はじめに エジプトでは,1970 年 代 半 ばから 海 外 直 接 投 資 の 受 入 および 国 内 民 間 投 資 が 奨 励 さ れるようになった しかしながら, 公 的 部 門 中 心 の 経 済 構 造 のなか, 期 待 されたような 成 果 を 得 ることはできなかった 経 済 政 策



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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 161,7 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 135,600 円 185,800 円 222,900 円 261,900 円

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 ( 単 位 : 円 ) 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 413,

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

(2) 職 員 の 初 任 給 の 状 況 ( 平 成 17 年 4 月 1 日 現 在 ) 初 任 給 2 年 後 の 給 料 初 任 給 2 年 後 の 給 料 一 般 行 政 職 技 能 労 務 職 大 学 卒 171,1 151,5 19,2 164,7 17,7 184,4 中 学 卒 1

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4. その 他 (1) 期 中 における 重 要 な 子 会 社 の 異 動 ( 連 結 範 囲 の 変 更 を 伴 う 特 定 子 会 社 の 異 動 ) 無 (2) 簡 便 な 会 計 処 理 及 び 四 半 期 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 に 特 有 の 会 計 処 理 の 適 用 有

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Transcription:

土 屋 一 樹 編 中 東 企 業 の 国 際 事 業 展 開 調 査 研 究 報 告 書 アジア 経 済 研 究 所 2011 年 3 月 第 5 章 エジプトにおける 海 外 直 接 投 資 と 企 業 の 海 外 進 出 土 屋 一 樹 要 約 : 本 稿 では,1990 年 代 以 降 のエジプト 民 間 部 門 の 発 展 状 況 について, 直 接 投 資 の 動 向 と 主 要 現 地 民 間 企 業 の 特 徴 という 2 つの 視 点 から 検 討 する エジプトでは 1990 年 代 に 資 本 市 場 の 整 備, 国 有 企 業 の 民 営 化, 投 資 制 度 の 改 定 などによって 民 間 部 門 へ の 投 資 環 境 が 改 善 された さらに,2000 年 代 の 国 際 原 油 価 格 の 高 騰 などに 伴 う 地 域 経 済 環 境 の 好 転 によって, 対 内 直 接 投 資 が 急 増 した 対 外 直 接 投 資 も 同 様 で,その 規 模 は 異 なるものの,2000 年 代 後 半 以 降 に 急 拡 大 した 1990 年 代 初 めに 株 式 市 場 が 整 備 された 結 果,エジプトの 上 場 企 業 は 一 時 1,000 社 を 超 えた その 後 上 場 基 準 の 厳 格 化 によって 上 場 企 業 数 は 約 300 社 となったが, 株 価 指 数 は 2000 年 代 半 ば 以 降 に 急 上 昇 するなど,エジプト 企 業 への 投 資 が 活 発 化 して いる エジプト 最 大 の 民 間 企 業 は,1997 年 設 立 の 携 帯 電 話 通 信 事 業 会 社 オラスコム テレコムである 同 社 は, 開 発 途 上 国 の 典 型 的 な 多 国 籍 企 業 と 同 様, 先 進 国 の 多 国 籍 企 業 の 経 験 と 比 べ 早 期 に 海 外 進 出 を 開 始 し,2009 年 までに 10 か 国 で 携 帯 電 話 事 業 を 展 開 している その 一 方 で,オラスコム テレコムは, 現 在 新 たな 発 展 の 方 向 性 を 模 索 している キーワード: エジプト 直 接 投 資 上 場 企 業 海 外 進 出 携 帯 電 話 通 信 事 業 オラスコム テレコム 70

はじめに エジプトでは,1970 年 代 半 ばから 海 外 直 接 投 資 の 受 入 および 国 内 民 間 投 資 が 奨 励 さ れるようになった しかしながら, 公 的 部 門 中 心 の 経 済 構 造 のなか, 期 待 されたような 成 果 を 得 ることはできなかった 経 済 政 策 が 大 きく 転 換 したのは 1990 年 代 である 1991 年 に 始 まった 経 済 改 革 によって, 市 場 経 済 メカニズムに 基 づく 経 済 成 長 が 指 向 されるよ うになった それまでの 国 有 企 業 を 始 めとする 公 的 部 門 中 心 の 経 済 構 造 を 転 換 させ, 民 間 部 門 主 導 による 経 済 成 長 が 目 指 されたのである( 土 屋 [2011]) さらに,2000 年 代 半 ばには 一 層 の 経 済 制 度 改 革 が 進 展 し, 今 日 までに 民 間 企 業 の 事 業 環 境 は 大 きく 改 善 され た 経 済 改 革 の 結 果,エジプトの 民 間 企 業 は 成 長 の 機 会 を 得 た 資 本 市 場 の 整 備, 国 有 企 業 の 民 営 化, 投 資 制 度 の 改 定 などによって, 民 間 企 業 を 取 り 巻 く 経 済 環 境 は 改 善 し,1990 年 代 半 ば 以 降 に 民 間 企 業 の 台 頭 が 顕 著 となったのである さらに, 後 述 のように,2000 年 代 後 半 以 降 には 対 外 直 接 投 資 が 拡 大 した UNCTAD [2006]によれば, 開 発 途 上 国 企 業 による 海 外 進 出 は 1990 年 代 以 降 に 増 加 し た その 特 徴 は,サービス 産 業 が 多 く,また 先 進 国 企 業 の 経 験 と 比 較 して 早 期 に 海 外 進 出 を 行 う 点 である さらに,M&A が 主 要 な 進 出 手 段 に 一 つであることも 指 摘 されてい る これら 特 徴 は,エジプト 企 業 にも 当 てはまる エジプト 企 業 の 海 外 進 出 が 活 発 化 し たのは 2000 年 代 後 半 以 降 であるが, 代 表 的 な 海 外 進 出 企 業 は 本 稿 で 取 り 上 げる 携 帯 電 話 通 信 事 業 などサービス 産 業 の 企 業 であった 今 日 までに 海 外 に 進 出 したエジプト 企 業 ( 多 国 籍 化 したエジプト 企 業 )は 少 数 であるが, 今 後 エジプト 市 場 が 一 層 競 争 的 になる ことが 予 想 されるなか, 国 内 市 場 で 競 争 優 位 を 獲 得 した 企 業 のなかには 海 外 に 進 出 する 企 業 も 現 れるだろう 従 って,すでに 海 外 に 進 出 しているエジプト 企 業 は, 先 行 ケース として,エジプト 企 業 の 発 展 を 考 察 するうえでの 参 考 事 例 であると 言 えるだろう そこで, 本 稿 では,エジプト 企 業 の 発 展 とその 競 争 優 位 を 解 明 する 第 一 歩 として,エ ジプトの 投 資 環 境, 海 外 直 接 投 資 の 動 向, 主 要 上 場 企 業 の 概 要,そしてエジプト 最 大 の 民 間 企 業 であるオラスコム テレコム(Orascom Telecom Holding)の 海 外 事 業 展 開 につ いて 考 察 する その 目 的 は,エジプトの 投 資 制 度 と 投 資 実 施 動 向,および 主 要 現 地 民 間 企 業 の 概 要 を 整 理 することで,エジプト 企 業 を 取 り 巻 く 事 業 環 境 と 民 間 大 企 業 の 発 展 動 向 について 理 解 を 深 めることである 以 下, 第 1 節 では,エジプトの 投 資 制 度 と 直 接 投 資 の 動 向 を 整 理 する 第 2 節 では, 主 要 民 間 企 業 について, 上 場 企 業 ランキングからその 特 徴 を 明 らかにする そして 第 3 節 において,エジプト 企 業 の 海 外 進 出 動 向 を 要 約 するとともに, 事 例 としてオラスコ ム テレコムを 取 り 上 げ,その 海 外 展 開 の 特 徴 を 明 らかにする 71

