勤 務 地 限 定 職 種 限 定 に 関 わる 判 例 資 料 2 1 エールフランス 事 件 ( 東 京 高 判 昭 49.8.28) 雇 用 契 約 において 配 置 場 所 が 明 定 されている 場 合 には 使 用 者 は 当 該 労 働 者 の 同 意 なくしてこれを 配 転 できないのを 本 則 とすべき 東 京 ベースの 合 意 に 反 して 為 した 本 件 配 転 命 令 つき 適 法 有 効 ならしめる 特 段 の 事 情 は 認 めることができないから 右 配 転 命 令 の 拒 否 を 実 質 的 理 由 とする 本 件 解 雇 予 告 の 意 思 表 示 は 予 告 解 雇 権 の 濫 用 として 許 されない 2 東 亜 ペイント 事 件 ( 最 二 小 判 昭 61.7.14) 転 勤 を 命 ずることができる 旨 の 定 めがあり 実 際 に 転 勤 が 頻 繁 に 行 われ 入 社 時 に 勤 務 地 を 限 定 する 旨 の 合 意 がなかったという 事 情 の 下 で は 使 用 者 は 個 別 的 同 意 なしに 労 働 者 の 勤 務 場 所 を 決 定 することができるが 使 用 者 の 転 勤 命 令 権 は 無 制 約 に 行 使 できるものではなく こ れを 濫 用 することは 許 されない 本 件 においては 業 務 上 の 必 要 性 があり 転 勤 に 伴 う 不 利 益 も 通 常 甘 受 すべき 程 度 のものであるとして 転 勤 命 令 は 権 利 濫 用 に 当 たらない 3 日 産 村 山 工 場 事 件 ( 最 一 小 判 平 元.12.7) 長 期 間 機 械 工 として 就 労 してきた 者 であっても この 事 実 から 労 働 契 約 上 職 種 を 機 械 工 に 限 定 する 旨 の 合 意 が 成 立 したとまではいえ ず 労 働 力 配 置 の 効 率 及 び 企 業 運 営 の 円 滑 化 等 の 見 地 からやむをえない 措 置 として 配 転 命 令 は 権 利 濫 用 に 当 たらない 4 シンガポール デベロップメント 銀 行 ( 本 訴 ) 事 件 ( 大 阪 地 判 平 12.6.23) 大 阪 支 店 の 閉 鎖 を 不 当 とする 理 由 はない 大 阪 支 店 の 従 業 員 にとって 解 雇 回 避 が 可 能 かどうかは 東 京 支 店 への 転 勤 が 可 能 かどうかに 尽 きるが 東 京 支 店 に 欠 員 がない 以 上 Xらを 東 京 支 店 へ 転 勤 させることには 合 理 性 はない Yが 解 雇 回 避 努 力 を 欠 いたということはできず 転 勤 ができないのであれば 大 阪 支 店 の 従 業 員 が 解 雇 の 対 象 となることはやむを 得 ない 本 件 解 雇 は 整 理 解 雇 の 要 件 を 満 たすものであ り 解 雇 権 濫 用 には 当 たらない 契 約 で 定 められた 職 種 勤 務 地 を 一 方 的 に 変 更 すること( 配 転 )はできない (1) 裁 判 所 は 職 種 勤 務 地 の 特 定 に 関 する 黙 示 の 合 意 を 容 易 に 認 めず 雇 用 維 持 のための 配 転 については 使 用 者 の 配 転 命 令 権 を 広 く 認 めたうえで 配 転 命 令 権 の 権 利 濫 用 判 断 において 労 使 の 実 質 的 な 利 益 衡 量 を 行 っている (3) 配 転 命 令 権 が 肯 定 される 場 合 にも 配 転 命 令 権 は 労 働 者 の 利 益 に 配 慮 して 行 使 されるべきであり 濫 用 されてはならない (1 2 3) 仕 事 ( 勤 務 場 所 )がなくなれば 直 ちに 解 雇 できるのではなく 解 雇 権 濫 用 法 理 ( 整 理 解 雇 であれば 整 理 解 雇 の4 要 件 )に 照 らして 解 雇 の 有 効 性 が 判 断 される (4) 1
