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m07 北見工業大学 様式①

公表表紙

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

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その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

18 国立高等専門学校機構


1

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

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16 日本学生支援機構

調査結果の概要

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

PowerPoint プレゼンテーション

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経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

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●幼児教育振興法案

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国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

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頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

3 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 ( ベース) 43.7 歳 32, , ,321

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 例 ) ( 例 ) 15 (H2) (H2) (H24) (H24) (H25.4.1) (H25.4.1) (H24) (H24)

別紙3

3 圏 域 では 県 北 沿 岸 で2の 傾 向 を 強 く 見 てとることができます 4 近 年 は 分 配 及 び 人 口 が 減 少 している 市 町 村 が 多 くなっているため 所 得 の 増 加 要 因 を 考 える 場 合 は 人 口 減 少 による 影 響 についても 考 慮 する

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4 教 科 に 関 する 調 査 結 果 の 概 況 校 種 学 年 小 学 校 2 年 生 3 年 生 4 年 生 5 年 生 6 年 生 教 科 平 均 到 達 度 目 標 値 差 達 成 率 国 語 77.8% 68.9% 8.9% 79.3% 算 数 92.0% 76.7% 15.3% 94

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 岐 阜 県 類 似 団 体 平 均 年 齢 平 均 給

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Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 25 年 4 月 1 日 現 在 ) 1) 一 般 行 政 職 福 島 県 国 類 似 団 体 平 均 年 齢 平

スライド 1

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(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 の 設 置 なし 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 民 間 給 与 公 務 員 給 与 較 差 勧 告 A B A-B ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 ( 参 考 ) 国 の 改 定 率 24 年 度 円 円 円 円 ( ) 改

1.H26年エイズ発生動向年報ー概要

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定款  変更

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

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資料1:勧告の仕組みとポイント 改【完成】

2 平 均 病 床 数 の 平 均 病 床 数 では 療 法 人 に 対 しそれ 以 外 の 開 設 主 体 自 治 体 社 会 保 険 関 係 団 体 その 他 公 的 の 規 模 が 2.5 倍 程 度 大 きく 療 法 人 に 比 べ 公 的 病 院 の 方 が 規 模 の 大 き いことが

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Ⅰ 平成14年度の状況


スライド 1

Ⅰ 平成14年度の状況

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

Microsoft PowerPoint - 390

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 135, , , , , ,600

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

本 校 の 沿 革 昭 和 21 年 昭 和 49 年 昭 和 54 年 昭 和 60 年 平 成 9 年 平 成 11 年 平 成 18 年 北 海 道 庁 立 農 業 講 習 所 として 発 足 北 海 道 立 農 業 大 学 校 に 改 組 修 業 年 限 を1 年 制 から2 年 制 に 改

(5) 給 与 改 定 の 状 況 該 当 なし ( 事 委 員 会 を 設 置 していないため) 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 ( 参 考 ) 民 間 給 与 公 務 員 給 与 較 差 勧 告 給 与 改 定 率 国 の 改 定 率 A B AB ( 改 定 率 ) 年 度 ( )

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別 添 1 女 性 国 家 公 務 員 の 登 用 状 況 資 料 1 指 定 職 に 占 める 女 性 の 割 合 は3.0%( 平 成 27 年 11 月 1 日 現 在 ) ( 前 年 9 月 1 日 現 在 から0.2ポイント 増 ) 本 省 課 室 長 相 当 職 以 上 に 占 める 女

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 161,7 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

2 特 別 給 人 事 委 員 会 の 勧 告 区 分 民 間 の 支 給 割 公 務 員 の 支 給 格 差 勧 告 年 間 支 給 数 合 A 数 B A-B ( 改 定 数 ) 年 度 ( 注 ) 民 間 の 支 給 割 合 は 民 間 事 業 所 で 支 払 われた 賞 与 等 の 特 別


2 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 22 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与

ニュースリリース

職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 () 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 ( 年 4 月 日 現 在 ) 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 ( ベース) 44. 歳 6,4, 歳,44 4,7 7,6 4. 歳 7,

○00表紙

養 老 保 険 の 減 額 払 済 保 険 への 変 更 1. 設 例 会 社 が 役 員 を 被 保 険 者 とし 死 亡 保 険 金 及 び 満 期 保 険 金 のいずれも 会 社 を 受 取 人 とする 養 老 保 険 に 加 入 してい る 場 合 を 解 説 します 資 金 繰 りの 都

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

ニュースリリース

Ⅰ 調 査 の 概 要 1 目 的 義 務 教 育 の 機 会 均 等 その 水 準 の 維 持 向 上 の 観 点 から 的 な 児 童 生 徒 の 学 力 や 学 習 状 況 を 把 握 分 析 し 教 育 施 策 の 成 果 課 題 を 検 証 し その 改 善 を 図 るもに 学 校 におけ

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表紙

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定


容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

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波佐見町の給与・定員管理等について

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 135,6 243,7 2 級 185,8 37,8 3 級 4 級 222,9 354,7 ( 注 )

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 (H20.4.1) 96.7 (H25.4.1) (H25.7.1) (H25.4.1), (H25.4.1) 参 考 値 98.3 (H25.7.1) (H20.4.1) (H25.4

Transcription:

日 本 農 業 研 究 所 研 究 報 告 農 業 研 究 第 22 号 (2009 年 )p.271~302 和 牛 ( 黒 毛 和 種 )の 繁 殖 肥 育 一 貫 飼 養 体 系 を 目 指 した 実 証 的 研 究 の 取 り 組 み(3) - 自 給 飼 料 を 活 用 した 繁 殖 牛 の 飼 養 管 理 - 小 川 増 弘 宮 下 好 広 吉 澤 哲 岩 崎 敬 井 出 豊 松 森 山 民 紀 目 次 1.はじめに 2. 試 験 方 法 3. 結 果 と 考 察 4.おわりに 5. 引 用 文 献 1.はじめに 和 牛 の 繁 殖 肥 育 一 貫 飼 養 においては 繁 殖 牛 の 飼 養 管 理 子 牛 の 哺 育 育 成 肥 育 牛 の 飼 養 管 理 自 給 飼 料 生 産 及 び 糞 尿 の 堆 肥 化 等 の 各 部 門 における 技 術 の 高 度 化 とともにそれらの 有 機 的 な 連 携 が 求 められる 特 に 子 牛 生 産 部 門 である 繁 殖 牛 の 飼 養 管 理 は 一 貫 飼 養 全 体 のスタートに 位 置 づけられると 言 えよう 繁 殖 経 営 は 高 齢 化 が 進 み 多 くを 占 める 零 細 経 営 が 減 少 を 続 けているのが 現 状 である 和 子 牛 生 産 農 家 の 多 くが 中 山 間 地 域 に 立 地 していることや 他 部 門 と の 複 合 経 営 が 多 く 経 営 の 帰 趨 は 複 合 の 相 手 部 門 ( 稲 作 が 圧 倒 的 に 多 い)の 動 向 に 影 響 されることも 指 摘 されている( 栗 原 2009) このような 生 産 基 盤 の 脆 弱 化 が 進 んでいる 中 で 毎 年 一 万 頭 増 頭 を 目 標 に 施 策 が 進 められているとこ ろである( 犬 塚 2006) また 農 畜 産 業 の 中 において 数 少 ない 中 間 生 産 物 = 子 牛 を 取 引 を 行 うことなく 肉 用 牛 経 営 において 繁 殖 部 門 と 肥 育 部 門 を 統 合 す ることの 合 理 性 を 活 かした 戦 略 的 な 一 貫 経 営 のあり 方 が 検 討 され 期 待 もされ ている( 福 田 2009) - 271 -