第 1 節 エジプトと 海 外 直 接 投 資 1. エジプトの 投 資 制 度 現 在 のエジプト 投 資 制 度 は,1997 年 に 制 定 された Law 8 of 1997( 投 資 保 護 優 遇 法 ) を 基 本 とし,それに 投 資 特 区 を 対 象 とするいくつかの 法 制 度 が 並 存 している 企 業 は, どの 法 律 に 基 づいて 設 立 されたかで, 優 遇 措 置, 納 税 義 務 などが 異 なる 以 下, 主 要 な 投 資 制 度 ( 法 律 )について,その 概 要 を 示 す なお, 各 投 資 制 度 で 規 定 されていない 事 項 については,Law 159 of 1981( 会 社 法 )の 規 定 に 従 う (1) Law 8 of 1997( 投 資 保 護 優 遇 法 ) エジプト 国 内 への 投 資 はLaw 230 of 1989 を 改 正 したLaw 8 of 1997( 以 下, 投 資 保 護 優 遇 法 )で 規 定 されている 投 資 保 護 優 遇 法 が 対 象 とするのは 製 造 業 や 流 通 業 など 計 25 分 野 であり,それらの 分 野 への 投 資 について, 投 資 家 保 護, 投 資 インセンティブ, 優 遇 税 率 などを 規 定 している 1 主 な 投 資 家 保 護 として, 財 産 の 没 収 ないし 国 有 化 から の 保 護, 価 格 決 定 および 利 益 の 海 外 送 金 の 自 由, 外 国 資 本 100%による 企 業 設 立 の 許 可, 外 資 企 業 の 土 地 所 有 権 利 などが 規 定 されている 2 また 投 資 インセンティブでは, 労 働 法 の 一 部 条 項 の 遵 守 免 除,1 年 未 満 滞 在 の 外 国 人 の 所 得 税 免 除, 外 国 通 貨 口 座 の 開 設 な どがあり, 税 率 の 優 遇 では, 輸 入 機 材 の 関 税 率 を 一 律 5%とすることや 3 年 間 の 印 紙 税 免 除 などが 定 められている (2) Law 19 of 2007( 投 資 区 法 ) 投 資 区 法 は, 産 業 クラスターの 形 成 を 目 的 とした 投 資 区 (investment zones)の 設 立 に 関 する 法 律 である 投 資 区 法 によって 設 立 された 投 資 区 の 最 大 の 特 徴 は 行 政 手 続 きの 簡 素 化 であり, 各 投 資 区 の 運 営 主 体 となる 理 事 会 (Board of Directors)が 入 居 企 業 の 事 業 活 動 に 必 要 な 許 認 可 の 申 請 先 となる つまり 投 資 区 に 入 居 した 企 業 は, 各 種 許 認 可 の 申 請 を 当 該 投 資 区 の 理 事 会 に 対 して 行 えばよい また, 投 資 家 保 護 に 関 しては, 投 資 保 護 優 遇 法 が 適 用 される しかしながら, 税 制 面 での 優 遇 措 置 は, 印 紙 税 の 免 除 などはある ものの, 所 得 税 などでの 優 遇 措 置 は 規 定 されていない 投 資 区 の 開 発 主 体 は 民 間 部 門 ( 民 間 開 発 業 者 )であり, 敷 地 内 のインフラ 建 設, 企 業 1 投 資 法 の 対 象 となる 25 分 野 とは, 農 地 開 墾, 畜 産, 製 造, 観 光, 流 通, 航 空 輸 送, 海 上 輸 送, 鉱 業, 住 宅 建 設,インフラ, 医 療 施 設,リース, 証 券 引 き 受 け,ベンチャーキャピタル,ソフトウェア, 社 会 開 発 基 金 プロジェクト, 新 都 市 開 発,データベース 構 築, 技 術 クラスター 地 区 開 発, 信 用 情 報 機 関, 一 部 金 融 業 務, 河 川 輸 送, 公 共 事 業 プロジェクト, 廃 棄 物 処 理, 運 輸 である 2 シナイ 半 島 については,エジプト 人 が 51% 以 上 の 所 有 権 を 持 つ 企 業 のみ 土 地 所 有 が 可 能 となっている また 外 資 企 業 による 農 業 地 所 有 は, 砂 漠 開 墾 地 のみとなっている 72

誘 致, 運 営 は 開 発 業 者 が 行 う 一 方, 運 営 主 体 となる 理 事 会 のメンバーは, 投 資 庁, 財 務 省, 開 発 業 者, 入 居 企 業 などから 構 成 される 2010 年 10 月 末 時 点 において,カイロ 圏 を 中 心 に, 建 築 資 材, 繊 維 産 業, 高 等 教 育 などの 部 門 を 対 象 とした 計 13 の 投 資 区 が 設 立 されている( 表 1) 表 1: 投 資 区 の 概 要 (2010 年 10 月 末 時 点 ) 開 発 主 体 誘 致 産 業 設 立 県 CPC Egypt for Industrial Development 建 築 資 材 10 月 6 日 県 Polaris International Industrial Park 繊 維 10 月 6 日 県 The Industiral Development Group 自 動 車 部 品 10 月 6 日 県 Pyramids Industrial Parks 工 学 技 術 シャルキーヤ 県 Misr investment compounds for industrial cities and mortgage development 繊 維, 既 製 服 シャルキーヤ 県 Meet Ghamr 中 小 企 業 ダカフリーヤ 県 Al-Saf 中 小 企 業 ヘルワン 県 Mubarak City for Scientific Research and Technology Applications ナノテク,バイオ アレクサンドリア 県 Cairo University 高 等 教 育, 科 学 研 究 10 月 6 日 県 Ain Shams University 高 等 教 育, 科 学 研 究 カリュビーヤ 県 Fayyoum University 高 等 教 育, 科 学 研 究 ファイユーム 県 Ministry of Communications Investment Zone (Maadi) 情 報 技 術 カイロ 県 Cairo Airport Investment Zone 商 業 サービス カイロ 県 ( 出 所 ) 投 資 省 HP(www.investmen.gov.eg), 投 資 庁 HP(www.gafinet.org)から 著 者 作 成 (3) Law 83 of 2002( 経 済 特 区 法 ) 経 済 特 区 法 は 輸 出 促 進 を 主 な 目 的 として 2002 年 に 制 定 されたものである 経 済 特 区 に 入 居 した 企 業 は, 投 資 区 と 同 様 の 簡 素 化 した 行 政 手 続 き,および 税 制 面 などでの 優 遇 措 置 が 受 けられる 経 済 特 区 およびその 運 営 機 関 は 大 統 領 令 によって 設 立 され, 運 営 主 体 となる 理 事 会 は 許 認 可 申 請 の 一 括 受 付,および 生 産 品 の 原 産 地 証 明 書 を 発 行 する 73

