第 1 章 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 について
第 1 章 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 について 本 章 の 概 要 と 目 的 本 章 では 既 存 の 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 方 法 について 述 べ 歌 舞 伎 化 粧 の 記 録 に 必 要 な 情 報 を 明 らかにする ある 事 象 を 記 録 するさいには その 事 象 がもつ 特 徴 を 明 らかにしたうえ で その 記 録 目 的 や 用 途 に 合 わせて 記 録 すべき 情 報 を 検 討 する 必 要 がある 本 章 では 形 の ない わざ を 伝 える 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 方 法 について 調 査 を 行 い その 記 録 方 法 について 議 論 する 1.1 節 では 伝 統 芸 能 である 歌 舞 伎 における 化 粧 の 役 割 と その 伝 承 方 法 について 述 べ 本 手 法 提 案 の 参 考 とする 1.2 節 では 役 者 への 取 材 や 舞 台 照 明 についての 調 査 を 通 し 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 で 伝 えられていく 役 者 の わざ や 型 に 関 わる 情 報 を 明 らかにする 1.3 節 では 1.2 節 の 内 容 をまとめ 歌 舞 伎 化 粧 に 関 わる 情 報 について 述 べる 1.4 節 では 本 章 を 概 観 し 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 のための 記 録 方 法 についてまとめる 1.1. 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 について 1.1-1. 演 者 の 性 別 と 化 粧 の 役 割 本 節 では 役 者 の 性 別 の 変 化 がおこった 歌 舞 伎 の 創 始 期 の 概 観 を 示 し 化 粧 の 役 割 につ いて 述 べる 江 戸 時 代 から 現 代 まで 続 く 歌 舞 伎 の 時 代 区 分 には 多 説 ある 歌 舞 伎 演 劇 史 の 研 究 者 であ る 諏 訪 春 雄 は 歌 舞 伎 の 創 始 期 として 慶 長 からの 約 70 年 間 とし 荒 事 や 和 事 が 成 立 した 元 禄 歌 舞 伎 の 前 までの 期 間 を 提 唱 している また 歌 舞 伎 通 艦 歌 舞 伎 図 説 日 本 演 劇 全 史 などにおいても 同 様 に 胎 生 期 創 始 期 第 1 期 等 の 名 称 の 違 いはあ るが 第 一 の 期 間 として 同 様 の 期 間 が 提 唱 されている [3] この 期 間 に もともと 女 性 によっ て 行 われていた 歌 舞 伎 が 成 年 男 子 の 役 者 のみで 行 われるようになる 演 者 の 性 別 の 変 化 は 歌 舞 伎 化 粧 の 発 展 に 大 きく 関 係 している 歌 舞 伎 は 出 雲 のお 国 によってはじめられた 当 代 紀 [4] によると 慶 長 八 年 (1603) 四 月 の 項 に 此 頃 かふき 躍 と 云 う 事 有 り 是 は 出 雲 神 子 女 名 は 国 但 し 好 女 に 非 ず 仕 り 出 で 京 都 へ 上 る 縦 ば 異 風 なる 男 のまねをして 刀 脇 指 衣 装 以 下 殊 相 異 彼 男 茶 屋 の 女 と 戯 る 体 有 難 したり 京 中 の 上 下 賞 翫 する 事 斜 めならず 伏 見 城 へも 参 上 し 度 々 躍 る 其 後 これを 学 ぶかふきの 座 いくらも 有 て 諸 国 へ 下 る とある お 国 のかぶきおど りをまね 遊 女 や 女 性 芸 人 によって 女 歌 舞 伎 がおこなわれた しかし 女 歌 舞 伎 は 風 紀 を 乱 すとの 理 由 で 寛 永 六 年 (1629) 前 後 から 禁 令 が 出 されるようになった 女 歌 舞 伎 の 禁 止 後 前 髪 のある 成 人 前 の 少 年 が 演 じる 若 衆 歌 舞 伎 が 行 われるようになったが 承 5
応 元 年 (1652) 頃 から 禁 令 が 出 されるようになった この 禁 令 以 後 前 髪 を 剃 り 落 した 野 郎 頭 ( やろうあたま ) の 成 人 男 性 が 演 じる 野 郎 歌 舞 伎 の 時 代 となった 野 郎 歌 舞 伎 で は 役 柄 が 確 立 し 始 め 若 女 方 や 女 方 立 役 を 専 門 に 演 じるようになり それぞ れの 役 柄 にあった 演 技 術 が 編 み 出 されるようになった [5] [6] 若 衆 歌 舞 伎 の 時 点 で 女 方 という 役 割 があったため 女 装 するために 白 く 化 粧 したが 本 格 的 な 女 方 と 白 塗 りの 化 粧 は 野 郎 歌 舞 伎 になってからであるといわれている [7] 野 郎 歌 舞 伎 として 発 展 していく 上 で 成 年 男 子 の 役 者 のみで 老 若 男 女 全 ての 役 を 専 門 的 に 表 現 する ようになった このことが 歌 舞 伎 における 化 粧 の 役 割 を 大 きくしたと 考 えられる 創 始 期 とその 次 期 の 元 禄 歌 舞 伎 の 境 界 として 延 宝 八 年 (1673) 四 天 王 稚 立 における 初 代 市 川 団 十 郎 の 荒 事 があげられるが ここでおこなわれた 紅 と 墨 での 化 粧 が 隈 取 の 起 源 といわれている [6] 野 郎 歌 舞 伎 以 降 役 者 たちは 成 年 男 子 のみで 様 々な 役 の 表 現 を するために 化 粧 に 工 夫 を 重 ね 隈 取 ( 図 1.1-1) のような 特 徴 的 な 化 粧 を 考 案 してきた 図 1.1-1. 