1.エールフランス 事 件 ( 東 京 高 判 昭 49.8.28) 事 案 の 本 件 解 雇 の 効 力 Xらは フランスに 本 社 を 置 くYに 雇 用 値 は 東 京 配 属 先 はY 日 本 支 社 ( 東 京 ベース)との 期 間 の 定 めの ない 雇 用 契 約 により 雇 用 される 日 本 人 スチュワーデスであった Yは 外 国 人 スチュワーデスの 労 務 管 理 (パリベースのフランス 人 スチュワーデスとの 労 働 条 件 の 均 質 化 )や 国 際 路 線 運 行 の 円 滑 効 率 化 のため それまで 外 国 ベースとしていた 外 国 人 スチュワーデスのパリ 移 籍 の 方 針 を 採 ることとし Xらに 対 し 昭 和 48 年 10 月 31 日 付 け 書 面 により 同 年 12 月 31 日 を 持 って 雇 用 契 約 を 終 了 させる 旨 の 解 雇 予 告 の 意 思 表 示 及 び 昭 和 49 年 1 月 1 日 発 行 の 雇 用 地 をパリ 配 属 先 をY 本 社 (パ リベース)とする 新 雇 用 契 約 (パリ 移 籍 )の 申 し 入 れを 行 い その 回 答 期 限 を 昭 和 48 年 11 月 20 日 とした こ れに 対 しXらはパリ 移 籍 に 応 じないとして 期 限 までに 承 諾 の 回 答 をしなかったことから YはXらを 解 雇 した ところ Xらは 本 件 解 雇 を 無 効 として 従 業 員 としての 地 位 の 保 全 を 求 めて 仮 処 分 を 申 請 した 第 一 審 ( 東 京 地 判 昭 48.12.22 判 時 726-25)は 本 件 解 雇 は 権 利 濫 用 で 無 効 であるとしてXらの 請 求 を 容 認 したため Yが 控 訴 したのが 本 件 である 判 決 では 本 件 解 雇 は 権 利 濫 用 で 無 効 であるとし 控 訴 を 棄 却 した 本 件 解 雇 の 効 力 本 件 解 雇 は 無 効 とした ( 解 雇 予 告 までの 経 緯 ) パリベースのフランス 人 スチュワーデスが 加 入 するフランス 全 国 客 室 乗 務 員 労 働 組 合 (SNPNC)は 労 働 争 議 の 際 にSNPNCに 加 入 していない 外 国 人 スチュワーデスが 正 規 職 員 と 同 等 の 職 務 を 行 うことにより スト 破 りと 同 一 事 態 を 招 くことになることを 憂 慮 し 外 国 人 スチュワーデス 全 員 のパリ 移 籍 を 求 めていた Yと 日 本 人 労 組 は 昭 和 48 年 8 月 と9 月 にパリ 移 籍 に 関 する 団 交 を 行 ったが Y 側 決 定 の 説 明 的 傾 向 が 強 かった 日 本 人 労 組 は 同 年 9 月 の 大 会 でパリ 移 籍 の 拒 否 を 決 定 しYに 通 告 したが Yは10 月 25 日 にパリ 移 籍 強 行 の 方 針 を 示 し 同 月 31 日 付 けで 本 件 解 雇 予 告 の 意 思 表 示 を 為 すに 至 った ( 配 置 場 所 が 明 定 されている 場 合 の 配 転 命 令 ) 本 件 解 雇 予 告 の 意 思 表 示 は 恰 もパリへの 配 置 転 換 命 令 に 対 する 承 諾 を 解 除 条 件 とする 解 雇 予 告 のそ れに 等 しく 換 言 すれば 右 命 令 に 応 じないことによる 解 雇 予 告 と 同 一 に 論 ずるのを 相 当 とする 雇 用 契 約 