第 5 章 Ti 析 出 物 による 局 部 伸 びに 優 れた 熱 延 鋼 板 の 開 発 5-1 緒 言 第 2 章 から 第 4 章 において フェライト 相 単 相 鋼 である 極 低 炭 素 鋼 を 対 象 として 固 溶 元 素 の 存 在 形 態 によるr 値 への 影 響 を 検 討 した この 結 果 固 溶 C N Bの 存 在 形 態 の 制 御 によってr 値 を 向 上 させ 得 ることが 明 確 となった r 値 は 切 り 欠 き 伸 びと 相 関 があることは 第 1 章 で 記 述 した 通 りであり 熱 延 板 における 穴 拡 げ 性 の 向 上 にはこの 知 見 が 有 効 であると 考 えられる 一 方 一 般 に 鋼 板 強 度 が 高 くなると 伸 びや 穴 拡 げ 性 などのいわゆる 成 形 性 が 低 下 すると いう 問 題 があり 高 強 度 鋼 板 の 適 用 を 妨 げる 要 因 の1つとなっている この 問 題 に 対 して 結 晶 粒 の 微 細 化 は 高 強 度 化 と 同 時 に 局 部 延 性 を 向 上 させるという 報 告 1) があり 他 の 強 化 法 と 比 較 して 成 形 性 の 低 下 を 抑 制 できる 可 能 性 がある また 低 合 金 成 分 で 高 強 度 化 でき ることから 経 済 的 な 面 でも 利 点 があると 考 えられる このような 理 由 で 近 年 粒 界 強 化 を 利 用 した 微 細 粒 鋼 が 注 目 されつつある 2~8) 結 晶 粒 微 細 化 の 手 段 としては 種 々 検 討 されている 5-7) が これらの 方 法 を 薄 鋼 板 製 造 プ ロセスに 適 用 するには 加 工 度 加 工 温 度 冷 却 速 度 などの 点 で 困 難 な 点 が 多 い そこで 現 有 の 圧 延 設 備 で 容 易 に 実 施 できるフェライト 組 織 微 細 化 の 手 法 として 熱 間 圧 延 中 の 動 的 再 結 晶 9-16) を 利 用 することを 検 討 し そのための 重 要 な 条 件 として 低 炭 素 鋼 に 適 量 の Tiを 添 加 しTiCを 析 出 させ 加 工 前 のγ 粒 径 を 制 御 することにより 動 的 再 結 晶 を 発 現 さ せ フェライト 粒 の 微 細 化 による 局 部 延 性 に 優 れた 鋼 板 を 開 発 した 5-2 実 験 方 法 Table5-1に 示 す Ti 量 を 変 化 させた 化 学 成 分 の 低 炭 素 鋼 を 真 空 中 で 溶 製 し 厚 さ30 mmのスラブに 鍛 造 した この 鍛 造 材 より 直 径 8mm 高 さ12mmの 単 軸 圧 縮 用 試 験 片 を 高 さ 方 向 が 鍛 造 材 の 板 厚 方 向 となるように 採 取 した 試 験 片 は 加 熱 冷 却 が 可 能 な 単 軸 圧 縮 試 験 機 ( 富 士 電 波 社 製 ;ThermecMasterZ)を 用 いて 室 温 から 昇 温 速 度 30K/ sで 所 定 の 温 度 に 加 熱 し 1150 から1250 で900 秒 間 加 熱 した 後 850 83
で 減 厚 率 50%(ε=0.69)で 加 工 し 50 /sで 室 温 まで 冷 却 した 単 軸 圧 縮 の 歪 み 速 度 は0.4/sと 一 定 である 実 験 方 法 を Fig.5-1に 示 す なお 各 試 料 を 1273K で 加 熱 後 K/sで 冷 却 時 の 膨 張 測 定 から 供 試 鋼 の 変 態 点 (Ar 3 )を 求 めた 結 果 Ti 量 によらずほぼ800 一 定 であった よって いずれの 鋼 種 においても850 はγ 単 相 域 である 圧 縮 中 の 応 力 歪 み 変 化 を 測 定 し 真 応 力 - 真 歪 み 曲 線 の 形 状 から 動 的 再 結 晶 発 現 の 有 無 を 調 べた Table5-1 供 試 鋼 の 化 学 成 分 /mass% C Si Mn P S Ti N A 0.070 0.50 0.61 0.009 0.001 0.052 0.0023 B 0.067 0.50 0.62 0.009 0.001 0.105 0.0022 C 0.074 0.50 