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大 地 の 作 家 ウラジーミル ナセトキン 1 The Artist of the Earth: Vladimir Nasedkin 鴻 野 わか 菜 KONO Wakana 電 線 のあいだには 星 たちのファルセットだけがある そこではペルミ 市 民 が 深 い 眠 りについている だが 水 は 拍 手 している そして 岸 辺 は ドレミに 合 わせて 降 りる 霜 のようだ ヨシフ ブロツキー ヴェネツィア 詩 節 より ロシア 現 代 美 術 の 旅 ロシアから 世 界 へ 旅 を 続 ける 作 家 達 がいる 月 のオブジェを 抱 え ニュージーランドの 海 や 房 総 の 山 を 旅 して 写 真 を 撮 るレオニート チシコ フ(1953 年 生 ) チベットの 寺 院 や 新 潟 の 山 を 旅 しながら 人 々の 空 に 寄 せる 夢 を 表 現 しようとす るターニャ バダニナ(1955 年 生 ) 航 海 するには 外 交 官 になるか 水 夫 になるしかなかった 2 ソ 連 時 代 に 大 洋 を 求 めて 水 夫 として 数 年 間 を 海 上 で 過 ごし 80 年 代 末 からは 海 や 伝 説 の 島 をテーマ にインスタレーションや 映 像 を 制 作 する 作 家 となって 南 極 や 北 極 圏 の 海 への 創 作 の 旅 を 続 けるア レクサンドル ポノマリョフ(1957 年 生 ) 彼 らが 皆 ヨーロッパとアジアの 境 界 であるウラル 山 脈 や 多 様 な 文 化 の 出 会 う 港 湾 都 市 オデッ サで 青 年 時 代 を 過 ごしているのは 興 味 深 い 彼 らはソ 連 時 代 末 期 に 水 平 線 や 山 脈 の 彼 方 に 広 がる 世 界 に 憧 れて 移 動 を 人 生 の 指 針 と 定 め ソ 連 崩 壊 を 経 て 移 動 の 自 由 を 得 るとともに 世 界 中 を 巡 り はじめた ウラジーミル ナセトキン(1954 年 生 )も そうした 旅 する 作 家 の 一 人 である ウラル 山 脈 の 東 麓 の 小 都 市 イーヴデリで 生 まれ そこから 380 キロ 南 にある 工 業 都 市 ニージニー タギルで 美 術 教 師 をしながら 人 生 の 前 半 を 過 ごしたナセトキンは 1997 年 にモスクワに 移 住 するまで 生 活 の 場 で あるアジア ロシアと レジデンスと 展 示 の 場 であるヨーロッパ ロシアの 往 還 を 続 け 移 動 のリ ズムを 身 体 に 刻 みこんだ 1989 年 から 2003 年 にかけては 妻 ターニャ バダニナと 共 に 共 同 アーティスト イン レジ デンスのプロジェクト PIK ( 旅 アート コミュニケーション)を 組 織 し 内 外 の 作 家 達 とウ ラルやバイカル 湖 で 共 同 制 作 やワークショップを 行 い その 成 果 である 大 きなグループ 展 を 各 地 で 1 拙 論 に 掲 載 されたすべての 図 版 は 作 家 提 供 であり 掲 載 の 許 諾 を 得 ている 2 アレクサンドル ポノマリョフへの 筆 者 のインタビュー(2012 年 9 月 21 日 モスクワ) - 43 -

開 催 した 筆 者 もそれらの 展 覧 会 のうち ネパール チベットへの 旅 から 生 まれた 方 角 は 東 展 (2000 年 ) 3 を 見 たが 個 々の 作 品 の 強 度 もさることながら 文 化 接 触 がもたらす 創 造 性 を 提 示 し た 展 覧 会 全 体 が 第 2 次 チェチェン 戦 争 下 で 排 外 主 義 を 強 めていた 閉 塞 的 なロシア 社 会 において 批 評 的 な 意 味 を 獲 得 していた 作 家 達 は 何 を 求 めて 旅 をするのか 方 角 は 東 展 は その 答 えの 一 つを 示 していたといえる 本 展 でナセトキ ンは チベットの 寺 院 の 石 段 や 壁 を 写 しとった 27 枚 の 正 方 形 の 写 真 を 曼 荼 羅 のような 配 置 で 展 示 していた ( チベットの 影 ) ナセトキンは チベットの 寺 院 で 石 段 を 上 っていた 時 そこに 落 ちる 影 の 形 のなかに 自 分 が 長 年 追 求 してきた 幾 何 学 模 様 を 見 いだし 天 啓 に 打 た れるような 思 いをしたのだという 4 創 作 の 新 たな 霊 