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10-01011 個 人 情 報 保 護 の 執 行 制 度 に 関 する 比 較 法 的 考 察 代 表 研 究 者 宮 下 紘 駿 河 台 大 学 法 学 部 准 教 授 1 はじめに 本 研 究 は 個 人 情 報 の 保 護 に 関 する 執 行 制 度 について 諸 外 国 の 例 を 実 証 的 に 比 較 考 察 することによって 日 本 における 個 人 情 報 保 護 法 の 下 での 主 務 大 臣 制 の 在 り 方 及 び 新 たな 改 革 の 方 向 性 について 示 唆 を 提 供 する ことを 目 的 としている 特 に 日 本 の 執 行 制 度 は 諸 外 国 には 例 のない 主 務 大 臣 制 を 採 用 していることから 諸 外 国 の 独 立 した 執 行 機 関 あるいは 独 立 行 政 委 員 会 の 法 的 位 置 づけについて 研 究 する 必 要 性 は 小 さくない も っとも 個 人 情 報 保 護 法 制 における 独 立 行 政 委 員 会 については その 独 立 性 の 観 点 から 憲 法 上 の 論 点 が 提 起 されるほどの 重 要 な 問 題 を 孕 んでいる そのような 中 日 本 の 個 人 情 報 の 保 護 に 関 する 法 律 ( 平 成 15 年 5 月 30 日 法 律 第 57 号 )が 成 立 する 過 程 においても 第 三 者 機 関 による 監 督 の 必 要 性 が 審 議 された 経 緯 がある 1 結 局 同 法 の 附 帯 決 議 として 第 三 者 機 関 の 設 置 について 検 討 が 行 われることとなった このような 中 2007 年 6 月 29 日 国 民 生 活 審 議 会 は 個 人 情 報 保 護 に 関 するとりまとめ( 意 見 ) を 公 表 し 当 面 主 務 大 臣 制 を 維 持 することが 妥 当 であると 考 えられ 第 三 者 機 関 の 設 置 については 国 際 的 な 整 合 性 も 踏 まえ 中 長 期 的 課 題 として 検 討 することが 必 要 である という 指 摘 を 行 った 諸 外 国 においては いわゆる プライバシー コミッショナー という 独 立 した 公 的 機 関 ないし 委 員 会 が 個 人 情 報 保 護 法 制 の 監 督 執 行 を 担 当 してきている 2 一 般 にプライバシー コミッショナーに 求 められる 要 件 は 次 のとおりである 3 1 適 切 な 法 的 根 拠 に 基 づいて 設 置 された 公 的 機 関 であること 2 所 掌 事 務 の 遂 行 のために 適 切 な 水 準 の 自 主 性 独 立 性 が 保 証 されていること 自 主 性 については, 第 三 者 機 関 が, 法 的 実 務 的 に, 第 三 者 の 許 可 を 得 ずに 適 切 な 措 置 を 講 じる 権 限 を 付 与 されていることが 求 められる 独 立 性 については, 第 三 者 機 関 が 政 治 的 行 政 的 干 渉 を 受 けずに 活 動 し, 既 得 権 益 の 影 響 に 耐 えることができるために 重 要 である 3 所 掌 事 務 を 定 めている 法 律 が,データ 保 護 やプライバシーに 関 する 国 際 的 な 枠 組 みに 準 拠 していること 4 適 切 な 範 囲 の 機 能 を 有 しており,その 実 施 が 法 的 な 権 限 により 担 保 されていること データ 保 護 の 第 三 者 機 関 は, 法 令 順 守, 監 督, 調 査, 救 済, 指 導 及 び 公 教 育 等 の 分 野 について, 一 連 の 機 能 を 有 する 第 三 者 機 関 は, 助 言 的 な 機 能 を 有 するだけなく, 法 的 行 政 的 な 結 果 を 伴 う 監 督 権 限 を 有 さなければならない 日 本 には 上 記 のような 機 関 は 存 在 せず この 分 野 では 世 界 的 に 仲 間 はずれ の 状 況 にある 4 その ような 中 2011 年 1 月 31 日 政 府 与 党 社 会 保 障 改 革 検 討 本 部 は 社 会 保 障 税 に 関 わる 番 号 制 度 について の 基 本 方 針 を 示 し 番 号 制 度 に 係 る 個 人 情 報 保 護 法 制 の 円 滑 な 執 行 と 適 切 な 運 用 を 担 保 するために 設 置 さ れる 第 三 者 機 関 の 在 り 方 について 具 体 的 検 討 を 行 う 設 置 に 当 たっては 監 視 機 能 を 実 効 あらしめるべく 1 第 三 者 機 関 を 設 置 するとなると 地 方 組 織 を 含 む 大 規 模 な 行 政 組 織 が 必 要 となり 公 務 員 の 増 員 を 含 むな ど 当 時 の 行 政 改 革 の 流 れに 反 するとともに 事 業 を 所 管 する 大 臣 との 間 に 二 重 行 政 が 生 じるなどの 問 題 が してきされた 平 成 15 年 4 月 8 日 衆 議 院 本 会 議 ( 小 泉 内 閣 総 理 大 臣 答 弁 ) 平 成 15 年 5 月 9 日 参 議 院 本 会 議 ( 小 泉 内 閣 総 理 大 臣 答 弁 ) 参 照 また 近 時 の 個 人 情 報 保 護 の 施 策 については 宮 下 紘 個 人 情 報 保 護 の 施 策 ( 朝 陽 会 2010) 参 照 2 また 内 閣 府 では 諸 外 国 等 における 個 人 情 報 保 護 制 度 の 実 態 調 査 に 関 する 検 討 委 員 会 報 告 書 (2009 年 3 月 )に 公 表 し 諸 外 国 における 第 三 者 機 関 の 動 向 を 注 視 してきているとともに 筆 者 は 内 閣 府 個 人 情 報 保 護 推 進 室 に 勤 務 をしていた 際 参 加 要 件 が 厳 格 化 されて 以 降 日 本 国 政 府 として 初 めてデータ 保 護 プライバシー コミッショナー 国 際 会 議 (カナダ モントリオールにて 開 催 )の 非 公 開 セッションにオ ブザーバーとして 出 席 した 3 資 格 に 関 する 委 員 会 の 基 準 及 び 規 則 並 びに 認 定 の 原 則 (2001 年 9 月 25 日 データ 保 護 コミッショナー 国 際 会 議 採 択 (2002 年 9 月 9 日 データ 保 護 プライバシー コミッショナー 国 際 会 議 改 定 ) 4 堀 部 政 男 第 三 者 機 関 は 個 人 情 報 保 護 法 制 の 必 要 条 件 季 報 情 報 公 開 個 人 情 報 保 護 41 号 (2011)1 頁 62

どのように 独 立 性 を 担 保 しどのような 権 限 を 持 つべきかという 観 点 から 責 任 主 体 設 置 形 態 ( 単 独 府 省 に するか 三 条 委 員 会 にするか 等 ) 人 事 ( 人 員 構 成 ) 調 査 権 限 規 模 等 の 論 点 について 諸 外 国 の 事 例 も 踏 まえながら 十 分 に 検 討 する とされた さらに 同 年 6 月 30 日 には 社 会 保 障 税 番 号 大 綱 において 内 閣 総 理 大 臣 の 下 に 番 号 制 度 における 個 人 情 報 の 保 護 等 を 目 的 とする 委 員 会 ( 以 下 委 員 会 という ) を 置 く ことを 決 定 した その 委 員 会 は 次 の 業 務 を 行 うことが 記 されている ア 行 政 機 関 地 方 公 共 団 体 関 係 機 関 又 は 番 号 を 取 り 扱 う 事 業 者 ( 以 下 監 督 対 象 機 関 等 という ) による 番 号 に 係 る 個 人 情 報 の 取 扱 いの 監 督 イ 番 号 に 係 る 個 人 情 報 の 取 扱 いに 関 する 苦 情 の 処 理 ウ 情 報 連 携 基 盤 及 びその 他 の 機 関 と 接 続 する 部 分 の 監 査 エ 情 報 保 護 評 価 の 実 施 に 関 する 助 言 及 び 報 告 書 の 承 認 オ 番 号 法 に 係 る 適 格 認 証 手 段 の 承 認 カ 所 掌 事 務 に 係 る 国 際 協 力 キ 番 号 に 係 る 個 人 情 報 の 保 護 方 策 並 びに 番 号 法 に 関 する 普 及 啓 発 及 び 相 談 の 受 付 このような 個 人 情 報 保 護 に 関 する 第 三 者 機 関 の 設 置 に 関 する 政 府 による 本 格 的 な 議 論 は 個 人 情 報 保 護 法 が 成 立 した 2003 年 5 月 以 降 初 めてのことであり 独 立 行 政 委 員 会 の 数 が 減 少 する 中 新 たな 独 立 行 政 委 員 会 の 設 置 に 向 けた 議 論 を 呼 び 起 こすことになるであろう 実 際 大 綱 が 示 される 前 に 税 社 会 保 障 の 番 号 制 度 に 関 する 個 人 情 報 保 護 ワーキンググループによる 個 人 情 報 保 護 ワーキンググループ 報 告 書 では 会 計 検 査 院 並 びの 組 織 か 現 行 の 国 の 行 政 組 織 としては 類 例 のない コミッショナー 制 度 を 創 設 すること が 考 えられる しかし このような 機 関 の 設 置 には 憲 法 等 の 改 正 も 必 要 となることから 現 実 的 な 選 択 肢 とは 言 えず 現 実 的 に 可 能 な 範 囲 で 組 織 の 独 立 性 が 最 大 となる 設 置 形 態 としては 公 正 取 引 委 員 会 のような 内 閣 府 の 外 局 のいわゆる 三 条 委 員 会 が 考 えられる という 憲 法 上 の 疑 義 が 提 起 されている そこで 本 研 究 は 諸 外 国 の 中 でも 特 に 強 力 な 権 限 を 有 するフランスの 個 人 情 報 保 護 法 制 を 監 督 している 第 三 者 機 関 である 情 報 処 理 及 び 自 由 に 関 する 全 国 委 員 会 (Commission nationale de l'informatique et des libertés) 及 び 最 も 歴 史 ある 個 人 情 報 保 護 法 制 を 執 行 してきたスウェーデンのデータ 保 護 検 査 院 (Datainspektionens)のそれぞれの 法 的 位 置 づけについて 考 察 することで 日 本 における 個 人 情 報 保 護 法 制 の 第 三 者 機 関 に 関 する 検 討 に 寄 与 すること 目 的 としている 2.フランスの 個 人 情 報 保 護 の 第 三 者 機 関 の 概 要 2-1. 法 律 名 情 報 処 理 情 報 ファイル 及 び 自 由 に 関 する 1978 年 1 月 6 日 の 法 律 第 78-17 号 2004 年 8 月 6 日 の 法 律 第 2004-801 号 ( 以 下 法 という )で 大 幅 な 改 正 が 行 われた 5 2009 年 5 月 12 日 にも 法 改 正 が 行 われた 2-2. 目 的 情 報 処 理 は 市 民 のそれぞれに 奉 仕 するものでなければならない その 促 進 は 国 際 協 力 の 枠 内 で 行 わ れなければならない 情 報 処 理 が 人 間 のアイデンティティ 人 権 私 生 活 又 は 個 人 の 自 由 ないし 公 的 な 自 由 を 侵 害 するものであってはならない ( 法 第 1 条 ) 2-3. 適 用 範 囲 個 人 情 報 を 自 然 人 に 関 するあらゆる 情 報 のうち 識 別 番 号 または 個 人 に 固 有 の 一 もしくは 複 数 の 要 素 を 参 照 することによって 直 接 または 間 接 に 個 人 を 識 別 しまたは 識 別 可 能 なもの と 定 義 している( 法 第 2 条 ) なお IP アドレスを 個 人 データに 該 当 しないと 判 断 した 2007 年 4 月 27 日 6 と 同 年 5 月 15 日 7 の 控 訴 院 の 判 決 の 後 2009 年 1 月 13 日 フランス 破 棄 院 (Cour de cassation)がインターネット 接 続 業 者 を 特 定 する ための IP アドレス( 本 件 では 固 定 アドレスか 可 変 的 なアドレスであるかの 区 別 の 検 討 をしていない )につ 5 同 法 の 紹 介 については 諸 外 国 等 における 個 人 情 報 保 護 制 度 の 実 態 調 査 に 関 する 検 討 委 員 会 報 告 書 ( 内 閣 府 平 成 21 年 3 月 )(フランス: 下 井 康 史 )をもとにしている 6 Cour d'appel de Paris, 13ème chambre, section B Arrêt du 27 avril 2007. 7 Cour d'appel de Paris 13ème chambre, section A Arrêt du 15 mai 2007. 63

