はじめに 労 働 事 件 特 に 解 雇 退 職 の 場 合 事 件 解 決 過 程 で 社 会 保 険 労 働 保 険 の 扱 いが 問 題 となることがあります 例 えば 解 雇 が 無 効 となった 場 合 に 一 度 喪 失 した 厚 生 年 金 保 険 や 健 康 保 険 の 資 格 はど



Similar documents
平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

Microsoft Word - 12 職員退職手当規程_H 改正_

四 勤 続 20 年 を 超 え30 年 までの 期 間 については 勤 続 1 年 につき100 分 の200 五 勤 続 30 年 を 超 える 期 間 については 勤 続 1 年 につき100 分 の100 2 基 礎 調 整 額 は 職 員 が 退 職 し 解 雇 され 又 は 死 亡 した

Microsoft Word - 福祉医療費給付要綱

平 成 34 年 4 月 1 日 から 平 成 37 年 3 月 31 日 まで 64 歳 第 2 章 労 働 契 約 ( 再 雇 用 希 望 の 申 出 ) 第 3 条 再 雇 用 職 員 として 継 続 して 雇 用 されることを 希 望 する 者 は 定 年 退 職 日 の3か 月 前 まで

スライド 1

Taro-iryouhoken

(2) 勤 続 5 年 を 超 え 10 年 までの 期 間 については 勤 続 期 間 1 年 につき 本 俸 月 額 の100 分 の140 (3) 勤 続 10 年 を 超 え 20 年 までの 期 間 については 勤 続 期 間 1 年 につき 本 俸 月 額 の100 分 の180 (4)

平成16年度

 

弁護士報酬規定(抜粋)

(3) 育 児 休 業 (この 号 の 規 定 に 該 当 したことにより 当 該 育 児 休 業 に 係 る 子 について 既 にし たものを 除 く )の 終 了 後 3 月 以 上 の 期 間 を 経 過 した 場 合 ( 当 該 育 児 休 業 をした 教 職 員 が 当 該 育 児 休 業

2 前 項 に 定 める 日 に 支 給 する 給 与 は 総 額 給 与 を12 分 割 した 額 ( 以 下 給 与 月 額 という ) 扶 養 手 当 住 居 手 当 通 勤 手 当 単 身 赴 任 手 当 寒 冷 地 手 当 及 び 業 績 手 当 並 びに 前 月 分 の 超 過 勤 務

Microsoft Word - 05_roumuhisaisoku

Microsoft Word 日本年金機構職員退職手当規程(規程第36号)

桜井市外国人高齢者及び外国人重度心身障害者特別給付金支給要綱

要 な 指 示 をさせることができる ( 検 査 ) 第 8 条 甲 は 乙 の 業 務 にかかる 契 約 履 行 状 況 について 作 業 完 了 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする ( 発 生 した 著 作 権 等 の 帰 属 ) 第 9 条 業 務 によって 甲 が 乙 に

スライド 1

(2) 懲 戒 については 戒 告 は 3 ヵ 月 減 給 は 6 ヵ 月 停 職 は 9 ヵ 月 4 病 気 休 暇 休 職 欠 勤 により 勤 務 しなかった 職 員 が 再 び 勤 務 するに 至 った 場 合 において 他 の 職 員 との 均 衡 上 必 要 があると 認 められるときは

平 均 賃 金 を 支 払 わなければならない この 予 告 日 数 は 平 均 賃 金 を 支 払 った 日 数 分 短 縮 される( 労 基 法 20 条 ) 3 試 用 期 間 中 の 労 働 者 であっても 14 日 を 超 えて 雇 用 された 場 合 は 上 記 2の 予 告 の 手 続

[ 組 合 員 期 間 等 の 特 例 ] 組 合 員 期 間 等 については 年 齢 職 種 などにより 過 去 の 制 度 からの 経 過 措 置 が 設 けられ ており 被 用 者 年 制 度 の 加 入 期 間 ( 各 共 済 組 合 の 組 合 員 期 間 など)については 生 年 月 日

240709

【労働保険事務組合事務処理規約】

賃 金 報 酬 給 与 とは ( 労 働 基 準 法 の 賃 金 ) ( 労 働 基 準 法 この 法 律 ) で 賃 金 とは 賃 金 給 料 手 当 賞 与 その 他 名 称 の 如 何 を 問 わず 労 働 の 対 償 として 使 用 者 が 労 働 者 に 支 払 うすべてのものをいう (

定款

Microsoft Word - 制度の概要_ED.docx

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

職員退職手当規程

< 現 在 の 我 が 国 D&O 保 険 の 基 本 的 な 設 計 (イメージ)> < 一 般 的 な 補 償 の 範 囲 の 概 要 > 請 求 の 形 態 会 社 の 役 員 会 社 による 請 求 に 対 する 損 免 責 事 由 の 場 合 に 害 賠 償 請 求 は 補 償 されず(

< F2D824F C D9197A791E58A C938C8B9E>

年 間 収 入 が 130 万 円 未 満 (60 歳 以 上 75 歳 未 満 の 人 や 一 定 障 害 者 の 場 合 は 180 万 円 未 満 )であって かつ 被 保 険 者 の 年 間 収 入 の 2 分 の 1 未 満 である 場 合 は 被 扶 養 者 となります ( 同 居 の

2 前 項 前 段 の 規 定 にかかわらず 年 俸 制 教 職 員 から 申 し 出 があった 場 合 においては 労 使 協 定 に 基 づき その 者 に 対 する 給 与 の 全 額 又 は 一 部 を 年 俸 制 教 職 員 が 希 望 する 金 融 機 関 等 の 本 人 名 義 の 口

就 業 規 則 ( 福 利 厚 生 ) 第 章 福 利 厚 生 ( 死 亡 弔 慰 金 等 ) 第 条 法 人 が 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 民 間 社 会 福 祉 施 設 等 職 員 共 済 規 程 に 基 づき 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 との 間 において 締 結 す

(2) 特 別 障 害 給 付 金 国 民 年 金 に 任 意 加 入 していなかったことにより 障 害 基 礎 年 金 等 を 受 給 していない 障 がい 者 の 方 に 対 し 福 祉 的 措 置 として 給 付 金 の 支 給 を 行 う 制 度 です 支 給 対 象 者 平 成 3 年 3

育児・介護休業等に関する規則

(6) 31 年 以 上 の 期 間 については 1 年 につき100 分 の120 2 前 項 に 規 定 する 者 のうち 負 傷 若 しくは 病 気 ( 以 下 傷 病 という 傷 病 は 国 家 公 務 員 共 済 組 合 法 ( 昭 和 33 年 法 律 第 128 号 ) 第 81 条

(4) 運 転 する 学 校 職 員 が 交 通 事 故 を 起 こし 若 しくは 交 通 法 規 に 違 反 したことにより 刑 法 ( 明 治 40 年 法 律 第 45 号 ) 若 しくは 道 路 交 通 法 に 基 づく 刑 罰 を 科 せられてから1 年 を 経 過 していない 場 合 同

退職手当とは

Microsoft Word - 04特定任期付職員(特任事務)給与規程【溶込】

該 介 護 休 業 が 終 了 する 日 までに, 当 該 介 護 休 業 に 係 る 対 象 家 族 が 死 亡 したとき 又 は 離 婚, 婚 姻 の 取 消, 離 縁 等 により 当 該 介 護 休 業 に 係 る 対 象 家 族 との 親 族 関 係 が 消 滅 した とき (3) 配 偶

Microsoft Word - 基金規約(新).docx

年 支 給 開 始 年 齢 図 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 ( 給 料 比 例 部 分 ) 昭 和 29 年 10 月 1 日 生 まれ 以 前 ~ 特 別 支 給 の 退 職 共 済 年 老 齢 厚 生 年 昭 和 25 年 10 月 1 日 生 まれ 以 前 ~ 退 職 共 済 年

( 補 助 金 等 交 付 決 定 通 知 に 加 える 条 件 ) 第 7 条 市 長 は 交 付 規 則 第 11 条 に 規 定 するところにより 補 助 金 の 交 付 決 定 に 際 し 次 に 掲 げる 条 件 を 付 するものとする (1) 事 業 完 了 後 に 消 費 税 及 び

防府市知的障害者生活協力員紹介事業実施要綱

第 7 条 職 員 の 給 与 に 関 する 規 程 ( 以 下 給 与 規 程 という ) 第 21 条 第 1 項 に 規 定 す るそれぞれの 基 準 日 に 育 児 休 業 している 職 員 のうち 基 準 日 以 前 6 月 以 内 の 期 間 にお いて 在 職 した 期 間 がある 職

Microsoft Word - 通達(参考).doc

職 員 退 職 手 当 支 給 規 程 平 成 15 年 10 月 1 日 規 程 第 号 改 正 平 成 17 年 1 月 31 日 規 程 第 17-1 号 改 正 平 成 20 年 12 月 22 日 規 程 第 号 改 正 平 成 22 年 3 月 18 日 規 程

