古 代 文 字 資 料 館 いろいろな 概 説 老 乞 大 概 説 1. 老 乞 大 という 書 名 老 乞 大 という 書 名 の 由 来 については 諸 説 あるが 北 方 中 国 の 民 を 表 すモンゴル 語 Kitad の 音 訳 乞 大 に 習 熟 しているという 意 味 の 中 国 語 老 を 冠 した 中 国 通 というほ どの 意 味 であると 考 えられている 2. 成 立 年 代 と 編 者 老 乞 大 は 朴 通 事 とともに 朝 鮮 半 島 で 最 も 古 くから 用 いられた 中 国 語 教 科 書 であ り 両 書 の 成 立 年 代 はほぼ 同 時 期 であると 考 えてよい これらの 名 が 文 献 上 に 初 めて 現 れ るのは 李 氏 朝 鮮 の 世 宗 5 年 (1423)のことで 世 宗 實 録 におけるその 記 載 は 両 書 の 刊 行 を 命 じる 内 容 であるから 成 立 年 代 はさらに 古 いことになる 朱 徳 煕 (1958)は 朴 通 事 に 高 麗 の 名 僧 歩 虚 ( 普 愚 1301-1382)が 大 都 で 法 会 を 開 いたというエピソードが 見 られる ことから 両 書 の 成 立 を 彼 の 入 元 (1346)から 元 朝 滅 亡 (1368)までの 間 と 推 定 している 編 者 は 未 詳 であるが 高 麗 の 通 文 館 がその 成 立 に 関 与 したであろうことは 疑 いない 3. 内 容 と 形 式 老 乞 大 は 高 麗 に 住 む 商 人 が 中 国 人 と 連 れ 立 って 元 の 大 都 ( 後 の 北 京 )に 商 売 に 出 か け 戻 ってくるまでの 話 で 対 中 交 易 に 関 する 実 用 会 話 指 南 書 といった 趣 きの 内 容 である 通 訳 が 商 業 活 動 にも 積 極 的 に 関 与 していた 時 代 のことであるから これが 通 訳 の 養 成 機 関 において 教 科 書 として 用 いられたのもさほど 不 自 然 ではない そのあらすじを 金 文 京 等 (2002)によって 紹 介 すると 以 下 の 通 り: ある 高 麗 の 商 人 ( 名 前 は 不 明 )が 自 分 の 二 人 の 従 兄 弟 ( 姓 は 金 と 李 )および 近 所 の 住 人 ( 姓 は 趙 ただしこの 人 物 は 途 中 から 消 えてしまう)と 高 麗 特 産 の 馬 高 麗 人 参 毛 施 布 (からむし) 帖 裏 布 ( 一 種 の 麻 布 )を 売 りに 高 麗 の 王 京 から 大 都 に 出 かける 途 中 遼 陽 ( 現 在 の 遼 寧 省 遼 陽 )を 過 ぎたあたりで やはり 馬 を 大 都 に 売 りに 行 く 中 国 人 の 商 人 で 遼 陽 に 住 む 王 客 なる 者 と 道 づれになり 道 中 いっしょに 宿 屋 に 泊 まったり 宿 屋 のないところでは 民 家 に 強 引 に 泊 めてもらったりしながら 大 都 に たどり 着 く 大 都 に 着 いた 高 麗 商 人 は まず 大 都 に 在 住 する 親 戚 を 訪 ねて 商 品 の 値 段 などについての 情 報 を 仕 入 れ ついで 泊 まった 宿 の 主 人 の 紹 介 で 馬 を 大 都 の 商 人 に 売 る それからさらに 大 都 の 南 の 涿 州 ( 現 在 の 河 北 省 涿 州 )まで 商 売 に 行 くという 王 客 が 羊 や 反 物 弓 矢 鍋 食 器 などの 商 品 を 仕 入 れるのに 付 き 合 い また 弓 の 試 合 を したり 中 華 料 理 を 作 っていっしょに 酒 を 飲 んだりする 酒 の 飲 みすぎで 医 者 にかか った 王 客 がようやく 涿 州 に 行 くと 高 麗 商 人 はその 間 に 高 麗 人 参 と 毛 施 布 帖 裏 布 1
