民 法 ( 債 権 関 係 ) 部 会 資 料 51 民 法 ( 債 権 関 係 )の 改 正 に 関 する 論 点 の 補 充 的 な 検 討 (2) ~ 中 間 試 案 のたたき 台 ( 概 要 付 き)のサンプルを 兼 ねて~ 目 次 第 1 債 権 者 代 位 権... 1 1 責 任 財 産 の 保 全 を 目 的 とする 債 権 者 代 位 権... 1 2 代 位 行 使 の 範 囲... 2 3 代 位 行 使 の 方 法 等... 2 4 代 位 債 権 者 の 善 管 注 意 義 務... 3 5 債 権 者 代 位 権 の 行 使 に 必 要 な 費 用... 3 6 代 位 行 使 の 相 手 方 の 抗 弁... 3 7 債 務 者 の 処 分 権 限... 4 8 訴 えによる 債 権 者 代 位 権 の 行 使 の 場 合 の 訴 訟 告 知... 4 9 責 任 財 産 の 保 全 を 目 的 としない 債 権 者 代 位 権... 4 第 2 詐 害 行 為 取 消 権... 6 1 受 益 者 に 対 する 詐 害 行 為 取 消 権 の 要 件... 6 2 相 当 の 対 価 を 得 てした 行 為 の 特 則... 7 3 特 定 の 債 権 者 を 利 する 行 為 の 特 則... 8 4 過 大 な 代 物 弁 済 等 の 特 則... 9 5 転 得 者 に 対 する 詐 害 行 為 取 消 権 の 要 件... 10 6 詐 害 行 為 取 消 しの 効 果... 11 7 詐 害 行 為 取 消 しの 範 囲... 11 8 逸 出 財 産 の 返 還 の 方 法... 11 9 詐 害 行 為 取 消 権 の 行 使 に 必 要 な 費 用... 13 10 受 益 者 の 債 権 の 回 復... 14 11 受 益 者 が 現 物 の 返 還 をすべき 場 合 における 受 益 者 の 反 対 給 付... 14 12 受 益 者 が 金 銭 の 返 還 又 は 価 額 償 還 をすべき 場 合 における 受 益 者 の 反 対 給 付... 15 13 転 得 者 が 現 物 の 返 還 をすべき 場 合 における 転 得 者 の 反 対 給 付 等... 16 14 転 得 者 が 価 額 償 還 をすべき 場 合 における 転 得 者 の 反 対 給 付 等... 17 15 詐 害 行 為 取 消 権 の 行 使 期 間... 17 1
第 1 債 権 者 代 位 権 1 責 任 財 産 の 保 全 を 目 的 とする 債 権 者 代 位 権 (1) 債 権 者 は, 債 務 者 が 無 資 力 であるときは, 自 己 の 債 権 を 保 全 するため, 債 務 者 に 属 する 権 利 を 行 使 することができるものとする 債 務 者 が 当 該 権 利 を 行 使 しないとすれば 無 資 力 となるときも, 同 様 とするものとする (2) 債 権 者 は, 被 保 全 債 権 の 期 限 が 到 来 しない 間 は, 保 存 行 為 を 除 き, 上 記 (1) の 権 利 の 行 使 をすることができないものとする (3) 次 に 掲 げる 場 合 には, 債 権 者 は, 上 記 (1)の 権 利 の 行 使 をすることができな いものとする ア 当 該 権 利 が 債 務 者 の 一 身 に 専 属 するものである 場 合 イ 当 該 権 利 が 差 押 えの 禁 止 されたものである 場 合 ウ 被 保 全 債 権 が 強 制 執 行 によって 実 現 することのできないものである 場 合 部 会 資 料 35 1 頁,4 頁,16 頁 1 本 文 (1) 前 段 は, 民 法 第 423 条 第 1 項 本 文 を 維 持 した 上 で, 本 来 型 の 債 権 者 代 位 権 ( 責 任 財 産 の 保 全 を 目 的 とする 債 権 者 代 位 権 )の 要 件 として 債 務 者 の 無 資 力 を 書 き 加 えるも のである 判 例 法 理 ( 最 判 昭 和 40 年 10 月 12 日 民 集 19 巻 7 号 1777 頁 )を 明 文 化 するものであり, 不 動 産 登 記 法 第 59 条 第 7 号 の 代 位 登 記 に 関 する 実 務 を 始 めとして, 現 在 の 実 務 を 変 更 するものではない 無 資 力 要 件 を 明 示 しつつ, 自 己 の 債 権 を 保 全 する ため という 要 件 を 維 持 しているのは, 債 務 者 の 責 任 財 産 の 増 加 に 結 び 付 かないような 権 利 の 代 位 行 使 は, 債 務 者 が 無 資 力 であっても 許 されない 旨 を 示 す 必 要 があるからであ る 本 文 (1) 後 段 は, 債 務 者 が 現 時 点 では 無 資 力 状 態 になくても, 被 代 位 権 利 を 行 使 しない とすれば 無 資 力 状 態 に 陥 るという 場 合 には, 無 資 力 要 件 を 充 足 する 旨 の 規 定 を 追 加 する ものである 無 資 力 要 件 の 解 釈 に 関 する 一 般 的 な 理 解 を 明 文 化 するものである 2 本 文 (2)は, 民 法 第 423 条 第 2 項 の 規 定 による 裁 判 上 の 代 位 の 制 度 を 廃 止 するほかは, 同 項 の 規 定 を 維 持 するものである 裁 判 上 の 代 位 の 制 度 については,その 利 用 例 が 乏 し く, 基 本 的 には 民 事 保 全 の 制 度 によって 代 替 可 能 であると 考 えられること 等 から,これ を 廃 止 する これに 伴 って, 非 訟 事 件 手 続 法 ( 平 成 23 年 法 律 第 51 号 未 施 行 ) 第 8 5 条 から 第 91 条 までの 規 定 は, 削 除 することとなる 3 本 文 (3)アは, 民 法 第 423 条 第 1 項 ただし 書 の 規 定 を 維 持 するものである 本 文 (3)イ 及 びウは, 債 権 者 代 位 権 を 行 使 することができない 場 合 に 関 して, 解 釈 上 異 論 がないところを 明 文 化 するものである ( 備 考 ) 裁 判 上 の 代 位 の 廃 止 について 公 刊 されている 裁 判 例 で 裁 判 上 の 代 位 に 関 する 判 示 をしたものとして, 宮 崎 地 判 昭 和 4 0 年 3 月 26 日 下 民 集 16 巻 3 号 492 頁 及 び 名 古 屋 地 判 昭 和 58 年 3 月 7 日 判 タ506 号 136 頁 があるが,これらはいずれも 転 用 型 の 債 権 者 代 位 権 の 事 案 に 関 するものである ( 農 地 売 買 の 買 主 である 代 位 債 権 者 が, 農 地 法 上 の 許 可 を 取 得 する 前 に, 売 主 である 債 務 1
者 の 第 三 債 務 者 に 対 する 農 地 法 上 の 許 可 申 請 手 続 協 力 請 求 権 などを 代 位 行 使 した 事 案 裁 判 上 の 代 位 の 許 可 を 取 得 しないで 債 権 者 代 位 権 を 行 使 ( 通 常 訴 訟 を 提 起 )したが,その 通 常 訴 訟 の 判 決 において 裁 判 上 の 代 位 の 許 可 の 要 件 を 認 定 した 上 で, 請 求 を 認 容 した ) そ こで, 転 用 型 の 債 権 者 代 位 権 については, 本 文 1(2)の 規 律 を 及 ぼさないこととし( 後 記 9 (3) 参 照 ), 被 保 全 債 権 の 期 限 未 到 来 の 場 合 ( 停 止 条 件 未 成 就 の 場 合 を 含 む )における 転 用 型 の 債 権 者 代 位 権 の 行 使 の 可 否 については, 専 ら 転 用 型 の 債 権 者 代 位 権 の 一 般 的 な 要 件 ( 後 記 9(2) 参 照 )の 解 釈 認 定 に 委 ねることとした 2 代 位 行 使 の 範 囲 債 権 者 は, 前 記 1の 代 位 行 使 をする 場 合 において,その 代 位 行 使 に 係 る 権 利 の 全 部 を 行 使 することができるものとする この 場 合 において, 当 該 権 利 の 価 額 が 被 保 全 債 権 の 額 を 超 えるときは, 債 権 者 は, 当 該 権 利 以 外 の 債 務 者 の 権 利 を 行 使 することができないものとする 部 会 資 料 35 24 頁 被 代 位 権 利 の 価 額 が 被 保 全 債 権 の 額 を 超 える 場 合 であっても,その 被 代 位 権 利 の 全 部 を 行 使 することができるとする 一 方,その 場 合 には 他 の 権 利 を 行 使 することができない 旨 を 定 めるものであり, 民 事 執 行 法 第 146 条 第 1 項 及 び 民 事 保 全 法 第 50 条 第 5 項 と 同 様 の 趣 旨 のものである 判 例 ( 最 判 昭 和 44 年 6 月 24 日 民 集 23 巻 7 号 1079 頁 )は, 被 代 位 権 利 を 行 使 することができる 範 囲 を 被 保 全 債 権 の 額 の 範 囲 に 限 定 しており, 本 文 は, これよりも 代 位 行 使 の 範 囲 を 拡 げている 上 記 判 例 は, 債 権 者 代 位 権 についていわゆる 債 権 回 収 機 能 が 認 められていること( 後 記 3の 概 要 参 照 )を 考 慮 したものとの 指 摘 がされて おり, 後 記 3の 見 直 しの 当 否 とも 関 連 する 3 代 位 行 使 の 方 法 等 (1) 債 権 者 は, 前 記 1の 代 位 行 使 をする 場 合 において,その 代 位 行 使 に 係 る 権 利 が 金 銭 その 他 の 物 の 引 渡 しを 求 めるものであるときは,その 物 を 自 己 に 対 して 引 き 渡 すことを 求 めることができるものとする この 場 合 において, 相 手 方 が 債 権 者 に 対 して 金 銭 その 他 の 物 を 引 き 渡 したときは, 代 位 行 使 に 係 る 権 利 は,これによって 消 滅 するものとする (2) 上 記 (1)により 債 権 者 が 相 手 方 から 金 銭 その 他 の 物 を 受 け 取 ったときは, 債 権 者 は,その 物 を 債 務 者 に 対 して 返 還 しなければならないものとする この 場 合 において, 債 権 者 は,その 返 還 に 係 る 債 務 を 受 働 債 権 とする 相 殺 をする ことができないものとする ( 注 ) 上 記 (2)については, 規 定 を 設 けるべきではない( 相 殺 を 禁 止 しない)と いう 考 え 方 もある 部 会 資 料 35 18 頁,22 頁 1 本 文 (1)は, 代 位 債 権 者 による 直 接 の 引 渡 しの 請 求 が 認 められる 旨 を 示 すものであり, 2
