うつ 病 と 家 族 ハートクリニック 武 田 勇 哉
うつ 病 とは? 落 ち 込 む 何 も 楽 しめない 疲 れやすい といった 状 態 が 長 く 続 く 疾 患 誰 しも 落 ち 込 む 事 はあります 正 常 の 落 ち 込 み と うつ 病 の 違 いは うつ 病 は 落 ち 込 みが2 週 間 以 上 続 き またそれにより 日 常 社 会 生 活 に 支 障 をきたしているところです
なんで 起 こるの? 脳 内 のセロトニンのバランス 異 常 様 々なストレス 因 子 ( 職 場 家 庭 など) 性 格 によるもの(まじめ 完 璧 主 義 ) などが 複 合 的 に 関 与 し 発 症 すると 言 われています
診 断 下 記 を 満 たす 事 が 必 要 になります( 平 易 な 表 現 に 改 定 していま す ) 大 項 目 気 持 ちが 落 ち 込 む 何 も 楽 しめない 疲 れやすい 小 項 目 集 中 できない 自 己 評 価 が 低 い 自 信 が 持 てない 自 分 に 価 値 を 感 じられない 自 分 を 責 める 将 来 に 希 望 が 持 てない 悲 観 的 自 傷 自 殺 の 考 えあるいは 行 為 食 欲 がでない 睡 眠 の 障 害 軽 症 : 大 項 目 2つ 小 項 目 2つ 以 上 日 常 社 会 生 活 は 何 とか 保 たれる 中 等 症 : 大 項 目 2つと 小 項 目 3つ 以 上 日 常 社 会 生 活 が 困 難 になる 重 症 : 大 項 目 3つと 小 項 目 4つ 以 上 日 常 社 会 生 活 が 極 めて 困 難
治 療 お 薬 と 休 養 が 二 本 柱 です 認 知 行 動 療 法 などの 精 神 療 法 を 併 用 する 事 も あります 休 職 などでストレス 因 子 を 除 去 し 規 則 正 しい 生 活 を 保 ちながら お 薬 を 続 けます 気 分 の 改 善 が 得 られれば 徐 々に 負 荷 をかけ 復 帰 を 目 指 します
お 薬 の 説 明 SSRI SNRIなどが 第 一 選 択 薬 として 使 われます 効 果 不 十 分 例 無 効 例 上 記 薬 物 を 使 えない 方 など ではその 他 の 抗 うつ 薬 (NaSSA 三 環 系 抗 うつ 薬 四 環 系 抗 うつ 薬 等 )や その 他 の 増 強 療 法 (アリピプ ラゾール 等 の 抗 精 神 病 薬 炭 酸 リチウム 甲 状 腺 ホ ルモン 等 )も 使 用 します
SSRI( 選 択 的 セロトニン 再 取 込 み 阻 害 薬 ) 副 作 用 が 少 なく 安 全 性 の 高 い うつ 病 の 第 一 選 択 薬 です 脳 内 のセロトニンを 増 やす 事 で 気 分 を 改 善 し 不 安 を 取 り 除 きます 副 作 用 に 吐 気 食 欲 不 振 便 秘 下 痢 体 重 増 加 などが あり ます 副 作 用 は 一 過 性 である 事 も 多 く 内 服 継 続 に 伴 い 軽 減 さ れていく 事 もあります 商 品 名 パキシル ジェイゾロフト ルボックス デプロメール レクサプロなど
SNRI(セロトニン ノルアドレナリン 再 取 込 阻 害 薬 ) セロトニンの 他 ノルアドレナリンを 増 やす 事 で 意 欲 も 高 めます SSRI 無 効 例 や やる 気 が 出 ない おっくう と いった 症 状 が 強 い 方 に 使 われます SSRIより 早 く 効 く 点 も 特 徴 です 副 作 用 は SSRIと 類 似 していますが より 少 ないと 言 われて います イライラ 不 眠 が 出 現 する 事 があります 商 品 名 トレドミン サインバルタ
NaSSA(ノルアドレナリン セロトニン 作 動 薬 ) セロトニン ノルアドレナリンを 増 やす 事 によって 気 分 改 善 意 欲 亢 進 等 をはかります 副 作 用 に 眠 気 (50%)がみられます その 他 体 重 増 加 口 渇 便 秘 などもあります 商 品 名 リフレックス レメロン
3 環 系 抗 うつ 薬 (TCA) 最 初 に 開 発 された 抗 うつ 薬 です 強 い 気 分 改 善 意 欲 改 善 作 用 がありますが 副 作 用 も 強 く 認 めるため 安 全 性 で 他 剤 に 劣 ります しかしSSRIなどで 効 果 不 十 分 例 に 有 効 な 事 が あります 商 品 名 トフラニール トルプタノール アモキサン アナフラニール ノリトレン プロチ アデンなど
4 環 系 抗 うつ 薬 3 環 系 抗 うつ 薬 の 次 に 開 発 された 抗 うつ 薬 です 3 環 系 よりも 作 用 副 作 用 の 両 面 で 弱 いお 薬 です 商 品 名 ルジオミール テトラミドなど