を 売 り やがて 涿 州 からもどった 王 客 とともに 高 麗 に 帰 ってから 売 るさまざまな 日 用 品 書 籍 などを 仕 入 れ 占 師 のところで 出 発 の 日 取 りを 見 てもらい ついでに 運 勢 を 占 ってもらう 最 後 は 王 客 に 別 れを 告 げ 高 麗 への 帰 途 に 着 くところで 物 語 は 終 わっている ごくわずかなト 書 きを 除 いて 以 上 のようなストーリーがほぼ 登 場 人 物 の 対 話 のみによ って 描 かれている(ただし 話 者 の 区 別 はない) この 他 に 人 としての 生 き 方 を 説 く 処 世 訓 や 放 蕩 の 末 落 ちぶれる 道 楽 息 子 の 話 が 独 白 体 で 挿 入 されている 一 般 には 全 書 を 107 もしくは 111 の 套 話 に 分 ける 4.テキスト (1) 諺 解 と 改 訂 諺 解 とは 諺 文 すなわちハングルによる 漢 字 音 注 と 朝 鮮 語 訳 を 施 すことで ハン グルの 公 布 (1446 年 ) 直 後 から 李 朝 の 末 期 まで 広 く 用 いられた 形 式 である 老 乞 大 にも 漢 字 のみで 記 された 漢 字 本 と ハングルを 用 いた 諺 解 本 の 両 様 が 存 在 する 司 訳 院 では 中 国 語 の 会 話 教 科 書 類 に 対 して 改 訂 を 加 える 作 業 を 歴 代 行 ってきたが 老 乞 大 に 関 しては 大 幅 な 改 訂 が 少 なくとも 二 回 あり 第 一 次 改 訂 は 15 世 紀 末 に 第 二 次 改 訂 は 18 世 紀 後 半 に 行 われたとされる 一 般 に 原 本 に 最 も 近 いものを 旧 本 ( 古 本 ) 系 第 一 次 改 訂 を 経 たものを 新 本 ( 今 本 ) 系 第 二 次 改 訂 を 経 たものを 清 代 改 訂 本 系 と 呼 ぶ 改 訂 はまず 漢 字 本 について 行 われ 新 しいテキストに 基 づいた 諺 解 本 が 出 版 される という 形 を 取 るが 漢 字 部 分 には 大 きな 変 更 を 加 えずに 諺 解 の 部 分 のみを 改 訂 する 場 合 も ある (2) 現 存 のテキスト 群 現 在 我 々が 見 ることのできる 老 乞 大 のテキストは 以 下 の 9 種 である: 漢 字 本 諺 解 本 旧 本 ( 古 本 ) 系 1 旧 本 老 乞 大 (14 世 紀 末 頃 ) 3 翻 訳 老 乞 大 (1517 年 以 前 ) 新 本 ( 今 本 ) 系 2 漢 字 本 老 乞 大 (1483 年 頃 ) 4 老 乞 大 諺 解 (1670 年 ) 5 重 刊 本 老 乞 大 諺 解 (1745 年 ) 6 老 乞 大 新 釈 (1761 年 ) 7 老 乞 大 新 釈 諺 解 (1763 年 ) 清 代 改 訂 本 系 8 重 刊 老 乞 大 (1795 年 ) 9 重 刊 老 乞 大 諺 解 (1795 年 以 後 ) なお 老 乞 大 は 司 訳 院 において 中 国 語 の 教 科 書 としてのみならず 他 の 外 国 語 の 教 科 書 としても 用 いられた そのモンゴル 語 版 である 蒙 語 老 乞 大 (1741) 満 洲 語 版 である 清 語 老 乞 大 (1703)が 現 存 しているほか 日 本 語 版 も 編 纂 されたことが 知 られている( 存 否 未 詳 ) おそらく 東 アジアで 最 も 長 期 間 最 も 広 範 囲 にわたって 流 通 した 会 話 教 科 書 と 言 えるであろう 2