隈 取 の 拵 えの 様 子 1.1-2. 型 による 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 歌 舞 伎 は 型 に 支 えられた 身 体 伝 承 により 今 日 まで 伝 えられたことから 型 の 芸 術 といわれる [8] 歌 舞 伎 の 伝 承 は 兄 弟 子 からの 指 導 や 口 伝 によっておこなわれており このとき 形 式 とその 役 者 の 精 神 性 である わざ を 含 んだ 型 という 概 念 を 用 いる [ 注 1] 歌 舞 伎 の 伝 承 において 継 承 者 は まず 兄 弟 子 に 教 えられた 通 り 型 を 繰 り 返 し 型 を 自 分 の 体 にとけ 込 ませる そして その 型 に 自 らの 精 神 をとけ 込 ませ 新 たな 要 素 として 継 承 者 自 身 の わざ を 付 加 させるという 流 れでおこなわれる 役 者 みずからが 自 分 の 顔 におこなう 化 粧 も この 型 という 概 念 のもとにある 役 者 は 兄 弟 子 から 学 んだ 型 を 自 分 のものとするために 役 柄 にあった 化 粧 を 自 らの 顔 6
のつくりや 化 粧 料 上 映 環 境 を 考 慮 してよりその 役 柄 らしく 見 せるためにどうしたらいい のか 工 夫 を 重 ねることが 必 要 となる 本 研 究 では 型 の 概 念 を 参 考 にして 歌 舞 伎 化 粧 の 記 録 方 法 を 提 案 する このため 本 節 では 型 による 伝 承 の 構 造 を 定 義 する 本 研 究 における 歌 舞 伎 化 粧 の 型 とは 役 柄 によって 決 められた 化 粧 の 方 法 のことを さし 化 粧 のパターンや 役 者 の 顔 形 状 などの 要 素 によって 構 成 されている これらの 要 素 や 要 素 にまつわる 化 粧 方 法 は これまでの 役 者 の わざ によって 生 み 出 されたもの であり それは 現 在 なお 生 み 出 されている また 本 研 究 における 歌 舞 伎 化 粧 の わざ とは 役 柄 や 上 演 環 境 演 技 の 表 情 変 化 などにあわせた 化 粧 の 表 現 技 術 を 生 み 出 すもとと なる 役 者 の 人 間 性 や 精 神 性 をさす わざ そのものには 形 がないが 形 として 現 れた 要 素 の 背 景 に わざ が 存 在 する 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 についての 概 念 を ( 図 1.1-2) に 示 す ある 役 者 1 の 化 粧 の 型 X 1 は 化 粧 材 料 化 粧 のパターンなど 化 粧 に 関 わる 要 素 e 1 の 関 数 として 以 下 のようにあら わすことができる X 1 e 1 e 1 = 1, 1, 1, 役 者 1の 型 が 役 者 2に 伝 承 されたとき 役 者 2は 役 者 1 の 型 を 体 得 したのち 化 粧 に 関 わる 要 素 に 対 して 自 らの わざ を 付 加 させ 役 者 2の 型 X 2 を 確 立 する 役 者 2の わざ を e 2 とすると 役 者 2の 型 は [1.1 式 ] のようにあらわすことができる X 2 e 2 = X 1 e 1 2 e 2 e 2 = 2, 2, 2, -[1.1] ここで 役 者 2の わざ により 化 粧 に 関 わる 要 素 が 増 えることもある 例 えば 役 者 2 が 舞 台 照 明 に 合 わせて 化 粧 を 変 化 させる わざ を 考 案 したとすると 化 粧 に 関 わる 要 素 e 2 は 以 下 のように 拡 張 される e 2 = 2, 2, 2, 2, 反 対 に これまで 化 粧 する 際 考 慮 していた 要 素 を 考 慮 しなくなる 場 合 もある この 場 合 化 粧 に 関 わる 要 素 が 取 り 除 かれたということを 示 すが 要 素 が 取 り 除 かれたということ 自 7
e 1 X e 1 X e 1 e 2 e 1 1, 1, 1, X e 2 X e 1 e 2 X e 2 e 3 e 2 2, 2, 2, X e 3 X e 2 e 3 図 1.1-2. 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 の 概 念 8
体 が わざ の 蓄 積 にあたるため 要 素 の 減 少 とは 考 えず 要 素 の 値 が0になると 考 えら れる 以 上 のことから 役 者 1から 伝 承 された n 世 代 目 の 役 者 n の 型 X n は [1.2 式 ] の ような 漸 化 式 として 表 すことができる したがって 役 者 n の わざ α n は 役 者 n の 型 X n と 役 者 n-1 の 型 X n-1 の 差 分 として [1.3 式 ] のように 示 される わざ が 加 えられ ることで 型 が 発 展 するため 型 と 型 の 差 に わざ があらわれる X 2 e 2 = X 1 e 1 2 e 2 X 3 e 3 = X 2 e 2 3 e 3 X n e n = X n 1 e n 1 n e n -[1.2] e n = element1 n,element2 n,element3 n,element4 n, elementt n n e n = X n e n X n 1 e n 1 -[1.3] [1.2 式 ] はまた [1.4 式 ] のようにあらわすことができる すなわち n 世 代 目 の 役 者 n の 型 は 役 者 1の 型 と 役 者 2 から 役 者 n までの 役 者 の わざ の 総 和 との 和 となる X e n = X e 1 i=2 n 1 i i n e -[1.4] 以 上 のことから 型 を 拡 張 してきた 現 代 までの 役 者 の わざ の 蓄 積 が 化 粧 の 型 を 形 づくっていることがわかる また 化 粧 の 型 の 比 較 をおこなうことで 積 み 重 な る わざ を 見 ることができる 歌 舞 伎 化 粧 伝 承 のためには 化 粧 の わざ に 関 わる 情 報 すなわち 化 粧 の 型 を 構 成 する 要 素 を 明 らかにし 型 として 記 録 をおこない 記 録 を 積 み 重 ねていくことで 形 のない わざ の 記 録 をおこなうことが 適 していると 考 えら れる このため 本 研 究 では 歌 舞 伎 化 粧 の 型 を 構 成 する 情 報 を 調 査 によって 明 らか にし 歌 舞 伎 化 粧 の 記 録 方 法 提 案 のための 足 がかりとする 9
1.2. 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 に 関 する 調 査 型 を 用 いて 役 者 の わざ を 喚 起 する 歌 舞 伎 の 伝 承 について 前 節 で 述 べた 歌 舞 伎 化 粧 を 記 録 するためには 型 を 構 成 する 要 素 として 記 録 することが 必 要 である この ため 本 節 では 化 粧 の 型 を 構 成 する 要 素 を 役 者 への 取 材 や 舞 台 照 明 についての 調 査 を 通 して 明 らかにする 役 者 への 取 材 では 伝 承 方 法 や 化 粧 における 役 者 の 工 夫 につい て 調 査 する 舞 台 照 明 に 関 する 調 査 では 古 代 の 歌 舞 伎 照 明 である 天 窓 やろうそくによる 照 明 のもとでの 化 粧 の 見 え 方 について 調 査 する 調 査 結 果 から 照 明 環 境 などの 化 粧 の 見 えに 与 える 影 響 や 役 者 の 工 夫 についての 情 報 をもとに 歌 舞 伎 化 粧 の 型 を 構 成 する 要 素 を 明 らかにする 1.2-1. 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 方 法 についての 調 査 1. 調 査 目 的 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 方 法 についての 聞 き 取 り 調 査 から 歌 舞 伎 化 粧 の 記 録 に 必 要 な 要 素 を 明 らかにすること 2. 調 査 方 法 調 査 日 場 所 :2009 年 9 月 24 日 京 都 芸 術 劇 場 春 秋 座 調 査 対 象 : 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 内 容 や 伝 承 方 法 について 調 査 方 法 : 役 者 へのインタビュー インタビュー 回 答 者 : 歌 舞 伎 役 者 の 中 村 雁 之 助 氏 中 村 寿 次 郎 氏 中 村 雁 成 氏 ( 松 竹 大 歌 舞 伎 近 松 座 公 演 に 出 演 ) 3. 調 査 結 果 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 方 法 に 関 して 以 下 の 意 見 が 得 られた 兄 弟 子 からの 指 導 による 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 方 法 最 初 は 自 分 の 顔 はどのように 化 粧 をするといいのか 先 輩 に 聞 いたり 自 分 に 似 ている 人 の 化 粧 を 真 似 をすることからはじめる 最 初 は 誰 かと 似 た 顔 になっていても 部 分 の 工 夫 を 重 ねることで 自 分 なりの 化 粧 法 を 確 立 する 10
1.2-2. 歌 舞 伎 化 粧 の 型 についての 調 査 1. 調 査 目 的 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 の 際 用 いられる 型 を 構 成 する 要 素 についての 聞 き 取 り 調 査 から 歌 舞 伎 化 粧 の 記 録 に 必 要 な 要 素 を 明 らかにすること 2. 調 査 方 法 型 を 構 成 する 要 素 について 歌 舞 伎 役 者 への 聞 き 取 り 調 査 を 調 査 1 調 査 2 の 2 回 に 分 けて 行 った 歌 舞 伎 役 者 の 化 粧 手 順 の 写 真 取 材 化 粧 における 工 夫 についてのインタ ビューを 通 し 化 粧 における 役 者 の わざ についての 情 報 を 得 た a. 調 査 1 調 査 日 場 所 :2005 年 11 月 30 日 京 都 南 座 取 材 対 象 者 : 歌 舞 伎 役 者 の 尾 上 みどり 氏 尾 上 辰 巳 氏 をはじめ 歌 舞 伎 役 者 ( 吉 例 顔 見 世 興 行 に 出 演 ) 舞 台 関 係 者 b. 調 査 2 調 査 日 場 所 :2009 年 9 月 24 日 京 都 芸 術 劇 場 春 秋 座 取 材 対 象 者 : 歌 舞 伎 役 者 の 中 村 雁 之 助 氏 中 村 寿 次 郎 氏 中 村 雁 成 氏 中 村 翫 雀 氏 片 岡 愛 之 助 氏 をはじめ 歌 舞 伎 役 者 ( 松 竹 大 歌 舞 伎 近 松 座 公 演 に 出 演 ) 舞 台 関 係 者 11