経 済 特 区 での 優 遇 措 置 として, 投 資 保 護 優 遇 法 と 同 様 の 投 資 家 保 護, 事 業 に 必 要 な 機 器 の 輸 入 関 税 免 除, 柔 軟 な 雇 用 契 約, 所 得 税 率 の 減 免 (10%), 賃 金 への 課 税 減 免 (5%), 売 上 税 の 免 除 などがある 同 法 に 基 づく 最 初 の 経 済 特 区 はスエズ 湾 北 西 部 に 設 立 され, 近 接 するアインソフナ 港 を 利 用 しての 輸 出 入 が 可 能 となっている (4) フリーゾーン(Law 8 of 1997) フリーゾーンは, 門 戸 開 放 政 策 の 一 つとして,1974 年 に 制 定 された Law 43 of 1974 によって 設 置 され,その 後 の 法 改 正 によって 現 在 は 投 資 保 護 優 遇 法 によって 規 定 され ている フリーゾーン 設 置 の 主 な 目 的 は 海 外 直 接 投 資 の 受 入 と 輸 出 の 拡 大 であり,フリ ーゾーンへの 進 出 条 件 は 生 産 財 の 50% 以 上 の 輸 出 である 従 って,フリーゾーン 内 で の 事 業 活 動 は 主 に 製 造 業 が 想 定 されているが, 根 拠 法 である 投 資 保 護 優 遇 法 の 適 用 産 業 であれば, 条 件 を 満 たす 限 り 進 出 可 能 である フリーゾーン 内 はエジプトの 領 内 であ るが, 経 済 活 動 に 関 してはオフショア 扱 いとなり, 全 ての 税 の 適 用 除 外, 労 働 規 定 の 一 部 免 除 などの 優 遇 措 置 が 受 けられる フリーゾーンに 対 する 優 遇 措 置 は, 投 資 区 法 およ び 経 済 特 区 法 と 比 べて 有 利 なものであるが,それは 原 則 輸 出 向 け 生 産 基 地 として 想 定 さ れているからであろう フリーゾーンは, 公 設 フリーゾーンと 私 設 フリーゾーンに 分 類 される 公 設 フリーゾ ーンは, 現 在 までにカイロ,アレクサンドリア,スエズ,ポートサイードなど 11 カ 所 に 設 置 されており,2009 年 6 月 末 時 点 で 計 1661 事 業 が 登 録 されていた 一 方, 私 設 フ リーゾーンは 事 業 単 位 で 許 可 され, 認 定 プロジェクトに 関 して 公 設 フリーゾーン 内 での 事 業 と 同 等 の 優 遇 措 置 が 受 けられる 2. 直 接 投 資 の 推 移 (1) 対 内 直 接 投 資 :1990 年 代 以 降 の 推 移 図 1 は 1990 年 代 以 降 の 対 内 直 接 投 資 額 ( 純 流 入 額 )を 示 したものである その 動 向 をみると,1990 年 代 から 2000 年 代 前 半 にかけては 年 10 億 ドル 前 後 で 推 移 していたが, 2004/2005 年 度 以 降 に 急 増 し 2007/2008 年 度 には 90 億 ドル( 石 油 部 門 を 除 く)を 記 録 し た その 直 後 の 2008 年 後 半 に 発 生 した 世 界 的 な 金 融 経 済 危 機 の 影 響 によって 直 接 投 資 流 入 額 は 減 少 したものの,それ 以 降 の 2 年 間 においても 32 億 ドルが 流 入 しており, 1990 年 代 の 平 均 と 比 較 すると 高 水 準 となっている 74

(US$mn) 10,000 9,000 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 図 1 対 内 直 接 投 資 の 推 移 (1990/1991~2009/2010) 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 石 油 部 門 への 投 資 を 除 く ( 出 所 ) Central Bank of Egypt (www.cbe.org.eg), Ministry of Investment (www.investment.gov.eg) 2000 年 代 後 半 以 降 の 対 内 直 接 投 資 急 増 要 因 として, 経 済 改 革 の 進 展 と 中 東 湾 岸 産 油 国 からの 投 資 拡 大 が 挙 げられる 経 済 改 革 の 進 展 とは,ナズィーフ 内 閣 (2004.7~2011.1) による 一 連 の 経 済 制 度 改 革 とビジネス 環 境 の 改 善 である なかでもビジネス 環 境 の 改 善 では, 世 界 銀 行 の Doing Business Report 2008 においてエジプトは 2006/2007 年 に 世 界 で 最 も 改 革 を 実 施 した 国 と 評 価 されるなど, 積 極 的 な 経 済 制 度 改 革 が 進 展 した(World Bank [2007]) その 結 果,エジプトは 投 資 対 象 国 として 注 目 されるようになり, 対 内 直 接 投 資 額 が 増 加 した もう 一 つの 対 内 直 接 投 資 増 加 要 因 は 中 東 湾 岸 産 油 国 の 企 業 (その 多 くは 政 府 系 企 業 である)によるエジプトへの 投 資 拡 大 である 湾 岸 産 油 国 の 企 業 は, 2000 年 代 半 ば 以 降, 原 油 価 格 高 騰 で 蓄 積 した 莫 大 なオイルマネーを 海 外 投 資 に 向 けた エジプトにおいても, 不 動 産 開 発 や 産 業 部 門 など 多 くの 分 野 への 進 出 がみられた 表 2 は 2000 年 代 の 国 別 直 接 投 資 流 入 規 模 を 示 したものである 2000 年 代 を 通 して 最 も 規 模 が 大 きいのは 欧 米 諸 国,なかでもアメリカとイギリスからの 直 接 投 資 であるが,2000 年 代 後 半 はアラブ 首 長 国 連 邦,サウジアラビア,クウェートなど 湾 岸 産 油 国 からの 直 接 投 資 の 割 合 が 増 加 していることが 分 かる 75

表 2 直 接 投 資 の 流 入 割 合 ( 国 別 ) 2001/02 2002/03 2003/04 2004/05 2005/06 2006/07 2007/08 2008/09 2009/10 欧 米 諸 国 アメリカ 29.9 31.1 52.7 49.3 50.1 35.8 36.2 27.4 12.9 ドイツ 3.3 3.0 2.5 1.0 1.2 0.7 1.4 0.8 1.0 フランス 39.1 6.9 0.1 8.2 6.2 0.3 7.3 2.0 2.6 イギリス 2.3 3.1 3.9 1.2 19.0 16.9 18.2 25.2 44.7 オランダ 0.0 32.4 0.5 5.3 0.1 0.3 0.3 1.0 1.2 ベルギー 0.0 0.0 1.0 0.0 0.0 0.1 1.8 12.0 8.4 アラブ 諸 国 サウジアラビア 0.2 0.4 0.9 0.8 1.1 1.6 2.1 4.0 2.9 UAE 0.0 0.0 0.8 1.0 0.7 23.3 4.1 8.1 2.8 チュニジア 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 クウェート 0.5 1.0 4.0 0.4 0.8 0.2 9.0 0.9 1.7 カタル 0.0 0.0 0.3 0.0 0.1 0.0 1.0 0.4 0.6 リビア 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.2 0.8 0.0 3.1 ヨルダン 0.0 0.2 0.2 0.0 0.1 0.0 0.2 1.3 0.7 バハレーン 0.0 0.1 3.2 0.7 0.7 0.1 0.2 0.2 0.6 レバノン 0.0 0.0 3.4 0.5 2.6 0.1 0.7 0.5 0.1 オマーン 0.0 0.0 22.1 1.7 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1 アジア 諸 国 日 本 0.0 0.2 1.1 1.5 0.0 0.0 0.1 0.3 0.1 中 国 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.1 0.5 0.2 韓 国 0.0 0.0 0.0 0.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 2009/2010 年 度 は 暫 定 値 粗 流 入 額 の 割 合 (2004/2005 年 度 以 前 は 石 油 部 門 を 除 く) ( 出 所 ) CBE Monthly statistical Bulletin (various years) エジプトの 長 期 的 な 対 内 直 接 投 資 の 動 向 を, 国 連 貿 易 開 発 会 議 (UNCTAD)が 1991 年 から 毎 年 発 行 する 世 界 投 資 報 告 書 (World Investment Report) から 読 み 取 ると,1980 年 代 のエジプトは 開 発 途 上 国 のなかでは 主 要 な 直 接 投 資 受 入 国 であったことが 分 かる 1991 年 の 世 界 投 資 報 告 書 によれば,1980~1989 年 における 途 上 国 への 直 接 投 資 は 年 平 均 160 億 ドルであり,そのうち 約 6%がエジプトへの 直 接 投 資 で, 開 発 途 上 国 のなかで 7 番 目 の 流 入 規 模 であった(UNCTAD[1991:10]) しかしながら,1990 年 代 になるとエ ジプトの 地 位 は 低 下 し, 開 発 途 上 国 への 直 接 投 資 に 占 める 割 合 は 1% 未 満 となった (UNCTAD[2002:303]) 1990 年 代 は 開 発 途 上 国 への 直 接 投 資 が 大 幅 に 増 加 した 時 期 で あったが,エジプトへの 直 接 投 資 は 前 述 のように 横 ばいであったためである その 一 方 で, 二 国 間 投 資 条 約 (Bilateral Investment Treaty)については,エジプトは 世 界 でも 有 数 の 締 結 数 となっており,2004 年 末 時 点 で 約 90 か 国 と 投 資 条 約 を 締 結 し, 世 界 で 6 番 目 の 多 さ, 開 発 途 上 国 のなかでは 中 国 に 次 ぐ 締 結 数 であった(UNCTAD[2005:28]) また,2000 年 代 半 ばの 石 油 価 格 高 騰 は,エジプトの 石 油 部 門 への 投 資 額 を 増 加 させ 76