(3) 各 テキストの 概 要 1 旧 本 老 乞 大 < 図 版 1 参 照 > 1998 年 に 韓 国 の 大 邱 市 で 私 人 の 蔵 書 中 から 発 見 されたテキスト 内 容 言 語 の 面 から 見 て それまでに 知 られていたどの 版 本 よりも 古 いバージョンであることは 明 らかであり 今 のところ 最 も 早 い 段 階 で 刊 行 された 老 乞 大 のテキストであると 考 えられている 内 題 は 老 乞 大 であるが この 中 で 使 用 される 幾 つかの 語 彙 が 崔 世 珍 の 著 した 老 乞 大 朴 通 事 の 注 釈 書 老 朴 集 覽 の 中 で 旧 本 または 古 本 として 言 及 されているも のと 一 致 することから 一 般 に 旧 本 老 乞 大 または 古 本 老 乞 大 と 呼 ばれる(この 他 に 元 本 原 本 を 冠 する 場 合 もある) その 版 式 や 紙 質 から 見 て 李 氏 朝 鮮 の 太 宗 年 間 (1401-1418) 以 前 に 刊 行 されたものと 考 えられている 現 存 のテキストは 木 版 本 で 序 跋 なし 不 分 巻 一 冊 ( 全 40 張 ) 毎 半 葉 10 行 各 行 21 字 句 点 はなく 套 話 を 分 けない 韓 国 では 慶 北 大 学 校 (2000) 中 国 では 鄭 光 主 編 (2000) 汪 維 輝 編 (2005)として 翻 字 付 きの 影 印 本 が 出 版 されている また 金 文 京 等 (2002)はその 日 本 語 による 訳 注 鄭 光 (2004) はその 朝 鮮 語 による 訳 注 である 2 漢 字 本 老 乞 大 < 図 版 2 参 照 > 老 乞 大 の 第 一 次 改 訂 は 成 宗 11 年 から 14 年 (1480-1483)の 間 に 房 貴 和 葛 貴 とい う 二 人 の 中 国 人 によってなされたとされる 改 訂 を 経 たテキストは 老 朴 集 覽 の 中 で 新 本 または 今 本 と 称 されているが その 系 統 の 中 で 最 も 古 形 を 存 していると 思 われる のが 漢 字 本 老 乞 大 と 呼 ばれるテキストである 内 題 は1と 同 様 老 乞 大 であるが 他 と 区 別 するために 一 般 に 漢 字 本 を 冠 する 韓 国 には 同 系 統 ではあるものの 同 版 では ないテキストが 4 種 類 ほど 現 存 しているので 正 確 にはテキスト 群 に 対 する 総 称 であるが その 中 の 一 つ ソウル 大 学 校 奎 章 閣 所 蔵 の 奎 6293 が 最 も 普 及 しているので 狭 義 には これを 指 す 刊 行 年 は 未 詳 木 版 本 で 序 跋 なし 不 分 巻 一 冊 ( 全 48 張 ) 毎 半 葉 10 行 各 行 17 字 句 点 はなく 套 話 も 分 けないが もとの 所 蔵 者 が 筆 で 書 き 込 んだ 句 点 や 套 話 の 表 示 がある 京 城 帝 国 大 学 (1944)の 影 印 本 とその 再 影 印 本 ( 亜 細 亜 文 化 社 1973 聯 経 出 版 1977) 及 び 奎 章 閣 (2003a)によって 見 ることができるが 京 城 帝 国 大 学 本 では 欄 外 に 編 者 が 影 印 の 段 階 で 付 け 加 えた 書 き 込 みがある 本 書 に 基 づく 英 語 訳 に Dyer(1983)がある 3 翻 訳 老 乞 大 < 図 版 3 参 照 > 李 氏 朝 鮮 初 期 を 代 表 する 文 臣 の 一 人 崔 世 珍 (1467-1543)が 編 