0.62 0.009 0.001 0.156 0.0021 D 0.068 0.50 0.60 0.011 0.001 0.217 0.0021 8mm 加 熱 温 度 1150-1250 X30 分 850 で 50% 圧 縮 (ε=0.4/s) 組 織 観 察 12mm 水 冷 組 織 観 察 Fig.5-1 実 験 方 法 一 般 に 動 的 再 結 晶 が 生 じている 場 合 Fig.5-2に 示 すような 真 応 力 - 真 歪 み 曲 線 を 示 す ことが 知 られている 17) すなわち εpまでの 歪 み 量 まで 応 力 は 増 加 し ε p でσ p の 最 大 応 力 を 示 したあと ε p 以 上 の 歪 みでは 応 力 が 減 少 しσ s の 定 常 応 力 を 示 す 動 的 変 態 が 生 じた 場 合 にも 最 大 応 力 が 観 察 されるが 最 大 に 達 した 後 の 応 力 が 直 線 的 に 減 少 すること 84
が 知 られており 18) 今 回 試 験 した 限 りにおいてはいずれも 動 的 再 結 晶 型 のみが 観 察 され る 真 応 力 加 工 硬 化 動 的 再 結 晶 εs 真 歪 み Fig.5-2 動 的 再 結 晶 時 の 応 力 -ひずみ 曲 線 圧 縮 試 験 後 試 験 片 中 央 部 を 圧 縮 軸 に 平 行 方 向 で 切 断 し ナイタールで 腐 食 した 後 切 断 面 の 中 心 部 を 光 学 顕 微 鏡 により 組 織 観 察 した まず 切 断 法 による 平 均 切 片 長 さLを 求 め これを 1.12 倍 してフェライト 公 称 粒 径 とした 19) また 各 加 熱 温 度 におけるγ 粒 径 と Ti 析 出 物 量 を 調 べるため 加 熱 後 直 ちに 水 冷 し 組 織 観 察 および 析 出 物 分 析 を 行 った 5-3 実 験 結 果 5-3-1 熱 間 加 工 時 の 応 力 - 歪 み 曲 線 に 及 ぼす 加 熱 温 度 および Ti 量 の 影 響 Fig.5-3に 圧 縮 試 験 時 の 真 歪 み- 真 応 力 曲 線 に 及 ぼす 加 熱 温 度 Ti 量 の 影 響 で 示 す 加 熱 温 度 が10 1250 と 高 温 の 場 合 は 歪 み 量 とともに 応 力 が 上 昇 する 加 工 硬 化 型 の 変 形 曲 線 を 示 した 一 方 加 熱 温 度 1150 では 低 Ti 量 (Ti=0.05%)のA 鋼 を 除 くといずれもひずみ 量 が 増 加 しても 変 形 応 力 は 増 加 せず 定 常 変 形 状 態 もしくは 一 旦 極 大 応 力 を 示 した 後 軟 化 する 傾 向 を 示 した 変 形 中 に 応 力 が 軟 化 する 傾 向 は Ti 量 が 増 加 するに 従 って 顕 著 となる 85
このように 0.1% 以 上 の Ti 添 加 鋼 を 1150 に 加 熱 した 場 合 には Fig.5-1に 示 した 現 象 と 同 様 の 変 形 応 力 の 変 化 を 示 したことから 動 的 再 結 晶 が 生 じたものと 考 えられる 真 応 力 /MPa 400 SteelA(0.05%Ti) 300 0 400 SteelC(0.15%Ti) 300 0 加 熱 温 度 1250 10 1150 400 SteelD(0.21%Ti) 300 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 真 ひずみ 0 0.2 0.4 0.6 0.8 0 0.2 0.4 0.6 真 ひずみ 真 ひずみ 0.8 Fig.5-3 圧 縮 試 験 時 の 真 ひずみ- 真 応 力 5-3-2 動 的 再 結 晶 挙 動 に 及 ぼす 加 工 前 組 織 の 影 響 Ti 添 加 低 炭 素 鋼 ではこれまで 低 温 γ 域 での 動 的 再 結 晶 はほとんど 報 告 されていない が 上 記 のように Ti 添 加 量 と 加 熱 温 度 を 適 正 化 することによって 動 的 再 結 晶 が 促 進 され る 可 能 性 が 示 唆 された 動 的 再 結 晶 には 加 工 前 の 結 晶 粒 径 が 影 響 する 17) ことが 知 られて おり 詳 細 を 