大 学 生 の 目 標 とする 英 語 力 英 語 学 力, 及 び, 学 習 項 目 に 対 する 意 識 との 関 係 から A Study on University Students Targeted Level of English Learning :Based on their English Proficiency and Image of English Learning 白 川 恵 里 古 1,サバウ ソリン 2 3, 渡 辺 真 美 Eriko Shirakawa 4, Sorin Sabau 5, Mami Watanabe 6 要 旨 東 海 大 学 札 幌 キャンパスにおける 新 入 生 を 対 象 に, 目 標 とする 英 語 力 に 関 して, 及 び, 学 習 項 目 に 対 する 意 識 に 関 してのアンケートを 実 施 した 本 稿 では,アンケート 結 果 をもとに, 大 学 生 の 目 標 と する 英 語 力 と, 英 語 の 基 礎 学 力, 及 び, 学 習 項 目 に 対 する 意 識 との 間 の 関 係 について 論 じる 大 学 生 の 目 標 とする 英 語 力 と 学 習 項 目 に 対 する 意 識 との 間 には, 弱 い 相 関 関 係 を 示 す 箇 所 がほとんどであっ たが, 相 関 関 係 のみられなかった 箇 所 により, 学 生 が 英 語 学 習 において 文 法 を 軽 視 している 傾 向 が 明 らかにされた Abstract We have performed a comparative study of the English proficiency and the targeted level of English learning in newcomer students at Tokai University, Sapporo campus. Besides opinions regarding the importance of vocabulary, grammar and pronunciation, the students were asked about the level of English ability they expect to achieve. Even though statistical analysis has shown a certain correlation level between these data, the presence of low correlations between some data fields shows the freshman students tendency to underestimate the importance of grammar. キーワード: 英 語 学 力, 目 標 とする 英 語 力, 英 語 力 に 対 する 意 識, 比 較 研 究 Keywords: English Proficiency, Targeted Level of English Learning, Image of English Ability, Comparative Study 1.はじめに 大 学 生 の 英 語 学 力 低 迷 が 懸 念 されるなか,この 低 迷 の 要 因 の 1 つでもある 大 学 生 の 英 語 学 習 に 対 す る 意 識 についてはあまり 明 らかにされていない 英 語 学 習 に 対 する 意 識 のなかでも, 更 に 絞 り 込 んだ, 単 語 語 彙 や 文 法 や 発 音 といった 学 習 項 目 に 対 する 意 識 を 調 査 したものはほとんどみら 1 東 海 大 学 国 際 文 化 学 部 国 際 コミュニケーション 学 科,005-8601 札 幌 市 南 区 南 沢 5 条 1 丁 目 1-1 2 東 海 大 学 生 物 理 工 学 部 生 体 機 能 科 学 科,005-8601 札 幌 市 南 区 南 沢 5 条 1 丁 目 1-1 3 東 海 大 学 国 際 文 化 学 部 国 際 コミュニケーション 学 科,005-8601 札 幌 市 南 区 南 沢 5 条 1 丁 目 1-1 4 Department of International Communications, School of International Cultural Relation, 5-1-1-1 Minamisawa, Minami-ku, Sapporo 005-8601, Japan 5 Department of Human Science and Informatics, School of Biological Science and Engineering, Tokai University, 5-1-1-1 Minamisawa, Minami-ku, Sapporo 005-8601, Japan 6 Department of International Communications, School of International Cultural Relation, 5-1-1-1 Minamisawa, Minami-ku, Sapporo 005-8601, Japan - 1 -
