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独立行政法人 国立環境研究所 国立環境研究所構内の 自然探索 2013 年版 自然探索総集編2013.indd 1 2013/06/12 9:55:22

はじめに この冊子は 過去の環境報告書から 構内の自然を紹介する 国環研 自然探索 のコーナーに掲載された記事を中心に作成した総集編です 2010 年版 2011 年 版に続き 2年おいて 2013 年版を作成しました 環境報告書の 8 年間の集積です あらたに蝶と水草の紹介が加わったほか 樹木ガイドのページも一新しました こ こで紹介している自然は ある程度の面積があり あまり庭園的な手入れをし過ぎ ていない緑地であれば 関東地方ならあちこちで見られるものです 環境研構内の 自然探索と題した冊子ですが 身近な自然と親しむ手がかりとしていただければ幸 いです 目次 はじめに 1 自然の生き物と顔見知りになろう 2 構内の自然 3 チョウの四季 5 トンボの四季 7 構内の水草散策 9 水辺の生き物 11 構内で見られる野鳥 13 木に名札を付けました 15 木と深くかかわりあうキノコたち 17 木漏れ日便り 国立環境研ニュースから 19 構内樹木ガイド 組み合わせ編 21 国環研の中の緑も地域の自然に 23 植栽の管理について 24 池の管理について 25 1 自然探索総集編2013.indd Sec1:1 エゴノキの花 2013/06/12 9:55:35

自然の生き物と顔見知りになろう 自然を大切にとか生物多様性を守ろうと言って が一番です また 名札がついている植物や そ も 自然の中の生き物の具体的なイメージを思い の場所でふつうに見られる生き物を紹介している 描けないと 何をどうしたらよいのかピンときま 看板もありがたいものです はじめは数種類しか せん まずは身近な生き物と顔見知りになること 覚えられなくても その生き物を手がかりにして から始めてはいかがでしょうか 園芸植物ばかり 似ているけれど違う種類も見えてきます ではなく 道端に生えている草花や木にも目を向 充実した図鑑を眺めるのはとても楽しいのです けると 散歩や通勤も楽しみが増えます 植物は が あまりにいろいろな生き物が載っていて そ 動かないだけに 芽吹きや開花 実ができたり紅 の中から自分が見た生き物を見つけ出すのは容易 葉したりといった日々の様子の変化も楽しめます ではありません 地域限定のコンパクトなガイド 下の写真 蝶や鳥にも知り合いができると出会 があると助かります この冊子では おもに国立 いの喜びが味わえます 環境研究所の敷地内で見られる生き物を紹介して 親しい人は横顔や後ろ姿でもその人だと分かり います ミニ図鑑というよりも 生き物コラム集 ますし 人混みのなかから見つけ出すこともでき といったほうがよいかもしれません ここに登場 ます 生き物でも同じです 顔見知りになり付き する生き物の多くは 研究所の中に限らず ふつ 合いが深まれば 目にとまるようになるはずです うに見られるものです この冊子をとっかかりに 生き物の世界に入っていくには 生き物の世界 して 顔見知りを増やしていただければとても嬉 で顔が広い人に道先案内をしてもらえれば それ しく思います 環境研の正門から本館に向かう道路に並ぶ ユリノキのさまざまな姿 それぞれに季節が 感じられます 生物 生態系環境研究センター 竹中明夫 2 自然探索総集編2013.indd Sec1:2 2013/06/12 9:55:36

構内の自然 国環研では 自然環境を保全するため 敷地内の緑地はできるだけ残すよう建物配置等を工夫するとともに 農薬散布は極力行わないなどの配慮を行っています 国環研の研究のニーズが高まり多様化する中で 多くの 研究施設が年々増設されているのが実情ですが 構内にもまだ多様な自然環境が残されています 構内には 研究所の設立以前からのアカマツ林や 落葉広葉樹のク ヌギ コナラなどいわゆる雑木林の木々が残っています 春の芽吹きの 季節には それぞれに違った色の新緑で目を楽しませてくれます 研究活動の広がりとともに 構内の建物が増え 林が減ってしまいま した 以前にはときおり薮のなかで見かけたタヌキも目にしませんし ウ サギもめったに姿を見せません それでも まだいろいろな種類の鳥の 姿を見たり声を聞くことができます 芽吹きのころのクヌギ 左 とコナラ 右 ユリノキの花 研究所の用地にもともと生えていた木々の ほか 植栽されている樹木も数多く 季節ごと の花や紅葉 黄葉が目を楽しませてくれます も ともと日本の温帯にはえている樹種が多く植え られていますが 外来の樹木も少なくありませ ん たとえば 研究所の敷地の入口から研究 ナツツバキ の花 本館に向かっての道路は 北アメリカ原産の ユリノキの並木になっています なお 花粉をま き散らすスギの植栽がところどころにあり 花 粉症に悩む職員には評判が悪いようです イチョウの黄葉 林のなかでは 明るい草地では見られない林床植物が生えています 春先にはアマドコロなどが可憐な花を咲かせます また ワラビやゼンマ イといった山菜も顔を出します こうした山菜の季節や秋のキノコの季節 には これらを目当てに林のなかを歩き回る職員のすがたが見られます 林内のキンラン 左 アマドコロ 中 ワラビ 右 アカマツ林内の様子 3 自然探索総集編2013.indd Sec1:3 2013/06/12 9:55:39