た 表 3 は 2004/05 年 以 降 の 石 油 部 門 への 直 接 投 資 額 を 示 したものである エジプトは 2003 年 に 天 然 ガスの 輸 出 を 開 始 したが,その 前 後 から 輸 出 港 の 整 備 やガス 田 の 開 発 な ど 大 規 模 な 石 油 関 連 プロジェクトが 実 施 された その 結 果,2000 年 代 後 半 には 石 油 部 門 への 直 接 投 資 額 は 18 億 ~53 億 ドルとなり, 直 接 投 資 全 体 の 30~66%を 占 めている 直 接 投 資 全 体 が 急 増 した 2005/06~2007/08 年 には 石 油 部 門 への 直 接 投 資 割 合 は 縮 小 し ているものの,1990 年 代 に 比 べると 多 額 の 直 接 投 資 が 流 入 していることが 分 かる 表 3 石 油 部 門 への 直 接 投 資 流 入 2004/05 2005/06 2006/07 2007/08 2008/09 2009/10 純 流 入 額 (US$million) 2,540 1,832 3,015 4,136 5,357 3,589 シェア (% of net FDI) 65.1 30.0 27.3 31.2 66.0 53.1 ( 出 所 ) 表 2に 同 じ (2) 対 外 直 接 投 資 :1990 年 代 以 降 の 推 移 図 2 は 1990 年 代 以 降 の 対 外 直 接 投 資 額 の 推 移 を 示 したものである その 動 向 は, 規 模 は 異 なるものの 対 内 直 接 投 資 の 推 移 と 同 様 であり, 低 水 準 の 1990 年 代 と 2000 年 代 後 半 の 急 増 という 特 徴 がみられる 特 に 2007/2008 年 度 以 降 は 10 億 ドルを 超 える 対 外 直 接 投 資 が 行 われており,1990 年 代 の 10 倍 以 上 の 水 準 となっている 2000 年 代 後 半 の 急 増 は, 後 述 のように, 通 信 分 野 における M&A など 大 規 模 な 海 外 投 資 が 行 われたためで ある つまり, 少 数 の 大 規 模 企 業 が 2000 年 代 半 ば 以 降 に 海 外 進 出 を 活 発 化 させつつあ ると 考 えられる (US$mn) 1600 図 2 対 外 直 接 投 資 の 推 移 (1990/1991~2009/2010) 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 ( 出 所 )Central Bank of Egypt (www.cbe.org.eg) 77

第 2 節 エジプトの 上 場 企 業 1. エジプトの 株 式 市 場 現 在 のエジプト 証 券 取 引 所 (カイロ&アレクサンドリア 証 券 取 引 所 から 改 称 )は,1883 年 にアレクサンドリア,1907 年 にカイロでそれぞれ 設 立 された 株 式 市 場 が 統 合 したも ので,1940 年 代 には 世 界 の 証 券 取 引 所 で 5 指 に 入 る 規 模 であった しかしながら,1960 年 代 初 めの 一 連 の 国 有 化 法 (Law 117, 118, 119)によって,1960 年 代 半 ばまでに 大 企 業 を 始 めとする 多 くの 企 業 が 国 有 化 され 結 果, 株 式 市 場 の 役 割 は 限 定 的 なものとなった (Cairo & Alexandria Stock Exchange [2006]) その 後,1974 年 に 門 戸 開 放 政 策 によ って 民 間 部 門 の 経 済 活 動 が 奨 励 されるようになったものの,1980 年 代 までの 主 要 経 済 主 体 は 公 的 部 門 であり, 大 企 業 のほとんどは 国 有 企 業 であった この 時 期,エジプトの 株 式 市 場 に 上 場 していた 企 業 は 10 社 以 下 であった 株 式 市 場 が 再 び 活 性 化 するのは, 民 間 部 門 主 導 の 経 済 成 長 が 指 向 されるようになった 1990 年 代 のことである 1992 年 に 株 式 市 場 の 法 制 度 整 備 が 図 られ( 資 本 市 場 法 Law 95 of 1992 の 制 定 ), 同 年 に 計 656 社 が 上 場 した(Cairo & Alexandria Stock Exchange [2006]) さらに,1990 年 代 後 半 には 民 営 化 手 段 の 一 つとして 国 有 企 業 の 株 式 上 場 も 実 施 される など,1990 年 代 以 降 に 株 式 市 場 への 関 心 が 高 まった その 結 果,2000 年 6 月 末 時 点 で の 上 場 企 業 数 は 1,036 社, 市 場 株 価 総 額 1,197 億 LEとなった(Central Bank of Egypt [2003]) 3 その 後, 上 場 企 業 数 は,2002 年 以 降 の 一 連 の 上 場 規 則 の 変 更 ( 厳 密 化 )によって 2002 年 の 1,136 社 をピークに 減 少 傾 向 となり,2009 年 6 月 末 時 点 では 333 社 となった しか しながら, 市 場 株 価 総 額 は 2009 年 6 月 末 時 点 において, 世 界 的 な 金 融 危 機 の 影 響 など によって 前 年 比 43% 減 少 したものの,4,636 億 LEであり, 上 場 企 業 の 企 業 規 模 は 2000 年 代 初 めと 比 較 して 拡 大 していると 言 えるだろう 図 3 は,1998 年 以 降 の 株 式 指 数 (EGX30: 代 表 的 な 30 銘 柄 で 構 成 される 指 数 )を 示 したものである 株 価 指 数 は 2003 年 頃 まで 横 ばいであったが,それ 以 降 に 上 昇 傾 向 と なり 2008 年 5 月 にピークを 記 録 している その 後, 国 際 原 油 価 格 の 下 落 や 世 界 的 な 金 融 危 機 などの 影 響 を 受 け 株 価 指 数 は 急 落 したが,2009 年 半 ば 以 降 に 反 転 した 4 エジプ トの 経 済 成 長 率 は 2004 年 ~2008 年 前 半 にかけて 高 成 長 を 記 録 したが, 株 価 指 数 もそれ と 同 様 の 推 移 であった 3 上 場 企 業 は, 株 主 数 150 人 以 上, 全 株 式 の 30% 以 上 公 開 という 条 件 を 満 たす official schedule に 載 る 企 業 と,その 条 件 を 満 たしていない unofficial schedule と 記 載 される 企 業 に 分 類 される 2000 年 6 月 末 時 点 では,official 企 業 は 141 社,unofficial 企 業 は 895 社 であり, 上 場 企 業 の 大 部 分 が unofficial schedule に 分 類 されていた(Central Bank of Egypt [2003]) 4 本 稿 執 筆 時 点 (2011 年 2 月 )では,2011 年 1 月 25 日 の 大 規 模 デモから 始 まった 革 命 のため, 株 式 市 場 は 閉 鎖 されている 株 式 市 場 での 取 引 は, 直 近 では 2011 年 1 月 27 日 まで 行 われていたが,1 月 26, 27 日 の 2 日 間 で 株 価 指 数 は 約 17% 下 落 した 78

