2. 栽 培 (1) 茶 の 特 性 茶 は 亜 熱 帯 性 の 常 緑 作 物 で 生 育 の 温 度 限 界 は 年 平 均 気 温 が12.5 ~13.0 の 範 囲 にあり 年 間 降 水 量 は1,300mm 以 上 が 望 ましい 栽 培 適 地 は 広 く 酸 性 土 壌 (ph4.0~5.0)に 適 している 土 壌 の 物 理 性 ( 通 気 性 透 水 性 保 水 性 )が 良 好 であり 有 効 土 層 が1m 以 上 の 土 壌 で 生 育 が 良 好 である 過 湿 に 弱 いので 注 意 する 1 年 に3~4 回 収 穫 できるが 摘 採 回 数 が 多 いと 樹 勢 は 弱 くなりやすい (2) 茶 園 の 造 成 改 植 防 災 を 主 体 とした 工 法 を 十 分 配 慮 し 実 施 するが 事 前 に 次 の 事 項 について 調 査 を 行 う 造 成 法 農 道 設 置 排 水 施 設 などは 専 門 機 関 等 の 指 導 助 言 を 得 て 実 施 する 立 地 条 件 ( 傾 斜 度 起 伏 状 態 谷 間 の 有 無 ) 土 壌 条 件 ( 耕 土 の 深 浅 特 殊 土 壌 や 岩 盤 の 有 無 酸 度 微 量 要 素 ) 気 象 条 件 ( 寒 害 凍 霜 害 寒 風 害 の 有 無 ) 排 水 ( 地 下 水 位 の 高 低 排 水 の 良 否 末 端 排 水 箇 所 の 有 無 ) ア 造 成 方 法 新 規 造 成 改 植 にあたっては 機 械 化 に 対 応 できるよう 配 慮 する 急 傾 斜 地 の 場 合 は 傾 斜 階 段 畑 とする いずれの 場 合 も 傾 斜 度 は8 度 以 下 とする 乗 用 型 摘 採 機 導 入 予 定 の 場 合 摘 採 機 の 作 業 能 率 が 高 まるような 茶 園 の 傾 斜 角 度 畦 長 を 設 定 し 摘 採 機 が 反 転 できる 枕 地 の 広 さを 確 保 する 新 規 造 成 園 は 腐 植 が 少 ないので 有 機 物 を10a 当 たり5~6t 程 度 施 す また 酸 度 矯 正 す るため 苦 土 石 灰 などの 石 灰 質 資 材 を 施 用 する 同 時 に 発 根 を 促 すためリン 酸 肥 料 の 施 用 も 行 う 造 成 地 内 に 霜 穴 や 霜 道 になるような 部 分 を 最 小 限 にするよう 留 意 し 凍 霜 害 の 受 け 易 い 所 が できた 場 合 は 農 道 や 排 水 路 その 他 施 設 に 利 用 する イ 排 水 対 策 排 水 不 良 の 原 因 は 下 層 に 不 透 水 層 がある 茶 園 が 周 囲 より 低 位 置 にある 土 壌 がち 密 で 透 水 性 が 悪 い 茶 園 の 周 囲 からの 湧 水 や 雨 水 の 流 入 等 がある 茶 樹 の 根 は 過 湿 に 弱 いので 明 きょ 又 は 暗 きょによる 排 水 対 策 が 必 要 である 茶 園 以 外 からの 表 流 水 が 流 入 すると 土 壌 流 亡 や 過 湿 障 害 を 起 こす 原 因 になる 集 中 豪 雨 の 場 合 は 土 砂 など 流 失 することもあるので 表 流 水 を 明 きょで 分 散 排 水 する 必 要 がある また 地 下 水 の 侵 入 の 多 い 山 際 の 排 水 には 明 きょ 排 水 がよい - 7 -
暗 きょ 排 水 の 設 置 密 度 や 規 模 は 土 壌 条 件 によって 異 なるが 通 常 5~6mに 一 本 は 必 要 である が 間 隔 が 広 くなる 場 合 は 吸 水 暗 きょを 最 低 10m 間 隔 で 設 置 することが 望 ましい 暗 きょの 構 造 は 深 さ 約 1~1.5m 幅 40~60cmとし この 中 に 疎 水 材 を 敷 き 詰 め 多 孔 管 ( 内 径 10~15cm)を 併 用 するのが 理 想 である 疎 水 材 として 礫 やコンクリート 片 などを 用 いるのが 良 い 入 手 しやすい 竹 や 木 等 を 用 いてもよいが 耐 久 性 