平 成 21 間 回 顧 住 宅 投 資 の 動 向 について 以 降 建 設 投 資 は 低 迷 しており その 中 で 住 宅 投 資 の 下 落 は 顕 著 である 21 12 月 の 新 設 住 宅 着 工 戸 数 は 前 同 月 比.7% 減 の 6.9 万 戸 と 前 比 マイナス は13カ 月 続 いており 21 では 前 比 27.9%の 78 万 841 戸 であった 8 万 戸 を 下 回 るのは 昭 和 39 の 75 万 1429 戸 以 来 45 ぶりであり 減 少 率 は49 の 3.9% に 次 ぐ 過 去 2 番 目 の 大 きさである 住 宅 建 築 が 経 済 全 体 に 与 える 影 響 は 大 きいため 住 宅 投 資 に 影 響 をもたらす 要 因 について 状 況 をみていきたい (1) 住 宅 投 資 の 動 向 1 国 民 経 済 計 算 からみた 民 間 住 宅 投 資 の 推 移 ~ 民 間 住 宅 投 資 は 長 期 的 に 低 下 しており 国 内 総 生 産 に 占 める 割 合 も 縮 小 ~ 国 民 経 済 計 算 から 民 間 住 宅 投 資 と 国 内 総 生 産 の 推 移 を 長 期 的 にみてみると 平 成 元 や9 の 前 は 消 費 税 の 駆 け 込 み 需 要 から 大 きく 上 昇 したが ほぼ 一 貫 し て 住 宅 投 資 の 伸 びは 国 内 総 生 産 の 伸 びを 下 回 り 前 同 期 比 もマイナスが 続 いてい る それに 伴 い 国 内 総 生 産 に 占 める 民 間 住 宅 投 資 の 割 合 も 縮 小 し 21 1~12 月 期 では 2.3%と 最 も 高 かった 昭 和 55 4~6 月 期 の 7.3%の3 分 の1 以 下 となってい る( 第 -2-13 図 ) 第 -2-13 図 GDP と 民 間 住 宅 投 資 の 推 移 ( 前 同 期 比 ) 4 3 1 1 3 民 間 住 宅 投 資 / 国 内 総 生 産 ( 右 目 盛 ) 国 内 総 生 産 民 間 住 宅 投 資 8 7 6 5 4 3 2 1 4 56 57 58 59 6 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 13 14 21 資 料 : 国 民 経 済 計 算 ( 内 閣 府 ) 建 築 着 工 統 計 ( 国 土 交 通 省 ) 2 建 築 着 工 統 計 からみた 利 用 関 係 別 新 設 住 宅 着 工 戸 数 次 に 建 築 着 工 統 計 から 利 用 関 係 別 に 住 宅 投 資 の 動 向 をみていくと 持 家 の 着 工 戸 数 は 7 以 降 低 下 傾 向 にあったが 足 下 ではその 下 落 幅 は 小 幅 であり 総 着 工 - 78 -
平 成 21 間 回 顧 戸 数 にしめる 持 家 着 工 戸 数 の 割 合 ( 持 家 着 工 比 率 )も から 上 昇 傾 向 にあり 分 譲 住 宅 着 工 比 率 を 逆 転 している 一 方 分 譲 住 宅 の 着 工 戸 数 は 長 期 的 にみると 上 昇 傾 向 であったが は 耐 震 強 度 偽 装 問 題 に 伴 う 建 築 確 認 申 請 の 厳 格 化 の 影 響 を 受 け 前 比 22.3%と 大 きく 減 少 した 21 ではリーマンショック 以 降 の 経 済 危 機 により 同 43.7%と 最 大 の 下 げ 幅 を 記 録 するなど 足 下 の 低 下 傾 向 は 顕 著 である 貸 家 の 状 況 をみると バブル 期 に 貸 家 着 工 比 率 が 高 い 水 準 であることから 投 機 的 な 意 味 合 いが 強 く 景 気 の 状 況 によって 大 きく 変 動 していることがわかる( 第 -2-14 図 ) 本 稿 では 景 気 の 変 動 によって 大 きく 影 響 される 貸 家 については 分 析 対 象 外 と して 持 家 及 び 分 譲 住 宅 の 新 設 住 宅 着 工 戸 