構内では定期的に草刈りを行っています 建物の周囲は年に2回刈 るところと3回刈るところがあり 林の下はおおむね1回だけ刈ります 林内で花を咲かせている植物のことを考えると 刈ってしまうとかわい そうな気がしますが 刈るのをやめると数年のうちにうっそうとした薮と なり 地面の近くはとても暗くなって かえって多くの植物が姿を消してし まいます 草刈りをしていない林内の薮 建物周辺の草地では 例年の草刈りのスケジュールと 相性がよい植物がいろいろ見られます たとえば 冬の あいだは草刈りをしないので 秋に種が発芽して 緑の 葉が冬を越し 春先に花を咲かせるような植物には暮し やすい環境です フデリンドウはその例で 道沿いの草 地にたくさん見られます ただしリンドウの花は暗いと閉 頻繁に草刈りをする草地 左 で見られるフデリンドウ じてしまうので 晴れた日に捜すのが見つけるコツです 茨城県の南部から中央部は カシ類など常緑広葉 樹の林 照葉樹林の北限にあたります 研究所の敷 地内にもそのような林を作ろうと 建設当時はまったく の裸地であったところに シラカシやアラカシが植えら れました かなり高い密度で植えてあるので みな 少々ヒョロヒョロとしています 林のなかは暗く 林床の 植物はまばらです 研究 所の構内には 研究 所の設 立 以前からの池がふたつあります その ひとつでは 池の縁にそってヨシやヒメ ガマなどが生えています ここでは生 態系の調査も行われています 構内の はずれで人があまり来ないので 冬を 越すために渡ってきたコガモの姿も見 られます 常緑広葉樹の林 左 とその中の様子 右 研究本館の近くに は人工的に作られた 池があります 朝早く には大きなアオサギ がエサをとりに来て いることがあります が 人の気配を感じ ソメイヨシノが咲き始めるころの研究本 館横の池 ると すぐにユッサユ ッサと飛び立ってしま います 5月中ごろの構内の池の様子 岸辺近くでは ヨシが伸びてきている 生物圏環境研究領域 当時 竹中明夫 環境報告書 2006 2006 年 7 月発行 より 4 自然探索総集編2013.indd Sec1:4 2013/06/12 9:55:48

チョウの四季 研究所内では 40 種ほどのチョウが見られます そのほとんどは春から秋を通じて見られるものですが それでも 春になって飛び始める時期や 数多く見られる時期など それぞれに特徴があります 四季を追って研究所内で特によ く見られるチョウを紹介します 春 2 月末から 3 月 春の訪れが感じられる暖かい日には 成虫で越冬していたチョウが飛び始めます 黄色いキタ キチョウや 橙色のキタテハ 青い線が綺麗なルリタテ ハなどです やがて本格的な春になると 幼虫やさなぎ で越冬していた種が羽化してきます お馴染みの白いモ ンシロチョウ 黄色いアゲハ 足元を見れば小さくて水 色が綺麗なヤマトシジミ 橙色のベニシジミ などが良 く見られます タンポポやヒメジョオンなどの野草で蜜 を吸う姿が見かけられます キタテハ キタキチョウ アゲハとヤブガラシ ルリタテハ ヤマトシジミ オス 初夏 イネ科の植物の葉がぐんと伸びはじめる頃 ジャノメ チョウの仲間が増えてきます 梅雨の始まりの頃に 環 境研や周囲の研究所の敷地沿いで大量に飛んでいるの はジャノメチョウ ナミジャノメ です ヒメジャノメ 夏 大きくて目立つアゲハの仲間が 種類 数共に一番た くさん見られる時期です 水色のラインが目立つアオス ジアゲハは 所内にも植えられているクスノキなどの葉 を幼虫が食草としていることもあり どこでもたくさん 見られます 黒いアゲハは 形や紋が違う種類が幾つか ベニシジミ なども見かけられます 茶色くて目玉模様が特徴のジャ ノメチョウの仲間は 蛾と間違えられることもあります この時期 本館の正面玄関や池の傍にあるイボタノキが 白い花を咲かせ たくさんのチョウが蜜を吸いに集まっ てきます ヒメジャノメ ジャノメチョウ モンシロチョウとヒメジョオン アオスジアゲハとイボタノキ いますが 所内ではクロアゲハ カラスアゲハなどが多 く飛んでいます あまり真昼間の明るい場所では見かけ ませんが 林縁や明るい林内では サトキマダラヒカゲ やダイミョウセセリなども見かけられます 卵 幼虫 蛹 成虫というサイクルを 1 年のうちに 2 回以上繰り返すチョウの中には 季節によって翅の色が 5 自然探索総集編2013.indd Sec1:5 2013/06/12 9:55:50