が 短 い 欠 点 がある ウ 農 道 と 区 画 園 内 の 農 道 の 幅 員 は 幹 線 では5~6mと 支 線 では3m 程 度 確 保 する 園 と 農 道 に 段 差 を 設 ける 場 合 は 農 作 業 の 安 全 性 を 考 慮 する うねの 長 さは 可 搬 型 摘 採 機 の 場 合 は25~30mが 適 当 である 乗 用 型 摘 採 機 の 場 合 は 作 業 能 率 や 耕 地 利 用 率 を 上 げるためにはできるだけ 長 いうねが 望 ましいが 機 械 の 生 葉 収 容 力 最 大 収 量 摘 採 方 向 ( 一 方 刈 往 復 刈 ) 等 に 制 限 される また 乗 用 型 摘 採 機 導 入 の 場 合 機 種 に もよるが3mの 枕 地 が 両 端 にあることが 望 ましい (3) 品 種 の 選 び 方 品 種 を 選 定 するポイントは 品 質 生 産 性 地 域 への 適 合 性 工 場 の 操 業 などを 考 慮 し 経 営 的 に 成 り 立 つかを 検 討 することである ア 品 種 と 収 量 茶 はし 好 作 物 であるため もっとも 重 要 な 特 性 は 品 質 である 品 質 では 香 りと 味 が 大 切 で それらは 品 種 栽 培 環 境 により 異 なるので 地 域 に 適 した 品 種 を 選 ぶ 必 要 がある 次 に 樹 勢 が 強 く 多 収 であることが 重 要 である また 定 植 後 の 初 期 生 育 が 旺 盛 であれば 早 く 成 園 化 でき 有 利 である イ 栽 培 の 安 定 化 茶 の 生 育 は 自 然 環 境 の 影 響 を 強 くうけるので 栽 培 の 安 定 のために 耐 寒 性 耐 虫 性 耐 病 性 並 びに 早 晩 生 を 考 慮 して 品 種 を 選 ぶことが 大 切 である 寒 冷 地 等 の 冬 季 の 冷 え 込 みの 強 い 地 域 や 初 霜 期 の 冷 え 込 みの 強 いところでは 寒 害 裂 傷 型 凍 害 に 強 い 品 種 を 選 ぶ 必 要 がある 凍 霜 害 の 発 生 の 危 険 性 の 高 い 地 域 では そこでの 終 霜 日 より 導 入 する 品 種 の 萌 芽 期 が 早 い ほど 凍 霜 害 を 受 けやすく 遅 いほど 安 全 である 早 生 品 種 を 導 入 する 園 は 防 霜 対 策 を 十 分 に 行 う ウ 経 営 の 安 定 化 品 質 が 良 好 で 収 量 が 多 く 需 要 の 多 い 品 種 を 選 ぶことは 経 営 を 安 定 化 させるために 必 要 である しかし 摘 採 の 労 力 や 製 茶 工 場 の 操 業 面 から 園 地 条 件 と 早 晩 生 品 種 の 組 合 せで 摘 採 期 間 の 延 長 を 図 り 適 期 摘 採 による 良 質 茶 の 生 産 を 行 うことで 経 営 規 模 の 拡 大 と 経 営 の 安 定 化 が 可 能 である エ 奨 励 品 種 の 概 要 奨 励 品 種 及 び 最 近 の 主 な 品 種 の 概 要 は1~6ページ 参 照 - 8 -
(4) さ し 木 さし 木 方 法 には 普 通 さし 木 法 と 密 閉 さし 木 法 がある 普 通 さし 木 法 が 発 根 するまでほぼ 毎 日 潅 水 が 必 要 なのに 対 して 密 閉 さし 木 法 はこの 潅 水 の 手 間 が 省 けるため 省 力 的 である ア さし 木 床 さし 木 床 は 床 幅 1mとし うねの 方 向 に 平 行 か 直 角 に 条 間 12~20cm さし 穂 間 隔 1.5~4.0 cmにさし 木 できるように 設 置 する 二 年 生 苗 を 育 成 する 場 合 は さし 穂 間 隔 を3.0~4.0cmにす る 通 路 は 床 面 より 低 くし 通 路 幅 は40~50cmにする 茶 のさし 木 では さし 穂 が 発 根 するさし 床 (さし 土 )と 発 根 後 成 苗 になるまで 生 育 する 育 苗 床 ( 育 苗 土 )を 同 一 場 所 に 組 