(1) 社 会 保 険 等 未 加 入 建 設 業 者 の 確 認 方 法 等 受 注 者 から 提 出 される 施 工 体 制 台 帳 及 び 添 付 書 類 により 確 認 を 行 います (2) 違 反 した 受 注 者 へのペナルティー 違 反 した 受 注 者 に 対 しては 下 記 のペ

5 次 のいずれにも 該 当 する 従 業 員 は 子 が1 歳 6ヶ 月 に 達 するまでの 間 で 必 要 な 日 数 について 育 児 休 業 をするこ とができる なお 育 児 休 業 を 開 始 しようとする 日 は 原 則 として 子 の1 歳 の 誕 生 日 に 限 るものとする (1

Taro-29職員退職手当支給規程

< B4B92F F8D F591DE90458EE893968B4B92F FC90B329>

役員退職手当規程

< DB8CAF97BF97A6955C2E786C73>

第 9 条 の 前 の 見 出 しを 削 り 同 条 に 見 出 しとして ( 部 分 休 業 の 承 認 ) を 付 し 同 条 中 1 日 を 通 じて2 時 間 ( 規 則 で 定 める 育 児 休 暇 を 承 認 されている 職 員 については 2 時 間 から 当 該 育 児 休 暇 の


私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

資 格 給 付 関 係 ( 問 1) 外 国 人 Aさん(76 歳 )は 在 留 期 間 が3ヶ 月 であることから 長 寿 医 療 の 被 保 険 者 ではない が 在 留 資 格 の 変 更 又 は 在 留 期 間 の 伸 長 により 長 寿 医 療 の 適 用 対 象 となる 場 合 には 国

Ⅰ 年 金 制 度 昭 和 37 年 12 月 1 日 に 地 方 公 務 員 等 共 済 組 合 法 が 施 行 され 恩 給 から 年 金 へ 昭 和 61 年 4 月 から 20 歳 以 上 60 歳 未 満 のすべての 国 民 が 国 民 年 金 に 加 入 厚 生 年 金 基 金 職 域

<4D F736F F D F582CC88E78E998B788BC C98AD682B782E92E646F63>

損 益 計 算 書 ( 自 平 成 25 年 4 月 1 日 至 平 成 26 年 3 月 31 日 ) ( 単 位 : 百 万 円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 75,917 取 引 参 加 料 金 39,032 上 場 関 係 収 入 11,772 情 報 関 係 収 入 13,352 そ

スライド 1

Ⅰ 元 請 負 人 を 社 会 保 険 等 加 入 建 設 業 者 に 限 定 平 成 28 年 10 月 1 日 以 降 に 入 札 公 告 指 名 通 知 随 意 契 約 のための 見 積 依 頼 を 行 う 工 事 から 以 下 に 定 める 届 出 の 義 務 ( 以 下 届 出 義 務 と

<4D F736F F D208E52979C8CA78E598BC68F5790CF91A390698F9590AC8BE08CF D6A2E646F6378>

公平委員会設置条例

< E8BE08F6D2082C682B DD2E786C7378>

<4D F736F F D2088E78E998B788BC C98AD682B782E98B4B92F62E646F63>

Microsoft Word - 21退職手当規程.doc

Microsoft PowerPoint - 基金制度

財団法人山梨社会保険協会寄付行為

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

第 4 条 (1) 使 用 者 は 2 年 を 超 えない 範 囲 内 で( 期 間 制 勤 労 契 約 の 反 復 更 新 等 の 場 合 は その 継 続 勤 労 した 総 期 間 が2 年 を 超 えない 範 囲 内 で) 期 間 制 勤 労 者 を 使 用 することができる ただ し 次 の

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

目 次 市 民 税 の 減 免 に つ い て 1 減 免 の 一 般 的 な 留 意 事 項 2 減 免 の 範 囲 お よ び 減 免 割 合 3 1 生 活 保 護 法 の 規 定 に よ る 保 護 を 受 け る 者 3 2 当 該 年 に お い て 所 得 が 皆 無 と な っ た

資料2 年金制度等について(山下委員提出資料)

Q5 育 児 休 業 を 請 求 する 際 の 事 務 手 続 は? A5 育 児 休 業 を 請 求 しようとする 職 員 は, 育 児 休 業 承 認 請 求 書 ( 様 式 第 1 号 )に 子 の 氏 名 や 請 求 する 期 間 等 を 記 入 し, 育 児 休 業 を 始 めようとする1

Microsoft Word - y doc

< C8EAE81698B4C93FC8FE382CC97AF88D38E968D CA8E86816A2E786C73>

所 得 の 種 類 と 所 得 金 額 の 計 算 方 法 所 得 の 種 類 要 件 計 算 方 法 事 業 雑 営 業 等 農 業 小 売 業 製 造 業 飲 食 業 理 容 業 保 険 外 交 員 大 工 集 金 人 ピアノ 講 師 など 農 産 物 の 生 産 果 樹 の 栽 培 家 畜 の

無年金外国人高齢者福祉手当要綱

<4D F736F F D2095BD90AC E ED957D977B8ED28E918A6982C982C282A282C42E646F63>

<4D F736F F D C8E9688D993AE82C994BA82A492F18F6F8F9197DE81698DC58F49816A2E646F6378>

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

象 労 働 者 を 雇 入 れした 事 業 所 を 離 職 した 雇 用 保 険 の 被 保 険 者 である 労 働 者 の 氏 名 離 職 年 月 日 離 職 理 由 が 明 らかにされた 労 働 者 名 簿 等 の 写 し 2 要 綱 第 9 条 第 2 項 第 1 号 アに 該 当 する 労

定款  変更

月 収 額 算 出 のながれ 給 与 所 得 者 の 場 合 年 金 所 得 者 の 場 合 その 他 の 所 得 者 の 場 合 前 年 中 の 年 間 総 収 入 を 確 かめてください 前 年 中 の 年 間 総 収 入 を 確 かめてください 前 年 中 の 年 間 総 所 得 を 確 かめ

(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

国立大学法人 東京医科歯科大学教職員就業規則

H28記入説明書(納付金・調整金)8

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

東近江行政組合職員の育児休業等に関する条例

第 2 問 問 4 問 5 1ロ 2チ 3ヲ 4ホ ⅰ)Aさんは 今 年 の 誕 生 日 で 40 歳 となるので 公 的 介 護 保 険 の(1 第 2 号 ) 被 保 険 者 資 格 を 取 得 し 介 護 保 険 料 を 負 担 することになる 40 歳 以 上 65 歳 未 満 の 医 療

○00106 年俸制適用職員給与規則( 改正)

PowerPoint プレゼンテーション

2_02_kitei2.ppt

国民年金

PowerPoint プレゼンテーション

tokutei2-7.xls

平成21年10月30日

Transcription:

平 成 24 年 6 月 13 日 東 京 弁 護 士 会 平 成 24 年 度 春 季 労 働 法 専 門 講 座 労 働 事 件 解 決 の 過 程 で 社 会 保 険 労 働 保 険 はどうなるのか 場 所 ; 弁 護 士 会 館 3 階 301 会 議 室 時 間 ;18:00~20:00 講 師 鳥 井 玲 子 ( 特 定 社 会 保 険 労 務 士 ) 1