2. 主 要 上 場 企 業 図 4 は,2009 年 の 収 入 でみた 上 場 上 位 100 社 の 業 種 別 内 訳 を 示 したものである 建 設 建 設 資 材 と 銀 行 が 各 16 社 と 最 も 多 く,それに 次 いで 旅 行 レジャー(10 社 ), 不 動 産 (9 社 )となっており, 全 体 の 半 数 以 上 がサービス 産 業 である その 一 方 で, 食 品 加 工 (7 社 ), 繊 維 (6 社 ), 金 属 (5 社 ), 医 薬 品 (5 社 ), 石 油 化 学 (5 社 ), 石 油 (4 社 ) と, 大 企 業 が 多 くの 業 種 に 分 散 していることも 指 摘 できる 大 企 業 であっても 国 有 企 業 や 非 上 場 企 業 はこの 中 に 含 まれていないことに 注 意 する 必 要 はあるが,エジプトの 大 企 業 はサービス 産 業 を 中 心 にしつつ, 多 様 な 業 種 に 分 布 していると 言 えそうである 図 4 上 場 上 位 100 社 の 業 種 別 内 訳 石 油 化 学 5 消 費 財 3 石 油 4 その 他 9 建 設 建 設 資 材 16 金 融 サービス 5 銀 行 16 医 薬 品 5 金 属 5 繊 維 6 食 品 加 工 7 旅 行 レジャー 10 不 動 産 9 ( 出 所 )Business Today Egypt (2010.7) 79

収 入 でみた 上 場 上 位 25 社 を 示 したのが 表 4 である エジプト 最 大 の 上 場 企 業 はオラ スコム テレコムで,2009 年 の 収 入 額 は 282 億 (エジプト ポンド, 以 下 LE)であっ た また, 第 2 位 はオラスコム 建 設 (Orascom Construction Industries)の 209 億 LE であ り,オラスコム グループの 2 社 のみが 200 億 LE 以 上 の 収 入 を 記 録 している 上 場 企 業 の 収 入 は, 上 位 2 社 (2008 年 はエッズ 鉄 鋼 を 加 えた 3 社 )が 突 出 しており,それに 5 ~6 社 が 同 程 度 の 収 入 規 模 で 次 ぎ,それ 以 下 とは 大 きな 差 がある 表 4 上 場 上 位 25 社 Rank 収 入 (LE millions) 社 名 上 場 年 業 種 2009 2009 2008 1 Orascom Telecom Holdings (OT) 1999 28,262 29,153 無 線 通 信 2 Orascom Construction Industries (OCI) 1998 20,955 20,397 建 設, 建 設 資 材 3 Ezz Steel Rebars (Ezz Steel) 1999 12,589 21,843 鉄 鋼 4 Egyptian Company for Mobile Services (MobiNil) 1998 10,807 10,015 無 線 通 信 5 Telecom Egypt 2005 9,960 10,117 通 信 6 El-Sewedy Cables 2006 9,291 11,446 建 設, 建 設 資 材 7 El-Ezz Dekheila Steel Company - Alexandria 1995 9,027 11,769 鉄 鋼 8 Suez Cement 1995 6,380 5,542 建 設, 建 設 資 材 9 TMG Holding 2007 4,822 5,852 不 動 産 10 GB Auto 2007 4,258 5,192 自 動 車 製 造 販 売 11 Commercial International Bank (CIB) 1995 4,033 3,765 銀 行 12 Eastern Tobacco Company 1995 3,967 3,819 タバコ 13 Oriental Weavers Carpet Company 1997 3,551 3,442 繊 維 (カーペット) 14 National Societe General Bank (NSGB) 1996 3,390 3,196 銀 行 15 Egypt Aluminum (Misr Aluminum) 1998 3,211 4,472 鉄 鋼 16 Orascom Development Holding (AG) 2008 3,007 2,915 旅 行,レジャー 17 Egyptian Contracting (Mokhtar Ibrahim) 1998 2,850 2,205 建 設, 建 設 資 材 18 Olympic Group for Financial Investment 1997 2,629 2,707 消 費 財 ( 電 器 ) 19 Abu Qir Fertilizer and Chemical Industries 1994 2,466 2,252 化 学 20 Al-Arafa Investment And Consulting 2006 2,133 1,667 繊 維 21 Egyptian Iron and Steel 1996 2,111 3,658 鉄 鋼 22 Cairo Poutry Processing Company 1995 1,935 1,962 食 品 加 工 23 Egypt Kuwait Holding Company 1999 1,768 1,679 金 融 24 Orascom Hotels And Development 1998 1,696 2,831 旅 行,レジャー 25 Sidi Kerir Petrochemicals 2005 1,683 2,119 化 学 ( 出 所 ) 図 4に 同 じ 上 位 上 場 企 業 はいずれも 1990 年 代 半 ば 以 降 の 上 場 である 前 述 のように,1992 年 の 資 本 市 場 法 の 制 定 によって, 株 式 市 場 の 整 備 が 進 んだ 後 に 上 場 されたためである また, テレコム エジプト,エッズ デヘイラ 鉄 鋼,スエズ セメントなど, 元 国 有 企 業 が 多 いことも 特 徴 である その 多 くは,いまだ 政 府 が 株 の 一 定 比 率 を 所 有 している 図 5 は,2009 年 の 上 場 企 業 上 位 10 社 について,2001 年 以 来 のランキングの 推 移 を 示 80

したものである 上 位 7 社 は, 順 位 変 動 はあるものの,いずれの 年 も 10 位 以 内 にラン キングされている 5 なかでも 収 入 規 模 の 突 出 しているオラスコム グループの 2 社 は, 2001 年 以 降 のほとんどの 年 で 1 位 と 2 位 を 占 めていたことが 分 かる 図 5 上 場 企 業 ランキング(2000 年 代 ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 Orascom Telecom Orascom Construction Ezz Steel ECMS (MobiNil) Telecom Egypt El Sewedy Cables Ezz Dekheila (EZDK) Suez Cement TMG Holding GB Auto ( 出 所 ) 図 4 に 同 じ 第 3 節 エジプト 企 業 の 海 外 進 出 1. 海 外 進 出 の 動 向 エジプト 企 業 の 海 外 進 出 は, 図 2 でみたように,2000 年 代 後 半 になって 増 加 した 表 5 は, 世 界 投 資 報 告 書 の 各 年 版 から, 統 計 データのある 年 について,エジプトに よる 海 外 での 企 業 買 収 (M&A) 額 の 推 移 をみたものである 2000 年 代 初 めまでは, 図 2 と 同 様,エジプト 企 業 による 海 外 企 業 のM&Aはほとんどなかったことが 分 かる 開 発 途 上 国 企 業 による 海 外 でのM&A 総 額 と 比 較 しても,エジプトの 規 模 は 小 さかった と ころが,2000 年 代 後 半 になると,エジプト 企 業 による 海 外 でのM&A 額 は 大 きく 増 加 し た M&A 件 数 は 必 ずしも 多 くないが,エジプト 企 業 による 比 較 的 大 規 模 な 海 外 進 出 が みられるようになったと 言 えるだろう 6 5 El-Ezz Dekheila Steel,Telecom Egypt,El-Sewedy Cables は 2000 年 代 に 上 場 されたため, 上 場 以 前 の 収 入 額 が 不 明 であった 6 2005 年 の M&A 額 は 144 億 ドルと 他 の 年 に 比 べて 突 出 しているが,それはイタリアの 通 信 企 業 の 買 収 (128 億 ドル)があったためである 81