構内の水草散策 今回は 国環研の構内で見ることができる水草を紹介したいと思います 国環研の構内には 人工の池や水路があり そんなところには水草が生えています 一口に水草と言っても 色々あります まず 植物体全部が水の中に潜っているもの これ は 沈水植物 と呼ばれます 構内の池や水たまりでは クロモ カナダモなどを見ることができます 写真1 沈水植物が生育しているところは 澄んだ水で 栄養が 少ない環境であることが多いと言われています 夏の昼 間に沈水植物が繁茂した池に潜ってみると 水中に差し 込んだ太陽の光が沈水葉の緑色を透かして照らしてい て とても綺麗です 水中に葉を広げている沈水植物は 水に溶け込んだ二酸化炭素を利用して光合成をしていま す 光合成過程では酸素ガス が排出されるので 日中 沈 水植物の葉の表面をみると小 さな泡が並んでいるのを観察 することができます 陸上植 物では見ることのできないガ スの流れを 水中では目で見 て実感することができます 写真 1 カナダモ それから 葉を水面に浮かべているもの 葉が浮いて いるので 浮葉植物 と呼びます 春先に葉を広げ始め 見る見る大きくなって水面を沢山の葉が覆っていきます 構内でみられる浮葉植物は アサザ ガガブタ スイレン ヒシなどです 写真2 アサザとガガブタはとてもよく 似ていますが よく観察すると アサザの葉の縁は波打っ ているので見分けることができます 夏に花が咲けば違 いは一目瞭然で アサザは黄色い花 ガガブタは白い花 を咲かせます 水面に広がった浮葉の間から小さな花が あちらこちらから覗いている様子はとても可愛らしいも のです どちらも種子で増えるほか 旺盛に地下茎を伸 ばして その先にあたらしい株を作ります 成長期であ る夏場 縦横無尽に地下茎を伸ばして生育域を拡げてい きます 可憐な花の咲く水上の世界の下に 地下茎が渦 巻く水面下の世界があると思うと 自然界は可愛いだけ ではやっていけないのだ と妙に納得します 写真 2 左から アサザ ガガブタ ヒシ 最後に 葉や茎が地上に立ち上がっているものを紹介 します これは 抽水植物 といいます 構内のみならず 湿地の至るところで見ることができるのが イネ科の多 年草 ヨシです 写真3 ヨシは昔 葦 アシ と呼 ばれていましたが アシは 悪し でよろしくないので 良 し と呼ぶことになったそうです ヨシは地下茎で繋がっ た沢山の株 シュート を群生させます 春先に 前年 の枯死株の根元にある根茎から新しい茎を伸ばし 夏に かけてグングン伸長する様は見ていると清々しい気持ち になります 構内のヨシは草丈2m ほどですが 栄養条 件の良い湿地では草丈3m以上になることがあります 夏は深緑の葉を風になびかせ 秋には金色の穂をつけま す 冬になると地上部は枯れて 茶色い枯れヨシになり ます 写真4 写真 4 冬のヨシ群落 写真 3 ヨシ 9 自然探索総集編2013.indd Sec1:9 2013/06/12 9:56:01