はじめに 労 働 事 件 特 に 解 雇 退 職 の 場 合 事 件 解 決 過 程 で 社 会 保 険 労 働 保 険 の 扱 いが 問 題 となることがあります 例 えば 解 雇 が 無 効 となった 場 合 に 一 度 喪 失 した 厚 生 年 金 保 険 や 健 康 保 険 の 資 格 はどうなるのか 解 雇 退 職 が 争 われている 期 間 中 診 療 等 を 受 けた 場 合 全 額 自 己 負 担 になるのか といった 問 題 です また 社 会 保 険 料 等 は 賃 金 ( 報 酬 )を 基 礎 として 算 定 しますので 賃 金 の 引 下 げ は 同 時 に 社 会 保 険 料 等 の 引 き 下 げを 意 味 し 場 合 によっては これが 給 付 に 影 響 することもあります このほか 退 職 事 由 によって 雇 用 保 険 の 基 本 手 当 の 受 給 内 容 に 違 いがでる 業 務 上 災 害 の 認 定 中 の 健 康 保 険 適 用 の 有 無 等 労 働 事 件 と 社 会 保 険 労 働 保 険 は 密 接 な 関 係 にあります これら 労 働 事 件 解 決 の 過 程 における 社 会 保 険 労 働 保 険 の 扱 いについて 社 会 保 険 労 働 保 険 に 関 する 基 礎 知 識 を 交 えながら 実 務 的 対 応 を 解 説 していきたいと 思 い ます 第 1 社 会 保 険 労 働 保 険 について 1. 社 会 保 険 労 働 保 険 とは (1) 社 会 保 険 通 常 社 会 保 険 とは 医 療 保 険 介 護 保 険 年 金 保 険 及 び 労 働 保 険 を 指 します が( 広 義 には 労 働 保 険 も 社 会 保 険 に 含 まれます) 今 回 は 労 働 保 険 とその 他 の 社 会 保 険 は 分 けることと 致 します また 社 会 保 険 の 中 でも 医 療 保 険 と 年 金 特 に 労 使 関 係 に 影 響 の 大 きい 健 康 保 険 と 厚 生 年 金 保 険 を 中 心 に 解 説 してまいります 以 降 便 宜 上 特 に 記 載 がない 限 り 健 康 保 険 と 厚 生 年 金 保 険 の 総 称 を 社 会 保 険 と 呼 ぶことにします (2) 労 働 保 険 労 働 保 険 とは 労 災 保 険 及 び 雇 用 保 険 を 指 します 2. 加 入 要 件 ( 被 保 険 者 要 件 及 び 被 扶 養 者 要 件 ) (1) 健 康 保 険 健 康 保 険 法 において 被 保 険 者 とは 適 用 事 業 所 に 使 用 される 者 及 び 任 意 継 続 被 保 険 者 をいいます ただし 日 々 雇 い 入 れられる 者 や2 月 以 内 の 期 間 を 定 めて 使 用 される 者 75 歳 以 上 の 者 などの 適 用 除 外 者 に 該 当 する 場 合 は 日 雇 特 例 被 保 険 者 となる 場 合 を 除 き 被 保 険 者 となりません( 健 康 保 険 法 第 3 条 ) なお パートタイム 労 働 者 など 労 働 時 間 や 日 数 が 通 常 の 労 働 者 に 比 し 短 い 労 働 者 2

については 週 の 所 定 労 働 時 間 が 通 常 の 労 働 者 の 所 定 労 働 時 間 の4 分 の3 以 上 か つ 所 定 労 働 日 数 も4 分 の3 以 上 の 場 合 に 健 康 保 険 に 加 入 させなければならないと いう 実 運 用 があります(いわゆる4 分 の3ルール) 参 考 健 康 保 険 の 適 用 事 業 所.. 健 康 保 険 の 適 用 事 業 所 は 次 の1~4 以 外 の 事 業 所 で 常 時 使 用 する 労 働 者 が5 人 以 上 の 事 業 所 及 び 法 人 の 事 業 所 である 1 2 3 4 農 業 畜 産 業 水 産 業 林 業 等 第 1 次 産 業 料 理 店 飲 食 店 旅 館 接 客 業 娯 楽 業 理 容 業 等 サービス 業 弁 護 士 会 計 士 税 理 士 のような 法 務 及 び 専 門 サービス 業 神 社 寺 院 教 会 等 宗 務 業 ( 宗 教 法 人 を 除 く ) 適 用 事 業 所 以 外 の 事 業 所 でも 厚 生 労 働 大 臣 の 認 可 をうければ 適 用 事 業 所 となることができる 任 意 継 続 被 保 険 者 被 保 険 者 ( 日 雇 特 例 被 保 険 者 を 除 く )が 退 職 等 で 被 保 険 者 資 格 を 喪 失 した 後 であっても 一 定 の 要 件 に 該 当 する 場 合 には 継 続 して 被 保 険 者 となることができる( 任 意 継 続 被 保 険 者 となるには 資 格 喪 失 から 原 則 として 20 日 以 内 に 申 出 をしなければならず 2 年 を 経 過 したときは その 日 の 翌 日 に 資 格 を 喪 失 する ) 被 扶 養 者 制 度 健 康 保 険 法 には 被 扶 養 者 制 度 があり 被 扶 養 者 とは 次 に 掲 げる 者 をいう (1) 被 保 険 者 の 直 系 尊 属 配 偶 者 ( 事 実 上 婚 含 む 以 下 同 じ ) 子 孫 及 び 弟 妹 であって 主 として その 被 保 険 者 により 生 計 を 維 持 するもの (2) 被 保 険 者 の3 親 等 内 の 親 族 で(1)に 掲 げる 者 以 外 のものであって その 被 保 険 者 と 同 一 の 世 帯 に 属 し 主 としてその 被 保 険 者 により 生 計 を 維 持 するもの (3) 被 保 険 者 の 配 偶 者 で 届 出 をしていないが 事 実 上 婚 姻 関 係 と 同 様 の 事 情 にあるものの 父 母 及 び 子 で あって その 被 保 険 者 と 同 一 の 世 帯 に 属 し 主 としてその 被 保 険 者 により 生 計 を 維 持 するもの (4)(3)の 配 偶 者 の 死 亡 後 におけるその 父 母 及 び 子 であって 引 き 続 きその 被 保 険 者 と 同 一 の 世 帯 に 属 し 主 としてその 被 保 険 者 により 生 計 を 維 持 するもの 主 として 被 保 険 者 により 生 計 を 維 持 する とは 通 常 次 のような 場 合 を 指 す 1 同 一 世 帯 の 場 合 認 定 対 象 者 の 年 収 が130 万 円 未 満 ( 一 定 障 害 者 又 は60 歳 以 上 の 者 の 場 合 には180 万 円 未 満 )であ って かつ 被 保 険 者 の 年 収 の2 分 の1 未 満 であること 2 同 一 世 帯 に 属 していない 場 合 認 定 対 象 者 の 年 収 が130 万 円 未 満 ( 一 定 障 害 者 又 は60 歳 以 上 の 者 の 場 合 には180 万 円 未 満 )であ って かつ 被 保 険 者 の 仕 送 り 額 より 少 ない 場 合 3

(2) 厚 生 年 金 保 険 厚 生 年 金 保 険 は 健 康 保 険 と 同 様 に 事 業 所 を 単 位 として 適 用 され 適 用 事 業 所 に 使 用 される70 歳 未 満 の 者 が 被 保 険 者 ( 当 然 被 保 険 者 )となります ) 厚 生 年 金 保 険 の 適 用 事 業 所 は 健 康 保 険 の 適 用 事 業 所 と 概 ね 同 じですが 船 舶 が 適 用 事 業 とされる 点 等 が 異 なります なお 原 則 として 厚 生 年 金 保 険 の65 歳 未 満 の 被 保 険 者 は 厚 生 年 金 の 被 保 険 者 であると 同 時 に 国 民 年 金 の 第 2 号 被 保 険 者 となります 厚 生 年 金 保 険 の 被 保 険 者 資 格 を 喪 失 すると 国 民 年 金 の 第 2 号 被 保 険 者 資 格 も 同 時 に 喪 失 することになり ますので 60 歳 未 満 の 場 合 には 通 常 国 民 年 金 の 第 1 号 被 保 険 者 または 第 3 号 被 保 険 者 となります 参 考 日 本 の 年 金 制 度 の 概 要 < 年 金 制 度 の 体 系 > 我 が 国 の 年 金 制 度 は 全 国 民 に 共 通 した 国 民 年 金 ( 基 礎 年 金 ) を 基 礎 に 被 用 者 年 金 を 上 乗 せし た2 階 建 ての 体 系 となっている < 解 説 > 1 階 部 分 全 国 民 に 共 通 した 国 民 年 金 ( 基 礎 年 金 ) すべての 国 民 が 国 民 年 金 制 度 に 加 入 し すべての 国 民 年 金 制 度 者 に 共 通 に 給 付 される 年 金 を 基 礎 年 金 という 2 階 部 分 国 民 年 金 の 上 乗 せとして 報 酬 比 例 の 年 金 を 支 給 する 被 用 者 年 金 ( 厚 生 年 金 保 険 共 済 年 金 等 1) 自 営 業 者 や 農 業 者 は 国 民 年 金 のみに 加 入 するが 民 間 の 被 用 者 は 国 民 年 金 に 加 えて 厚 生 年 金 保 険 に も 公 務 員 等 は 国 民 年 金 に 加 えて 共 済 年 金 にも 加 入 する 民 間 企 業 の 被 用 者 は 厚 生 年 金 基 金 や 確 定 給 付 企 業 年 金 などの 企 業 年 金 に 加 入 している 場 合 もある 1 被 用 者 年 金 各 法 とは 1 厚 生 年 金 保 険 法 2 国 家 公 務 員 共 済 組 合 法 3 地 方 公 務 員 等 共 済 組 合 法 4 私 立 学 校 教 職 員 共 済 法 をいう 厚 生 年 金 保 険 共 済 組 合 国 民 年 金 ( 基 礎 年 金 ) 国 民 年 金 第 1 号 被 保 険 者 自 営 業 者 学 生 等 国 民 年 金 第 3 号 被 保 険 者 第 2 号 被 保 険 者 の 被 扶 養 配 偶 者 国 民 年 金 第 2 号 被 保 険 者 サラリーマン 公 務 員 等 4