合 わせて 設 置 する さし 土 は 肥 料 成 分 が 少 なく 保 水 性 と 通 気 性 がよいことが 望 ましい 育 苗 土 は 肥 沃 土 であることが 望 ましい 育 苗 土 の 上 にさし 土 を 厚 さ10cm 程 度 敷 くのが 理 想 的 であるか 育 苗 土 がさし 土 として 不 適 当 でない 場 合 さし 土 に 用 いてもよい イ さし 穂 の 採 取 調 整 さし 穂 の 採 取 適 期 は 普 通 さし 密 閉 さしともに 一 番 茶 芽 の 伸 育 が 停 止 し 枝 条 の 下 位 1/3 程 度 硬 化 した7 月 である 茎 葉 が 大 きく 充 実 した 枝 条 を 採 取 する 母 樹 園 は 前 年 に 深 刈 りや 中 切 り 更 新 を 行 う ま た 母 樹 園 の 病 害 虫 防 除 は 周 到 に 行 うようにする 切 り 取 った 枝 条 は 日 陰 ですみやかに 調 整 し できるだけ 早 くさす 採 取 した 枝 条 またはさし 穂 は 乾 燥 させず また 長 時 間 水 につけないよう 注 意 する さし 穂 は 図 のように2 葉 挿 しができるように 調 整 する 調 整 の 際 には 枝 条 の 軟 弱 な 部 分 と 下 端 の 硬 化 しすぎた 部 分 は 使 用 しない 図 1 さし 穂 の 調 整 方 法 ウ さし 木 作 業 さし 床 と 育 苗 床 の 毛 管 水 を 連 結 させるために さし 木 床 にはさし 木 作 業 直 前 に 不 耕 起 層 まで 及 ぶ 程 十 分 かん 水 する 前 日 の 夕 方 に 予 めかん 水 し 当 日 に 再 びかん 水 すると 良 い さし 穂 は 成 葉 が 横 ( 条 に 直 角 )に 並 ぶようにし 深 さは2cm 程 度 とする さし 木 直 後 に さし 穂 と 土 粒 を 密 着 させるため 強 く 流 れ 出 る 水 圧 で 床 表 面 を 水 が 流 れる 程 に 十 分 かん 水 する さし 木 直 後 に 必 ず 主 要 な 病 害 虫 ( 赤 焼 病 炭 疽 病 カンザワハダニ チャノミドリヒメヨコ バイ コカクモンハマキ)の 防 除 は 行 うこと - 9 -
エ 被 覆 (ア) 普 通 さし 木 法 の 場 合 遮 光 率 60~80%の 遮 光 資 材 をトンネル 式 または 総 屋 根 式 に 被 覆 する 被 覆 の 高 さはトン ネル 式 では40~50cm 総 屋 根 式 では1.7~1.8mにする 遮 光 資 材 等 はさし 木 前 に 準 備 して おき さし 木 中 から 順 次 すみやかに 被 覆 する (イ) 密 閉 さし 木 法 の 場 合 無 色 透 明 か 梨 地 のフィルムをトンネル 式 ( 高 さ40~50cm)に 被 覆 し 裾 を 地 中 に 埋 め さし 床 を 完 全 密 封 する さらに この 外 側 に 遮 光 率 80~85% 程 度 の 遮 光 資 材 を 直 接 または 間 隔 をおいて 被 覆 する 直 接 被 覆 する 場 合 は 遮 光 率 85% 間 隔 をおいて 被 覆 する 場 合 は80 %の 遮 光 率 とする 遮 光 資 材 は 直 接 掛 けるより 間 隔 をおいて 掛 ける 方 がフィルム 内 の 異 常 昇 温 を 抑 制 し 発 根 に 好 適 な 温 度 になりやすい フィルムや 遮 光 資 材 等 はさし 木 前 に 準 備 しておき さし 木 作 業 後 すみやかに 被 覆 する オ かん 水 (ア) 普 通 さし 木 法 発 根 するまでは 降 雨 がない 限 り 毎 日 かん 水 を 行 う さし 木 後 45 日 経 過 すると ほぼ 一 次 根 が 出 揃 うので 徐 々にかん 水 の 回 数 を 少 なくし さし 土 が 特 別 に 乾 燥 しない 程 度 に 管 理 する( 土 壌 の 保 水 性 にもよるが 降 雨 がなければ 週 に1~2 回 程 度 かん 水 を 行 う) (イ) 密 閉 さし 木 法 フィルムで 密 閉 中 は かん 水 は 不 要 である フィルム 除 去 後 は さし 土 が 特 別 に 乾 燥 しな い 程 度 に 管 理 する( 土 壌 の 保 水 性 にもよるが 降 雨 がなければ 週 に1~2 回 程 度 かん 水 を 行 う) 図 2 密 閉 さし 木 法 のさし 木 床 の 断 面 図 さし 木 時 期 6 月 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 さし 木 期 間 防 寒 防 雪 遮 光 被 覆 (および 密 閉 被 覆 ) - 10 -