感 を 求 めて 遥 かな 旅 に 出 て 未 知 の 大 地 を 踏 みしめた 時 作 家 がそこで 発 見 するのは しばしば 自 分 が 生 涯 をかけ チベットの 影 ( 部 分 )2000 年 て 求 めてきた 主 題 や 理 想 のもう 一 つの 姿 である こうし て 作 家 は 越 境 しながら 自 分 の 創 作 の 変 奏 を 奏 でることで 人 類 の 文 化 を 結 びつける 役 割 をする 荒 野 と 芸 術 ナセトキンの 創 作 を 貫 く 最 大 のテーマは 大 地 である ナセトキンは ミニマリズムのレッスン と 題 したテクストで 次 のように 語 っている 最 初 の 衝 動 はいつも 自 然 を 源 泉 としている 私 は 抽 象 主 義 者 ではないので 何 も 考 えだすこ とはできないし 今 までもできなかった 私 の 作 品 の 根 底 にあるのは 自 然 観 察 であり 私 はい つもそれをスケッチブックに 描 きとめる それから この 鏡 映 の 元 に 何 があったかを 時 に 忘 れ 自 分 の 世 界 自 分 の 空 間 を 作 りだす 5 3 モスクワ ノーヴイ マネーシュ(2001 年 4 月 8-17 日 ) 4 ウラジーミル ナセトキンへの 筆 者 のインタビュー(2001 年 4 月 7 日 モスクワ) なお 曼 荼 羅 的 な 配 置 でありながら キリスト 教 の 三 位 一 体 を 意 識 した 三 部 構 成 になっているのは 東 と 西 の 融 合 を 表 すためだという 5 Владимир Наседкин. Уроки минимализма // Vladimir Nasedkin. Ekaterinburg: Tatlin. 2008. С.202. 本 書 は 英 露 バイリンガルであり 現 時 点 では ナセトキンの 創 作 に 関 するもっとも 包 括 的 な 文 献 である - 44 -

私 のテーマは 大 地 その 一 部 地 相 風 景 である 風 景 は 作 戦 地 にも 似 て 壕 のような 明 瞭 な 直 線 が 単 色 の 面 に 食 いこんでいる その 面 には 砂 が 練 りこまれ キャンヴァスの 空 間 は 生 命 なき 荒 野 や ニージニー タギルや 他 の 大 都 市 の 工 業 地 帯 を 思 わせる これは 自 然 と 文 明 抗 いがたい 自 然 の 力 と 計 算 の 争 いである 私 は 物 質 主 義 者 だが 私 の 作 品 における 荒 野 は ど んな 特 定 の 場 所 とも 結 びついていない この 荒 野 は どの 国 にも どの 大 陸 にも 存 在 しうる 6 ナセトキンが 大 地 にインスピレーションを 受 けて 描 く 作 品 は まさに 大 地 そのもの 大 地 の 断 片 のように 見 える ナセトキンはしばしば その 土 地 で 採 集 した 砂 を その 土 地 の 風 景 の 色 に 彩 色 し ファク ト ゥーラ 絵 の 具 と 混 ぜてキャンヴァスに 塗 りこむ その 行 為 自 体 と 作 品 の 肉 厚 な表 面 からは 創 作 によって 大 地 を 現 出 させたいという 作 家 の 強 烈 な 願 望 が 伝 わってくる なぜ ナセトキンは これほど 大 地 に 執 着 するのか その 根 底 には 作 家 が 80 年 代 にくりかえ し 訪 れたトルクメニスタンの 荒 野 で 不 毛 の 美 に 感 銘 を 受 けた 原 体 験 があった 7 荒 野 私 にとって 荒 野 の 無 人 と 不 毛 は 清 らかさと 清 浄 さの 体 現 のように 思 える そして 逆 説 的 だが 私 にとって 荒 野 は 植 物 が 生 えていないにもかかわらず 地 上 の 楽 園 についての 最 後 の 思 い 出 を 秘 めた 場 所 である 荒 野 でこそ 超 越 的 超 常 的 な 世 界 に 触 れ 神 の 呼 び 声 を 聞 くことができる 荒 野 は 私 が 平 凡 な 人 生 の 意 味 を 発 見 するのを 助 けてくれたのだ 8 地 形 1987-2005 年 油 彩 100 130cm 地 形 2001 年 油 彩 200 150cm 6 Там же. С.201. 7 Владимир Наседкин. Не стоит делить космос и искусство // Татлин News. No.3. 39(46)_2007. С.105. 8 Владимир Наседкин. Уроки минимализма. С.201. - 45 -