和 牛 繁 殖 の 技 術 的 な 課 題 として 発 情 を 表 す 兆 候 が 不 明 確 になっていること が 指 摘 されている 受 胎 率 の 低 下 受 胎 に 要 する 人 工 授 精 の 授 精 回 数 が 増 えて いること 分 娩 間 隔 が 長 くなっていることが 指 摘 され それらの 改 善 方 策 が 検 討 されている( 高 橋 2009) 牛 の 受 胎 率 を 向 上 させるには 1 明 瞭 な 発 情 を 起 こさせること 2 発 情 を 発 見 すること 3 適 期 に 授 精 すること 4 妊 娠 維 持 に 必 要 な 子 宮 環 境 を 構 築 する ことである( 平 子 2008) しかし 和 牛 繁 殖 の 現 状 に 関 して 深 刻 な 課 題 が 指 摘 されている 九 州 沖 縄 の8 県 を 対 象 として 実 施 した 人 工 授 精 及 び 受 胎 に 関 するアンケート 調 査 の 結 果 ( 吉 ざわ 2009)によると 種 付 けが 悪 くなっているという 実 感 がある が 人 工 授 精 師 獣 医 師 では43% 和 牛 繁 殖 農 家 では28% 発 情 兆 候 が 弱 くなって いる が 人 工 授 精 師 獣 医 師 では66% 和 牛 繁 殖 農 家 では44%となっている 同 報 告 では 和 牛 繁 殖 農 家 よりも 人 工 授 精 師 獣 医 師 で 深 刻 な 認 識 を 示 す 結 果 と なっているが より 広 く 観 察 する 機 会 を 有 するこれら 人 工 授 精 師 や 獣 医 師 の 回 答 はより 尊 重 されるべきであるとしている 新 聞 報 道 でも 牛 の 受 胎 率 謎 の 低 下 と 題 してこの 問 題 が 取 り 上 げられ 人 工 授 精 で 繁 殖 されている 乳 牛 や 肉 用 牛 の 受 胎 率 が 年 々 低 下 し 続 けており 乳 牛 はより 乳 量 の 多 い 大 型 化 肉 用 牛 は 霜 降 り 度 合 いが 高 い 肥 満 化 が 進 んでいて こうした 改 良 の 影 響 が 指 摘 され ているが 原 因 ははっきりせず 解 決 策 はみえてこない という さらに 続 けて 乳 牛 の 最 初 の 種 付 けでの 受 胎 率 は 93 年 までは62% 前 後 であったのが それ 以 降 低 下 し 始 め 05 年 から50%を 割 続 けていること 肉 用 牛 でも93 年 までは 67% 前 後 であったのが 05 年 以 降 は60%を 切 るようになった と 紹 介 している ( 朝 日 新 聞 H21.8.19 夕 刊 ) また 牛 の 受 胎 率 低 下 の 傾 向 はわが 国 に 留 まらず 世 界 的 にみられるという( 中 尾 2005) 高 橋 は 人 工 授 精 に 関 する 全 国 調 査 の 結 果 から 悉 皆 調 査 ではないことを 断 りながら 平 成 14 ~ 16 年 度 においては 延 べ 頭 数 受 胎 率 は 未 経 産 牛 で64.6% 経 産 牛 で58.0%であり 実 頭 数 受 胎 率 は 未 経 産 牛 で85.9% 経 産 牛 で84.5% となっていることを 紹 介 し 全 国 的 に 共 通 して 受 胎 率 が 経 産 牛 よりも 未 経 産 牛 の 方 が 高 いことから 初 産 後 の 飼 養 管 理 に 問 題 があることを 指 摘 している( 高 橋 2004 2009) また 地 域 によって 受 胎 率 などに 差 異 があることは 地 域 によっ - 272 -

て 飼 養 管 理 上 に 改 善 の 余 地 があることを 示 しているとしている( 高 橋 2009) さて 実 験 農 場 ( 以 下 農 場 )においては 平 成 14 年 度 から 市 場 を 通 して 繁 殖 用 もと 牛 を 導 入 し 繁 殖 部 門 の 整 備 を 進 めてきた( 小 川 2007) その 結 果 導 入 後 7 年 を 経 過 して 最 も 多 い 産 次 の 牛 は7 産 となった また 導 入 牛 から 生 まれた 産 子 の 内 繁 殖 牛 として 育 成 された 後 継 牛 も 分 娩 を 始 めており 導 入 牛 からみると 孫 に 当 たる 産 子 が 生 産 されるようになってきた このような 段 階 に おいて もと 牛 導 入 から 現 在 に 至 るまでの 当 農 場 における 繁 殖 牛 の 繁 殖 成 績 か ら 課 題 を 整 理 し 今 後 の 繁 殖 成 績 の 向 上 へ 繋 げていきたいとの 考 えから 本 稿 を 作 成 することとした 2. 試 験 方 法 1) 供 試 牛 について 14 ~ 15 年 度 に 計 33 頭 の 繁 殖 用 もと 牛 を 導 入 した さらに 18 年 度 に4 頭 を 導 入 し 導 入 した 繁 殖 用 もと 牛 は 合 計 37 頭 であった 導 入 先 ( 市 場 )は 十 勝 白 老 ( 以 上 北 海 道 ) 青 森 ( 青 森 県 ) 及 び 曽 於 ( 鹿 児 島 県 )である 導 入 後 に 不 妊 などの 理 由 で6 頭 を 淘 汰 したことから 21 年 8 月 の 時 点 で 飼 養 されてい る 導 入 繁 殖 牛 は31 頭 である 自 家 産 牛 の 一 部 を 後 継 牛 として 飼 養 し 9 頭 が 産 子 を 分 娩 して 経 産 牛 となっ た この 内 1 頭 を 淘 汰 したことから 現 在 飼 養 している 自 家 産 の 経 産 牛 は8 頭 で あり 導 入 と 自 家 産 を 合 わせて39 頭 の 経 産 牛 を 飼 養 している( 表 1) 本 稿 では これら 繁 殖 牛 を 供 試 して 得 た 結 果 を 中 心 に 取 りまとめることとし た なお 一 部 の 繁 殖 牛 に 受 精 卵 移 植 (ET)を 行 ったが これに 供 した 繁 殖 牛 の 該 当 する 産 次 のデータは 除 外 した 2) 飼 養 管 理 供 試 した 繁 殖 牛 は 家 畜 福 祉 に 配 慮 して 飼 養 管 理 を 行 った 繁 殖 牛 の 飼 養 管 理 を 一 般 的 な 飼 養 管 理 と 分 娩 前 後 の 飼 養 管 理 に 分 けて 説 明 する 一 般 的 な 飼 養 管 理 は 以 下 の 通 りである 繁 殖 牛 は 群 管 理 とし 年 間 を 通 して みると 放 牧 期 と 舎 飼 期 に 分 けられる 放 牧 期 は 4~ 10 月 の 期 間 で 昼 間 は 放 - 273 -

牧 し 夕 方 ~ 翌 朝 は 舎 飼 とした 舎 飼 期 は 上 記 を 除 いた 期 間 で 終 日 舎 飼 とし パドックに 併 設 する 飼 槽 に 農 場 で 生 産 された 牧 草 のロールベールサイレージを 給 与 した 放 牧 期 であっても 放 牧 地 の 草 量 が 不 足 していると 判 断 された 場 合 は ロールベールサイレージを 補 足 的 に 給 与 した さらに 牧 草 の 植 生 を 回 復 さ せるために 一 定 期 間 休 牧 した 場 合 は 舎 飼 期 と 同 様 に 終 日 舎 飼 とした なお 舎 飼 では 牛 同 士 の 強 弱 の 序 列 によって 発 生 する 栄 養 状 態 の 過 不 足 を 避 けるため に2 群 に 分 けて 管 理 を 行 う 場 合 があった この 場 合 栄 養 状 態 が 良 くない 牛 群 には 配 合 飼 料 を1 日 1 頭 当 たり1kg 程 度 を 適 宜 給 与 して 栄 養 状 態 の 改 善 を 図 った 食 塩 の 給 与 については 固 形 塩 を 自 由 摂 取 できるようにパドック 内 に 固 形 塩 を 置 いた また パドック 内 に 水 槽 を 設 置 して 自 由 に 飲 水 できるように した 分 娩 前 後 の 飼 養 管 理 は 以 下 のように 行 った 妊 娠 牛 は 分 娩 予 定 日 の10 日 前 に 牛 群 から 隔 離 して 牛 舎 内 に 設 置 した 分 娩 房 で 単 独 飼 養 した 夕 方 に 配 合 飼 料 を2kg 給 与 し さらに 無 切 断 のロールベールサイレージを 適 量 給 与 した 分 娩 後 はいわゆる 超 早 期 分 離 方 式 による 飼 養 管 理 を 行 った すなわち 分 娩 後 1~ 2 週 間 ( 平 成 19 年 度 途 中 までは1 週 間 を 目 処 に その 後 は2 週 間 を 目 処 に) 子 - 274 -