カ さし 穂 の 発 根 さし 穂 の 発 根 には 最 低 30-40 日 を 要 し すべてのさし 穂 が 十 分 な 発 根 を 完 了 するには60~ 90 日 が 必 要 である 品 種 さし 穂 床 土 及 び 挿 し 木 時 期 などの 条 件 により 発 根 状 態 は 異 なる たとえば 新 梢 が 良 く 伸 びているが 発 根 が 十 分 でない 場 合 もある ( 良 好 ) ( 上 部 発 根 ) (カルス 肥 大 ) この 状 態 の 発 根 が 最 も 早 い 1さし 穂 切 り 口 付 近 の 通 気 が 不 良 1 土 壌 中 の 水 分 不 足 給 水 吸 水 適 度 の 通 気 と 水 分 がある 通 気 不 良 は 発 根 も 遅 らせる の 不 全 毛 管 水 の 途 絶 2 深 くさし 過 ぎているか 足 が 長 すぎる 2 土 とさし 穂 の 密 着 不 完 全 3 土 性 不 適 図 3 さし 穂 の 発 根 状 態 の 良 否 キ 被 覆 の 除 去 さし 穂 が 十 分 に 発 根 (さし 木 後 60~90 日 後 )した 後 フィルムや 遮 光 資 材 の 除 去 を 行 う さし 穂 が 十 分 に 発 根 したら 遮 光 資 材 は 早 めに 取 り 除 く 方 が 発 根 後 の 新 梢 や 根 の 生 育 に よい 密 閉 ざしの 場 合 は まずフィルム( 密 閉 資 材 )を 取 りはずし 数 日 後 に 遮 光 資 材 を 除 去 する 遮 光 資 材 の 除 去 は 一 度 にすべて 行 わず 1~2 週 間 かけて 段 階 的 に 露 天 状 態 に 慣 らす 遮 光 資 材 の 除 去 は 曇 雨 天 の 夕 刻 に 行 い まずトンネルの 両 端 を 開 けて 風 を 通 し 新 芽 が 萎 れないことを 確 かめて 行 う 遮 光 資 材 除 去 後 晴 天 が 続 くようであれば 適 宜 かん 水 を 行 う ク さし 木 後 の 病 害 虫 防 除 炭 疽 病 やカンザワハダニ チャノミドリヒメヨコバイなどの 発 生 が 認 められるときは 速 や かに 防 除 を 行 う ケ 施 肥 被 覆 を 取 りはずし 二 ~ 三 次 根 が 形 成 される 時 期 (9 月 頃 )に 化 成 肥 料 を1a 当 たりの 成 分 量 合 計 で 窒 素 2.0kg リン 酸 1.3kg カリ1.8kg 程 度 を 分 施 する 肥 料 は 多 すぎると 肥 料 障 害 を 起 こすので 少 量 ずつ 行 うのが 良 い - 11 -
表 1 2 年 生 苗 育 成 の 場 合 の 施 肥 設 計 (kg/a) 成 分 成 分 施 肥 時 期 施 肥 時 期 N P K N P K 9 月 上 旬 0.4 0.2 0.3 4 月 上 旬 1.0 1.2 1.0 1 9 月 中 旬 0.6 0.3 0.5 2 6 月 上 旬 1.0-1.0 年 9 月 下 旬 1.0 0.8 1.0 年 7 月 中 旬 1.0-0.7 目 目 9 月 上 旬 1.0 1.5 1.2 合 計 2.0 1.3 1.8 小 計 4.0 2.7 3.9 コ 防 寒 12 月 上 旬 頃 ~3 月 中 旬 にかけて 防 寒 防 雪 のため 遮 光 率 60~80% 程 度 の 黒 色 資 材 で 再 度 被 覆 する 表 2 さし 木 法 の 概 略 とその 相 違 点 さし 木 法 項 目 普 通 さし 木 法 密 閉 さし 