美 術 史 家 ジョン ボウルトは この 言 葉 を 受 けて ナセトキンにとって 荒 野 大 洋 山 脈 は 無 用 な 場 所 のメタファー 9 だと 述 べ ナセトキンが 描 くのは 資 源 や 食 料 の 供 給 地 としてではない 自 然 であり そこでは 荒 野 の 静 けさに 耳 を 傾 け 山 頂 に 差 す 日 差 しの 映 ろいを 眺 めることができる と 綴 っている さらに 言 えば ナセトキンにとって 荒 野 や 大 地 は 無 用 であるがゆえに 価 値 のある 美 術 の 象 徴 で あると 考 えてよいだろう 芸 術 が 政 治 や 社 会 に 奉 仕 することを 求 められた 社 会 主 義 時 代 に 創 作 を 始 め 大 学 で 若 者 達 に 美 術 を 教 えていたナセトキンにとって 美 術 のあるべき 無 用 性 は きわめてア クチュアルな 問 題 だったはずだ ナセトキンは 美 しく 無 益 な 大 地 を 創 作 することで 美 術 を 社 会 的 政 治 的 要 請 から 解 放 し 美 術 と 自 分 自 身 の 自 由 を 確 認 し 続 けているのではないか まさに 荒 野 が 複 雑 さから 単 純 さへと 至 る 道 に 私 がたどり 着 くのを 助 けた 10 という 言 葉 どおり 荒 野 はナセトキ ンに ソ 連 と 新 生 ロシアという 2 つのシステムにおいて 美 術 の 意 味 を 問 い 続 けてきた 作 家 が 追 求 す べき 主 題 を 明 確 に 示 し 作 家 のアイデンティティを 目 覚 めさせたのである 幾 何 学 的 図 形 と 宇 宙 ナセトキンは つねに 大 地 や 自 然 と 対 峙 しながらも 風 景 画 を 描 くことはなく すべてを 幾 何 学 的 記 号 に 昇 華 させていく ナセトキンが 初 期 のドローイングから 現 在 の 油 彩 やオブジェに 至 るまで 一 貫 して 幾 何 学 記 号 に 取 り 組 んできた 理 由 の 一 端 は フォルムと 色 彩 の 構 成 の 飽 くなき 探 求 であり ミニマリズムへの 傾 倒 である 思 うに 絵 の 芸 術 的 価 値 を 決 めるのはリズ ム 色 彩 の 構 成 形 の 調 和 であり 主 題 は 絵 の 真 の 作 用 を 妨 げる だが それと 同 時 に 主 題 は 純 粋 な 芸 術 的 美 点 を 理 解 し それを 統 一 的 なものとして 受 け 止 める 助 けになる 11 単 純 さは 芸 術 の 目 的 ではない 物 のリアル な 意 味 に 近 づこうとするうちに 意 志 に 反 し て 単 純 さに 近 づくのだ 12 ロシアの 要 塞 2011 年 炭 サンギーヌ 黒 色 絵 具 75 105cm 9 Джон Боулт. Пророк в пустыне // Vladimir Nasedkin. С.12. 10 Владимир Наседкин. Уроки минимализма. С.202. 11 Там же. С.202. 12 Там же. С.200. - 46 -

また 作 家 は 次 のようにも 述 べている 作 家 のストラテジーに 表 れているのは 多 元 的 な 表 面 を 同 時 に 存 在 させることだ それを 定 義 しているのは 空 間 の 多 層 性 と 結 びつき 得 ないものの 結 びつきを 明 らか にする 神 秘 のコードである 思 うに 作 家 は 古 代 の 大 陸 の 地 図 や 図 式 見 取 り 図 に 満 ちた 集 積 された 豊 かな 文 化 の 完 全 なア ーカイヴを 転 写 している 13 障 壁 2007 年 芸 術 家 中 央 会 館 これらの 言 葉 や 彼 の 作 品 が 示 すように ナセトキンにとって 幾 何 学 的 図 形 とは 到 達 しがたい 調 和 (エドゥアルト クベンスキー) 14 であると 同 時 に あらゆる 文 明 を 結 びつける 原 始 的 なフォル ムであり 人 類 の 文 化 の 共 通 項 である 大 地 の 記 号 化 によって 作 家 は 人 類 の 普 遍 性 を 模 索 して いる だからこそ ナセトキンの 幾 何 学 的 記 号 の 中 には 美 術 史 家 ヴィターリー パチュコフが 語 るように エジプトのピラミッドの 象 形 文 字 エル リシツキーのテクストを 含 むあらゆる 世 界 文 化 の 引 用 の 息 吹 15 を 感 じることができる 幾 何 学 的 記 号 によって 人 類 を 結 びつけようと 試 みた 後 ナセトキンの 作 品 は 宇 宙 を 志 向 し 始 める ボウルトは ナセトキンの 作 品 の 宇 宙 性 について 次 のように 書 いている 氷 山 や 石 碑 は 天 を 指 している 衛 星 アンテナや あるいはシャーマンのタン バリンのように しばしば それが 何 なの か 分 からず 聞 き 取 れないほど 不 正 確 で 不 動 くインスタレーション 氷 山 2004 年 13 Там же. С.201. 