3. 調 査 結 果 a. 調 査 1 化 粧 手 順 について 以 下 に 調 査 1 の 化 粧 手 順 を 示 す 本 調 査 では 鬢 付 石 ねり 肌 色 のドーラン 白 粉 トノコ 紅 墨 の 化 粧 料 スポンジ 筆 刷 毛 羽 二 重 の 道 具 を 用 い 助 六 由 縁 江 戸 桜 における 女 方 の 化 粧 をおこなった 手 順 1. 下 地 となる 鬢 付 をよく 練 って 顔 首 背 中 に 薄 くのばす ( 図 1.2-1) 手 と 睫 毛 に 付 いた 鬢 付 は 取 る 手 順 2. 石 ねりや 太 白 といった 硬 い 鬢 付 け 油 で 眉 毛 をつぶす ( 図 1.2-2) この 時 眉 尻 を 上 のほうへ 向 かって 寝 かす 後 で 白 塗 りをした 上 に 新 しい 眉 を 描 くため 地 の 眉 は 浮 き 上 がってこないよう 十 分 寝 かせておく 手 順 3. 肌 色 のドーランを 塗 り 眉 の 色 を 消 し 目 立 たなくする ( 図 1.2-3) 手 順 4. 白 粉 をよく 練 って 首 の 後 ろから 合 わせ 鏡 を 使 って 塗 っていく ( 図 1.2-4) 乾 か ないうちにすばやくスポンジでたたいて 水 分 を 取 る 前 首 も 同 様 にして 塗 る 図 1.2-1. 鬢 付 を 塗 る 様 子 図 1.2-2. 石 ねりで 眉 毛 をつぶす 様 子 図 1.2-3. 肌 色 のドーランで 眉 を 消 す 様 子 図 1.2-4. 合 わせ 鏡 で 首 筋 に 白 粉 を 塗 る 様 子 12
手 順 5. 鼻 筋 を 通 すため 鼻 筋 だけ 細 目 の 板 刷 毛 で 白 粉 を 塗 り スポンジでたたいて 水 分 を 取 る ( 図 1.2-5) 手 順 6. 顔 に 白 粉 を 塗 る ( 図 1.2-6) 額 から 顎 顔 の 中 心 に 向 けて 白 粉 を 全 体 に 塗 り お なじようにして 下 のほうからスポンジでたたいて 水 分 を 取 る 手 順 7. 白 粉 をもう 一 度 全 体 に 塗 る 手 順 8. 目 元 が 白 いと 顔 がぼやけるため 睫 毛 に 着 いた 白 粉 を 取 る 手 順 9.ピンク 色 のトノコを 水 で 溶 き 眉 から 鼻 筋 にかけて 軽 く 塗 り のばす ( 図 1.2-7) 白 粉 に 少 し 水 紅 を 混 ぜたものでもよい 凸 の 部 分 を 凹 んで 見 せる 効 果 がある 手 順 10. 羽 二 重 を 巻 く ( 図 1.2-8) 手 順 11. 油 紅 や 水 紅 で 目 張 りを 入 れ 目 の 下 を 指 でぼかす ( 図 1.2-9) 目 張 りは 外 側 に 丸 みを 持 たせるように 描 き 指 筆 のうしろで 整 える 手 順 12. 唇 を 山 のほうから 水 紅 で あまりおちょぼ 口 にならないように 描 く ( 図 1.2-10) 唇 の 大 きさは 基 本 的 には 小 鼻 の 幅 と 同 じぐらいがよいとされるが あまり 大 きくならな いようにする また 下 唇 はしっかり 描 き 上 唇 は 細 めに 描 く 手 順 13. 眉 の 色 にやわらかみを 与 えるため 薄 く 溶 かした 紅 で 眉 の 下 描 きをし 下 に 向 かっ て 薄 くのばす ( 図 1.2-11) 図 1.2-5. 鼻 筋 に 白 粉 を 塗 る 様 子 図 1.2-6. 顔 に 白 粉 を 塗 る 様 子 図 1.2-7. トノコを 塗 る 様 子 図 1.2-8. 羽 二 重 を 巻 く 様 子 13
手 順 14. 眉 を 油 墨 ( 黒 のドーラン ) や 水 溶 きの 墨 で 描 き 下 側 を 指 でぼかす ( 図 1.2-12) 下 の 紅 が 薄 く 見 えるように 残 しておくとやわらかみが 出 る 手 順 15. 足 に 白 粉 を 塗 り スポンジでたたいて 水 分 を 取 る ( 図 1.2-13) ここまでの 所 要 時 間 は 約 40 分 手 順 16. 鬘 着 物 を 着 けたら 最 後 に 手 の 甲 と 手 首 に 白 粉 を 塗 って 完 成 ( 図 1.2-14) 図 1.2-9. 目 張 りを 入 れる 様 子 図 1.2-10. 口 紅 を 差 す 様 子 図 1.2-11. 紅 で 眉 の 下 書 きをする 様 子 図 1.2-12. 墨 で 眉 を 描 く 様 子 図 1.2-13. 足 に 白 粉 を 塗 る 様 子 図 1.2-14. 拵 えの 完 成 14
化 粧 に 見 られる わざ 本 調 査 では 化 粧 に 以 下 のような 歌 舞 伎 役 者 の 工 夫 が 見 られた 鼻 筋 を 通 すための 工 夫 ー 鼻 筋 にそって 白 粉 を 一 度 いれる ( 手 順 5) ー 眉 の 部 分 にピンク 色 のトノコを 塗 る ( 手 順 9) 目 元 をはっきりさせるための 工 夫 ー 睫 毛 に 着 いた 白 粉 を 取 る ( 手 順 8) 眉 の 印 象 をやわらかくするための 工 夫 ー 紅 による 眉 の 下 書 きをする ( 手 順 13) ー 眉 墨 の 下 方 をぼかす ( 手 順 14) また 歌 舞 伎 役 者 のインタビューで 以 下 の 意 見 を 得 た 顔 形 状 にあわせた 化 粧 の 工 夫 凸 部 を 平 坦 に 見 せるトノコを 用 い 輪 郭 彫 りの 深 さ えら 張 りなど 自 分 の 顔 形 状 に 合 わせて 修 正 する 本 取 材 でおこなった 化 粧 では 地 色 鼻 目 眉 唇 へ 化 粧 をおこない 特 に 地 色 鼻 目 眉 にたいして 役 者 の 顔 形 状 に 合 わせた 工 夫 が 見 られた b. 調 査 2 化 粧 手 順 について 以 下 に 調 査 2 の 化 粧 手 順 を 示 す 本 調 査 では 鬢 付 石 ねり 茶 色 のドーラン 白 粉 トノコ ほお 紅 油 紅 紅 墨 アイライナー の 化 粧 料 スポンジ 筆 目 釣 り の 道 具 を 用 い 恋 飛 脚 大 和 往 来 封 印 切 の 仲 居 おふさ 役 の 化 粧 をおこなった 手 順 1. 