れないが, 渡 辺, 他 (2009)では 大 学 生 の 英 語 学 力 と 学 習 項 目 に 対 する 意 識 についての 調 査 を 行 って いる これは, 大 学 生 の 基 礎 学 力 試 験 の 結 果 と, 学 生 が 考 える 英 語 力 において 単 語 熟 語, 文 法, 発 音 の 重 要 性 を 問 うアンケートの 結 果 を, 基 本 統 計 量 と 相 関 関 係 を 使 って 統 計 学 的 に 調 べたものであ る 分 析 の 結 果, 基 礎 学 力 試 験 の 得 点 と 学 習 項 目 に 対 する 意 識 との 間 に 有 意 な 相 関 関 係 は 見 られなか った つまり, 英 語 学 力 と 学 習 項 目 に 対 する 意 識 との 間 には 統 計 学 的 な 関 係 性 がないことが 明 らかに された 具 体 的 に 言 えば, 英 語 学 力 に 関 わらず, 単 語 熟 語, 文 法, 発 音 のそれぞれの 学 習 項 目 のう ち,どれか 1 つが 特 に 重 要,または, 特 に 重 要 ではないというような 極 端 な 考 えを 学 生 は 持 っていな いという 結 果 が 得 られた しかし, 英 語 力 を 伸 ばすためには 文 法 がとても 重 要 であるにも 関 わらず, 文 法 は どちらかというと 不 要 と 考 える 学 生 が 多 いことがわかった 実 際 には, 学 生 は, 文 法 が 重 要 なことをわかっているが, 文 法 は 難 しく, 苦 手 なので 避 けたいと 考 えているのではないだろうか 確 かに 単 語 熟 語, 発 音 に 比 べ, 文 法 は 覚 えるだけではなく 理 解 しなければならないので, 英 語 が 苦 手 な 学 生 は 特 に 否 定 的 で どちらかというと 不 要 という 回 答 が 多 いと 考 える 渡 辺, 他 (2009)で 用 いたアンケートの 質 問 事 項 にはこの 他 に, 英 語 で 読 む 聞 く 話 す 書 くこ との4 技 能 でそれぞれどのくらいのレベルを 目 標 とするかを 問 うものがあり,この 結 果 を 分 析 すれば, 目 標 の 設 定 レベルにより, 学 習 項 目 に 対 する 意 識 に 差 異 があるかどうかが 明 らかにされるかもしれな い 今 回 はこの 4 技 能 の 目 標 設 定 を 問 うたアンケート 結 果 と 基 礎 学 力, 学 習 項 目 に 対 する 意 識 との 関 係 について 分 析 を 行 った 2. 研 究 課 題 本 研 究 では, 渡 辺, 他 (2009)で 収 集 されたデータをもとに, 大 学 生 が 目 標 とする 英 語 力 は, 英 語 の 基 礎 学 力, 及 び, 単 語 熟 語, 文 法, 発 音 という 3 つの 学 習 項 目 に 対 する 意 識 との 間 に 関 係 があるか について 分 析 をした 研 究 課 題 は 以 下 の 2 つを 設 定 した 1) 目 標 とする 英 語 力 と 英 語 の 基 礎 学 力 との 間 には 関 係 があるか 2) 目 標 とする 英 語 力 と 学 習 項 目 に 対 する 意 識 との 間 には 関 係 があるか 3. 方 法 3.1 対 象 者 東 海 大 学 国 際 文 化 学 部 及 び 生 物 理 工 学 部 の 全 学 科 ( 札 幌 キャンパス)の 2009 年 度 新 入 生 を 対 象 にし た 全 新 入 生 数 336 名 のうち 女 性 は 102 名, 男 性 は 234 名 である その 中 で, 質 問 紙 票 の 回 答 におい て 外 れ 値 を 示 した 者 1 名, 質 問 紙 回 答 に 未 記 入 項 目 があった 者 1 名, 基 礎 学 力 試 験 またはアンケート 実 施 日 に 欠 席 した 者 13 名, 合 わせて 15 名 を 対 象 外 とした 3.2 データ 収 集 データ 