において 配 置 場 所 が 明 定 されている 場 合 には 使 用 者 は 当 該 労 働 者 の 同 意 なくしてこれを 配 転 しえない( 労 働 者 は 右 配 転 命 令 に 応 ずる 法 的 な 義 務 を 有 しない)のを 本 則 とするものと 解 すべき したがっ て 特 段 の 事 情 がない 限 り 使 用 者 が 右 の 如 き 配 転 命 令 を 発 し これに 従 わない 労 働 者 をその 故 をもって 予 告 解 雇 に 付 するがごときは 通 常 解 雇 権 の 濫 用 として 無 効 たることを 免 れないものというべき 2
( 配 属 先 の 明 定 ) YとXらの 雇 用 契 約 においては 雇 用 地 を 東 京 配 属 先 を 日 本 支 社 と 明 定 されている Xらの 職 種 がスチュワーデスであって 幹 部 職 員 ではないことからみて 右 文 言 を 広 義 弾 力 的 に 解 釈 するこ とは 当 を 得 たものとはいえない 企 業 自 体 とスチュワーデスという 仕 事 の 特 殊 性 から 配 置 場 所 の 観 念 ないし 配 置 転 換 の 意 味 合 いにつ いて 通 常 の 国 内 企 業 の 労 働 者 の 場 合 とやや 異 なる 面 のあり 得 ることは 考 えられないわけではないが 本 件 の 場 合 XらがYに 対 し いかなる 意 味 合 いにせよ 将 来 他 国 ベースになることにつき 包 括 的 な 黙 示 の 同 意 を 等 を 与 えていたと 認 めるに 足 る 疎 明 は 何 ら 存 しない したがってYは 元 来 Xらに 対 し その 意 に 反 して 東 京 以 外 の 地 への 配 置 転 換 を 命 じ 得 ない ( 配 転 命 令 の 正 当 性 ) Yは 本 件 解 雇 はいわゆる 一 部 事 業 閉 鎖 に 基 づくものであると 主 張 するが Yのいう 外 国 ベースの 廃 止 は 当 該 外 国 支 社 自 体 ないし 当 該 国 際 路 線 の 廃 止 閉 鎖 を 伴 うものではなく Yの 事 業 の 重 要 部 には 何 ら の 変 更 をも 来 さないものであるから 事 業 の 一 部 閉 鎖 に 該 当 するとするYの 主 張 は 失 当 Yは パリ 移 籍 が 必 要 やむを 得 ないものであり Xらの 拒 否 は 合 理 性 に 乏 しく XらはYとの 交 渉 に 不 誠 実 であったと 主 張 するが 本 件 パリ 移 籍 は Xらの 権 益 を 一 方 的 に 排 除 するに 値 する 客 観 的 正 当 性 を 欠 く ものと 言 わざるを 得 ない 賃 金 が 増 額 し 休 暇 の 日 数 や 休 息 の 時 間 が 多 くなるなど パリ 移 籍 後 の 勤 務 及 び 労 働 条 件 は 一 見 むし ろ 外 国 人 スチュワーデスにとって 有 利 なようにも 見 えるが 本 件 パリ 移 籍 は 単 なる 勤 務 状 態 ないし 労 働 条 件 の 変 更 ではなく 人 の 生 活 の 本 拠 地 を 外 国 に 移 すという 人 間 にとって 公 私 物 心 ともに 根 本 的 な 事 柄 を 中 心 とするものである 以 上 東 京 ベースで 契 約 したXらが 右 移 籍 を 拒 否 したからといって これを もって 合 理 性 を 欠 くものとすることはできない Xらを 含 む 日 本 人 労 組 の 側 にYの 指 摘 のような 不 誠 実 な 点 は 見 いだし 難 く むしろY 側 に 日 本 人 労 組 との 話 し 合 いの 姿 勢 に 欠 けるものがあった YがXらに 対 し 東 京 ベースの 合 意 に 反 して 為 した 本 件 配 転 命 令 ( 契 約 上 は 旧 契 約 終 了 の 通 告 と 新 契 約 の 申 込 )につき これを 適 法 有 効 ならしめる 特 段 の 事 情 は 認 めることができないから 右 配 転 命 令 の 拒 否 を 実 質 的 理 由 とする 本 件 解 雇 予 告 の 意 思 表 示 は 予 告 解 雇 権 の 濫 用 として 許 されないものと 言 わな ければならない 3