水辺の生き物 水面に映る青空 白い雲 青葉に その上 に浮かぶアメンボ その下をユラリと泳ぐコ イ 景色を引き立てる白い鳥 水辺の生き物 というとそのような光景を思い浮かべられる かもしれません 大きな公園を訪れると 必 ずといってよいほど池があります それは噴 水池かもしれませんが 多くの場合は芝生や 石垣に縁取られて その廻りには樹木が植え られ 時にはヨシやスイレンなどの水草が水 中に生えています 写真1 研究所本館前の池 コイを放しているためか 水が濁りがちです 公園に水辺があるとそこに人が訪れます 水面があると 近づいて覗いてみたくなりま す 大きな魚がはねたり 水面に波紋を立て たりすれば なおさらです 水の中に入って はいけませんが 近くで見たくなります そ れに 静かにしていると トンボが飛んで来 たり カエルやカメが水際にじっとしている のが目に入るかもしれません 一度は逃げ 去った魚や水鳥が再び巡ってくるかもしれま せん 写真 木につけた名札 幹に取りつ ける場合は 成長とともに食い込ま ないように 伸縮するバネを使う 写真2 研究用の池 サイエンスキャンプに来た子供たちが観測をしています 水辺の魅力は水や緑がもたらす潤いだけで なく このような生き物たちでもあります その生き物たちは 水の中や陸の上にすんで いるだけでなく 水と陸とを往き来したり 生まれたばかりは水中で 大きくなると陸に 上がるものもあります 水と陸とが隣り合っ ている水辺は 多くの生き物にとっても魅力 のある場所なのです 研究所の中にも 池や水路があります こ の中には 研究用の池もありますが 多くは 雨水を溜める池とそこにつながる水路です 新しく作った池なので 元から住んでいた生 き物はいませんが 周りの池や水路から移っ てきた生き物が見られます ここでは その 中から陸の上でも見られる生き物をある順番 で紹介します 最初に紹介するのは ユスリカです 暖かく なると 水辺で蚊柱を立てます 人を刺すこと はありません 幼虫期は水中で過ごします 多 くの種は数ミリの細かい虫ですが 池でも川で も沢山発生するので 水と陸の生態系をつなぐ 働きをします 左から順に モモグロミツオビツヤユスリカ 写真 3 ミズクサ ユスリカ 写真 4 ナカヅメヌマユスリカの 1 種 写真 5 のい ずれもオス成虫です 11 自然探索総集編2013.indd Sec1:11 2013/06/12 9:56:06

次に紹介するのは フサカです 大きさは 5 ミリほどで ユスリカよりカに近い虫です が 人は刺しません 幼虫がプラクントンの ように水中を漂っています 魚に食われやす いので 魚のいない池によく見られます 面 白いのは この幼虫がミジンコを食べるため フサカがいるとミジンコがツノを伸ばして食 われにくくなります 研究所の中には魚がい ないのでフサカが沢山いる池があり フサカ とミジンコとの関係を研究する絶好の場所と なっています 最後に紹介するのは ヒキガエルです 研 究所の池には春先に周りの林や草地から卵を 産みに集ってきます 産卵からしばらくする と 黒っぽい小さなオタマジャクシが岸近く に群れているのが見られます 写真 6 フサカのオス成虫 写真 8 ヒキガエル その次は トンボを紹介します 研究所の 池から羽化するのは ギンヤンマ コシアキ トンボ アオモンイトトンボなどです 水田 から羽化するノシメトンボや小川から羽化す るハグロトンボも訪れます 写真 9 池の水面近くを泳ぐヒキガエルのオタマジャクシ 写真 7 ノシメトンボのオス成虫 さて ここで紹介した生き物の順番は何を表わしているのでしょうか そ れは 生態系の中で生き物が食う 食われるの関係でつながっている食物連 鎖の順番です 水中では ユスリカは藻類を食べますが フサカはミジンコ を食べます トンボは水中でも陸上でも虫を食べます そして カエルはそ のような虫を食べる虫も食べます 実際には ヒキガエルがトンボを食べる ことはまれでしょうが 水辺の生き物は一生の間に水と陸との間を往き来し たり あるいは食物連鎖を通じて 水中の世界と陸上の世界とをつないでい ます このような食物連鎖を維持するように研究所内の自然環境を守ってい きます 生物圏環境研究領域 当時 高村健二 写真 3 5 は上野隆平主任研究員 9は角谷拓研究員が撮影しました 環境報告書 2009 2009 年 7 月発行 より 12 自然探索総集編2013.indd Sec1:12 2013/06/12 9:56:09