いては CNIL への 事 前 届 け 出 をしない 旨 の 判 決 8 を 下 した しかし フランス 上 院 においては EU データ 保 護 指 令 に 照 らし IP アドレスが 個 人 情 報 に 該 当 することを 断 言 する 旨 の 提 言 として 出 され 9 結 局 2009 年 5 月 15 日 の 知 的 財 産 法 の 改 正 10 により IP アドレスを 含 むインターネット 通 信 へのアクセス 権 限 が 規 定 され IP アドレスを 用 いた 事 業 については CNIL への 届 け 出 が 必 要 となった 2-4. 内 容 主 な 権 利 義 務 に 関 する 内 容 としては 次 のような 規 定 がある 公 正 かつ 適 法 な 収 集 処 理 収 集 の 目 的 の 特 定 正 当 性 情 報 の 正 確 性 目 的 に 必 要 な 期 間 のみの 情 報 の 収 集 処 理 等 の 基 本 原 則 が 定 められている( 法 6 条 ) 個 人 情 報 の 処 理 には 本 人 の 同 意 を 得 ることが 原 則 とされている( 法 7 条 ) すべての 自 然 人 は 情 報 処 理 を 拒 否 する 権 利 のほか 処 理 責 任 者 への 質 問 権 自 己 情 報 の 複 写 請 求 権 自 己 情 報 の 訂 正 利 用 停 止 消 去 請 求 権 が 認 められている( 法 39 条 ) 個 人 情 報 処 理 責 任 者 は 安 全 管 理 義 務 を 履 行 しなければならない( 法 34 条 ) 2-5. 監 督 登 録 制 度 法 においては 電 子 処 理 ファイルを 作 成 保 有 する 場 合 に CNIL への 簡 易 届 出 が 必 要 な 場 合 CNIL への 許 可 が 必 要 な 場 合 CNIL によって 発 議 され 表 明 された 意 見 に 対 する 所 管 の 大 臣 のアレテによる 許 可 が 必 要 な 場 合 などの 指 定 がなされている 事 前 手 続 の 概 要 については 下 記 のとおりになっている 11 あらゆる 事 前 手 続 を 必 要 としない 場 合 ( 法 22 条 2 項 同 3 項 ) CNIL への 簡 易 手 続 が 必 要 な 場 合 ( 法 24 条 1 項 ) CNIL による 許 可 が 必 要 な 場 合 ( 法 25 条 ) CNIL によって 発 議 され 表 明 された 意 見 に 対 する 所 管 大 臣 のアレテによる 許 可 が 必 要 な 場 合 ( 法 26 条 1 項 ) CNIL によって 発 議 され 表 明 された 意 見 に 対 するコンセイユデタの 議 を 経 たデクレによる 許 可 が 必 要 な 場 合 ( 法 27 条 1 項 26 条 2 項 ) CNIL によって 発 議 され 表 明 された 意 見 に 対 する アレテによる 許 可 もしくは 公 施 設 法 人 または 公 役 務 を 管 理 する 私 法 人 につきその 審 議 機 関 の 決 定 によって 当 該 法 人 のための 処 理 が 行 われる 場 合 ( 法 27 条 2 項 ) CNIL への 届 出 が 必 要 な 場 合 ( 法 22 条 1 項 ) 非 営 利 目 的 および 宗 教 的 哲 学 的 政 治 的 労 働 組 合 的 な 性 格 を 有 する 結 社 等 によって 処 理 される 場 合 など 私 生 活 または 自 由 への 侵 害 のおそれを 生 じ ない 処 理 が 行 われる 個 人 情 報 の 通 常 の 類 型 遺 伝 情 報 を 対 象 とする 一 定 の 自 動 処 理 や 犯 罪 刑 罰 または 保 安 上 の 措 置 にかかわる 情 報 を 対 象 とする 自 動 処 理 もしくは 非 自 動 処 理 な ど 国 家 の 保 安 国 防 または 公 の 安 全 に 関 する 情 報 の 処 理 など 一 定 のセンシティブ 情 報 や 住 民 登 録 全 国 台 帳 における 個 人 登 録 記 載 者 の 情 報 につき 国 公 法 人 または 公 役 務 を 管 理 する 私 法 人 のため に 行 われる 個 人 情 報 の 処 理 など フランス 本 国 及 び 海 外 領 土 での 国 勢 調 査 に 関 する 処 理 など 上 記 してきた 特 別 な 処 理 の 場 合 を 除 き 個 人 情 報 の 自 動 処 理 8 Cour de cassation Chambre criminelle Arrêt du 13 janvier 2009. 9 Par M. Yves DETRAIGNE et Mme Anne-Marie ESCOFFIER, Rapport D Information n 441 (2008-2009) La vie privée à l'heure des mémoires numériques. Pour une confiance renforcée entre citoyens et société de l'information 98. 10 L.331-37 du Code de la propriété intellectuelle. 11 詳 細 については 井 上 禎 男 フランスにおける 個 人 情 報 保 護 第 三 者 機 関 の 機 能 と 運 用 人 間 文 化 研 究 5 号 (2006)168 頁 参 照 64

2-6.フランスの 第 三 者 機 関 について 本 章 は 特 に 断 りのない 限 り CNIL でのヒアリング 結 果 及 び CNIL の 年 次 報 告 書 (2009 年 )をもとにまと めている (1) 制 度 の 概 要 名 称 情 報 処 理 及 び 自 由 に 関 する 全 国 委 員 会 (Commission nationale de l'informatique et des libertés) ( 以 下 CNIL という ) (2) 設 置 の 経 緯 1970 年 代 初 頭 サファリ(SAFARI)(Système automatisé pour les fichiers administratifs et le répertoire des individus) 12 プロジェクトの 下 国 家 統 計 局 (Institut national de la statistique) が 社 会 保 障 番 号 (Numéro d'inscription au Répertoire( 通 称 NIR))を 個 人 識 別 のための 排 他 的 な 道 具 とし て 用 い 教 育 軍 隊 医 療 税 雇 用 等 に 関 係 する 他 の 行 政 機 関 とのデータ マッチングを 可 能 とさせるこ ととなった このような 行 政 機 関 が 保 有 する 個 人 のファイルの 自 動 処 理 の 進 展 に 伴 い 個 人 の 自 由 が 脅 かされ るという 国 民 の 危 惧 が 高 まり スウェーデンのオンブズマンをモデルにして 1978 年 の 情 報 処 理 情 報 ファ イル 及 び 自 由 に 関 する 法 律 の 制 定 とともに 新 たな 機 関 として CNIL が 設 立 された CNIL はフランスにおいて 初 めての 独 立 行 政 機 関 (Autorité administrative indépendante)である そも そも CNIL のような 独 立 行 政 機 関 が 設 置 された 背 景 には 1945 年 に 創 設 された 番 号 制 度 に 対 する 強 い 反 対 論 が 議 会 であったためである 番 号 制 度 については 私 的 自 由 を 侵 害 するため 独 立 行 政 機 関 の 必 要 性 に 関 する 右 派 と 左 派 との 間 でコンセンサスがあった 近 年 この 20 年 間 で 独 立 行 政 機 関 が 多 く 作 られすぎた( 約 40 の 機 関 がある)ことから 独 立 行 政 機 関 の 再 組 織 化 が 必 要 となり 統 合 化 されてきた なお 番 号 制 度 にも 関 連 して CNIL は 行 政 文 書 へのアクセスに 関 する 独 立 行 政 機 関 (Commission d'accès aux Documents Administratifs)と 協 働 することがしばしばある (3) 法 的 地 位 ( 委 員 会 人 員 予 算 人 事 権 限 他 機 関 地 方 との 関 係 ) 1 独 立 行 政 委 員 会 について そもそも 独 立 行 政 委 員 会 (autorité administrative indépendante)は 本 質 的 に 基 本 的 人 権 と 経 済 活 動 にかかわる 部 門 において 独 立 規 制 の 組 織 を 設 置 するという 要 請 に 応 えたもの であり 独 立 性 を 理 由 と して 行 政 内 部 で 特 別 な 地 位 を 占 めている 13 これらの 独 立 行 政 機 関 は 後 見 的 なものであれ( 一 般 的 に 法 人 格 を 有 していないため) 階 層 的 なものであれ( 独 立 であるため) 古 典 的 な 統 制 を 免 れていることから 政 府 は 行 政 を 司 る 14 と 規 定 する 1958 年 憲 法 20 条 2 項 の 合 憲 性 が 問 題 となる この 点 憲 法 院 は 職 権 で 憲 法 20 条 2 項 の 適 合 性 を 審 理 するのを 自 制 しており 憲 法 院 の 判 例 からは 少 なくとも 明 示 的 に 独 立 行 政 委 員 会 の 違 憲 性 の 判 断 を 導 くことはできないと 理 解 されている 15 また 2004 年 7 月 29 日 の 憲 法 院 の 判 決 (Décision n 2004-499 DC du 29 juillet 2004)において 1789 年 人 権 宣 言 第 2 条 を 根 拠 とした 私 生 活 尊 重 respect de la vie privée を 認 めたうえで センシティブ 情 報 の 処 理 の 許 可 を 出 す CNIL の 権 限 につ いて 憲 法 適 合 性 を 黙 示 的 に 容 認 した 上 で 判 決 を 下 している 16 また フランスにおいて 初 めて 設 置 された 独 立 行 政 機 関 としての CNIL に 対 しては 独 立 性 と 決 定 権 限 の 現 実 的 運 用 に 対 する 懐 疑 的 な 立 場 と その 権 限 行 使 の 正 当 性 に 対 する 問 題 視 する 見 解 があった 17 前 者 につ 12 フランス 人 狩 り とも 呼 ばれ 行 政 による 個 人 情 報 保 護 侵 害 の 危 険 性 が 指 摘 された 清 田 雄 治 フラン スにおける 個 人 情 報 保 護 法 制 と 第 三 者 機 関 立 命 館 法 学 2005 年 2 3 号 (2005)146 頁 13 P.ウェール/D.プイヨー 著 兼 子 仁 滝 沢 正 訳 フランス 行 政 法 ( 三 省 堂 2007)36-37 頁 14 初 宿 正 典 辻 村 みよ 子 新 解 説 世 界 憲 法 集 第 2 版 ( 三 省 堂 2010)243 頁 フランス 第 5 共 和 国 憲 法 辻 村 みよ 子 訳 15 清 田 雄 治 フランスにおける 独 立 行 政 機 関 (les autorité administrative indépendante) の 憲 法 上 の 位 置 立 命 館 法 学 2008 年 5 6 号 (2008)130 頁 16 本 判 決 の 紹 介 については 清 田 雄 治 フランスにおける 個 人 情 報 保 護 の 憲 法 的 保 障 政 策 科 学 13 巻 3 号 (2006)45 頁 参 照 17 Andre Vitalis, France, in GLOBAL PRIVACY PROTECTION 124-5 (JAMES B. RULE & GRAHAM GREENLEAF eds., 2008). 65