議 論 するには Ti 添 加 量 と 加 熱 温 度 が 加 工 前 の 結 晶 粒 径 に 対 してどのように 影 響 しているかを 明 らかにしておく 必 要 がある そこでA,C,D 鋼 について1150 1250 に 加 熱 後 直 ちに 水 冷 し 加 工 前 の 初 期 γ 組 織 を 観 察 した その 結 果 を Fig.5-4に 示 す 1250 の 高 温 加 熱 では Ti 添 加 量 の 増 加 によりγ 粒 径 は 微 細 となるものの 各 鋼 とも0μm 以 上 の 粗 大 なγ 粒 である 1150 に 加 熱 温 度 を 低 下 させた 場 合 には 低 Ti 添 加 鋼 (A 鋼 )のγ 粒 径 は 0μmから 150μmに 微 細 となるものの その 程 度 は 小 さい しかし Ti 量 の 増 加 に 従 いγ 粒 組 織 は 86
微 細 となり Ti 量 の 影 響 が 顕 著 である Tiを 0.2% 添 加 した D 鋼 のγ 粒 径 は μmと 微 細 である SteelA(0.05%Ti) 加 熱 温 度 / 1150 1250 SteelC(0.15%Ti) 加 熱 温 度 / 1150 1250 150μm 0μm 40μm 180μm SteelD(0.21%Ti) 加 熱 温 度 / 1150 1250 μm 90μm 50μm Fig.5-4 加 工 前 の 初 期 γ 組 織 5-3-3 初 期 オーステナイト 粒 径 に 及 ぼす Ti 析 出 物 の 影 響 1150 での 低 温 加 熱 において 加 工 前 の 初 期 γ 粒 径 がもっとも 微 細 であった D 鋼 につ いて 加 熱 温 度 とTi 析 出 量 の 関 係 を 調 べた D 鋼 を0 ~1250 で900 秒 保 持 後 直 ちに 水 冷 し Ti 析 出 量 を 定 量 した 結 果 を Fig.5-5に 示 す 0 加 熱 では 添 加 したTi 量 の90% 以 上 が 加 熱 時 にTi(C N)として 析 出 しているのに 対 して 1250 加 熱 では 添 加 量 の 10%が 析 出 しているに 過 ぎない 87
1 00 Ti 析 出 物 比 率 /% 75 50 25 0 0 1150 1250 加 熱 温 度 / Fig.5-5 加 熱 温 度 によるTi 析 出 物 率 各 温 度 でのTi(C N)の 析 出 挙 動 を Thermo-Calc.により 計 算 した 結 果 を 実 測 値 と あわせて Fig.5-6に 示 す 加 熱 温 度 による 析 出 量 の 変 化 は 計 算 値 と 実 測 値 でよく 一 致 し ほぼ 平 衡 状 態 であることを 示 している このように 加 熱 段 階 でのTi(C N) 析 出 量 の 差 が 加 工 前 の 初 期 γ 粒 径 の 微 細 化 に 寄 与 することが 明 らかとなった 析 出 量 /mass% x10-2 28 24 16 12 8 4 Ti C 測 定 値 0600 800 0 10 加 熱 温 度 / Fig.5-6 Thermo.Calc.と 実 験 によるTi 析 出 量 の 温 度 変 化 88
また Ti 析 出 物 の 電 子 顕 微 鏡 による 観 察 結 果 を Fig.5-7に 示 す 主 として 0.1μm 以 下 の 微 細 なTi(C N)が 観 察 された Ti 析 出 物 はγ 粒 成 長 の 抑 制 に 加 えてγ α 変 態 の 促 進 や 再 結 晶 時 のフェライト 粒 の 粒 成 長 抑 制 にも 効 果 があると 言 われており これ らが 相 乗 して 最 終 的 なフェライト 粒 微 細 化 に 寄 与 している 可 能 性 がある この 点 について はさらに 検 討 を 進 めている 0.1μm Fig.5-7 Ti 析 出 物 のTEM 観 察 5-3-4 フェライト 粒 径 に 及 ぼす 動 的 再 結 晶 の 影 響 加 熱 温 度 1150 ~1250 で900 秒 間 加 熱 後 歪 速 度 0.4/s, 減 厚 率 50% (ε=0.69)で 圧 縮 試 験 後 のフェライト 粒 径 を 光 学 顕 微 鏡 で 観 察 し 平 均 結 晶 粒 径 を 求 め た 結 果 を Fig.5-8に 