牛 と 母 牛 を 分 離 した それまでの 間 は 分 娩 前 と 同 様 に 母 牛 に 配 合 飼 料 2kgを 給 与 し さらに 牧 草 サイレージを 適 量 給 与 した 同 居 期 間 中 は 子 牛 への 飼 料 給 与 は 行 わず この 間 の 子 牛 が 摂 取 した 栄 養 は 全 て 母 乳 に 依 存 した 分 娩 後 1ない し2 週 間 で 母 牛 と 子 牛 を 分 離 した 母 牛 は 牛 群 に 戻 し 子 牛 は 哺 育 舎 で 単 独 飼 養 した なお 分 娩 予 定 日 は 妊 娠 期 間 を285 日 として 求 めた( 浜 名 2006) 3) 人 工 授 精 と 妊 娠 鑑 定 繁 殖 用 もと 牛 は おおよそ14カ 月 齢 に 達 してから 発 情 兆 候 が 認 められて 子 宮 や 卵 巣 の 状 態 が 良 好 であることを 確 認 後 に 人 工 授 精 を 行 った また 経 産 牛 については 分 娩 後 に 発 情 兆 候 が 認 められ 直 腸 検 査 と 膣 検 査 によって 子 宮 や 卵 巣 の 回 復 状 態 が 良 好 であることを 確 認 後 に 人 工 授 精 を 行 った 人 工 授 精 は 人 工 授 精 師 の 資 格 を 有 する 農 場 職 員 が 行 った 授 精 後 に 発 情 がみられない 場 合 に は 授 精 から3カ 月 後 を 目 安 に 開 業 の 獣 医 師 に 依 頼 して 妊 娠 鑑 定 ( 直 腸 検 査 法 ) を 実 施 した 子 宮 等 の 回 復 が 遅 れている 繁 殖 牛 や 何 度 か 人 工 授 精 を 行 っても 受 胎 しない 繁 殖 牛 については 獣 医 師 の 指 導 により 子 宮 洗 浄 やホルモン 療 法 を 実 施 した 発 情 等 の 観 察 は 朝 及 び 午 後 に 必 ず 行 うこととし 必 要 に 応 じてその 機 会 を 増 やした 4) 主 な 調 査 項 目 未 経 産 牛 については 初 産 に 向 けた 初 回 授 精 日 齢 受 胎 日 齢 分 娩 日 齢 妊 娠 期 間 受 胎 までに 実 施 した 人 工 授 精 の 回 数 等 を 調 査 した 経 産 牛 については 分 娩 後 初 回 授 精 日 数 空 胎 日 数 分 娩 間 隔 妊 娠 期 間 受 胎 までに 実 施 した 人 工 授 精 の 回 数 等 を 調 査 した なお 日 数 (あるいは 日 齢 )から 月 数 (あるいは 月 齢 )を 求 める 換 算 は30.4 を 除 して 行 った 5) 検 討 項 目 特 に 重 要 と 思 われる 以 下 の 項 目 を 中 心 に 検 討 した (1) 未 経 産 牛 と 経 産 牛 の 繁 殖 成 績 (2) 導 入 牛 と 自 家 産 牛 の 比 較 - 275 -

(3) 母 牛 と 子 牛 の 同 居 期 間 の 影 響 (4) 年 度 の 比 較 (5) 月 ごとの 比 較 (6) 繁 殖 牛 の 飼 養 経 費 (7) 自 給 飼 料 生 産 (8) 資 源 の 流 れ 3 結 果 と 考 察 21 年 8 月 までに 外 部 から 導 入 した 繁 殖 用 もと 牛 は37 頭 であった また これ らの 導 入 牛 が 分 娩 した 産 子 の 内 後 継 牛 として 繁 殖 用 に 育 成 し21 年 8 月 までに 分 娩 した 自 家 産 牛 は9 頭 であった( 表 1) 1) 未 経 産 牛 と 経 産 牛 の 繁 殖 成 績 (1) 未 経 産 牛 の 繁 殖 成 績 供 試 した 未 経 産 牛 は44 頭 である その 内 訳 は 導 入 牛 35 頭 と 自 家 産 牛 9 頭 で ある 未 経 産 牛 の 初 産 における 繁 殖 成 績 を 表 2に 示 した 初 回 授 精 日 齢 は 平 均 437 日 齢 (14.4カ 月 齢 ) 受 胎 日 齢 は 平 均 482 日 齢 (15.9カ 月 齢 )であった また 妊 娠 期 間 は 平 均 287 日 分 娩 日 齢 は 平 均 768 日 齢 (25.3カ 月 齢 )であった 受 胎 に 要 した 授 精 回 数 は 平 均 2.0 回 で 延 べ 頭 数 受 胎 率 及 び 実 頭 数 受 胎 率 はそれぞ れ 49.0% 及 び95.7%であった 詳 細 は 以 下 の 通 りである 1 初 回 授 精 日 齢 未 経 産 牛 に 人 工 授 精 を 初 めて 実 施 した 日 齢 は 平 均 437 日 齢 であった 最 小 値 は391 日 齢 最 大 値 は491 日 齢 であり 両 者 に100 日 間 の 開 きがあった 455 日 齢 までの 間 に35 頭 ( 約 80%)へ 初 回 授 精 を 実 施 した( 図 1) 導 入 牛 と 自 家 産 牛 を 比 較 すると 有 意 差 はないが 自 家 産 牛 の 方 がやや 日 齢 が 進 んでいる 傾 向 で あった( 図 2) 2 受 胎 日 齢 受 胎 日 齢 は 平 均 482 日 齢 であった 最 小 値 は393 日 齢 最 大 値 は735 日 齢 で 両 者 に1 年 近 い 差 異 がみられた 日 齢 を425 日 齢 以 下 とその 後 30 日 を 加 えた 区 - 276 -

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間 に 区 分 して 該 当 する 頭 数 の 分 布 を 調 べた 結 果 455 日 齢 までに19 頭 (43%) が 受 胎 し 485 日 齢 までに31 頭 (70%)が 受 胎 した 一 方 486 日 齢 以 上 を 要 し た 未 経 産 牛 が13 頭 (30%)あった( 図 3) 特 に 多 くの 日 齢 を 要 した6 頭 (546 日 齢 以 上 )を 除 いた38 頭 の 受 胎 日 齢 は 平 均 462 日 齢 であったことから 受 胎 日 齢 が 極 めて 多 かった6 頭 によって 全 体 の 受 胎 日 齢 は 約 20 日 間 増 加 した 3 妊 娠 期 間 妊 娠 期 間 は 平 均 287 日 であり 妊 娠 予 定 期 間 として 設 定 した285 日 よりも2 日 長 かった 最 小 値 は277 日 最 大 値 は305 日 でその 差 は28 日 であった 最 小 値 の277 日 を 基 点 として4 日 間 毎 に 区 切 って 該 当 する 頭 数 の 分 布 をみる と 285 ~ 288 日 が 最 も 多 く13 頭 (29.5%) その 前 後 4 日 間 を 含 めた281 ~ 292 日 の 間 に29 頭 (66%)が 分 娩 した( 図 4) 4 分 娩 日 齢 初 産 分 娩 の 日 齢 は 平 均 768 日 齢 であり 最 小 値 は697 日 齢 最 大 値 は1,023 日 齢 で その 差 は326 日 で ほぼ11カ 月 であった 730 日 齢 以 前 とその 後 30 日 を 区 切 りとして 区 間 毎 の 分 娩 頭 数 の 分 布 をみると 730 日 齢 以 前 が18 頭 ( 約 41% ) 790 日 齢 までに 分 娩 した 頭 数 は33 頭 (75%)であった 一 方 9 頭 (20%) の 分 娩 日 齢 は821 日 齢 以 上 であった( 図 5) これら 分 娩 が 特 に 遅 くなった9 頭 を 除 いた35 頭 の 分 娩 日 齢 は 平 均 740 日 齢 であったことから これら9 頭 によっ て 分 娩 日 齢 は 約 1カ 月 近 く 増 加 する 結 果 となった 5 授 精 回 数 初 産 の 受 胎 に 要 した 人 工 授 精 の 授 精 回 数 は 平 均 2.0 回 最 小 値 は1 回 最 大 - 278 -

値 は6 回 である 初 回 授 精 受 胎 率 は40.9% 延 べ 受 胎 率 は49.0%であった 受 精 回 数 毎 に 該 当 する 頭 数 の 分 布 をみると 1 回 は18 頭 (41%) 2 回 は17 頭 (38.6 頭 )であり これらを 合 わせると35 頭 (79.5%)であった 一 方 9 頭 は 人 工 授 精 を3 回 以 上 行 った( 図 6) これら9 頭 を 除 くと 平 均 授 精 回 数 は1.49 回 と なり これら6 頭 によって 平 均 値 は0.56 回 多 くなった 農 場 における 未 経 産 牛 の 繁 殖 成 績 を 文 献 値 ( 延 べ 頭 数 受 胎 率 64.6% 実 頭 数 受 胎 率 85.9%)( 高 橋 2009) と 比 較 する 延 べ 頭 数 受 胎 率 は 文 献 値 と 比 較 し て 低 く 実 頭 数 受 胎 率 は 高 かった 家 畜 改 良 増 殖 目 標 ( 農 林 水 産 省 )によると 肉 用 牛 の 初 産 月 齢 は16 年 度 現 在 が25カ 月 齢 27 年 度 目 標 値 が24カ 月 齢 となって いる 当 農 場 の 初 産 月 齢 は 平 均 では 現 在 値 に 近 似 しているかあるいはやや 遅 れる 傾 向 にあった A 県 における 初 産 月 齢 24.5カ 月 齢 (3カ 年 平 均 ) 全 国 平 均 24.6カ 月 齢 ( 未 発 表 資 料 )と 比 較 して1カ 月 ほど 遅 かった このように 初 産 の - 279 -