その 他 デジレル レスリン 特 にセロトニン2A 受 容 体 を 阻 害 します うつ 症 状 の 他 特 に 不 眠 に 有 効 なお 薬 です ドグマチール 胃 薬 として 開 発 された 薬 ですが 気 分 改 善 作 用 もあるため うつ 病 にも 使 われるようになったお 薬 です 胃 腸 系 の 副 作 用 が 少 ないですが 反 面 乳 汁 分 泌 ホルモンなどを 上 昇 させる 事 があります
離 脱 症 状 抗 うつ 薬 は 急 に 中 断 する 事 で 離 脱 症 状 が 生 じます 急 激 に 薬 の 血 中 濃 度 が 下 がる 事 で 頭 痛 や 吐 き 気 不 眠 強 い 不 安 感 などが 起 こります 自 分 の 判 断 で お 薬 を 急 にやめないようにしましょう
認 知 行 動 療 法 (CBT) 軽 症 及 び 中 等 症 のうつ 病 の 方 に 有 効 です うつ 病 の 発 症 の 原 因 となる 物 事 に 対 する ネガティブな 考 え を 改 善 させます 認 知 の 歪 みを 医 師 臨 床 心 理 士 とのお 話 の 中 で 治 していきます 即 効 性 はありませんが 自 身 の 認 知 の 歪 みを 修 正 するため 再 発 予 防 にも 大 きな 効 果 があります
リワーク 職 場 復 帰 支 援 うつ 病 で 病 休 となっている 患 者 様 が 復 帰 するた めにクリニックや 病 院 で 行 われます ほぼ 日 本 独 自 の 方 法 で ロールプレイや 運 動 療 法 集 団 認 知 療 法 など 多 彩 な 技 法 が 含 まれる
治 療 の 流 れ 1.うつ 病 と 診 断 されたら ストレス 因 子 の 除 去 ( 休 職 など) 及 び 内 服 加 療 を 開 始 します 2.ある 程 度 症 状 が 改 善 したら 精 神 療 法 も 併 用 します また 復 帰 に 向 けて 少 しずつ 負 荷 をかけていきます ( 外 出 する 趣 味 を 再 開 する など) 3. 悪 化 がない 事 を 確 認 しながら 徐 々に 負 荷 をあげていきます 仕 事 に 復 帰 する 際 も 半 日 勤 務 定 時 までの 勤 務 少 量 の 残 業 あり 勤 務 と 徐 々に 負 荷 をかけていく 事 が 理 想 です 4. 再 発 を 防 ぐため 症 状 が 改 善 しても1~2 年 は 通 院 加 療 を 継 続 しましょ う
治 療 の 流 れ
休 職 のポイント 休 職 中 罪 悪 感 申 し 訳 なさ を 感 じてしまう 方 が 多 い 休 んでいて 申 し 訳 ない サボってると 思 われてないだろうか? など これでは 十 分 休 めないため 改 善 しにくい 今 は 休 む 事 が 自 分 の 仕 事 と 考 えて ゆっくり 休 みま しょう
ご 家 族 に 気 を 付 けて 欲 しい 事 穏 やかな 環 境 つくりを 本 人 の 気 持 ちが 安 定 しないと いくらお 薬 を 使 っても 治 す 事 はできません ケンカの 多 い 家 小 言 ばかり 言 われる 家 だと 患 者 さんは 安 らぐ 事 ができ ません いつも 通 りに 接 してあげよう 必 要 以 上 に 気 を 使 ってしまうと 患 者 さんは 更 に 責 任 を 感 じてしまいます 特 別 扱 いせず いつも 通 りに 接 してあげる 事 が 一 番 です 生 活 のリズムだけは 乱 さないで! 休 職 になると 自 宅 で 過 ごす 時 間 が 多 くなるため 生 活 のリズムが 乱 れがち です 昼 夜 逆 転 の 生 活 を 送 ってしまうと 精 神 衛 生 上 もよくありません 規 則 正 しい 睡 眠 食 事 をサポートしてあげてください
現 代 型 のうつ 病 の 特 徴 1 上 記 のようなメランコリー 型 ではなく 他 罰 的 で 過 眠 や 過 食 を 伴 うことがある 2 大 うつ 病 性 であるが 時 に 双 極 の 色 彩 を 持 つことがある 3 社 交 不 安 障 害 やパニック 障 害 あるいは 摂 食 障 害 パーソナリティ 障 害 等 の 他 の 精 神 疾 患 と 併 発 することがある
現 代 型 うつ 病 の 概 念 社 会 構 造 の 変 化 によって 組 織 や 社 会 ではなく 自 分 のペースを 守 りたいという 心 理 が 強 くなり 一 部 のうつ 病 が 従 来 とは 違 った 形 を 示 している と 考 えられます 薬 も 効 きにくいなど 治 療 法 もこれから 開 発 し なければならない 面 があるが 改 善 することも 稀 ではないと 言 われています 抗 うつ 薬 等 の 薬 物 療 法 は 下 地 としてあってもよ いが 主 役 ではない