下 地 となる 鬢 付 をよく 練 って 顔 首 背 中 に 薄 くのばす 手 順 2. 石 ねりを 火 であぶりやわらかくし 眉 毛 をつぶす この 時 目 を 強 く 閉 じ 眉 が 起 き 上 がってこないか 確 かめながらしっかりつぶす 手 順 3. 茶 のドーランを 塗 り 眉 とひげの 色 を 消 し 顔 を 平 坦 にする 手 順 4. 鼻 筋 にそって 白 粉 を 塗 る ( 図 1.2-15) 手 順 5. 眉 から 目 にかけて 紅 で 濃 淡 をつける ( 図 1.2-16) 手 順 6. 顔 の 下 半 分 だけに 白 粉 を 塗 る 乾 かないうちにすばやくスポンジでたたいて 水 分 を 取 る ( 図 1.2-17) 15
手 順 7. 茶 のトノコを 白 粉 に 混 ぜ 仲 居 らしく 落 ち 着 いた 色 にして 白 粉 を 塗 る ( 図 1.2-18) 手 順 8.ほお 紅 をいれる 手 順 9. 目 元 が 白 いと 顔 がぼやけるため 睫 毛 に 着 いた 白 粉 を 取 る 手 順 10. 頬 をふっくらさせてみせるため 口 に 脱 脂 綿 を 含 む 手 順 11. 目 釣 りをして 顔 に 張 りを 与 える ( 図 1.2-19) 手 順 12. 油 紅 で 目 張 りを 入 れる ( 図 1.2-20) 図 1.2-15. 鼻 筋 に 白 粉 を 塗 る 様 子 図 1.2-16. 紅 で 濃 淡 をつける 様 子 図 1.2-17. 顔 の 下 半 分 に 白 粉 を 塗 る 様 子 図 1.2-18. 顔 に 白 粉 を 塗 る 様 子 図 1.2-19. 目 釣 りをする 様 子 図 1.2-20. 目 張 りをいれる 様 子 16
手 順 13. 唇 を 描 く ( 図 1.2-21) 手 順 14. 紅 で 眉 を 描 く 手 順 15. 墨 で 眉 を 描 き 眉 を 仕 上 げる 手 順 16. 目 をはっきりさせるため 黒 のアイラインをいれて 完 成 ( 図 1.2-22) 図 1.2-21. 口 紅 を 塗 る 様 子 図 1.2-22. 拵 えの 完 成 化 粧 に 見 られる わざ 本 調 査 では 化 粧 に 以 下 のような 歌 舞 伎 役 者 の 工 夫 が 見 られた 鼻 筋 を 通 すための 工 夫 ー 鼻 筋 にそって 白 粉 を 一 度 いれる ( 手 順 4) 頬 をふっくらさせ 顔 に 陰 影 をつける 工 夫 ー 眉 から 目 にかけて 紅 で 濃 淡 をつける ( 手 順 5) ー ほお 紅 をいれる ( 手 順 8) ー 脱 脂 綿 を 口 に 含 む ( 手 順 10) 目 元 をはっきりさせるための 工 夫 ー 睫 毛 に 着 いた 白 粉 を 取 る ( 手 順 9) ー 黒 のアイラインをいれる ( 手 順 16) 眉 の 印 象 をやわらかくするための 工 夫 ー 紅 による 眉 の 下 書 きをする ( 手 順 14) 落 ち 着 いた 地 色 にするための 工 夫 ー 白 粉 にトノコを 混 ぜる ( 手 順 7) 本 取 材 でおこなった 化 粧 では 地 色 鼻 目 眉 唇 へ 化 粧 をおこない 特 に 地 色 鼻 目 眉 にたいして 役 者 の 顔 形 状 に 合 わせた 工 夫 が 見 られた 17
光 環 境 上 演 環 境 の 変 化 にあわせた 化 粧 の わざ 光 環 境 上 演 環 境 の 変 化 に 伴 う 化 粧 の わざ について 役 者 より 以 下 の 意 見 が 得 られた 古 代 の 暗 い 舞 台 照 明 における 手 指 による 化 粧 効 果 現 代 の 明 るい 舞 台 照 明 テレビ 撮 影 によるクローズアップの 撮 影 がもたらした 化 粧 の 詳 細 度 完 成 度 の 向 上 芝 居 小 屋 の 照 明 にあわせた 化 粧 の 地 色 の 調 整 1.2-3. 古 代 の 舞 台 照 明 に 関 する 調 査 1. 調 査 目 的 古 代 の 舞 台 照 明 の 再 現 実 験 をもとに 舞 台 照 明 の 化 粧 に 与 える 影 響 を 確 認 し 役 者 の わ ざ についての 情 報 を 得 ること 2. 調 査 方 法 調 査 日 場 所 :2005 年 11 月 香 川 県 金 比 羅 大 芝 居 調 査 対 象 : 木 造 芝 居 小 屋 の 天 窓 による 照 明 ろうそく 舞 台 における 歌 舞 伎 化 粧 の 見 え 調 査 方 法 : 文 部 科 学 省 科 学 研 究 費 補 助 金 特 定 領 域 研 究 江 戸 のモノづくり シンポジウ ム 木 造 芝 居 小 屋 の 歌 舞 伎 の 科 白 衣 装 等 に 及 ぼした 影 響 の 研 究 にておこなわれた 天 窓 ろうそくを 模 した 照 明 のもとでの 古 代 の 歌 舞 伎 舞 台 照 明 の 再 現 実 験 に 参 加 しておこなっ た 3. 調 査 結 果 シンポジウムにて 木 造 芝 居 小 屋 である 金 比 羅 大 芝 居 にて 天 窓 とちょうちん ろうそ くを 模 した 照 明 ( 図 1.2-23, 図 1.2-24) のもとで 播 洲 歌 舞 伎 によるろうそく 舞 台 の 再 現 実 験 がおこなわれた ( 図 1.2-25) 図 1.2-23. 古 代 の 照 明 を 再 現 した 芝 居 小 屋 図 1.2-24. 天 窓 とちょうちんによる 舞 台 照 明 18