示 す なお 圧 縮 試 験 後 の 冷 却 速 度 は50 /sとした Ti 量 の 増 加 あるいは 加 熱 温 度 の 低 下 にともなって 粒 が 微 細 化 する 傾 向 が 認 められる 加 熱 温 度 が 1250 の 場 合 鋼 中 Ti 量 を0.21%まで 増 加 しても 平 均 粒 径 は10μm 以 上 と 大 き く しかも 混 粒 組 織 であった 一 方 Ti=0.21%の D 鋼 を1150 で 加 熱 した 場 合 の 粒 が 最 も 微 細 で かつ 均 一 であった すなわち 動 的 再 結 晶 が 発 現 した 場 合 変 態 後 に は 微 細 で 等 軸 なα 粒 が 得 られることがわかる 89
平 均 フェライト 粒 径 /μm 15 10 5 Ti=0.05% Ti=0.10% Ti=0.15% Ti=0.21% 0 1150 10 1250 加 熱 温 度 / Fig.5-8 フェライト 粒 径 に 及 ぼす 加 熱 温 度 およびTi 添 加 量 の 影 響 5-4 考 察 5-4-1 Ti 添 加 鋼 の 動 的 再 結 晶 による 見 かけの 活 性 化 エネルギー 低 炭 素 鋼 に0.1% 以 上 のTiを 添 加 し 低 温 に 加 熱 した 鋼 では 上 述 のように 低 温 γ 域 でも 動 的 再 結 晶 が 生 じることが 明 らかとなった そこで C-Ti 鋼 の 動 的 再 結 晶 挙 動 を. Zenner-Hollomon 因 子 Z(=εexp(Q/RT) 以 下 Z 因 子 と 記 載 )で 整 理 する 17) ことを 考 え る 酒 井 らは 動 的 再 結 晶 に 伴 って 現 れる 典 型 的 な 応 力 -ひずみ(σ-ε) 曲 線 は 低 Z 変 形 で は 多 重 ピーク 型 高 Zになるに 従 い 単 一 ピーク 後 滑 らかに 加 工 軟 化 し 高 ひずみではいず れも 変 形 応 力 がほぼ 一 定 となる 定 常 状 態 変 形 を 示 すようになる ) と 結 論 している 今 回 T i 添 加 鋼 で 動 的 再 結 晶 が 起 きた 場 合 に 得 られたσ-ε 曲 線 はいすれも 単 一 ピーク 型 形 状 で あることから 今 回 の 動 的 再 結 晶 は 比 較 的 高 Z 領 域 で 生 じたものと 考 えられる. 動 的 再 結 晶 の kineticsは Z 因 子 で 代 表 される 加 工 温 度 (T)と 歪 み 速 度 (ε )によって 決 定 される 加 工 温 度 が 低 くなるほど 歪 み 速 度 が 大 きくなるほど すなわち Z 因 子 が 大 きく なるほど 動 的 再 結 晶 を 生 じる 臨 界 歪 量 は 大 きくなり 動 的 再 結 晶 は 生 じにくくなる 一 方 牧 ら 21) は 動 的 再 結 晶 後 のγ 粒 径 はZ 因 子 が 大 きいほど 小 さくなること 初 期 γ 粒 径 (D 0 )が 小 さくなるほど 動 的 再 結 晶 の 生 じる 変 形 条 件 が 高 Z 側 に 拡 大 すること を 明 らか 90
にしている 本 実 験 においてTi 添 加 および 加 熱 温 度 の 低 温 化 は 加 工 前 の 初 期 γ 粒 径 の 粒 成 長 を 抑 制 して 微 細 する 効 果 があり これにより 動 的 再 結 晶 が 起 こり 易 くなることが 判 明 した また 動 的 再 結 晶 により 微 細 なγ 粒 組 織 が 得 られるのは 粒 成 長 の 抑 制 によるもので あり 変 態 後 の 微 細 なα 粒 を 得 るのに 効 果 的 であったものと 考 えられる また 実 際 の 熱 間 圧 延 工 程 を 考 えた 場 合 本 実 験 の 結 果 は 仕 上 圧 延 に 相 当 する 低 温 γ 域 高 歪 速 度 域 での 動 的 再 結 晶 が 可 能 であることを 示 しており 工 業 的 な 観 点 からも 有 益 な 情 報 である ところで 本 鋼 においてZ 因 子 を 決 定 するためにはみかけの 活 性 化 エネルギーQの 値 が.. 