木と深くかかわりあうキノコたち 構内のアカマツ コナラ シラカシの林内では 春から秋に遅くまで様々なキノコに出会うことができます キノコ は生物学的にはカビの仲間ですが 繁殖器官 植物の花に相当します として比較的大きな子実体とよばれる菌糸の集 合体を作ります この子実体もしくは子実体を形成したカビの菌糸本体も含めてキノコと呼んでいます われわれは普 段はひっそりと林床で暮らすカビの仲間が突如として作り出す大きなキノコの出現に驚くことも少なくありません こ こでは キノコの生態ごとに構内で見られた代表的なキノコとそれに関する話題提供をします 樹木共生菌 構内を彩る樹種の多くが実は根の先端に共生菌を棲まわせています その中でもアカマツ コナラ シラカシといった 大きな樹木の根にはキノコをつくる菌類が共生しています こうした樹種の根には通常何百種類ものキノコの菌糸が共生 していると言われており 梅雨時期や秋の降雨の後など条件が整えば一斉にキノコを作り出し 木の下は色とりどりの共 生菌のキノコで埋め尽くされます 梅雨時期から夏にかけて良く目にするキノコにはテングタケ属やベニタケ属のキノコがあります テングタケ属は熱 帯低地林を中心に多種多様なものが知られています 写真1はテングタケ属のツルタケ節のキノコと考えられます 傘 の縁に向かって美しい条線が伸びているのが特徴です 写真2はベニタケ属のケショウハツ近縁種と考えられます ベ ニタケ属のこの仲間には不思議なことにカブトムシ臭のするキノコがあります 何に役立っているのかは謎ですが 写 真2のキノコもカブトムシ臭が強かったです 秋になるとテングタケ属やベニタケ属に加えて イグチ科やフウセンタケ科といった北方林に多いキノコが顔を出す ようになります 特に日当たりのよい植栽したアカマツの林床ではヌメリイグチ属のチチアワタケが点々とアカマツの 周りに出てきます 写真3ではチチアワタケの名前の由来でもある乳がキノコから分泌されているのが分かります 少 し成長すると乳は分泌されなくなりますが 傘の裏側には胞子が出てくるイグチ科特有の管孔構造が広がってきます 写 真4 この無数の穴から1つのキノコあたり何十億個のオーダーの胞子が数日かけて放出されます イグチ科やテング タケ科には傘を開くと数 10cm にもなる大型のキノコを作るものもいます 写真5は 10 月はじめにシラカシ林の林縁に 群生していたキタマゴタケです その大きく傘を開いた美しさは例えようがありませんが キノコ食の昆虫やバクテリ アによって数日後には色あせ 倒れてしまいます ヤマドリタケ属の仲間も大型のキノコを作りますが キノコバエの 幼虫やナメクジに食い荒らされていきます ナメクジにほとんどの表面をかじられても立ち続け 胞子を放出している ヤマドリタケ属のキノコの姿にはたくましさすら感じます 写真6 写真1 テングタケ属ツルタケ節の一種 写真2 ケショウハツ近縁種 写真3 柄の上部や管孔周辺から 乳を分泌するチチアワタケ幼菌 写真4 チチアワタケ成菌の管孔構造 写真5 シラカシ林床に生えた キタマゴタケ 鮮やかな黄色が美しい 写真6 傘表面をナメクジに かじりとられたヤマドリタケモドキ 17 自然探索総集編2013.indd Sec1:17 2013/06/12 9:57:34