表 5 M&Aによる 買 収 (cross-border) 1991 1993 1999 2000 2003 2004 2005 2006 2007 2008 途 上 国 全 体 (US$mln) 3,258 10,784 63,406 48,496 31,234 37,925 82,426 114,119 139,677 99,805 エジプト (US$mln) 51 18 7 213 3 61 14,423 5,633 1,448 4,613 ( 件 数 ).......... 2 4 14 7 6 ( 出 所 )UNCTAD [2002][2006][2009] 表 6 は,2000 年 代 半 ば 以 降 について, 新 規 海 外 直 接 投 資 の 件 数 を 示 したものである エジプト 企 業 による 新 規 海 外 直 接 投 資 は 2000 年 代 後 半 に 毎 年 10 件 以 上 となっており, それ 以 前 については 不 明 であるが, 近 年 は 毎 年 エジプト 企 業 の 新 規 海 外 進 出 が 行 われて いることが 分 かる 一 方,エジプトへの 新 規 海 外 直 接 投 資 は,2000 年 代 後 半 は 毎 年 50 件 程 度 であり,エジプト 国 内 で 活 動 する 外 国 企 業 が 増 えていることが 分 かる 表 6 新 規 海 外 直 接 投 資 プロジェクト ( 単 位 : 件 数 ) 2004 2005 2006 2007 2008 エジプト 企 業 による 海 外 直 接 投 資 6 13 17 10 23 エジプトへの 海 外 直 接 投 資 34 45 51 54 83 ( 出 所 )UNCTAD [2009] 2. エジプト 企 業 による 海 外 進 出 :オラスコム テレコム エジプト 企 業 による 海 外 進 出 の 具 体 的 な 事 例 として,オラスコム テレコムを 取 り 上 げる オラスコム テレコムは, 前 節 でみたようにエジプト 最 大 の 上 場 企 業 であり,ま たオラスコム 建 設 と 並 ぶオラスコム グループの 中 核 会 社 である オラスコム グルー プは,サウィリス(Sawiris) 家 によるファミリー ビジネスとして 始 まったものであり, 現 在 では 通 信 (オラスコム テレコム), 建 設 (オラスコム 建 設 ),ホテル 開 発 (オラ スコム 開 発 )の 3 つの 中 核 会 社 で 形 成 されている いずれも 上 場 企 業 であるが, 株 式 の 過 半 数 はサウィリス 家 によって 所 有 されている (1) オラスコム テレコムの 沿 革 オラスコム テレコムは,1997 年 にオラスコムの 通 信 部 門 が 独 立 して 設 立 された オラスコムの 通 信 事 業 は, 現 オラスコム テレコム 会 長 であるナギーブ サウィリス (Naguib Sawiris)によって,1980 年 代 に 通 信 機 器 の 輸 入 販 売 部 門 として 始 まり,1994 年 にエジプト 国 内 のインターネット 接 続 業 者 を 買 収 し 通 信 サービス 事 業 を 開 始 した 1990 年 代 半 ばはエジプトの 通 信 産 業 の 規 制 緩 和 が 進 展 した 時 期 であり,オラスコムは 82

通 信 サービス 企 業 の 買 収 を 重 ねることで 通 信 事 業 の 規 模 を 拡 大 するとともに, 民 間 部 門 による 初 の 公 衆 電 話 網 構 築 のために 形 成 された 企 業 連 合 の 中 心 となるなど, 通 信 産 業 の 代 表 的 な 企 業 となった その 後,エジプト 初 の 携 帯 電 話 通 信 ライセンス(GSM 方 式 ) の 入 札 にフランス テレコムおよびモトローラと 企 業 連 合 を 形 成 して 参 加 し,1998 年 に 国 有 電 話 会 社 テレコム エジプトの 保 有 していた 携 帯 電 話 ライセンスを 獲 得 すること で, 携 帯 電 話 通 信 サービス 事 業 を 開 始 した オラスコム テレコムは 1997 年 7 月 に 独 立 会 社 となり, 以 来 ナギーブ サウィリス によって 率 いられている また,1999 年 には 株 式 を 公 開 し 上 場 企 業 となった 現 在 の オラスコム テレコムの 所 有 構 造 は 図 6 の 通 りである 所 有 権 の 過 半 数 は,サウィリス 家 の 持 ち 株 会 社 を 経 由 して,サウィリス 家 によって 所 有 されており, 残 りが 株 式 市 場 で 流 通 している 図 6 オラスコム テレコムの 所 有 構 造 サウィリス 家 (Naguib Sawiris) Equity Firms & Investors 90%+ Weather Investments 100% Weather Capital Sarl 1.7% 100% Weather Capital SP1 50% 株 式 市 場 オラスコム テレコム( 上 場 ) ( 出 所 )http://www.orascomtelecom.com から 筆 者 作 成 (2) オラスコム テレコムの 海 外 進 出 オラスコム テレコムは,エジプトで 携 帯 電 話 通 信 事 業 を 開 始 した 直 後 の 1999 年 か ら 海 外 進 出 を 開 始 した 表 7 は 2009 年 までのオラスコム テレコムの 海 外 への 進 出 と 撤 退 を 示 したものである 海 外 進 出 は 1999 年 のヨルダンに 始 まり, 開 発 途 上 国 を 中 心 に 矢 継 ぎ 早 な 展 開 を 図 った 2000 年 には,イエメン,パキスタン,アフリカ 諸 国 へ 進 83

出 し, 海 外 事 業 が 急 拡 大 した 7 しかしながら,2001 年 に 財 務 危 機 に 陥 り,サブサハラ アフリカ 諸 国 の 権 益 の 多 くを 売 却 するなど,2002~2003 年 には 海 外 事 業 の 見 直 しを 余 儀 なくされている 2000 年 代 初 めはサブサハラ アフリカ 諸 国 の 多 くから 撤 退 する 一 方 で,アルジェリ ア,チュニジア,イラクなど 周 辺 アラブ 諸 国 へ 進 出 している いずれも 新 規 参 入 ( 事 業 ライセンス 落 札 による 参 入 )であり, 合 弁 事 業 であるが, 中 心 的 な 立 場 での 進 出 であっ た また 2004 年 には 買 収 によってバングラデッシュで 事 業 を 開 始 したが,それはパキ スタンへの 進 出 に 次 ぐ, 中 東 アフリカ 地 域 以 外 への 進 出 であった さらに,2000 年 代 後 半 になると, 進 出 先 が 多 様 化 した サブサハラ アフリカへ 再 進 出 するとともに, 北 朝 鮮 やカナダへも 進 出 している なかでも,カナダへの 進 出 は, これまでの 開 発 途 上 国 を 中 心 とした 海 外 進 出 とは 異 なる 展 開 であった 表 8 は,2009 年 時 点 でのオラスコム テレコムの 携 帯 電 話 通 信 事 業 の 状 況 を 示 した ものである 運 営 契 約 のレバノンを 除 くと,2009 年 時 点 でオラスコム テレコムはエ ジプトを 含 めると 計 10 か 国 で 携 帯 電 話 通 信 事 業 を 展 開 している 8 エジプトを 除 くいず れの 国 においても, 過 半 数 の 所 有 権 を 握 っており,オラスコム テレコムは 主 導 的 立 場 で 経 営 を 行 っていることが 分 かる 特 に,パキスタン,バングラデッシュ,ブルンジ, 中 央 アフリカ,ナミビアではオラスコム テレコムが 100% 所 有 権 を 持 っている また, 多 くの 国 でマーケットシェア 1 位 となっており, 最 大 の 携 帯 電 話 通 信 事 業 者 である 契 約 回 線 数 では,パキスタンの 3,080 万 回 線 を 筆 頭 に,エジプト 2,540 万 回 線,アル ジェリア 1,460 万 回 線,バングラデッシュ 1,390 万 回 線 と,4 か 国 で 1,000 万 回 線 以 上 の 規 模 となっており,10 か 国 合 計 で 9,000 万 回 線 を 超 えている 一 方,1 回 線 あたりの 平 均 収 入 では, 北 朝 鮮 (24.5 ドル),ジンバブエ(12 ドル),チュニジア(11.6 ドル),ア ルジェリア(9.9 ドル)が 比 較 的 高 く,パキスタン(2.9 ドル),バングラデッシュ(2.3 ドル),ナミビア(3 ドル)は 低 い その 結 果, 国 別 の 収 入 では,アルジェリアが 18.68 億 ドルで 全 体 の 40%を 占 め,それにパキスタン( 同 23%),エジプト( 同 20%)と 続 いている つまり, 携 帯 電 話 通 信 事 業 では, 海 外 事 業 収 入 が 全 体 の 80%となっている 7 アフリカへの 進 出 は,サブサハラ アフリカ 12 か 国 で 事 業 展 開 を 行 っていた Telecel の 買 収 によって 急 拡 大 した また, 同 年 に,Telecel の 買 収 とは 別 にコンゴ 共 和 国 とチャドへも 進 出 している 8 カナダでの 事 業 は 2009 年 12 月 に 開 始 されたため,ここでは 除 外 している 84