必 要 となる 一 般 に 極 大 応 力 σ p と 変 形 条 件 (T ε)の 間 には 通 常 ε=aσ n p exp(-q/rt) が 成 立 することが 知 られている そこで 化 学 組 成 が 0.12%C-0.7%Si-1.4%Mn-0.16% Ti 鋼 を 用 いて 加 工 フォーマスターにより 加 熱 温 度 を1150 とし 歪 み 速 度 =0. 01/s 0.1/s 1/s 変 形 温 度 =0 1 1150 歪 み 量 =0.69で 変 形 させた 圧 縮 加 工 実 験 を 行 った この 時 の 初 期 γ 粒 径 は40μmであった すべての 実 験 条 件 において 変 形 途 中 にピーク 応 力 (σ p )を 示 す 真 応 力 - 真 歪 み 曲 線 を 示.. した このピーク 応 力 (σ p )は 変 形 温 度 (T)とひずみ 速 度 (ε)との 関 係 式 ε=a*σ. p n *exp(-q/rt)で 表 される 従 って εとσ p の 関 係 から n を 求 めることができ また σ p と1/Tのアレニウス 型 プロットからみかけの 活 性 化 エネルギーを 求 める 事 ができる これらの 結 果 からみかけの 活 性 化 エネルギーQを 求 めた 結 果 本 鋼 においてQ=340k J/molを 得 た この 値 は 鉄 の 自 己 拡 散 エネルギー(285kJ/moll)より 若 干 大 き く Nb 添 加 鋼 について 牧 らが 報 告 25) した327kJ/molにほぼ 等 しい 値 となった す なわち 活 性 化 エネルギーの 点 からも 本 鋼 において 高 Z 領 域 まで 動 的 再 結 晶 が 生 じたこと を 傍 証 する 結 果 が 得 られた Fig.5-9にσ p とZの 関 係 を 示 す Z=Aσ pn の 関 係 が 成 立 し ている 91
2.2 2.1 Q=340kJ/mol Logσp 2.0 1.9 1.8 1.7 1.6 10 9 10 10 10 11 10 12 10 13 10 14 10 15 10 16 Z=εexp(Q/RT) Fig.5-9Zener-Holomonパラメーターによる 動 的 再 結 晶 の 検 証 以 上 のようにTi 添 加 低 炭 素 鋼 で 初 期 γ 粒 径 を 微 細 化 (50μm 以 下 )することにより 低 温 γ 域 まで 動 的 再 結 晶 が 生 じる 本 鋼 の 動 的 再 結 晶 はこれまで 研 究 された C-Mn 鋼 Nb 鋼 より 低 温 高 歪 み 速 度 で 生 じるため より 高 Z 変 形 となり γ 粒 の 微 細 化 には 効 果 的 で あることが 判 明 した 5-4-2 動 的 再 結 晶 挙 動 に 及 ぼす 固 溶 Cの 影 響 Ti 添 加 低 炭 素 鋼 の 動 的 再 結 晶 挙 動 が 主 として 初 期 γ 粒 径 に 依 存 しているかどうかを 明 らかにするには 固 溶 Cの 影 響 を 明 確 にしておく 必 要 がある そこで 種 々の C 量 (0.04 mass%~0.mass%)を 含 有 するTi 無 添 加 鋼 を 用 いて 動 的 再 結 晶 挙 動 におよぼす 加 工 前 γ 粒 径 の 影 響 を 検 討 した 92
0.04%C-0.5%Si-0.6%Mn-Ti 無 添 加 鋼 および 0.12%C-0.5%Si-0.6%Mn-Ti 無 添 加 鋼 を 加 工 フ ォーマスターにより 0 1050 1 に 加 熱 後 900 で 歪 み 速 度 0.4/s 歪 み 量 0.69の 圧 下 を 施 した 0.04%C 鋼 および 0.12%C 鋼 の 真 歪 み- 真 応 力 曲 線 を Fig.5-10 に 示 す 0.04%C 鋼 では0 1050 に 加 熱 後 圧 縮 した 場 合 に 動 的 再 結 晶 型 の 応 力 歪 み 曲 線 を 示 した 0.12%C 鋼 ではすべての 加 熱 温 度 において 動 的 再 結 晶 型 の 応 力 歪 み 曲 線 を 示 した 動 的 再 結 晶 の 有 無 を 初 期 γ 粒 径 で 整 理 して Fig.5-11に 示 す 固 溶 C 量 に 関 わらず 加 工 前 のγ 粒 径 を80μm 以 下 に 微 細 化 することに より 動 的 再 結 晶 が 発 現 する すなわち 動 的 再 結 晶 発 現 に 対 して 固 溶 