繁 殖 成 績 は 初 回 受 精 受 胎 率 や 延 べ 頭 数 受 胎 率 が 低 い 反 面 実 頭 数 受 胎 率 は 高 く 初 産 月 齢 が 若 干 遅 れ 気 味 であった このことについて それまで 農 場 の 人 工 授 精 師 は 乳 牛 に 対 する 人 工 授 精 経 験 はあったものの 黒 毛 和 種 に 対 しては 未 経 験 で あり 導 入 した 初 産 牛 に 対 しては 初 めての 実 施 であったことから 試 行 錯 誤 も あったと 思 われる ちなみに18 年 度 に 追 加 で 導 入 した4 頭 については 初 産 の 平 均 授 精 回 数 は1.5 回 で 改 善 傾 向 がみられた 不 受 胎 牛 については 経 済 性 だけ を 考 えるならば 早 めに 淘 汰 すべきであってもできるだけ 授 精 を 繰 り 返 したこと が 延 べ 頭 数 受 胎 率 低 下 へ 影 響 したことが 考 えられる なお 不 受 胎 牛 には 片 方 の 卵 巣 の 働 きが 弱 いと 思 われるものもあった 黒 毛 和 種 肉 用 繁 殖 牛 の 繁 殖 供 用 開 始 は 月 齢 の 目 安 の 他 に 体 重 体 高 の 目 安 が 示 され 一 般 的 には 体 重 300kg 体 高 115cmで 特 に 体 高 発 育 の 重 視 が 望 まれ ている( 高 橋 2005)ことから 今 後 はこれらの 測 定 も 必 要 と 思 われる (2) 経 産 牛 の 繁 殖 成 績 延 べ127 頭 の 経 産 牛 を 供 試 した 内 訳 は 表 3の 通 りである すなわち 2 産 が40 頭 3 産 が33 頭 4 産 が25 頭 5 産 が19 頭 6 産 が9 頭 であり 1 頭 は 最 も 産 次 数 の 多 かった7 産 であった また 導 入 牛 は 延 べ116 頭 自 家 産 牛 は 延 べ11 頭 であった( 表 3) 分 娩 後 初 めて 人 工 授 精 を 実 施 した 日 数 ( 初 回 授 精 日 数 )は 平 均 50 日 分 娩 後 に 次 の 妊 娠 までの 日 数 ( 空 胎 日 数 )は 平 均 87 日 妊 娠 期 間 は 平 均 291 日 分 娩 間 隔 は378 日 (12.4カ 月 )であった また 人 工 授 精 の 授 精 回 数 は 平 均 1.9 回 初 回 受 精 受 胎 率 は52.0% 延 べ 頭 数 受 胎 率 は52.4% 実 頭 数 受 胎 率 は97.7%で - 280 -

あった( 表 4) 詳 細 は 以 下 の 通 りである 1 初 回 授 精 日 数 初 回 授 精 日 数 は 平 均 50 日 であった 産 次 別 では 3 産 次 (2 産 次 の 分 娩 後 に 3 産 次 に 向 けて 行 った 授 精 以 下 同 様 )で 日 数 が 比 較 的 少 なく 2 産 次 及 び5 産 次 がやや 多 かった( 表 5) 授 精 日 数 を40 日 以 前 とその 後 20 日 間 隔 で 区 分 して 該 当 する 頭 数 の 分 布 をみる と 40 日 までが52 頭 (40.9%) 41 ~ 60 日 が44 頭 (34.7%)であり これらを 合 わせると96 頭 (75.6%)であったが 12 頭 (10.5%)の 授 精 日 数 が81 日 を 超 えた( 図 7) これら12 頭 を 除 いた115 頭 の 平 均 授 精 日 数 は44 日 であったことか ら 初 回 種 付 けが 特 に 遅 かった12 頭 によって 初 回 授 精 日 数 は5 日 遅 延 した 2 空 胎 日 数 空 胎 日 数 は 平 均 87 日 であった 産 次 別 にみると2 産 次 がやや 多 く 産 次 が 進 むにつれて 減 少 する 傾 向 がみられた( 表 6) - 281 -

空 胎 日 数 が40 日 までとその 後 20 日 毎 に 区 分 して 該 当 する 頭 数 の 分 布 をみる と 80 日 以 内 の 頭 数 は79 頭 (62.2%)であった( 空 胎 日 数 が80 日 以 内 であれば 妊 娠 期 間 285 日 として 分 娩 間 隔 が1 年 以 内 となる) 一 方 16 頭 (12.6%)はそ の 倍 の160 日 を 超 えていた( 図 8) これらの16 頭 を 除 いた111 頭 の 空 胎 日 数 の 平 均 値 は68 日 であったことから 空 胎 日 数 が 特 に 長 かった16 頭 によって 空 胎 日 数 は 全 体 として21 日 間 長 くなった 3 妊 娠 期 間 妊 娠 期 間 は 平 均 291 日 で 産 次 による 差 異 は 特 に 認 められなかった 標 準 的 な 妊 娠 期 間 として 設 定 した285 日 と 比 較 すると6 日 長 かった また 初 産 (287 日 )よりも 経 産 牛 の 方 が4 日 長 かった(5% 水 準 の 有 意 差 有 り)( 表 7) 妊 娠 期 間 を280 日 以 前 およびそれ 以 降 を4 日 毎 に 区 分 して 該 当 する 頭 数 の - 282 -

分 布 をみると 289 ~ 292 日 が38 頭 で 最 も 多 く 285 ~ 288 日 および293 ~ 296 日 を 含 めた3 期 間 (285 ~ 296 日 )で95 頭 (74.7%)を 占 めた( 図 9) 4 分 娩 間 隔 分 娩 間 隔 は 平 均 378 日 であり 2 産 次 ( 初 産 と2 産 次 の 間 隔 )が391 日 とやや 長 かったものの 産 次 が 進 むにつれて 短 くなる 傾 向 が 認 められた 3~7 産 次 の 平 均 は372 日 であり 2 産 次 平 均 と 比 較 して20 日 短 かった( 表 8) 分 娩 間 隔 335 日 を 基 準 にして それ 以 前 とその 後 30 日 ごとに 区 分 して 該 当 する 頭 数 の 分 布 を 図 10に 示 した 335 日 以 前 は34 頭 (26.8%) 335 ~ 364 日 は 41 頭 (32.3%)であり これらを 合 わせると(すなわち 分 娩 間 隔 がほぼ1 年 以 内 となったのは)75 頭 (59.1%)であった 一 方 476 日 以 上 を 要 した 繁 殖 - 283 -

牛 は8 頭 (6.3%)であった( 図 10) これら8 頭 を 除 いた 延 べ119 頭 の 分 娩 間 隔 は366 日 とほぼ1 年 であった このことから 分 娩 間 隔 が 極 端 に 長 かった8 頭 によって 全 体 の 分 娩 間 隔 は12 日 間 長 くなった 5 授 精 回 数 人 工 授 精 を 実 施 した 経 産 牛 延 べ127 頭 の 平 均 授 精 回 数 は 1.9 回 で 産 次 が 進 む につれて 減 少 の 傾 向 がみられた 7 産 次 が3.0と 高 いのは1 頭 のデータであり 今 後 7 産 次 の 繁 殖 牛 が 多 くなった 段 階 での 比 較 検 討 が 必 要 である( 表 9) 未 経 産 牛 の 初 産 (2.0 回 )と 経 産 牛 の2 産 次 以 降 の 全 体 とを 比 較 すると 大 差 が なかった 1 回 目 の 人 工 授 精 によって 受 胎 した 頭 数 はそれぞれ66 頭 (52.0% この 割 合 は 初 回 授 精 による 受 胎 率 である) 2 回 目 は33 頭 (26.0%)であり それらを - 284 -