(3) 労 災 保 険 労 災 保 険 は 労 働 者 を 使 用 する 事 業 に 適 用 されます 原 則 一 人 でも 労 働 者 を 使 用 すれば 適 用 事 業 となりますが 国 の 直 営 事 業 非 現 状 の 官 公 署 等 は 適 用 除 外 と され 農 林 水 産 業 の 一 部 については 強 制 適 用 ではなく 暫 定 的 に 任 意 適 用 とされ ています( 労 災 保 険 法 第 3 条 第 1 項 ) また 労 働 者 でない 者 や 転 勤 等 で 海 外 の 事 業 所 に 派 遣 された 者 でも 要 件 に 該 当 すれば 加 入 できる 特 別 加 入 制 度 があります 参 考 特 別 加 入 制 度 労 災 保 険 の 特 別 加 入 には 次 の3 種 類 があります 中 小 事 業 主 等 ( 第 1 種 特 別 加 入 者 ) 1 中 小 企 業 の 事 業 主 であること 2 労 働 保 険 事 務 組 合 に 事 務 処 理 を 委 託 する 事 業 主 であること 一 人 親 方 その 他 の 自 営 業 者 ( 第 2 種 特 別 加 入 者 ) 一 人 親 方 その 他 の 自 営 業 者 に 該 当 する 人 は ほかに 労 働 者 を 使 用 しないで 仕 事 をする 人 で 下 記 の 事 業 を 行 なう 者 自 動 車 を 使 用 して 行 う 旅 客 又 は 貨 物 運 送 の 事 業 個 人 タクシー 個 人 貨 物 運 送 業 者 等 大 工 左 官 とび 等 の 建 設 業 漁 船 による 漁 業 ( 産 動 植 物 の 採 捕 ) 林 業 医 薬 品 の 配 置 販 売 業 いわゆる 薬 売 り 再 生 利 用 の 目 的 となる 廃 棄 物 等 の 収 集 運 搬 選 別 解 体 等 の 事 業 海 外 派 遣 者 ( 第 3 種 特 別 加 入 者 ) 特 別 加 入 の 対 象 となる 海 外 派 遣 者 とは 具 体 的 には 次 のような 者 国 際 協 力 事 業 団 等 技 術 協 力 を 行 なう 団 体 から 派 遣 されている 人 日 本 国 内 の 会 社 から 海 外 において 行 なわれる 事 業 に 派 遣 されている 人 なお 転 勤 等 ではなく 海 外 出 張 で 災 害 にあったときは 特 別 加 入 していなくても 国 内 出 張 に 準 じ た 扱 いで 労 災 が 適 用 される (4) 雇 用 保 険 雇 用 保 険 法 において 被 保 険 者 とは 適 用 事 業 に 雇 用 される 労 働 者 をいい 適 用 除 外 (65 歳 になって 新 たに 雇 用 される 等 )に 該 当 しない 限 り 被 保 険 者 となります なお パートタイム 労 働 者 など 労 働 時 間 や 日 数 が 通 常 の 労 働 者 に 比 し 短 い 労 働 者 に ついては 次 の1 及 び2 いずれの 要 件 も 満 たした 場 合 に 被 保 険 者 となります 5

1 31 日 以 上 引 き 続 き 雇 用 されることが 見 込 まれる 者 であること 具 体 的 には 次 のいずれかに 該 当 する 場 合 をいいます 期 間 の 定 めがなく 雇 用 される 場 合 雇 用 期 間 が31 日 以 上 である 場 合 雇 用 契 約 に 更 新 規 定 があり 31 日 未 満 での 雇 止 めの 明 示 がない 場 合 雇 用 契 約 に 更 新 規 定 はないが 同 様 の 雇 用 契 約 により 雇 用 された 労 働 者 が31 日 以 上 雇 用 された 実 績 がある 場 合 ( ) ( ) 当 初 の 雇 入 時 には31 日 以 上 雇 用 されることが 見 込 まれない 場 合 であってもそ の 後 31 日 以 上 雇 用 されることが 見 込 まれることとなった 場 合 には その 時 点 から 雇 用 保 険 が 適 用 されます 2 1 週 間 の 所 定 労 働 時 間 が 20 時 間 以 上 であること 3. 保 険 料 等 について 労 働 保 険 及 び 社 会 保 険 は 労 働 者 の 賃 金 ( 社 会 保 険 の 場 合 は 報 酬 と 呼 びます)に 基 づき 保 険 料 が 徴 収 され 原 則 これをもとに 現 金 給 付 が 支 給 されます( 一 部 の 給 付 を 除 く) したがって 賃 金 が 上 げ 下 げが 保 険 給 付 ( 給 付 )の 引 き 影 響 する 場 合 があります 参 考 各 保 険 の 給 付 の 基 礎 となる 賃 金 ( 報 酬 ) 労 災 保 険 ( 給 付 基 礎 日 額 ) 原 則 労 基 法 の 平 均 賃 金 ( ) 相 当 額 ( ) 平 均 賃 金 ( 原 則 ):これを 算 定 すべき 事 由 の 発 生 した 日 以 前 三 箇 月 間 にその 労 働 者 に 対 し 支 払 われた 賃 金 の 総 額 を その 期 間 の 総 日 数 で 除 した 金 額 ( 労 基 法 12 条 ) 雇 用 保 険 ( 例 : 基 本 手 当 の 場 合 ) 賃 金 日 額 ( ) 45%~80% ( ) 離 職 日 以 前 6 カ 月 間 に 支 払 われた 賃 金 総 額 180 健 康 保 険 ( 例 : 傷 病 手 当 金 の 場 合 ) 標 準 賃 金 日 額 ( 標 準 報 酬 月 額 ( ) 30) ( ) 被 保 険 者 が 受 ける 報 酬 は 千 差 万 別 であるため 事 務 を 簡 略 化 するため 何 階 級 かの 仮 定 的 な 報 酬 を 定 めて その 枠 内 に 現 実 に 支 給 される 報 酬 をあてはめることとしている 現 在 これによって 定 められている 標 準 報 酬 は 第 1 級 (5 万 8,000 円 )から 第 47 級 (121 万 円 )までに 区 分 されている なお 標 準 賞 与 額 は 年 度 累 計 540 万 円 を 上 限 として 1,000 円 未 満 の 端 数 を 切 り 捨 てた 額 となる 6

厚 生 年 金 保 険 ( 例 : 老 齢 厚 生 年 金 の 場 合 : 原 則 の 場 合 ) 平 均 標 準 報 酬 月 額 ( 注 1) 7.125/1000 平 成 15 年 3 月 までの 被 保 険 者 期 間 の 月 数 合 算 平 均 標 準 報 酬 額 ( 注 2) 5.481/1000 平 成 15 年 4 月 以 後 の 被 保 険 者 期 間 の 月 数 ( ) 厚 生 年 金 保 険 の 標 準 報 酬 は 第 1 級 (9 万 8,000 円 )から 第 30 級 (62 万 円 )まで に 区 分 されており 標 準 賞 与 額 は 年 度 累 計 150 万 円 を 上 限 として 1,000 円 未 満 の 端 数 を 切 り 捨 てた 額 となる ( 注 1) H15 年 3 月 以 前 の 被 保 険 者 期 間 の 標 準 報 酬 月 額 再 評 価 率 )の 総 額 H15 年 3 月 以 前 の 総 被 保 険 者 月 数 ( 注 2) H15 年 4 月 以 後 の 被 保 険 者 期 間 の 標 準 報 酬 月 額 + 標 準 賞 与 額 再 評 価 率 }の 総 額 H15 年 4 月 以 後 の 総 被 保 険 者 月 数 7