数 を 合 算 したものを 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 戸 数 としてその 動 向 を 確 認 する 第 -2-14 図 利 用 関 係 別 新 設 住 宅 着 工 戸 数 の 推 移 14 1 1 8 6 4 55 56 57 58 59 6 61 62 63 元 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 13 14 21 持 家 分 譲 住 宅 貸 家 給 与 住 宅 持 家 比 率 ( 右 目 盛 ) 貸 家 比 率 ( 右 目 盛 ) 分 譲 住 宅 比 率 ( 右 目 盛 ) 6 5 4 3 1 ( 注 ) 持 家 : 建 築 主 が 自 分 で 居 住 する 目 的 で 建 築 するもの 貸 家 : 建 築 主 が 賃 貸 する 目 的 で 建 築 するもの 給 与 住 宅 : 会 社 官 公 署 学 校 等 がその 社 員 職 員 教 員 等 を 居 住 させる 目 的 で 建 築 するもの 分 譲 住 宅 : 建 て 売 り 又 は 分 譲 の 目 的 で 建 築 するもの 資 料 : 建 築 着 工 統 計 ( 国 土 交 通 省 ) (2) 住 宅 投 資 に 影 響 を 及 ぼす 要 因 住 宅 投 資 の 低 迷 を 考 察 するため 住 宅 投 資 に 影 響 を 与 えると 思 われる 需 要 側 の 要 因 を 検 証 する まず 住 宅 需 要 の 大 きさは 住 宅 を 使 用 する 人 世 帯 の 数 の 推 移 に 大 きく 影 響 されることは 自 明 であるため 人 口 数 や 世 帯 の 住 宅 充 足 率 などの 推 移 を 確 認 する 次 に 家 計 が 住 宅 を 取 得 する 際 可 処 分 所 得 貯 蓄 額 住 宅 ローン 金 利 住 宅 価 格 が 購 入 判 断 に 大 きく 影 響 するため それらの 変 数 を 集 約 した 持 ち 家 取 得 能 力 を 試 算 し その 推 移 を 確 認 する また 住 宅 の 取 得 は 高 額 な 支 出 を 伴 うため 所 得 雇 用 環 境 に 対 - 79 -
平 成 21 間 回 顧 するマインドが 大 きく 影 響 することは 自 然 であるため それらの 動 向 をみていくこととする 1 世 帯 人 口 の 動 向 ~ 住 宅 取 得 齢 層 の 人 口 はピークを 迎 えているが 住 宅 ローンを 組 むことが 可 能 な 層 はすでに 減 少 傾 向 ~ の 住 宅 土 地 統 計 調 査 から 世 帯 主 の 齢 階 級 別 の 持 ち 家 率 の 推 移 を 確 認 すると 25~29 歳 では 11.7%であった 持 ち 家 率 が 3~34 歳 では 3.1%(.4% 増 ) 35~39 歳 では 46.5%(.4% 増 ) 4~44 歳 では 58.2%(11.7% 増 )と 大 きく 上 昇 し 5 歳 代 以 降 は 伸 びが 鈍 化 している この 特 徴 は 1 調 査 結 果 でも 同 様 であった このことから 住 宅 を 取 得 する 齢 は 3 歳 代 から4 歳 代 半 ば 特 に 3 歳 代 が 中 心 であることがうかがえる( 第 -2- 図 ) 第 -2- 図 世 帯 主 齢 階 級 別 持 ち 家 率 の 推 移 9 8 7 6 5 4 3 1 61.2 総 数 1 2.6 11.7 25 歳 25 ~ 未 満 29 歳 3.1 3~ 34 歳 46.5 35~ 39 歳 58.2 4~ 44 歳 67.3 45~ 49 歳 72.8 5~ 54 歳 76.2 55~ 59 歳 79. 