木 法 床 土 保 水 性 と 通 気 性 の 良 い 土 左 に 同 じ ビニル 幅 1.8m 床 幅 0.9~1.0m さ し 床 の 幅 1.0m 程 度 2.0 1.0~1.1 2.2 1.1~1.2 さ し 床 あまり 高 床 にしないこと 10cm 程 度 の 高 床 にすること の 高 さ 床 の 乾 燥 に 注 意 すること 床 の 過 湿 に 注 意 すること さ し 穂 半 硬 化 枝 が 良 い 比 較 的 軟 弱 部 および 硬 化 部 も 使 用 できる さ し 穂 の 予 措 病 害 虫 は 挿 し 木 直 後 に 防 除 する ま 左 に 同 じ た 母 樹 園 の 病 害 虫 防 除 は 周 到 に 行 う さ し 木 前 の さし 木 作 業 前 に 十 分 かん 水 しておく 左 に 同 じ 床 散 水 ( 地 下 毛 管 水 と 連 結 させる) か ん 水 発 根 するまで: 降 雨 のない 限 り 毎 日 密 閉 中 : 不 要 発 根 後 : 挿 し 床 が 特 別 に 乾 燥 しない フィルム 除 去 後 : 挿 し 床 が 特 別 に 乾 燥 しな 程 度 に 行 う い 程 度 に 行 う 遮 光 資 材 遮 光 率 60~80%の 資 材 直 接 被 覆 : 遮 光 率 85% 程 度 の 資 材 間 隔 をおいた 被 覆 : 遮 光 率 80% 程 度 の 資 材 さ し つ け の 2cm 2cm 深 さ フ ィ ル ム 被 覆 な し 2~3カ 月 間 (さし 穂 が 十 分 に 発 根 するま で) さし 木 時 期 7 月 7 月 - 12 -
サ ペーパーポット 利 用 によるさし 木 法 (ア) 方 法 ポットの 規 格 は 直 径 5.0~7.5cm 深 さ15~20cm 程 度 ( 無 底 )とする このポットをさし 木 床 に 埋 設 し 排 水 の 良 い 用 土 を 密 に 充 填 してさし 木 する また ポットとポットの 間 にも 土 を 充 填 する 他 の 育 苗 管 理 は 慣 行 のさし 木 法 ( 普 通 ざし 密 閉 ざし)に 準 ずる ポットの 設 置 はさし 木 予 定 日 より 早 めに 行 い 降 雨 やかん 水 によりポット 内 の 用 土 を 落 ち 着 かせる 用 土 が 密 に 充 填 されていなければ 沈 下 するので この 場 合 は 再 度 土 を 補 充 する (イ) 定 植 定 植 は 通 常 一 年 生 苗 とする 定 植 時 には ポットの 規 格 と 同 程 度 の 深 さの 植 え 溝 を 堀 り そこにポットごと 苗 を 定 植 する 定 植 時 には なるべくポット 内 の 土 が 落 ちないよ う 注 意 する (ウ) 効 果 ポット 育 成 苗 の 根 の 生 育 は 旺 盛 で 最 長 根 長 及 び 根 重 は 慣 行 さし 木 苗 の1.5 倍 になり 下 層 での 発 根 量 も 多 くなる また 定 植 時 の 断 根 や 植 え 傷 みが 軽 減 されて 本 圃 での 活 着 率 が 二 年 生 苗 と 遜 色 ない また 慣 行 のさし 木 苗 より 定 植 後 の 初 期 生 育 は 促 進 される さらに 本 圃 の 土 壌 改 良 とこのポット 苗 を 組 合 せ 根 がより 深 く 分 布 すれば 干 ばつ 害 や 寒 干 害 の 軽 減 を 図 ることができ 早 期 成 園 化 が 図 られる (エ) 問 題 点 慣 行 苗 に 比 べて 単 価 が 高 い また 植 え 付 け 時 の 輸 送 に 労 力 がかかる (5) 図 4 ペーパーポット 育 苗 の 模 式 図 定 植 ア 時 期 3 月 ~4 月 が 適 期 である 雨 量 が 少 なく 乾 燥 状 態 が 続 いている 時 は 若 干 時 期 を 遅 らせ て 十 分 な 降 雨 の 後 に 定 植 する 6 月 植 えも 可 能 であるが 夏 の 水 管 理 や 冬 の 防 寒 対 策 に 注 意 する 必 要 がある イ 定 植 準 備 植 栽 方 法 には 単 