図 1.2-25. ろうそく 舞 台 の 再 現 本 調 査 により 古 代 の 舞 台 照 明 における 歌 舞 伎 化 粧 の 見 え 方 について 通 常 の 舞 台 照 明 の 場 合 と 比 べて 以 下 が 観 察 できた ( 図 1.2-26, 図 1.2-27) 全 体 的 な 明 度 の 低 下 白 粉 と 紅 のコントラストの 低 下 トノコの 陰 影 効 果 墨 の 強 調 効 果 の 向 上 金 襴 の 衣 装 の 光 反 射 の 低 下 図 1.2-26. ろうそく 舞 台 再 現 における 化 粧 の 見 え 左 : 全 体 右 : 顔 部 分 拡 大 図 1.2-27. 現 代 の 舞 台 照 明 における 化 粧 左 : 全 体 右 : 顔 部 分 拡 大 19
1.2-4. 調 査 結 果 考 察 役 者 への 取 材 結 果 から 得 られた 役 者 の 化 粧 における わざ について ( 表 1.2-1)に 示 す 本 調 査 によって 得 られた 役 者 の わざ は 役 者 の 顔 形 状 に 合 わせたわざ と 舞 台 照 明 環 境 に 合 わせたわざ に 大 別 できる 役 者 の 顔 形 状 に 合 わせた わざ は 役 柄 によっ て 決 まった 化 粧 のパターンを 役 者 の 顔 形 状 に 合 わせておこなうもので 地 色 目 唇 眉 の 部 位 により 眉 の 部 分 にピンク 色 の 砥 の 粉 を 入 れる など 化 粧 料 の 色 や 形 を 変 化 させたり 脱 脂 綿 を 口 に 含 む などの 形 状 を 変 化 させる わざ が 見 られた 舞 台 照 明 環 境 に 合 わせた わざ は 照 明 があまり 明 るくなかったときは 化 粧 は 手 指 で 行 って いた など 化 粧 の 方 法 に 関 しての わざ が 得 られた また テレビ 放 送 が 行 われるよ うになり アップで 映 されるようになってから 丁 寧 に 化 粧 するようになった などの 化 粧 の 仕 上 がりが 上 演 環 境 や 照 明 環 境 に 左 右 されるという 意 見 が 得 られた 1.2 節 でおこなった 歌 舞 伎 役 者 へのインタビュー 調 査 舞 台 照 明 についての 調 査 結 果 か ら 化 粧 における 役 者 の わざ についてまとめ 歌 舞 伎 の 化 粧 の 型 に 関 して 役 と 化 粧 のパターン 顔 形 状 表 情 変 化 舞 台 照 明 化 粧 料 上 演 形 態 という3つの 視 点 から 考 察 する この 結 果 から 歌 舞 伎 化 粧 を 定 義 し その 記 録 に 必 要 な 情 報 を 決 定 する 表 1.2-1. 調 査 結 果 から 得 られた 歌 舞 伎 化 粧 における 役 者 の わざ わ ざ の 種 類 目 的 得 られた わざ 役 柄 と 顔 形 状 に 合 わせ 全 体 のつくり 最 初 は 自 分 の 顔 はどのように 化 粧 をするといいのか 先 輩 に 聞 いた り 自 分 に 似 ている 人 の 化 粧 を 真 似 をすることからはじめる 最 初 は 誰 かと 似 た 顔 になっていても 部 分 の 工 夫 を 重 ねることで 自 分 なりの 化 粧 法 を 確 立 する ほお 紅 を 入 れる 脱 脂 綿 を 口 に 含 む トノコを 用 いた 自 分 の 顔 形 状 の 修 正 た わざ 地 色 をつくる 白 粉 にトノコを 混 ぜる 鼻 筋 を 通 す 白 粉 を 塗 る 時 先 に 鼻 筋 にそっていれる 眉 の 部 分 にピンク 色 の 砥 の 粉 を 入 れる 目 をはっきりさせる 睫 毛 についた 白 粉 を 取 る 黒 のアイライナーを 入 れる 眉 の 印 象 をやわらかく 紅 による 眉 の 下 書 きをする する 照 明 環 境 に 合 わせた 化 古 代 の 暗 い 舞 台 照 明 における 手 指 による 化 粧 効 果 粧 舞 台 照 明 現 代 の 明 るい 舞 台 照 明 がもたらした 化 粧 の 詳 細 度 完 成 度 の 向 上 芝 居 小 屋 の 照 明 によって 化 粧 をかえることがある 環 境 に 合 わ 上 映 環 境 に 合 わせた 化 テレビ 撮 影 によるクローズアップの 撮 影 がもたらした 化 粧 の 詳 細 せた わざ 粧 度 完 成 度 の 向 上 芝 居 小 屋 の 照 明 にあわせた 化 粧 の 地 色 の 調 整 20
1. 役 と 化 粧 のパターン 1-2.1 節 でおこなった 歌 舞 伎 役 者 に 対 する 取 材 調 査 より 役 柄 にあった 化 粧 を 行 うこと が 歌 舞 伎 化 粧 の 最 初 の 段 階 であることがわかる 市 川 羽 左 衛 門 氏 監 修 の 文 献 化 粧 [9] に よると 役 柄 は 和 事 ( わごと ) 実 事 ( じつごと ) 荒 事 ( あらごと ) などのある 主 人 公 の 役 である 立 役 ( たちやく ) と 実 悪 ( じつあく ) 実 敵 ( じつがたき ) に 分 かれる 敵 役 ( かたきやく ) 太 夫 ( たゆう ) 姫 役 ( ひめやく ) などに 分 かれる 若 女 方 ( わかおん ながた ) 半 道 ( はんどう ) 実 道 外 ( じつどうげ ) に 分 かれる 道 外 方 ( どうげかた ) と 女 房 ( にょぼう ) 色 悪 ( いろあく ) など その 他 に 大 別 される ( 表 1.2-2) 歌 舞 伎 の 化 粧 は 地 色 目 唇 眉 の 部 位 に 大 別 され この 部 位 ごとに 役 柄 に 合 う 化 粧 のパターンが 決 められている 女 方 の 場 合 地 色 は 白 い 方 が 若 く 年 をとる ごとにトノコなどを 混 ぜてくすんだ 色 にする 目 はりは 年 をとるほど また 時 代 物 の 演 目 ほど 濃 くいれる このように 演 じる 役 の 身 分 職 業 年 齢 などに 合 わせて 化 粧 を 行 う 必 要 がある ( 表 1.2-3) 歌 舞 伎 の 化 粧 ではその 役 柄 らしく 見 える 化 粧 のパターンが 伝 えら れている 役 と 対 になっている 化 粧 のパターンは 歌 舞 伎 化 粧 の 型 において 第 一 の 要 素 としてあげられる 表 1.2-2. 