判 例 法 理 ( 大 判 昭 和 10 年 3 月 12 日 民 集 14 巻 482 頁 )を 明 文 化 するものである 2 本 文 (2)は, 代 位 債 権 者 が 直 接 の 引 渡 しを 受 けた 物 を 債 務 者 に 返 還 する 債 務 を 負 うこと, 代 位 債 権 者 はその 返 還 債 務 ( 金 銭 債 務 )を 受 働 債 権 とする 相 殺 をすることができないこ と( 債 権 回 収 機 能 の 否 定 )をそれぞれ 示 すものである 判 例 ( 上 記 大 判 昭 和 10 年 3 月 12 日 等 )は, 本 文 (2)のような 規 定 のない 現 行 法 の 下 で, 債 権 回 収 機 能 は 妨 げられない としている しかし, 同 じ 機 能 を 果 たしている 強 制 執 行 制 度 ( 債 権 差 押 え)と 比 較 する と, 代 位 債 権 者 は, 被 保 全 債 権 の 存 在 が 債 務 名 義 によって 確 認 されず, 債 務 者 や 第 三 債 務 者 の 正 当 な 利 益 を 保 護 するための 手 続 も 履 践 されないままに, 責 任 財 産 の 保 全 という 制 度 趣 旨 を 超 えて 被 保 全 債 権 の 強 制 的 な 満 足 を 得 ており, 制 度 間 の 不 整 合 が 生 じている との 批 判 がされている 本 文 (2)は,このような 不 整 合 を 是 正 する 趣 旨 で, 新 たな 規 定 を 設 けることとするものである 4 代 位 債 権 者 の 善 管 注 意 義 務 債 権 者 は, 前 記 1の 代 位 行 使 をするときは, 善 良 な 管 理 者 の 注 意 をもって, これをしなければならないものとする 部 会 資 料 35 26 頁 代 位 債 権 者 が 善 管 注 意 義 務 を 負 うことを 示 すものであり, 判 例 法 理 ( 大 判 昭 和 15 年 3 月 15 日 民 集 19 巻 586 頁 )を 明 文 化 するものである なお, 代 位 債 権 者 と 債 務 者 との 間 の 関 係 についての 法 律 構 成 ( 事 務 管 理 や 法 定 委 任 など)については, 引 き 続 き 解 釈 に 委 ねることとなる 上 記 判 例 もこの 法 律 構 成 については 明 らかにしていない 5 債 権 者 代 位 権 の 行 使 に 必 要 な 費 用 債 権 者 は, 前 記 1の 代 位 行 使 をするために 必 要 な 費 用 を 支 出 したときは, 債 務 者 に 対 し,その 費 用 の 償 還 を 請 求 することができるものとする この 場 合 に おいて, 債 権 者 は,その 費 用 の 償 還 請 求 権 について, 共 益 費 用 に 関 する 一 般 の 先 取 特 権 を 有 するものとする 部 会 資 料 35 28 頁 債 権 者 代 位 権 の 行 使 に 必 要 な 費 用 を 支 出 した 代 位 債 権 者 が 費 用 償 還 請 求 権 を 取 得 するこ と,その 費 用 償 還 請 求 権 について 共 益 費 用 に 関 する 一 般 の 先 取 特 権 ( 民 法 第 306 条 第 1 号 )を 有 することをそれぞれ 示 すものである 債 権 者 代 位 権 が 行 使 される 場 合 における 費 用 負 担 についての 一 般 的 な 理 解 に 従 った 規 定 を 設 けることにより,ルールの 明 確 化 を 図 る ものである 費 用 償 還 請 求 権 の 共 益 性 については,とりわけ 債 権 回 収 機 能 が 否 定 される 場 合 には, 異 論 のないところであると 考 えられる 6 代 位 行 使 の 相 手 方 の 抗 弁 前 記 1の 代 位 行 使 の 相 手 方 は, 債 務 者 に 対 する 弁 済 その 他 の 抗 弁 をもって, 債 権 者 に 対 抗 することができるものとする 3
部 会 資 料 35 29 頁 代 位 行 使 の 相 手 方 ( 第 三 債 務 者 )が 債 務 者 に 対 して 有 する 抗 弁 を 代 位 債 権 者 に 対 しても 主 張 することができるとするものであり, 判 例 法 理 ( 大 判 昭 和 11 年 3 月 23 日 民 集 15 巻 551 頁 )を 明 文 化 するものである 債 権 者 代 位 権 に 基 づいて 行 使 される 被 代 位 権 利 が 債 務 者 の 第 三 債 務 者 に 対 する 権 利 であることによる 当 然 の 帰 結 でもある 7 債 務 者 の 処 分 権 限 債 権 者 が 前 記 1の 代 位 行 使 をした 場 合 であっても, 債 務 者 は,その 代 位 行 使 に 係 る 権 利 について, 自 ら 取 立 てその 他 の 処 分 をすることを 妨 げられないもの とする その 代 位 行 使 が 訴 えの 提 起 による 場 合 であっても, 同 様 とするものと する 部 会 資 料 35 38 頁 債 権 者 代 位 権 が 行 使 された 場 合 であっても, 被 代 位 権 利 についての 債 務 者 の 処 分 権 限 は 何 ら 制 限 されないとするものである 判 例 には, 代 位 債 権 者 が 債 権 者 代 位 権 の 行 使 に 着 手 し, 債 務 者 がその 通 知 を 受 けるか, 又 はその 権 利 行 使 を 了 知 したときは, 債 務 者 は 被 代 位 権 利 についての 処 分 権 限 を 失 い, 自 ら 訴 えの 提 起 をすることができないとするものがある ( 大 判 昭 和 14 年 5 月 16 日 民 集 18 巻 557 頁 ) これに 対 しては,もともと 債 権 者 代 位 権 は, 債 務 者 の 権 利 行 使 の 巧 拙 などには 干 渉 することができず, 債 務 者 が 自 ら 権 利 行 使 を しない 場 合 に 限 ってその 行 使 が 認 められるものであること 等 から, 債 務 者 の 処 分 権 限 を 奪 うのは 過 剰 であるとの 批 判 があるため, 判 例 と 異 なる 帰 結 を 明 文 化 するものである 8 訴 えによる 債 権 者 代 位 権 の 行 使 の 場 合 の 訴 訟 告 知 債 権 者 は, 訴 えによって 前 記 1の 代 位 行 使 をしたときは, 遅 滞 なく, 債 務 者 に 対 し, 訴 訟 告 知 をしなければならないものとする 部 会 資 料 35 36 頁,44 頁 債 権 者 代 位 訴 訟 を 提 起 した 代 位 債 権 者 は 債 務 者 に 対 する 訴 訟 告 知 をしなければならない とするものであり, 株 主 代 表 訴 訟 に 関 する 会 社 法 第 849 条 第 3 項 を 参 考 として, 合 理 的 な 規 律 を 補 うものである 債 権 者 代 位 訴 訟 における 代 位 債 権 者 の 地 位 は, 株 主 代 表 訴 訟 に おける 株 主 と 同 じく 法 定 訴 訟 担 当 と 解 されており,その 判 決 の 効 力 は 被 担 当 者 である 債 務 者 にも 及 ぶとされているにもかかわらず( 民 事 訴 訟 法 第 115 条 第 1 項 第 2 号 ), 現 在 は 債 務 者 に 対 する 訴 訟 告 知 を 要 する 旨 の 規 定 がないため,その 手 続 保 障 の 観 点 から 問 題 がある との 指 摘 がされている 9 責 任 財 産 の 保 全 を 目 的 としない 債 権 者 代 位 権 (1) 不 動 産 の 譲 受 人 は, 譲 渡 人 が 第 三 者 に 対 する 所 有 権 移 転 の 登 記 手 続 を 求 め る 権 利 を 行 使 しないことによって, 自 己 の 譲 渡 人 に 対 する 所 有 権 移 転 の 登 記 4