条 植 えと 千 鳥 植 えがあり 二 条 植 えの 場 合 は 千 鳥 植 えとする 単 条 植 えはうね 幅 1.8m 株 間 30cm 程 度 とする 千 鳥 植 えはうね 幅 1.8m 株 間 45cm 条 間 30cm 程 度 とする 但 し 乗 用 型 摘 採 機 (1うね 型 ) を 使 用 する 場 合 は 刈 刃 の 曲 率 半 径 が3,000mmと 大 きいので 枝 条 構 成 や 株 張 りの 早 期 確 保 を 考 慮 して 条 間 45~60cm 程 度 の 複 条 千 鳥 植 えが 望 ましい - 13 -
単 条 植 え 二 条 千 鳥 植 え 1.8m(うね 幅 ) 1.8m(うね 幅 ) 45cm( 株 間 ) 30cm ( 株 間 ) 30cm( 条 間 ) 植 栽 本 数 (10aあたり) 単 条 植 え 1,852 本 二 条 千 鳥 植 え 2,469 本 ウ 苗 は2 年 生 を 用 いるのが 一 般 的 であるが 水 の 確 保 除 草 等 の 問 題 がなければポット 苗 など の1 年 生 苗 でも 定 植 できる ポット 苗 は 断 根 されることがないため 従 来 の2 年 生 挿 し 木 苗 と 比 較 して 植 え 傷 みが 少 ない また 深 根 性 であるため 定 植 後 の 根 を 深 く 分 布 させることができ 冬 季 の 寒 干 害 や 夏 季 の 干 ば つ 害 対 策 に 有 効 で 早 期 成 園 化 も 図 られる 植 え 付 け 手 順 深 さ30cm 幅 30~40cmに 植 溝 を 掘 り そこにたい 肥 (3t/10a) 及 び 重 焼 リン(100kg/10a) を 施 用 し 土 と 混 和 する 植 え 付 けは 根 系 を 自 然 状 態 に 維 持 しながら 覆 土 する 粘 質 土 壌 の 場 合 根 がかくれる 程 度 の 深 さでよいが 砂 質 土 や 礫 を 多 く 含 む 土 壌 の 場 合 乾 燥 防 止 のために 若 干 深 くする しかし 深 すぎると 二 段 根 になりやすいので 注 意 する 苗 は 乾 燥 させないように 取 り 扱 う 植 え 付 け 後 は 株 当 たり4~5リットルかん 水 を 行 う 定 植 した 苗 木 は 直 後 に 地 上 15~20cmでせん 枝 す る その 後 なるべく 早 く 敷 草 (ワラ) 等 により 株 元 にマルチを 行 い 乾 燥 や 雑 草 から 保 護 し 苗 の 活 着 を 促 進 する (6) ア 幼 木 園 の 管 理 仕 立 て 方 法 幼 木 期 の 仕 立 ては せん 枝 により 主 幹 の 徒 長 を 抑 え 側 枝 の 生 育 を 促 し 早 期 に 生 産 性 の 高 い 樹 体 形 状 にすることが 目 的 となる 以 下 に 定 植 してから 成 園 までの 標 準 的 な 仕 立 てについて 記 述 したが 苗 の 大 きさ 品 種 によ る 樹 姿 の 特 性 地 力 や 気 象 などの 環 境 条 件 生 育 の 状 況 などによりせん 枝 法 を 変 える 必 要 があ る (ア) 1 年 目 の 仕 立 て( 定 植 時 のせん 枝 ) 定 植 時 のせん 枝 は 蒸 散 を 抑 制 し 根 の 吸 水 能 力 とのバランスをとり 活 着 を 促 進 させる これを 第 1 年 目 の 仕 立 てと 考 え 活 着 後 の 生 育 に 大 きな 影 響 をおよぼすことにもなるので 慎 重 に 行 う 必 要 がある せん 枝 の 位 置 は 2 年 生 苗 を 基 準 にして 地 面 から15~20cmとする ただし 苗 の 大 きさや 株 の 配 置 着 葉 状 態 などによって 多 少 の 加 減 が 必 要 である また 着 葉 数 は 最 小 限 10 枚 位 は 残 さなければならない - 14 -