役 柄 の 分 類 役 の 立 役 敵 役 若 女 方 道 外 方 その 他 種 類 ( たちやく ) ( かたきやく ) ( わかおんながた ) ( どうげかた ) 役 柄 和 事 ( わごと ) 実 悪 ( じつあく ) 武 道 ( ぶどう ) 半 道 ( はんどう ) 女 房 ( にょぼう ) 実 事 ( じつごと ) 実 敵 ( じつがたき ) 太 夫 ( たゆう ) 実 道 外 ( じつどう 娘 方 ( むすめがた ) 荒 事 ( あらごと ) 和 実 ( わじつ ) 男 達 ( おとこだて ) 所 作 ( しょさ ) 姫 役 ( ひめやく ) げ ) 芸 妓 ( げいしゃ ) 色 悪 ( いろあく ) 親 敵 ( おやがたき )... 等 21
表 1.2-3. 役 による 化 粧 の 例 ( 女 方 の 場 合 ) 化 粧 地 色 目 張 り 唇 眉 部 位 役 に よ 姫 傾 城 丸 本 物 の 娘 時 代 物 = 目 尻 に 紅 紅 が 原 則 役 柄 による 女 方 一 般 = 柳 眉 る 化 粧 役 = 生 白 粉 やや 濃 く 形 の 決 まりはない 女 の 役 は 形 によって 役 女 方 一 般 = 生 白 粉 + 砥 世 話 物 = 目 尻 に 紅 を 柄 が 決 まるものではな 粉 やや 薄 く 若 い 役 は 赤 く 年 齢 いといわれる 生 世 話 = 目 尻 に 紅 を が 高 くなると 薄 い 色 や 地 色 が 砥 粉 入 りで 首 薄 く 暗 い 色 にする 気 の 強 い 女 = 笹 の の 白 さとの 境 目 をはっ 古 典 味 を 出 し た い 葉 眉 き り さ せ る = 下 品 な 年 齢 が 上 が る に 時 強 い 役 は 黒 ずんだ 上 品 な 役 = 三 日 月 女 加 賀 鳶 のお 兼 従 って 色 を 濃 く 紅 眉 敵 役 や 強 い 役 は 黒 伊 達 傾 城 など 派 手 な 剣 のある 役 = 一 文 に 近 い 色 目 頭 にも 役 は 大 きめにする 字 眉 入 れる 重 病 人 や 死 人 忌 中 幼 い 可 憐 な 役 = 八 は 紅 を 使 わない の 字 眉 古 典 的 な 役 = 帽 子 付 の 眉 眉 を 剃 り 落 した = 青 い 眉 など 2. 顔 形 状 表 情 変 化 大 道 具 小 道 具 鬘 役 者 の 演 技 やせりふとともに 歌 舞 伎 の 化 粧 は 型 の 中 にあり 役 によってどのような 化 粧 を 行 うのかの 化 粧 のパターンが 原 則 として 定 められているこ とを 前 節 で 述 べた さらに 化 粧 をするそれぞれの 役 者 の 顔 の 特 徴 によって それをカバー し 補 って 役 にふさわしい 顔 にするという 工 夫 が 伝 えられている 役 柄 にあった 化 粧 を 行 う ということと 同 時 に 一 目 でそれが 誰 か 役 者 の 顔 が 分 かることが 重 要 である 十 二 代 目 市 川 団 十 郎 は 歌 舞 伎 の 表 現 をさぐる [10] において 隈 取 は 自 分 の 顔 と 相 談 しておこなうものであると 発 言 している 隈 を 取 る 際 には 役 者 は 自 分 自 身 の 骨 格 を 把 握 し 丸 い 顔 の 人 は 長 く 見 せるために 筋 の 位 置 をずらしたり 顔 の 長 い 人 は 丸 く 見 せる ように 横 幅 を 出 すなどして 自 分 の 顔 に 合 わせて 化 粧 を 工 夫 する 1-2.1 節 でおこなった 歌 舞 伎 役 者 に 対 するインタビューにおいても 顔 形 状 が 役 者 の わざ を 生 み 出 す 重 要 な 要 素 であることがわかる また 顔 形 状 は 役 者 の 顔 の 筋 肉 の 動 き つまり 演 技 中 の 表 情 変 化 も 含 む 隈 取 における 目 の 化 粧 は 見 得 ( 図 1.2-28) をする 時 に 隈 のなかに 目 が 埋 没 してしまわないように 墨 の 目 張 りを 強 く 入 れる 事 が 注 意 点 であるとされ 演 技 中 の 表 情 変 化 を 意 識 して 化 粧 が 施 されていることがわかる 役 柄 に 合 わせて 自 分 の 顔 形 状 の 欠 点 を 隠 すというだけでなく 役 に 合 いながらもそれが 22
誰 かわかる 自 分 だけの 表 現 をおこなうことも 歌 舞 伎 化 粧 の 大 きな 目 的 となる 役 にそぐ わない 自 分 の 顔 の 特 徴 は 隠 しながら 自 分 の 顔 だけがもつ 役 に 合 った 特 徴 を 探 求 すること が 重 要 である 顔 形 状 とその 特 徴 を 考 慮 して 化 粧 をおこなうことがその 役 者 の わざ で あり わざ が 定 着 し 伝 えられていくことで 型 へとつながる このことから 化 粧 を 施 す 役 者 の 顔 形 状 表 情 変 化 は その 役 者 のアイデンティティを 示 す 歌 舞 伎 化 粧 の 型 を 構 成 する 重 要 な 要 素 であるといえる 図 1.2-28. 見 得 をする 歌 舞 伎 役 者 3. 舞 台 照 明 化 粧 料 上 演 形 態 照 明 が 明 るくなってから 丁 寧 に 化 粧 するようになった 等 の 役 者 への 取 材 結 果 からわ かるように 時 代 の 変 化 に 伴 う 舞 台 照 明 環 境 や 上 映 形 態 の 変 化 は 歌 舞 伎 化 粧 に 大 きく 影 響 している もともとは 屋 外 でおこなわれた 歌 舞 伎 が 屋 根 のついた 屋 内 型 の 芝 居 小 屋 で 演 じられるようになり 天 窓 やろうそく 現 代 の 照 明 と 歌 舞 伎 の 舞 台 照 明 は 変 化 して いった 古 代 の 舞 台 照 明 に 関 する 調 査 では 全 体 的 な 明 度 の 低 下 や 白 粉 と 紅 のコントラストの 低 下 が 見 られた 照 明 があまり 明 るくなかったときの 手 指 による 化 粧 効 果 に 関 する 役 者 23