手 続 を 求 める 権 利 の 実 現 が 妨 げられているときは, 譲 渡 人 の 第 三 者 に 対 する 当 該 権 利 を 行 使 することができるものとする (2) 上 記 (1)の 代 位 行 使 のほか, 債 権 者 は, 債 務 者 に 属 する 権 利 が 行 使 されない ことによって, 自 己 の 債 務 者 に 対 する 権 利 の 実 現 が 妨 げられている 場 合 にお いて, 自 己 の 権 利 を 実 現 するために 他 に 適 当 な 方 法 がないときは,その 権 利 を 実 現 するため, 債 務 者 に 属 する 権 利 を 行 使 することができるものとする (3) 上 記 (1) 又 は(2)による 代 位 行 使 については,その 性 質 に 反 しない 限 り, 前 記 1(3) 及 び2から8までを 準 用 するものとする ( 注 ) 上 記 (1)については, 不 要 であるという 考 え 方 がある また, 上 記 (2)に ついては,その 要 件 を 債 権 者 代 位 権 の 行 使 により 債 務 者 が 利 益 を 享 受 し, その 利 益 によって 債 権 者 の 権 利 が 保 全 される 場 合 とすべきであるという 考 え 方 もある 部 会 資 料 35 12 頁 1 本 文 (1)は, 転 用 型 の 債 権 者 代 位 権 ( 責 任 財 産 の 保 全 を 目 的 としない 債 権 者 代 位 権 )の 代 表 例 として, 判 例 上 確 立 された 不 動 産 登 記 請 求 権 を 被 保 全 債 権 とする 不 動 産 登 記 請 求 権 の 代 位 行 使 ( 大 判 明 治 43 年 7 月 6 日 民 録 16 輯 537 頁 )を 明 文 化 するものである 転 用 型 の 債 権 者 代 位 権 の 一 般 的 な 要 件 に 関 する 本 文 (2)に 先 立 って,その 具 体 例 を 示 すこ とを 意 図 するものである 2 本 文 (2)は, 転 用 型 の 債 権 者 代 位 権 の 一 般 的 な 要 件 を 定 めるものである この 要 件 に 関 しては, その 権 利 の 行 使 により 債 務 者 が 利 益 を 享 受 し,その 利 益 によって 債 権 者 の 権 利 が 保 全 されるという 関 係 が 存 在 することを 要 する と 説 示 した 判 例 ( 最 判 昭 和 38 年 4 月 23 日 民 集 17 巻 3 号 356 頁 )があり,この 考 え 方 を 本 文 の( 注 )で 取 り 上 げてい る この 判 例 に 対 しては, 具 体 的 な 事 案 に 即 した 判 断 であって 必 ずしも 汎 用 性 のある 要 件 を 定 立 したものではないとの 指 摘 や, 捉 え 方 次 第 で 広 くもなり 狭 くもなり 得 る 不 明 確 な 要 件 であるとの 指 摘 がされている 3 本 文 (3)は, 転 用 型 の 債 権 者 代 位 権 に 関 して,その 性 質 に 反 しない 限 り 本 来 型 の 債 権 者 代 位 権 と 同 様 の 規 律 を 及 ぼすことを 示 すものである 前 記 1(3) 及 び2から8までを 包 括 的 に 準 用 しつつ, 性 質 に 反 するかどうかを 解 釈 に 委 ねることとしており, 例 えば, 前 記 1(3)イ( 差 押 禁 止 債 権 の 代 位 行 使 ),3(2)( 債 権 回 収 機 能 の 否 定 ),5 後 段 ( 共 益 費 用 に 関 する 一 般 の 先 取 特 権 )については, 解 釈 上 準 用 されないと 考 えられる 取 り 上 げなかった 論 点 部 会 資 料 35 第 1,2(1)イ 強 制 執 行 の 前 提 としての 登 記 申 請 権 の 代 位 行 使 の 場 合 の 例 外 [4 頁 ] 部 会 資 料 35 第 1,5(1)イ 代 位 債 権 者 自 身 に 対 して 有 する 抗 弁 [30 頁 ] 部 会 資 料 35 第 1,5(2) 第 三 債 務 者 による 供 託 ( 供 託 原 因 の 拡 張 ) [31 頁 ] 部 会 資 料 35 第 1,6(1) 代 位 権 行 使 の 場 合 の 通 知 の 要 否 [33 頁 ] 部 会 資 料 35 第 1,7 代 位 訴 訟 提 起 後 の 差 押 え [42 頁 ] 5
部 会 資 料 35 第 1,8 代 位 訴 訟 への 訴 訟 参 加 [44 頁 ] 第 2 詐 害 行 為 取 消 権 1 受 益 者 に 対 する 詐 害 行 為 取 消 権 の 要 件 (1) 無 資 力 の 債 務 者 が 債 権 者 を 害 する 行 為 をした 場 合 において, 当 該 行 為 が 債 権 者 を 害 することを 債 務 者 が 知 っていたときは, 債 権 者 は, 債 務 者 がした 当 該 行 為 の 取 消 しを 裁 判 所 に 請 求 することができるものとする 債 務 者 が 当 該 行 為 をしたことによって 無 資 力 となった 場 合 も, 同 様 とするものとする (2) 上 記 (1)の 請 求 においては, 債 務 者 及 び 受 益 者 を 被 告 とするものとする (3) 債 権 者 は, 上 記 (1)の 請 求 において, 上 記 (1)の 行 為 の 取 消 しとともに, 受 益 者 に 対 し, 当 該 行 為 によって 逸 出 した 財 産 の 債 務 者 への 返 還 を 請 求 するこ とができるものとする (4) 上 記 (1)の 請 求 は, 被 保 全 債 権 が 上 記 (1)の 行 為 の 前 に 生 じたものである 場 合 に 限 り,することができるものとする (5) 上 記 (1)の 請 求 は, 次 に 掲 げる 場 合 には,することができないものとする ア 受 益 者 が, 上 記 (1)の 行 為 の 当 時, 債 権 者 を 害 すべき 事 実 を 知 らなかった 場 合 イ 債 務 者 が, 上 記 (1)の 行 為 の 後, 無 資 力 でなくなった 場 合 ウ 上 記 (1)の 行 為 が 財 産 権 を 目 的 としないものである 場 合 エ 被 保 全 債 権 が 強 制 執 行 によって 実 現 することのできないものである 場 合 ( 注 ) 上 記 (4)については, 被 保 全 債 権 が 上 記 (1)の 行 為 の 前 の 原 因 に 基 づいて 生 じたものである 場 合 であっても, 詐 害 行 為 取 消 権 を 行 使 することがで きるとすべきであるという 考 え 方 がある 部 会 資 料 35 53 頁,56 頁,60 頁,62 頁,63 頁 1 本 文 (1) 前 段 は, 民 法 第 424 条 第 1 項 本 文 を 前 提 とした 上 で, 詐 害 行 為 取 消 権 の 要 件 として 債 務 者 の 無 資 力 を 書 き 加 えるものであり, 判 例 法 理 ( 大 判 昭 和 12 年 2 月 18 日 民 集 16 巻 120 頁 等 )を 明 文 化 するものである 詐 害 行 為 取 消 しの 対 象 を 法 律 行 為 ではなく 行 為 としているのは, 詐 害 行 為 取 消 権 の 対 象 は 厳 密 な 意 味 での 法 律 行 為 に 限 らず, 弁 済 や, 時 効 中 断 事 由 としての 債 務 の 承 認 ( 民 法 第 147 条 第 3 号 ), 法 定 追 認 の 効 果 を 生 ずる 行 為 ( 同 法 第 125 条 )などを 含 むと 解 されているからである 本 文 (1) 後 段 は, 債 務 者 が 詐 害 行 為 の 時 点 では 無 資 力 状 態 になくても,その 詐 害 行 為 に よって 無 資 力 状 態 に 陥 るという 場 合 には, 無 資 力 要 件 を 充 足 する 旨 の 規 定 を 追 加 するも のである 無 資 力 要 件 の 解 釈 に 関 する 一 般 的 な 理 解 を 明 文 化 するものである 2 本 文 (2)は, 詐 害 行 為 取 消 訴 訟 において 受 益 者 のみならず 債 務 者 をも 被 告 としなければ ならないとするものである 判 例 ( 大 連 判 明 治 44 年 3 月 24 日 民 録 17 輯 117 頁 ) は, 詐 害 行 為 取 消 しの 効 果 が 債 務 者 には 及 ばないことを 理 由 に, 債 務 者 を 被 告 とする 必 要 はないとしている しかし, 詐 害 行 為 取 消 しによって 逸 出 財 産 が 債 務 者 の 責 任 財 産 に 回 復 され, 強 制 執 行 の 対 象 となるにもかかわらず, 詐 害 行 為 取 消 しの 効 果 が 債 務 者 に 及 6