いては CNIL には 効 果 的 な 介 入 を 行 うための 手 段 を 欠 いている というものである 政 策 研 究 財 団 Jean-Francois Daguzan によるヒアリングにおいても CNIL の 権 限 の 実 効 性 を 疑 問 視 する 指 摘 がされた 実 際 に CNIL がこれまで 介 入 してきた 領 域 は 介 入 を 特 に 必 要 とする 新 たな 分 野 が 多 く また CNIL の 権 限 行 使 は 市 民 に 受 け 入 れられやすい 調 整 を 行 うなどの 全 般 的 に 消 極 的 であった 他 方 CNIL の 権 限 行 使 の 正 当 性 については フランスの 政 治 的 思 考 において 主 権 と 公 の 意 思 を 称 える 民 主 政 を 採 ってきているため 選 挙 によって 選 出 されていない 委 員 による 金 権 政 治 や 賢 者 による 統 治 といった 批 判 はもっともなものであった 同 じく 独 立 して 権 限 を 行 使 する 裁 判 官 については 憲 法 上 の 正 当 性 が 一 定 程 度 認 められるのに 対 し 独 立 行 政 機 関 については 伝 統 的 にも 憲 法 上 もその 正 当 性 を 裏 付 けるものはない これらの 批 判 があるものの 行 政 立 法 司 法 という 三 権 に 基 づくフランスの 政 治 法 的 伝 統 にもかか わらず 制 度 改 革 をもたらした 専 門 化 された 第 四 権 力 としての 地 位 を 維 持 し 長 年 の 実 績 から 一 定 の 敬 意 を 払 われる 機 関 となった いかなる 独 立 性 も 既 存 の 権 力 体 制 を 犠 牲 にしない 限 りはそのような 機 関 と しての 地 位 に 相 当 しないのであって しだいに 自 分 の 居 場 所 を 見 つけ 他 の 機 関 からも 受 容 されてきた こ のように CNIL は 自 由 の 協 会 (Academy of liberties) として 存 続 してきた 2 委 員 会 について 17 名 の 委 員 で 構 成 される 6 名 の 裁 判 官 4 名 の 国 会 議 員 2 名 の 経 済 社 会 評 議 会 委 員 2 名 の 上 院 下 院 議 長 任 命 の IT 専 門 家 3 名 の 首 相 任 命 の IT または 市 民 的 自 由 の 専 門 家 から 成 る 委 員 長 と 2 名 の 副 委 員 長 は 委 員 会 委 員 の 選 挙 によって 選 出 される 任 期 は 5 年 で 再 選 可 能 であるが 10 年 を 超 えてはならない ただし 議 員 の 場 合 は 議 員 任 期 終 了 まで 委 員 に 対 する 報 酬 は CNIL から 一 切 支 出 されていない 週 1 回 毎 週 木 曜 に 総 会 が 開 催 される 総 会 では 1 回 につき 通 常 は 2 つの 事 例 について 審 議 される 各 省 庁 の 担 当 官 や 民 間 の 事 業 者 が 呼 び 出 され 審 議 が 行 われる 総 会 には 法 律 や 技 術 の 専 門 家 が 呼 ばれ 意 見 を 述 べることがある 議 事 録 がとられているが 審 議 内 容 は 公 にならない 結 論 が 公 にされている たと えば 先 月 木 曜 の 午 後 に Google 社 が 呼 ばれ ストリートビューに 関 するヒアリングが 行 われた 総 会 のほかに 分 科 会 があり そこでは 懲 罰 について 議 論 されたり 各 委 員 の 専 門 性 に 応 じて 審 議 が 行 われることがある 3 人 員 人 事 約 150 名 のスタッフ( 現 在 リクルート 中 であり 夏 までに 150 名 のスタッフになる 2009 年 の 人 員 は 132 名 である) がいる 4 人 の 課 長 のもと 4 つの 課 ( 法 国 際 IT 専 門 課 (43 名 ) ユーザー 検 査 課 (65 名 ) 研 究 イノベー ション 将 来 動 向 課 (8 名 ) 行 政 財 務 IT 課 (29 名 ) 以 上 4 つの 課 のほかに 事 務 局 長 付 き(10 名 ))が ある 2010 年 12 月 に 組 織 再 編 を 行 い 新 たに 研 究 イノベーション 将 来 動 向 課 がつくられた スタッフは 省 庁 からの 出 向 者 はごくまれである スタッフは ソリスターや IT 専 門 家 のほか 経 済 専 門 家 裁 判 官 警 察 官 財 務 人 事 関 係 者 などから 成 っている 短 期 契 約 や 長 期 契 約 などがあり ほとんどの スタッフが 25~35 歳 の 若 い 人 たちから 成 る エンジニアなどは 6 年 間 の 雇 用 が 限 界 であり 退 職 後 は Google 社 などへ 再 就 職 した 者 がいる 法 律 関 係 者 は 退 職 後 裁 判 官 になった 者 もいる このような 再 就 職 については 公 になっていることや CNIL はあくまで 仕 事 を 中 立 的 に 遂 行 しているため 問 題 がないと 考 えている CNIL の 建 物 は 6 階 建 てであり 課 長 は1 部 屋 あり 概 ね2~3 名 につき 1 部 屋 割 り 当 てられている 4 予 算 予 算 は 2010 年 14 700 000 ユーロ( 約 22 億 円 ) 2009 年 13 000 000 ユーロ( 約 19.5 億 円 )とな っており 2004 年 から 5 年 間 でおよそ 2 倍 になった 2004 2005 2006 2007 2008 2009 人 員 80 85 95 105 120 132 予 算 ( 百 万 ユー 6.5 7.2 9.0 9.9 11.4 13.0 ロ) 人 員 費 4.2 4.7 5.3 6.1 7.2 3.3 運 営 費 2.3 2.5 3.7 3.8 4.2 4.7 5 権 限 66

