視聴者はVODに何を求めているのか インターネットを利用したVOD に関する調査から 三浦 基 小林憲一 はじめに 本料をどうするのかという問題も大きい 例え ば ある歌手の出演した番組が永久にネット上 技術の進化と大容量化によりインターネッ で見ることが出来るようになってしまえば CD トで動画をストレス無く視聴出来る環境が なども含め経済的影響も大きいだろう ニュー ととのってきた 文字通りネットのマルチメ スやドキュメンタリーでも影響は出てくる 出 ディア化が実現したといえるだろう ネット 演者や協力者は 特定の時間のテレビ画面に を利用してテレビを見たいという期待も大き 出るという前提で出演し 協力しているのであ く なぜ インターネットでテレビを見るこ る これらの人々がいつでも どこでもネット とが出来ないのか という疑問が出てくるの 上で自分たちの登場したシーンを誰でも自由に は当然だろう もちろん地域性を大きな特性 見ることが出来るということになれば すんな に持っているテレビにとって ネットでの二 りと納得するかどうかは大きな問題である 次利用は容易ではないが ユーザーからすれ したがって 関係者の適切な権利保護を行 ば いつでもどこでも 遠くの地域のテレビや い ルールを決めた上でネットを活用するこ 見逃した番組など これまで見ることが出来 とが重要である なかったニュースや番組を見ることが出来る ようになるのは便利である ただしその場合 忘れてならないのはテレ 求められるテレビ発コンテンツは? ビを提供する側の事情である 例えばスポン すでにインターネット上では有料 無料の サーは大金を投じてテレビ番組にかかる制作 さまざまな動画コンテンツが存在する こうし 費や電波料を支払っている これを地域性と た動画コンテンツに対して ユーザーはどのよ は関係なくネットに提供することはテレビ局 うなテレビ発のコンテンツに期待するのであ とスポンサーの双方に様々な影響を与えるこ ろうか もちろん 到達度の高い地上波テレ とになる またコマーシャルがスキップされ ビのコンテンツは そのポピュラリティにおい てしまうようなことになれば肝腎の資金を提 て抜群の存在感を示している 誰もが知って 供しているスポンサーがテレビを支えなくな いるという意味では無類の強さを発揮するだ ることも考えられる ろう この場合には二次的にネットで利用す またドラマや音楽番組には数多くの関係者 るための権利処理が大きなテーマになる ネッ が存在していて それらの人々の出演料や脚 トでの収益性が見込めなければ本来のテレ 32 JULY 2007
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レンタルビデオの利用状況 自宅で楽しむ放送以外の映像サービスとして 一般的なのはレンタルビデオ DVDを含む 以 下同じ である 昨今はDVDのウエイトが高く なりつつあるかもしれないが レンタルビデオ の方がイメージが湧きやすいので本稿ではこの 言葉を使うことにする レンタルビデオの中身 は一部の例外を除けば大半は映画であり この 点では新サービスと異なるが 現行の映像サー ビスという点では一番近似するサービスである ため レンタルビデオについて聞いてみた レンタルビデオ店でビデオを借りる頻度に ついては 最も多いのが 数ヶ月に1 2 本 の 20% で ついで 一ヶ月に 2 3 本 が 16% である 一週間に1 本 は 4% 一週間に 3 本 以上 は 2%など残りの選択肢は一桁であり 借りたことはあるが 今はほとんど借りてい ない という人は 30% である レンタルビデオ に払う金額は 月額で 300 円 33% が最も多く 以下 1,000 円 15% 500 円 14% となっている 300 円から700 円までを合計すると53% で 半 数を超える 平均的な利用者像は 本数でい えば多くても一ヶ月に 2 3 本 金額にすると たことがない 79% 100 21 は DVD 配 送のみの利用者ということになる テレビ チューナー付きパソコンを持っている人では 無料が 86% 有料が 34% といずれも全体平均 より高く パソコンでテレビ番組とインター ネット経由の映画や動画の両方を見ている様 子がうかがえる インターネットによる有料配信サービス利 用者だけに ストリーミングで見る コンテ ンツをダウンロードする インターネットで 注文してDVD ビデオ を配送で受け取る と いう3 種類のサービスの利用状況を聞いた ス トリーミングで見るサービス の利用者は 77% にのぼり 図 2 そのサービスを利用した理由 として多かったのは パソコンで簡単に見られ る 利用手続きが簡単 店に借りに行ったり 返しに行く手間がかからない などであった ダウンロードするサービス の利用者はスト リーミングより少ない 58%だが 主な利用理 由はストリーミングとかわらない また 有料 配信サービスを利用しながらも DVD ビデオ を配送で受け取る サービスも利用した事のあ る人は 34% いて そのサービスを利用した理 由として 店に借りに行ったり 返しに行く手 月額 700 円以下ということになる 間がかからない 利用手続きが簡単 料金 有料サービス経験は 2 割 などをあげている DVD 配送やストリーミン が安い 実際に店で探すより簡単に探せる グサービスでは男女差が少ないが ダウンロー インターネットで無料の映画や動画を見た 図 2 各サービスの利用状況 ことがある人は 76% 有料の映画や動画を見 たことがある人は 21% である 調査概要で述 77 ストリーミング べたようにこの調査の回答者はインターネッ トによる有料動画配信の利用者か インター ダウンロード 58 ネット経由での注文による DVD 配送の利用 者のどちらかなので 有料の映画や動画を見 DVD配送 34 JULY 2007 35