ばないとするのは, 整 合 的 でないとの 批 判 がされている この 批 判 を 踏 まえ, 詐 害 行 為 取 消 しの 効 果 を 債 務 者 にも 及 ぼすのであれば, 債 務 者 にも 詐 害 行 為 取 消 訴 訟 に 関 与 する 機 会 を 保 障 する 必 要 がある 本 文 (2)は, 以 上 の 観 点 から, 判 例 とは 異 なる 規 律 を 明 文 化 するものである 3 本 文 (3)は, 詐 害 行 為 取 消 訴 訟 の 性 格 について, 詐 害 行 為 の 取 消 しを 求 める 形 成 訴 訟 と しての 性 格 と, 逸 出 財 産 の 返 還 を 求 める 給 付 訴 訟 としての 性 格 とを 併 有 すると 捉 えるも のであり( 折 衷 説 ),この 限 度 において 判 例 法 理 ( 上 記 大 連 判 明 治 44 年 3 月 24 日 )を 明 文 化 するものである 4 本 文 (4)は, 被 保 全 債 権 が 詐 害 行 為 の 前 に 生 じたものであることを 要 件 とするものであ り, 判 例 法 理 ( 最 判 昭 和 33 年 2 月 21 日 民 集 12 巻 2 号 341 頁, 最 判 昭 和 46 年 9 月 21 日 民 集 25 巻 6 号 823 頁 )を 明 文 化 するものである なお, 本 文 (4)は, 被 保 全 債 権 に 係 る 遅 延 損 害 金 については 詐 害 行 為 の 後 に 生 じたものであっても 被 保 全 債 権 たり 得 ること( 最 判 平 成 8 年 2 月 8 日 集 民 178 号 215 頁 )を 否 定 するものではないが, さらに, 被 保 全 債 権 が 詐 害 行 為 の 前 の 原 因 に 基 づいて 生 じたものである 場 合 一 般 につい て, 詐 害 行 為 取 消 権 の 行 使 を 認 めるべきであるという 考 え 方 もある 5 本 文 (5)アは, 民 法 第 424 条 第 1 項 ただし 書 の 規 定 を 維 持 するものである 本 文 (5)イは, 債 務 者 が 資 力 を 回 復 した 場 合 には 詐 害 行 為 取 消 権 を 行 使 することができ ないとする 判 例 法 理 ( 上 記 大 判 昭 和 12 年 2 月 18 日 等 )を 明 文 化 するものである 本 文 (5)ウは, 民 法 第 424 条 第 2 項 の 規 定 を 維 持 するものである 本 文 (5)エは, 詐 害 行 為 取 消 権 を 行 使 することができない 場 合 に 関 して, 解 釈 上 異 論 が ないところを 明 文 化 するものである 2 相 当 の 対 価 を 得 てした 行 為 の 特 則 (1) 無 資 力 の 債 務 者 が,その 有 する 財 産 を 処 分 する 行 為 をした 場 合 において, 受 益 者 から 相 当 の 対 価 を 取 得 しているときは, 債 権 者 は, 次 に 掲 げる 要 件 の いずれにも 該 当 する 場 合 に 限 り,その 行 為 について 前 記 1の 取 消 しの 請 求 を することができるものとする ア 当 該 行 為 が, 不 動 産 の 金 銭 への 換 価 その 他 の 当 該 処 分 による 財 産 の 種 類 の 変 更 により, 債 務 者 において 隠 匿, 無 償 の 供 与 その 他 の 債 権 者 を 害 する 処 分 ( 以 下 隠 匿 等 の 処 分 という )をするおそれを 現 に 生 じさせるもの であること イ 債 務 者 が, 当 該 行 為 の 当 時, 対 価 として 取 得 した 金 銭 その 他 の 財 産 につ いて, 隠 匿 等 の 処 分 をする 意 思 を 有 していたこと ウ 受 益 者 が, 当 該 行 為 の 当 時, 債 務 者 が 隠 匿 等 の 処 分 をする 意 思 を 有 して いたことを 知 っていたこと (2) 上 記 (1)の 適 用 については, 受 益 者 が 債 務 者 の 親 族, 同 居 者, 取 締 役, 親 会 社 その 他 の 債 務 者 の 内 部 者 であったときは, 受 益 者 は, 当 該 行 為 の 当 時, 債 務 者 が 隠 匿 等 の 処 分 をする 意 思 を 有 していたことを 知 っていたものと 推 定 す るものとする 7
部 会 資 料 35 67 頁 1 本 文 (1)は, 相 当 価 格 処 分 行 為 に 対 する 詐 害 行 為 取 消 権 の 要 件 について, 破 産 法 第 16 1 条 第 1 項 と 同 様 の 規 定 を 設 けるものである 破 産 法 は, 経 済 的 危 機 に 直 面 した 債 務 者 と 取 引 をする 相 手 方 が 否 認 権 行 使 の 可 能 性 を 意 識 して 萎 縮 するおそれがあることなどを 考 慮 し, 相 当 価 格 処 分 行 為 に 対 する 否 認 権 の 対 象 範 囲 を 限 定 しつつ 明 確 化 している こ のように 取 引 の 相 手 方 を 萎 縮 させるおそれがある 点 では, 詐 害 行 為 取 消 権 も 同 様 である との 指 摘 がされている また, 現 状 では, 否 認 権 の 対 象 とはならない 行 為 が 詐 害 行 為 取 消 権 の 対 象 となるという 事 態 が 生 じ 得 るため, 平 時 における 債 権 者 が 詐 害 行 為 取 消 権 を 行 使 することができるのに, 破 産 手 続 開 始 後 における 破 産 管 財 人 は 否 認 権 を 行 使 するこ とができないという 結 果 となってしまうとの 問 題 も 指 摘 もされている 本 文 (1)は, 以 上 の 観 点 から, 破 産 法 と 同 様 の 規 定 を 設 けるものである 2 本 文 (2)は, 破 産 法 第 161 条 第 2 項 と 同 様 の 趣 旨 のものである ( 備 考 ) 同 時 交 換 的 行 為 について 債 務 者 が, 新 たな 借 入 れをするのと 同 時 に, 又 はそれに 先 立 ち,その 有 する 財 産 をもっ て 当 該 借 入 れの 相 手 方 に 対 して 担 保 を 供 与 する 行 為 (いわゆる 同 時 交 換 的 行 為 )について は, 本 文 (1)の 規 律 が 及 ぶという 理 解 を 前 提 として, 特 に 本 文 には 掲 げていない 同 時 交 換 的 行 為 は, 経 済 的 に 見 れば, 担 保 の 目 的 物 を 売 却 して 資 金 調 達 をしたのと 同 様 の 実 態 を 有 すると 考 えられることから, 相 当 価 格 処 分 行 為 と 同 様 の 要 件 の 下 で 詐 害 行 為 取 消 権 を 行 使 することができると 解 することが 可 能 であり, 破 産 法 第 161 条 第 1 項 についても, 同 様 の 解 釈 がされている 3 特 定 の 債 権 者 を 利 する 行 為 の 特 則 (1) 無 資 力 の 債 務 者 が 既 存 の 債 務 についてした 担 保 の 供 与 又 は 債 務 の 消 滅 に 関 する 行 為 について, 債 権 者 は, 次 に 掲 げる 要 件 のいずれにも 該 当 する 場 合 に 限 り, 前 記 1の 取 消 しの 請 求 をすることができるものとする ア 当 該 行 為 が, 債 務 者 が 支 払 不 能 であった 時 にされたものであること た だし, 当 該 行 為 の 後, 債 務 者 が 支 払 不 能 でなくなったときを 除 くものとす る イ 当 該 行 為 が, 債 務 者 と 受 益 者 とが 通 謀 して 他 の 債 権 者 を 害 する 意 図 をも って 行 われたものであること (2) 上 記 (1)の 行 為 が 債 務 者 の 義 務 に 属 せず, 又 はその 時 期 が 債 務 者 の 義 務 に 属 しないものである 場 合 において, 次 に 掲 げる 要 件 のいずれにも 該 当 するとき は, 債 権 者 は,その 行 為 について 前 記 1の 取 消 しの 請 求 をすることができる ものとする ア 当 該 行 為 が, 債 務 者 が 支 払 不 能 になる 前 30 日 以 内 にされたものである こと ただし, 当 該 行 為 の 後 30 日 以 内 に 債 務 者 が 支 払 不 能 になった 後, 債 務 者 が 支 払 不 能 でなくなったときを 除 くものとする 8
イ 当 該 行 為 が, 債 務 者 と 受 益 者 とが 通 謀 して 他 の 債 権 者 を 害 する 意 図 をも って 行 われたものであること (3) 上 記 (1) 又 は(2)の 適 用 については, 受 益 者 が 債 務 者 の 親 族, 同 居 者, 取 締 役, 親 会 社 その 他 の 債 務 者 の 内 部 者 であったときは,それぞれ 上 記 (1)イ 又 は (2)イの 事 実 を 推 定 するものとする 上 記 (1)の 行 為 が 債 務 者 の 義 務 に 属 せず, 又 はその 方 法 若 しくは 時 期 が 債 務 者 の 義 務 に 属 しないものであるときも, 同 様 とするものとする (4) 上 記 (1)の 適 用 については, 債 務 者 の 支 払 の 停 止 ( 上 記 (1)の 行 為 の 前 1 年 以 内 のものに 限 る )があった 後 は, 支 払 不 能 であったものと 推 定 するものと する 部 会 資 料 35 76 頁 1 本 文 (1)は, 偏 頗 行 為 に 対 する 詐 害 行 為 取 消 権 について,1 債 務 者 が 支 払 不 能 の 時 に 行 われたものであること,2 債 務 者 と 受 益 者 とが 通 謀 して 他 の 債 権 者 を 害 する 意 図 をもっ て 行 われたものであることを 要 件 とするものである 判 例 ( 最 判 昭 和 33 年 9 月 26 日 民 集 12 巻 13 号 3022 頁 )は, 債 務 者 と 受 益 者 とが 通 謀 して 他 の 債 権 者 を 害 する 意 思 をもって 行 われた 弁 済 に 限 り, 詐 害 行 為 取 消 権 の 対 象 になるとする 他 方, 破 産 法 第 162 条 第 1 項 第 1 号 は, 債 務 者 ( 破 産 者 )が 支 払 不 能 になった 後 に 行 われた 偏 頗 行 為 に 限 り, 否 認 権 の 対 象 になるとする 本 文 (1)は,この 判 例 法 理 の 要 件 と 破 産 法 の 要 件 と の 双 方 を 要 求 するものである 支 払 不 能 の 要 件 を 課 すことによって, 否 認 権 の 対 象 にな らない 偏 頗 行 為 が 詐 害 行 為 取 消 権 の 対 象 になるという 事 態 を 回 避 し, 通 謀 詐 害 意 図 の 要 件 を 課 すことによって, 真 に 取 り 消 されるべき 不 当 な 偏 頗 行 為 のみを 詐 害 行 為 取 消 権 の 対 象 にすることを 意 図 するものである なお, 受 益 者 の 主 観 的 要 件 ( 支 払 不 能 の 事 実 や 債 権 者 を 害 すべき 事 実 についての 悪 意 )は, 通 謀 詐 害 意 図 の 要 件 に 包 摂 されると 考 えられる 2 本 文 (2)は, 破 産 法 第 162 条 第 1 項 第 2 号 と 同 様 の 趣 旨 のものである 本 文 (1)と 同 様 に, 破 産 法 上 の 要 件 と 通 謀 詐 害 意 図 の 要 件 との 双 方 を 要 求 している 3 本 文 (3)は, 破 産 法 第 162 条 第 2 項 と 同 様 の 趣 旨 のものである なお, 本 文 (2)の 柱 書 きの 事 実 が 主 張 立 証 されると, 本 文 (3) 後 段 の 要 件 を 充 足 することになるため, 本 文 (2) イの 事 実 が 推 定 されることになる 4 本 文 (4)は, 破 産 法 第 162 条 第 3 項 と 同 様 の 趣 旨 のものである 4 過 大 な 代 物 弁 済 等 の 特 則 無 資 力 の 債 務 者 がした 債 務 の 消 滅 に 関 する 行 為 であって, 受 益 者 の 受 けた 給 付 の 価 額 が 当 該 行 為 によって 消 滅 した 債 務 の 額 より 過 大 であるものについて, 前 記 1の 要 件 ( 受 益 者 に 対 する 詐 害 行 為 取 消 権 の 要 件 )に 該 当 するときは, 債 権 者 は,その 消 滅 した 債 務 の 額 に 相 当 する 部 分 以 外 の 部 分 に 限 り, 前 記 1の 取 消 しの 請 求 をすることができるものとする 部 会 資 料 35 75 頁 9
破 産 法 第 160 条 第 2 項 と 同 様 の 趣 旨 のものである 債 務 の 消 滅 に 関 する 行 為 には 前 記 3の 規 律 が 及 ぶため, 過 大 な 代 物 弁 済 等 が 前 記 3の 要 件 に 該 当 するときは,その 代 物 弁 済 等 によって 消 滅 した 債 務 の 額 に 相 当 する 部 分 か,それ 以 外 の 部 分 かを 問 わず,その 代 物 弁 済 等 の 全 部 の 取 消 しを 請 求 することができる このことを 前 提 に, 本 文 は, 過 大 な 代 物 弁 済 等 が 前 記 3の 要 件 に 該 当 しない 場 合 であっても, 前 記 1の 要 件 に 該 当 するときは,その 代 物 弁 済 等 によって 消 滅 した 債 務 の 額 に 相 当 する 部 分 以 外 の 部 分 に 限 り, 前 記 1の 取 消 し の 請 求 をすることができるとするものである 5 転 得 者 に 対 する 詐 害 行 為 取 消 権 の 要 件 (1) 債 権 者 は, 受 益 者 に 対 する 詐 害 行 為 取 消 権 を 行 使 することができる 場 合 に おいて,その 詐 害 行 為 によって 逸 出 した 財 産 を 転 得 した 者 があるときは, 次 のア 又 はイに 掲 げる 区 分 に 応 じ,それぞれ 当 該 ア 又 はイに 定 める 場 合 に 限 り, 転 得 者 に 対 する 詐 害 行 為 取 消 権 の 行 使 として, 債 務 者 がした 受 益 者 との 間 の 行 為 の 取 消 しを 裁 判 所 に 請 求 することができるものとする ア 当 該 転 得 者 が 受 益 者 から 転 得 した 者 である 場 合 当 該 転 得 者 が,その 転 得 の 当 時, 債 務 者 がした 受 益 者 との 間 の 行 為 につ いて 債 権 者 を 害 すべき 事 実 を 知 っていた 場 合 イ 当 該 転 得 者 が 他 の 転 得 者 から 転 得 した 者 である 場 合 当 該 転 得 者 のほか, 当 該 転 得 者 の 前 に 転 得 した 全 ての 転 得 者 が,それぞ れの 転 得 の 当 時, 債 務 者 がした 受 益 者 との 間 の 行 為 について 債 権 者 を 害 す べき 事 実 を 知 っていた 場 合 (2) 上 記 (1)の 請 求 においては, 債 務 者 及 び 転 得 者 を 被 告 とするものとする (3) 債 権 者 は, 上 記 (1)の 請 求 において, 上 記 (1)の 行 為 の 取 消 しとともに, 転 得 者 に 対 し, 当 該 行 為 によって 逸 出 した 財 産 の 債 務 者 への 返 還 を 請 求 するこ とができるものとする (4) 上 記 (1)の 適 用 については, 転 得 者 が 債 務 者 の 親 族, 同 居 者, 取 締 役, 親 会 社 その 他 の 債 務 者 の 内 部 者 であったときは, 当 該 転 得 者 は,その 転 得 の 当 時, 債 務 者 がした 受 益 者 との 間 の 行 為 について 債 権 者 を 害 すべき 事 実 を 知 ってい たものと 推 定 するものとする 部 会 資 料 35 86 頁 1 本 文 (1)は, 破 産 法 第 170 条 第 1 項 第 1 号 を 参 考 としつつも, 同 号 が 前 者 に 対 する 否 認 の 原 因 についての 転 得 者 の 悪 意 を 要 求 しているため, 前 者 の 悪 意 についての 転 得 者 の 悪 意 (いわゆる 二 重 の 悪 意 )を 要 求 する 結 果 となっていることへの 批 判 を 踏 まえ, そのような 二 重 の 悪 意 を 要 求 せずに, 転 得 者 及 び 前 者 がいずれも 債 権 者 を 害 すべき 事 実 について 悪 意 であれば 足 りるとするものである 判 例 ( 最 判 昭 和 49 年 12 月 12 日 集 民 113 号 523 頁 )は, 民 法 第 424 条 第 1 項 ただし 書 の 債 権 者 を 害 すべき 事 実 について, 受 益 者 が 善 意 で, 転 得 者 が 悪 意 である 場 合 にも, 転 得 者 に 対 する 詐 害 行 10
為 取 消 権 の 行 使 を 認 めているが, 破 産 法 は, 取 引 の 安 全 を 図 る 観 点 から, 一 旦 善 意 者 を 経 由 した 以 上,その 後 に 現 れた 転 得 者 に 対 しては,たとえその 転 得 者 が 悪 意 であったと しても, 否 認 権 を 行 使 することができないとしている 2 本 文 (2)は, 前 記 1(2)と 同 様 の 趣 旨 のものである 3 本 文 (3)は, 前 記 1(3)と 同 様 の 趣 旨 のものである 4 本 文 (4)は, 破 産 法 第 170 条 第 1 項 第 2 号 と 同 様 の 趣 旨 のものである 6 詐 害 行 為 取 消 しの 効 果 詐 害 行 為 取 消 しの 訴 えに 係 る 請 求 を 認 容 する 確 定 判 決 は, 債 務 者 の 全 ての 債 権 者 に 対 してその 効 力 を 有 するものとする 詐 害 行 為 取 消 訴 訟 の 判 決 の 形 成 力 が, 債 務 者 の 全 ての 債 権 者 ( 詐 害 行 為 時 や 判 決 確 定 時 の 後 に 現 れた 債 権 者 を 含 む )に 及 ぶことを 示 すものであり, 民 法 第 425 条 の 解 釈 の 問 題 として 議 論 されてきた 点 に 関 して,ルールの 明 確 化 を 図 るものである 7 詐 害 行 為 取 消 しの 範 囲 債 権 者 は, 詐 害 行 為 取 消 権 を 行 使 する 場 合 ( 前 記 4の 場 合 を 除 く )において, その 詐 害 行 為 の 全 部 の 取 消 しを 請 求 することができるものとする この 場 合 に おいて,その 詐 害 行 為 によって 逸 出 した 財 産 又 は 消 滅 した 権 利 の 価 額 が 被 保 全 債 権 の 額 を 超 えるときは, 債 権 者 は,その 詐 害 行 為 以 外 の 債 務 者 の 行 為 の 取 消 しを 請 求 することができないものとする 部 会 資 料 35 97 頁 詐 害 行 為 によって 逸 出 した 財 産 又 は 消 滅 した 権 利 等 の 価 額 が 被 保 全 債 権 の 額 を 超 える 場 合 であっても,その 詐 害 行 為 の 全 部 の 取 消 しを 請 求 することができるとする 一 方,その 場 合 には 他 の 詐 害 行 為 の 取 消 しを 請 求 することができない 旨 を 定 めるものであり, 前 記 第 1 の2( 代 位 行 使 の 範 囲 )と 類 似 の 発 想 に 立 つものである 判 例 ( 大 判 大 正 9 年 12 月 24 日 民 録 26 輯 2024 頁 )は, 被 保 全 債 権 の 額 が 詐 害 行 為 の 目 的 である 財 産 の 価 額 に 満 た ず,かつ,その 財 産 が 可 分 であるときは, 被 保 全 債 権 の 額 の 範 囲 でのみ 詐 害 行 為 を 取 り 消 すことができるとしているが, 前 記 第 1の2( 代 位 行 使 の 範 囲 )を 踏 まえ, 詐 害 行 為 取 消 しの 範 囲 を 拡 げる 方 向 で, 判 例 法 理 とは 異 なる 規 律 を 明 文 化 するものである 8 逸 出 財 産 の 返 還 の 方 法 (1) 債 権 者 は, 前 記 1(3) 又 は5(3)により 逸 出 した 財 産 の 現 物 の 返 還 を 請 求 す る 場 合 には, 受 益 者 又 は 転 得 者 に 対 し, 次 のアからエまでに 掲 げる 区 分 に 応 じ,それぞれ 当 該 アからエまでに 定 める 方 法 によって 行 うことを 求 めるもの とする ア 詐 害 行 為 による 財 産 の 逸 出 について 登 記 ( 登 録 を 含 む )がされている 場 11