第 2 解 雇 退 職 の 場 合 の 社 会 保 険 労 働 保 険 の 扱 い( 資 格 喪 失 と 遡 及 適 用 ) 1. 資 格 喪 失 解 雇 や 退 職 の 場 合 通 常 は 雇 用 保 険 ( 翌 月 10 日 まで) 健 康 保 険 ( 喪 失 後 5 日 以 内 ) 及 び 厚 生 年 金 保 険 ( 原 則 喪 失 後 5 日 以 内 )について 夫 々 期 日 までに 事 業 主 が 資 格 喪 失 届 を 提 出 します 公 共 職 業 安 定 所 ( 雇 用 保 険 ) 及 び 年 金 事 務 所 ( 健 康 保 険 及 び 厚 生 年 金 保 険 )は この 届 出 に 基 づき 喪 失 手 続 を 行 いますので 例 えば 裁 判 所 へ の 仮 処 分 申 請 が 行 われていたとしても 喪 失 届 が 提 出 されれば これらの 資 格 は 一 度 喪 失 することになります( 参 考 通 達 参 照 ) 2. 解 雇 退 職 後 の 社 会 保 険 の 扱 い 健 康 保 険 及 び 厚 生 年 金 保 険 の 資 格 を 喪 失 した 場 合 通 常 次 のア.イ.の 扱 いと なります もっとも 多 いパターンは 医 療 保 険 は 健 康 保 険 から 国 民 健 康 保 険 に 変 わり 年 金 は 国 民 年 金 第 1 号 被 保 険 者 になる というものです なお 後 述 いたしますが 後 に 解 雇 無 効 の 判 定 がなされた 場 合 には 保 険 料 の 還 付 保 険 給 付 の 支 給 などが 発 生 します (1) 健 康 保 険 日 本 は 国 民 皆 保 険 制 度 ですので 健 康 保 険 の 資 格 を 喪 失 した 場 合 には 継 続 す る 場 合 を 除 き 他 の 公 的 医 療 保 険 に 加 入 することになります 資 格 喪 失 後 の 選 択 肢 としては 次 のようなものがあります 1 加 入 していた 健 康 保 険 を 任 意 継 続 する( 任 意 継 続 被 保 険 者 となる 2 年 ) 2 配 偶 者 等 の 健 康 保 険 の 被 扶 養 者 となる 3 国 民 健 康 保 険 の 被 保 険 者 となる (2) 年 金 厚 生 年 金 保 険 の 被 保 険 者 資 格 を 喪 失 した 場 合 60 歳 未 満 であれば 原 則 国 民 年 金 の 第 1 号 被 保 険 者 となります 配 偶 者 等 の 被 扶 養 配 偶 者 となった 場 合 には 国 民 年 金 の 第 3 号 被 保 険 者 となります(60 歳 未 満 の 場 合 のみ) なお 第 1 号 被 保 険 者 につ いては 保 険 料 を 個 人 で 納 付 しなくてはならなくなります( 第 3 号 は 不 要 ) 3. 解 雇 無 効 となった 場 合 裁 判 所 が 解 雇 無 効 を 判 定 し その 効 力 が 発 生 した 場 合 には 資 格 喪 失 処 分 が 取 り 消 さ れます この 間 国 民 健 康 保 険 の 被 保 険 者 となっていた 場 合 には 解 雇 無 効 の 効 力 発 生 までに 支 払 われた 国 民 健 康 保 険 料 の 還 付 と 受 けた 保 険 給 付 があれば その 清 算 をするこ とになります(あわせて 健 康 保 険 への 保 険 料 の 支 払 いと 保 険 給 付 の 請 求 をすることにな ります) 国 民 健 康 保 険 に 加 入 せず 自 費 で 診 療 を 受 けた 場 合 には この 間 の 健 康 保 険 の 保 険 料 が 徴 収 され 診 療 費 等 が 支 給 されることになります なお 健 康 保 険 の 保 険 料 は 事 業 主 分 被 保 険 者 分 いずれも 徴 収 されます 8

年 金 の 場 合 も 国 民 年 金 の1 号 被 保 険 者 として 保 険 料 を 支 払 った 場 合 には これが 還 付 され 厚 生 年 金 保 険 料 が 徴 収 されます( 事 業 主 本 人 分 ともに)( 参 考 通 達 参 照 ) なお 通 常 届 出 漏 れ 等 の 場 合 には 保 険 料 の 徴 収 権 の 時 効 が2 年 であることから 遡 及 できる 期 間 は2 年 となりますが 裁 判 所 が 解 雇 無 効 を 判 定 した 場 合 は 雇 用 保 険 社 会 保 険 いずれの 場 合 も このような 制 限 はなく 運 用 されているようです 参 考 解 雇 の 効 力 につき 係 争 中 の 場 合 における 健 康 保 険 等 の 取 扱 について ( 昭 和 25 年 10 月 9 日, 保 発 第 68 号 各 都 道 府 県 知 事 あて 厚 生 省 保 険 局 長 通 知 ) 最 近 企 業 合 理 化 を 行 う 事 業 や 新 聞 報 道 関 係 等 において 解 雇 が 行 われているが これに 関 して 労 資 双 方 の 意 見 が 対 立 し 被 保 険 者 資 格 の 喪 失 について 疑 義 を 生 じた 場 合 においては 左 記 によって 取 り 扱 うこととなっ たので 通 知 する 記 1 解 雇 行 為 が 労 働 法 規 又 は 労 働 協 約 に 違 反 することが 明 らかな 場 合 を 除 いて 事 業 主 より 健 康 保 険 法 施 行 規 則 第 十 条 第 二 項 の 規 定 による 被 保 険 者 資 格 喪 失 届 の 提 出 があつたときは 当 該 事 件 につき 労 働 委 員 会 に 対 して 不 当 労 働 行 為 に 関 する 申 立 ( 労 働 組 合 法 第 二 十 七 条 ) 斡 旋 ( 労 働 関 係 調 整 法 第 十 条 乃 至 第 十 六 条 ) 調 停 ( 労 働 関 係 調 整 法 第 十 七 条 乃 至 第 二 十 八 条 ) 若 しくは 仲 裁 ( 労 働 関 係 調 整 法 第 二 十 九 条 乃 至 第 三 十 五 条 ) の 手 続 がなされ 又 は 裁 判 所 に 対 する 訴 の 提 起 若 しくは 仮 処 分 の 申 請 中 であっても 一 応 資 格 を 喪 失 した ものとしてこれを 受 理 し 被 保 険 者 証 の 回 収 ( 回 収 不 能 の 場 合 は 被 保 険 者 証 無 効 の 公 示 をなすこと ) 等 所 定 の 手 続 をなすこと 右 労 働 法 規 又 は 協 約 違 反 の 有 無 について 各 保 険 者 が 一 方 的 にこれを 認 定 することは 困 難 且 つ 不 適 当 であ るから 当 該 保 険 者 においては 労 働 関 係 主 管 当 局 の 意 見 を 聞 く 等 により 事 件 結 着 の 見 透 しを 慎 重 検 討 の 上 処 理 すること なお 本 年 七 月 十 八 日 付 マッカーサー 書 簡 の 趣 旨 に 基 き 新 聞 等 報 道 関 係 において 行 われた 解 雇 は 労 働 法 規 又 は 協 約 に 違 反 しないものとしてこれを 取 り 扱 うこと なお 解 雇 された 被 保 険 者 で 被 保 険 者 証 を 事 業 主 に 返 還 しないものに 対 しては 不 当 使 用 の 際 には 詐 欺 罪 として 処 罰 される 旨 の 警 告 をなさしめること 2 右 の 場 合 において 労 働 委 員 会 又 は 裁 判 所 が 解 雇 無 効 の 判 定 をなし 且 つ その 効 力 が 発 生 したときは 当 該 判 定 に 従 い 遡 及 して 資 格 喪 失 の 処 理 を 取 り 消 し 被 保 険 者 証 を 事 業 主 に 返 付 すること 3 右 の 場 合 において 解 雇 無 効 の 効 力 が 発 生 するまでの 間 資 格 喪 失 の 取 扱 のため 自 費 で 診 療 を 受 けてい た 者 に 対 しては 療 養 の 給 付 をなすことが 困 難 であつたものとして その 診 療 に 要 した 費 用 は 療 養 費 とし て 支 給 し その 他 現 金 給 付 についても 遡 って 支 給 すると 共 に 保 険 料 もこれを 徴 収 すること 4 第 1 項 の 申 立 又 は 仮 処 分 の 申 請 に 対 する 暫 定 的 決 定 が 本 裁 判 において 無 効 となり 解 雇 が 遡 って 成 立 した 場 合 には すでになされた 保 険 給 付 は 被 保 険 者 から 返 還 されることとし 又 徴 収 済 保 険 料 は 事 業 主 か らの 還 付 請 求 に 基 いて 還 付 手 続 をなすこと (4) 解 雇 の 効 力 等 に 争 いがある 場 合 の 雇 用 保 険 の 扱 い( 基 本 手 当 の 仮 給 付 ) 5 厚 生 年 金 保 険 における 取 扱 についても 右 に 準 じて 適 切 な 措 置 を 取 ること 9