6~ 64 歳 ( 注 )グラフ 内 の 数 値 は の 値 資 料 : 住 宅 土 地 統 計 調 査 ( 総 務 省 ) 住 宅 取 得 齢 層 の 人 口 分 布 をみるために 1 月 1 日 時 点 の 各 歳 の 齢 階 級 別 の 人 口 数 を 新 設 住 宅 着 工 戸 数 の 推 移 と 比 較 してみる 昭 和 3 から 平 成 21 までの 持 ち 家 系 住 宅 着 工 戸 数 を 各 齢 階 級 の 層 が37 歳 の 時 点 の に 時 系 列 の 軸 を 反 転 しプロットしている 例 えば 平 成 1 月 1 日 時 点 で47 歳 の 人 が37 歳 で あった 平 成 1 の 持 ち 家 系 住 宅 着 工 戸 数 ( 右 目 盛 )が 47 歳 人 口 数 の 軸 上 に 位 置 する 現 在 の 状 況 をみると いわゆる 団 塊 ジュニア 層 が 住 宅 取 得 齢 層 と 合 致 しており 人 口 要 因 からみれば 住 宅 需 要 が 高 まって 良 い 状 況 にはあるが 着 工 戸 数 には 結 び ついていない 状 況 がうかがえる( 第 -2- 図 ) - 8 -
平 成 21 間 回 顧 第 -2- 図 齢 階 級 別 人 口 ( 平 成 1 月 1 日 時 点 ) 及 び 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 戸 数 の 推 移 ( 千 人 ) 2,5 各 歳 齢 階 級 別 人 口 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 戸 数 ( 右 目 盛 横 軸 の 時 間 軸 反 転 ) 1 2, 1 1,5 1, 8 6 4 5 21 時 点 の 住 宅 取 得 齢 層 5 1 25 3 35 4 45 5 55 6 65 7 75 8 85 9 95 1 ( 歳 ) 資 料 : 人 口 推 計 ( 総 務 省 ) 建 築 着 工 統 計 ( 国 土 交 通 省 ) 21 13 11 9 7 5 3 元 62 6 58 56 54 52 5 48 46 44 42 4 38 36 34 32 3 そこで 現 在 の 住 宅 取 得 齢 層 の 人 口 増 加 が 必 ずしも 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 戸 数 と 結 びついていない 状 況 を 考 察 するため 住 宅 取 得 齢 層 の 雇 用 状 態 をみてみる 住 宅 を 取 得 するにあたっては 住 宅 ローンを 組 むことが 一 般 的 であるが 融 資 審 査 項 目 として 返 済 能 力 を 証 明 する 勤 続 数 や 雇 用 形 態 が 考 慮 されるため 住 宅 取 得 齢 層 の 雇 用 状 態 を 正 規 職 員 数 等 の 推 移 から 確 認 する 雇 用 者 数 は 平 均 1 ~3 月 期 ( 後 方 4 期 移 動 平 均 以 下 同 じ )の 2,468 万 人 から21 7~9 月 期 の 2,547 万 人 と 増 加 しているが 正 規 の 職 員 従 業 員 の 数 は 1~3 月 期 の 1,843 万 人 か ら21 7~9 月 期 の 1,81 万 人 と 減 少 している 正 規 の 職 員 従 業 員 の 数 を 雇 用 者 数 で 除 した 正 規 職 員 比 率 をみても 1~3 月 期 の 74.7%から21 7~9 月 期 の 71.1%まで 一 貫 して 低 下 傾 向 にある( 第 -2- 図 ) ( 万 人 ) 1,85 1,84 1,83 1,8 1,81 1,8 1,79 1,78 1,77 1,76 第 -2- 図 25~44 歳 の 正 規 の 職 員 従 業 員 の 推 移 ( 後 方 4 期 移 動 平 均 ) 正 規 の 職 員 従 業 員 正 規 職 員 比 率 ( 右 目 盛 ) 78 77 76 75 74 73 72 71 7 69 1,75 21 68 ( 注 )データの 入 手 の 関 係 上 齢 階 級 の 区 分 は 25~34 歳 35~44 歳 - 81 -