の 意 見 からは 明 るくない 照 明 のもとでは 細 部 には 観 客 の 目 が 行 き 届 きにくいため 道 具 を 用 いて 細 部 まできれいに 整 える 必 要 がなく また 大 胆 に 化 粧 をした 方 が 化 粧 の 効 果 を 表 現 できたことが 考 えられる 金 襴 の 衣 装 に 関 しても 光 り 方 の 低 下 が 見 られた ろうそく 舞 台 などのあまり 明 るくない 照 明 のもとでは 観 客 を 舞 台 に 引 きつけるためにはより 派 手 で 極 端 な 表 現 をする 必 要 があったと 考 えられる 現 代 でも 舞 台 照 明 によって アイライナーや 隈 の 取 りかたなど 役 者 は 化 粧 道 具 や 化 粧 のパターンを 変 えている 特 に 現 代 のような 明 るい 照 明 になり 観 客 から 役 者 の 顔 が はっきり 見 えるようになってから 化 粧 はより 繊 細 になった また 同 様 のことが 上 演 形 態 についてもいえる テレビで 記 録 されるようになり 顔 がアップで 映 ることが 増 えてから 役 者 たちは 化 粧 をより 丁 寧 におこなうようになった 照 明 光 の 変 化 は 化 粧 料 の 光 反 射 に 影 響 し 見 え 方 を 大 きく 左 右 する また 観 客 の 視 点 も 芝 居 小 屋 の 変 化 による 観 客 の 位 置 の 変 化 や テレビによるクローズアップの 撮 影 など 歌 舞 伎 の 上 演 形 態 によって 様 々に 変 化 するようになり 化 粧 の 変 化 に 影 響 を 与 えている 以 上 のことから 舞 台 照 明 や 上 演 形 態 化 粧 料 の 反 射 特 性 など 光 反 射 や 反 射 方 向 としての 視 点 位 置 に 関 わる 光 学 的 情 報 は 歌 舞 伎 化 粧 を 構 成 する 重 要 な 要 素 であるといえる 1.3. 歌 舞 伎 化 粧 の 構 成 要 素 1.2 節 でおこなった 調 査 結 果 より 歌 舞 伎 化 粧 が 役 者 それぞれの 工 夫 を 引 き 起 こす 鍵 となる 歌 舞 伎 役 者 の 顔 形 状 化 粧 方 法 や 化 粧 道 具 を 変 化 させ 見 え 方 を 変 化 させる 化 粧 道 具 材 料 化 粧 を 詳 細 にしアイライナーなどの 工 夫 を 生 み 出 した 舞 台 照 明 環 境 見 得 に 特 徴 づけられる 演 技 における 表 情 などが 原 因 となって 顔 面 に 施 す 化 粧 のパター ン を 変 化 させてきたことがわかった このため 本 研 究 では 歌 舞 伎 化 粧 を 歌 舞 伎 役 者 が 演 技 を 行 う 際 の 顔 形 状 表 情 変 化 上 演 される 舞 台 環 境 を 考 慮 し 化 粧 材 料 を 用 いて 歌 舞 伎 役 者 の 顔 面 に 表 現 されたパターン と 考 える また 本 研 究 では 歌 舞 伎 化 粧 の わざ に 関 わる 情 報 すなわち 型 を 構 成 する 要 素 ととして 取 材 内 容 を 検 討 し データ 化 とその 再 現 として 実 現 性 を 考 慮 した 以 下 の5つをあ げ 以 後 これら5つの 情 報 を 歌 舞 伎 化 粧 の 構 成 要 素 と 定 める ( 図 1.3) 本 研 究 では これらの 構 成 要 素 のデータ 化 をおこなうことで 歌 舞 伎 化 粧 を 記 録 する 歌 舞 伎 役 者 の 顔 形 状 化 粧 道 具 材 料 舞 台 照 明 環 境 演 技 における 表 情 化 粧 のパターン 24
図 1.3. 歌 舞 伎 化 粧 の 構 成 要 素 1.4. まとめ 本 章 では 歌 舞 伎 の 伝 承 に 用 いられる 形 式 的 な 要 素 と 形 のない わざ からなる 型 の 構 造 を 明 らかにし 役 者 ごとの 型 を 比 較 することによって 積 み 重 なる わざ の 抽 出 ができることを 示 した また 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 に 関 する 調 査 結 果 から 化 粧 の わざ に 関 わる 情 報 を 明 らかにし 歌 舞 伎 化 粧 の 型 を 構 成 する 要 素 として 歌 舞 伎 役 者 の 顔 形 状 化 粧 道 具 材 料 舞 台 照 明 環 境 演 技 における 表 情 化 粧 のパターン の5つを 抽 出 した 型 を 用 いて わざ を 喚 起 し 伝 えていく 歌 舞 伎 の 伝 承 は わざ という 形 のない ものを 伝 える 日 本 独 自 の 手 法 である 歌 舞 伎 化 粧 の 記 録 手 法 を 模 索 するにあたり 型 を 参 考 にすることで 記 録 が 困 難 な わざ を 記 録 する 可 能 性 を 示 すことができた 調 査 をおこない 5つの 歌 舞 伎 化 粧 の 型 を 構 成 する 要 素 をあげたが この 限 りではない 可 能 性 もある 例 えば ステージにおける 役 者 の 体 温 や 発 汗 などの 生 理 的 な 情 報 を 型 に 含 めることによる 演 技 前 と 演 技 後 の 化 粧 の 記 録 における 変 化 は 演 技 中 の 役 者 の わざ を 示 す 歌 舞 伎 化 粧 の 伝 承 のためにどのような 情 報 を 記 録 していくかということについて は 更 なる 調 査 研 究 が 必 要 である 25