裁 判 所 労 働 委 員 会 等 に 提 訴 申 立 て 提 訴 又 は 地 位 保 全 若 しくは 賃 金 支 払 いの 仮 処 分 ( 以 下 仮 処 分 という)の 申 請 又 は 申 告 をし その 効 力 を 争 っている 場 合 には 労 働 者 保 護 の 観 点 から 解 雇 等 に 争 いがある 場 合 における 措 置 として 一 定 の 場 合 に 限 って 資 格 喪 失 の 確 認 を 行 い これに 基 づき 基 本 手 当 等 を 支 給 することとされて います この 取 扱 いは 解 雇 の 効 力 につき 疑 いがある 場 合 にそれについて 確 定 するまで 資 格 喪 失 の 確 認 を 行 わないことの 例 外 として 行 うものですので 単 に 解 雇 不 服 等 事 実 上 の 争 いがある 場 合 には 対 象 とされません 解 雇 の 効 力 等 について 争 っている 受 給 資 格 者 は 管 轄 公 共 職 業 安 定 所 で 係 争 中 であることを 証 明 するもの( 事 件 係 属 証 明 書 仮 処 分 申 立 書 のコピー 等 )+ 賃 金 等 の 支 払 を 受 けた 場 合 には 保 険 給 付 を 返 還 することを 約 した 確 認 書 面 等 を 提 出 し 基 本 手 当 の 仮 給 付 を 受 けることができます(この 扱 いは 事 業 主 から 離 職 証 明 書 を 添 えて 資 格 喪 失 届 の 提 出 があった 場 合 又 は 被 保 険 者 から 確 認 請 求 があった 場 合 に 行 わ れ 職 権 による 資 格 喪 失 の 確 認 は 行 われません なお 事 業 主 が 資 格 喪 失 届 に 離 職 証 明 書 を 添 えないで 提 出 した 場 合 は 被 保 険 者 が 離 職 証 明 書 を 提 出 するまでは 資 格 喪 失 の 確 認 は 保 留 されます) 事 業 主 が 行 った 解 雇 理 由 を 不 当 として 申 立 て 又 は 提 訴 を 行 っている 場 合 には 裁 判 所 又 は 労 働 委 員 会 がその 解 雇 理 由 を 判 定 する 旨 の 命 令 又 は 判 決 が 確 定 しない 限 り 離 職 票 に 記 載 された 離 職 理 由 によって 所 定 の 給 付 制 限 がなされ 特 定 受 給 資 格 者 には 該 当 しない 等 の 扱 いとすることとされています 手 続 事 務 の 流 れ( 資 格 喪 失 関 係 ) 1 資 格 喪 失 届 ( 事 実 のあった 日 の 翌 日 起 算 10 日 以 内 ) + 離 職 証 明 書 所 轄 公 共 職 業 安 定 所 長 2 離 職 票 ( 事 業 主 通 じて 交 付 可 ) 3 求 職 の 申 込 み ( 離 職 票 + 本 人 確 認 書 類 ) 住 所 地 管 轄 公 共 職 業 安 定 所 長 4 受 給 資 格 者 証 交 付 5 受 給 資 格 者 証 + 失 業 認 定 申 告 書 事 業 主 失 業 者 ( 受 給 資 格 者 ) 10

第 3 その 他 労 働 紛 争 における 社 会 保 険 労 働 保 険 に 関 する 留 意 点 1. 基 本 手 当 ( 雇 用 保 険 )の 受 給 と 離 職 理 由 (1) 特 定 受 給 資 格 者 及 び 特 定 理 由 離 職 者 とは 特 定 受 給 資 格 者 とは 倒 産 解 雇 等 により 再 就 職 の 準 備 をする 時 間 的 余 裕 なく 離 職 を 余 儀 なくされた 者 ( 具 体 的 には 別 紙 (1) 特 定 受 給 資 格 者 及 び 特 定 理 由 離 職 者 の 範 囲 と 判 断 基 準 をご 確 認 下 さい 特 定 理 由 離 職 者 も 同 じ)を 言 います 一 方 特 定 理 由 離 職 者 とは 特 定 受 給 資 格 者 以 外 の 者 であって 期 間 の 定 めのある 労 働 契 約 が 更 新 されなかったことその 他 やむを 得 ない 理 由 により 離 職 した 者 を 言 い ます (2) 特 定 受 給 資 格 者 及 び 特 定 理 由 離 職 者 に 該 当 した 場 合 特 定 受 給 資 格 者 及 び 特 定 理 由 離 職 者 に 該 当 した 場 合 には 次 の1 及 び2のような 扱 いがなされます 1 基 本 手 当 の 受 給 資 格 を 得 るには 通 常 被 保 険 者 期 間 が12 ヶ 月 以 上 ( 離 職 日 以 前 2 年 間 に) 必 要 ですが 被 保 険 者 期 間 が12 ヶ 月 以 上 ( 離 職 日 以 前 2 年 間 間 に)なくても6ヵ 月 ( 離 職 日 以 前 1 年 間 ) 以 上 あれば 受 給 資 格 を 得 る ことができる 2 基 本 手 当 の 所 定 給 付 日 数 が 手 厚 くなる 場 合 がある 3 給 付 制 限 がかからない 4 延 長 給 付 ( 個 別 延 長 給 付 )の 対 象 となる 場 合 がある 2. 労 災 申 請 中 の 健 康 保 険 の 適 用 傷 病 で 休 職 中 の 労 働 者 などから 労 災 申 請 を 考 えているが 労 災 申 請 をすると 審 査 期 間 中 等 は 健 康 保 険 を 使 って 治 療 を 受 けたり 傷 病 手 当 金 を 受 給 したりでき なくなるのか というご 質 問 をよく 受 けます 健 康 保 険 法 の 通 達 では 業 務 上 の 傷 病 として 労 働 基 準 監 督 署 に 認 定 を 申 請 中 の 期 間 は 一 応 業 務 上 の 取 扱 いをし 最 終 的 に 業 務 上 の 傷 病 でないと 認 定 され 健 康 保 険 による 業 務 外 と 認 定 された 場 合 には 遡 って 療 養 費 傷 病 手 当 金 等 の 給 付 が 行 わ れる ( 昭 和 28.4.9 保 文 発 2014 号 )として まず 労 基 署 に 申 請 業 務 外 ならば 健 康 保 険 との 順 序 で 手 続 きを 踏 むことを 建 前 としています しかし 労 働 基 準 監 督 署 へ 労 災 の 申 請 をしても その 後 の 審 査 に6ヶ 月 程 度 かか る 場 合 もあり 実 態 としては 健 康 保 険 の 給 付 ( 療 養 給 付 や 傷 病 手 当 金 の 支 給 )を 受 けつつ その 後 労 災 の 申 請 をして 結 果 として 業 務 上 災 害 であると 判 断 された 場 合 には 協 会 けんぽであれ 組 合 健 保 であれ 健 康 保 険 から 受 けた 傷 病 手 当 金 等 に ついて 返 金 する というケースが 多 いと 思 われます なお 健 康 保 険 の 傷 病 手 当 金 は 一 定 要 件 に 該 当 すれば 退 職 した 場 合 でも 引 き 続 き 受 給 可 能 です( 詳 細 は 参 考 参 照 ) 11

参 考 傷 病 手 当 金 の 支 給 要 件 被 保 険 者 が 療 養 のため 労 務 に 服 することができないときは その 労 務 に 服 することができなくなった 日 から 起 算 して3 日 を 経 過 した 日 から 労 務 に 服 することができない 期 間 傷 病 手 当 金 として 1 日 に つき 標 準 報 酬 日 額 ( 標 準 報 酬 月 額 の30 分 の1に 相 当 する 額 (その 額 に 5 円 未 満 の 端 数 があるときは これを 切 り 捨 てるものとし 5 円 以 上 10 円 未 満 の 端 数 があるときはこれを10 円 に 切 り 上 げるものと する )をいう)の3 分 の2に 相 当 する 金 額 を 支 給 される 傷 病 手 当 金 の 支 給 期 間 は 同 一 の 疾 病 又 は 負 傷 及 びこれにより 発 した 疾 病 に 関 しては その 支 給 を 始 め た 日 から 起 算 して1 年 6 月 ( 歴 月 )が 限 度 となる ただし 次 の1~3に 該 当 する 場 合 は 傷 病 手 当 金 の 支 給 額 が 調 整 される 1 事 業 主 から 報 酬 の 支 給 を 受 けた 場 合 2 同 一 の 傷 病 により 障 害 厚 生 年 金 を 受 けている 場 合 ( 同 一 の 傷 病 による 国 民 年 金 の 障 害 基 礎 年 金 を 受 け るときは その 合 算 額 ) 3 退 職 後 老 齢 厚 生 年 金 や 老 齢 基 礎 年 金 又 は 退 職 共 済 年 金 などを 受 けている 場 合 ( 複 数 の 老 齢 給 付 を 受 けるときは その 合 算 額 ) なお 1~3の 支 給 日 額 が 傷 病 手 当 金 の 日 額 より 多 いときは 傷 病 手 当 金 は 支 給 されず 1~3の 支 給 日 額 が 傷 病 手 当 金 の 日 額 より 少 ないときは その 差 額 を 支 給 することとなる 健 康 保 険 の 保 険 給 付 は 被 保 険 者 に 対 して 行 われるのを 原 則 としていますが 退 職 などにより 被 保 険 者 でなくなった( 資 格 喪 失 ) 後 においても 一 定 の 条 件 ( 次 の1 及 び2)のもとに 継 続 して 保 険 給 付 が 行 わ れる( 期 間 は 最 長 で1 年 6 か 月 間 この 期 間 から 被 保 険 者 である 間 にすでに 支 給 を 受 けた 残 りの 期 間 について 受 けることができる.) 1 資 格 喪 失 の 際 保 険 給 付 を 受 けている 者 ( ) 2 資 格 を 喪 失 する 日 の 前 日 までに 継 続 して1 年 以 上 被 保 険 者 であった 者 ( ) 受 けている とは 現 に 傷 病 手 当 金 の 支 給 を 受 けている 場 合 だけでなく 傷 病 手 当 金 の 受 給 が 可 能 な 状 態 にある 者 が 事 業 主 から 報 酬 を 受 けているため 一 時 支 給 停 止 されている 場 合 も 該 当 する( 平 成 27.6.12 保 文 発 3367 号 ) 3. 社 会 保 険 等 の 届 出 義 務 違 反 に 対 する 損 害 賠 償 請 求 事 業 主 が 雇 用 保 険 や 社 会 保 険 の 資 格 取 得 の 届 出 を 怠 った 場 合 保 険 料 の 徴 収 権 の 時 効 が2 年 であることから 後 に 資 格 取 得 が 確 認 されたとしても 被 保 険 者 期 間 は 2 年 間 しか 遡 れません したがって それを 超 えた 部 分 は 労 使 間 の 問 題 として 別 12