合 ( 後 記 イの 場 合 を 除 く ) 当 該 登 記 の 抹 消 登 記 手 続 又 は 債 務 者 を 登 記 権 利 者 とする 移 転 登 記 手 続 を する 方 法 イ 詐 害 行 為 によって 逸 出 した 財 産 が 債 権 である 場 合 (ア) 当 該 債 権 の 逸 出 について 債 権 譲 渡 通 知 がされているときは, 当 該 債 権 の 債 務 者 に 対 して 当 該 債 権 が 受 益 者 又 は 転 得 者 から 債 務 者 に 移 転 した 旨 の 通 知 をする 方 法 (イ) 当 該 債 権 の 逸 出 について 債 権 譲 渡 登 記 がされているときは, 債 権 譲 渡 登 記 の 抹 消 登 記 手 続 又 は 債 務 者 を 譲 受 人 とする 債 権 譲 渡 登 記 手 続 をする 方 法 ただし, 上 記 (ア)の 債 権 譲 渡 通 知 の 方 法 によって 行 うことを 求 める こともできるものとする ウ 詐 害 行 為 によって 逸 出 した 財 産 が 金 銭 その 他 の 動 産 である 場 合 当 該 金 銭 その 他 の 動 産 を 債 務 者 に 対 して 引 き 渡 す 方 法 この 場 合 におい て, 債 権 者 は, 当 該 金 銭 その 他 の 動 産 を 自 己 に 対 して 引 き 渡 すことを 求 め ることができないものとする エ 上 記 アからウまでの 場 合 以 外 の 場 合 詐 害 行 為 によって 逸 出 した 財 産 の 性 質 に 従 い, 当 該 財 産 の 債 務 者 への 回 復 に 必 要 な 方 法 (2) 上 記 (1)の 現 物 の 返 還 が 困 難 であるときは, 債 権 者 は, 受 益 者 又 は 転 得 者 に 対 し, 価 額 の 償 還 を 請 求 することができるものとする この 場 合 において, 債 権 者 は,その 償 還 金 を 自 己 に 対 して 支 払 うことを 求 めることができないも のとする 部 会 資 料 35 91 頁,94 頁,99 頁,101 頁 1 本 文 (1)アは, 詐 害 行 為 による 財 産 の 逸 出 について 登 記 ( 登 録 )がされている 場 合 に 関 する 現 物 返 還 の 方 法 について 定 めるものであり, 判 例 法 理 ( 最 判 昭 和 39 年 7 月 10 日 民 集 18 巻 6 号 1078 頁, 最 判 昭 和 40 年 9 月 17 日 集 民 80 巻 361 頁 )を 明 文 化 するものである 本 文 (1)イは, 詐 害 行 為 による 債 権 の 逸 出 について 債 権 譲 渡 通 知 がされている 場 合 と 債 権 譲 渡 登 記 がされている 場 合 とに 分 けて, 債 権 の 現 物 返 還 の 方 法 について 定 めるもので ある 本 文 (1)ウは, 詐 害 行 為 によって 逸 出 した 財 産 が 金 銭 その 他 の 動 産 である 場 合 には, 債 権 者 は,それを 債 務 者 に 対 して 引 き 渡 すことを 求 めることができる 一 方, 自 己 に 対 する 直 接 の 引 渡 しを 求 めることはできない 旨 を 定 めるものである 判 例 ( 大 判 大 正 10 年 6 月 18 日 民 録 27 輯 1168 頁 )は, 取 消 債 権 者 による 直 接 の 引 渡 請 求 を 認 めており, その 結 果, 取 消 債 権 者 は, 受 益 者 から 直 接 の 支 払 を 受 けた 金 銭 の 債 務 者 への 返 還 債 務 を 受 働 債 権 とする 相 殺 によって, 自 己 の 債 権 の 回 収 を 図 ることができるとされている(い わゆる 債 権 回 収 機 能 ) しかし, 責 任 財 産 の 保 全 という 詐 害 行 為 取 消 権 の 制 度 趣 旨 を 超 え て 被 保 全 債 権 の 強 制 的 な 満 足 を 得 てしまうこと 等 に 対 しては 批 判 があり( 第 1,3(2)の 12
概 要 も 参 照 ),この 立 場 からは, 取 消 債 権 者 は 債 務 者 の 引 渡 請 求 権 の 差 押 えによって 債 権 回 収 を 図 るべきであるとの 指 摘 がある このような 考 え 方 によれば, 回 復 される 受 益 者 の 債 権 ( 後 記 10 参 照 )との 関 係 でも 衡 平 を 図 ることが 可 能 となる また,とりわけ 詐 害 行 為 取 消 訴 訟 において 債 務 者 を 被 告 とする 場 合 ( 前 記 1(2),5(2) 参 照 )には, 被 保 全 債 権 の 給 付 訴 訟 を 併 合 提 起 する 等 の 方 法 によって, 通 常 は 詐 害 行 為 取 消 訴 訟 の 判 決 確 定 時 までに 被 保 全 債 権 に 係 る 何 らかの 債 務 名 義 を 取 得 していることが 想 定 されるから, 取 消 債 権 者 に 対 して 債 務 者 の 引 渡 請 求 権 の 差 押 えを 求 めることは,それほど 過 重 な 負 担 ではないとも 考 えられる 本 文 (1)ウは, 以 上 の 観 点 から, 取 消 債 権 者 による 直 接 の 引 渡 請 求 を 否 定 するものである 本 文 (1)エは, 同 アからウまでに 該 当 しない 場 合 の 現 物 返 還 の 方 法 に 関 する 受 皿 的 な 規 定 を 設 けるものである 2 本 文 (2)は, 価 額 償 還 請 求 の 要 件 について 定 めるものである 判 例 ( 大 判 昭 和 7 年 9 月 15 日 民 集 11 巻 1841 頁 等 )は, 原 則 として 現 物 返 還 を 命 じ, 現 物 返 還 が 不 可 能 又 は 困 難 である 場 合 には 例 外 的 に 価 額 償 還 を 認 めているとされている 本 文 (2)は,この 判 例 法 理 を 明 文 化 するものである 価 額 償 還 という 文 言 は, 破 産 法 第 169 条 を 参 照 したものである また, 取 消 債 権 者 による 直 接 の 支 払 請 求 を 否 定 しているのは, 本 文 (1) ウと 同 じ 理 由 による 9 詐 害 行 為 取 消 権 の 行 使 に 必 要 な 費 用 (1) 債 権 者 は, 詐 害 行 為 取 消 権 を 行 使 するために 必 要 な 費 用 を 支 出 したときは, 債 務 者 に 対 し,その 費 用 の 償 還 を 請 求 することができるものとする この 場 合 において, 債 権 者 は,その 費 用 の 償 還 請 求 権 について, 共 益 費 用 に 関 する 一 般 の 先 取 特 権 を 有 するものとする (2) 上 記 (1)の 一 般 の 先 取 特 権 は, 後 記 11(2)の 特 別 の 先 取 特 権 に 優 先 するも のとする 部 会 資 料 35 103 頁 1 本 文 (1)は, 詐 害 行 為 取 消 権 の 行 使 に 必 要 な 費 用 を 支 出 した 取 消 債 権 者 が 費 用 償 還 請 求 権 を 取 得 すること,その 費 用 償 還 請 求 権 について 共 益 費 用 に 関 する 一 般 の 先 取 特 権 ( 民 法 第 306 条 第 1 号 )を 有 することをそれぞれ 示 すものである 詐 害 行 為 取 消 権 が 行 使 される 場 合 における 費 用 負 担 についての 一 般 的 な 理 解 に 従 った 規 定 を 設 けることにより, ルールの 明 確 化 を 図 るものである 費 用 償 還 請 求 権 の 共 益 性 については,とりわけ 債 権 回 収 機 能 が 否 定 される 場 合 には, 異 論 のないところであると 考 えられる 2 本 文 (2)は, 取 消 債 権 者 の 一 般 先 取 特 権 ( 本 文 (1))と 受 益 者 の 特 別 先 取 特 権 ( 後 記 1 1(2))との 優 劣 を 示 すものである 取 消 債 権 者 が 詐 害 行 為 取 消 権 の 行 使 のために 必 要 な 費 用 を 支 出 した 場 合 にそれを 最 優 先 で 回 収 することができないのでは 詐 害 行 為 取 消 権 を 行 使 するためのインセンティブが 確 保 されないことや, 悪 意 の 受 益 者 よりも 取 消 債 権 者 を 保 護 する 必 要 性 が 高 いこと 等 を 根 拠 に, 取 消 債 権 者 の 一 般 先 取 特 権 が 優 先 するものと している 13