2. 東 亜 ペイント 事 件 ( 最 二 小 判 昭 61.7.14) 事 案 の 本 件 転 勤 命 令 の 効 力 Yは 大 阪 に 本 店 をおき 全 国 十 数 カ 所 に 事 務 所 営 業 所 を 持 つ 会 社 である Yの 就 業 規 則 には 業 務 の 都 合 により 異 動 を 命 ずることがあり 社 員 は 正 当 な 理 由 なしに 拒 否 できない と 定 められており 実 際 にも 従 業 員 特 に 営 業 担 当 者 について 転 勤 が 頻 繁 に 行 われていた Xは 大 学 卒 業 資 格 の 営 業 担 当 者 とし て 勤 務 地 を 限 定 することなくYに 採 用 されたが 入 社 してから 約 8 年 間 大 阪 近 辺 で 勤 務 していた こうし た 中 YはXに 対 して 神 戸 営 業 所 から 広 島 営 業 所 への 転 勤 を 内 示 したが Xは 家 庭 の 事 情 を 理 由 に 転 居 を 伴 う 転 勤 を 拒 否 した その 後 Yは Xに 名 古 屋 営 業 所 への 転 勤 を 内 示 したが Xはこれにも 応 じなかった Yは Xに 対 して 名 古 屋 営 業 所 勤 務 を 命 じたが( 本 件 転 勤 命 令 ) Xはこれを 拒 否 した そこでYは この 転 勤 命 令 拒 否 が 就 業 規 則 所 定 の 懲 戒 事 由 に 該 当 するとしてXを 懲 戒 解 雇 した これに 対 してXは 本 件 転 勤 命 令 および 本 件 懲 戒 解 雇 の 無 効 を 主 張 して 提 訴 した 第 一 審 ( 大 阪 地 判 昭 57.10.25 労 判 399-43)および 第 二 審 ( 大 阪 高 判 昭 59.8.21 労 判 477-15)は 本 件 転 勤 命 令 は 権 利 濫 用 で 無 効 であるとし Xの 請 求 を 全 面 的 に 認 容 したため Yが 上 告 したのが 本 件 である 判 決 では 本 件 転 勤 命 令 は 権 利 濫 用 には 当 たらないとして 原 審 を 破 棄 差 し 戻 した 本 件 転 勤 命 令 は 権 利 濫 用 に 当 たるか 本 件 転 勤 命 令 は 権 利 濫 用 に 当 たらないとした 本 件 のように 労 働 協 約 及 び 就 業 規 則 に 転 勤 を 命 ずることができる 旨 の 定 めがあり 実 際 に 転 勤 が 頻 繁 に 行 われ さらに 入 社 時 に 勤 務 地 を 限 定 する 旨 の 合 意 がなかったという 事 情 の 下 では 使 用 者 は 個 別 的 同 意 なしに 労 働 者 の 勤 務 場 所 を 決 定 することができる しかし 特 に 転 居 をともなう 転 勤 は 労 働 者 の 生 活 に 影 響 を 与 えるものであるから 使 用 者 の 転 勤 命 令 権 は 無 制 約 に 行 使 できるものではなく これを 濫 用 することは 許 されない 具 体 的 には 当 該 転 勤 命 令 につき 業 務 上 の 必 要 性 が 存 しない 場 合 又 は 業 務 上 の 必 要 性 が 存 する 場 合 であっても 当 該 転 勤 命 令 が 他 の 不 当 な 動 機 目 的 をもってなされたものであ るとき 若 