平 成 21 間 回 顧 正 規 職 員 比 率 = 正 規 の 職 員 従 業 員 / 雇 用 者 数 資 料 : 労 働 力 調 査 ( 総 務 省 ) 現 在 住 宅 取 得 齢 層 は 団 塊 ジュニア 層 の 流 入 による 人 口 増 加 から 数 の 上 では ピークにあるが 住 宅 ローンを 組 むことが 可 能 な 人 口 層 は すでに 減 少 傾 向 にあり 正 規 職 員 比 率 が 低 下 しているという 雇 用 状 況 も 合 わせてみても 今 後 もますます 減 少 することが 予 想 される 次 に 世 帯 数 と 住 宅 の 需 給 バランスを 確 認 するために 住 宅 土 地 統 計 調 査 から 住 宅 総 数 を 総 世 帯 数 で 除 した 住 宅 充 足 率 及 び 空 き 家 を 住 宅 総 数 で 除 した 空 き 家 率 の 推 移 をみる 住 宅 充 足 率 は 昭 和 43 時 点 で 既 に1を 超 えており さらに 上 昇 傾 向 が 続 いている 空 き 家 率 をみると 住 宅 充 足 率 と 同 様 の 推 移 であり 特 にバブル 崩 壊 以 後 上 昇 している 地 域 的 なミスマッチや 老 朽 化 などによる 質 の 低 下 によるものも 含 まれると 思 われるが 住 宅 の 供 給 過 多 の 状 況 がうかがえる( 第 -2- 図 第 -2- 図 ) 第 -2- 図 住 宅 充 足 率 の 推 移 第 -2- 図 空 き 家 率 の 推 移 1 1 7 6 居 住 世 帯 あり 空 き 家 空 き 家 率 ( 左 目 盛 ) 14 12 11 5 1 4 8 1 3 6 95 4 9 1 2 85 28 33 38 43 48 53 58 63 5 1 28 33 38 43 48 53 58 63 5 1 資 料 : 住 宅 土 地 統 計 調 査 ( 総 務 省 ) 2 持 ち 家 取 得 能 力 ~3~39 歳 の 持 ち 家 取 得 能 力 は 1~3 月 期 以 降 住 宅 着 工 戸 数 を 先 行 して 低 下 7~9 月 期 以 降 能 力 は 持 ち 直 しているが 住 宅 着 工 戸 数 は 低 水 準 を 持 続 ~ 次 に 住 宅 投 資 の 動 向 は 可 処 分 所 得 貯 蓄 額 金 利 住 宅 価 格 の 動 きと 関 係 が 深 いと 考 えられるため それらの 変 数 を 集 約 した 住 宅 取 得 齢 層 の 持 ち 家 取 得 能 力 を 試 算 し その 推 移 を 確 認 する 試 算 にあたっては データの 制 約 上 住 宅 取 得 齢 層 の 一 部 である4~44 歳 の 値 が 取 得 できないことから 世 帯 主 が3~39 歳 の - 82 -
平 成 21 間 回 顧 勤 労 者 世 帯 を 対 象 とした 持 ち 家 系 住 宅 着 工 戸 数 と 動 きを 比 較 すると 14 1~12 月 期 から 7~9 月 期 まで 持 ち 家 取 得 能 力 と 持 ち 家 系 住 宅 着 工 戸 数 はおおむ ね 連 動 していたが それ 以 降 可 処 分 所 得 の 減 少 による 借 入 可 能 額 の 低 下 や 景 気 拡 張 局 面 における 住 宅 価 格 の 上 昇 を 要 因 として 持 ち 家 取 得 能 力 は 低 下 し 持 ち 家 系 住 宅 着 工 戸 数 を 先 行 する 形 で 乖 離 した( 第 -2- 図 第 -2-21 図 ) 着 工 戸 数 は 7~9 月 期 に 耐 震 強 度 偽 装 問 題 に 伴 う 建 築 確 認 申 請 の 厳 格 化 の 影 響 を 受 け 分 譲 住 宅 を 中 心 に 激 減 し その 後 やや 持 ち 直 しの 動 きはみられ たものの 1~12 期 以 降 は 経 済 危 機 により 再 び 大 きく 減 少 し 21 では 78 万 841 戸 と 非 常 に 低 い 水 準 となっている また 持 ち 家 取 得 能 力 の 足 下 の 推 移 を 要 因 分 解 からみると 1~12 月 期 以 降 リーマンショックの 影 響 による 需 要 低 迷 から 住 宅 価 格 が 低 下 し それを 主 因 