2.3 繊 維 から 分 子 へ (1) 工 業 社 会 と 1950 年 代 前 半 に 我 が 国 は 第 二 次 世 界 大 戦 で 受 けた 重 大 なダメージから 徐 々に 立 ち 直 り 経 済 は 本 格 的 な 拡 大 期 に 入 った この 期 間 に 高 度 成 長 の 波 に 乗 って 繊 維 工 業 や 工 業 などの 重 工 業 が 大 きく 発 展 したが そのような 最 中 の 1953 年 ( 昭 和 28 年 )に 本 に 5 つの 講 座 から 成 る 繊 維 が 設 置 された その 後 重 工 業 は 拡 大 し 続 けたが こうした 社 会 的 ニーズを 満 たすこと を 目 的 として 繊 維 の 改 組 を 経 て 新 設 の 1 目 を 加 えた 6 目 の 工 業 が 1960 年 ( 昭 和 35 年 )に 発 足 した この は 30 年 近 く 引 き 継 がれてきたが その 間 1966 年 ( 昭 和 41 年 ) ならびに 1979 年 ( 昭 和 54 年 )に 工 と 資 源 が 新 設 され 1982 年 ( 昭 和 57 年 )には 製 糸 が 高 分 子 工 へ 更 に 繊 維 高 分 子 工 が 材 料 システム 工 へと 分 割 された 1989 年 ( 平 成 元 年 )には 博 士 課 程 の 設 置 に 伴 っ て その 専 攻 に 関 連 させた 工 部 の 改 組 が 行 われ 当 時 の 12 は 3 大 にまとめられ 系 は 工 業 と 高 分 子 工 材 料 システム 工 工 資 源 の 5 を 統 合 し 物 質 生 物 工 が 新 たに 動 き 出 した 時 ま さに 戦 後 の 重 厚 長 大 がよしとされた 時 代 から 軽 薄 短 小 への 移 行 期 であり 広 い 視 野 を 持 って 先 導 的 研 究 を 行 える 研 究 者 の 養 成 が 重 要 となってい た 頃 である しかしながら この は 教 育 や 運 営 という 観 点 から 見 ても 大 きすぎたため 1995 年 ( 平 成 7 年 )には 物 質 生 物 工 は 生 命 工 と に 分 かれることとなった 更 に 2000 年 ( 平 成 12 年 )には 系 の 専 門 分 野 の 違 い から は 分 子 と 有 機 材 料 システム 工 の 3 に 改 組 されて 現 在 に 至 っている 本 分 子 は 有 機 無 機 物 理 に 属 する 分 子 変 換 分 子 設 計 触 媒 生 数 70 60 50 40 30 20 10 0 繊 維 設 置 工 業 に 改 組 卒 業 生 数 入 生 定 員 物 質 生 物 工 分 子 コ ス 物 質 コ ス 分 子 に 改 組 編 入 生 定 員 部 局 1953 1960 1970 1980 1989 1995 2000 2004 年 新 入 生 編 入 生 の 生 定 員 と 卒 業 生 数 の 変 遷 光 電 子 材 料 無 機 合 成 セラミッ クス 材 料 の 計 6 教 育 研 究 分 野 からなっている 生 数 は 1 年 46 名 であり 3 年 次 には 高 等 専 門 校 などからの 特 別 編 入 生 5 名 が 加 わるため 総 勢 51 名 となる (2) 講 座 と 職 員 数 工 業 は 6 講 座 からなっており 教 授 6 名 助 教 授 7 名 助 手 6 名 という 体 制 であった その 後 1989 年 の 部 改 組 で 工 業 と 高 分 子 工 材 料 システム 工 工 資 源 の 5 の 集 合 体 として 物 質 生 物 工 を 作 り 教 授 25 名 助 教 授 26 名 助 手 23 名 とい う 大 所 帯 になった これに 続 く 1995 年 ( 平 成 7 年 ) の 改 組 ではここから 生 命 工 が 独 立 して が 組 織 されたため 教 授 17 名 助 教 授 16 名 助 手 15 名 に 縮 小 されることとなった その 後 2000 年 ( 平 成 12 年 )に 有 機 材 料 や システム 工 と 分 離 して 分 子 が 立 ち 上 がり 最 終 的 に 教 授 7 名 助 教 授 5 名 助 手 5 名 技 官 4 名 事 務 官 1 名 という 構 成 になっ ている (3)カリキュラムの 変 遷 本 は 1953 年 ( 昭 和 28 年 )に 発 足 した 繊 維 から 工 業 物 質 生 物 工 28