分解菌 共生菌や病原菌や寄生菌など多様な生態のキノコの仲間が見られますが キノコの仲間が果たすもっとも重要な役割 を担っている森の掃除屋ともいわれるキノコは分解菌の仲間です バクテリアや土壌動物が分解できない難分解性の有 機物をどんどん分解できる分解菌は落ち葉や落枝 倒木 切り株を土に還していきます 分解菌のキノコも夏から秋に かけていろいろな植栽の間にみることができます 落ち葉の分解菌のキノコの大きさはほんの数 cm しかないアカヤマ タケ属の一種 写真7 から 傘の直径 高さとも数 10cm 以上あるカラカサタケ 写真8 まで様々です 一方 木 材分解する分解菌のキノコは餌となる倒木や切り株上に時としてびっしりと発生し 人目を引くことがあります 登山 道の木道などを腐らせるサマツモドキが構内のスギの切り株から生えている様も印象的でした 写真9 写真7 ほんの数センチしかない アカヤマタケ属の一種 写真8 高さ 30cm 以上 傘の直径 20cm 以上にもなるカラカサタケ 写真9 スギの切り株を腐らせるサマツモドキ キノコの形 キノコの仲間の多くは柄の先に傘の付いた形をしていますが 中には柄も傘もなくマシュマロのように球形のキノコ をつくるものや アミガサタケの仲間ように不定形になるものがあります ホコリタケ科の多くは球形で短い柄に相当 する部分があるだけです 落ち葉を分解しているホコリタケ科のキノコの中でもノウタケは大きなキノコを作ります 写 真 10 写真のように最初肉質は白色ですが 胞子が成熟すると黄褐色になります それにしても割れ具合といい外皮 の色といい焼きたてのパンにそっくりです キノコが大きくなる時は膨圧によるところが大きいと言われています 周 辺の水分をどんどん吸って大きくなるのですが 雨の後急激に乾燥したりすると内部は膨れ続けるのに表面の菌糸は成 長と止めることから外皮が割れやすく写真のようになることが多いのです テングタケ科のキノコは柄の根元に袋状の つぼをもっています その多くは幼菌の時には卵のように袋の中にしまわれていて 水分条件が良くなると袋を破って 柄が伸び 傘が開きます キタマゴタケのキノコがまさに袋を破って出てきている様は黄色の傘に白のつぼが生え 卵 を連想させます 写真 11 写真 10 落ち葉を分解するノウタケ 写真 11 キタマゴタケ幼菌 白色のツボと黄色の傘のコントラストが美しい 地域環境研究センター 高津 文人 写真 2010 年7月から 11 月に構内にて高津文人撮影 環境報告書 2011 2011 年 7 月発行 より 18 自然探索総集編2013.indd Sec1:18 2013/06/12 9:57:36

木漏れ日便り 国立環境研ニュースから 国立環境研究所では 年に6回 国立環境研ニュースを発行しています 研究成果や行事の紹介が おもな内容ですが 不定期で 研究所構内の自然を紹介するミニコラム 木漏れ日便り を掲載して います 木漏れ日便り 日本には約 600 種 世界では1万種ものシダがあります 研究所の構内では ワラビやゼンマイのほ か ゲジゲジシダ ハリガネワラビ コウヤワラビ イヌワラビなど全部で 15 種ほどのシダが見られま す 春先に土筆 つくし を出すスギナもシダの仲間です 写真中央のフユノハナワラビ 冬の花わら び は 花に見立てられる部分 胞子をつける と普通の葉とが途中から枝わかれした変わった構造を しています 冬の というように 秋に葉を出してそのまま冬を越します なお ワラビという名 前のシダはたくさんありますが いずれもワラビの親戚というわけではありません 多くのシダは 葉の裏に 胞子を包み込んだ胞子嚢 ほうしのう をつけます その形は種類によって様々 です シダを見かけたら ためしに葉を裏返してみて ください シダの祖先は4億5千万 年ほど前に生まれました それに比べれば人類の誕生 などごく最近のことです 秋晴れの日 足もとに茂る 大先輩の歴史に思いをはせ ながら木漏れ日の中を散歩 するのも一興です 写真の説明 ミドリヒメワラビ 左上 イヌワラビ 左下 フユノハナワラビ 中央 イヌワラビの胞子嚢群 右上 ホシダの胞子嚢群 右下 国立環境研ニュース 27-4 2008 年 10 月発行 より 木漏れ日便り 左の写真はカマツカ 右はム ラサキシキブといういずれも環 境研構内の低木の実です 秋にな ると目立つのは紅葉ばかりでは ありません このような木の実 も目につきます 赤系統の色の 実が多いのは 果実を食べて種子 を散布してくれる鳥が見えやす い色だからだと言われています 国立環境研ニュース 26-5 2007 年 12 月発行 より 19 自然探索総集編2013.indd Sec1:19 2013/06/12 9:57:38