として 持 ち 家 取 得 能 力 自 体 は 上 昇 傾 向 であり 着 工 戸 数 と 逆 の 動 きになっている このように 可 処 分 所 得 貯 蓄 額 金 利 住 宅 価 格 を 集 約 した 持 ち 家 取 得 能 力 では 住 宅 着 工 戸 数 の 動 向 を 捉 えられなくなっているため 持 ち 家 取 得 能 力 の 要 因 や 持 ち 家 取 得 能 力 の 各 構 成 要 素 がそれぞれに 住 宅 着 工 戸 数 に 働 いていることが 推 測 される 第 -2- 図 持 ち 家 取 得 能 力 (3~39 歳 ) 及 び 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 戸 数 の 推 移 14 13 12 11 1 14 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 持 ち 家 取 得 能 力 ( 右 目 盛 ) 21 1.25 1.2 1. 1.1 1.5 1.95.9 ( 注 ) 持 ち 家 取 得 能 力 の 算 式 は 以 下 のとおりとした 持 ち 家 取 得 能 力 =1 資 金 調 達 可 能 額 /2 住 宅 価 格 1 資 金 調 達 可 能 額 = 住 宅 ローン 借 入 可 能 額 (L)+ 貯 蓄 残 高 (B) 資 金 調 達 可 能 額 の 前 提 としては 住 宅 購 入 にあたり 各 世 帯 が 住 宅 ローンの 借 入 を 行 い これに 現 在 の 貯 蓄 額 を 合 わせたものを 各 世 帯 の 資 金 調 達 可 能 額 と 考 える L: 住 宅 ローン 借 入 可 能 額 ( 元 利 均 等 返 済 ) L 返 済 期 間 1 の 返 済 額 A 1+r 1 返 済 期 間 r 1+r - 83 -
平 成 21 間 回 顧 r: 利 率 ( 長 期 プライムレート) 返 済 期 間 =35 A: 可 処 分 所 得 ( 家 計 調 査 (2 人 以 上 勤 労 者 世 帯 ) 後 方 4 期 移 動 平 均 ) 12か 月 25% B: 貯 蓄 ( 家 計 調 査 (2 人 以 上 勤 労 者 世 帯 ) 後 方 4 期 移 動 平 均 ) 2 住 宅 価 格 = 東 日 本 不 動 産 流 通 機 構 の21 1 月 分 調 査 結 果 による 住 宅 価 格 に 対 して 民 間 住 宅 投 資 デフレータで 加 工 することにより 算 出 資 料 : 国 民 経 済 計 算 ( 内 閣 府 ) 建 築 着 工 統 計 ( 国 土 交 通 省 ) 家 計 調 査 ( 総 務 省 ) ( 日 銀 ) ( 東 日 本 不 動 産 流 通 機 構 ) 第 -2-21 図 持 ち 家 取 得 能 力 の 要 因 分 解 ( 前 同 期 比 ).3.2.1..1.2.3.4.5.6 借 入 可 能 額 要 因 貯 蓄 要 因 住 宅 価 格 要 因 持 ち 家 能 力 指 数 資 料 : 国 民 経 済 計 算 ( 内 閣 府 ) 建 築 着 工 統 計 ( 国 土 交 通 省 ) 家 計 調 査 ( 総 務 省 ) ( 日 銀 ) ( 東 日 本 不 動 産 流 通 機 構 ) 21 3 マインド ~3~39 歳 の 失 業 率 と 住 宅 投 資 は 相 似 した 動 きをしている~ 所 得 状 況 及 び 雇 用 環 境 に 対 するマインドが 住 宅 取 得 の 決 定 に 大 きく 影 響 すること は 自 然 である そのため マインドの 代 替 変 数 として 消 費 動 向 調 査 より 暮 らし 向 き 収 入 の 増 え 方 及 び 雇 用 環 境 を 労 働 力 調 査 より 前 述 で 試 算 した 持 ち 家 取 得 能 力 の 試 算 対 象 である 齢 層 (3~39 歳 )の 失 業 率 を 用 い 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 戸 数 との 推 移 を 比 較 する 暮 