収 集 は 英 語 の 勉 強 に 関 してのアンケート という 題 名 のアンケート 用 紙 を 使 用 し, 第 3 著 者 により 行 われた アンケート 実 施 時 期 は, 入 学 式 3 日 前 の 新 入 生 全 体 ガイダンス 時 であり, 対 象 者 全 員 が 参 加 を 義 務 付 けられているものであった 実 施 に 際 しては, 必 修 英 語 の 授 業 をより 良 く 改 善 す るためであるとの 調 査 の 趣 旨 が 説 明 され,また, 自 分 の 意 見 を 正 直 に 回 答 してもらうために, 回 答 結 果 が 大 学 の 成 績 に 一 切 影 響 しないということが 強 調 された 7 記 入 時 間 は 充 分 に 与 えられ, 対 象 者 全 員 7 Appendix A を 参 照 - 2 -
が 記 入 を 終 えたことを 確 認 してから 回 収 された なお,このアンケートは 長 時 間 のガイダンスの 最 後 に 実 施 されるため, 質 問 項 目 設 定 は 回 答 しやすさを 優 先 させた 具 体 的 には, 短 文 を 多 用 し, 具 体 的 なイメージがしやすい 表 現 の 使 用 を 試 みた アンケートの 大 問 は 3 問 設 定 したが, 本 研 究 では,1 問 目 と 2 問 目 の 結 果 を 使 用 した 8 まず,1 問 目 にあたる 質 問 は あなたは 英 語 でどのようなことまでできるようになりたいですか 当 てはまる 欄 に ひとつだけ をつけてください というものである 9 回 答 は(1) 読 む,(2) 聞 く,(3) 話 す,(4) 書 く,の 4 つの 技 能 について,レベル 別 に 7 段 階 で 求 めた 10 さらに,その 7 段 階 のレベルを 初 級, 中 級, 上 級 の 3 つのグループに 分 けて 分 析 を 行 った 例 えば, 読 む ことのスキルについては,アルファベ ットやメニュー, 掲 示 等 の 文 を 理 解 することを 目 標 と 設 定 した 者 を 初 級 グループに, 簡 単 な 物 語 や 説 明 文, 地 図, 時 刻 表 を 理 解 することを 目 標 と 設 定 した 者 を 中 級 グループに,まとまりのある 説 明 文 を 理 解 したり, 料 理 のレシピや TIME,Newsweek の 文 章 を 理 解 することを 目 標 と 設 定 した 者 を 上 級 グル ープに 設 定 した つまり,7 段 階 のレベルのうち, 最 も 易 しい 目 標 であるレベル 1 とレベル 2 を 初 級, レベル 3 と 4 を 中 級,レベル 5 からレベル 7 を 上 級 とした 2 問 目 の 質 問 は, あなたが 考 える 英 語 力 にとって, 次 の 項 目 はどれくらい 重 要 ですか 当 ては まる 欄 に をつけてください である 回 答 は(a) 単 語 熟 語,(b) 文 法,(c) 発 音 の 3 項 目 につい て,1. 重 要,2.どちらかというと 重 要,3.どちらかというと 不 要,4. 不 要 の 4 件 法 で 求 めた 3.3 英 語 の 基 礎 学 力 を 測 定 する 上 で 使 用 されたテスト 英 語 の 基 礎 学 力 を 測 るデータとしては 東 海 大 学 全 キャンパスで 実 施 されている 基 礎 学 力 試 験 を 使 用 した なお,この 基 礎 学 力 試 験 は 札 幌 キャンパスにおいては 2006 年 度 から 導 入 されている 11 3.4 分 析 方 法 基 本 統 計 量 と 相 関 関 係 の 分 析 を 行 った 因 子 分 析,T 検 定 分 析 も 試 みたが, 有 意 差 のある 結 果 は 得 られなかった 4. 分 析 結 果 4.1 目 標 とする 英 語 力 別 3 グループの 基 礎 学 力 試 験 の 得 点 下 記 の 表 は 基 礎 学 力 試 験 の 得 点 に 関 する 基 本 統 計 量 ( 平 均 値 最 高 値 最 低 値 最 頻 値 )を 目 標 とする 英 語 力 別 に 3 グループごとに 示 したものである 表 1-1 は 目 標 ( 読 む, 聞 く, 話 す, 書 く)を 上 級 に 設 定 しているグループ, 表 1-2 は 目 標 を 中 級 に 設 定 しているグループ, 表 1-3 は 目 標 を 初 級 に 設 定 している グループの 結 果 である 図 1 は,これら 3 グループの 基 礎 学 力 試 験 の 平 均 値 をグラフ 化 したものであ る 8 3 問 目 