途 解 決 しなくてはなりません このような 事 案 で 数 はあまり 多 くありませんが 雇 用 保 険 関 係 と 厚 生 年 金 保 険 関 係 の 裁 判 例 がいくつがありますので 参 考 に 添 付 致 します( 参 考 参 照 ) 年 金 関 係 の 裁 判 例 では 老 齢 厚 生 年 金 ( 老 齢 基 礎 年 金 )の 受 給 権 が 様 々な 例 外 は あるものの 原 則 165 歳 以 上 であること 2 保 険 料 納 付 済 期 間 及 び 保 険 料 免 除 期 間 を 合 算 した 期 間 が25 年 以 上 あること( 厚 生 年 金 保 険 法 第 42 条 ) から 年 金 の 受 給 権 を 取 得 できておらず 受 給 額 もいくらになるのかが 明 確 になっていない 状 態 の 段 階 では 損 害 額 の 算 定 に 消 極 的 な 裁 判 例 が 多 いと 思 われます( 年 金 関 連 裁 判 例 :リブラ ン 事 件 東 京 地 判 昭 60 9 26 労 判 465-59 京 都 市 役 所 非 常 勤 嘱 託 員 厚 生 年 金 保 険 事 件 京 都 地 判 平 11 9 30 判 時 1715-51 麹 町 社 会 保 険 事 務 所 事 件 仙 台 高 判 平 16 11 24 判 時 1901-60 豊 國 工 業 事 件 奈 良 地 判 平 18.9.5 労 判 925-53( 湊 栄 市 判 例 解 説 労 判 937-6) 大 真 実 業 事 件 大 阪 地 判 平 18.1.26 労 判 912-51 など) 山 口 ( 角 兵 衛 寿 し) 事 件 大 阪 地 判 平 元 8 22 労 判 546-27 1 労 働 者 が 在 職 中 に 年 次 有 給 休 暇 を 請 求 しなかったこと 請 求 しなかった 理 由 は 特 になかったことが 認 め られるところ 年 次 有 給 休 暇 を 消 化 しないまま 退 職 したとしても 使 用 者 に 有 給 休 暇 相 当 分 の 賃 金 を 支 払 う 義 務 が 法 律 上 当 然 に 発 生 するものではない 2 事 業 主 が 雇 用 保 険 の 成 立 届 や 保 険 料 支 払 をおこなわず 退 職 時 に 離 職 票 を 交 付 しなかったとしても 労 働 者 は 被 保 険 者 資 格 の 得 喪 に 関 し 確 認 の 請 求 を 行 うことができ 確 認 を 受 ければ 法 定 の 手 続 を 履 践 した 場 合 と 同 額 の 基 本 手 当 を 受 給 することは 可 能 であるから 基 本 手 当 相 当 額 の 損 害 が 生 じたとはいえない 3 原 告 労 働 者 のり 患 した 眼 疾 患 は 地 下 街 にある 被 告 会 社 の 店 舗 での 勤 務 中 に 近 隣 の 飲 食 店 が 発 生 させ た 煙 によって 生 じたと 認 めうる 証 拠 はないから 労 働 災 害 にあたらない 13

京 都 市 役 所 非 常 勤 嘱 託 員 厚 生 年 金 保 険 事 件 京 都 地 判 平 11 9 30 判 時 1715-51 事 案 の 概 要 被 告 が 設 置 した 区 役 所 及 びその 支 所 における 夜 間 休 日 の 業 務 に 従 事 するものとして 任 用 された 非 常 勤 嘱 託 員 である 原 告 らが 被 告 に 対 し 被 告 の 職 員 である 各 区 役 所 等 の 区 長 ないし 支 所 長 が 原 告 らについて 厚 生 年 金 保 険 法 27 条 の 被 保 険 者 資 格 の 届 出 を 怠 ったため 原 告 らが 厚 生 年 金 の 受 給 権 を 取 得 することができなかったことが 不 法 行 為 であるとして その 使 用 者 である 被 告 ( 市 )に 対 し 民 法 71 5 条 または 民 法 709 条 に 基 づき 損 害 賠 償 を 求 めた 事 案 において 原 告 らは 被 告 と 常 用 的 使 用 関 係 にあり 厚 生 年 金 の 被 保 険 者 資 格 を 有 するから 被 保 険 者 資 格 の 届 出 をしなかった 区 長 らの 措 置 は 厚 生 年 金 保 険 法 27 条 違 反 のものであり 除 斥 期 間 は 満 了 していないとして 過 失 相 殺 をして 請 求 を 一 部 認 容 した 事 例 要 旨 1 京 都 市 の 区 役 所 の 夜 間 休 日 の 業 務 に 従 事 するものとして 任 用 された 非 常 勤 嘱 託 員 で 労 働 時 間 が 一 般 の 職 員 の4 分 の3 以 上 の 者 は 常 用 的 使 用 関 係 にあり 厚 生 年 金 の 被 保 険 者 資 格 を 有 するというべきで あるから 区 長 らが 被 保 険 者 資 格 の 届 出 をしなかったことは 違 法 である 2 厚 生 年 金 の 被 保 険 者 資 格 の 取 得 の 効 力 発 生 は 都 道 府 県 知 事 の 確 認 によって 生 ずるのであって 事 業 主 がする 被 保 険 者 資 格 取 得 の 届 出 は その 前 提 たる 手 続 に 過 ぎず 事 業 主 としては 被 用 者 の 被 保 険 者 資 格 の 有 無 について 疑 義 があれば 届 出 をしておくべきであるから 届 出 を 怠 った 場 合 には 過 失 が 認 められる 3 厚 生 年 金 保 険 資 格 の 届 出 の 懈 怠 に 関 しては 老 齢 給 付 を 受 ける 権 利 が 発 生 したときに 届 出 をしていた 場 合 の 得 べかりし 利 益 も 発 生 すると 解 されるから 不 法 行 為 時 から 相 当 期 間 経 過 後 に 損 害 が 発 生 する 例 外 的 な 場 合 に 当 たり 損 害 発 生 時 から 除 斥 期 間 の 進 行 が 発 生 するものと 解 するのが 相 当 である 4 将 来 の 年 金 支 給 額 は 政 策 判 断 によって 定 まるものであるけれども 被 保 険 者 資 格 取 得 の 届 出 の 懈 怠 と 既 発 生 の 損 害 については 相 当 因 果 関 係 を 是 認 することができ 仮 に 給 付 水 準 の 切 り 下 げが 実 施 されて も 既 得 権 益 はそれなりに 保 護 される 可 能 性 が 強 いことに 鑑 みると 将 来 の 得 べかりし 利 益 についても 相 当 因 果 関 係 を 認 めるべきである 5 不 法 行 為 の 損 害 たる 正 確 な 年 金 受 給 額 を 算 定 するのは 困 難 な 作 業 ではあるけれども その 算 定 方 法 は 法 規 に 定 められており 一 般 人 であっても 算 定 は 可 能 であり 弁 護 士 であればなおさらであるから 弁 護 士 費 用 とは 別 個 に 社 会 保 険 労 務 士 に 対 する 委 任 費 用 まで 相 当 因 果 関 係 のある 損 害 と 評 価 することはで きない 市 が 設 置 した 区 役 所 の 夜 間 休 日 の 業 務 に 従 事 する 非 常 勤 嘱 託 員 について 区 長 が 厚 生 年 金 保 健 法 27 条 の 被 保 険 者 資 格 の 届 出 を 怠 ったため 右 嘱 託 員 が 厚 生 年 金 の 受 給 権 を 取 得 できなかった 損 害 を 市 が 賠 償 すべ き 責 任 があるとされた 事 例 14