纂 したとされる 老 乞 大 最 古 の 諺 解 本 内 題 はやはり 老 乞 大 であるが 一 般 には 翻 訳 老 乞 大 と 呼 ばれてい る 崔 世 珍 の 編 んだ 韻 書 四 聲 通 解 (1517)の 巻 末 に 飜 譯 老 乞 大 朴 通 事 凡 例 が 収 めら れることから( 翻 訳 老 乞 大 という 通 称 はこれに 由 来 する) 成 立 した 年 代 が 1517 年 以 前 であることは 疑 いない 1970 年 代 に 発 見 された 現 存 のテキストは 木 版 本 であるが 乙 亥 字 3
( 乙 亥 の 年 =1455 年 に 鋳 造 された 銅 活 字 )によって 刊 行 された 書 物 と 書 体 がよく 似 ている ことから もとの 乙 亥 字 本 を 覆 刻 したものと 考 えられている 序 跋 なし 上 下 二 巻 二 冊 ( 上 巻 71 張 下 巻 73 張 ) 毎 半 葉 9 行 各 行 19 字 漢 字 本 文 が 大 字 で 示 され 一 字 ごとにハ ングルで 二 種 類 の 漢 字 音 を 示 すとともに の 記 号 でフレーズを 区 切 り その 後 に 小 字 双 行 で 朝 鮮 語 訳 が 挿 入 されるというスタイルを 取 る(これは 以 後 の 諺 解 本 にも 踏 襲 される) 套 話 を 分 けない ハングルによる 漢 字 音 注 では 声 点 という 朝 鮮 語 のアクセント 記 号 に よって 中 国 語 の 声 調 が 示 されており 漢 字 音 の 研 究 資 料 として 価 値 が 高 い 漢 字 部 分 は 若 干 の 字 体 の 異 同 を 除 いて2の 漢 字 本 と 概 ね 同 じである 現 在 の 所 蔵 は 上 巻 が 白 淳 在 氏 下 巻 が 趙 炳 舜 氏 上 巻 は 中 央 大 學 校 (1972) 及 び 大 提 閣 (1974;1985) 下 巻 は 仁 荷 大 學 校 (1975) 及 び 大 提 閣 (1988) 上 下 巻 を 合 わせたものは 亞 細 亞 文 化 社 (1980)により 影 印 されている 漢 字 本 文 は 金 文 京 等 (2002)に1と 対 照 する 形 で 収 められている また 本 書 のハングル 漢 字 音 注 は 遠 藤 光 暁 (1990)に 索 引 の 形 でまとめられている 4 老 乞 大 諺 解 < 図 版 4 参 照 > 3の 改 訂 版 であるが 漢 字 本 文 にはほとんど 手 を 加 えず ハングル 音 注 と 朝 鮮 語 訳 の 部 分 を 改 訂 している 内 題 は 老 乞 大 諺 解 司 訳 院 の 沿 革 を 記 した 通 文 館 志 によれば 本 書 は 顕 宗 11 年 (1670)に 刊 行 されたといい 現 存 するのは 戊 申 字 (1668 年 鋳 造 )の 銅 活 字 本 である 序 跋 なし 上 下 二 巻 二 冊 ( 上 巻 64 張 下 巻 66 張 ) 毎 半 葉 10 行 各 行 19 字 諺 解 のスタイルは3と 同 様 であるが 魚 尾 の 記 号 によって 全 体 を 107 の 套 話 に 分 け ることと ハングル 音 注 に 声 点 を 欠 いている 点 が 異 なる 韓 国 及 びアメリカに 伝 本 が 数 種 存 在 しており それぞれに 若 干 の 異 同 があるようだが そのうちソウル 大 学 校 奎 章 閣 に 所 蔵 される 奎 2044 の 影 印 を 京 城 帝 国 大 学 (1944)とその 再 影 印 本 ( 亜 細 亜 文 化 社 1973 聯 経 出 版 1977 汪 維 輝 編 2005) 及 び 奎 章 閣 (2003a)によって 見 