14 Эдуард Кубенский. Предисловие // Vladimir Nasedkin. С.8. 15 Виталий Пацюков. В пространстве «текста» - между числом и геометрическим образом // Vladimir Nasedkin. С.20. - 47 -

明 瞭 な 遠 い 声 を 反 映 している これらの 作 品 は 宇 宙 か らの 信 号 を 捉 えるアンテナである これは 崇 高 な 建 築 の 設 計 図 なのだ これらの 作 品 は 新 しい 図 形 幾 何 学 を 構 成 している 古 代 のピラミッドのようにナセトキンの 尖 塔 は 多 義 的 で その 厳 格 さは 明 瞭 に 形 作 られ その 配 置 は 比 類 がなく その 穏 やかさは 可 動 的 である 16 ここで 名 前 の 上 がっている 石 碑 は その 形 状 の 二 重 性 から 見 ても 人 間 界 と 宇 宙 の 接 点 を 表 現 する 作 品 として 構 想 されていると 言 ってよい 全 3 トンの 5 枚 の 金 属 板 から 成 る この 彫 刻 は 横 から 見 ると 金 属 板 の 間 の 空 っぽの 空 間 が 強 調 され 重 量 のない 天 に 属 する 作 品 に 見 える しかし 正 面 から 見 ると 作 品 は 重 量 のある 大 地 に 属 する 17 物 体 な のである この 彫 刻 が 2001 年 に 開 催 された 国 際 展 工 業 的 風 景 における 芸 術 のエコロジー の 参 加 作 品 として 作 家 の 故 郷 である 工 業 都 市 ニージニー タギルに 設 置 されたことを 念 頭 に 置 くなら 本 作 における 金 属 はまさに 人 間 の 営 みと 歴 史 の 象 徴 であることが 分 かる それと 同 時 に 水 と 金 属 と 石 の 建 築 (1999 年 )をはじめとするナセトキンの 他 作 品 における 金 属 も 自 然 や 宇 宙 に 対 す る 人 間 の 象 徴 として 理 解 されるのである ボウルトはナセトキンの 垂 直 形 のオブジェを 指 して 宇 宙 からの 信 号 を 捉 えるアンテナ だと 書 いているが 大 地 を 描 いた 平 面 作 品 にも 宇 宙 の 刻 印 ははっきりと 刻 まれている なぜなら バダ ニナが 私 は 大 地 から 天 を 見 るが 彼 は 天 から 大 地 を 見 る 18 と 語 るように ナセトキンの 描 く 大 地 はしばしば 俯 瞰 的 であり 宇 宙 からの 眼 差 しを 宿 しているからだ 幾 何 学 的 記 号 によって 地 上 を 統 一 体 とするこ とで 地 上 全 体 と 宇 宙 という 二 項 対 立 に 向 きあ おうとするナセトキンの 創 作 上 の 進 化 は ロシ ア 哲 学 との 関 連 で 考 えれば きわめて 自 然 な 展 開 だといえる ウラジーミル ソロヴィヨフを 石 碑 2001 年 プレートメタル 300 70 60cm 水 金 属 石 の 建 築 1999 年 16 Джон Боулт. Пророк в пустыне. С.14. 17 Vladimir Nasedkin. С.109. 18 Владимир Наседкин. Не стоит делить космос и искусство. С.106. - 48 -