豊 國 工 業 事 件 奈 良 地 判 平 18.9.5 労 判 925-53( 湊 栄 市 判 例 解 説 労 判 937-6) 1 被 告 会 社 が 厚 生 年 金 等 の 社 会 保 険 の 加 入 手 続 を 怠 ったために 国 民 年 金 等 の 保 険 料 の 支 払 いを 余 儀 なくされ また 厚 生 年 金 の 給 付 額 も 少 なくなったとしてなされた 元 従 業 員 による 損 害 賠 償 請 求 が 一 部 認 容 された 例 2 法 ( 健 康 保 険 法 48 条 厚 生 年 金 保 険 法 27 条 128 条 )が 事 業 主 に 対 して 被 保 険 者 の 資 格 取 得 に ついて 各 保 険 者 に 対 する 届 出 を 義 務 付 けたのは これら 保 険 制 度 への 強 制 加 入 の 原 則 を 実 現 するため であると 解 されるところ 法 がこのような 強 制 加 入 の 原 則 を 採 用 したのは これら 保 険 制 度 の 財 政 基 盤 の 強 化 が 主 たる 目 的 であるとの 解 されるが それのみに 止 まらず 当 該 事 務 所 で 使 用 される 特 定 の 労 働 者 に 対 して 保 険 給 付 を 受 ける 権 利 を 具 体 的 に 保 障 する 目 的 をも 有 すると 解 すべきとされた 例 3 使 用 者 たる 事 業 主 が 被 保 険 者 資 格 を 取 得 した 個 別 の 労 働 者 に 関 してその 届 出 をすることは 雇 用 契 約 を 締 結 する 労 働 者 においても 期 待 するのが 通 常 であり その 期 待 は 合 理 的 なものというべきである ことからすれば 事 業 主 が 法 の 要 求 する 前 記 の 届 出 を 怠 ることは 被 保 険 者 資 格 を 取 得 した 当 該 労 働 者 の 法 益 をも 直 接 に 侵 害 する 違 法 なものであり 労 働 契 約 上 の 債 務 不 履 行 をも 構 成 するものと 解 すべ きとされた 例 4 社 会 保 険 制 度 は 疾 病 や 老 齢 等 のさまざまな 保 険 事 故 に 対 する 危 機 を 分 散 することにより 社 会 構 成 員 の 生 活 を 保 障 するものであるから 特 定 のものがその 受 益 を 放 棄 して 負 担 を 免 れることは 本 質 的 に 相 容 れないものというべきであり 合 意 があることをもって 当 然 にその 届 出 義 務 の 懈 怠 が 正 当 化 され るものとはいうことはできないとされた 例 5Xが 採 用 に 際 し 被 保 険 者 資 格 について 真 実 に 反 する 説 明 を 受 けた 結 果 これを 信 じて 社 会 保 険 の 加 入 を 断 念 したからといって これをもって 不 加 入 について 同 意 をしたと 認 めることはできないのみ ならず むしろ そのような 事 実 に 反 する 説 明 をして 加 入 を 断 念 させる 行 為 自 体 が 違 法 行 為 を 構 成 し 債 務 不 履 行 にあたるというべきとされた 例 6 法 は 被 保 険 者 資 格 の 取 得 について 単 に 事 業 主 に 報 告 を 義 務 付 けているだけでなく 被 保 険 者 自 身 による 確 認 の 請 求 を 認 めているのであるから その 不 行 使 の 事 実 をもって 被 保 険 者 の 過 失 と 評 価 すべ き 余 地 があるが 本 件 Xに 過 失 があったとはいえないとされた 例 7 本 件 損 害 として 被 告 が 原 告 の 被 保 険 者 資 格 の 取 得 について 届 出 をしていれば 支 払 いを 免 れ 得 たは ずの 保 険 料 合 計 308 万 余 円 給 付 を 受 けられたはずの 厚 生 年 金 合 計 333 万 余 円 を 認 定 し これから 被 告 が 厚 生 年 金 加 入 手 続 をしていた 場 合 に 原 告 が 支 払 いを 要 したはずの 自 己 負 担 分 保 険 料 合 計 254 万 余 円 を 控 除 した386 万 余 円 が 認 められた 例 8 原 告 が 被 告 保 険 者 資 格 を 取 得 したにもかかわらず 保 険 給 付 を 得 られなかったことにつき 慰 謝 料 20 万 円 が 認 められた 例 9 被 告 が 過 去 2 年 間 に 遡 って 社 会 保 険 加 入 手 続 をしたことにより 原 告 が 負 担 すべき 保 険 料 等 の 本 人 負 担 分 合 計 122 万 余 円 を 支 払 ったことにつき 被 告 は 原 告 に 対 して 残 金 74 万 余 円 の 支 払 い 請 求 権 があ るか 原 告 の 損 害 賠 償 請 求 権 との 相 殺 により 消 滅 することとされた 例 15

大 真 実 業 事 件 大 阪 地 判 平 18.1.26 労 判 912-51 1 厚 生 年 金 保 険 法 27 条 の 事 業 主 の 届 出 義 務 は 公 法 上 の 義 務 であるが 同 条 が 労 働 者 に 保 険 の 利 益 を 得 させるという 点 を 目 的 としていると 解 されることに 鑑 みれば かかる 義 務 が 単 なる 公 法 上 の 義 務 にと どまるということはできず 使 用 者 は 雇 用 契 約 の 付 随 義 務 として 信 義 則 上 厚 生 年 金 保 険 の 被 保 険 者 資 格 の 取 得 を 届 け 出 て 労 働 者 が 老 齢 厚 生 年 金 等 を 受 給 できるよう 配 慮 すべき 義 務 を 負 うものと 解 す るべきであり 使 用 者 が この 義 務 に 違 反 して 上 記 資 格 の 取 得 を 届 け 出 ないときは その 行 為 は 違 法 性 を 有 し 債 務 不 履 行 ないし 不 法 行 為 を 構 成 するとされた 例 2 被 告 会 社 は 被 告 のパートタイム 従 業 員 であった 原 告 が 厚 生 年 金 保 険 被 保 険 者 資 格 を 取 得 したにも 関 わ らず その 取 得 を 届 け 出 なかったもので 厚 生 年 金 保 険 法 27 条 に 違 反 するものといわざるを 得 ないが 本 件 においては 結 局 原 告 が 老 齢 厚 生 年 金 を 受 給 出 来 るか 否 か 受 給 額 がいかなる 額 になるかは 明 ら かではなく その 損 害 額 は 明 らかではないことから 被 告 が 厚 生 年 金 保 険 の 被 保 険 者 資 格 の 取 得 を 届 出 なかったことにより 原 告 に 損 害 が 生 じたとは 認 められないとされた 例 3 雇 用 保 険 についても 使 用 者 は 雇 用 契 約 の 付 随 義 務 として 信 義 則 上 雇 用 保 険 の 被 保 険 者 資 格 の 取 得 を 届 け 出 て 労 働 者 が 失 業 等 給 付 等 を 受 給 できるよう 配 慮 すべき 義 務 を 負 うものと 解 するべきであり 使 用 者 が この 義 務 に 違 反 して 上 記 資 格 の 取 得 を 届 け 出 ない 時 や 偽 りの 届 出 をしたときは その 行 為 は 違 法 性 を 有 し 債 務 不 履 行 ないし 不 法 行 為 を 構 成 するとされた 例 4 被 告 が 原 告 の 雇 用 保 険 被 保 険 者 資 格 の 取 得 を 届 出 なかったことは 雇 用 保 険 法 7 条 に 違 反 するものであ り 原 告 について 被 告 A 西 九 条 店 勤 務 時 になされた 雇 用 保 険 法 上 の 短 時 間 労 働 被 保 険 者 としての 届 出 は 事 実 とは 異 なる 届 出 であったところ 原 告 の 被 告 A 京 橋 店 退 職 に 伴 う 失 業 等 給 付 の 受 給 については 工 業 職 業 安 定 所 長 は 原 告 が 短 時 間 労 働 被 保 険 者 であると 確 認 して 不 支 給 処 分 をしたが 同 所 長 が 離 職 証 明 書 の 記 載 のみによってかかる 確 認 をしたのかは 明 らかではないこと 原 告 は 同 処 分 の 審 査 請 求 を することができたのに これを 行 なわなかったことから 被 告 が 原 告 の 離 職 証 明 書 の 短 時 間 の 欄 に 丸 印 を 付 して 公 共 職 業 安 定 所 に 提 出 したことと 原 告 が 雇 用 保 険 による 失 業 等 給 付 を 受 給 できなかっ たこととの 間 には 因 果 関 係 を 認 めることができず 被 告 が 雇 用 労 働 保 険 被 保 険 者 資 格 を 届 出 なかった ことや 偽 りの 届 出 をしたことより 原 告 に 損 害 が 生 じたとは 認 められないとされた 例 5 使 用 者 に 労 基 法 20 条 等 の 違 反 があっても 義 務 違 反 状 況 消 滅 後 は 労 働 者 は 同 法 114 条 による 付 加 金 請 求 申 立 をすることができないとされ 原 告 の 付 加 金 請 求 が 棄 却 された 例 16