合 わせると99 頭 (78.0% )に 達 したが 一 方 28 頭 (22.0%)の 授 精 回 数 が3 回 以 上 となった( 図 11) それら28 頭 を 除 いた 延 べ99 頭 の 授 精 回 数 は1.33 回 で あった このように 授 精 回 数 の 多 かった28 頭 によって 全 体 の 授 精 回 数 は 平 均 0.58 回 増 加 した 妊 娠 期 間 については 岩 手 県 における 昭 和 56 年 から 平 成 20 年 までの7 万 頭 以 上 42 万 件 以 上 のデータから 妊 娠 期 間 は 過 去 20 年 で2 日 程 度 長 くなっている ことや 分 娩 月 の 影 響 ( 寒 い 冬 の 期 間 は 約 1 日 長 い) 産 次 の 影 響 ( 産 次 が 進 む につれて 約 2 日 長 い) 性 の 影 響 ( 雄 は 雌 より 約 1 日 長 い) 地 域 による 影 響 等 から 分 娩 予 定 日 の 推 定 には 従 来 より4 日 多 い289 日 の 方 が 適 合 率 が 高 いとい う 結 果 を 得 た( 藤 村 2009) 農 場 では285 日 を 標 準 として 分 娩 予 定 日 を 設 定 し たが 初 産 では 平 均 287 日 経 産 牛 における2 産 次 以 降 の 平 均 は291 日 であった - 285 -

ことから 農 場 においても 妊 娠 期 間 が 通 常 いわれている285 日 より 長 い 傾 向 に あることが 示 された 農 場 における 経 産 牛 の 繁 殖 成 績 を 文 献 値 ( 延 べ 頭 数 受 胎 率 58.0% 実 頭 数 受 胎 率 84.5%)( 高 橋 2009)と 比 較 すると 延 べ 頭 数 受 胎 率 は 低 く 実 頭 数 受 胎 率 は 高 い 結 果 となった 家 畜 改 良 増 殖 目 標 ( 農 林 水 産 省 )によると 肉 用 牛 の 分 娩 間 隔 は 16 年 度 現 在 が13.2カ 月 齢 27 年 度 目 標 値 が12.5カ 月 齢 となってい る 農 場 における 結 果 は 目 標 値 を 僅 かに 上 回 った さらにA 県 と 全 国 における 分 娩 後 初 回 授 精 日 数 64 日 と83 日 分 娩 間 隔 410 日 と400 日 空 態 日 数 122 日 と112 日 ( 未 発 表 資 料 )に 対 しては いずれも 農 場 の 日 数 が 少 なかった 古 いデータではあるが 全 国 規 模 の 実 態 調 査 があった 昭 和 49 50 年 度 の 経 産 牛 における 成 績 ( 初 回 授 精 による 受 胎 率 46.6% 3 回 目 までの 授 精 で 受 胎 し - 286 -

たもの86.4%)( 高 橋 2009)に 対 して 農 場 成 績 の 内 初 回 授 精 による 受 胎 率 は50.8%であり ほぼ 同 程 度 かやや 優 れ 3 回 目 の 授 精 で 受 胎 した 割 合 は 89.1%であり 大 きな 差 異 はみられなかった また 未 経 産 牛 と 経 産 牛 を 合 わせ た 初 回 受 精 受 胎 率 は05 年 以 降 は60% 以 下 で 低 下 傾 向 にあると 言 われている( 朝 日 新 聞 2009) 農 場 成 績 を 産 次 別 でみた 場 合 に 特 に2 産 次 および3 産 次 で 低 くその 後 高 い 傾 向 にあったが これについては 先 に 触 れたように 黒 毛 和 種 牛 への 授 精 経 験 のつみ 重 ねがその 後 の 授 精 に 活 かされて 成 績 が 向 上 してきたも のと 考 えられる (3) 分 娩 に 伴 う 事 故 分 娩 に 伴 って 産 子 には 死 産 や 早 産 等 の 事 故 が 発 生 する また 妊 娠 中 に 流 産 することもある 繁 殖 管 理 においてはこれらの 事 故 をいかにして 低 減 する かは 大 きな 課 題 である 農 場 における 延 べ171 頭 の 分 娩 において 死 産 は6 回 (3.5%) 分 娩 後 に 死 亡 した 子 牛 の 頭 数 は3 頭 (1.8%) 確 認 できた 流 産 は1 頭 (0.6%)であり これらを 合 計 した 事 故 牛 は10 頭 (5.8%)であった( 表 10) 分 娩 は 母 牛 にとっても 大 きな 負 担 であり 発 生 した 事 故 によって 次 の 繁 殖 に 供 することが 出 来 ない 場 合 は 淘 汰 することになり 極 端 な 場 合 は 分 娩 時 の 障 害 により 死 に 至 ることもある 農 場 での 母 牛 の 事 故 については 治 療 を 要 した 頭 数 は10 頭 (5.8%)であり 死 亡 1 頭 淘 汰 7 頭 であった( 表 11) 主 な 治 療 は ホルモン 注 射 (3 回 ) イソジンによる 洗 浄 (6 回 )である 淘 汰 は 黄 体 膿 腫 膣 脱 の 他 繰 り 返 し 授 精 したにも 係 わらず 妊 娠 しない 低 受 胎 牛 に 対 して 実 施 し た 分 娩 時 の 事 故 については 乳 牛 における 分 娩 時 の 事 故 について 出 生 子 牛 で 6.7% 母 牛 で2.4%であったと 報 告 している( 松 井 2007)が 乳 牛 と 黒 毛 和 種 では 出 生 子 牛 の 大 きさから 分 娩 の 負 担 は 異 なると 思 われる 2) 導 入 牛 と 自 家 産 牛 の 比 較 初 産 次 と2 産 次 に 限 定 して 導 入 牛 と 自 家 産 牛 の 繁 殖 成 績 を 比 較 した 導 入 牛 の 初 産 分 娩 は35 頭 2 産 分 娩 は33 頭 であり 自 家 産 牛 の 初 産 分 娩 は9 頭 2 産 分 娩 は7 頭 であった - 287 -

(1) 未 経 産 牛 の 初 産 分 娩 初 産 分 娩 した 導 入 牛 35 頭 と 自 家 産 牛 9 頭 の 繁 殖 成 績 を 比 較 すると 初 回 授 精 日 齢 は 自 家 産 牛 にやや 遅 い 傾 向 があり (この 点 はすでに 未 経 産 牛 の 繁 殖 成 績 の 項 で 触 れた) 受 胎 日 齢 は 反 対 に 自 家 産 牛 の 方 が 早 かった 分 娩 月 齢 は25.3 月 及 び25.0 月 24カ 月 齢 以 内 に 分 娩 した 繁 殖 牛 の 割 合 はそれぞれ37.1% 及 び 55.6%であった 授 精 回 数 についてはそれぞれ2.1 回 及 び1.7 回 2 回 までの 授 精 で 受 胎 した 割 合 は77.1% 及 び88.8%であり いずれも 自 家 産 牛 の 方 が 優 れて いた また 導 入 牛 の 母 牛 1 頭 および 子 牛 2 頭 に 事 故 が 発 生 した 以 上 の 結 果 からみて 繁 殖 成 績 は 自 家 産 牛 が 導 入 牛 よりやや 優 れた 傾 向 であった( 表 12) (2) 経 産 牛 の2 産 次 分 娩 経 産 牛 の2 産 次 について 導 入 牛 33 頭 と 自 家 産 牛 7 頭 の 成 績 を 比 較 した 初 回 授 精 日 数 は 導 入 牛 で 有 意 に 短 く 授 精 回 数 は 自 家 産 牛 が 有 意 に 少 なかった 空 胎 日 数 分 娩 間 隔 および 分 娩 間 隔 が12カ 月 以 内 の 割 合 については 有 意 な 差 異 は 認 められなかった 母 牛 及 び 産 子 各 1 頭 に 事 故 が 発 生 した( 表 13) 自 家 産 の 未 経 産 牛 における 初 回 授 精 が 導 入 牛 のそれに 比 べて 有 意 に 遅 かった ことについては それまでの 繁 殖 牛 群 にはいない 系 統 のもと 牛 を 後 継 牛 にする - 288 -

ことを 優 先 したことから 一 部 に 育 成 の 遅 れ 気 味 のもと 牛 もおり 初 回 授 精 を 遅 らせたことや 自 家 産 牛 が 繁 殖 牛 群 へ 仲 間 入 りする 段 階 でのストレスが 導 入 牛 に おけるよりも 強 かったことが 考 えられ それらが 初 回 授 精 遅 延 の 原 因 になった ことが 考 えられる 初 産 において 自 家 産 牛 の 成 績 が 導 入 牛 のそれよりもやや 優 れていたのは 受 精 実 施 年 度 が 異 なっており 繁 殖 用 もと 牛 の 育 成 技 術 や 授 精 経 験 の 違 いが 影 響 しているかもしれない なお 今 回 の 供 試 頭 数 は 導 入 牛 と 自 家 産 牛 の 頭 数 に 大 きな 違 いがあるために 自 家 産 牛 における 頭 数 が 同 程 度 となっ た 時 点 での 再 検 討 が 必 要 である - 289 -