表 7 オラスコム テレコムの 海 外 展 開 (2009 年 末 時 点 ) 年 進 出 国 参 入 形 態 所 有 権 割 合 ( 参 入 時 ) 所 有 権 割 合 (2009 年 末 ) 撤 退 国 1999 ヨルダン 買 収 過 半 数 2000 イエメン 新 規 参 入 32 パキスタン 買 収 39 100 コートジボワール 買 収 80 ジンバブエ 買 収 80 60 ウガンダ 買 収 80 トーゴ 買 収 80 ガボン 買 収 80 ザンビア 買 収 80 ベニン 買 収 80 コンゴ 民 主 共 和 国 買 収 80 コンゴ 共 和 国 買 収 65 ブルンジ 買 収 80 中 央 アフリカ 買 収 80 チャド 買 収 100 ブルキナファソ 買 収 80 ニジェール 買 収 80 2001 シリア BOT 契 約 25 アルジェリア 新 規 参 入 54 97 2002 チュニジア 新 規 参 入 35 50 ガボン ベニン ザンビア ブルンジ ウガンダ 中 央 アフリカ イエメン ヨルダン 2003 イラク( 中 部 ) 新 規 参 入 63 ブルキナファソ ニジェール トーゴ シリア 2004 バングラデッシュ 買 収 100 100 コートジボワール 2005 香 港 出 資 19 コンゴ 民 主 共 和 国 コンゴ 共 和 国 2007 香 港 2008 北 朝 鮮 新 規 参 入 75 75 カナダ 出 資 65 65 ブルンジ 買 収 100 100 中 央 アフリカ 買 収 100 100 2009 ナミビア 買 収 100 100 レバノン 運 営 契 約 0 0 ( 出 所 )Orascom Telecom Annual Report (http://www.orascomtelecom.com) イラク( 中 部 ) 85

表 8 オラスコム テレコムの 携 帯 電 話 事 業 (2009 年 ) 進 出 国 所 有 権 比 率 マーケット シェア マーケット 順 位 契 約 回 線 数 ( 万 回 線 ) ARPU (US$) (2009.10-12) 収 入 (US$million) アルジェリア 97 59 1/3 1,460 9.9 1,868 パキスタン 100 32 1/5 3,080 2.9 1,058 エジプト 35 42 1/3 2,540 6.5 944 チュニジア 50 53 1/2 520 11.6 357 バングラデッシュ 100 27 2/6 1,390 2.3 351 北 朝 鮮 75 100 1/1 9 24.5 26 ブルンジ 100 72 1/ 66 6 中 央 アフリカ 100 45 1/ 30 8 ジンバブエ 60 20 2/ 59 12 ナミビア 100 18 2/ 27 3 ARPUとは 一 回 線 あたりの 月 平 均 収 入 エジプト,チュニジアについては, 所 有 権 比 率 分 の 収 入 北 朝 鮮 の 収 入 は 公 式 為 替 レートによる 算 出 アフリカ 諸 国 の 収 入 は 実 勢 レートによる 算 出 ( 出 所 ) 表 7に 同 じ 81 (3) オラスコム テレコムのパフォーマンス 図 7 はオラスコム テレコムの 1999 年 以 降 の 利 益 推 移 であるが,2004 年 以 降 に 年 間 20 億 LE を 超 す 利 益 を 上 げていることが 分 かる 2007 年 は 資 産 売 却 に 伴 って 利 益 が 急 増 した 例 外 的 な 年 であるが,2008 年 以 降 は 2005 年 以 前 の 利 益 水 準 となっており, 近 年 は 必 ずしも 利 益 増 加 傾 向 にあるわけではない 一 方, 図 8 は 総 資 産 規 模 の 推 移 をみたも のである 2000 年 代 初 めにサブサハラ アフリカ 諸 国 など 10 か 国 以 上 から 撤 退 したが, いずれも 比 較 的 資 産 規 模 の 小 さな 事 業 であったため, 総 資 産 は 2007 年 に 至 るまで 一 貫 して 増 加 した 2007 年 にイラク 事 業 と 香 港 企 業 (Hutchison Telecommunications International)への 出 資 分 を 売 却 したため 初 めて 総 資 産 は 減 少 したが,2008 年 以 降 は 再 び 海 外 進 出 を 活 発 化 させ, 総 資 産 は 550 億 LE を 超 える 水 準 となっている ( 単 位 :1 万 LE) 1,200,000 図 7 利 益 の 推 移 (1999~2009 年 ) 1,000,000 800,000 600,000 400,000 200,000 0 200,000 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 ( 出 所 ) 表 7に 同 じ 86

( 単 位 :1 万 LE) 7,000,000 図 8 総 資 産 の 推 移 (1999~2009 年 ) 6,000,000 5,000,000 4,000,000 3,000,000 2,000,000 1,000,000 0 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 ( 出 所 ) 表 7に 同 じ (4) 事 業 環 境 の 変 化 オラスコム テレコムは 設 立 後 間 もなくから 海 外 進 出 を 開 始 し, 中 東 アフリカ 諸 国 を 中 心 に 海 外 事 業 を 展 開 してきた 2000 年 にはサブサハラ アフリカ 諸 国 12 か 国 で 権 益 を 持 っていた Telecel を 買 収 することで,アフリカ 諸 国 での 事 業 を 急 拡 大 させた しか しながら,その 後 の 財 務 危 機 によって 海 外 事 業 の 見 直 しを 迫 られるなど, 必 ずしも 順 調 に 海 外 進 出 を 拡 大 してきたわけではなかった オラスコム テレコムは,リスクは 高 い が 潜 在 的 成 長 力 も 高 いと 思 われる 国 を 中 心 に 海 外 進 出 を 行 ってきたと 言 えるだろう そ のため, 撤 退 した 国 も 多 いが,その 一 方 でパキスタンやアルジェリアのように 収 入 の 柱 に 育 った 国 もある その 結 果, 利 益 と 総 資 産 の 推 移 をみると,2000 年 代 後 半 までオラ スコム テレコムは 比 較 的 良 好 な 成 長 軌 道 にあった 2000 年 代 終 わりになると,オラスコム テレコムの 海 外 事 業 に 新 たな 展 開 がみられ るようになっている それは, 新 たな 方 向 性 を 示 すものと,リスクの 顕 在 化 によるもの とに 分 けられる まず, 新 たな 方 向 性 の 一 つは, 先 進 国 市 場 への 参 入 である オラスコ ム テレコムは,2008 年 にカナダの 携 帯 電 話 通 信 事 業 に 参 入 した それは 過 半 数 所 有 権 を 確 保 した 上 での 参 入 であり, 自 身 が 主 体 となって 事 業 運 営 を 行 うものである 先 進 国 市 場 での 事 業 は 実 質 的 に 初 であり, 新 たな 展 開 と 言 えるだろう カナダ 市 場 では,あ まり 普 及 していないプリペイド 方 式 の 携 帯 電 話 通 信 事 業 を 展 開 する 方 針 であり,その 意 味 ではこれまでと 同 様 に 潜 在 的 な 市 場 を 開 拓 するものであるが, 一 定 以 上 の 人 口 規 模 を 持 つ 開 発 途 上 国 での 新 規 参 入 機 会 が 減 少 するなか,さらなる 成 長 のために 新 たな 方 向 性 を 目 指 したものであると 捉 えることができるだろう もう 一 つの 新 たな 方 向 性 は, 合 併 による 大 規 模 化 である オラスコム テレコムの 過 半 数 株 主 である Weather Investments は,2010 年 10 月 にロシアを 中 心 とする 巨 大 携 帯 電 話 事 業 会 社 VimpelCom との 合 併 に 合 意 したことを 公 表 した Weather Investments は 実 質 的 にオラスコム テレコム 会 長 であるナギーブ サウィリスの 投 資 会 社 であり, 87

