税 グループの 構 成 員 である 各 法 人 は, 共 通 の 事 業 年 度 を 採 用 することが 求 められる 一 方, 共 通 の 税 務 上 の 会 計 方 針 の 採 用 は 求 められていない 支 配 グループへの 適 用 税 制 80% 以 上 の 株 式 保 有 関 係 で 繋 がる 構 成 員 から 成 る 企 業 グループ 7 は, 支 配 グループ(controlled group) に 該 当 し, 法 人 累 進 税 率 の 適 用, 代 替 ミニマム 税 の 非 課 税 額 の 適 用 等 において,あたかも 支 配 グループが 一 つの 法 人 であるかのよ 6 外 国 法 人 等 の 除 外 法 人 ではない 親 法 人, 親 法 人 と 議 決 権 株 式 の 80% 以 上,および, 総 株 式 の 市 場 価 値 の 80% 以 上 の 保 有 関 係 で 繋 がる( 除 外 法 人 ではない) 子 法 人,および,これらの 法 人 と 同 様 の 持 株 関 係 で 直 接,あるいは 間 接 に 繋 がる( 除 外 法 人 ではない) 子 法 人 から 成 るグループ PwC 9
うに, 当 該 ルールを 適 用 する これは, 例 えば, 分 社 化 により 各 法 人 の 課 税 所 得 を 低 く 抑 えることにより 低 い 税 率 を 適 用 してグループ 全 体 の 租 税 負 担 の 軽 減 を 図 るというような 租 税 回 避 行 為 を 防 止 することを 企 図 している 支 配 グループ 内 の 各 法 人 の 単 体 申 告 においては, 適 用 税 率 は 支 配 グループを 構 成 する 全 ての 法 人 の 課 税 所 得 の 合 計 額 により 決 定 し, 当 該 税 率 を, 単 体 課 税 所 得 に 適 用 して 申 告 税 額 を 計 算 する なお, 連 結 納 税 上 の 関 連 グループと 異 なり, 支 配 グループの 構 成 員 には, 外 国 法 人 も 含 まれるため, 米 国 に 共 通 の 親 会 社 を 持 たない 日 本 企 業 の 米 国 兄 弟 会 社 も 同 一 支 配 グループの 一 員 とみなされる 国 外 関 連 者 への 支 払 い 内 国 法 人 が, 使 用 料, 支 払 利 子, 経 営 指 導 料 等 の 費 用 を, 国 外 関 連 者 ( 直 接 または 間 接 を 問 わず, 総 株 式 の 市 場 価 値 の 50% 超 の 保 有 関 係 がある 企 業 グループの 国 外 構 成 メンバー)に 支 払 う 場 合, 一 部 の 例 外 を 除 き, 発 生 主 義 に 代 え, 現 金 主 義 による 損 金 算 入 が 適 用 される ただし, 租 税 条 約 により 国 外 関 連 者 が 連 邦 税 の 免 税 となる 費 用 ( 支 払 利 子 を 除 く)については, 発 生 主 義 による 損 金 算 入 が 認 められる 移 転 価 格 税 制 一 定 の 支 配 関 係 にある 関 連 者 間 における, 棚 卸 資 産 およびその 他 の 有 形 無 形 資 産 の 譲 渡,サービスの 提 供, 貸 付 等 の 取 引 は, 独 立 企 業 間 価 格 によることが 求 められ,また, 同 時 文 書 化 義 務 規 定 (Contemporaneous Documentation)によ り, 取 引 価 格 が 独 立 企 業 間 価 格 であることを 担 保 することが 求 められる 取 引 価 格 が 独 立 企 業 間 価 格 であることを, 事 前 に 当 局 に 確 認 できる 制 度 (APA:Advance Pricing Agreement)については,IRS との 確 認 である 一 国 APA,および IRS お よび 日 本 を 含 む 外 国 の 課 税 当 局 との 確 認 である 複 数 国 間 APA の 両 方 が 運 用 されている 日 米 租 税 条 約 は, 日 米 両 国 当 局 の 移 転 価 格 税 制 の 執 行 により 納 税 者 が 二 重 課 税 等 の 不 利 益 を 蒙 ることの 無 い 様, 課 税 当 局 間 の 相 互 協 議 条 項 を 定 めている 過 少 資 本 税 制 国 外 関 連 者 からの 借 入 金,および, 国 外 関 連 者 による 保 証 等 の 付 された 第 三 者 からの 借 入 金 に 関 する 支 払 利 息 ( 源 泉 徴 収 または 受 取 人 に 対 する 米 国 での 課 税 が 発 生 しないものに 限 る)について, 借 入 法 人 たる 納 税 者 の 期 末 日 現 在 の 負 債 資 本 比 率 が 1.5:1 以 上 であれば, 超 過 利 子 額 ( 純 支 払 利 子 額 が, 課 税 所 得 に 一 定 の 調 整 を 加 えた 調 整 課 税 所 得 の 50%を 超 過 する 額 ),または, 不 適 格 利 子 ( 国 外 関 連 者 への 支 払 利 子 等 )のうち,いずれか 少 ない 金 額 が 損 金 不 算 入 となる 損 金 不 算 入 額 は 繰 り 越 され, 翌 事 業 年 度 の 不 適 格 利 子 に 加 算 される 上 述 は, 俗 にアーニングス ストリッピング ルール(Earnings Stripping Rule)と 呼 ばれる 規 定 であるが,これ 以 外 にも, 内 国 歳 入 法 は, 借 入 金 利 子 の 損 金 性 に 関 し, 法 人 に 対 する 資 金 拠 出 が 出 資 または 貸 付 金 のいずれに 相 当 するかの 判 断 基 準 を 財 務 省 規 則 に 委 ねているが, 現 時 点 において, 該 当 する 財 務 省 規 則 は 公 表 されていない 7 (i) 親 法 人,および, 親 法 人 と, 議 決 権 株 式 の 80% 以 上,または, 総 株 式 の 市 場 価 値 の 80% 以 上 を 保 有 し,かつ,(ii)グループ 内 法 人 の 議 決 権 株 式 の 80% 以 上,または, 総 株 式 の 市 場 価 値 の 80% 以 上 の 直 接, 間 接 の 株 式 保 有 関 係 で 繋 がるグループ 等 PwC 10