分 子 系 教 育 のカリキュラムの 変 遷 西 暦 1953 年 1960 年 1989 年 ( 部 改 組 ) 名 称 繊 維 工 業 物 質 生 物 工 分 子 コース 教 育 研 究 分 野 高 分 子 有 機 工 業 有 機 反 ( 小 講 座 名 称 ) 人 造 繊 維 蚕 糸 色 染 工 業 無 機 工 業 有 機 合 成 高 分 子 色 染 工 無 機 反 有 機 合 成 錯 体 無 機 合 成 電 子 触 媒 カリキュラム ( 基 礎 目 及 び 代 表 目 ) 高 分 子 有 機 合 成 人 造 繊 維 繊 維 素 蚕 糸 染 料 色 染 仕 上 論 有 機 製 造 工 業 無 機 製 造 工 業 有 機 物 理 高 分 子 実 験 人 造 繊 維 実 験 蚕 糸 実 験 仕 上 論 実 験 有 機 無 機 物 理 分 析 有 機 工 業 無 機 工 業 合 成 高 分 子 染 料 染 色 理 論 仕 上 論 品 質 管 理 触 媒 コロイド 有 機 実 験 物 理 実 験 工 演 習 有 機 無 機 物 理 生 物 量 子 分 子 生 物 シミュレーション 工 熱 力 材 料 生 物 物 理 タンパク 質 生 体 反 電 子 高 分 子 物 性 物 質 生 物 工 実 験 物 質 生 物 工 演 習 就 職 工 業 自 動 車 関 連 工 業 大 等 教 育 職 工 業 医 薬 品 関 係 電 機 関 連 29
1995 年 ( 改 組 ) 2000 年 ( 改 組 ) 名 称 教 育 研 究 分 野 ( 小 講 座 名 称 ) カリキュラム ( 基 礎 目 及 び 代 表 目 ) 就 職 物 質 コース 物 質 無 機 反 有 機 合 成 無 機 合 成 電 子 触 媒 有 機 無 機 物 理 高 分 子 コンピューター 量 子 合 成 デザイン X 線 結 晶 有 機 反 電 子 固 体 セラミック 有 機 合 成 錯 体 実 験 演 習 工 業 電 機 関 連 分 子 分 子 変 換 光 電 子 材 料 分 子 設 計 無 機 固 体 電 子 エネルギー 分 子 触 媒 物 質 生 物 計 測 有 機 無 機 物 理 生 物 コンピューター 基 礎 量 子 力 概 論 工 基 礎 環 境 物 質 概 論 力 電 磁 気 線 形 代 数 微 分 積 分 微 分 方 程 式 関 数 論 基 礎 実 験 分 子 実 験 分 子 基 礎 演 習 工 業 運 輸 業 サービス 業 30
という 変 遷 を 経 て 現 在 の 分 子 に 辿 り 着 いている この 中 で どの でも 必 修 目 とされてきたものに 実 験 がある 多 くの 工 業 プロ セスが 自 動 されている 現 在 でも 反 の 成 否 には 経 験 と 知 識 が 必 要 不 可 欠 であることを 反 映 した 結 果 であることは 言 うまでもない 内 容 については 各 ならびに 時 代 の 要 求 に あわせたものとなっており 繊 維 では 蚕 糸 実 験 や 仕 上 実 験 などが 行 われていたが 工 業 では 分 析 実 験 や 有 機 実 験 工 業 実 験 などがこれに 加 わった これ 以 降 は それ までの 講 座 ごとに 実 験 を 受 け 持 つことを 踏 襲 せ ずに 物 質 生 物 工 では 物 質 生 物 工 基 礎 実 験 ならびに 物 質 生 物 工 実 験 をそれぞれ I と II に 分 け 計 4 期 間 を 実 験 に 割 り 振 った このシステ ムは 次 の にも 受 け 継 がれて 実 験 I から IV となり 現 在 では さらに 半 期 分 の 基 礎 実 験 が 分 子 実 験 I から IV に 加 わ り 1 年 後 期 から 3 年 後 期 まで 切 れ 目 なく 実 験 の 授 業 がある こうした 実 験 を 行 うには 基 礎 的 な 知 識 が 重 要 となるが 有 機 無 機 物 理 分 析 がその 中 心 を 形 成 する 繊 維 の 時 代 に は これらの 