しくは 労 働 者 に 対 し 通 常 甘 受 すべき 程 度 を 著 しく 超 える 不 利 益 を 負 わせるものであるとき 等 特 段 の 事 情 の 存 する 場 合 には 当 該 転 勤 命 令 は 権 利 の 濫 用 になる ただし 業 務 上 の 必 要 性 は 当 該 転 勤 先 への 異 動 が 余 人 をもっては 容 易 に 替 え 難 いといった 高 度 の 必 要 性 に 限 定 することは 相 当 でなく 労 働 力 の 適 性 配 置 業 務 の 能 率 増 進 労 働 者 の 能 力 開 発 勤 務 意 欲 の 高 揚 業 務 運 営 の 円 滑 化 など 企 業 の 合 理 的 運 営 に 寄 与 する 点 が 認 められる 限 りは 肯 定 すべきである 名 古 屋 営 業 所 のA 主 任 の 後 任 者 として 適 当 な 者 を 名 古 屋 営 業 所 へ 転 勤 させる 必 要 があったのであるか ら 本 件 転 勤 命 令 には 業 務 上 の 必 要 性 が 優 に 存 したものということができる そして Xの 家 族 状 況 に 照 らすと 名 古 屋 営 業 所 への 転 勤 がXに 与 える 家 庭 生 活 上 の 不 利 益 は 転 勤 に 伴 い 通 常 甘 受 すべき 程 度 のものである したがって 本 件 転 勤 命 令 は 権 利 濫 用 に 当 たらない 4
3. 日 産 自 動 車 村 山 工 場 事 件 ( 最 一 小 判 平 元.12.7) 事 案 の 本 件 配 転 命 令 の 効 力 Xらはいずれも 自 動 車 の 製 造 販 売 を 目 的 とするYのA 工 場 において 機 械 工 として 就 労 してきた 者 であ り 就 労 期 間 は 最 も 長 い 者 で28 年 10ヵ 月 最 も 短 い 者 で17 年 10ヵ 月 であった Yは 世 界 自 動 車 業 界 の 車 軸 小 型 化 駆 動 装 置 のFF 化 に 対 応 するため 従 来 A 工 場 にあった 車 軸 製 造 部 門 をB 工 場 等 に 移 管 し A 工 場 では 新 たに 小 型 乗 用 車 を 製 造 することになった それに 伴 い 人 員 も 再 配 置 され 従 来 A 工 場 で 機 械 工 として 勤 務 していたXらは 単 純 反 覆 作 業 であるコンベアライン 作 業 へ 配 置 換 えされた( 本 件 配 転 命 令 ) そこでXらは Yに 対 し A 工 場 を 就 労 場 所 とする 機 械 工 の 地 位 にあることの 確 認 および 本 件 配 転 命 令 が 不 当 労 働 行 為 であるとして 不 法 行 為 に 基 づく 損 害 賠 償 を 求 めて 提 訴 した 一 審 ( 横 浜 地 判 昭 61.3.20 労 判 473-42)ではXらの 主 張 が 認 められたが 二 審 ( 東 京 高 判 昭 62.12.24 労 判 512-66)ではXらが 敗 訴 したため Xらが 上 告 したのが 本 件 である 判 決 では 本 件 配 転 命 令 は 権 利 濫 用 には 当 たらず 有 効 であるとして Xらの 上 告 が 棄 却 された 本 件 配 転 命 令 は 権 利 濫 用 に 当 たるか 本 件 配 転 命 令 は 権 利 濫 用 に 当 たらないとした ( 労 働 者 側 敗 訴 ) 十 数 年 から 二 十 数 年 にわたって 機 械 工 として 就 労 してきた 者 であっても この 事 実 から 直 ちに 労 働 契 約 上 職 種 を 機 械 工 に 限 定 する 旨 の 合 意 が 成 立 したとまではいえない 配 転 命 令 が 各 人 の 経 験 経 歴 技 能 や 個 