ることができる( 汪 維 輝 本 は 翻 字 を 含 む) 漢 字 部 分 の 翻 字 に 劉 堅 等 (1995) 第 1-4 話 に 詳 細 な 注 釈 を 施 したものに 太 田 辰 夫 (1957) また 本 書 に 基 づく 中 国 語 の 語 彙 索 引 として 陶 山 信 男 (1973)がある 5 重 刊 本 老 乞 大 諺 解 < 図 版 5 参 照 > 4の 音 注 と 朝 鮮 語 訳 部 分 をさらに 改 訂 し 木 版 本 として 刊 行 したもの 内 題 は 同 じく 老 乞 大 諺 解 であるが 一 般 には 平 安 監 営 重 刊 本 平 壌 版 の 名 を 冠 するか あるいは 現 存 本 の 表 紙 に 基 づき 旧 刊 老 乞 大 とも 言 われる 巻 首 には 卞 熤 による 英 祖 21 年 (1745) の 老 乞 大 諺 解 序 があり 銅 活 字 本 老 乞 大 諺 解 の 伝 本 がわずかとなり また 古 今 の 漢 字 音 の 相 違 が 甚 だしくなったため 改 訂 を 行 ったとの 記 述 がある また 巻 尾 には 改 訂 に 携 わった 校 正 官 5 名 書 写 官 3 名 の 名 前 と 平 安 監 營 重 刊 という 刊 記 がある 平 安 監 營 は 現 在 の 平 壌 にあった 地 方 行 政 機 関 である 上 下 二 巻 二 冊 ( 上 巻 64 張 下 巻 66 張 ) 毎 半 葉 10 行 各 行 19 字 で4に 等 しく 諺 解 のスタイルも 全 く 同 様 である ソウル 大 学 校 奎 章 閣 に 所 蔵 される 奎 2303 の 影 印 を 弘 文 閣 (1984) 及 び 奎 章 閣 (2003a)によって 見 るこ 4
とができる 6 老 乞 大 新 釈 < 図 版 6 参 照 > 18 世 紀 の 後 半 になって 漢 字 部 分 の 第 二 次 改 訂 が 行 われる 改 訂 は 比 較 的 短 期 間 のうち に 二 度 行 われているが そのうち 最 初 に 出 た 漢 字 本 がこのテキストである 巻 首 には 洪 啓 禧 による 英 祖 37 年 (1761)の 老 乞 大 新 釋 序 があり その 前 年 勅 命 によって 北 京 に 赴 い た 折 同 行 した 訳 官 邊 憲 が 北 京 で 改 訂 を 行 ったとの 記 述 がある また 巻 尾 には 検 察 官 2 名 校 正 官 7 名 書 写 官 4 名 の 名 前 が 挙 げられている 内 題 は 老 乞 大 新 釋 木 版 本 で 不 分 巻 一 冊 ( 全 46 張 ) 毎 半 葉 10 行 各 行 20 字 句 点 は 予 め 刻 されている また の 記 号 によって 套 話 を 分 けているが それによると 全 体 で 111 套 話 となり 従 来 のものに 比 べ 4 話 多 い これは 話 数 を 増 やしたのではなく 区 切 りを 変 えたことによる 本 書 は 長 らく 一 般 に 普 及 していなかったが 近 年 になりソウル 大 学 校 奎 章 閣 所 蔵 の 奎 4871 が 奎 章 閣 (2003b) 及 び 汪 維 輝 編 (2005)の 影 印 ( 後 者 は 翻 字 を 含 む)によって 見 られるようになった 7 老 乞 大 新 釈 諺 解 6の 諺 解 本 通 文 館 志 によれば 本 書 は 同 じく 邊 憲 の 著 で 英 祖 39 年 (1763)に 刊 行 されたという この 書 の 一 部 は 現 在 アメリカ コロンビア 大 学 の East Asian Liblary に 所 蔵 されている 内 題 は 老 乞 大 新 釋 諺 解 木 版 本 で 三 巻 三 