木漏れ日便り 私たちの身の回りには近年になって日本の外から入ってきた外来植物もたくさん生えています それ らは人間が意図的に持ち込んだ園芸品種が逃げ出したものや 気がつかずに持ち込んでしまったものが いつのまにか定着してしまったものです 人間の活動の影響を強くうけている場所では むしろ外来の 種類のほうが多いくらいです 環境研の構内やその付近でも いくらでも外来植物を見つけることがで きます これらの植物自身になんの罪もないのですが きれいだなと手放しで愛でる前に こんな花が 咲き乱れる様子は 100 年余り前の日本では決して見られなかったし これらの種類がはびこったために 在来種が隅に追いやられているかもしれないことを ちょっと頭に浮かべてください セイタカアワダチソウ 左 は外来植物というとまず名前があがる 北アメリカから観賞用に持ち込んだものが 20 世紀半ばから急速に広がった マツバウンラン 中 も北アメリカ原産で 1940 年代に入ってきたらしい 芝生 に侵入しているのをよく見かける ナガミヒナゲシ 右 は地中海沿岸原産で 1960 年代に定着 環境研前の大通 り沿いに繁茂している ワルナスビ 左 は北アメリカ原産で 20 世紀のはじめに牧草といっしょに入ってきて定着し 日本各地に広がった ブタナ 中 はヨーロッパ原産で 1930 年代に定着が観察されている 環境研の芝生でもふつうに見られる ニワ ゼキショウ 右 も芝生などでよく見られる 北アメリカから 19 世紀の終わりごろに入ってきたとされている 国立環境研ニュース 28-2 2009 年 6 月発行 より ヒメシダの群落 20 自然探索総集編2013.indd Sec1:20 2013/06/12 9:57:42

構内樹木ガイド 組み合わせ編 P15 でもご紹介したとおり 構内には 100 種以上の樹木が生えていて 研究所内の四季を豊かに彩っています 木の種類を見分けるには葉や花 実がポイントですが 親しんでくると少し離れたところから見た姿かたちや 幹の質感などもヒントになります 左のページでは ごく一部ではありますが 構内で見られる樹木の葉の写真を集めました 右ページには 左ページの樹種の花や実 樹肌などの写真を集めました どれがどの種のものなのか あなたはわかりますか 答えは右下にあります ヤマボウシ コナラ ナツツバキ 葉脈が独特 ハナミズキと似た花で すが こちらはまず葉を広げてから 咲きます かしわ餅のカシワより ややひかえめなギザギザの葉 ツバキといっても落葉樹です 花は 夏に咲きます イロハモミジ シラカシ エゴノキ 葉は茎の一か所から 2 枚が向かい 合って付く対生です しっかりとした葉 生垣によく使わ れる種です 雑木林でよく見かけます 半日陰でも たくさん花をつけます マテバシイ メタセコイア ヒサカキ 大きめで厚みのある葉はやや先太り シラカシ ヒサカキと共に常緑樹 針葉樹の一種で 中国原産 円錐形の 整った樹形を作ります サカキの代わりにお供えに使われる ことがあります 21 自然探索総集編2013.indd Sec1:21 2013/06/12 9:57:45

1. この実はプロペラ付きで ひらひらと舞います 2. 芽吹きたての頃はふさふさの毛が 早春の霜から葉を守っています 3. 秋になると沢山できる 小さいドングリです 4. つんと鼻をつく香りがします これは雌花です 5. このドングリはフライパンで 炒って食べられます 6. 白い部分は花びらに見えますが 実は葉っぱが変化したものです 7. 花が終わると銀杏のような実が できます 8. 樹肌はすべすべですが めくれて いるため独特の模様です 9. 小さい松ぼっくりのような実です 1. イロハモミジの実 2. コナラの芽吹き 3. シラカシの実 4. ヒサカキの花 5. マテバシイの実 6. ヤマボウシの花 7. エゴノキの花 8. ナツツバキの幹 9. メタセコイアの実 22 自然探索総集編2013.indd Sec1:22 2013/06/12 9:57:54