1978 年 法 は 2004 年 法 になり CNIL の 執 行 権 限 が 強 化 された 改 正 前 は 民 間 部 門 における 通 知 と 公 的 部 門 における 事 前 の 意 見 を 表 明 するにとどまっていた しかし 2004 年 法 の 制 定 に 伴 い 官 民 両 部 門 において 通 知 と 事 前 の 意 見 表 明 を 行 うことができることとなった 同 時 に 官 民 両 部 門 においてセンシティブデータの 処 理 や 国 際 データ 移 転 をする 場 合 などの 事 前 の 認 証 を 要 求 し 認 証 は 委 員 会 の 総 会 で 承 認 されなければならない 近 年 バイオメトリックに 関 するデータ 処 理 を 行 う 事 業 者 が 多 く CNIL に 訪 問 し 事 前 に 説 明 を 行 い 許 可 をもらいにくる 現 在 CNIL では 認 証 制 度 (label)を 検 討 しており EU データ 保 護 指 令 の 改 正 の 動 きに 向 けて 国 内 でも 本 格 化 していく 予 定 である プライバシー 影 響 評 価 についてはこれまで 行 ってきていないが 認 証 制 度 と 同 時 に 話 を 進 めていく 予 定 である また 2005 年 以 降 法 律 違 反 があった 場 合 係 争 処 理 部 (Formation contentieuse) より 警 告 と 法 令 遵 守 通 知 の 発 出 を 行 っており これらに 服 従 しなかった 場 合 は 上 限 150 000 ユーロの 罰 則 だが 反 復 違 反 の 場 合 は 上 限 300 000 ユーロの 罰 則 を 課 すことができる このほかに データ 処 理 の 中 止 命 令 を 出 すことができ 緊 急 時 には 3 ヶ 月 間 の 処 理 中 止 とデータ 保 護 を 命 令 することができる このような 措 置 に 対 する 不 服 がある 場 合 は コンセイユデタに 訴 えることができる これまで CNIL がコンセイユデタに 訴 えられたことは 一 度 も ない 6 他 機 関 地 方 との 関 係 CNIL はパリにあり 地 方 部 局 等 は 存 在 しない CADA との 協 働 をしばしば 行 うことがヒアリングの 結 果 分 かった また 地 方 自 治 体 に 対 しても 立 ち 入 り 検 査 等 の 権 限 行 使 を 行 うことがある (4) 運 用 実 態 ( 施 行 状 況 苦 情 処 理 紛 争 解 決 権 限 行 使 裁 判 例 国 際 連 携 国 民 ID 制 度 ) 1 施 行 状 況 主 な 統 計 は 次 のとおりである CNIL へのデータファイル 宣 言 :140 万 回 (1978 年 以 降 ) 認 証 (2009 年 ):544 バイオメトリックに 関 する 認 証 :900 ビデオ 監 視 に 関 する 認 証 :3054 認 証 の 拒 否 :5 センシティブデータ( 危 険 性 の 高 いデータ 処 理 )への 意 見 :35 警 察 記 録 の 提 出 要 求 :2217 法 令 遵 守 通 知 :446(2009 年 は 91 回 ) 警 告 :25(2009 年 は 4 回 ) 2 苦 情 処 理 紛 争 解 決 苦 情 処 理 の 実 態 13 人 のスタッフで 3 つの 系 統 に 分 かれて 苦 情 処 理 に 当 たっている(1 銀 行 クレジット 債 務 整 理 税 金 地 方 市 民 的 自 由 2ビジネス 販 売 テレコム 保 険 エネルギー 郵 便 不 動 産 3 雇 用 健 康 社 会 保 障 教 育 交 通 ) 苦 情 に 対 する 直 接 の 回 答 は 25% 程 度 であり 事 業 者 との 対 話 ( 手 紙 メールを 書 くなど)が 75% 程 度 と なっている 2010 年 には 4800 件 の 苦 情 処 理 を 受 付 ている 苦 情 の 分 野 としては 雇 用 (20%) 銀 行 クレジット(20%) ビジネス 販 売 (20%) 健 康 社 会 保 障 (5%)などとなっている 苦 情 の 内 容 としては 異 議 申 立 の 権 利 (50%) 違 法 なデータ 収 集 (15%) アクセス 権 (10%) 訂 正 権 (10%) 安 全 管 理 措 置 (5%)となっている 2010 年 6 月 からは 苦 情 処 理 をホームページで 受 けつけるサービスを 開 始 した 苦 情 処 理 と 権 利 論 苦 情 処 理 のほとんどが 権 利 に 関 するものであり e-right かかわってくる 忘 れられる 権 利 (the right to be forgotten) は インターネット 上 における 個 人 情 報 の 消 去 を 求 めるものであり 情 報 処 理 ファイル 及 び 自 由 に 関 する 1978 年 1 月 6 日 の 法 律 第 78-17 号 第 48 条 で 保 障 された 権 利 である 忘 れられ る 権 利 について アメリカでは 個 人 の 識 別 情 報 は 変 化 するものであって その 意 味 で 忘 れられるというも のであるが ヨーロッパでは 18 歳 のときに 残 された 個 人 情 報 が 雇 用 などの 場 面 で 40 歳 になっても 左 右 する 67

ことがあり 過 去 の 情 報 を 消 去 することを 意 味 する また CNIL としては E メールアドレスであろうと IP アドレスであろうと すべて 個 人 データに 該 当 す るものとして 対 応 してきている ダイレクト マーケティング 郵 便 法 33 条 4 項 1 号 によれば ダイレクト マーケティングのために 個 人 データを 用 いる 場 合 本 人 の 事 前 の 同 意 が 必 要 とされている また 電 子 メールのみならずショート メッセージ サービスやマルチ メッセージング サービスによるマーケティングについても 規 制 の 対 象 となっている もっとも 人 以 外 の 自 動 的 にダイヤルができる 機 械 による 電 話 に 対 しては いわゆるオプト アウト 方 式 が 採 られている ダイ レクト マーケティングの 規 制 に 違 反 した 場 合 は 5 年 以 下 の 懲 役 または 300 000 ユーロ 以 下 ( 刑 法 226 条 18 項 1 号 ) 罰 金 ないし 不 法 なメールにつき 750 ユーロの 罰 金 ( 郵 便 法 10 条 1 項 )に 処 せられる 対 応 例 苦 情 に 対 して 毎 週 150 通 程 度 の 手 紙 を 書 いてきている 通 常 であれば 15 日 程 度 で 手 紙 を 書 くようにし ているが 複 雑 な 事 案 については2~3か 月 程 度 かかることがある 近 年 多 重 債 務 処 理 を 目 的 として 銀 行 金 融 機 関 が 利 用 している 個 人 に 対 する 信 用 貸 付 事 故 に 関 する 国 内 ファイル/データーベース(FICP:Fichier national des incidents de remboursement des crédits aux particuliers)について 特 に 問 題 が 多 く 苦 情 処 理 が 増 加 している データ 保 護 担 当 官 (Correspondant Informatique et Libertés) 2009 年 末 時 点 で 6000 の 組 織 において データ 保 護 担 当 官 が 置 かれている( 法 22 条 ) そのうちの 約 90% が 民 間 企 業 であり CNIL は 公 的 機 関 にも 担 当 官 を 任 命 するよう 呼 びかけている データ 保 護 担 当 官 の 役 割 は 組 織 のデータ 保 護 法 の 順 守 を 監 督 し CNIL に 担 当 官 を 登 録 しておくことで CNIL が 行 う 研 修 等 に 参 加 するこ とができることとなっている 2009 年 には 23 回 の 研 修 が 行 われ 350 名 のデータ 保 護 担 当 官 が 出 席 している 3 権 限 行 使 ( 立 ち 入 り 検 査 罰 則 ) CNILは 2 日 前 に 通 知 をすれば 直 接 訪 問 をして 他 省 庁 が 保 有 している 文 書 の 開 示 を 求 めることができ 必 要 があれば 文 書 を 押 収 することができる 特 に 金 融 関 係 の 省 庁 や 機 関 におけるコントロールが 多 くなっ ている この 役 割 は 警 察 と 変 わらない Google 社 のストリートビューについては 2010 年 5 月 に 事 前 通 知 を 行 い まずはグーグル カメラを 押 収 し それを 技 術 専 門 家 で 分 析 を 行 った その 後 CNIL に 呼 び 出 し 委 員 会 でストリートビューについての 問 題 点 を 追 及 した その 結 果 Google 社 は Wi-Fi データの 収 集 やストリートビュー サービスなどについ てこれまで 性 的 志 向 や 政 治 的 思 想 について 個 人 情 報 を 収 集 していたことが 判 明 し 罰 金 を 科 すこととなった (2011 年 3 月 21 日 付 け) なお Google の 技 術 的 問 題 については 未 解 決 な 部 分 があり 今 後 とも 調 査 を 行 っ ていく 予 定 である このほかに 注 目 を 集 めた 事 例 として 2006 年 6 月 に CNIL は 銀 行 Credit Lyonnais に 対 して 情 報 システムの 立 ち 入 り 検 査 の 協 力 を 拒 んだことを 理 由 に 45 000 ユーロの 罰 金 を 課 した 主 な 統 計 は 次 のとおりである 検 査 :310(2010 年 )270(2009 年 )(2001 年 は 14 回 ) 検 査 は 増 加 傾 向 にある 罰 金 :34( 合 計 金 額 555.400 ユーロ) 3.スウェーデンの 個 人 情 報 保 護 の 第 三 者 機 関 の 概 要 について 3-1. 個 人 情 報 保 護 法 制 の 概 要 (1) 法 律 名 個 人 データ 法 (Personuppgiftslag(1998:204)) 18 18 スウェーデンの 個 人 データ 法 に 関 する 紹 介 としては 平 松 毅 個 人 情 報 保 護 - 理 論 と 運 用 ( 有 信 堂 2009) 参 照 また 法 制 度 については CHRISTINE KIRCHBERGER, CYBER LAW IN SWEDEN (2011)を 参 考 に した 個 人 データ 法 の 翻 訳 としては 菱 木 昭 八 朗 スウェーデン 個 人 情 報 保 護 法 新 聞 研 究 582 号 (2000) 68