3) 母 牛 と 子 牛 の 分 離 分 娩 後 子 牛 と 母 牛 を 分 離 する 時 期 については 当 初 は 超 早 期 分 離 方 式 に 従 っ て1 週 間 を 原 則 とした その 後 子 牛 の 発 育 改 善 について 試 行 錯 誤 の 結 果 分 離 時 期 をさらに1 週 間 遅 延 することで 子 牛 の 発 育 改 善 に 一 定 の 成 果 が 得 られた ( 小 川 ら 2008) 親 子 を 早 期 に 分 離 するのは 母 牛 については 分 娩 後 の 繁 殖 機 能 の 回 復 促 進 を 図 るためであることから 分 離 時 期 の 遅 延 が 母 牛 の 繁 殖 機 能 回 復 やその 後 の 繁 殖 成 績 に 影 響 を 及 ぼさないかを 検 討 する 必 要 がある そこで 分 離 する 時 期 が13 日 以 内 の 場 合 ( 早 期 区 )と14 日 を 超 えた 場 合 ( 遅 延 区 )に 分 けて その 後 の 繁 殖 成 績 を 比 較 した その 結 果 供 試 した 早 期 区 74 頭 遅 延 区 32 頭 の 分 離 時 期 はそれぞれ9 日 と16 日 で 約 7 日 間 の 差 異 がみられたが 両 区 の 初 回 授 精 日 数 空 胎 日 数 分 娩 間 隔 妊 娠 期 間 及 び 授 精 回 数 に 有 意 な 差 異 は 認 められなかった( 表 14) 黒 毛 和 種 繁 殖 飼 養 では 分 娩 後 も 母 牛 と 子 牛 を 一 緒 に 飼 養 することが 一 般 的 であったが 代 用 乳 の 開 発 や 乳 牛 飼 養 分 野 における 母 子 の 早 期 分 離 技 術 を 参 考 にして 超 早 期 分 離 方 式 が 開 発 され 生 産 現 場 でも 普 及 しつつある この 技 術 は 子 牛 の 成 長 が 母 牛 の 母 乳 生 産 能 力 に 左 右 されることがないという 子 牛 に 対 する メリットと 同 時 に 母 牛 の 繁 殖 機 能 回 復 に 有 効 であるという 母 牛 へのメリットが 指 摘 されている( 福 島 2000 2004 居 在 谷 2009) 谷 山 は 分 娩 間 隔 が1 年 を 超 えている 現 状 から 子 牛 価 格 が 低 下 している 時 こそ 基 本 である 一 年 一 産 に 積 極 的 に 取 り 組 む 必 要 性 があるとの 論 点 で 早 期 親 子 分 離 と 子 宮 診 断 による 分 娩 間 隔 の 短 縮 事 例 を 紹 介 している( 谷 山 2009) 分 離 時 期 を1 週 間 程 度 遅 延 することが 母 牛 の 繁 殖 機 能 回 復 の 効 果 に 影 響 が - 290 -

ないかについて 今 回 の 成 績 からは 分 娩 後 の 初 回 授 精 日 数 空 胎 日 数 分 娩 間 隔 に 有 意 な 差 異 が 認 められず 繁 殖 機 能 回 復 への 影 響 はないものと 思 われる しかし 人 工 授 精 実 施 者 は 人 工 授 精 時 に 子 宮 回 復 の 遅 延 症 状 を 確 認 し 数 値 で は 表 れない 変 化 を 体 験 していることから 今 後 とも 推 移 を 注 意 深 く 見 守 る 必 要 が ある 4) 年 度 の 比 較 農 場 では353 回 の 人 工 授 精 が 実 施 され183 頭 が 受 胎 した この 結 果 から 延 べ 頭 数 受 胎 率 は51.8%であった( 表 15) 4 月 から 翌 春 の3 月 までを 年 度 として 延 べ 頭 数 受 胎 率 を 比 較 すると 17 年 度 が 他 の 年 度 よりも 低 く その 後 は 年 次 が 進 むにつれて 高 くなる 傾 向 が 認 められた( 表 15) 繁 殖 成 績 を 年 度 別 に 比 較 することについては 次 項 の 月 ごとの 比 較 とも 関 係 するが 年 度 によっては 猛 暑 の 年 があり 冷 夏 の 年 もある 夏 季 の 暑 熱 の 程 度 が 繁 殖 成 績 に 影 響 を 及 ぼすことが 考 えられ 初 期 発 生 胚 の 早 期 死 滅 を 防 ぐために 受 精 後 7 日 間 は 体 温 を39.5 以 上 に 上 昇 させない 体 温 管 理 の 重 要 性 が 指 摘 され ている( 矢 光 2009) また 17 年 度 以 降 に 受 胎 率 が 上 昇 に 転 じていることは それまでの 人 工 授 精 の 経 験 が 活 かされてきたことによる 技 術 的 な 向 上 も 一 因 と - 291 -

思 われる 5) 月 ごとの 比 較 農 場 が 所 在 するつくば 市 の 月 平 均 気 温 ( 気 象 庁 ホームページより)の 推 移 と 月 別 の 人 工 授 精 実 施 回 数 の 推 移 を 図 12に 示 した 各 年 度 に 共 通 して 夏 季 の 高 温 時 期 には 授 精 回 数 が 少 なく 秋 季 となり 平 均 気 温 が 低 下 するとともに 授 精 回 数 は 増 加 した 人 工 授 精 を 実 施 した 牛 は 発 情 兆 候 が 認 められていることを 意 味 する また 受 胎 は 繁 殖 牛 を 含 めて 受 胎 しやすい 状 態 あるいは 環 境 となっていることを 示 し ていると 言 えよう 授 精 回 数 / 頭 が 最 も 少 なかったのは 7 月 であり 6~9 月 の 回 数 が 一 般 に 低 かったことは 夏 季 における 高 温 の 影 響 を 示 唆 する 結 果 と 思 われる 次 に 少 なかったのが4 月 であったことについては この 時 期 が 飼 養 方 式 として 舎 飼 期 から 放 牧 期 へ 移 行 する 時 期 であることと 符 合 しており 人 為 的 な 要 因 を 含 めて 飼 養 形 態 の 変 更 との 関 係 を 検 討 する 必 要 がある 舎 飼 期 に 給 与 したロールベールサイレージについては 次 項 に 記 した 通 りであ る すなわち 発 酵 品 質 並 びに 栄 養 価 からみて やや 粗 蛋 白 質 が 低 い 傾 向 がみ られるものの 繁 殖 成 績 に 深 刻 な 影 響 を 与 えるものではないと 思 われる( 自 給 飼 料 品 質 評 価 研 究 会 2001 ( 独 ) 農 業 食 品 産 業 技 術 総 合 研 究 機 構 編 2009) - 292 -

6) 繁 殖 牛 の 飼 養 経 費 分 娩 が4 産 次 以 上 で 分 娩 当 たり 授 精 回 数 が2 回 未 満 の 繁 殖 牛 11 頭 ( 良 好 区 と する)と 同 じく2 回 以 上 の 繁 殖 牛 9 頭 ( 不 良 区 とする)について 分 娩 回 数 当 たり 飼 養 月 数 を 比 較 した 算 出 は 導 入 日 ~ 最 終 分 娩 日 を 分 娩 回 数 で 除 して 求 めた その 結 果 分 娩 回 数 当 たり 飼 養 月 数 は 良 好 区 が12.3カ 月 不 良 区 が13.6 カ 月 であった 農 場 では 経 費 計 算 に 当 たり1 頭 当 たり 飼 養 経 費 ( 飼 料 費 )を 放 牧 期 は2,400 円 / 月 それ 以 外 の 舎 飼 期 は7,200 円 / 月 としている それを 基 に 計 算 して 年 間 を 通 した 平 均 の 月 間 飼 養 経 費 を5,280 円 とした また 人 工 授 精 については 利 用 した 精 液 の 単 価 が3 千 円 から1 万 円 の 幅 があることから 平 均 単 価 を5 千 円 と し 手 数 料 3 千 円 / 回 を 加 えて1 回 の 授 精 に 要 する 経 費 を8 千 円 とした これら の 経 費 を 基 にして 算 出 した 良 好 区 及 び 不 良 区 の1 頭 1 産 当 たりの 飼 養 費 ( 飼 養 経 費 および 人 工 授 精 経 費 の 合 計 )は66 千 円 及 び81 千 円 となり 両 区 の 間 に15 千 円 の 差 異 がみられた( 表 16) 繁 殖 牛 は 子 牛 を 分 娩 することが 唯 一 収 益 を 得 ることに 繋 がるので 分 娩 間 隔 が 長 くなるとそれだけ 収 益 性 は 低 下 する そのために 受 胎 に 要 する 授 精 回 数 を 少 なくすること 連 産 性 を 含 めて 分 娩 間 隔 を 短 くすることが 求 められる 昨 今 のような 子 牛 の 市 場 販 売 価 格 が 不 安 定 な 状 況 では 生 産 コストの 低 減 を 図 ること が 特 に 求 められる 農 場 において 繁 殖 成 績 が 良 好 な 群 と 劣 る 群 について 比 較 した 結 果 1 頭 1 産 当 たりに15 千 円 の 差 異 がみられたがこの15 千 円 の 内 分 娩 間 隔 の 延 長 に 伴 う 経 費 増 は5.7 千 円 人 工 授 精 回 数 増 に 伴 う 経 費 増 が8.8 千 円 - 293 -