冊 のうち 巻 一 (59 張 )だけが 現 存 する 毎 半 葉 10 行 各 行 20 字 諺 解 のスタイルは4と 同 様 だが 魚 尾 ではなく 改 行 に よって 套 話 を 分 ける 点 ( 現 存 本 では 第 36 話 まで)と 各 話 ごとに 小 字 双 行 で 一 世 代 前 のテ キスト(4の 系 統 と 推 測 される)をハングル 音 注 付 きで 引 用 している 点 が 異 なり そのた め 現 存 の 老 乞 大 テキストでは 唯 一 三 巻 構 成 を 取 っている 影 印 本 は 刊 行 されていない なお 以 上 の 記 述 は ソウル 大 学 校 がコロンビア 大 学 所 蔵 本 のマイクロフィルムを 焼 き 付 け た 影 照 本 による 8 重 刊 老 乞 大 < 図 版 8 参 照 > 6の 老 乞 大 新 釈 から 約 30 年 の 後 に 再 度 漢 字 部 分 の 改 訂 が 行 われている 序 跋 はない が 巻 尾 に 校 検 官 7 名 校 整 官 10 名 書 写 官 10 名 監 印 官 1 名 の 名 前 と 乙 卯 仲 秋 本 院 重 刊 という 刊 記 がある 乙 卯 は 正 祖 19 年 (1795)に 当 たる 内 題 は 重 刊 老 乞 大 木 版 本 で 不 分 巻 一 冊 (44 張 ) 毎 半 葉 10 行 各 行 20 字 で 張 数 以 外 は6と 同 様 句 点 を 予 め 刻 し によって 套 話 を 111 に 分 ける 点 も 同 じである 全 体 的 に 見 て 6の 表 現 を 旧 来 のものに 戻 す 方 向 で 改 訂 している 箇 所 が 目 立 つ 韓 国 及 び 日 本 にいくつかの 伝 本 が 現 存 するが ソウル 大 学 校 奎 章 閣 所 蔵 の 奎 4869 の 影 印 を 奎 章 閣 (2003b)によって 見 るこ とができる 9 重 刊 老 乞 大 諺 解 < 図 版 9 参 照 > 5
8の 諺 解 本 序 跋 はなく 他 に 刊 行 年 代 を 示 す 資 料 もないが 8と 同 時 期 かもしくはそ の 数 年 後 に 刊 行 されたものと 思 われる 内 題 は 重 刊 老 乞 大 諺 解 木 版 本 で 上 下 二 巻 二 冊 ( 上 巻 65 張 下 巻 67 張 ) 毎 半 葉 10 行 各 行 20 字 諺 解 のスタイルは4 以 降 のものを 踏 襲 しているが 7と 同 様 改 行 によって 套 話 を 111 に 分 けている 点 が 異 なる 韓 国 及 び 日 本 に いくつかの 伝 本 があるが そのうちソウル 大 学 校 奎 章 閣 所 蔵 の 奎 2049 の 影 印 を 弘 文 閣 (1984) 及 び 汪 維 輝 編 (2005)によって( 後 者 は 漢 字 部 分 の 翻 字 を 含 む) また 奎 2050 の 影 印 を 奎 章 閣 (2003b)によって 見 ることができる (4) 注 釈 書 10 老 朴 集 覽 < 図 版 10 参 照 > 本 書 は 崔 世 珍 の 手 になる 老 乞 大 朴 通 事 の 注 釈 書 で 刊 行 年 代 は 不 明 だが3と 同 様 1517 年 以 前 には 成 立 していたとされている 1960 年 代 に 発 見 された 銅 活 字 本 ( 乙 亥 字 本 ) は 單 字 解 累 字 解 一 巻 (10 張 ) 老 乞 大 集 覽 二 巻 ( 上 巻 3 張 下 巻 4 張 ) 朴 通 事 集 覽 三 巻 ( 上 巻 15 張 中 巻 9 張 下 巻 13 張 )という 構 成 を 持 つ 單 字 解 累 字 解 が 毎 半 葉 9 行 他 は 毎 半 葉 10 行 