(1998 年 10 月 24 日 施 行 :1973 年 データ 法 を 全 面 改 正 ) なお 個 人 データ 法 の 補 足 的 な 規 則 として 個 人 データ 施 行 令 ( 全 14 条 )がある (2) 目 的 個 人 データの 処 理 によって 個 人 の 人 格 (personal integrity)の 侵 害 に 対 する 個 人 の 保 護 ( 第 1 条 ) (3) 適 用 範 囲 個 人 データは 生 存 する 自 然 人 に 直 接 的 に 又 は 間 接 的 に 帰 属 するあらゆる 種 類 の 情 報 と 定 義 される( 第 3 条 ) 2005 年 6 月 8 日 データ 保 護 検 査 院 は スウェーデン 反 海 賊 団 体 が 用 いていた IP アドレスを 個 人 データ に 該 当 するという 決 定 を 下 した 19 他 方 で 街 や 通 りの 名 前 髪 や 目 の 色 に 関 する 人 の 一 般 的 な 描 写 パソ コンの 閲 覧 履 歴 は 個 人 データに 当 たらないとされてきた 20 適 用 除 外 自 然 人 が 行 う 純 粋 に 私 的 な 性 格 の 活 動 については 法 が 適 用 されない ( 第 6 条 )また 報 道 の 自 由 と 表 現 の 自 由 と 矛 盾 する 限 りにおいて 法 が 適 用 されない ( 第 7 条 ) 2001 年 6 月 12 日 スウェーデン 最 高 裁 判 所 は 報 道 目 的 のためにインターネット 上 に 個 人 情 報 を 公 表 することは 個 人 データ 法 上 の 第 三 国 移 転 には 該 当 しないという 判 決 を 下 している 21 (4) 内 容 ( 権 利 義 務 規 定 に 関 する 内 容 ) 個 人 データの 管 理 者 ( 個 人 データの 処 理 の 目 的 と 手 段 を 決 定 する 者 )は 次 の 義 務 を 履 行 しなければなら ない ( 第 9 条 ) ⅰ) 個 人 データ 処 理 の 合 法 性 ⅱ) 正 確 な,かつよい 慣 行 による 処 理 ⅲ) 特 定 かつ 明 確 化 された 目 的 のもとでの 個 人 データの 取 扱 い ⅳ) 情 報 が 収 集 された 利 用 目 的 と 一 致 しない 処 理 の 禁 止 ⅴ) 処 理 の 目 的 に 関 連 して 相 当 かつ 関 係 する 限 りでの 処 理 ⅵ) 目 的 に 関 して 必 要 な 限 りでの 個 人 データの 処 理 ⅶ) 個 人 データの 正 確 性 と 最 新 化 ⅷ) 不 正 確 不 完 全 な 個 人 データの 訂 正 削 除 ⅸ) 処 理 の 目 的 を 超 える 期 間 の 個 人 データの 保 持 の 禁 止 (5) 監 督 登 録 制 度 監 督 機 関 は ⅰ) 処 理 された 個 人 データへのアクセス ⅱ) 個 人 データの 処 理 及 び 処 理 の 安 全 性 に 関 す る 情 報 及 び 文 書 ⅲ) 個 人 データの 処 理 に 関 連 するその 他 の 前 提 となる 文 書 等 へのアクセスを 要 請 する 権 限 を 有 する( 第 43 条 ) この 要 請 に 従 わない 場 合 個 人 データの 管 理 者 に 対 し 個 人 データの 処 理 を 禁 止 する ことができる ( 第 44 条 ) また データ 処 理 を 行 う 事 業 者 はデータ 保 護 検 査 院 に 対 して 事 前 に 書 面 で 通 知 をしなければならない( 第 36 条 ) データ 処 理 とは 収 集 記 録 体 系 化 蓄 積 適 合 化 修 正 修 復 集 計 使 用 開 示 移 転 等 の 自 動 処 理 で 行 われるかどうかに 関 わりなく 個 人 データに 関 する 処 理 を 行 ういかなる 機 能 も 意 味 することと 86 頁 以 下 参 照 19 Decision by the Data Inspection Board, 8 June 2005, nr 503-2005. See also Decision by the Administrative Court of Appeal (Kammarrätt), 8 June 2007. 20 Decision by the Supreme Administrative Court (Regeringsrätten), 11 October, 1999. 21 Public Prosecutor v. Ramsbro, Decision of 12 June 2001, no B 293-00. また Bodil Lindqvist 判 決 において 欧 州 司 法 裁 判 所 は サーバーからインターネット 利 用 者 に 対 して 自 動 的 に 情 報 が 送 信 されていないこと またインターネットのサーバー 上 に 個 人 データをアップロードさせる 個 人 と 当 該 サーバー 上 で 個 人 データにアクセスした 個 人 とのあいだに 直 接 的 な 個 人 データの 移 転 があった とは 言 えないことなどを 理 由 として スウェーデンに 拠 点 のあるインターネット サーバー 上 に 示 された 個 人 データが EU データ 保 護 指 令 25 条 にいう 国 際 移 転 には 該 当 しないと 判 断 した Bodil Lindqvist, Case C-101/01 [2003] ECRⅠ-12971. 69

されている( 第 3 条 ) また マニュアル 処 理 であっても 登 録 のため 体 系 化 され 検 索 可 能 な 状 態 であれば そのような 処 理 も 法 の 義 務 対 象 となる 例 外 として 1データ 保 護 検 査 院 に 対 して 事 業 者 があらかじめ 指 名 した 個 人 データ 監 督 官 を 登 録 している 場 合 2 他 の 法 令 で 別 途 定 められている 場 合 3 線 形 テキストにおいて 個 人 データが 処 理 される 場 合 4NPO によって 個 人 情 報 が 処 理 される 場 合 5 登 録 された 個 人 が 処 理 に 同 意 している 場 合 がある (6)その 他 1998 年 法 全 面 改 正 1973 年 データ 法 は 数 回 の 改 正 が 行 われたものの 時 代 の 変 化 とともに 1980 年 代 後 半 には 法 の 大 部 分 が 現 状 を 反 映 していなかった そのため 1989 年 政 府 にデータ 保 護 に 関 する 委 員 会 が 設 置 され 4 年 間 の 検 討 を 経 て 1993 年 に 最 終 報 告 書 が 公 表 された 当 時 スウェーデンは EC に 加 盟 していなかったものの 1994 年 に EU に 加 盟 するとともに 1995 年 EU データ 保 護 指 令 との 整 合 性 を 保 つことができるよう 1997 年 に 全 面 改 正 案 が 公 表 された 1998 年 に 全 面 改 正 されたデータ 保 護 法 が 施 行 されると インターネット 上 の 個 人 データ の 公 表 について 私 のインターネットに 干 渉 するな というスローガンのもとメディアやインターネット 利 用 者 からの 抗 議 の 声 があがった これに 対 し 議 会 は 次 の 3 段 階 の 行 動 計 画 を 示 してきた すなわち 短 期 的 には インターネット 上 の 個 人 データの 公 表 を 促 進 するために 法 改 正 の 検 討 を 行 うこと 中 期 的 には 法 改 正 による 影 響 が 日 常 的 なデータの 取 り 扱 いではなく 個 人 データの 乱 用 を 防 止 するものとすべきこと 長 期 的 には EU データ 保 護 指 令 の 改 正 への 働 き 掛 ける というものであった すでに 短 期 的 な 計 画 として 個 人 データの 第 三 国 移 転 については 2000 年 1 月 1 日 の 法 改 正 で 対 処 されている また 中 期 的 な 課 題 とし て 個 人 データの 乱 用 防 止 に 向 けた 調 査 を 行 い 2004 年 に 報 告 書 が 示 され 個 人 データの 乱 用 防 止 に 向 けた 公 的 機 関 と 企 業 における 対 策 が 取 られてきた 22 長 期 的 な 計 画 として スウェーデンにおけるデータ 保 護 に 関 する 諸 問 題 を 契 機 とする EU データ 保 護 指 令 の 改 正 の 提 案 についてはすでに 加 盟 国 の 中 でも 賛 同 が 見 られ 2010 年 から 本 格 化 した EU データ 保 護 指 令 の 改 正 に 向 けた 検 討 が 行 われている 2007 年 法 改 正 2007 年 1 月 1 日 の 個 人 データ 法 一 部 改 正 において 体 系 化 されていない 個 人 データの 取 り 扱 いについて 新 たな 条 項 ( 第 5 条 a)が 設 けられた 法 改 正 前 までは デジタルカメラで 撮 影 された 写 真 をインターネッ ト 上 に 公 表 することがデータの 処 理 に 該 当 するとされてきた 23 しかし 今 回 の 法 改 正 によって 音 画 像 電 子 メール インターネット 上 のテキスト 等 の 体 系 化 されていない 個 人 データについては 個 人 データ 処 理 の 基 本 要 件 データ 処 理 の 届 出 登 録 された 個 人 への 告 知 第 三 国 移 転 の 規 定 が 適 用 されないこととなった もっとも 体 系 化 されていない 個 人 データについては 不 適 切 な 目 的 の 処 理 の 禁 止 合 理 的 な 理 由 なく 大 規 模 なデータデータ 処 理 の 禁 止 個 人 データの 訂 正 名 誉 毀 損 の 禁 止 秘 匿 性 の 確 保 といった 義 務 がガイドラ インとして 示 されている また ソーシャル メディア 等 におけるインターネット 上 の 個 人 データの 取 扱 いは ソーシャル メディ アのサービスを 提 供 する 事 業 者 のみならず それを 利 用 するユーザーもまた 一 定 の 義 務 が 課 されることなっ ている(たとえば Twitter のアカウント 所 有 者 は 自 らのつぶやきについて 個 人 データ 処 理 の 管 理 者 となる) 24 関 連 法 個 人 データ 法 のほかに 個 人 データの 保 護 に 関 連 する 法 律 としては 次 のものがある 電 子 通 信 法 (2003 年 )Lag (2003:389) om elektronisk kommunikation 電 子 通 信 分 野 における 個 人 データの 処 理 に 関 する 規 則 を 定 めている 公 共 カメラ 監 視 法 (1998 年 )Lag (1998:150) om allmän kameraövervakning 公 共 の 場 における 監 視 カメラの 使 用 の 許 可 や 公 衆 への 周 知 等 を 要 件 として 定 めている クレジット 情 報 法 (1973 年 )Kreditupplysningslag(1973:1173) クレジット 情 報 を 取 り 扱 う 事 業 者 に 対 してデータ 保 護 検 査 院 への 事 前 の 許 可 を 規 定 している 22 Sören Öman, Implementing Data Protection in Law, Scandinavian Studies in Law vol. 47 (2004) at 391. 23 Decision by the Data Inspection Board, 20 Sep. 2005 no. 763-2005. 24 Sören Öman, Trends in Data Protection Law, Scandinavian Studies in Law vol. 56 (2010) at 219. 70