C 量 はほとんど 影 響 しないことがわかる 真 応 力 /MPa 加 熱 温 度 0 1050 1 C=0.04% C=0.12% 160 160 140 140 1 1 80 80 60 60 40 40 0 0 0 0.10.2 0.30.4 0.50.60.70.8 0 0.1 0..3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 真 歪 み 真 歪 み Fig.5-10 真 ひずみ- 真 応 力 に 及 ぼす 鋼 中 C 量 の 影 響 次 に 固 溶 Tiの 影 響 について 考 察 する 動 的 再 結 晶 型 の 応 力 - 歪 み 曲 線 が 観 察 された C 鋼 D 鋼 におけるTiは 平 衡 溶 解 度 積 からの 計 算 ではいずれも1150 でTiCとし て 析 出 し 固 溶 Tiとしては 存 在 しない 実 験 的 には 十 分 平 衡 に 達 していたかどうか 疑 問 はあるが 供 試 鋼 はいずれもTi/Cは4 以 下 であり Ti 量 に 対 してC 量 を 過 剰 に 添 加 した 成 分 系 である 従 って 動 的 再 結 晶 が 観 察 された 温 度 域 ではTiはTiCとして 十 分 析 出 し 固 溶 Tiは 無 視 できる 程 度 であったと 推 定 する 93
1 初 期 オーステナイト 粒 径 / μm 80 60 40 0 0 0.040.08 0.1.16 0. 0.24 C 量 /mass% Fig.5-11 動 的 再 結 晶 の 発 現 に 及 ぼす 鋼 中 C 量 と 初 期 γ 粒 径 の 影 響 以 上 の 結 果 から Ti 添 加 鋼 の 動 的 再 結 晶 に 対 する 固 溶 Cの 影 響 はなく 本 論 文 成 分 で は 主 として 初 期 γ 粒 径 の 微 細 化 によって 動 的 再 結 晶 を 生 じ 易 くなったものと 考 えられる 5-4-3 穴 拡 げ 性 と 局 部 伸 びの 関 係 このように TiCの 析 出 により 動 的 再 結 晶 を 発 現 させ フェライト 粒 を 微 細 化 させた 熱 延 鋼 板 の 材 料 特 性 を Table5-2に 示 す 微 細 化 させることにより 穴 拡 げ 性 が 向 上 した この 原 因 として 局 部 伸 びおよび 切 り 欠 き 伸 び r 値 の 面 内 異 方 性 の 影 響 を Fig.5-12に 示 す 局 部 伸 び 切 り 欠 き 伸 びと 穴 拡 げ 性 は 良 い 相 関 を 示 し 穴 拡 げ 性 の 向 上 には 局 部 伸 びの 向 上 が 有 効 であることが 判 明 した Table5-2 開 発 鋼 の 材 料 特 性 YS TS (MPa) (MPa) El (%) λ FL (%) (MPa) 590MPa 級 開 発 鋼 従 来 鋼 480 510 600 600 31 27 1 60 280 250 780MPa 級 開 発 鋼 従 来 鋼 690 710 790 790 22 80 40 370 310 94
穴 拡 げ 率 /% 160 140 1 80 60 40 6 8 10 12 14 切 欠 伸 び/% 穴 拡 げ 率 /% 160 140 1 80 60 40-0.4-0.35-0.3-0.25-0.2 Δr Fig.5-12 穴 拡 げ 性 に 及 ぼす 切 り 欠 き 伸 びおよび 塑 性 異 方 性 の 影 響 5-5 小 括 低 炭 素 Ti 添 加 鋼 において TiC 析 出 により 動 的 再 結 晶 発 現 とフェライト 粒 の 微 細 化 が 可 能 であることを 明 確 にした (1) 加 熱 温 度 鋼 中 の Ti 量 によって 熱 間 圧 縮 時 の 応 力 - 歪 み 曲 線 は 影 響 を 受 け 初 期 γ 粒 径 を 50μm 以 下 とした 場 合 に 加 熱 温 度 1423K 歪 み 速 度 0.4/sで 動 的 再 結 晶 に 特 徴 的 な 応 力 - 歪 み 曲 線 を 示 す (2) 初 期 γ 粒 径 は 加 熱 時 に 析 出 する Ti(C,N) 量 と 対 応 しており 初 期 γ 粒 の 微 細 化 には Ti(C,N)によるγ 粒 界 のピンニングが 重 要 