は 文 法 ときいて 何 を 思 い 浮 かべますか 又 はどんな 感 じがしますか なんでも 自 由 に 書 いてくださ い という 自 由 回 答 を 求 める 設 問 であったため, 本 研 究 の 対 象 外 とした なお, 大 半 の 学 生 がこの 設 問 には 無 回 答 であった 9 Appendix B を 参 照 10 このレベル 設 定 は 英 検 Can-do リストを 基 に, 少 し 修 正 を 加 えたものである 英 検 Can-do リストとは, 英 語 検 定 試 験 で 延 べ 20,000 人 を 超 える 1 級 から 5 級 の 合 格 者 ( 合 格 直 後 )に 対 し, 数 回 に 渡 る 大 規 模 アンケート 調 査 を 実 施 した 結 果 で, 個 々に 示 された 各 項 目 は, 調 査 に 回 答 した 合 格 者 が 自 己 評 価 して 自 分 はこの 項 目 ができる 自 信 がある と 考 えたものを, 統 計 的 な 手 法 を 使 って 分 析 したものである( 吉 田 研 作,2007) 11 2001 年 度 に 英 語 の 授 業 を 習 熟 度 別 に 運 営 するにあたり 作 成 された - 3 -
表 1-1 目 標 とする 英 語 力 上 級 設 定 グループの 平 均 値 最 高 値 最 低 値 最 頻 値 読 む 聞 く 話 す 書 く 平 均 値 42.88 44.37 42.88 43.1 最 高 値 87 87 87 87 最 低 値 15 15 15 15 最 頻 値 30 30 30 38 有 効 件 数 161 124 161 130 表 1-2 目 標 とする 英 語 力 中 級 設 定 グループの 平 均 値 最 高 値 最 低 値 最 頻 値 読 む 聞 く 話 す 聞 く 平 均 値 34.75 35.35 34.35 36.17 最 高 値 64 64 64 70 最 低 値 19 19 19 21 最 頻 値 34 34 34 30 有 効 件 数 100 134 104 128 表 1-3 目 標 とする 英 語 力 初 級 設 定 グループの 平 均 値 最 高 値 最 低 値 最 頻 値 読 む 聞 く 話 す 聞 く 平 均 値 29.33 30.15 29.66 30.23 最 高 値 60 60 53 60 最 低 値 18 18 18 18 最 頻 値 26 31 32 32 有 効 件 数 60 63 56 63 基 礎 学 力 試 験 の 平 均 点 には, 目 標 とする 英 語 力 3グループ 間 においてはっきりとした 差 がみられる 目 標 を 上 級 に 設 定 しているグループは, 読 む, 聞 く, 話 す, 書 く, 全 てのスキルで 40 点 代 前 半, 中 級 に 設 定 しているグループは 全 てのスキルで 35 点 前 後, 初 級 に 設 定 しているグループは 全 てのスキルで 30 点 前 後 という 結 果 である つまり, 目 標 を 上 に 設 定 しているグループは 基 礎 学 力 試 験 において 比 較 的 高 得 点 をとっており, 目 標 を 下 に 設 定 しているグループは 得 点 も 低 い しかし, 目 標 とする 英 語 力 上 級 設 定 グループの 基 本 統 計 量 の 最 低 値 をみてみると,3 グループの 中 で 最 低 の 15 を 示 している 最 頻 値 についても, 目 標 とする 英 語 力 中 級 設 定 グループの 34 より 低 い 30 を 示 している このことから, このグループでは 学 生 の 英 語 の 基 礎 学 力 の 差 が 大 きいことが 窺 える - 4 -
図 1 目 標 とする 英 語 力 3 グループの 平 均 点 4.2 目 標 とする 英 語 力 と 学 習 項 目 に 対 する 意 識 12 との 相 関 関 係 表 2 は 自 分 の 目 標 ( 読 む 聞 く 話 す 書 く) とする 英 語 力 を 1~7 段 階 に 分 けたものと, 学 習 項 目 ( 単 語 熟 語 文 法 発 音 )に 対 する 意 識 を,1. 重 要,2.どちらかというと 重 要,3.どちらかというと 不 要,4. 