治 療 1 モノアミン 酸 化 酵 素 阻 害 薬 ( 日 本 では 使 用 不 可 ) ドパミンノルアドレナリン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 ( 本 邦 治 験 中 ) 電 気 けいれん 療 法 ( 従 来 型 のうつ 病 に 対 する 寛 解 率 よりも 高 かったという 報 告 もある) 逆 植 物 症 状 ( 過 食 過 眠 等 ) 併 発 する 不 安 障 害 や 機 能 的 身 体 症 状 などに 焦 点 を 当 てた 薬 物 療 法 ( 抗 うつ 薬 抗 精 神 病 薬 気 分 安 定 薬 抗 不 安 薬 等 )
治 療 2 過 眠 には セルトラリン アリピプラゾール 高 照 度 光 療 法 日 常 生 活 指 導 等 倦 怠 感 ( 麻 痺 症 状 )には 上 記 のドパミン 系 に 作 動 する 薬 物 アモキサピンやドスレピンも 使 われる 適 度 な 有 酸 素 運 動 のエクササイズなどの 運 動 療 法 不 安 恐 怖 には SSRI イミプラミンのような 昔 ながらのTCAの 方 が 効 果 があるという 専 門 家 もいる 月 経 前 の 苛 立 ち 不 安 怒 り 抑 うつには SSRI 当 帰 芍 薬 散 や 加 味 逍 遥 散 等 の 漢 方 薬 低 用 量 ピル 疼 痛 には SNRI アミトリプチリン 等 激 しい 問 題 行 動 には バルプロ 酸 をはじめとする 気 分 安 定 薬 オランザピンなどの 非 定 型 抗 精 神 病 薬 リスペリドン アリ ピプラゾールの 内 用 液
現 代 型 うつ 病 の 対 応 の 仕 方 現 代 型 うつ 病 の 患 者 様 達 は 周 囲 の 人 の 言 葉 に 敏 感 に 反 応 します そして 被 害 的 に 受 け 取 りやすく ( 自 分 は 悪 くなく) 周 囲 が 悪 い と 他 罰 的 になります うつの 急 性 期 においては 従 来 型 うつと 同 様 に 本 人 の 話 に 耳 を 傾 け 理 解 に 努 め 無 理 をしないよう 保 護 的 に 関 わるのはいいと 思 います しかしその 対 応 をいつまでも 続 けていると 現 代 型 うつ 病 の 患 者 さ んは 安 住 してしまい 先 へ 踏 み 出 せなくなってしまうことがありま す これは 現 実 逃 避 傾 向 が 強 いからと 考 えられております 急 性 期 を 過 ぎたら 自 立 を 促 すために 本 人 と 適 度 な 心 理 的 距 離 をと りながら 本 人 ができることは 本 人 にしてもらい 達 成 できればそ れに 対 して 評 価 する(ほめる 育 てる)という 対 処 方 法 が 比 較 的 効 果 があるように 思 います 小 さな 成 功 体 験 の 積 み 重 ねが 自 信 へと 繋 がります 逆 に 一 方 的 で 命 令 調 な 物 言 いや マイナス 面 を 指 摘 するようなや り 方 は 強 い 拒 否 反 応 を 生 むばかりか 事 態 をますます 悪 化 させる ので 要 注 意 です 遅 刻 や 欠 勤 その 他 問 題 行 動 がくりかえされるよ うであれば 就 業 規 則 などに 照 らして 客 観 的 に 会 社 側 の 対 応 内 容 を 伝 えることです 言 行 不 一 致 にならないよう 組 織 としての 一 貫 した 対 応 が 必 要 です
新 しい 検 査 NIRS- 近 赤 外 光 を 用 いて 脳 活 動 を 測 定 する 方 法 精 神 疾 患 の 鑑 別 に 対 して 有 効 (2009 年 より 先 進 医 療 として 認 可 されています)
新 しい 検 査 採 血 で 分 かる? まだ 研 究 段 階 ですが 広 島 大 学 にてBDNF( 脳 由 来 神 経 栄 養 因 子 )の メチ ル 化 の 程 度 を 調 べる 事 で うつ 病 の 程 度 が 分 かるのでは と 言 われています 将 来 的 にはBDNFを 測 定 する 事 で うつ 病 の 重 症 度 や 薬 剤 の 聞 き 具 合 が 分 かり より 適 切 な 治 療 ができるようになるかもしれません
ご 家 族 自 身 の 人 生 を 大 切 に 私 たちは 自 分 にゆとりがあればこそ 頑 張 りが 利 いたり 人 に 優 しくすることがで きたりします 自 分 自 身 の 人 生 をどうぞ 大 切 にしてくださ い そして 身 近 なかたがたとのお 付 き 合 いは 遠 慮 しないで 皆 さんらしいやり 方 で 楽 しんでください ご 清 聴 ありがとうございました