らし 向 き 収 入 の 増 え 方 は までは 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 戸 数 とおお むね 連 動 していたが 第 14 循 環 の 景 気 拡 張 局 面 において 大 きく 上 昇 したため 乖 離 が 目 立 つ さらに 21 においても 暮 らし 向 き は 上 昇 に 転 じ 収 入 の 増 え 方 も 下 げ 止 まりがみられることから 住 宅 着 工 戸 数 の 動 きと 異 なっている 次 に 雇 用 環 境 の 推 移 を 確 認 すると 住 宅 着 工 戸 数 と 相 似 した 動 きをしている 時 期 もあるが 跛 行 が 大 きく 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 戸 数 との 乖 離 幅 が 大 きい( 第 -2-22 図 ) - 84 -
平 成 21 間 回 顧 55 5 45 4 35 3 25 第 -2-22 図 消 費 者 マインド 及 び 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 戸 数 の 推 移 5 6 7 8 9 1 11 12 13 14 21 暮 らし 向 き 収 入 の 増 え 方 雇 用 環 境 持 ち 家 系 住 宅 着 工 戸 数 ( 右 目 盛 ) ( 注 ) 暮 らし 向 き 収 入 の 増 え 方 雇 用 環 境 の 各 指 標 ( 原 系 列 )を 平 均 している 資 料 : 消 費 動 向 調 査 ( 内 閣 府 ) 建 築 着 工 統 計 ( 国 土 交 通 省 ) 11 1 9 8 7 6 5 4 一 方 失 業 率 の 動 きを 重 ねてみると 5 から14 まで 失 業 率 住 宅 着 工 戸 数 とも におおむね 低 下 傾 向 にあり 14 に 入 ると 景 気 拡 張 局 面 に 伴 い 雇 用 状 況 が 好 転 し 失 業 率 が 持 ち 直 してきたとともに 住 宅 着 工 戸 数 は 漸 増 した 以 降 では 経 済 危 機 の 影 響 を 受 け 住 宅 着 工 戸 数 は 大 きく 減 少 失 業 率 も 急 上 昇 している( 第 -2-23 図 ) このような 動 きをみると 現 実 的 な 失 業 率 の 動 向 から 雇 用 環 境 の 悪 化 や 将 来 的 な 収 入 減 に 対 して 不 安 を 感 じ 住 宅 購 入 を 躊 躇 する 意 識 が 働 いていると 考 えられる 1 2 3 4 5 第 -2-23 図 3~39 歳 の 失 業 率 及 び 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 戸 数 の 推 移 3~39 歳 の 完 全 失 業 率 持 ち 家 系 住 宅 着 工 戸 数 ( 右 目 盛 ) 11 1 9 8 7 6 5 6 5 6 7 8 9 1 11 12 13 14 21 資 料 : 労 働 力 調 査 ( 総 務 省 ) 建 築 着 工 統 計 ( 国 土 交 通 省 ) 4 4 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 戸 数 関 数 ~ 以 降 住 宅 価 格 上 昇 の 影 響 を 受 け 住 宅 着 工 戸 数 が 低 迷 した 21 に 入 ると 資 金 調 達 可 能 額 の 低 下 やマインドや 寄 与 が 大 きい~ 以 上 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 戸 数 の 動 向 は 従 来 考 えられてきた 持 ち 家 取 得 能 力 や 人 口 要 因 の 他 に 住 宅 ローンを 組 むことができる 層 の 雇 用 動 向 やマインドからも - 85 -