国環研の中の緑も地域の自然に 研究所の構内のあちこちにアカマツの林があり 昨年度は 林を中心に 高木はアカシデ ミズ ますが 毎年数十本が枯れてしまいます アカマ キ イタヤカエデなど 15 種合わせて 100 本あまり ツに限らず 病気で枯れたり強風で倒れる木は珍 低木はウツギ ガマズミ キブシ クロモジなど しくありません 昨年度の後半に 構内の植栽の 19 種 全部で 200 本あまりを植えることにしまし 管理に予算が配分されるが木が枯れたあとの補植 た 構内の林をくまなく歩きまわり 明るさや周 はどうしたらよいかという相談を総務の担当者か 囲のようす 道からの見え方などを考えて植える ら受けました そもそも植栽管理の基本方針がな 木の種類と本数を決めました 私の専門である植 いとのことでしたので その方針作りから始めま 物生態学の知識も少しは生かすことができました した 植栽作業をする業者の担当者のかたには 自然 まずは構内の植栽を3つのタイプに分けて考え に見えるような植え方を工夫していただきまし ることにしました 庭園的な部分 道路沿いの街 た 林の縁に近いところには明るいところが好き 路樹の部分 そして半自然的な林の部分です 庭 な樹種 ちょっと内側にはやや暗いところでも花 園は見た目を重視して管理します 園芸品種の植 をつけるエゴノキなどを配置する また花が楽し 栽もよいでしょう すでに街路樹として統一的に めるハクウンボク ホオノキ ヤマザクラなどは 木が植えられているところは その状態で管理す 道から見えやすいところに植えるといった心配り ることが適当です 一方 半自然的な林は地域の もされています 植え付け予定の場所を示す杭を 自然の一部と考えて 北関東の平地に自生してい 確認するために歩き回ったのは寒い雨の日でした る樹種を植えることにしました ツバキやサクラ が とても楽しく感じました の園芸品種 北アメリカ原産のタイサンボクや中 自然に近い林では植物を見て楽しむこともでき 国原産のトウカエデなどは植えません 高木にな ますし 昆虫や鳥も集まってくるでしょう これ る樹種だけでなく 林内の低木も同様の方針で選 から 10 年 20 年かけて 研究所構内の林が筑 びます 林のなかは定期的に刈り取りをしている 波山麓の自然に少しずつ近づいていくことを楽し ので低木はほとんど生えていませんが 散歩して みにしています 楽しい林にするには 季節によって花や実 紅葉 生物圏環境研究領域 当時 が楽しめる低木が欠かせません 写真1 マツが枯れて林に穴が空い た状態 竹中明夫 写真2 明るいところに植えたクヌギ 関東地方の雑木林でごく普 通に見られる 写真3 林の道路近くに植えたネジキ ツツジ科で スズランのよ うな白い花をつける 環境報告書 2010 2010 年 7 月発行 より 23 自然探索総集編2013.indd Sec1:23 2013/06/12 9:57:56

植栽の管理について 国立環境研究所の緑 先達は何をめざしたか 国立環境研究所の前身である国立公害研究所が くの林を残しながら あらたな樹林も作ろうとい 発足したのは 1974 年のことです これまでの うのが研究所構内の設計の基本的な考えかたと 40 年近い歴史のなかで 研究施設が次第に増築 なっていました されてきましたが それでもまだ多くの緑が残っ 樹 林 作 り に は 職 員 自 身 も 参 加 し ま し た 1981 年に シラカシなどの常緑広葉樹の苗を職 ています つくばの地に研究学園都市が作られることに 員が総出で敷地周辺に植えた時の写真が残ってい なってから 東京などから多くの研究所が移転す ます 最初は高さ1メートルもなかった苗が 現 るには時間がかかりましたが つくばで産声をあ 在はこんもりとした樹林を作って研究所を包んで げることになった当研究所は 比較的早い時期に います こうした研究所の先輩たちの汗のおかげ 建設されました 当時はまだ主要道路の舗装も十 で 研究所の今の緑があります 分ではなく 雨が降ると長靴が必需品であったと 今も 構内の除草はもっぱら刈り払いで行ない 除草剤は使わないなどの自然への配慮をしていま いう話を聞いています 学園都市の建設事業を記録した 筑波研究学 す とはいえ 研究所の緑を地域の自然の一部と 園都市官庁営繕事業記録 (1981) という文書に とらえ 多くの生き物の生息場所としても住みよ 当研究所がどのような考えで設計されたかが書か い場所にしようといった考慮は十分にされてきた れています 学園都市の全体計画では 各機関は とは言えません これだけの面積の緑地を上手に 敷地のなかに 30% 以上の緑地を確保することに 管理すれば 働く人が憩う場所としての機能と なっていたのですが 公害研究所ではさらにで 生物の生活場所としての機能のバランスもはかる きるだけ多くの緑地を確保したいという判断が ことができるでしょう 2011 年からは 構内の あった とのことです また 研究所の敷地は 池を水草が生え さまざまなトンボが集まる池に 開発されるまでは赤松林 雑木林 栗果樹園 畑 しようという試みがスタートする予定です 研究 原野によって構成され コジュケイ キジ ウサ 所の自然がこれからより豊かで楽しいものになる ギ等の棲息するところであった とも記録されて 様子を ぜひ見守っていただきたいと思います います こうした環境を活かして できるだけ多 生物 生態系環境研究センター 竹中明夫 写真1 1981 年の植樹風景 写真2 植樹直後のシラカシ 写真3 植樹から 30 年後のシラカシ林 環境報告書 2011 2011 年 7 月発行 より 24 自然探索総集編2013.indd Sec1:24 2013/06/12 9:57:59