個 人 登 録 番 号 制 との 関 係 個 人 登 録 番 号 (Person Nummer) 制 は 1947 年 に 導 入 の 後 住 民 登 録 制 度 のコンピューター 処 理 に 伴 い 1967 年 の 住 民 登 録 令 7 条 及 び 住 民 登 録 告 示 4 条 を 根 拠 として 行 われており スウェーデンに 住 民 登 録 してい る 者 は すべて 識 別 のため 個 人 登 録 番 号 *を 有 する 現 在 国 税 庁 が 個 人 登 録 番 号 に 関 する 業 務 を 所 掌 して いる なお 個 人 登 録 番 号 については 民 間 の 利 用 に 供 する 目 的 で 創 設 された SPAR という 機 関 において 国 税 庁 から 一 部 の 情 報 が 提 供 されている 個 人 データ 法 22 条 にも 個 人 識 別 番 号 に 関 する 次 の 規 定 がある 個 人 識 別 番 号 に 関 する 情 報 または 分 類 番 号 は 同 意 のない 場 合 a) 処 理 の 目 的 b) 安 全 な 認 識 の 意 義 または c)その 他 特 別 の 理 由 によって 明 確 に 正 当 化 されるときのみ 取 り 扱 うことができる データ 保 護 検 査 院 は 番 号 制 度 に 関 連 して 社 会 保 障 分 野 の 監 視 について 特 に 力 を 入 れている 特 定 の 児 童 の 行 動 を 市 が 知 りたいという 場 合 その 児 童 の 行 動 たとえば 買 春 したか 刑 務 所 にいたことがあるかとい ったセンシティブ データを 用 いることの 帰 結 は 何 であるか をチェックしてきている 番 号 制 度 に 関 する 立 法 がより 適 切 に 執 行 されるように 促 してきた 他 方 で 近 年 は 減 少 傾 向 にあるが 個 人 登 録 番 号 が 盗 難 にあう 事 例 25 が 多 く データ 保 護 検 査 院 はこの ような 個 人 登 録 番 号 の 誤 用 を 防 止 するために 行 政 機 関 や 企 業 が 保 有 するファイルをチェックするとともに このような 個 人 登 録 番 号 の 盗 難 に 対 しては 特 別 法 による 罰 則 によって 対 処 されることとなっている 3-2. 第 三 者 機 関 について (1)データ 保 護 機 関 の 背 景 名 称 データ 保 護 検 査 院 (Datainspektionens) (2) 設 置 の 経 緯 歴 史 的 経 緯 1973 年 から 1974 年 にかけ,データの 自 動 処 理 やコンピューター 等 の 機 械 の 出 現 に 対 して 議 論 が 高 まり データ 法 が 成 立 した メディアと 政 党 はこれらの 新 たな 現 象 に 対 して 議 論 をしたが コンセンサスの 必 要 性 を 認 めていた そして 監 督 制 度 が 必 要 であるという 議 論 が 高 まり データ 保 護 検 査 院 が 設 置 された 国 レベルにおいて 個 人 データ 保 護 法 が 世 界 で 初 めて 制 定 されたのがスウェーデンである この 背 景 につ いては 次 のような 事 情 が 考 えられる 26 第 1 に スウェーデンでは 公 文 書 公 開 の 原 則 が 実 践 され 個 人 は 当 局 の 端 末 を 利 用 して 希 望 する 公 の 情 報 を 自 身 で 検 索 することができることとなっていたが その 適 用 除 外 の 一 つにプライバシー 保 護 ( 秘 密 保 護 法 ) 27 があり この 具 体 化 が 必 要 であった 第 2 に 1946 年 以 来, 個 人 登 録 番 号 制 が 採 用 され 個 人 情 報 がどのように 利 用 されるかという 危 惧 に 対 して 特 別 の 配 慮 が 必 要 であ った 第 3 に 行 政 機 関 から 民 間 分 野 に 大 量 の 個 人 情 報 が 移 転 していることに 伴 い プライバシー 侵 害 への 統 制 が 必 要 となった 第 4 に 国 勢 調 査 をめぐるトラブルにより 個 人 情 報 ファイルの 処 理 の 仕 方 をめぐる 世 論 の 反 発 があった 第 5 に コンピューター 技 術 の 発 達 に 対 応 できる 法 制 度 の 準 備 を 促 す 欧 州 評 議 会 の 勧 告 をスウェーデンの 立 法 者 も 認 識 していた 25 麻 薬 乱 用 者 が 警 察 や 病 院 社 会 福 祉 機 関 に 対 して 別 人 の 名 前 と 個 人 登 録 番 号 を 告 げていたことから 個 人 情 報 登 録 番 号 の 本 人 に 対 して 社 会 福 祉 機 関 から 麻 薬 の 乱 用 者 であるため 彼 女 の 子 どもを 児 童 保 護 命 令 の 対 象 とする 旨 の 本 人 が 了 知 しない 手 紙 が 届 いた 事 例 将 来 を 約 束 されたボクサーが ある 犯 罪 者 が 彼 の 氏 名 と 個 人 識 別 番 号 を 利 用 したことから ナショナルボクシングチームにおける 地 位 を 失 いかけた 事 例 脱 税 目 的 の 企 業 監 査 役 として 本 人 の 知 らないところで その 公 認 会 計 士 の 氏 名 と 個 人 識 別 番 号 が 用 いられてい た 事 例 がある アニタ ボンデスタム スウェーデンの 個 人 識 別 システム 法 学 セミナー578 号 (2003)52 頁 26 平 松 前 掲 注 18, 356-358 頁 参 照 27 個 人 データ 法 とは 別 途 1980 年 に 公 布 された 秘 密 情 報 (Sekretesslagen)に 関 する 一 般 法 である 秘 密 保 護 法 がある 同 法 の 紹 介 については 福 本 歌 子 スウェーデンの 公 文 書 公 開 と 言 論 表 現 権 ( 青 木 書 店 1997)123 頁 以 下 参 照 71

EU との 関 係 スウェーデンは 1995 年 に EU に 加 盟 し 同 年 に 制 定 された EU データ 保 護 指 令 に 基 づき 1998 年 4 月 29 日 に 個 人 データ 法 を 改 正 し 1998 年 10 月 24 日 に 施 行 した また 電 子 通 信 におけるデータ 保 護 に 関 する 2002 年 EU 指 令 については 2003 年 7 月 25 日 に 電 子 通 信 法 として 国 内 法 化 された 2011 年 3 月 EU データ 保 全 指 令 (Data Detention Directive)-テロリズム 対 策 の 観 点 からインターネ ット プロバイダ 事 業 者 が 電 子 メールの IP アドレスや 送 受 信 者 データを6か 月 以 上 保 全 することを 義 務 付 け ることなどを 内 容 とする 指 令 の 国 内 法 での 実 施 を 延 長 したことについて 欧 州 委 員 会 からスウェーデン 政 府 に 対 して 1 億 5000 万 クローナ( 約 19 億 5000 万 円 )の 罰 金 が 課 されることとなった 社 会 民 主 党 や 緑 党 とい ったリベラル 派 が 長 期 間 の 保 全 に 抵 抗 したためである また スウェーデンでは 2009 年 に 監 視 社 会 に 防 止 する 法 制 度 が 整 備 され スパイ 社 会 や Big Brother 社 会 に 対 する 抵 抗 があることも 国 内 法 での 実 施 延 長 の 背 景 にある (3) 法 的 地 位 1 組 織 について データ 保 護 検 査 院 は 政 府 に 財 政 面 などで 依 存 しているが 独 立 して 活 動 してきている このような 第 三 者 機 関 はスウェーデンに 約 250 存 在 する( 公 的 機 関 それ 自 体 は 約 400 存 在 する 28 ) その 多 くが 監 督 機 関 として の 地 位 である データ 保 護 に 関 する 監 督 機 関 は データ 保 護 検 査 院 のみである 憲 法 上 の 位 置 づけ スウェーデン 憲 法 は 立 憲 君 主 制 を 採 用 し 権 力 分 立 制 (separation of power)ではなく 役 割 の 分 担 (a separation of function)という 仕 組 みをとっている 29 したがって 日 本 における 立 法 行 政 司 法 という 三 権 分 立 の 構 造 がそのままあてはまるわけではない スウェーデン 憲 法 では 統 治 構 造 (Regeringsform) 政 体 の 継 続 法 (Successionsordning) プレスの 自 由 法 (Tryckfrihetsforordning) 表 現 の 自 由 に 関 する 基 本 法 (Yttrandefrihetsgrundlag)の 大 きく 分 けて 4 つの 事 項 について 規 定 を 設 けている 憲 法 においてプライバシーという 文 言 はないが integritet : personal integrity という 言 葉 が 用 い られ 実 質 的 にプライバシー 権 の 保 障 をしている 憲 法 第 2 章 3 条 2 項 において すべての 市 民 は 自 動 デ ータ 処 理 の 手 段 によって 個 人 情 報 の 登 録 から 生 じた 個 人 の 人 格 へのいかなる 侵 害 に 対 しても 保 護 される と 規 定 されている 2010 年 秋 に 憲 法 修 正 が 行 われ 個 人 の 状 況 を 調 べることによって 生 じる 侵 害 に 対 処 するた め personal integrity の 強 化 がされた スウェーデンにおけるプライバシー 権 の 実 質 的 な 意 味 での 保 障 は 国 家 からの 消 極 的 な 防 御 権 としてではなく 国 家 に 一 定 の 作 為 を 求 める 権 利 として 理 解 されてきた 30 いわゆる 第 三 者 機 関 であるデータ 保 護 検 査 院 の 存 在 について 憲 法 上 の 論 点 は 存 在 しない また デー タ 保 護 検 査 院 が 唯 一 のデータ 保 護 機 関 である スウェーデンの 統 治 制 度 では 21 の 郡 (landsting)と 290 のコミューン(kommuner)があるが 地 方 に 類 似 の 機 関 や 支 部 は 存 在 しない データ 保 護 検 査 院 はオンブズマン*に 類 似 する 独 立 行 政 機 関 のひとつとして 理 解 できる スウェーデン 憲 法 においても 立 法 過 程 における 関 係 機 関 から 情 報 の 収 集 と 意 見 聴 取 が 規 定 されている 国 民 の 声 を 聴 く 機 関 が 最 重 要 とされており 第 三 者 機 関 もそのような 機 関 であると 認 識 している また スウェーデンにおいては 二 元 的 な 行 政 組 織 と 言 われるように 各 省 とは 別 に 具 体 的 な 行 政 の 執 行 重 要 事 項 以 外 の 政 策 決 定 に ついては 内 閣 の 外 局 である 独 立 行 政 機 関 または 地 方 政 府 に 委 任 されている このような 二 元 的 な 行 政 組 織 については 1 政 策 立 案 と 具 体 的 執 行 とを 分 化 することにより 行 政 の 効 率 化 が 図 られていること 2 個 別 の 政 策 遂 行 について 上 級 官 庁 等 からの 介 入 を 受 けないため 責 任 の 所 在 が 明 確 になること 等 の 利 点 があると 評 されている 31 *スウェーデンにおけるオンブズマンについて 32 特 に 重 要 な 役 割 を 果 たしてきたのが 議 会 オンブズマン(Riksdagens Justitieombudsman)と 司 法 官 (Justitiekanslern)である 1809 年 民 主 憲 法 を 制 定 した 際 に 憲 法 96 条 で 一 人 のオンブズマンを 設 置 28 Kirchberger, supra note 18, at 23. 29 LAURA CARLSON, THE FUNDAMENTALS OF SWEDISH LAW 25 (2009). 30 榎 原 猛 プライバシー 権 の 総 合 的 研 究 ( 法 律 文 化 社 1991)295 頁 31 衆 議 院 EU 憲 法 及 びスウェーデン フィンランド 憲 法 調 査 議 員 団 報 告 書 ( 平 成 16 年 12 月 )22 頁 32 園 部 逸 夫 枝 根 茂 オンブズマン 法 新 版 ( 弘 文 堂 1997)122 頁 以 下 参 照 72