不 要 の 4 つに 分 けたものの 相 関 関 係 を 示 している 表 2 目 標 とする 英 語 力 ( 読 む 聞 く 話 す 書 く) 対 学 習 項 目 に 対 する 意 識 ( 単 語 熟 語 文 法 発 音 )との 相 関 関 係 読 む 聞 く 話 す 書 く 単 語 熟 語 0.324* 0.273* 0.246* 0.237* 文 法 0.228* 0.167 0.207* 0.192 発 音 0.251* 0.239* 0.247* 0.233* 注 ほとんど 相 関 関 係 がない( 相 関 係 数 0.0~0.2) * 弱 い 相 関 関 係 ( 相 関 係 数 0.2~0.4) 中 程 度 の 相 関 関 係 ( 相 関 係 数 0.4~0.7) 自 分 の 目 標 とする 英 語 力 のそれぞれのスキル,つまり, 読 む, 聞 く, 話 す, 書 くことのスキルと, 学 習 項 目 に 対 する 意 識 との 相 関 関 係 をみると, 全 体 的 に 弱 くはあるが 相 関 関 係 があらわれている 相 関 関 係 がほとんどみられなかったのは,2 つだけであった 文 法 と 聞 く ことのスキル, 及 び, 文 法 と 書 く ことのスキルである このことから, 学 生 は 聞 く ことと 書 く ことのスキル 向 上 に おいて, 文 法 は 重 要 とは 意 識 していないということが 窺 える 12 学 習 項 目 に 対 する 意 識 の 調 査 結 果 について, 学 科 ごとの 特 徴 や 成 績 別 グループでの 特 長 については 渡 辺, 他 (2009)を 参 照 のこと それぞれの 学 習 項 目 に 対 する 意 識 に 関 して, 重 要 どちらかというと 重 要 不 要 ど ちらかというと 不 要 と 答 えた 回 答 者 の 全 対 象 者 に 占 める 割 合 は 下 記 のとおりである 単 語 熟 語 : 重 要 / 71%, どちらかというと 重 要 / 25%, 不 要 / 3%, どちらかというと 不 要 / 1% 文 法 : 重 要 / 37%, どちらかというと 重 要 / 48%, 不 要 / 14%, どちらかというと 不 要 / 1% 発 音 : 重 要 / 44%, どちらかというと 重 要 / 45%, 不 要 / 9%, どちらかというと 不 要 / 2% - 5 -
5. 考 察 とまとめ 第 一 の 研 究 課 題 は, 目 標 とする 英 語 力 と 英 語 の 基 礎 学 力 との 間 には 関 係 があるかであった まず, 目 標 とする 英 語 力 3 グループの 平 均 点 グラフからは, 目 標 を 上 級 に 設 定 しているグループ, 目 標 を 中 級 に 設 定 しているグループ, 目 標 を 初 級 に 設 定 しているグループを 比 べると,グループ 間 にはっきり とした 平 均 点 の 差 がみられた 目 標 を 上 級 に 設 定 しているグループは, 読 む, 聞 く, 話 す, 書 くこと 全 てのスキルで 最 も 平 均 点 が 高 く, 反 対 に, 目 標 を 初 級 に 設 定 しているグループは 全 てのスキルで 最 も 平 均 点 が 低 く 出 た つまり, 大 学 入 学 時 において 英 語 の 基 礎 学 力 の 高 い 学 生 は 目 標 も 高 く, 英 語 の 基 礎 学 力 の 低 い 学 生 は 目 標 も 低 く 設 定 するという 傾 向 がある このことから, 学 生 が 自 分 の 目 標 を 自 分 の 英 語 学 力 とかけ 離 れた 設 定 をしない 傾 向 があるということが 窺 える 次 に, 目 標 とする 英 語 力 3 グループの 基 礎 学 力 試 験 の 得 点 に 関 する 基 本 統 計 量 ( 平 均 値 最 高 値 最 低 値 最 頻 値 )からは, 目 標 ( 読 む, 聞 く, 話 す, 書 くことのスキル)を 上 級 に 設 定 しているグループは, 最 高 値 が, 初 中 級 グループに 比 べ 高 いことがわかる しかし, 最 低 値 も 初 中 級 グループと 比 べ 低 いと いう 結 果 が 出 た つまり, 基 礎 学 力 試 験 で 最 高 得 点 を 取 った 者 と, 最 低 得 点 を 取 ったものが,このグ ループの 中 に 含 まれているということだ 上 級 グループの 最 頻 値 をみると, 目 標 とする 英 語 力 中 級 設 定 グループの 34 より 低 い 30 を 示 している このことから, 目 標 とする 英 語 力 を 上 級 に 設 定 したグル ープには, 自 分 の 英 語 学 力 にとらわれず 学 力 とかけ 離 れた 高 い 目 標 設 定 をする 者 が, 他 のグループに 比 べて 存 在 することがわかる 第 二 の 研 究 課 題 は, 目 標 とする 英 語 力 と 学 習 項 目 に 対 する 意 識 との 間 には 