いずれも 各 行 19 字 見 出 し 字 が 大 字 で 掲 げられ その 下 に 小 字 双 行 で 注 釈 が 記 されている 單 字 解 累 字 解 は 老 乞 大 朴 通 事 の 常 用 語 彙 に 対 する 注 釈 で 前 者 は 漢 字 一 字 後 者 は 二 字 以 上 の 単 語 を 対 象 とする 老 乞 大 集 覽 朴 通 事 集 覽 はそれぞれの 書 物 に 特 有 の 語 彙 を 解 説 したもの 現 在 は 韓 国 東 国 大 学 校 図 書 館 蔵 これを 李 丙 疇 (1966)に 収 められた 影 印 によって 見 ることができる なお 後 述 の 朴 通 事 諺 解 (1677)には 朴 通 事 集 覽 が 注 の 形 で 組 み 込 まれているほか 同 書 の 巻 末 には 單 字 解 の 一 部 と 老 乞 大 集 覽 が 附 録 として 収 められている (5) 参 考 書 遠 藤 光 暁 (1990)は3のハングル 漢 字 音 注 索 引 であるとともに 巻 末 に 老 乞 大 朴 通 事 の 現 存 諸 テキストと 研 究 文 献 がまとめられており 有 用 である 中 国 語 の 語 彙 索 引 と しては4を 対 象 とする 陶 山 信 男 (1973)があるが 現 在 は 台 湾 中 央 研 究 院 のコーパス( 漢 籍 電 子 文 献 ;http://www.sinica.edu.tw/)も 利 用 できる また 老 乞 大 朴 通 事 の 流 伝 に 重 要 な 役 割 を 果 たした 崔 世 珍 については 金 俊 憲 (1999)による 略 年 譜 が 参 考 となる こ の 他 1469の 漢 字 部 分 を 対 照 の 形 で 配 置 したテキストに 李 泰 洙 (2003)があり また 2345における 漢 字 部 分 の 異 同 をまとめたものに 竹 越 孝 (2005)がある <この 項 の 参 考 文 献 > 亞 細 亞 文 化 社 (1973) 老 乞 大 朴 通 事 諺 解 ソウル: 亞 細 亞 文 化 社 ( 國 語 國 文 學 資 料 叢 書 ). 亞 細 亞 文 化 社 (1980) 原 本 老 乞 大 諺 解 全 ソウル: 亞 細 亞 文 化 社 ( 國 語 國 文 學 資 料 叢 書 ). 遠 藤 光 暁 (1990) 翻 譯 老 乞 大 朴 通 事 漢 字 注 音 索 引 東 京 : 好 文 出 版 ( 開 篇 単 刊 3) 太 田 辰 夫 (1953) 老 乞 大 の 言 語 について 中 國 語 學 研 究 会 論 集 1:1-14; 中 国 語 史 通 考 : 6
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< 図 版 1> 旧 本 老 乞 大 ( 慶 北 大 學 校 2000 による) 8
< 図 版 2> 漢 字 本 老 乞 大 ( 京 城 帝 國 大 學 1944 による) 9
< 図 版 3> 翻 訳 老 乞 大 ( 亞 細 亞 文 化 社 1980 による) 10
< 図 版 4> 老 乞 大 諺 解 ( 京 城 帝 國 大 學 1944 による) 11
< 図 版 5> 重 刊 本 老 乞 大 諺 解 ( 弘 文 閣 1984 による) 12
< 図 版 6> 老 乞 大 新 釈 ( 奎 章 閣 2003b による) 13
< 図 版 8> 重 刊 老 乞 大 ( 奎 章 閣 2003b による) 14
< 図 版 9> 重 刊 老 乞 大 諺 解 ( 弘 文 閣 1984 による) 15
< 図 版 10> 朴 通 事 諺 解 附 載 老 乞 大 集 覽 ( 京 城 帝 國 大 學 1944 による) 16