であり 人 工 授 精 回 数 の 増 加 に 伴 う 経 費 の 方 がやや 多 いことが 伺 えた 7) 自 給 飼 料 生 産 農 場 における 飼 料 生 産 は 採 草 地 と 放 牧 草 地 で 行 われた 採 草 地 は 単 年 生 のイ タリアンライグラス 栽 培 畑 と 永 年 生 のオーチャードグラス 主 体 草 地 があり 前 者 は 毎 年 更 新 し 後 者 は3 年 を 目 安 に 更 新 した 放 牧 草 地 は 永 年 生 のオーチャー ドグラス 主 体 草 地 であり これも3 年 を 目 安 に 更 新 した 採 草 地 で 生 産 調 製 されたロールベールサイレージの 発 酵 品 質 及 び 飼 料 成 分 栄 養 価 を 表 17 及 び 表 18に 示 した 発 酵 品 質 を 調 査 したサンプルと 飼 料 成 分 など を 調 査 したサンプルが 同 一 ではないので 両 者 の 水 分 含 量 は 一 致 していないが 概 ね35% 程 度 であった 水 分 含 量 が 低 かったこともあってサイレージのpHは 高 く 発 酵 によって 生 成 された 有 機 酸 やアンモニア 態 窒 素 は 低 く 発 酵 品 質 を 表 す 指 標 であるV2-スコアは86.7 点 で 評 価 は 良 であった 飼 料 成 分 は 粗 蛋 白 質 が10.2% ADF( 酸 性 洗 剤 不 溶 繊 維 )44.5% 硝 酸 態 窒 素 0.06% カルシウム(Ca)0.41% カリウム(K)2.8%であり 可 消 化 養 分 総 量 (TDN)は56.9%(いずれも 乾 物 中 )であった 繁 殖 牛 は 群 として 飼 養 しているために 個 々の 繁 殖 牛 の 摂 取 した 栄 養 量 は 測 定 していないが 給 与 したロールベールサイレージは 飼 料 成 分 やTDN 含 量 から 判 断 するとイタリアンライグラス(1 番 草 開 花 期 )のサイレージに 相 当 する と 思 われる ちなみに 日 本 標 準 飼 料 成 分 表 におけるイタリアンライグラス(1 番 草 開 花 期 )のサイレージは 粗 蛋 白 質 9.7% ADF 41.1% 粗 灰 分 9.7% - 294 -

TDN 57.6 いずれも乾物中 となっている 日本標準飼料成分表 独 農 業技術研究機構 2001 日本飼養標準 肉用牛 2008年版 (社)中央畜産会 2009 によると 成 雌維持時の給与飼料中養分含量は粗蛋白質は12 TDNは50 である これら と比較すると ロールベールサイレージを単一飼料として給与した場合 粗蛋 白質含量はやや低く TDN含量はやや高かった Caについては 飼養標準で示 された含量は0.23 0.25 であり 給与したロールベールサイレージにおけ るCaの平均が0.39 であったことから 不足を生じない含有量であったと思わ れる なお 放牧で採食した牧草の飼料成分や栄養価は測定していないが サ イレージと比較して 高蛋白質であったと考えられる 渡邉らの報告によると レッドトップとトールフェスク主体の牧草放牧地における推定充足率は DCP 可消化粗蛋白質 が395 CP 粗蛋白質 が263 と極めて高く 血液中の BUN 尿素窒素 は平均20.5 mg/dlと異常値を示していた この原因を牧草の CP (DCP)が高レベルであったことの影響と考え これが受胎率の低下や胎児へ の悪影響 高い流産率の一因としている 渡邉 2008 ことから 放牧草地を 構成する草種や放牧における繁殖牛の栄養管理については検討が必要と思われ る 295

8) 資 源 の 流 れ 採 草 地 及 び 放 牧 地 における 粗 飼 料 生 産 とその 利 用 について18 ~ 20 年 度 の 平 均 を 表 19に 示 した 採 草 地 は967aであり そこから 生 産 した 牧 草 のロールベー ルサイレージを873 個 調 製 した 繁 殖 牛 へ687 個 給 与 し 経 営 外 への 販 売 は140 個 であった 一 方 放 牧 地 は413aで 春 季 から 秋 季 にかけて6,504 頭 日 ( 放 牧 時 間 は1 日 6 時 間 )の 放 牧 が 行 われた( 表 19) 繁 殖 牛 群 を 巡 る 資 源 の 流 れは 以 下 の 通 りである 生 産 された 粗 飼 料 及 び 繁 殖 牛 から 生 産 された 子 牛 について 資 源 の 流 れを 図 14に 示 した ロールベール サイレージは175トン(ロール1 個 200kgとした) 生 産 され 給 与 量 は137トン 販 売 量 は28トンであった 購 入 飼 料 については 配 合 飼 料 2トン 程 度 で 主 に 繁 殖 牛 の 分 娩 前 後 の 増 飼 い 用 として 利 用 された 子 牛 は36 頭 が 生 産 され 8 頭 が 子 牛 市 場 に 販 売 され 3 頭 が 繁 殖 用 もと 牛 として また19 頭 が 肥 育 用 としてそ れぞれ 場 内 に 保 留 された 繁 殖 牛 の 内 0.3 頭 が 淘 汰 された ( 図 14) なお 生 産 子 牛 の 頭 数 は3 年 間 の 平 均 であり 繁 殖 用 もと 牛 子 牛 販 売 及 び 肥 育 用 もと 牛 は 同 じ3 年 間 に 仕 向 けられた 平 均 頭 数 であることから 出 と 入 り の 数 値 は 一 致 しない 同 様 に 自 給 飼 料 生 産 におけるロール 重 量 についても 同 様 に 出 と 入 りの 数 値 は 一 致 しない 大 家 畜 経 営 における 飼 料 自 給 率 (TDNベース)は20 年 において 肉 用 牛 の 繁 殖 経 営 は55.4% 粗 飼 料 給 与 率 は67.9%である( 農 林 水 産 省 2009) 肉 用 牛 の 繁 殖 経 営 は 酪 農 とともに 飼 料 自 給 率 が 比 較 的 高 い 部 門 であり 粗 飼 料 給 与 率 の 高 い 部 門 である 飼 料 自 給 率 を 高 めるための 取 り 組 みが 進 んでおり 稲 発 酵 粗 - 296 -

飼 料 の 利 用 やエコフィードの 開 発 などが 積 極 的 に 取 り 組 まれているが 飼 料 自 給 率 を 高 めるためには 自 給 飼 料 の 生 産 拡 大 と 同 時 に 自 給 飼 料 を 活 用 する 部 門 の 強 化 が 重 要 である その 意 味 で 和 牛 繁 殖 は 自 給 飼 料 活 用 の 重 要 な 部 門 であり 自 給 粗 飼 料 活 用 型 の 繁 殖 飼 養 の 構 築 が 求 められる 農 場 においては 粗 飼 料 の 全 量 が 自 給 され 飼 料 全 体 でみても 分 娩 前 後 の 増 飼 のために 給 与 した 配 合 飼 料 を 除 いてほとんどの 給 与 飼 料 が 自 給 されており 自 給 粗 飼 料 活 用 型 の 繁 殖 牛 飼 養 モデルと 位 置 づけられる - 297 -