人 的 希 望 等 を 個 別 的 に 考 慮 することなく 行 われたものであっても 本 件 では 車 軸 製 造 部 門 の 縮 小 による 異 動 対 象 者 が500 名 近 くの 多 数 に 上 り 通 勤 可 能 圏 内 の 他 の 職 場 でこれを 受 け 入 れる 余 地 がな く 一 部 の 者 のみについて 他 の 職 場 の 従 業 員 との 入 替 えを 行 うことも 手 数 が 掛 かるだけでなく 公 平 確 保 上 の 理 由 からも 困 難 であること 今 までの 工 場 における 新 型 車 の 生 産 要 員 として 異 動 対 象 人 員 を 超 える 数 の 従 業 員 を 必 要 とすることになったこと 等 の 事 情 を 考 慮 すると 異 動 対 象 者 全 員 につき 一 斉 に 他 部 門 へ 配 置 換 えすることとしたのは 企 業 経 営 上 の 判 断 としてあながち 不 合 理 なものとはいい 難 い 本 件 では 配 転 対 象 者 の 中 に 長 年 他 の 職 種 に 従 事 してきた 者 がいることを 考 慮 しても 労 働 力 配 置 の 効 率 及 び 企 業 運 営 の 円 滑 化 等 の 見 地 からやむを 得 ない 措 置 として 是 認 し 得 るのであり 本 件 配 転 命 令 は 権 利 濫 用 に は 当 たらない 5
4.シンガポール デベロップメント 銀 行 ( 本 訴 ) 事 件 ( 大 阪 地 判 平 12 6 23) 事 案 の 被 告 Yは シンガポール 共 和 国 に 本 店 を 置 く 銀 行 であり 日 本 には 東 京 支 店 及 び 大 阪 支 店 を 置 いてい た 原 告 Xらは 大 阪 支 店 で 外 国 為 替 等 の 業 務 を 担 当 していた Yは 平 成 11 年 3 月 4 日 Xら 大 阪 支 店 従 業 員 に 対 し 本 店 からの 指 令 で 同 年 6~7 月 頃 に 大 阪 支 店 を 閉 鎖 する 旨 を 発 表 し 労 働 組 合 Gとの 団 体 交 渉 において 後 日 希 望 退 職 を 含 む 提 案 をすること 及 び 東 京 支 店 への 転 勤 はないことを 告 げた そして 同 年 4 月 5 日 大 阪 支 店 従 業 員 全 員 に 対 して 希 望 退 職 に 応 じる よう 要 請 し その 条 件 として 追 加 退 職 金 の 支 給 等 を 内 容 とした 提 案 を 行 った その 後 Xら 及 びGとYとは 数 度 の 団 体 交 渉 を 行 ったものの Xらは 東 京 支 店 への 配 転 等 を 要 求 し 希 望 退 職 に 応 じなかったため YはXらを 同 年 6 月 15 日 付 けで 解 雇 した このため Xらが 本 件 解 雇 を 解 雇 権 の 濫 用 で 無 効 であるとして 従 業 員 たる 地 位 の 確 認 等 を 求 めたのが 本 事 案 である 判 決 では 本 件 解 雇 は 整 理 解 雇 の4 要 件 を 満 たし 有 効 であるとして Xらの 請 求 が 棄 却 された 本 件 解 雇 の 効 力 及 び 損 害 判 断 枠 組 み 本 件 解 雇 の 効 力 及 び 損 害 本 件 解 雇 は 有 効 とした 整 理 解 雇 が 有 効 であるためには 1 人 員 整 理 が 必 要 であること 2 解 雇 回 避 の 努 力 がされたこと 3 被 解 雇 者 の 選 定 が 合 理 的 であること 4 解 雇 の 手 続 が 妥 当 であること の4 要 件 が 要 求 されており 右 4 要 件 該 当 の 有 無 程 度 を 総 合 的 に 判 断 して 整 理 解 雇 の 効 力 