関 係 があるかであった まず, 自 分 の 目 標 ( 読 む, 聞 く, 話 す, 書 くことのスキル)と 学 習 項 目 ( 単 語 熟 語, 文 法, 発 音 )に 対 す る 意 識 との 間 には, 下 記 の 2 つを 除 いて 弱 い 相 関 関 係 が 見 られた 読 む, 聞 く, 話 す, 書 くことの 4 つのスキルを 目 標 とすることについて, 特 に 単 語 熟 語 が 重 要 である, 文 法 が 重 要 である, 発 音 が 重 要 であるというような,1 つの 学 習 項 目 を 重 視 するというような 偏 った 考 えは 持 っていないということ がわかる しかし, 文 法 に 対 する 意 識 と 聞 く ことのスキル, 文 法 に 対 する 意 識 と 書 く ことのスキルに 関 しては, 相 関 関 係 が 見 られなかった 前 者 の 結 果 からは, 文 法 は 聞 く ことのスキルを 向 上 させ る 上 では 重 要 でないと 考 える 学 生 が 多 いということが 推 察 される オーラルコミュニケーションを 中 心 とした 教 育 では, 日 本 人 は 積 極 性 に 欠 けるということで,まず 単 語 でも 良 いからコミュニケーショ ンを 取 ることが 優 先 され, 文 法 は 軽 視 される 教 育 が 行 われている しかし,これでは 初 歩 的 なリスニ ングのスキルは 獲 得 できても,まとまりのある 文 を 正 確 に 聞 き 取 ることは 難 しいであろう 後 者 の 結 果 からは, 書 く ことのスキルを 向 上 させる 上 で 文 法 が 重 要 であるとは 学 生 は 意 識 してい ないということが 示 された 初 歩 的 なレベルでも 文 の 法 則 に 則 らなければ 英 文 を 書 くことはできない 話 す 場 面 では, 話 し 相 手 の 反 応 や 発 話 確 認 により, 単 語 を 羅 列 しただけの 発 話 でも 完 全 な 誤 解 と はならない 場 合 も 少 なからず 想 定 される しかし, 書 く 場 面 では, 例 えば 第 3 文 型 でいえる 単 純 な 内 容 であっても, 文 の 法 則,つまり 文 法 がわかっていなければ, 誤 解 や 意 思 疎 通 不 可 能 な 結 果 を 生 み 出 す ましてや, 中 上 級 レベルの 英 語 力 を 目 指 すのであれば, 文 を 構 成 する 力 と 直 接 関 係 のある 文 法 の 力 は 欠 かせないものとなる 言 い 換 えれば, 文 法 の 重 要 性 を 認 識 しなければ, 中 上 級 レベルの 英 語 力 は 獲 得 できないともいえる コミュニケーション 能 力 を 主 眼 とした 英 語 教 育 において, 文 法 の 知 識 は 必 要 最 低 限 の 基 礎 であるということは 多 くの 英 語 教 育 者 によって 指 摘 されている( 斎 藤 斎 藤,2004; 澤 井,2001; 鳥 飼,2002; 茂 木,2004)が, 文 法 は コミュニケーションと 対 立 するかのように 扱 われ, - 6 -
文 法 ばかりやるから 英 語 が 話 せない,などという 意 見 が 常 識 化 している ( 鳥 飼 2002:83) 現 状 に 頭 を 悩 ませる 良 識 のある 現 場 教 員 も 数 多 くいる 現 代 のオーラルコミュニケーション 重 視 の 英 語 教 育 が, 文 法 の 重 要 性 を 学 習 者 に 認 識 させず,その 結 果, 英 語 の 基 礎 力 さえ 身 に 付 けることのできない 学 習 者 を 多 く 生 み 出 し 続 けるのであれば,このオーラルコミュニケーションの 弊 害 は 直 ちに 是 正 されるべき であろう 参 考 文 献 斎 藤 孝, 斎 藤 兆 史 (2004), 日 本 語 力 と 英 語 力 東 京 : 中 央 公 論 新 社 ( 中 公 新 書 ラクレ) 澤 井 繁 男 (2001), 誰 がこの 国 の 英 語 をダメにしたか 東 京 : 日 本 放 送 出 版 協 会 高 橋 健 吉, 木 村 喜 吉 (1975), 日 本 語 の 英 語 教 育 史 東 京 : 大 修 館 書 店 鳥 飼 玖 美 子 (2002), TOEFL TOEIC と 日 本 人 の 英 語 力 東 京 : 講 談 社 現 代 新 書 茂 木 弘 道 (2004), 文 科 省 が 英 語 を 壊 す 東 京 : 中 央 公 論 新 社 ( 中 公 新 書 ラクレ) 吉 田 研 作 (2007), 日 本 の 英 語 教 育 改 革 と Can-do の 意 味,( 財 ) 日 本 英 語 検 定 協 会 ウェブサイト: <http://www.eiken.or.jp/about/cando/cando_01.html>, 採 録 2011 年 1 月 17 日 渡 辺 真 美,サバウ ソリン, 白 川 恵 里 古 (2009), 大 学 生 の 英 語 力 像 とその 基 礎 学 力, 東 海 大 学 国 際 文 化 学 部 紀 要 2,107-118 ( 受 付 :2011 年 12 月 22 日, 受 理 :2012 年 2 月 14 日 ) - 7 -