10 受 益 者 の 債 権 の 回 復 債 務 者 がした 債 務 の 消 滅 に 関 する 行 為 が 取 り 消 された 場 合 において, 受 益 者 が 債 務 者 から 受 けた 給 付 を 返 還 し, 又 はその 価 額 を 償 還 したときは, 受 益 者 の 債 務 者 に 対 する 債 権 は,これによって 原 状 に 復 するものとする 部 会 資 料 35 105 頁 受 益 者 の 債 権 の 回 復 について 定 めるものであり, 破 産 法 第 169 条 と 同 様 の 趣 旨 のもの である 判 例 ( 大 判 昭 和 16 年 2 月 10 日 民 集 20 巻 79 頁 )も, 債 務 者 の 受 益 者 に 対 す る 弁 済 又 は 代 物 弁 済 が 取 り 消 されたときは, 受 益 者 の 債 務 者 に 対 する 債 権 が 復 活 するとし ている なお, 受 益 者 が 給 付 の 返 還 又 はその 価 額 の 償 還 をする 前 に,その 返 還 又 は 償 還 の 債 務 に 係 る 権 利 が 差 し 押 さえられた 場 合 であっても, 受 益 者 は,その 返 還 又 は 償 還 をする こと( 具 体 的 には 執 行 供 託 をすること)を 停 止 条 件 として 回 復 する 債 権 を 被 保 全 債 権 とし て, 上 記 差 押 えに 係 る 権 利 ( 自 己 を 債 務 者 とする 権 利 )に 対 する 仮 差 押 えをし( 民 事 保 全 法 第 20 条 第 2 項 参 照 ),それによって 上 記 差 押 えに 係 る 執 行 手 続 において 配 当 等 を 受 ける べき 債 権 者 の 地 位 を 確 保 することができる( 民 事 執 行 法 第 165 条 参 照 ) 11 受 益 者 が 現 物 の 返 還 をすべき 場 合 における 受 益 者 の 反 対 給 付 (1) 債 務 者 がした 財 産 の 処 分 に 関 する 行 為 が 取 り 消 された 場 合 において, 受 益 者 が 債 務 者 から 取 得 した 財 産 ( 金 銭 を 除 く )を 返 還 したときは, 受 益 者 は, 債 務 者 に 対 し, 当 該 財 産 を 取 得 するためにした 反 対 給 付 の 価 額 の 償 還 を 請 求 することができるものとする (2) 上 記 (1)の 場 合 において, 受 益 者 は, 債 務 者 に 対 する 反 対 給 付 の 価 額 の 償 還 請 求 権 について, 債 務 者 に 返 還 した 財 産 を 目 的 とする 特 別 の 先 取 特 権 を 有 す るものとする ただし, 債 務 者 が, 当 該 財 産 を 受 益 者 に 処 分 した 当 時,その 反 対 給 付 について 隠 匿 等 の 処 分 ( 前 記 2(1)ア 参 照 )をする 意 思 を 有 しており, かつ, 受 益 者 が,その 当 時, 債 務 者 が 隠 匿 等 の 処 分 をする 意 思 を 有 していた ことを 知 っていたときは, 受 益 者 は,その 特 別 の 先 取 特 権 を 有 しないものと する (3) 上 記 (2)の 適 用 については, 受 益 者 が 債 務 者 の 親 族, 同 居 者, 取 締 役, 親 会 社 その 他 の 債 務 者 の 内 部 者 であったときは, 受 益 者 は, 当 該 行 為 の 当 時, 債 務 者 が 隠 匿 等 の 処 分 をする 意 思 を 有 していたことを 知 っていたものと 推 定 す るものとする 部 会 資 料 35 106 頁 1 本 文 (1)は, 判 例 法 理 ( 前 掲 大 連 判 明 治 44 年 3 月 24 日 )と 異 なり 詐 害 行 為 取 消 しの 効 果 が 債 務 者 にも 及 ぶこと( 前 記 1(2) 参 照 )を 前 提 に, 受 益 者 が 現 物 返 還 をした 場 合 に は 直 ちに 反 対 給 付 の 価 額 の 償 還 請 求 をすることができる 旨 を 定 めるものである 現 在 の 判 例 法 理 の 下 では, 受 益 者 が 現 物 返 還 をした 場 合 であっても,その 財 産 によって 取 消 債 14
権 者 を 含 む 債 権 者 らが 債 権 の 満 足 を 得 たときに 初 めて, 受 益 者 は 債 務 者 に 対 する 不 当 利 得 返 還 請 求 権 を 行 使 することができるにすぎないとされており,これを 合 理 的 な 規 律 に 改 めるものである 価 額 の 償 還 請 求 のみを 認 めているのは, 反 対 給 付 の 現 物 の 返 還 請 求 を 認 めると, 受 益 者 の 反 対 給 付 の 返 還 請 求 権 が 取 消 債 権 者 の 費 用 償 還 請 求 権 に 優 先 する 結 果 となり, 前 記 9(2)の 趣 旨 に 反 することになるからである 受 益 者 にとっては, 反 対 給 付 の 現 物 の 返 還 を 請 求 する 利 益 を 奪 われる 結 果 となるが, 受 益 者 はもともと 反 対 給 付 の 現 物 を 債 務 者 に 譲 渡 したのであって, 詐 害 行 為 取 消 権 の 行 使 がなければ 当 該 現 物 の 返 還 を 請 求 することができなかったのであるから, 受 益 者 の 利 益 を 重 視 する 必 要 はないと も 考 えられる 2 本 文 (2)は, 破 産 法 第 168 条 第 2 項 と 同 様 の 趣 旨 により, 反 対 給 付 の 価 額 の 償 還 請 求 権 について 優 先 権 を 認 めるものである なお, 本 文 (2)により 受 益 者 が 不 動 産 を 目 的 とす る 特 別 の 先 取 特 権 を 有 する 場 合 については, 当 該 先 取 特 権 に 基 づき 受 益 者 が 配 当 等 を 受 けるべき 債 権 者 の 地 位 を 確 保 するためには, 受 益 者 の 債 務 者 に 対 する 当 該 先 取 特 権 の 登 記 請 求 権 を 認 める 必 要 があると 考 えられるから( 民 事 執 行 法 第 87 条 第 1 項 第 4 号 参 照 民 事 保 全 法 第 53 条, 第 23 条 第 3 項 も 参 照 ),その 規 定 の 要 否 については 引 き 続 き 検 討 をする 必 要 がある 3 本 文 (3)は, 破 産 法 第 168 条 第 3 項 と 同 様 の 趣 旨 のものである 12 受 益 者 が 金 銭 の 返 還 又 は 価 額 償 還 をすべき 場 合 における 受 益 者 の 反 対 給 付 (1) 債 務 者 がした 財 産 の 処 分 に 関 する 行 為 が 取 り 消 された 場 合 において, 受 益 者 が 債 務 者 から 取 得 した 財 産 である 金 銭 を 返 還 し, 又 は 債 務 者 から 取 得 した 財 産 の 価 額 を 償 還 すべきときは, 前 記 8( 逸 出 財 産 の 返 還 の 方 法 )にかかわ らず, 債 権 者 は, 受 益 者 に 対 し, 当 該 金 銭 の 額 又 は 当 該 財 産 の 価 額 から, 当 該 金 銭 又 は 当 該 財 産 を 取 得 するために 受 益 者 がした 反 対 給 付 の 価 額 を 控 除 し た 額 の 返 還 又 は 償 還 のみを 請 求 することができるものとする ただし, 債 務 者 が, 当 該 財 産 を 受 益 者 に 処 分 した 当 時,その 反 対 給 付 について 隠 匿 等 の 処 分 ( 前 記 2(1)ア 参 照 )をする 意 思 を 有 しており,かつ, 受 益 者 が,その 当 時, 債 務 者 が 隠 匿 等 の 処 分 をする 意 思 を 有 していたことを 知 っていたときは, 債 権 者 は, 受 益 者 に 対 し, 当 該 金 銭 の 額 又 は 当 該 財 産 の 価 額 の 全 額 を 請 求 する ことができるものとする (2) 上 記 (1)の 適 用 については, 受 益 者 が 債 務 者 の 親 族, 同 居 者, 取 締 役, 親 会 社 その 他 の 債 務 者 の 内 部 者 であったときは, 受 益 者 は, 当 該 行 為 の 当 時, 債 務 者 が 隠 匿 等 の 処 分 をする 意 思 を 有 していたことを 知 っていたものと 推 定 す るものとする 部 会 資 料 35 106 頁 1 本 文 (1)は, 受 益 者 が 金 銭 をもって 返 還 をする 場 合 における 反 対 給 付 の 取 扱 いについて, 現 物 返 還 の 場 合 と 異 なり, 取 消 債 権 者 の 側 に 差 額 の 返 還 又 は 償 還 の 請 求 のみを 認 める 旨 を 定 めるものである 取 消 債 権 者 の 費 用 償 還 請 求 権 が 受 益 者 の 反 対 給 付 の 返 還 請 求 権 に 15