することが 制 度 化 された スウェーデン 新 憲 法 (1974 年 制 定 )は 第 2 章 6 条 において 国 会 は 国 会 が 定 める 規 則 にしたがって 公 務 における 法 令 の 適 用 を 監 視 するために 一 ないし 数 人 のオンブズマンを 選 出 するものとする オンブズマンは 規 則 で 指 示 された 事 件 に 対 して 法 律 上 の 手 続 を 発 動 することが できる と 規 定 されている オンブズマンは 市 民 からの 苦 情 の 申 立 て または 職 権 によって 活 動 を 開 始 するが その 職 務 を 開 始 す る 契 機 となるのは マスコミの 報 道 裁 判 所 や 行 政 機 関 への 視 察 などである オンブズマンの 調 査 権 につ いては オンブズマンが 裁 判 所 行 政 機 関 の 審 議 に 出 席 することができ また 裁 判 所 行 政 機 関 の 記 録 等 の 文 書 も 利 用 できることとなっている いかなる 裁 判 所 行 政 機 関 国 自 治 体 の 公 務 員 も オンブズマ ンに 要 求 された 情 報 及 び 報 告 を 与 えなければならない 具 体 的 な 権 限 としては 大 臣 訴 追 の 国 会 の 決 議 に 基 づき その 訴 訟 を 遂 行 すること 公 務 員 が 公 務 に 課 せられた 義 務 に 反 し 犯 罪 を 犯 した 場 合 に 特 別 検 察 官 として 訴 追 することなどがある 2 委 員 会 について データ 保 護 検 査 院 委 員 会 は 5 名 から 構 成 される 政 府 とは 異 なる 機 関 であるが 公 務 員 としての 身 分 で ある 委 員 長 の 報 酬 は 1,052,486 クローナ( 約 13,700,000 円 ) 4 年 ごとに 選 挙 がおこなわれるが 通 常 は 再 選 される 現 在 の 構 成 としては 国 会 議 員 2 名 大 学 教 授 1 名 IT 専 門 家 1 名 地 方 議 員 1 名 となっている データ 保 護 検 査 委 員 会 は 政 府 からデータ 保 護 に 関 連 する 照 会 について 2010 年 に 74 項 目 の 検 討 を 行 っ た 2010 年 2009 年 2008 年 検 討 件 数 74 116 97 受 付 件 数 74 107 111 表 1 政 府 からの 照 会 事 項 に 対 するデータ 保 護 検 査 委 員 会 の 検 討 状 況 (2010 年 ) 33 3 人 員 人 事 現 在 43 名 のスタッフ(うち 26 名 が 女 性 )がおり 約 20 名 が 法 律 専 門 家 3 名 が IT 専 門 家 その 他 が 行 政 部 門 などの 担 当 である 設 置 当 初 は 15 名 のスタッフであったが 現 在 は 43 名 まで 増 員 された 6 か 月 間 の 試 用 期 間 があり 任 期 付 き 雇 用 がほとんどとなっている 2010 年 には 2 名 が 辞 職 した 専 門 性 を 有 した 人 材 の 確 保 が 重 要 であり,この 点 は 2010 年 の 年 次 報 告 書 でも 指 摘 されている 法 律 専 門 家 はほとん ど 弁 護 士 資 格 を 有 しており 修 士 号 を 有 したスタッフも 3 名 いる 事 務 局 長 のほか 4 つのチームから 構 成 され チームごとに 実 質 的 な 業 務 が 行 われている 1 医 療 研 究 教 育 チーム 2 事 業 者 対 策 チーム 3 法 執 行 チーム 4サービス( 総 務 人 事 広 報 )チーム 建 物 はストックホルムの 繁 華 街 にあるビルの5 階 を 使 っている 34 4 予 算 予 算 は 議 会 の 議 決 を 経 て 司 法 省 から 受 け 取 っている その 金 額 は 下 記 のとおりとなっている その 他 講 演 会 セミナー 会 議 による 収 入 がある 小 さな 予 算 でやりくりをしてきているとの 認 識 である 年 総 額 活 動 費 ( 人 件 費 家 賃 等 を 除 いた 金 額 ) 2010 年 36,100,000 クローナ ( 約 4 億 7000 万 円 ) 4,432,000 クローナ ( 約 5700 万 円 ) 2009 年 3,526,700 クローナ ( 約 4 億 6000 万 円 ) 4,349,000 クローナ ( 約 5600 万 円 ) 33 Datainspektionen, Arsredovisning 2010, p.13. 34 Datainspektionen, Arsredovisning 2010, p.33. 73

2008 年 3,342,200 クローナ ( 約 4 億 3000 万 円 ) 4,141,000 クローナ ( 約 5400 万 円 ) 表 2 データ 保 護 検 査 院 の 予 算 推 移 5 権 限 個 人 データ 法 債 務 回 復 法 クレジット 情 報 法 の 3 つの 法 分 野 の 法 執 行 を 監 視 している また 立 法 過 程 においてデータ 保 護 に 関 する 意 見 を 議 会 に 対 して 述 べることができる ヒアリングにおいて 指 摘 されたこととして データ 保 護 検 査 院 の 最 大 の 功 績 は 立 法 に 対 して 提 言 を 行 っ てきたことである,ということがある 2010 年 には 法 案 審 議 の 過 程 において 17 回 の 提 言 を 行 ってきた こ れは 憲 法 の 一 部 である 統 治 構 造 の 第 7 章 の 2 において 政 府 の 任 務 については 関 係 する 機 関 から 情 報 と 意 見 を 聴 取 することが 定 められていることに 基 づく 権 限 行 使 である このような 提 言 が 法 律 に 反 映 されるこ とでデータ 保 護 が 実 現 されてきた 具 体 的 な 功 績 をあげるのであれば クレジットカード 情 報 に 関 する 法 的 諸 問 題 が 2003 年 から 議 会 で 議 論 されてきたところ データ 保 護 検 査 院 が 7 年 間 かけて 提 案 をしてきたことが 最 終 的 に 法 案 に 盛 り 込 まれた,というものが 挙 げられる 6 他 機 関 地 方 との 関 係 政 府 機 関 ( 金 融 情 報 当 局 技 術 部 署 警 察 等 )と 情 報 共 有 を 頻 繁 に 行 っている 具 体 的 には 2010 年 テ ロ 資 金 流 用 対 策 として 債 権 整 理 問 題 について 協 力 し 児 童 への 啓 発 目 的 で 消 費 者 庁 及 び 児 童 オンブズマンと 意 見 交 換 を 行 ったほか 情 報 セキュリティ 分 野 の 意 見 交 換 のために IT セキュリティ 機 関 などと 協 働 してきた また 議 会 オンブズマンと 協 働 して 進 めてきたものであるが データ 保 護 が 立 法 に 適 切 に 組 み 込 まれるこ とが 重 要 である また 執 行 面 でも 議 会 に 対 して 苦 情 を 申 し 出 た 個 人 の 氏 名 を 議 会 が 公 表 した 事 件 につい て 議 会 オンブズマンと 協 働 して 対 処 した 地 方 に 支 部 などは 存 在 しない (4) 運 用 実 態 1 苦 情 処 理 紛 争 解 決 苦 情 処 理 の 実 態 相 談 件 数 としては 毎 週 200 件 程 度 の 電 話 と 60~70 通 程 度 のメールを 受 け 付 け 対 応 している 2010 年 には 約 2100 通 (2009 年 は 約 3100 通 )のメールによる 相 談 ( 通 常 3 営 業 日 以 内 に 返 答 ) 電 話 による 約 5300 回 の 相 談 対 応 を 行 ってきた 通 常 2 人 ( 多 忙 期 は 3 人 )の 法 律 専 門 家 が 電 話 とメールの 対 応 を 行 っており スタッフは 必 ず 1 月 に 1 回 は 全 員 が 対 応 することとなっている 苦 情 処 理 の 件 数 は 下 記 の 表 のとおり 年 間 200~300 件 程 度 となっている 具 体 的 には 個 人 からの 苦 情 を 受 けて 違 反 の 疑 いのある 事 業 者 に 対 して 手 紙 などを 書 いている 年 件 数 2010 年 332 件 2009 年 233 件 2008 年 279 件 表 3 苦 情 処 理 件 数 の 動 向 35 また 2010 年 5 月 11 月 にグーグル 社 からデータ 保 護 検 査 院 に 対 し WiFi 情 報 が 偶 然 収 集 しうる 状 況 に あったことについて 情 報 提 供 があり データ 保 護 検 査 院 がこの 情 報 を 調 査 し 意 見 を 公 表 したという 事 例 が あった 36 ダイレクト マーケティング 法 11 条 は 個 人 データの 管 理 者 に 対 して 登 録 された 個 人 がダイレクト マーケティングの 処 理 に 書 面 で 異 議 を 唱 えている 場 合 ダイレクト マーケティングに 関 する 目 的 をもって 個 人 データを 処 理 してはならな い と 規 定 しており いわゆるオプト アウトのアプローチが 採 られている 35 Datainspektionen, Arsredovisning 2010, p.19. 36 Datainspektionen, Integritetsåret 2010, pp.10-11. 74