Appendix A: Survey Cover 英 語 の 勉 強 に 関 してのアンケート このアンケートの 目 的 は 皆 さんの 英 語 に 対 する 考 えをお 聞 きして それを 参 考 に 将 来 より 良 い 英 語 教 育 プログラムを 作 ることです 集 計 統 計 結 果 は 公 表 しますが 皆 さんの 個 人 が 特 定 されるような 情 報 公 開 は 一 切 致 しません また 皆 さんの 回 答 により 大 学 の 英 語 の 授 業 が 難 しくなったり 成 績 が 悪 くなったりすることは 全 くありません ですから 安 心 して 正 直 に 答 えてください 東 海 大 学 札 幌 キャンパス 英 語 教 務 委 員 問 1 学 生 証 番 号 と 名 前 を 書 いてください 学 生 証 番 号 名 前 問 2 高 校 で 英 語 の 授 業 は 週 何 時 間 ありましたか? 数 字 で 記 入 してください 1 年 2 年 3 年 3 年 間 の 一 週 間 の 合 計 それでは 二 つ 折 りの 部 分 を 開 いて アンケートに 答 えてください 質 問 は6 問 あります 質 問 1には4つ 質 問 2と 質 問 3がそれぞれ1つで 合 計 6 問 です よろしくお 願 いいたします - 8 -
Appendix B: Survey Questions Q1. あなたは 英 語 でどのようなことまでできるようになりたいですか Q1-1 読 む Q1-2 聞 く 当 てはまる 欄 にひとつだけ をつけてください 当 てはまるものの 横 に をひとつだけつけてください アルファベットや 符 合 がわかり 初 歩 的 な 語 句 や 文 を 理 解 することができる (I play tennis every day 等 の 簡 単 な 文 ) 簡 単 な 文 章 や 表 示 掲 示 を 理 解 することができる (メニュー Closed 等 の 表 示 掲 示 家 族 を 紹 介 している 手 紙 等 ) 簡 単 な 物 語 や 身 近 なことに 関 する 文 章 を 理 解 することができる ( 地 図 簡 単 な 伝 記 等 ) 簡 単 な 説 明 文 を 理 解 したり 図 や 表 から 情 報 を 得 ることができる ( 外 国 の 生 活 を 紹 介 する 教 科 書 の 文 時 刻 表 調 査 結 果 のグラフ 等 ) まとまりのある 説 明 文 を 理 解 したり 実 用 的 な 文 章 から 必 要 な 情 報 を 得 ることができる ( 日 本 語 の 注 や 説 明 がついた 英 字 新 聞 料 理 のレシピ 簡 単 なチラシ 等 ) 社 会 性 の 高 い 分 野 の 文 章 を 理 解 することができる ( 講 義 の 資 料 仕 事 に 関 する 手 紙 商 品 の 取 扱 説 明 書 等 ) 社 会 性 の 高 い 幅 広 い 分 野 の 文 章 を 理 解 することができる (TIME Newsweek 文 学 作 品 等 ) 当 てはまるものの 横 に をひとつだけつけてください 初 歩 的 な 語 句 や 定 型 表 現 を 理 解 することができる ( Nice to meet you 等 のあいさつ 曜 日 年 齢 等 が 聞 き 取 れる) 簡 単 な 文 や 指 示 を 理 解 することができる (Open your textbook 等 の 指 示 簡 単 な 自 己 紹 介 が 聞 き 取 れる) ゆっくり 話 されれば 身 近 なことに 関 する 話 や 指 示 を 理 解 することができる ( 乗 り 物 の 出 発 時 刻 等 の 簡 単 なアナウンス 好 きな 音 楽 クラブ 活 動 等 の 話 が 聞 き 取 れる) 日 常 生 活 での 話 題 や 簡 単 な 説 明 指 示 を 理 解 することができる (ゆっくり 話 されなくても 乗 り 物 の 出 発 時 刻 等 の 簡 単 なアナウンス 好 きな 音 楽 ク