ドの利用経験は男の方が圧倒的に多い 料配信サービスができたら ぜったい利用す DVD 配送サービスの利用だけで有料配信 る と答えた人は 1% 利用すると思う 人が サービスを使ったことのない人たちは しな 18% で 合わせて 19% が利用する意向を表し い 理由として 料金が高い 利用手続き ている 以下 利用意向者 利用しないと が面倒 画面が小さい 支払い方法が面倒 思う は 61% ぜったい利用しない は 21% 支払い方法が不安 などをあげている 利 である 利用意向者は男女別では男 年層別 用手続きや支払い方法に関する理由が特に高 では 20 代と50 歳以上がやや高くなっている いのは 20 代である 有料サービスの支払い 男女 未既婚別では女既婚で利用意向が低い はクレジットカードによる決済が多いため が 前述の録画率では他の層と同程度である クレジットカードの取り扱いに不慣れな若者 ところを見ると この層だけが NHK の番組 にはインターネットによる配信サービスは利 に関心が薄いというわけでもない 日常生活 用し難い という側面もあると思われる でやることがたくさん有り そこまで手が回 らないといったことなのかもしれない 定期 ネットでのNHK番組に期待 不定期にかかわらずここ半年間に録画したこ とのある人を録画経験者とすると 利用意向 これ以降は NHK の番組に限定して ビデ 率は録画経験者では 26% で平均の 19% を上回 オ録画や有料インターネット配信に関連する る 日頃 NHK の番組を録画してまで見よう 調査結果を報告していく とする人は 新しいインターネットでの配信 まず NHK 番組のビデオ録画については サービスも使ってみたいと思う人が多いとい ここ半年ぐらいの間に 定期的に録画してい うことである さらに民放よりNHK の番組 る 人は 12% 定期的ではないが録画した を ずっと多く または どちらかといえば多 ことのある 人は 40% で 合わせて半数を超 く 見ている人を合計した NHK 派では 利用 える 52% がここ半年の間に NHK の番組を録 意向率は 38%と 4 割近くになる 図 3 当た 画していることがわかった 年層別にみると り前のことだが普段から放送を見ていてこそ 20 30 代 が 各 48% 40 代 が 54% 50 歳 以 上 インターネット経由でも見たいと思うわけで が 62% で 若者より中高年の方がより多く録 新サービスの普及拡大に向けては まず放送 画している 半年毎に NHK が行っている個 がどれだけ多くの視聴者を引き付けられるか 人視聴率調査でも 年層別のテレビ視聴時間 が キーポイントになる B 調査では ぜった は同様の視聴傾向を示しているがもっと高齢 図 3 各グループ別の IOD 利用意向率 者に偏っており 視聴時間の割には若年層の 録画率は高いといえる 有料サービスの非経 験者を対象とした B 調査では定期的な NHK 番組の録画者は 7% 不定期な録画者は 29% で A 調査の数字に比べて低い 次に NHK 番組のインターネットによる有 36 JULY 2007 全体平均 録画経験者 NHK派 19 26 38
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送日の夜 や 放送日の翌日 などその他は一 お宝番組 32% 太平洋戦争から現代まで 桁の数字であった 図 4 放送直後 から 1 時代を映したニュース映像 以下 ニュース 週間以内 までを合計すると 66% になる 利 映像 26% スポーツの名勝負や名選手を 用する側からすると利用可能期間は長いに越 記録したドキュメンタリー 以下 スポーツ したことはないが 著作権の関係などでそれ ドキュメンタリー 25% 赤穂浪士や天と が困難な場合は 1 週間以内 が一つの目安 地となどの 5 年以前の大河ドラマ 以下 5 年 になりそうである 以前の大河 日曜美術館や国宝への旅など の美術番組 美術番組 各 21% である 表 5 図 4 放送後どの時点で利用するか その他 9 放送直後 6 歳以上で人気が高く 特に女 50 歳以上では 放送日の夜 9 43%である お宝番組 は男女ではっきり好み 放送日の翌日 7 1ヶ月以内 21 2週間以内 5 歴史 世界遺産番組 は男40 代と男女 50 が分かれ女の各年層で高く 女 20 代では47% にのぼる 逆に ニュース映像 スポーツドキュ メンタリー は男が圧倒的に高い数字を示して いる 5年以前の大河 は各年層に支持されて 1週間以内 44 おり 美術番組 は男女 50 歳以上に人気がある 最近 4 5 年の大河や連続テレビ小説 は 男女 20 代で 見ると思う 人が多く 逆に男女 50 歳以上が多いのは 夢で会いましょうやお アーカイブスは歴史やお宝番組 笑いオンステージなどの昔の娯楽番組 や こ 次に 現在放送中の番組ではなく 以前 ころの時代など 心の豊かさや生きる知恵を に放送した番組について番組名や番組内容 提供する番組 などである 女 50 歳以上だけ を 20 本あげて 見ると思うかどうか聞いて が突出している番組は数多く 5 年以前の連 みた 見ると思う人が一番多かったのは 歴 続テレビ小説 生活ほっとモーニングやくら 史への招待や四大文明など歴史や世界遺産を しと経済など日常生活に役立つ番組 きょう 扱った番組 以下 歴史 世界遺産番組 の の料理やおしゃれ工房などの生活実用番組 33% で 続いて 自分の好きな歌手 俳優 囲碁 将棋 俳句 釣り 園芸などの趣味を アナウンサーが出演しているお宝番組 以下 扱った番組 きょうの健康など心身の健康管 表 5 IOD で見たい過去に放送した番組 全体 1位 定期録画派 利用意向者 歴史 世界遺産番組 33 歴史 世界遺産番組 44 歴史 世界遺産番組 57 2位 お宝番組 32 お宝番組 40 3位 ニュース映像 26 美術番組 33 ニュース映像 スポーツドキュメンタリー 47 4位 スポーツドキュメンタリー 25 語学番組 32 お宝番組 44 5位 5 年以前の大河 美術番組 21 5 年以前の大河 31 5 年以前の大河 43 JULY 2007 39
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