9)80 対 20の 法 則 80 対 20の 法 則 あるいは パレートの 法 則 という 経 験 則 がある インターネッ トの 用 語 解 説 で パレートの 法 則 の 項 をみると 一 国 の 富 企 業 の 売 り 上 げ 不 良 品 の 発 生 などにおいて 分 配 分 布 発 生 原 因 を 考 えたとき その 大 勢 は 少 数 の 要 因 によって 決 定 されるという 経 験 則 のこと と 説 明 されている 例 えば 不 良 品 全 体 の80%は20%の 原 因 に 由 来 する 売 り 上 げの80%は 全 商 品 の 20%が 作 る などの 使 われ 方 をしている このことを 農 場 の 繁 殖 成 績 に 当 てはめることができないだろうか もし そ れが 可 能 であれば それを 基 にした 繁 殖 成 績 の 解 析 や 問 題 解 決 に 活 かすことが 期 待 される (1) 授 精 回 数 先 ず 授 精 回 数 をみてみよう 未 経 産 牛 及 び 経 産 牛 の 授 精 回 数 は 計 332 回 で あり 授 精 した 延 べ 頭 数 は171 頭 授 精 回 数 は 全 平 均 1.9 回 であった 全 授 精 回 数 の 内 で 受 胎 に 至 らなかった 授 精 は161 回 である 特 に 多 くの 回 数 を 要 した37 頭 (21.6%に 相 当 )に 実 施 して 受 胎 に 至 らなかった 授 精 の 回 数 は111 回 (68.9% に 相 当 )であった 以 上 のように 受 胎 までに 授 精 回 数 を 多 く 要 した21.6%の 繁 殖 牛 によって 受 胎 に 至 らなかった 授 精 回 数 の68.9%が 占 められたことにな る なお この 延 べ37 頭 の 内 8 頭 は 洗 浄 やホルモン 注 射 黄 体 膿 腫 の 治 療 な ど 何 らかの 処 置 が 施 され 処 置 牛 の 全 てがこの 中 に 含 まれた (2) 初 産 牛 の 分 娩 日 齢 次 に 初 産 の 分 娩 日 齢 をみてみよう 初 産 分 娩 した44 頭 の 平 均 分 娩 日 齢 は 768 日 齢 である 家 畜 改 良 増 殖 目 標 (1995 農 林 水 産 省 )の 目 標 値 24カ 月 齢 を 基 準 としてみると これ 以 上 遅 れた 頭 数 は44 頭 中 26 頭 であり 遅 れた 日 数 の 合 計 は1,924 日 であった この 内 特 に 分 娩 が 遅 れた(この 場 合 100 日 以 上 とした) 8 頭 (18.2%)によって 遅 れた 合 計 日 数 は1,197 日 (62.2%)であった この ことから 初 産 分 娩 の 目 標 値 を730 日 齢 (24カ 月 齢 )として それ 以 上 の 遅 れ の62.2%を 特 に 遅 れた18.2%の 繁 殖 牛 が 占 めていたことになる 分 娩 が 遅 れた 8 頭 の 授 精 回 数 をみると 5 頭 が3 回 以 上 で 8 頭 平 均 は3.5 回 となり 牛 群 全 体 の 平 均 1.9 回 より 多 くの 授 精 回 数 を 要 したことが 分 かる - 298 -

(3) 初 産 牛 の 受 胎 日 齢 初 産 牛 の 受 胎 日 齢 については 妊 娠 期 間 を285 日 として 730 日 齢 (24カ 月 齢 ) までに 分 娩 するためには 受 胎 日 齢 が445 日 齢 以 内 である 必 要 がある このこ とから 445 日 齢 を 基 準 にすると それ 以 上 遅 れた 日 数 の 合 計 は1,915 日 であり 特 に 受 胎 日 齢 が 遅 れた(この 場 合 100 日 以 上 の 遅 れ)10 頭 (22.7%)の 遅 れによっ て 全 体 の 遅 れの71.7%が 占 められていた (4) 経 産 牛 の 分 娩 間 隔 経 産 牛 の 分 娩 間 隔 について 既 述 の 家 畜 改 良 増 殖 目 標 では12.5カ 月 を 目 標 値 としている しかし 繁 殖 経 営 に 於 いては 一 年 一 産 が 目 標 とされること が 多 いことから 1 年 (365 日 )を 基 準 とした 分 娩 間 隔 が 明 らかな 経 産 牛 延 べ127 頭 の 内 分 娩 間 隔 が365 日 以 上 であった54 頭 の 分 娩 間 隔 が365 日 以 上 長 く なった 日 数 は 合 計 3,559 日 であった この 内 間 隔 が 特 に 長 かった(この 場 合 60 日 以 上 ) 延 べ25 頭 (19.7%)の 長 さの 合 計 は2,968 日 に 達 し 全 体 の83.4%を 占 めた この25 頭 の 内 初 産 ~2 産 の 分 娩 間 隔 が 長 かったのが13 頭 (52%)で 半 分 を 占 めた また この25 頭 の 内 分 娩 後 の 回 復 が 遅 れた1 頭 (この 牛 は 分 娩 後 の 回 復 が 遅 れて 別 飼 した 結 果 初 回 授 精 が 分 娩 の170 日 後 と 大 幅 に 遅 れ たが 初 回 の 授 精 で 受 胎 した)を 除 く24 頭 の 平 均 種 付 け 回 数 は3.6 回 と 全 体 と 比 べて 授 精 回 数 が2 倍 近 く 多 かった 初 産 ~2 産 の 分 娩 間 隔 が 長 かった12 頭 の 平 均 授 精 回 数 は3.15 回 であったのに 対 して 3 産 ~4 産 から6 産 ~7 産 の12 頭 の 平 均 授 精 回 数 は3.92 回 であったことから 分 娩 間 隔 が 長 くなった 原 因 の 一 つは 受 胎 に 要 した 授 精 回 数 が 多 くなったことではあるが その 影 響 の 程 度 は 初 産 ~ 2 産 とそれ 以 降 では 異 なっていることが 示 唆 された このように 80 対 20の 法 則 について 80あるいは20という 数 字 そのものでは なくて その 大 勢 は 少 数 の 要 因 によって 決 定 される ことに 沿 ってデータを 整 理 し 問 題 解 決 を 図 っていくことが 期 待 される 4.おわりに 以 上 農 場 における 繁 殖 牛 の 導 入 から 現 在 に 至 るまでの 経 過 と 成 績 を 取 りま とめた これらを 踏 まえた 今 後 の 課 題 と 対 処 方 針 について 以 下 に 整 理 した - 299 -

1 導 入 牛 及 びそれから 生 産 された 自 家 産 牛 の 繁 殖 牛 44 頭 の 繁 殖 成 績 は おお むね 平 均 的 なものであったと 思 われる 導 入 当 初 は 黒 毛 和 種 への 人 工 授 精 が 初 めてであり 経 験 を 積 み 重 ねるにつれて 受 精 回 数 の 減 少 や 分 娩 間 隔 の 短 縮 化 などに 成 績 の 向 上 が 認 められた 2 一 方 で 繁 殖 成 績 が 極 端 に 良 くない 一 部 の 繁 殖 牛 によって 全 体 の 成 績 を 大 きく 低 下 させていることから それらの 繁 殖 牛 については 更 新 を 含 めて 検 討 する 必 要 がある 3 今 後 繁 殖 牛 の 産 次 が 多 くなるにつれて 繁 殖 成 績 が 低 下 することが 考 えら れる 特 にボディコンディションスコア( 太 り 具 合 )が 大 きいと 思 われる 繁 殖 牛 については 群 飼 養 の 中 で 適 正 な 栄 養 管 理 をどのように 行 うべきか 検 討 課 題 である 4その 点 からも 放 牧 草 地 やサイレージ 調 製 用 の 採 草 地 における 草 種 の 選 択 が 検 討 されるべきである 5 今 回 は 繁 殖 成 績 として 初 回 受 精 日 数 や 空 胎 日 数 分 娩 間 隔 といった 長 さに 焦 点 を 絞 って 検 討 した しかし 繁 殖 成 績 の 要 因 を 解 析 するには 長 さ だけでは 困 難 であり それ 以 外 の 測 定 データや 血 液 性 状 等 のデータが 不 可 欠 となってきていることを 考 慮 する 必 要 がある 6 肉 用 牛 経 営 は 飼 料 単 価 の 高 騰 や 不 安 定 さ 牛 肉 単 価 の 低 迷 と 子 牛 市 場 に おける 取 引 価 格 の 低 迷 が 続 き 深 刻 な 状 況 が 続 いている そのために 収 益 性 の 向 上 のために 一 層 の 経 費 節 減 が 強 く 求 められる 繁 殖 成 績 の 向 上 は 最 も 経 費 節 減 に 有 効 性 が 高 いことから 繁 殖 成 績 の 一 層 の 向 上 と 安 定 化 を 図 る 必 要 がある 5. 引 用 文 献 朝 日 新 聞 社 (2009) 朝 日 新 聞 平 成 21 年 8 月 19 日 夕 刊 牛 の 受 胎 率 謎 の 低 下 大 型 肥 満 化 など 原 因 か ( 独 ) 農 業 食 品 産 業 技 術 総 合 研 究 機 構 編 (2009) 日 本 飼 養 標 準 肉 用 牛 (2008 年 版 ) ( 社 ) 中 央 畜 産 会 ( 独 ) 農 業 技 術 総 合 研 究 機 構 (2001) 日 本 標 準 飼 料 成 分 表 (2001 年 版 ) 藤 村 和 哉 (2009) 岩 手 県 における 黒 毛 和 種 の 妊 娠 期 間 養 牛 の 友 2009 年 11 月 号 45-48 - 300 -

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