はじめとするロシアの 哲 学 者 や 宇 宙 思 想 家 は 人 類 が 集 合 体 となることで 神 人 となり 宇 宙 と も 結 びつくと 考 えていたが これらの 思 想 はロシア 文 学 美 術 に 大 きな 影 響 を 与 えており ナセト キンの 思 考 にも 作 用 していると 考 えられるからである パチュコフは ウラジーミル ナセトキンの 芸 術 の 姿 勢 は 時 折 芸 術 の 約 束 事 的 な 輪 郭 を 越 え いつも 自 分 の 本 性 を 保 ちながらも 美 的 な 境 界 を 乗 り 越 え 私 達 の 世 界 を 形 作 る 宇 宙 と 創 造 の 高 度 な 法 則 を 想 起 させ 想 起 する 19 と 書 いているが この 言 葉 はナセトキンの 創 作 の 本 質 を 的 確 に 表 現 しているだけでなく ロシア 現 代 美 術 の 一 つの 傾 向 を 指 摘 したものでもある たとえばここで 80 年 代 から 現 在 に 至 るまでナセトキンと 交 流 を 続 けるアレクサンドル ポノマリョフを 思 い 起 こすこ とも 可 能 だろう ポノマリョフは 海 を 主 題 に 制 作 し 続 けてきた 作 家 であるが 近 年 作 家 の 関 心 は 船 上 で 飛 翔 を 演 じるパフォーマンス 等 に 表 れるように 海 と 空 の 一 致 に 向 けられており 人 間 の 住 む 世 界 ( 低 空 を 含 む)を 総 体 として 表 現 し 宇 宙 と 対 置 しようとする 意 識 が 見 て 取 れる 人 類 や 世 界 を 共 同 体 化 した 上 で 宇 宙 への 接 近 をめざすという 思 考 は ポノマリョフが 傾 倒 するロシア 詩 人 ウラジーミル マヤコフスキーの 特 徴 でもあった(マヤコフスキーの 詩 は 社 会 主 義 的 な 労 働 者 の 団 結 を 主 題 にしながらも つねに 宇 宙 の 描 写 で 結 ばれる) 大 地 を 主 題 とするナセトキン 海 を 主 題 とするポノマリョフ そしてマヤコフスキーの 作 品 は 人 間 と 宇 宙 の 関 係 性 を 追 求 してきたロシ ア 文 化 の 一 例 であり 星 座 を 形 作 る 三 つの 星 のように 呼 応 している 附 記 しておきたいのは ナセトキンの 幾 何 学 的 記 号 は 多 様 な 文 化 の 共 通 項 や 宇 宙 の 志 向 という 性 格 を 持 っている 一 方 で いくつかの 作 品 は 一 見 して 特 定 の 文 化 を とりわけリシツキーやアレ クサンドル ロトチェンコなどのロシア 構 成 主 義 を 強 く 想 起 させることだ ロシア アヴァンギャ ルドを 継 承 し いかに 独 自 に 展 開 させるか と いう 問 題 は 20 世 紀 後 半 の 少 なからぬロシア 美 術 作 家 の 課 題 であり ナセトキンの 創 作 の 一 つ の 問 題 系 であると 言 ってよい その 際 ナセト キンが 自 分 の 好 む 製 作 技 法 ( 版 画 油 彩 ア クリルと 砂 の 混 合 )を 間 断 なく 追 求 する 一 方 で ロシア 構 成 主 義 を 踏 襲 した 作 品 においては 意 図 的 に 現 代 的 な 素 材 を 用 い 実 験 的 技 法 を 駆 使 し ているのは 興 味 深 い その 例 となるのが 金 属 のオブジェを 川 の 中 に 設 置 し 水 の 流 れの 変 化 動 くオブジェー 版 画 障 壁 2008 年 ディボンド モーター 90 200cm 19 Виталий Пацюков. В пространстве «текста» - между числом и геометрическим образом. С.21. - 49 -

をも 作 品 とする 水 と 金 属 と 石 の 建 築 レール 上 を 動 くイン スタレーション 氷 山 (2004 年 ) 音 を 奏 でる サウンド 版 画 オブジェ 通 路 (2006 年 ) 等 である これらの 遊 び 心 に 満 ちた 作 品 は 政 治 や 美 術 史 に 絡 めとられたロシア アヴァ ンギャルドを 歴 史 的 な 文 脈 から 解 放 し 芸 術 作 品 の 根 源 に ある 創 作 の 夢 とエネルギーを 抽 出 する 機 能 を 持 っている ナセトキンは 私 の 創 作 には いつも 二 つの 方 向 性 があっ た 伝 統 と 自 然 である 伝 統 に 傾 けば 剽 窃 に 近 づき 自 然 に 傾 けば 自 然 主 義 に 近 づく いつも 両 者 の 間 でバランスを 取 っている 20 スプレマティズム 構 成 主 義 ミニマリズム の 手 法 表 現 方 法 を 統 合 し 様 々な 伝 統 や 言 語 の 文 化 をコン テクストとして 私 は 自 分 の 芸 術 のコンポジションのシステ ムを 作 っている 21 と 語 