(イ) 2 年 目 の 仕 立 て 2 年 目 のせん 枝 は 行 わない これは 幼 木 期 の 根 の 生 育 を 促 進 し 根 系 の 拡 大 を 行 うためで ある このことにより 夏 季 の 干 ばつ 害 を 軽 減 できる 一 時 的 に 分 枝 数 が 少 なく 株 張 りが 小 さく なることもあるが 生 育 とともに 回 復 する (ウ) 3 年 目 の 仕 立 て せん 枝 位 置 は 30~35cm( 開 張 型 40~45cm)であるが 分 枝 数 や 枝 の 伸 び 方 によって 高 さを 変 える 生 育 の 良 い 茶 園 では 徒 長 しやすいため せん 枝 の 位 置 が 高 くなりやすい このような 茶 園 で は 一 見 株 張 りが 大 きく 見 えるが 細 枝 が 密 生 し 極 端 な 芽 数 型 となる このような 茶 園 では 成 園 化 後 に 収 量 品 質 への 影 響 だけでなく 摘 採 面 が 不 安 定 なために 摘 採 作 業 にも 支 障 をきたす したがって 基 準 に 近 い 位 置 でやや 低 めに 段 階 的 に 仕 立 てを 行 うべきである せん 枝 後 徒 長 する 傾 向 にある 場 合 は 新 芽 の 摘 採 を 早 く 行 うことで 芽 数 を 増 加 させ 徒 長 を 抑 制 する また 分 枝 数 の 増 加 にともない 株 張 りも 大 きくすることができる (エ) 4 年 目 の 仕 立 て 4 年 目 になると 分 枝 数 もかなり 多 くなり 株 張 りもうね 幅 の60~80%に 達 する したがって 摘 採 面 積 率 も 成 園 並 の 大 きさになるので 4 年 目 の 仕 立 ては 樹 型 形 成 に 配 慮 したせん 枝 方 法 を とる せん 枝 の 高 さは40~45cm( 開 張 型 品 種 50~55cm)で 前 年 のせん 枝 位 置 から5~10cm 高 い 位 置 でせん 枝 する 樹 冠 面 は 弧 状 に 変 え 生 育 良 好 な 場 合 は 二 番 茶 まで 摘 採 できる (オ) 仕 立 ての 時 期 2 年 目 以 降 の 仕 立 ての 時 期 は 通 常 3 月 に 行 う 生 育 順 調 な 場 合 は 秋 整 枝 の 時 期 にせん 枝 し てもよい ただし 寒 害 を 受 ける 所 では 春 に 行 う 方 が 安 全 である (カ) せん 枝 位 置 の 目 安 せん 枝 の 位 置 を 決 定 する 尺 度 として 株 張 / 樹 高 の 値 を 用 いる 品 種 の 樹 姿 によって 異 なる が やぶきたで2 年 目 の 場 合 樹 高 に 対 して 株 張 りが1.5 倍 になる 位 置 でせん 枝 を 行 う 以 降 3 年 目 2.2 倍 4 年 目 2.4 倍 5 年 目 2.5~2.6 倍 を 目 安 とする ( 成 園 は2.5~2. 7 倍 が 理 想 である ) 乗 用 型 摘 採 機 に 合 わせた 仕 立 てをする 場 合 も 基 本 的 には 同 じである 樹 高 が 低 すぎる 場 合 は 可 搬 型 のせん 枝 機 を 用 いるか 乗 用 型 摘 採 機 にアタッチメントを 取 り 付 けて 行 う (キ) 一 年 生 苗 の 仕 立 て 法 植 え 付 け 直 後 に 本 葉 5~6 枚 を 残 して 主 幹 をせん 除 し( 葉 数 が 少 ない 場 合 は 摘 芯 する) そ の 後 は2 年 生 苗 と 同 様 の 仕 立 てを 行 う 雑 草 と 干 ばつ 対 策 に 敷 草 (ワラ) 等 のマルチを 必 ず 行 う - 15 -
表 3 標 準 仕 立 て 法 (2 年 生 苗 を 植 えた 場 合 ) 項 目 せ ん 枝 摘 採 年 時 期 高 さ 形 状 時 期 方 法 1 年 植 付 時 地 上 水 平 - - 15 ~ 20cm 2 年 - - 放 任 - - 3 年 3 月 中 下 旬 30 ~ 35 水 平 一 番 茶 のみ はさみ 摘 4 年 10 月 又 は3 月 40 ~ 45 やや 弧 状 一 二 番 茶 5 年 50 ~ 55 弧 状 イ 幼 木 園 の 施 肥 幼 木 園 は 根 の 分 布 が 浅 く 根 量 も 少 ないので 施 肥 による 濃 