Subpart F 所 得 (タックス ヘイブン 対 策 税 制 ) 内 国 法 人 は, 外 国 法 人 からの 配 当 については, 配 当 受 取 時 に 益 金 算 入 するのが 原 則 であるが, 米 国 株 主 が 50% 超 を 所 有 する 特 定 外 国 子 会 社 (CFC:Controlled Foreign Corporation)において 生 じた 特 定 の 種 類 の 所 得 については, 配 当 の 有 無 にかかわらず,その 所 得 を 稼 得 した 年 度 に, 内 国 法 人 の 所 得 に 加 算 される 対 象 となる 所 得 は, 一 般 に 低 税 率 国 等 への 移 転 が 容 易 な 所 得 で, 内 国 歳 入 法 のSubpart Fにおいて 規 定 されていることから,Subpart F 所 得 8 と 呼 ばれる 8 外 国 不 動 産 投 資 法 FIRPTA(Foreign Investment in Real Property Tax Act) 税 制 により, 米 国 で 事 業 を 行 っていない 外 国 法 人 による 米 国 不 動 産 ( 米 国 不 動 産 化 体 株 式 を 含 む)の 売 却 等 において, 売 主 に 譲 渡 益 の 申 告 納 税 義 務, 買 主 に 対 価 の 支 払 に 際 して 源 泉 徴 収 義 務 が 生 じることがある FIRPTA は, 日 米 租 税 条 約 による 減 免 措 置 の 対 象 外 であるため, 日 本 企 業 も 注 意 が 必 要 である 支 店 利 益 税 外 国 法 人 が, 米 国 支 店 を 通 じて 事 業 を 営 む 場 合, 通 常 の 法 人 課 税 に 加 え, 支 店 利 益 税 (Branch Profit Tax)が, 税 率 30%で 課 税 される この 支 店 利 益 税 は, 外 国 法 人 の 米 国 子 会 社 による 利 益 配 当 が 税 率 30%で 源 泉 徴 収 の 対 象 とされる ことに 鑑 み, 子 会 社 配 当 と 支 店 送 金 との 間 で, 税 制 上 の 均 衡 を 図 るとの 趣 旨 による ただし, 日 本 企 業 の 米 国 支 店 は, 日 米 租 税 条 約 により, 通 常 の 場 合, 適 用 免 除 となる 5. 今 後 の 展 望 本 稿 作 成 中 の 2012 年 10 月 10 日 現 在, 表 6 のとおり 各 種 税 法 規 定 が,2012 年 12 月 31 日 失 効 見 込 み,または, 2011 年 12 月 31 日 で 失 効 済 みである 景 気 雇 用 対 策 の 観 点 から, 早 急 な 措 置 が 課 題 とされている 2012 年 12 月 31 日 失 効 見 込 み 2011 年 12 月 31 日 失 効 済 み (1) 個 人 所 得 税 減 税 (ブッシュ 減 税 ) (2) 個 人 所 得 税 法 のキャピタル ゲインおよび 適 格 配 当 所 得 課 税 における 軽 減 税 率 (15%) (3) 遺 産 税 (Estate Tax)および 贈 与 税 (Gift Tax)の 最 高 税 率 35%および 非 課 税 限 度 額 500 万 ドル (4) 社 会 保 険 税 の FICA 税 (Federal Insurance Contributions Act Tax)の 被 雇 用 者 負 担 分 源 泉 徴 収 軽 減 税 率 (5) 固 定 資 産 特 別 償 却 等 試 験 研 究 費 税 額 控 除 等 また, 冒 頭 に 述 べたように, 抜 本 的 な 税 法 改 正 が, 議 論 されてきたが,これらの 失 効 税 制 の 延 長 および 抜 本 的 な 税 制 改 正 について, 近 年 の 議 会 審 議, 選 挙 戦 を 通 じ, 民 主 党 および 共 和 党 の 両 党 の 税 制 改 正 案 の 間 には 相 容 れない 争 点 がある 一 方, 非 常 に 厳 しい 連 邦 財 政 および 雇 用 情 勢 を 踏 まえ, 党 の 枠 を 超 え, 経 済 成 長, 競 争 力,イノベーション の 機 会 を 生 み 出 し, 雇 用 を 拡 大 する 税 制 改 革 を 実 現 しようとの 動 きも 見 られている 8 内 国 歳 入 法 の Chapter 1, Subchapter N, Part III, Subpart F が,CFC に 関 して 規 定 している PwC 11
選 挙 の 結 果 を 踏 まえ, 選 挙 後 の 議 会 ( 現 職 議 員 による 第 112 連 邦 議 会 (2013 年 1 月 3 日 まで)および 新 選 出 議 員 による 第 113 連 邦 議 会 (2013 年 ~2014 年 ))において,いかなる 税 制 改 正 が 実 現 されていくことになるのか, 非 常 に 注 目 され る 以 上 PwC 12