VimpelCom との 合 併 はオラスコム テレコムの 今 後 の 事 業 展 開 を 検 討 した 上 での 判 断 だ と 言 えるだろう 本 稿 執 筆 時 点 (2011 年 2 月 )では,まだ 合 併 手 続 きは 開 始 されてい ないが,オラスコム テレコムの 行 方 を 決 定 づけるものとして 注 目 される 他 方,リスクの 顕 在 化 として,アルジェリア 事 業 での 係 争 がある 2009 年 にサッカ ーワールドカップの 予 選 試 合 をきっかけとして,エジプトとアルジェリアとの 間 で 国 民 感 情 が 対 立 し, 政 治 外 交 問 題 にまで 発 展 した その 結 果,アルジェリアにおけるオラ スコム テレコムの 店 舗 襲 撃 や,オラスコム テレコムへの 追 徴 課 税 など,オラスコム テレコムはエジプトを 象 徴 するものとして,アルジェリア 国 民 から 厳 しい 目 が 向 けられ た 追 徴 課 税 問 題 については,いまだ 係 争 中 であり,その 是 非 は 未 定 であるが,いずれ にせよオラスコム テレコムにとってアルジェリアでの 事 業 は 困 難 なものとなり, 事 業 売 却 の 動 きもみられた アルジェリアの 一 件 は,どの 国 でも 発 生 しうる 問 題 であるが, 事 業 環 境 の 整 備 が 進 んでいない 開 発 途 上 国 においては,そのリスクは 一 層 高 いものとな るだろう 前 述 のように,オラスコム テレコムは 比 較 的 カントリー リスクの 高 い 国 での 事 業 が 中 心 であり,またアルジェリア 事 業 は 収 入 の 柱 となるものであった 従 って, オラスコム テレコムが 今 後 長 期 的 に 安 定 的 な 収 益 を 確 保 するには,カントリー リス クなど 政 治 社 会 的 な 面 でのリスク 分 散 も 必 要 になるかもしれない おわりに 本 稿 では,まずエジプトの 投 資 制 度 と 直 接 投 資 の 動 向 を 概 観 した 現 在 の 基 本 的 な 投 資 制 度 は, 民 間 部 門 の 投 資 奨 励 を 目 的 に 1990 年 代 後 半 に 整 備 された さらに,2000 年 代 に 産 業 集 積 や 輸 出 促 進 を 目 的 とした 特 別 投 資 制 度 も 構 築 されている 一 方, 直 接 投 資 は, 対 内 直 接 投 資, 対 外 直 接 投 資 ともに 2000 年 代 後 半 に 急 増 した 対 内 直 接 投 資 では, 2000 年 代 の 国 際 原 油 価 格 の 高 騰 に 伴 い, 欧 米 からの 投 資 に 加 え, 中 東 湾 岸 諸 国 からの 直 接 投 資 流 入 が 拡 大 した また, 同 時 期 には, 石 油 部 門 への 継 続 的 な 直 接 投 資 も 実 施 さ れている 次 に,1990 年 代 以 降 に 主 要 経 済 主 体 と 想 定 されるようになった 民 間 企 業 について, 主 要 上 場 企 業 の 概 要 を 要 約 し,また 国 内 最 大 の 民 間 企 業 であるオラスコム テレコムに ついて,その 海 外 進 出 動 向 を 検 討 した エジプトの 株 式 市 場 は 1990 年 代 初 めに 整 備 さ れ,2000 年 までに 1,000 社 を 超 える 企 業 が 上 場 した その 後, 上 場 基 準 の 厳 格 化 によっ て 今 日 までに 上 場 企 業 は 約 300 社 となっているが, 市 場 株 価 総 額 は 増 加 しており,また 株 価 指 数 は 2000 年 代 半 ば 以 降 に 急 上 昇 するなど,2000 年 代 後 半 に 株 式 市 場 は 活 性 化 し た 上 場 企 業 上 位 100 社 を 産 業 別 にみると, 建 設 建 設 資 材, 銀 行, 旅 行 レジャーな ど,サービス 産 業 が 多 いことが 分 かった また,2009 年 の 収 入 規 模 ではオラスコム グループの 2 社 が 突 出 しているが, 両 社 は 2000 年 代 を 通 してエジプトで 最 大 規 模 の 民 88

間 企 業 であった エジプト 最 大 の 民 間 企 業 であるオラスコム テレコムは,1997 年 に 設 立 されたエジ プトで 最 初 の 携 帯 電 話 通 信 事 業 者 であり,1999 年 以 降 に 海 外 進 出 を 開 始 した オラス コム テレコムは, 中 東 アフリカ 諸 国 を 中 心 に 進 出 し,2009 年 末 時 点 では 海 外 10 か 国 で 携 帯 電 話 通 信 事 業 を 展 開 している また, 近 年 は 先 進 国 市 場 への 進 出, 合 併 の 検 討 な ど, 新 たな 方 向 性 を 模 索 している 以 上, 本 稿 では,エジプトの 民 間 部 門 の 発 展 について, 投 資 制 度 と 現 地 民 間 企 業 の 動 向 を 中 心 に 整 理 した その 結 果,エジプトでは 1990 年 代 に 民 間 企 業 が 台 頭 し,2000 年 代 後 半 以 降 に 海 外 進 出 が 活 発 化 していることが 確 認 された 本 稿 ではオラスコム テレ コムを 取 り 上 げて,その 海 外 進 出 動 向 をみたが, 同 社 の 海 外 進 出 を 可 能 とした 競 争 優 位 や 戦 略 については 検 討 まで 至 らなかった 今 後 は,オラスコム テレコム 以 外 の 企 業 も 含 め,エジプト 企 業 の 具 体 的 な 事 業 環 境 と 競 争 優 位 について 分 析 を 進 めたい 89

参 考 文 献 < 日 本 語 文 献 > 土 屋 一 樹 [2011] エジプトにおける 社 会 契 約 と 経 済 政 策 ( 伊 能 武 次 編 エジプトにお ける 社 会 契 約 の 変 容 調 査 研 究 報 告 書,アジア 経 済 研 究 所 1-24 ページ) < 外 国 語 文 献 > Cairo & Alexandria Stock Exchange [2006] CASE Yearbook 2005, Cairo: Cairo & Alexandria Stock Exchange. Central Bank of Egypt [2003] Annual Report 2002/2003, (http://www.cbe.org.eg, 2010 年 3 月 3 日 アクセス) UNCTAD [2009] World Investment Report 2009: Transnational Corporations, Agricultural Production and Development, New York: United Nations. ------------ [2006] World Investment Report 2006: FDI from Developing and Transition Economies; Implication for Development, New York: United Nations. ----------- [2005] World Investment Report 2005: Transnational Corporations and the Internationalization of R&D, New York: United Nations. ----------- [2002] World Investment Report 2002: Transnational Corporations and Export Competitiveness, New York: United Nations. ----------- [1991] World Investment Report 1991: The Triad in Foreign Direct Investment, New York: United Nations. World Bank [2007] Doing Business 2008: Comparing Regulation in 178 Economies, Washington, D.C.: The World Bank. < 雑 誌, 企 業 情 報 > Business Today Egypt, Vol.16, No.7, July, 2010. Orascom Telecom Holding S.A.E:http://www.orascomtelecom.com/ 90