授 業 単 位 数 はたかだか 各 4 単 位 で 無 機 に 至 っては 開 講 もされていなかったが 現 在 の 分 子 では 基 礎 専 門 教 養 目 として 有 機 が 6 単 位 無 機 が 4 単 位 物 理 が 6 単 位 分 析 が 2 単 位 課 せられてい る 時 代 の 流 れ という 観 点 から 見 ると 繊 維 時 代 には 工 業 関 連 授 業 はわずか 6 単 位 で あったが 工 業 になってからは 重 工 業 の 発 展 を 反 映 して 工 関 連 授 業 を 含 めて 20 単 位 以 上 に 急 増 した しかしその 後 は 関 連 トピ ックスが 有 機 や 無 機 高 分 子 と 重 複 するよう になったために 急 速 に 減 少 し 現 在 では 先 端 有 機 工 業 に 名 前 が 残 るのみとなっている また 物 質 生 物 工 になってから セラミックスや 生 体 関 連 の 授 業 が 始 まり 現 在 ではエコロジーに 対 する 興 味 や 重 要 性 を 反 映 して エネルギー や 環 境 物 質 概 論 という 講 義 も 行 われている (4) 教 育 方 法 改 善 の 試 み これまでの 繊 維 から 工 業 物 質 生 物 工 分 子 の 変 遷 において 1 年 の 生 数 は 40 名 60 名 220 名 130 名 46 名 ( 当 初 は 49 名 )というように 大 きく 変 してきたが 実 際 に 本 が 含 まれる 大 講 座 もしくはコースで 考 えると 50 名 弱 のとこ ろで 推 移 している 物 質 生 物 工 の 時 代 には 共 通 専 門 目 を 3 コースに 分 けて 授 業 を 行 ったり もしていたが 現 在 では 3 年 次 の 特 別 編 入 生 が 加 入 した 後 でも 1 年 あたり 50 名 程 度 であるた め 1 クラスのみでの 授 業 となっている ただし 実 験 室 の 設 備 や 人 数 の 受 容 能 力 の 問 題 から 実 験 の 際 には 生 たちを 3 から 4 グループにわけ ローテーションをさせるような 場 合 もある 既 に 述 べたように 本 は 実 験 に 力 を 入 れて いるが この 最 も 重 要 かつ 貴 重 な 経 験 を 積 む 機 会 に 大 では 2 名 で 1 つの 実 験 を 行 うとこ ろが 少 なくない 我 々の 場 合 には 大 院 生 のテ ィーチング アシスタントに 協 力 を 仰 ぎつつ 毎 回 生 1 人 あたり 1 つずつ 実 験 ができるような 環 境 を 整 えている また 重 要 性 の 高 さを 指 摘 するまでもない 英 語 に 関 しては 研 究 室 に 所 属 する 直 前 の 3 年 生 後 期 に 5 から 6 人 程 度 の 小 グループで 毎 週 異 なる 教 官 の 指 導 の 下 に 様 々な 分 野 の 論 文 を 読 む 授 業 があり( 論 文 文 献 購 読 ) 教 官 の 解 説 で 世 界 の 第 一 線 級 の 論 文 を 読 んだり 通 常 の 英 語 では 教 え ないような 専 門 語 に 慣 れさせることを 目 的 と している これと 類 似 した 授 業 に 基 礎 ゼミがある こちらは 1 年 生 前 期 に 行 われているが 各 教 官 の 提 案 したテーマをもとに 希 望 者 を 割 り 振 り 1 つ のテーマを 数 人 で 手 分 けしながら 調 査 していき 最 後 にプレゼンテーションを 行 う 形 式 で 進 めら れている (5) 生 の 社 会 への 寄 与 この10 年 間 のデータを 見 ると 本 の 生 31