ラブ 活 動 等 の 話 が 聞 き 取 れる) 日 常 生 活 での 情 報 説 明 を 聞 き 取 ったり まとまりのある 内 容 を 理 解 することができる ( 天 気 予 報 店 員 からの 説 明 他 の 学 校 会 社 の 説 明 や 情 報 が 聞 き 取 れる) 社 会 性 の 高 い 内 容 を 理 解 することができる (ニュース 番 組 の 要 点 興 味 関 心 のある 講 義 等 が 聞 き 取 れる) 社 会 性 の 高 い 幅 広 い 内 容 を 理 解 することができる ( 政 治 経 済 的 なニュースや 環 境 問 題 等 に 関 する 講 演 が 聞 き 取 れる) Q2. あなたが 考 える 英 語 力 にとって 次 の 項 目 はどれくらい 重 要 ですか 当 てはまる 欄 に をつけてください ( 単 語 熟 語 文 法 発 音 の3つに 関 して 必 ず1つ をつけてください ) 単 語 熟 語 文 法 発 音 重 要 どちらかという と 重 要 どちらかという と 不 要 不 要 - 9 -
Q1. あなたは 英 語 でどのようなことまでできるようになりたいですか Q1-3 話 す 当 てはまる 欄 にひとつだけ をつけてください 当 てはまるものの 横 に をひとつだけつけてください 初 歩 的 な 語 句 や 定 型 表 現 を 使 うことができる ( おはよう 等 のあいさつや 時 間 等 が 言 える) 簡 単 な 文 を 使 って 話 したり 質 問 をすることができる ( 自 己 紹 介 をしたり 相 手 の 名 前 を 尋 ねることができる) 身 近 なことについて 簡 単 なやりとりをしたり 自 分 のことについて 述 べることができる ( 食 べ 物 等 の 好 き 嫌 い と その 理 由 日 常 生 活 の 行 動 等 について 言 える) 日 常 生 活 で 簡 単 な 用 を 足 したり 興 味 関 心 のあることについて 自 分 の 考 えを 述 べることができる (メニューを 見 ながら 注 文 したり 自 分 の 訪 れたい 国 やりたいこと 等 が 言 える) 日 常 生 活 での 出 来 事 について 説 明 したり 用 件 を 伝 えたりすることができる ( 旅 行 など 印 象 に 残 った 出 来 事 を 話 したり 店 員 に 質 問 したり 好 みを 伝 えたりできる) 社 会 性 の 高 い 話 題 について 説 明 したり 自 分 の 意 見 を 述 べたりすることができる ( 調 べたことについてプレゼンをしたり 専 門 分 野 の 講 義 や 発 表 について 質 問 や 意 見 が 言 える) 社 会 性 の 高 い 幅 広 い 話 題 についてやり 取 りをすることができる ( 社 会 的 な 話 題 や 時 事 問 題 について 質 問 や 意 見 が 言 える 相 手 や 状 況 に 応 じた 的 確 な 表 現 ができる) Q1-4 書 く 当 てはまるものの 横 に をひとつだけつけてください アルファベット 符 号 や 初 歩 的 な 単 語 を 書 くことができる ( 自 分 の 名 前 や 犬 食 べる ハッピー 等 ) 簡 単 な 文 やメモを 書 くことができる ( 私 は 昨 日 学 校 へ 行 った 等 の 英 文 and but when because 等 を 使 った 英 文 ) 自 分 のことについて 簡 単 な 文 章 を 書 くことができる ( 自 己 紹 介 や 趣 味 等 についての 英 文 ) 興 味 関 心 のあることについて 簡 単 な 文 章 を 書 くことができる ( 自 分 のお 気 に 入 りのものの 紹 介 や 訪 れたい 国 やりたい 仕 事 等 の 英 文 ) 日 常 生 活 での 話 題 についてある 程 度 まとまりのある 文 章 を 書 くことができる ( 旅 行 など 印 象 に 残 った 出 来 事 についての 英 文 住 んでいる 地 域 の 簡 単 な 紹 介 文 等 ) 日 常 生 活 の 話 題 や 社 会 性 のある 話 題 についてまとまりのある 文 章 を 書 くことができる ( 日 本 の 祝 日 や 食 べ 物 等 についての 簡 単 な 紹 介 文 等 ) 社 会 性 の 高 い 話 題 についてまとまりのある 文 章 を 書 くことができる ( 社 説 や 論 文 などの 要 約 や 仕 事 や 調 査 についてのレポート 等 ) Q3. 文 法 ときいて 何 を 思 い 浮 かべますか 又 はどんな 感 じがしますか 何 でも 自 由 に 書 いてください - 10 -