っているが 美 術 史 への 尽 きせぬ 興 味 は 芸 術 の 意 義 や 文 化 の 状 況 の 劇 的 な 変 化 を 目 の 当 たりに してきたソ 連 作 家 の 宿 命 であり ナセトキンの 作 品 は 文 化 のあり 方 をめぐる 作 家 の 誠 実 な 思 索 の 軌 跡 になっているとい える エオリアンハープ 2006 年 鋼 500 200 15cm 再 び 旅 について 近 年 ナセトキンは いくつかの 新 しい 旅 に 出 た その 一 つが ロシアの 亡 命 詩 人 ヨシフ ブロツキーとの 旅 である 冬 のヴェネツィアを 愛 し 彼 の 地 への 旅 を 重 ねたブ ロツキーが 遺 した ヴェネツィア 詩 節 の 16 篇 の 詩 のため に ナセトキンもまた 16 の 挿 絵 を 版 画 で 制 作 したのだが たゆたう 水 や 影 仮 面 の 描 写 を 通 じて 無 次 元 の 世 界 を 描 きだ すブロツキーの 詩 と 同 様 に ナセトキンの 作 品 もまた 挿 絵 の 役 割 を 越 え 無 限 の 神 秘 22 を 表 現 していた 作 家 と 詩 人 のこの 共 同 作 品 は 限 定 版 の 書 籍 として 刊 行 され 2011 年 の ヴェネツィア 詩 節 私 家 版 20 Владимир Наседкин. Уроки минимализма. С.203. 21 Там же. С. 200. 22 Владимир Наседкин. Мои иллюстрации к поэзии Иосифа Бродского //Joseph Brodsky. Venetian Stanzas. Vladimir Nasedkin. Xylography. Москва, 2011. - 50 -

ヴェネツィア ビエンナーレでも 展 示 された 23 キュレーターを 務 めたポノマリョフは 暗 い 会 場 にいくつものデスクライトを 置 いてナセトキ ンの 版 画 とブロツキーのテクストを 浮 かびあが らせたが それは ヴェネツィアの 暗 い 水 の 象 徴 であると 同 時 に 時 空 を 超 えた 作 家 達 の 出 会 いと 魂 の 旅 を 思 わせた ヴェネツィア 詩 節 展 2011 年 ナセトキンが 近 年 熱 中 するもう 一 つの 旅 は グーグル アースを 使 ったプロジェクトである 2000 年 代 後 半 より ナ セトキンは 目 的 地 の 地 形 をグーグル アースで 俯 瞰 して 面 白 い 地 形 を 探 しだし そ れをキャンヴァスに 写 しとる 作 品 を 制 作 している しかし ナセトキンの 旅 はバーチ ャルな 旅 では 終 わらない ナセトキンは 下 絵 を 描 いた 画 布 を 丸 めてスーツケースに 入 れ 実 際 に 現 地 を 訪 れてその 土 地 の 砂 を 採 取 し そこで 見 た 風 景 の 色 に 砂 を 染 めて 画 布 の 上 に 貼 る ナセトキンは ニューヨークでは 不 審 者 に 間 違 われると 厄 介 だから 僕 が 路 上 にしゃがんで 砂 を 集 める 間 妻 が 脇 に 立 って 警 官 が 来 ないか 見 張 っていたん だよ 24 と 笑 いながら 語 っていたが このいかにもアナログ 的 な 行 為 と デジタルな 旅 が 交 差 しているところに プロジェクトの 批 評 性 グローバリズムや 情 報 社 会 に 対 する 批 評 性 がある 私 達 は 旅 に 何 を 求 めているのだろう? 真 理 自 分 自 身 理 想 的 な 場 所 天 国 それらは 各 人 の 個 人 的 なものだ でも おそらく 私 達 は 皆 文 化 とは 対 話 の 最 中 に 様 々な 分 野 が 出 会 うところで 生 まれること だからこそ 文 化 は 特 定 の 場 所 地 域 国 への 属 性 を 保 ちながらも 未 知 の 可 能 性 を 持 っていることを 信 じて いる もっとも 素 晴 らしい 発 見 は 様 々な 文 明 科 学 人 生 の 哲 学 が 出 会 うとこ ろで 生 じるのだ 25 グーグル アース ルーマニア バカウ 空 港 1 2010 年 油 彩 300 26cm 23 Vladimir Nasedkin. Venetian Stanzas. Università Ca' Foscari Venezia. (2011 年 6 月 5 日 -9 月 5 日 ) 24 ウラジーミル ナセトキンへの 筆 者 のインタビュー(2014 年 9 月 10 日 モスクワ) 25 Владимир Наседкин. Уроки минимализма. С.201. - 51 -