2 権 限 行 使 ( 立 入 検 査 罰 則 ) 立 入 検 査 立 入 検 査 権 限 が 個 人 データ 法 43 条 の 下 で 認 められている この 検 査 には 二 通 りあり 事 前 に 手 紙 質 問 状 を 書 いた 上 で データ 保 護 検 査 院 に 呼 んで 検 査 する 場 合 と 現 地 に 訪 問 して 検 査 する 場 合 である このほ かに 質 問 状 のみを 送 付 して 調 査 する 場 合 がある 現 地 に 訪 問 する 場 合 は 事 前 に 質 問 状 等 を 送 付 することとなっている 検 査 の 実 施 については IT 専 門 家 が 行 うことがほとんどである 検 査 をする 場 合 は 新 聞 やテレビに 出 ている 問 題 について 行 うことが 多 い 省 庁 等 の 公 的 機 関 に 対 しても 行 う 権 限 があるが 立 法 に 関 する 意 見 を 提 出 する 程 度 のことしかしていない センシティブ データ( 人 種 民 族 37 政 治 的 思 想 宗 教 哲 学 上 の 信 念 労 働 組 合 の 構 成 員 医 療 情 報 性 的 志 向 (13 条 ))の 取 扱 いに 伴 う 苦 情 が 多 くなってきている 今 後 センシティブ データを 利 用 する 金 融 機 関 等 について 必 要 が 生 じれば 事 前 通 知 なしで 立 入 検 査 を 行 う 計 画 もないわけではない 立 入 検 査 の 結 果 概 要 は 以 下 のとおりである 38 2010 年 2009 年 2008 年 開 始 64 41 53 終 了 52 44 29 表 4 現 地 立 入 検 査 の 件 数 2010 年 2009 年 2008 年 開 始 98 79 60 終 了 83 66 65 表 5 呼 び 出 し 検 査 の 件 数 2010 年 2009 年 2008 年 開 始 52 29 0 終 了 75 0 0 表 6 質 問 状 による 調 査 の 件 数 罰 則 これまで 罰 金 を 科 した 事 例 はない 法 13 条 から 21 条 におけるデータ 管 理 者 に 課 された 義 務 規 定 に 違 反 した 場 合 データ 管 理 者 は 罰 金 を 科 せ られ 又 は6か 月 以 下 の 懲 役 に 処 せられることになる なお 軽 微 な 違 反 は 刑 事 罰 の 対 象 とはならない 立 入 検 査 の 拒 否 や 検 査 の 結 果 不 法 なデータ 処 理 が 発 覚 した 場 合 は 是 正 を 求 めるが 是 正 にも 応 じない 場 合 罰 金 を 科 すことができる データ 保 護 検 査 院 側 は 罰 則 を 最 初 から 課 すつもりで 検 査 をしているわけでは なく 法 令 順 守 の 徹 底 を 促 し 正 しいことをしてもらいたい という 意 図 がある 罰 則 を 科 すことになった 場 合 データ 保 護 検 査 院 は 行 政 裁 判 所 に 提 訴 し 同 裁 判 所 が 罰 則 を 課 すこととなっている 罰 則 に 対 する 不 服 申 し 立 ては 行 政 裁 判 所 に 提 訴 できることになっている 3 事 前 届 出 と 検 査 個 人 データを 処 理 しようとする 事 業 者 は データ 保 護 検 査 院 に 対 しあらかじめ 書 面 で 届 出 をしなければ ならない( 法 第 36 条 1 項 ) また 各 事 業 者 が 個 人 データ 担 当 者 を 置 く 場 合 又 は 辞 任 させる 場 合 その 旨 を データ 保 護 検 査 院 に 届 け 出 なければならない( 法 36 条 2 項 ) センシティブ データの 処 理 については 3 週 間 前 に 事 前 に 届 出 をする 必 要 がある( 法 41 条 ) データ 保 護 検 査 院 は 3 週 間 の 間 で 複 雑 な 技 術 検 査 を 行 い 限 られた 時 間 の 中 でセンシティブ データの 可 否 について 決 定 を 下 している 37 政 府 の 報 告 書 によれば 氏 名 使 用 言 語 から 個 人 の 人 種 民 族 が 間 接 的 に 識 別 しうる 場 合 があるため センシティブ データに 該 当 すると 指 摘 している Government Official Report SOU 2001:32, Domstolarnas register och personuppgiftslagen- En rättslig anpassning 124. 38 Datainspektionen, Arsredovisning 2010 p.15. 75

2010 年 2009 年 2008 年 研 究 分 野 311 294 211 警 察 31 29 1 警 備 防 衛 2 2 2 表 7 事 前 届 出 と 検 査 の 状 況 39 もっとも データ 保 護 検 査 院 の 決 定 (decision)には 強 制 力 がなく また 決 定 に 不 服 がある 場 合 は 行 政 裁 判 所 へ 提 訴 することができる 損 害 が 生 じうる 事 案 や 罰 則 を 科 すべき 事 案 になるとデータ 保 護 検 査 院 単 体 で 強 制 力 のある 決 定 を 下 すことはできず 行 政 裁 判 所 において 審 理 されることになっている 実 際 には デー タ 保 護 検 査 院 がデータ 処 理 を 認 めないという 決 定 をする 場 合 事 業 者 は 技 術 的 に 足 りない 部 分 を 修 正 するな どしており これまで 決 定 を 無 視 された 事 例 は 1 件 もない 近 年 医 学 疫 学 研 究 に 関 する 事 前 届 出 が 増 加 の 傾 向 にある 40 センシティブ データの 処 理 には 本 人 の 同 意 が 必 要 であるが 法 19 条 1 項 によれば データが 処 理 されることによる 個 人 の 人 格 の 侵 害 に 比 べて 研 究 または 統 計 におけるデータ 処 理 が 社 会 の 利 益 にとって 必 要 である 場 合 には 医 学 疫 学 研 究 における 個 人 データの 処 理 が 認 められることとなっている また 法 19 条 2 項 は 研 究 倫 理 委 員 会 による 承 認 があった 場 合 には 前 記 の 社 会 的 な 利 益 があるものとみなしている データ 保 護 検 査 院 は 2002 年 12 月 遺 伝 子 研 究 個 人 データの 処 理 について 報 告 書 41 を 公 表 し 事 前 届 出 における 審 査 項 目 等 を 示 している また 法 21 条 によれば 犯 罪 等 の 法 令 違 反 に 関 する 個 人 データの 処 理 が 公 的 機 関 以 外 において 行 われる ことを 禁 止 しているが(1 項 ) データ 保 護 検 査 院 を 含 む 政 府 からの 禁 止 免 除 の 決 定 が 行 われれば このよう な 個 人 データの 処 理 が 認 められることとなっている 具 体 的 には 企 業 内 部 における 犯 罪 等 について 公 益 通 報 に 関 する 個 人 データの 処 理 が 多 くなっている 2010 年 2009 年 2008 年 76 62 41 42 表 8 犯 罪 等 の 法 令 違 反 に 関 する 個 人 データの 処 理 の 事 前 届 出 の 状 況 (5) 今 後 の 課 題 データ 保 護 検 査 院 は 設 立 以 降 多 くの 変 化 が 生 じたが 全 体 的 にみて 国 民 からの 大 きな 尊 敬 の 念 を 持 っ て 支 えられてきた 機 関 であると 自 負 している 重 要 な 役 割 として, 国 民 に 情 報 提 供 をし, 法 律 家 による 相 談 を 受 け 付 けてきた データ 保 護 検 査 院 はこのように 国 民 の 声 を 聴 くことのできる 機 関 であり, 国 民 の 声 は 聴 き 続 けることが 大 切 である リズボン 条 約 43 以 降 データ 保 護 がますます 重 要 になってきており EU 他 の 加 盟 国 との 調 和 をどのよ うにとっていくか またデータ 保 護 機 関 の 役 割 と 権 限 をどのように 強 化 していくかが 今 後 問 題 となってく るであろう 4.まとめ 以 上 のとおり 本 研 究 では プライバシー 保 護 を 所 管 する 執 行 機 関 の 比 較 考 察 を 行 ってきた 各 国 のプラ イバシー 法 執 行 機 関 の 比 較 考 察 を 行 ってきた Graham Greenleaf 教 授 は 日 本 にはデータ 保 護 監 督 機 関 が 欠 如 していることが 最 大 の 要 因 となって 日 本 はアジアの 中 で 最 も 貧 弱 なデータ プライバシー 法 を 有 する 国 の 1 つである 44 と 指 摘 する このような 指 摘 を 踏 まえてみると 日 本 の 執 行 機 関 には 1 独 立 した 機 関 が 欠 如 していること 2 法 執 行 について 立 ち 入 り 検 査 等 の 権 限 がないこと 3 現 状 の 主 務 大 臣 制 は 個 人 情 報 保 護 法 39 Datainspektionen, Arsredovisning 2010 p.19. 40 遺 伝 データについては 遺 伝 子 プライバシー 法 (Genetisk integritet (Lag (2006:351))がある 41 Datainspektionen, Rapport: Personuppgifter i genforskning 2002:4. 42 Datainspektionen, Arsredovisning 2010 p.12 43 リズボン 条 約 (2009 年 12 月 1 日 発 効 )により 従 来 の 欧 州 共 同 体 (EC) 共 通 外 交 安 全 保 障 政 策 (CFSP) 警 察 刑 事 司 法 協 力 (PJCC) の 3 本 柱 による 枠 組 みが 廃 止 され EU の 権 限 強 化 がされ るとともに 個 人 データ 保 護 が 新 たな 政 策 課 題 として 明 記 された 44 See Graham Greenleaf, Independence of Data Privacy Authorities (PartⅡ): Asia Pacific Experience, 28 COMPUTER LAW & SECURITY 121, 126 (2012). 76

のみを 執 行 し 得 る 立 場 にあり その 他 のプライバシー 法 制 度 全 体 を 監 督 することができない という 点 を 指 摘 することができよう 他 方 で 日 本 の 主 務 大 臣 制 は 各 個 人 情 報 取 扱 事 業 者 の 行 う 事 業 を 所 管 している 大 臣 等 が 当 該 所 管 事 業 に 関 する 行 政 の 蓄 積 や 経 験 を 活 かし 個 人 情 報 の 取 扱 いについても 責 任 を 有 する 45 という 利 点 もまたただちに 否 定 されるべきことでもない 世 界 的 な 潮 流 を 見 極 めつつ 番 号 制 度 の 動 向 にも 注 視 しつつ 独 立 性 と 専 門 性 を 有 した 執 行 機 関 の 在 り 方 について 検 討 が 必 要 であろう 参 考 文 献 脚 注 に 示 したとおり ( 注 書 き) 本 報 告 書 は 消 費 者 庁 諸 外 国 における 個 人 情 報 保 護 制 度 の 監 督 機 関 に 関 する 調 査 報 告 書 (2011 年 )における 筆 者 が 担 当 執 筆 したフランス 及 びスウェーデンをもとに 作 成 している また 本 稿 の 執 筆 にあたり フランス 及 びスウェーデンにおいてそれぞれヒアリング 調 査 を 実 施 した 発 表 資 料 題 名 掲 載 誌 学 会 名 等 発 表 年 月 プライバシー 個 人 情 報 保 護 の 新 世 代 駿 河 台 法 学 2011 年 9 月 The Evolving Concept of Data Privacy in Japanese Law International Data Privacy Law 2011 年 9 月 45 園 部 逸 夫 個 人 情 報 保 護 法 の 解 説 改 訂 版 (ぎょうせい 2005)213 頁 77