平 成 21 間 回 顧 影 響 を 受 けていると 推 測 されたため それらの 変 数 を 追 加 して 重 回 帰 分 析 を 行 ってみ る 被 説 明 変 数 は 14 1~12 月 期 から21 7~9 月 期 までの 持 ち 家 系 新 設 住 宅 着 工 戸 数 とし 説 明 変 数 は 3~39 歳 の 失 業 率 25~44 歳 の 正 規 雇 用 者 数 を 用 いた 持 ち 家 取 得 能 力 は 足 下 で 住 宅 着 工 戸 数 と 連 動 していないことから その 構 成 要 素 である 3~39 歳 の 資 金 調 達 可 能 額 民 間 住 宅 デフレータに 分 け それぞれを 説 明 変 数 として 追 加 した さらに 改 正 建 築 基 準 法 施 行 による 影 響 が 大 きいことから 該 当 期 間 ( 7~9 月 期 及 び1~12 月 期 )を 1 と 設 定 する 改 正 建 築 基 準 法 施 行 ダミー1 及 び 反 動 増 の 影 響 を 表 す 改 正 建 築 基 準 法 施 行 ダミー2( 7~9 月 期 を 1 )を 設 定 した 説 明 変 数 として 採 用 する 変 数 について 多 重 共 線 性 注 1) の 影 響 を 確 認 するために ダミー 変 数 を 除 いた 各 変 数 間 における VIF(Variance Inflation Factor 分 散 拡 大 要 因 )を 算 出 した( 第 -2-5 表 ) その 結 果 すべての 変 数 において VIF が1を 超 注 2) えていなかったため 全 変 数 を 説 明 変 数 として 採 用 することとした 第 -2-5 表 各 変 数 間 の VIF(14 1~12 月 期 から21 7~9 月 期 ) 3~39 歳 の 失 業 率 25~44 歳 の 正 規 雇 用 者 数 3~39 歳 の 資 金 調 達 可 能 額 25~44 歳 の 正 規 雇 用 者 数 1.6 3~39 歳 の 資 金 調 達 可 能 額 2.21 1. 民 間 住 宅 デフレータ 2.74 1.25 5.62 ( 注 )VIF=1/(1- 決 定 係 数 ) 回 帰 分 析 した 結 果 決 定 係 数 は.786 と 高 かった 25~44 歳 の 正 規 雇 用 者 数 の t 値 が2を 若 干 下 回 ったが それ 以 外 の 変 数 ですべて 絶 対 値 で2を 超 えており かつ 注 符 号 も 整 合 性 があることから 説 明 力 の 高 い 結 果 となった DW 比 3) は1.53であった ことから 残 差 の 系 列 相 関 も 確 認 されなかった( 第 -2-6 表 ) 自 由 度 調 整 済 決 定 係 数.786 第 -2-6 表 回 帰 分 析 結 果 (14 1~12 月 期 から21 7~9 月 期 ) 説 明 変 数 3~39 歳 の 失 業 率 25~44 歳 の 正 規 雇 用 者 数 3~39 歳 の 資 金 調 達 可 能 額 民 間 住 宅 デフレータ 係 数 675.1 36.95.1 5521.1 改 正 建 築 法 ダミー1 45923.7 改 正 建 築 法 ダミー2 切 片 34146.87 226399.52 t 値 6. 1.78 2.28 2.37 4.83 2..44 この 回 帰 分 析 の 結 果 を 要 因 分 解 したものが 第 -2-24 図 である 以 降 注 1) 各 変 数 の 間 に 強 い 相 関 があることにより 回 帰 分 析 の 結 果 が 歪 められる 状 態 を 多 重 共 線 性 が 発 生 しているという 注 2) 一 般 的 に VIF が 1 より 大 きければ 多 重 共 線 性 が 存 在 する 注 3) 残 差 の 系 列 相 関 の 有 無 を 検 定 する 統 計 量 1.1~2.2 の 間 で 自 己 相 関 がないと 判 断 される - 86 -