ナセトキンはこれまでノルウェー オースト リア ルーマニア アメリカやロシア 各 地 を 訪 れて 連 作 グーグル アース を 制 作 してきた が 各 々の 作 品 は 様 々な 異 なる 土 地 の 姿 であ るにもかかわらず 明 らかに 共 通 性 も 備 えてい る 大 地 を 幾 何 学 的 記 号 で 表 す 背 景 に 世 界 の 普 遍 性 の 探 求 というナセトキンの 意 図 があること は 先 述 した 通 りだが 本 連 作 には より 政 治 的 直 接 的 な 批 評 性 もあると 言 ってよい なぜなら ナセトキンは 政 治 の 中 心 であ るモスクワの 赤 の 広 場 や 紛 争 地 である 北 オセチアについてもこの 連 作 を 制 作 しているからだ 上 空 から 見 れば 共 通 の 形 状 を 持 つ 土 地 で 生 きながらも 民 族 や 文 化 の 差 異 ゆえに 争 うことの 愚 かさを 本 連 作 は 問 題 化 しているのではないか なお ナセトキンは 政 治 をつねに 前 面 に 押 し 出 す 作 家 では ないが 本 連 作 に 限 らず 文 化 の 差 異 を 越 えた 人 類 の 共 通 性 を 見 いだそうとする 彼 のあらゆる 作 品 は 現 代 社 会 において 様 々な 示 唆 を 与 えてくれる グーグル アース オーストリア グラーツ 空 港 1 ( 部 分 )2010 年 アクリル 120 80cm ナセトキンは 大 地 の 芸 術 祭 越 後 妻 有 トリエンナーレ 2015 に 参 加 するために 2014 年 10 月 に 越 後 妻 有 を 訪 れ 晩 秋 から 翌 春 にかけて モスクワの 自 宅 で グーグル アースに よって 新 潟 の 上 空 を 旅 し 続 けた 2015 年 6 月 には 再 び 来 日 し 現 地 に 1 ヶ 月 間 滞 在 して 砂 を 集 め 作 品 を 完 成 させる 予 定 であ る 作 品 を 設 置 する 十 日 町 市 の 旧 奴 奈 川 小 学 校 から 見 える 風 景 の 色 に 砂 を 染 めるのだという 26 学 生 時 代 に 1 ヶ 月 分 の 奨 学 金 をはたいて 浮 世 絵 の 画 集 を 買 い 求 め 自 分 の 作 品 に 北 斎 にちな んだタイトル( クリャジマ 33 景 2004 年 )を 与 え 長 年 に 渡 って 日 本 での 制 作 を 夢 見 てきたナセトキンは 新 潟 の 大 地 に どのような 色 と 形 を 見 いだすのだろうか また ナセトキンはこの 芸 術 祭 で 同 小 学 校 の 敷 地 に 塔 グーグル アース 私 はジェー ムズ ボンド ウラルマシュ 3 2010 年 油 彩 200 150cm 26 ウラジーミル ナセトキンへの 筆 者 のインタビュー(2014 年 10 月 19 日 新 潟 県 十 日 町 市 旧 奴 奈 川 小 学 校 ) - 52 -

( 学 校 の 記 憶 ) と 題 したオブジェも 設 置 する 予 定 である このオブジェは 折 れ 曲 がる 壁 ででき た 小 さな 迷 宮 のように 見 えるが 上 から 見 ると そのフォルムが 円 満 融 和 団 結 を 象 徴 す る 同 小 学 校 の 校 章 をかたどっていることが 分 か る オブジェの 中 心 部 にある 小 部 屋 には 小 学 校 の 机 と 椅 子 が1 対 置 かれているが その 空 間 は 扉 のない 壁 で 囲 まれ 誰 も 入 ることができない 壁 に 開 いた 穴 から 覗 きこむことができるだけだ このオブジェはいったい 何 を 表 しているのか 中 に 入 ることができない 空 間 は モスクワ 郊 外 の 湖 畔 に 設 置 したオブジェ クリャジマ 33 景 や インスタレーション ロシアの 要 塞 (2011 年 )の 主 題 でもあったことを 想 起 したい ナセトキンは クリャジマ 33 景 について どことなく 防 御 施 設 を 思 わせ オブジェの 中 心 は 閉 じていて 入 ることはできない これは ロシアの 不 可 知 の 魂 を 象 徴 し 観 測 される 世 界 からの 遮 断 を 示 している 27 と 述 べていた 一 方 ロシアの 要 塞 の 中 心 部 にある 閉 じた 部 屋 は 敵 意 に 満 ちた 世 界 