劣 後 する 結 果 となるが, 実 際 上, 受 益 者 が 返 還 すべき 差 額 によって 取 消 債 権 者 が 費 用 償 還 請 求 権 の 満 足 すら 得 られない 事 態 はほとんど 生 じない(そのような 事 態 が 生 じ 得 る 場 合 にはそもそも 詐 害 行 為 取 消 権 の 行 使 はされないことがほとんどである)との 指 摘 があ ることを 踏 まえ, 受 益 者 の 反 対 給 付 の 取 扱 いを 可 能 な 限 り 簡 易 に 処 理 することを 優 先 さ せたものである 本 文 (1)ただし 書 は, 前 記 11(2)ただし 書 と 同 様 の 趣 旨 のものである 2 本 文 (2)は, 前 記 11(3)と 同 様 の 趣 旨 のものである 13 転 得 者 が 現 物 の 返 還 をすべき 場 合 における 転 得 者 の 反 対 給 付 等 債 務 者 がした 受 益 者 との 間 の 行 為 が 転 得 者 に 対 する 詐 害 行 為 取 消 権 の 行 使 に よって 取 り 消 された 場 合 において, 転 得 者 が 前 者 から 取 得 した 財 産 を 債 務 者 に 返 還 したときは, 転 得 者 は, 受 益 者 が 詐 害 行 為 取 消 権 を 行 使 されたとすれば 債 務 者 に 対 して 行 使 することのできた 前 記 10 又 は11の 権 利 を, 転 得 者 の 前 者 に 対 する 反 対 給 付 の 価 額 又 は 転 得 者 が 前 者 に 対 して 有 していた 債 権 の 価 額 の 限 度 で, 行 使 することができるものとする 部 会 資 料 35 109 頁 転 得 者 が 現 物 返 還 をした 場 合 における 転 得 者 の 前 者 に 対 する 反 対 給 付 又 は 転 得 者 が 前 者 に 対 して 有 していた 債 権 の 取 扱 いについて 定 めるものである 転 得 者 に 対 して 行 使 された 詐 害 行 為 取 消 しの 効 果 は 転 得 者 の 前 者 には 及 ばないため, 転 得 者 が 現 物 返 還 をした 場 合 で あっても, 前 者 に 対 する 反 対 給 付 の 返 還 請 求 や 前 者 に 対 して 有 していた 債 権 の 復 活 は 認 め られず, 現 物 返 還 がされた 財 産 によって 取 消 債 権 者 を 含 む 債 権 者 らが 債 務 者 に 対 する 債 権 の 満 足 を 得 たときに 初 めて, 転 得 者 は 債 務 者 に 対 する 不 当 利 得 返 還 請 求 権 を 行 使 すること ができるにすぎない これに 対 して, 本 文 (1)は, 前 記 10から12までの 受 益 者 の 反 対 給 付 及 び 債 権 の 取 扱 いを 参 考 として, 転 得 者 の 反 対 給 付 及 び 債 権 についても 一 定 の 保 護 を 図 ることを 意 図 するものである ( 備 考 ) 転 得 者 の 前 者 に 対 する 追 及 の 可 否 について 本 文 のように 転 得 者 が 受 益 者 の 行 使 することのできた 権 利 を 行 使 するという 方 法 を 採 る 場 合 には, 転 得 者 の 前 者 に 対 する 反 対 給 付 又 は 債 権 の 価 額 が, 受 益 者 の 債 務 者 に 対 する 反 対 給 付 又 は 債 権 の 価 額 より 大 きいとき,すなわち, 転 得 者 が 受 益 者 の 行 使 することのでき た 権 利 を 行 使 するだけでは, 転 得 者 の 前 者 に 対 する 反 対 給 付 又 は 債 権 の 価 額 に 満 たないと きの 救 済 方 法 が 問 題 となる これについては, 例 えば, 前 者 に 詐 害 行 為 取 消 しの 原 因 があ る 場 合 には, 転 得 者 は 前 者 に 対 して 不 足 分 の 支 払 を 求 めることができるとする 考 え 方 ( 一 種 の 担 保 責 任 の 追 及 という 構 成 )などがあり 得 る もっとも, 転 得 者 から 追 及 を 受 けた 前 者 が 更 にその 前 者 に 対 して 追 及 をすることができるか,できるとして 直 接 の 前 者 ではなく 前 者 の 前 者 に 対 して 追 及 をすることができるか,できるとして 直 接 の 前 者 とその 前 者 に 対 して 同 時 に 追 及 をすることができるか,さらに, 転 得 者 の 後 者 が 存 在 する 場 合 (その 後 者 にも 詐 害 行 為 取 消 しの 原 因 がある 場 合 )にはその 後 者 に 対 しても 追 及 をすることができる 16
かなど, 多 くの 問 題 があるため,これについては 引 き 続 き 解 釈 に 委 ねることとしている 14 転 得 者 が 価 額 償 還 をすべき 場 合 における 転 得 者 の 反 対 給 付 等 債 務 者 がした 受 益 者 との 間 の 行 為 が 転 得 者 に 対 する 詐 害 行 為 取 消 権 の 行 使 に よって 取 り 消 された 場 合 において, 転 得 者 が 前 者 から 取 得 した 財 産 の 価 額 を 債 務 者 に 償 還 すべきときは, 前 記 8( 逸 出 財 産 の 返 還 の 方 法 )にかかわらず, 債 権 者 は, 転 得 者 に 対 し, 当 該 財 産 の 価 額 から, 受 益 者 が 詐 害 行 為 取 消 権 を 行 使 されたとすれば 前 記 10により 債 務 者 に 対 して 行 使 することのできた 権 利 又 は 前 記 12により 控 除 された 反 対 給 付 の 価 額 (ただし, 転 得 者 の 前 者 に 対 する 反 対 給 付 の 価 額 又 は 転 得 者 が 前 者 に 対 して 有 していた 債 権 の 価 額 を 限 度 とする ) を 控 除 した 額 の 償 還 のみを 請 求 することができるものとする 部 会 資 料 35 109 頁 転 得 者 が 価 額 償 還 をする 場 合 における 転 得 者 の 前 者 に 対 する 反 対 給 付 及 び 転 得 者 が 前 者 に 対 して 有 していた 債 権 の 取 扱 いについて 定 めるものである 現 物 返 還 の 場 合 とは 異 なり, 取 消 債 権 者 の 側 に 差 額 の 償 還 請 求 のみを 認 めるという 方 法 を 採 っているのは, 前 記 12と 同 様 に, 転 得 者 の 反 対 給 付 及 び 債 権 の 取 扱 いの 問 題 を 可 能 な 限 り 簡 易 に 処 理 することを 優 先 させるものである 15 詐 害 行 為 取 消 権 の 行 使 期 間 詐 害 行 為 取 消 しの 訴 えは, 債 務 者 が 債 権 者 を 害 することを 知 って 詐 害 行 為 を した 事 実 を 債 権 者 が 知 った 時 から2 年 を 経 過 したときは, 提 起 することができ ないものとする 詐 害 行 為 の 時 から10 年 を 経 過 したときも, 同 様 とするもの とする 部 会 資 料 35 115 頁 民 法 第 426 条 前 段 は, 取 消 しの 原 因 を 債 権 者 が 知 った 時 から2 年 の 消 滅 時 効 を 定 め ているが,これについて, 判 例 ( 最 判 昭 和 47 年 4 月 13 日 判 時 669 号 63 頁 )は, 債 務 者 が 債 権 者 を 害 することを 知 って 法 律 行 為 をした 事 実 を 債 権 者 が 知 った 時 から 起 算 さ れるのであって, 詐 害 行 為 の 客 観 的 事 実 を 債 権 者 が 知 った 時 から 起 算 されるのではない とする 本 文 前 段 は,まず,この 起 算 点 についての 判 例 法 理 を 明 文 化 するものである ま た, 本 文 前 段 は, 詐 害 行 為 取 消 権 が 民 法 第 120 条 以 下 の 取 消 権 などの 実 体 法 上 の 形 成 権 とは 異 なるという 点 に 着 目 し, 詐 害 行 為 取 消 権 の2 年 の 行 使 期 間 を 除 斥 期 間 ないし 出 訴 期 間 ( 会 社 法 第 865 条 第 2 項, 民 法 第 201 条 等 参 照 )と 捉 えるものであり, 時 効 の 中 断 等 の 時 効 障 害 に 関 する 規 定 は 適 用 されないこととなる 本 文 後 段 は, 民 法 第 426 条 後 段 の20 年 の 除 斥 期 間 を10 年 に 改 めるものである 詐 害 行 為 取 消 権 を 行 使 するには 詐 害 行 為 時 から 詐 害 行 為 取 消 権 の 行 使 時 ( 詐 害 行 為 取 消 訴 訟 の 事 実 審 口 頭 弁 論 終 結 時 )まで 債 務 者 の 無 資 力 状 態 が 継 続 することを 要 するから( 前 記 1 (5)イ 参 照 ),20 年 もの 長 期 間 にわたって 債 務 者 の 行 為 や 財 産 状 態 を 放 置 したまま 推 移 さ 17
せた 債 権 者 に 詐 害 行 為 取 消 権 を 行 使 させる 必 要 性 は 乏 しいと 考 えられることを 理 由 とする 取 り 上 げなかった 論 点 部 会 資 料 35 第 2,1(2)イ 被 保 全 債 権 に 係 る 給 付 訴 訟 の 併 合 提 起 [56 頁 ] 部 会 資 料 35 第 2,1(2)ウ 詐 害 行 為 取 消 訴 訟 の 競 合 [58 頁 ] 部 会 資 料 35 第 2,2(3)イ(イ) 同 時 交 換 的 行 為 [67 頁 ] 部 会 資 料 35 第 2,2(3)ウ 無 償 行 為 [72 頁 ] 部 会 資 料 35 第 2,2(3)カ 対 抗 要 件 具 備 行 為 [84 頁 ] 部 会 資 料 35 第 2,2(4)ウ 無 償 行 為 による 転 得 の 場 合 [87 頁 ] 部 会 資 料 35 第 2,7 破 産 管 財 人 等 による 詐 害 行 為 取 消 訴 訟 の 受 継 [112 頁 ] 18