平 成 21 間 回 顧 6 持 ち 家 系 住 宅 着 工 戸 数 は 低 下 してきたが これは 住 宅 価 格 の 上 昇 及 び 7~9 月 期 1~12 月 期 の 改 正 建 築 基 準 法 施 行 による 影 響 が 大 きいことがうかがえ る また 21 4~6 月 期 にはいると 可 処 分 所 得 の 減 少 による 資 金 調 達 可 能 額 低 下 の 寄 与 がみられはじめ さらに 21 7~9 月 期 では 3~39 歳 の 失 業 率 の 上 昇 に よるマインドの 悪 化 が 影 響 している 第 -2-24 図 回 帰 分 析 結 果 による 要 因 分 解 4 4 6 8 14 21 3~39 歳 の 失 業 率 25~44 歳 の 正 規 雇 用 者 数 3~39 歳 の 資 金 調 達 可 能 額 改 正 建 築 法 ダミー1 改 正 建 築 法 ダミー2 民 間 住 宅 デフレータ 持 ち 家 系 着 工 戸 数 ( 注 )1. 新 設 住 宅 着 工 戸 数 =3~39 歳 の 失 業 率 +25~44 歳 の 正 規 雇 用 者 数 +3~39 歳 の 資 金 調 達 可 能 額 + 民 間 住 宅 デフレータ+ 改 正 建 築 基 準 法 施 行 ダミー1+ 改 正 建 築 基 準 法 施 行 ダミー2+ 切 片 2. 網 掛 けは t 値 の 絶 対 値 が2 以 上 を 示 す 3. 要 因 分 解 式 : 新 設 住 宅 着 工 戸 数 =(X 1 i-x 1 )β 1 +(X 2 i-x 2 )β 2 +(X 3 i-x 3 )β 3 +(X 4 i-x 4 )β 4 +(X 5 i- X 5 )β 5 +(X 6 i-x 6 )β 6 +u X 1 : 3~39 歳 の 失 業 率 X 2 : 25~44 歳 の 正 規 雇 用 者 数 X 3 : 3~39 歳 の 資 金 調 達 可 能 額 X 4 : 民 間 住 宅 デフレータ X 5 : 改 正 建 築 基 準 法 施 行 ダミー1 X 6 : 改 正 建 築 基 準 法 施 行 ダミー2 X i : 各 変 数 の 値 X : 各 変 数 の 平 均 値 β k : 各 変 数 のパラメータ u: 残 差 資 料 : 国 民 経 済 計 算 ( 内 閣 府 ) 建 築 着 工 統 計 ( 国 土 交 通 省 ) 家 計 調 査 労 働 力 調 査 ( 総 務 省 ) ( 日 銀 ) (3) まとめ 低 迷 している 住 宅 投 資 の 状 況 を 人 口 要 因 住 宅 取 得 能 力 マインド 要 因 から 検 証 し た 回 帰 分 析 の 結 果 住 宅 着 工 戸 数 の 低 迷 は 以 降 では 住 宅 価 格 上 昇 の 影 響 を 受 け 21 に 入 ってからは 資 金 調 達 可 能 額 の 低 下 や 雇 用 情 勢 の 悪 化 によることが 推 測 された 人 口 要 因 でみると 住 宅 取 得 齢 層 の 人 口 は 現 在 ピークを 迎 える 一 方 住 宅 は 供 給 過 剰 であるため 今 後 はマイナスに 寄 与 していくと 思 われる しかし 足 下 では 土 地 売 買 業 が マンション 分 譲 業 と 比 較 すると 好 調 ともいえるほど 水 準 が 高 いことから 戸 建 て 住 宅 に 関 しては 潜 在 的 な 需 要 があると 思 われる( 第 -2-2 - 87 -
平 成 21 間 回 顧 5 図 ) 今 後 雇 用 情 勢 が 好 転 し 将 来 不 安 が 軽 減 されることにより 住 宅 需 要 が 回 復 さ れることを 期 待 したい 第 -2-25 図 戸 建 住 宅 売 買 業 マンション 分 譲 業 及 び 土 地 売 買 業 の 推 移 ( =1, 季 節 調 整 済 ) 14 13 1 11 1 9 8 7 6 5 4 戸 建 住 宅 売 買 業 マンション 分 譲 業 土 地 売 買 業 21 資 料 : 第 3 次 産 業 活 動 指 数 本 稿 では 住 宅 取 得 者 の 側 から 需 要 の 動 向 について 検 証 したが 住 宅 供 給 側 の 資 金 調 達 環 境 や 在 庫 調 整 などの 動 向 についても 検 証 する 必 要 があるであろう - 88 -