の 大 院 進 率 は 60% 程 度 であり 30%が 就 職 と なっているが 次 に 示 したグラフを 見 ても 明 らか なように 大 院 に 進 する 割 合 は 近 年 かなり 高 くなっており 2004 年 には 卒 業 生 の 4 人 中 3 人 が 大 院 に 進 している これは という 領 域 が 経 験 を 多 分 に 必 要 とするものであり そのため 企 業 側 も 大 院 修 士 課 程 修 了 の 生 を 求 めてい るということに 呼 した 現 象 であると 思 われる また 卒 業 して 企 業 に 入 る 30% 程 度 の 生 は やはり 系 の 企 業 を 選 択 するケースが 多 く 製 薬 系 のアストラゼネカや 中 外 製 薬 から 始 まり 一 般 家 庭 のコモディティケミカルズのジョンソ ン アンド ジョンソン 繊 維 の 日 清 紡 やカネボ ウ 食 品 関 連 の 森 永 乳 業 やハウス 食 品 一 般 の 旭 成 や 日 本 油 脂 など 本 の 卒 業 生 が 就 職 している 有 名 企 業 を 挙 げると 枚 挙 に 暇 がない そ の 一 方 で 沖 電 気 や 日 本 IBM 松 下 電 器 産 業 デ ンソーといった 電 子 機 器 系 や NTT のような 通 信 系 精 密 機 器 のテルモなど やや とは 異 なる 方 面 の 就 職 も 見 受 けられる その には 10% 程 度 の 生 が 教 員 や 公 務 員 といった 道 へ 進 んでい る 工 業 3% ほか3% 進 ( 修 士 ) 86% 運 輸 業 3% サービス 業 5% 分 子 工 の 卒 業 生 の 進 路 (2004 年 ) (6) 教 室 運 営 教 室 の 運 営 には 本 に 所 属 している 教 授 な らびに 助 教 授 があたり これを 助 手 や 技 官 事 務 官 がサポートする 形 で 行 われている 本 には 次 項 で 述 べるように 研 究 室 に 所 属 している 全 32 生 が 構 成 メンバーになっている 烈 風 会 という 組 織 があり 全 体 で 動 くような 行 事 の 際 には この 会 が 非 常 に 大 きな 力 となっている 以 下 に 本 の 年 間 スケジュールを 示 すことにする 5 月 新 入 生 歓 迎 オリエンテーション( 合 宿 ) 10 月 卒 業 論 文 中 間 発 表 会 (ポスターセッション) 11 月 研 究 室 説 明 会 ( 烈 風 会 主 催 ) 12 月 次 年 度 卒 研 生 配 属 案 作 成 2 月 卒 論 発 表 会 3 月 謝 恩 会 ( 7) 生 の 活 動 前 項 でも 述 べた 通 り 本 には 研 究 室 所 属 メ ンバーで 構 成 されている 烈 風 会 という 組 織 が あり 2002 年 から 活 動 を 始 めている 毎 年 5 月 に 1 年 生 の 合 宿 オリエンテーションを 開 催 するが この 時 には 研 究 室 に 所 属 している 4 年 生 以 上 の 生 たちもほとんどが 出 席 するため 教 官 を 合 わ せると 200 名 を 越 える 参 加 者 になる このイベン トは 1 年 生 に 本 の 雰 囲 気 をじかに 味 わって もらいながら 各 研 究 室 でどのような 研 究 を 行 っ ているかを 知 ってもらう 機 会 であるが この 一 泊 旅 行 を 境 にして 1 年 生 相 互 の 関 係 が 密 になって いくのがよくわかる そのため 参 加 費 として 1 万 7 千 円 程 度 払 うのであるが( 宿 泊 費 ならびに 交 通 費 ) 1 年 生 にも 毎 年 好 評 である また 3 年 生 の 12 月 上 旬 になると どの 研 究 室 に 所 属 するかを 決 定 するのであるが 彼 らの 判 断 材 料 になることを 期 待 して 3 年 生 と 研 究 室 所 属 生 ならびに 教 官 で 11 月 中 旬 頃 に 研 究 室 説 明 会 を 開 いている ここでは 各 研 究 室 の 代 表 者 が それぞれ 研 究 内 容 や 研 究 室 の 雰 囲 気 などにつ いて 述 べ それに 引 き 続 く 懇 親 会 の 際 に 3 年 生 たちは 自 分 の 希 望 している 先 生 と 自 由 に 様 々な 話 ができるようなシステムになっている さらに 1 月 中 旬 には 研 究 室 総 出 で 餅 つきをし
ており これも 内 の 親 睦 に 大 いに 役 立 ってい る 以 上 の 各 行 事 は 生 委 員 の 教 官 が 交 通 整 理 程 度 のことをするだけで 企 画 ならびに 運 営 はすべて 烈 風 会 が 担 当 している - 33 -