図2 東京23区における店舗 事業所の入替率 2003 2008年 500mメッシュ集計 ることにより 店舗 事業所ごとの時系列変化の 様子を明らかにした例である さらにこの結果を 図3 Hotpepper APIで収集した店舗情報を住宅地図 とリンクして表示した例 東京都中央区銀座付近の例 2011年 集計することで 都市の店舗 事業所の変化の活 発さを把握することもできる 図2 なおデジ タの鮮度や収集できる情報量の豊富さ 例 座席 タル電話帳は最短で2カ月に1回更新されている 数 駐車場有無 喫煙席有無等 に強みがある し ため このようなデータを高頻度に更新すること かも常に更新され続けているためデータの鮮度も もできる 任意の地域の店舗 事業所の移り変わ 高い これを前述したデジタル電話帳と組み合わ りの様子を 業種別に個店単位で しかも高頻度 せ 店舗情報の更新 補完を行うことも可能であ に更新しながら把握することが技術的には既に可 る 能になっている サーチエンジンから得られるヒット件数を Web APIサービスを用いた店舗 事業所の 用いたホットエリアの検出 情報収集 サーチエンジンのAPIを用いることで 検索キー Web APIサービスとはウェブサービスを利用 ワードのヒット件数を収集することができる するためのAPIのことである 近年では主なサー Webでのヒット件数が多い店舗や地域は 現実空 チエンジン 例 Google Yahoo Japan! 等 や地 間でも注目度が高い多くの人々が集まる評判の高い 図検索サービス 例 Googleマップ Bing 地図等 地域 ホットエリア であると期待できる 図4 企業の各種ウェブサイトがこのサービスを導入し はこの考え方に基づき 世田谷区においてホット ており これらを用いることでサーチエンジンに エリアを可視化した例である Akiyama et al.2 よる検索結果 任意の地域の地図情報 商品情報 デジタル電話帳から得られた店舗名と住所情報を や店舗情報などの収集が可能である 図3はWeb サーチエンジンのAPIで検索することで店舗ごと APIの一つであるHotpepper APIを用いて収集し のヒット件数を収集し そのヒット件数をメッシュ た店舗情報を住宅地図とリンクした例である 電 ごとに集計した結果である メッシュの高さが高 話帳や住宅地図を用いて収集できる店舗情報と比 い地域はヒット件数の多い地域である またメッ 較すると その収集可能件数は少ないものの デー シュの色によって1店舗あたりのヒット件数を把 16
図6 図4 サーチエンジンAPIから得られる店舗ごとのヒ ット件数を用いたホットエリアの検出 東京都世田谷区全域の例 2009年 営業中店舗を時間別にプロットした例 東京都23区 2012年 また図6では収集した営業時間に応じ 本ほか4 握することができる 図4では三軒茶屋が店舗数 て時間ごとに営業している店舗の様子を可視化し も多く 店舗あたりのヒット件数も多いホットエ た例である 東京23区の約50万件にも及ぶ店舗 リアとなっていることが分かる 事業所に営業時間を付加することで ダイナミッ クに変化する東京の1日をスケールシームレスに サーチエンジンから得られる検索結果の解 センシングすることが可能になる 析による情報収集 新しいMGDの開発1 商業集積統計 検索エンジンによってヒットしたウェブサイト の情報を解析し有意義な情報を収集することもで 既存のMGDを活用して 都市センシングに役 きる 図5は先の例と同様に電話帳の店舗名称や 立つ新しいMGDを開発することも 興味深い研 住所をサーチエンジンのAPIで検索することで得 究テーマである 商業集積統計 もそんな新し られたウェブサイトのhtmlを解析することで 店舗 いMGDの一つである ごとの営業時間を収集した例である 秋山ほか3 岡 商業集積統計 とは日本全国の商店街 商業 地域の分布を観察できるデータセット ポリゴン データ である 商店街 商業地域の分布のみな らず その広がり 形状 までを全国規模で観察 できる我が国で初めてのデータである また商業 地域ごとの店舗数 業種別店舗数 チェーン店率 等の情報も把握することができる 商業集積統計はデジタル電話帳より得られた実 際の店舗 事業所の分布データを用いて作成され 図5 サーチエンジンAPIから得られるウェブページ のhtmlを解析することで得られた店舗ごとの営 業時間 福岡県福岡市博多区中洲の例 2012年 る まず商店街や商業地域を構成するデータを独 自の業種構成を用いて抽出しポイントデータ化す る 続いて各ポイントから独自の空間処理を行い 17