であることが 示 唆 される また Ti 無 添 加 鋼 においても 初 期 γ 粒 径 を 80μm 以 下 にすることにより 動 的 再 結 晶 型 真 ひずみ- 真 応 力 曲 線 を 示 すことから 動 的 再 結 晶 の 発 現 は 初 期 γ 粒 径 を 微 細 化 することが 重 要 でありことがわかる 動 的 再 結 晶 に 及 ぼす 固 溶 Cや 固 溶 Ti の 影 響 は 小 さいものと 考 えられる (3) 種 々の 加 工 条 件 下 で 得 られたピーク 応 力 は Z 因 子 を 用 いてよく 整 理 され これ より 求 めた 見 かけの 活 性 化 エネルギーは 340kJ/molである この 値 はγ 中 の 鉄 95
の 自 己 拡 散 における 活 性 化 エネルギー(285kJ/mol)より 若 干 大 きく Nb 添 加 低 炭 素 鋼 で 牧 らが 報 告 している 値 (327kJ/mol)に 近 い (4) 以 上 のように 微 細 粒 組 織 を 有 する 鋼 板 は 局 部 延 性 に 優 れる 事 から 穴 拡 げ 性 が 向 上 し 高 強 度 鋼 においても 高 い 成 形 性 を 有 する 5-6 参 考 文 献 (1) 鉄 鋼 の 高 温 変 形 - 進 歩 総 説 -, 鉄 鋼 基 礎 共 同 研 究 会 高 温 変 形 部 会, 日 本 鉄 鋼 協 会, (1979) (2) 平 成 9 年 度 フロンチテイア 構 造 材 料 研 究 センタープログレスレポート: 金 属 材 料 技 術 研 究 所 (3) E.Yasuhara A.Tosaka O.Furukimi M.Morita: 材 料 とプロセス,CAMP-ISIJ, 12(1999), 377 (4) 第 2 回 スーパーメタルシンポジウム 講 演 集 :JRCMRIMCOF(1999) (5) 結 晶 粒 微 細 化 への 新 アプローチ: 日 本 金 属 学 会 (00) (6) 第 3 回 スーパーメタルシンポジウム 講 演 集 :JRCMRIMCOF(01) (7) FifthWorkshopontheUltra-steel:NRIM(01) (8) MasaakiFujioka,YoshioAbe,YukitoOgiwara,YoshitakaAdati,TakuoHosodaand HidesatoMabuchi:CAMP-ISIJ,13(00),458 (9) T.Sakai:Recrystallization,TextureandTheirApplicationtoStructuralControl ISIJ,(1999),106 (10) R.A.P.DJAIGandJ.J.Jonas:JISI,210(1972),256 (11) C.M.SellarsandW.J.MCG.TEGAR:Int.Met.Rev.,17(1972),1 (12) MasahisaNakamuraandMasanoriUeki: 材 料,23(1974),182 (13) SeitaSakui,TakuSakaiandKazuoTakeishi: 鉄 と 鋼,62(1977),856 (14) T.SakaiandJ.J.Jonas:ActaMetall.,32(1984),189 (15) 大 橋 正 幸 遠 藤 孝 雄 酒 井 拓 : 日 本 金 属 学 会 誌 54(1990) 435 (16) TadashiMaki,KoichiAkasaka,KojiOkuno andimaotamura: 鉄 と 鋼,66(1980)1659 (17) T.MakiandI.Tamura: 材 料,30(1981),211 96
(18) YadaHiroshi:CommitteeonUltrafine-grainSteels,ISIJ,9(1991) (19) MinoruUmemoto:Bull.IronSteelInst.Jpn,2(1997),10 () T.Sakai: 鉄 と 鋼,81(1995),1 (21) T.Maki,K.AkasakaandI.Tamura:Proc.Int.Conf.OnThermomechanical ProcessingofMicroalloyedAustenite,AIME,Pittsburgh,(1981),217 97