度 障 害 を 受 けやすく 施 肥 利 用 効 率 も 低 い そのため 施 肥 方 法 については 十 分 注 意 が 必 要 である したがって 施 肥 量 は 生 育 状 況 の 良 否 により 決 定 することが 重 要 である 成 園 の 施 肥 量 を 基 準 に 樹 齢 別 施 肥 量 を 表 に 示 した 植 え 付 け 当 年 は 活 着 後 から8 月 にかけて 窒 素 リン 酸 カリ 肥 料 を 少 量 づつ2~3 回 株 元 か らやや 離 して(20cm 程 度 ) 分 施 する 定 植 2 年 目 3 年 目 の 施 肥 は 株 元 を 中 心 に 幅 広 に 均 一 に 施 用 する 4 年 目 以 降 になると 根 は 畦 間 全 体 に 分 布 するので 全 面 に 施 肥 して 土 とよく 混 和 する 5 年 目 以 降 は 成 園 と 同 じ 方 法 で 施 肥 管 理 を 行 う 施 肥 時 期 は 春 から 秋 にかけ 数 回 に 分 けて 施 肥 すれば 良 い ただし 最 終 施 肥 時 期 が 遅 れないようにする 特 に 裂 傷 型 凍 害 などの 寒 害 を 受 けやすい 条 件 の 園 地 や 裂 傷 型 凍 害 に 弱 い 品 種 (おくみどりなど)は 最 終 施 肥 時 期 を7 月 下 ~8 月 上 旬 とする 方 が 安 全 である 表 4 幼 木 園 の 樹 齢 別 施 肥 基 準 (kg/10a) 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 年 ( 成 園 ) N 11 21 35 56 63 70 P2O5 4 7 12 19 22 24 K2O 5 10 16 26 29 32 対 成 園 比 15% 30% 50% 80% 90% 100% - 16 -
ウ 土 壌 管 理 (ア) 中 耕 中 耕 は 表 土 を 耕 起 し 土 壌 の 膨 軟 性 を 高 める そうすることによって 根 の 呼 吸 作 用 が 容 易 と なり 根 の 生 育 が 旺 盛 となる また 除 草 効 果 も 大 きい 年 5~6 回 干 ばつ 期 をさけて 施 肥 と 同 時 に 行 う なお ロータリー 式 管 理 機 は 砕 土 によいが 土 が 極 端 に 細 かくなり 不 透 水 層 が 形 成 されやす くなるので 時 々 深 耕 する 必 要 がある クランク 型 中 耕 機 の 利 用 が 望 ましい (イ) 深 耕 幼 木 園 の 土 壌 は 造 成 時 の 耕 起 により 物 理 性 を 極 めて 良 好 な 状 態 にしておくことが 大 切 であ る 多 少 経 費 がかかっても できるだけ 深 く 丁 寧 に 行 う 必 要 がある 植 栽 前 に 全 面 深 耕 ( 下 層 1.0~1.2m)を 行 っていない 園 地 では 植 栽 後 2~3 年 の 間 に うね 間 をバックホー 等 で70~ 90cm 位 深 耕 を 行 なって 土 壌 の 物 理 性 を 改 良 する 深 耕 の 時 期 や 方 法 は 成 園 と 同 様 である 成 園 の 場 合 より 断 根 の 割 合 は 少 ないので 多 少 時 期 が 早 くてもさしつかえなく 梅 雨 時 期 に 行 ってもよい (ウ) 敷 草 幼 木 園 は 根 の 分 布 が 浅 く うね 間 が 広 いので 寒 風 や 乾 燥 の 影 響 を 受 けやすく 生 育 障 害 の 原 因 にもなる 土 壌 水 分 の 蒸 発 防 止 や 気 温 変 化 に 対 する 地 温 調 節 のために 株 元 に 敷 草 を 十 分 敷 きこみ 根 を 保 護 する また 傾 斜 地 の 園 地 は 植 付 け 当 初 に 土 壌 の 流 亡 が 起 こりやすいので 土 壌 保 全 の 面 からも 敷 草 などでうね 間 を 全 面 被 覆 することが 重 要 である 使 用 量 は800~1,200kg/10aであるが うね 間 の 広 さや 敷 草 の 材 料 によって 異 なる - 17 -