を 判 断 する 1 人 員 整 理 の 必 要 性 大 阪 支 店 の 閉 鎖 は その 収 支 状 況 の 現 状 を 踏 まえ 業 績 改 善 の 見 通 しがないことから 行 われたもので これを 不 当 なものとする 理 由 はない 大 阪 支 店 の 閉 鎖 により その 従 業 員 の 人 数 分 が 余 剰 人 員 となった ことから 人 員 整 理 の 必 要 性 を 認 めることができる 2 解 雇 回 避 の 努 力 3 被 解 雇 者 の 選 定 の 合 理 性 Yにおいては その 従 業 員 を 各 支 店 において 独 自 に 雇 用 し 雇 用 した 従 業 員 については 就 業 場 所 が 雇 用 した 支 店 に 限 定 されていると 認 められるものの 雇 用 契 約 はYと 交 わされたものであり 就 業 場 所 の 限 定 は 労 働 者 にとって 同 意 なく 転 勤 させられないという 利 益 を 与 えるものではあるが 使 用 者 に 転 勤 させ ない 利 益 を 与 えるものではないから 人 員 整 理 の 対 象 者 が 閉 鎖 される 支 店 の 従 業 員 に 自 動 的 に 決 まるも のではない 6
本 件 においては 大 阪 支 店 の 従 業 員 にとって 解 雇 回 避 が 可 能 かどうかは 東 京 支 店 への 転 勤 が 可 能 かどうかに 尽 きる (i)21 人 のみの 東 京 支 店 において 希 望 退 職 を 募 ることは Xらの 就 労 可 能 な 適 当 な 部 署 が 生 じるとはい えず 代 替 不 可 能 又 は 有 能 な 従 業 員 が 退 職 する 等 業 務 の 混 乱 や 無 用 な 不 安 を 生 じさせる 可 能 性 もあ り 自 然 減 による 減 少 に 比 べ 費 用 負 担 が 増 加 する 等 を 考 慮 すれば Yが 東 京 支 店 において 希 望 退 職 の 募 集 をしなかったことは 不 当 とはいえない (ii) 東 京 支 店 に 欠 員 がない 以 上 Xらを 東 京 支 店 へ 転 勤 させるには 東 京 支 店 の 従 業 員 を 解 雇 するより ほかない しかしXらを 東 京 支 店 で 勤 務 させるには 転 勤 に 伴 う 費 用 負 担 が 生 じるばかりでなく 業 務 内 容 によっては 習 熟 していないXらを 担 当 させることになるため 合 理 性 がない 以 上 を 総 合 考 慮 すれば Yが 解 雇 回 避 努 力 を 欠 いたということはできないし 転 勤 ができないのであ れば 大 阪 支 店 の 従 業 員 が 解 雇 の 対 象 となることはやむを 得 ない 4 解 雇 の 手 続 の 妥 当 性 交 渉 の 経 緯 をみても Yの 対 応 に 妥 当 でない 点 があったとまでは 認 められない 以 上 を 総 合 すれば 本 件 解 雇 は 整 理 解 雇 の 要 件 を 充 たすものということができ 解 雇 権 を 濫 用 した とまで 認 めることができない < 参 考 > 仮 処 分 大 阪 地 決 平 成 11.9.2 整 理 解 雇 の4 要 件 を 前 提 とし Yは 大 阪 支 店 の 従 業 員 に 対 してのみ 希 望 退 職 者 募 集 を 行 っており 東 京 支 店 で 希 望 退 職 を 募 り Xらの 東 京 支 店 への 転 勤 の 可 能 性 を 探 ること 等 をしておらず 真 摯 かつ 合 理 的 に 解 雇 回 避 努 力 義 務 を 尽 くしたとは 評 価 できないとして その 余 の 点 について 判 断 するまでも なく 本 件 解 雇 は 解 雇 権 の 濫 用 で 無 効 とした 7