図8 図7 日本全国の商業集積統計 2009年 青森市における商業集積地域の分布の変化 2007年 2011年 新しいMGDの開発2 マイクロ人口統計 商業地域を構成する領域を描くポリゴンを発生さ せる この手法では一つ一つの商業地域が分布す 我が国では人口の分布とその動態把握のために る地域の平均的な店舗間距離を自動的に計算する 国勢調査が広く利用されている しかし現在公開 手法を採用し いわば地域ごとの 癖 を認識す されている国勢調査は 自治体単位や地域メッシュ ることで 私たちの実感に近い商業地域 商店街 単位に集計されており 詳細な人口分布状況の把 単位ポリゴンデータを作ることが実現した 握は困難である またメッシュ等に集計されるこ Akiyama et al. 5 6 同手法を日本全国約3000万 とで 実際には空間的に人口が偏在している地域 件のデジタル電話帳に適用することで日本全国の においても その分布が均質化して表現されると 商業集積統計の整備も実現している 図7 いう課題もある 近年 防災計画のための詳細な 商業集積統計を使えば商業地域の現状と変化の 地域分析や 社会変動に対する最適なサービス提 様子を様々な視点からセンシングすることができ 供等のシーンにおいて 高精細で信頼性の高い人 る 例えば図8は青森市において2007年と2011年 口の分布情報が求められている そのような中で の商業集積統計を重ねあわせた結果である 青森 既存の統計情報の上述した制約がもたらす影響は 市郊外に2011年までに衰退 消滅した商業集積地 大きい 域が点在している一方で 新たに形成された商業 そこで我々は建物一棟一棟の位置と形状 面積 地域も見られることが分かる また青森駅前でも の情報を持つ住宅地図に対し 国勢調査の複数の 商店街が歯抜けになりつつあることが分かる 統計表から得られる世帯 居住者に関する情報 同データは既にいくつかの研究で利用が開始さ を その他の各種統計情報との組み合わせにより れており 東京大学空間情報科学研究センターの 建物一棟一棟に確率的に配分し 世帯 居住者の 共同研究利用システムでの利用環境も整備されて 推定分布データである マイクロ人口統計 を開 いる またマーケティングコンテンツとして共同 発した Akiyama et al.8 同データはいわば国 研究企業から商品化も実現している7 勢調査を 擬似的に非集計化 したデータであり 任意の集計単位で集計できる人口統計である す 18
図9 マイクロ人口統計による小地域での人口と高齢化率の把握 2005年国勢調査ベース なわち非集計の状態では真値とは必ずしも一致し 用である 既にこれまでにGPSデータを用いて ないが 街区やメッシュ等の単位で集計すること 広域を移動する人々の行動の把握が試みられてい で真値を再現できるデータである 図9ではマイ る さらに近年ではアプリなどのサービスを通し クロ人口統計を街区単位 概ね番地単位 で集計 て 利用者の許諾を得て蓄積されたGPSデータを した人口と 250mメッシュで集計した高齢化率 用いて 広域かつ継続的に大量の人々の人流状況を を示している 同データも既にいくつかの研究で 把握することも可能になりつつある 関本ほか10 の利用が開始されており 我々も同データを用い 図10はある1日のGPSデータ 11 の観測点の分布 て日本全国を対象に大規模地震発生時の人的被害 を可視化したものである この図に表示されてい 9 予測を行っている 秋山ほか るだけで十数万点にも及ぶ観測点が取得できる これが日本全国では1日約2400万点 1年間では 携帯電話のGPSログデータを用いたダイ ナミックな人流状況の把握 約90億点という膨大な規模のデータとなる しか もこれが日々蓄積され続けている これまで都市で流動 滞留する人々の数や あ る特定の商業施設や商店街への来訪者数の把握 は 現地調査やアンケート調査を用いて行われる のが一般的であった これらの手法によって収集 した情報は比較的信頼性が高く 調査者が意図し たレベルの情報を収集できる利点があるものの 調査に多大な労力と時間を要するため 同様の調 査を広域に渡り高頻度に実施することは困難であ る 上記の課題に対して近年注目されているのが携 帯電話のGPSログデータ 以下GPSデータ の活 図10 新宿駅周辺における携帯電話のGPSログデー タによる観測点の分布 2011年4月18日 19
図13 東京23区の主な商業地域における来訪者数の 時系列変化 平日及び土日平均 図11 GPSデータによる東日本大震災発生直前と直 後の首都圏における人流の変化 大規模なGPSデータの登場は 任意の日時 任 山ほか14 図12は1年間分のGPSデータから抽 出した滞留点と前述した商業集積統計を組み合わ せ 独自の拡大係数による計算を実施することで 意の地域の人流の把握を可能にしつつある 例え 東京23区において商業地域の来訪者数を推定した ば図11は2011年3月11日の東日本大震災発生前 結果である また図13は平日と土日の時間帯別平均 後の首都圏での人流の様子である 上山ほか 12 来訪者数を東京23区内の主な商業地域で観察した 13 例である 同様の結果は日別にも作成することが可 ことにより 人々の流れが停滞していることがよ 能であり 今後は天候やイベント 祝日 祭り等 く分かる またGPSデータを解析することで の発生による人流状況の変化と商店街の盛衰につ 人々が滞留している地点の抽出も可能である 秋 いてその関係を分析していきたいと考えている 震災発生後に公共交通機関がストップした おわりに このように近年 MGDを用いた様々な都市セ ンシング技術が実現しつつある 従来は考えられ なかったほど高精細で広域をカバーできるデータ が日々蓄積 更新され続けており こうした MGDの活用は今後の都市の把握 解析に関する 研究領域において一つのトレンドになるものと考 図12 東京23区における商業地域ごとの来訪者数の 推定 2010 2011年平均 20 えている そのような時代の到来に備えてMGD をハンドリングし 解釈するための技術と知識を