から 断 絶 した 聖 な る 空 間 であり そこには 出 入 りできず 迷 宮 を 歩 く 時 に 壁 の 狭 い 銃 眼 から 覗 くか 険 しい 壁 にの ぼって 上 から 見 ることができるだけ で その 空 間 は 神 秘 の 感 覚 を 呼 び 起 こし 観 客 が 日 常 の 些 事 を 忘 れるのを 助 ける 28 と 書 いている 閉 じた 外 見 と 迷 宮 のような 内 部 を 持 つ 本 作 品 において 芸 術 はどこか 脇 にあるのではなく まさに 芸 術 のあいだを 通 り 抜 け 芸 術 の 中 を 覗 きこむことがで きる のだという クリャジマ 33 景 建 築 的 オブジェ 2004 年 木 角 材 15 15. 300 100 400cm ナセトキンは 旧 奴 奈 川 小 学 校 を 訪 れ 校 章 の 形 をした 塔 のアイデアを 初 めて 思 いついた 時 これは ふだんは 入 ることのできない 廃 校 の 象 徴 であり 聖 なる 空 間 でもある 29 と 語 っていた ナセトキンにとって 中 心 に 潜 む 閉 じた 小 部 屋 は 日 常 の 喧 騒 やあらゆる 争 いから 遮 断 された 聖 な る 場 所 記 憶 の 保 存 庫 である また 入 ることができないというその 無 用 性 ゆえに 作 家 の 考 える 美 術 のあるべき 姿 をも 象 徴 している ナセトキンは 初 めて 奴 奈 川 の 地 に 立 ち この 作 品 を 構 想 し 27 Vladimir Nasedkin. С.100. 28 作 家 提 供 資 料 29 ウラジーミル ナセトキンへの 筆 者 のインタビュー(2014 年 10 月 19 日 新 潟 県 十 日 町 市 旧 奴 奈 川 小 学 校 ) なお ナセトキンの 塔 の 直 接 的 な 源 泉 となったのは 同 校 内 部 の 展 示 ケースに 残 されていた 1 枚 の 航 空 写 真 である 在 校 生 が 校 庭 で 校 章 の 形 に 並 んで 立 っている 古 い 航 空 写 真 を 見 たナセトキンは その 日 本 の 風 習 に 関 心 を 覚 えると 同 時 に 人 々が 小 学 校 に 寄 せる 思 いに 心 打 たれ ていた - 53 -

た 時 いつかその 小 部 屋 に 雪 が 降 り 積 もり じきに 机 と 椅 子 が 朽 ち 大 地 に 還 っていく 様 子 を 夢 想 していた この 小 部 屋 は 奴 奈 川 の 大 地 にインスピレーションを 受 けたナセトキンが その 返 礼 と して 大 地 の 一 角 に 特 別 な 意 味 を 与 え 人 々の 思 いが 再 び 出 会 う 場 所 にするための 装 置 なのである ナセトキンは 次 のように 書 いている 地 理 的 にどこにいるかということ 環 境 の 質 は 作 家 の 個 性 の 形 成 に 影 響 を 与 える でも もし 特 定 の 場 所 に たとえばモスクワ ローマ あるいはパリにエネルギーが 集 中 していると したら 誰 もがそこを 目 指 し そこでしか 面 白 いことは 起 こらないということになる しかし すべてはより 複 雑 で 非 凡 だ 作 家 の 移 動 は 無 限 の 回 帰 を 重 ね 時 間 の 迷 宮 を 旅 するようなも のだ だからそこではピート モンドリアンにも カジミール マレーヴィチにも シュメー ルの 魔 術 的 記 号 にも バビロンのジッグラトにも 出 会 うことができるし ウラルや 西 シベリア の 古 い 絵 文 字 の 文 化 の 連 想 の 鎖 に 没 頭 することもできる 30 奴 奈 川 でナセトキンが 制 作 する 作 品 は その 場 所 のエネルギーを 源 泉 としたものでありながら 作 家 がこれまで 旅 したすべての 場 所 の 記 憶 が 融 け 合 う 時 空 の 迷 宮 のような 作 品 になるはずだ 異 国 の 作 家 の 新 しい 作 品 を 通 じて 私 達 は その 土 地 の 新 しい 色 彩 新 しい 可 能 性 を 見 いだすことに なるだろう 30 Владимир Наседкин. Уроки минимализма. С.200. ナセトキンの 描 く 大 地 (たとえば グーグル アース オーストリア )は 時 に 迷 宮 を 思 わせる このテクストでも 語 られるように それは 一 つの 大 地 に 多 層 的 な 時 空 を 重 ねる 作 家 の 世 界 観 の 表 れである - 54 -