少 花 粉 スギミニチュア 採 種 園 における 交 配 実 態 The mating actual situation in miniature seed orchard of the few pollen Cryptomeria japonica 中 村 博 一 Ⅰ はじめに Wheeler and jech(1992)は 適 正 な 採 種 園 経 営 として 1 正 確 な 植 栽 と 管 理 2 外 部 からの 花 粉 混 入 の 回 避 3 自 殖 の 防 止 4 種 子 に 対 する 均 等 な 寄 与 の4 点 が 必 要 であることを 指 摘 している しか し 森 口 ら(25)は 採 種 園 の 交 配 実 態 に 関 する 研 究 報 告 をまとめ 採 種 園 における 外 部 からの 花 粉 の 混 入 が 少 ない 場 合 でも3% 程 度 多 い 場 合 では8%に 達 することを 示 している Tsubomura et al (212)は 雄 花 の 着 花 特 性 の 遺 伝 率 は 極 めて 高 いことを 明 らかにしており この 結 果 に 従 えば 雄 花 着 花 特 性 は 確 実 に 遺 伝 形 質 と 言 える 既 存 スギ 人 工 林 は 成 長 量 や 形 質 を 主 眼 として 植 栽 されており 雄 花 着 花 量 が 多 い 個 体 が 大 部 分 であると 考 えられることから 採 種 園 内 に 外 部 からの 花 粉 が 占 める 割 合 が 高 い 場 合 には そこから 生 産 された 種 苗 の 雄 花 着 花 特 性 は 外 部 花 粉 の 影 響 を 受 けることで 花 粉 症 対 策 種 苗 として 問 題 が 生 じる 可 能 性 が 高 い Ozawa et al(29)は 採 種 園 内 の 交 配 は 雄 花 着 花 量 の 多 い 個 体 の 寄 与 率 が 高 いことを 明 らかにしており Wheeler and jech(1992)が 指 摘 した4つの 要 因 の うち 2と4については 採 種 園 内 に 占 める 花 粉 の 割 合 が 交 配 に 大 きく 影 響 することを 示 唆 している 少 花 粉 スギは 雄 花 着 花 量 が 少 なく また 花 粉 症 対 策 種 苗 はミニチュア 採 種 園 形 式 で 生 産 されており 採 種 木 の 個 体 サイズも 小 さい そのため 採 種 園 内 で 流 動 する 花 粉 量 は 少 なくなり 既 存 採 種 園 とは 異 なる 交 配 実 態 を 示 す 可 能 性 が 考 えられることから 外 部 花 粉 の 影 響 により 期 待 されるほど 雄 花 着 花 量 が 低 下 しないことが 考 えられる ミニチュア 採 種 園 形 式 が 各 地 に 造 成 され 花 粉 症 対 策 品 種 の 生 産 体 制 が 整 いつつあるが 生 産 された 実 生 苗 木 の 着 花 量 や 林 業 用 種 苗 としての 特 性 はこれまで 十 分 評 価 されていない 採 種 園 内 における 交 配 実 態 の 調 査 や 得 られた 種 苗 の 交 配 組 み 合 わせ 種 苗 の 特 性 などを 早 急 に 把 握 する 必 要 性 がある そこで 群 馬 県 林 業 試 験 場 では 少 花 粉 スギクローンで 構 成 したミニチュア 採 種 園 の 種 子 から 生 産 した 実 生 苗 をDNA 解 析 により 花 粉 親 を 特 定 し ミニチュア 採 種 園 における 交 配 実 態 の 解 明 に 取 り 組 んだ また 種 子 採 取 区 画 全 体 に 簡 易 な 被 覆 を 行 うことにより 外 部 花 粉 混 入 の 軽 減 効 果 について も 取 り 組 んだ なお 本 研 究 は 国 立 研 究 開 発 法 人 森 林 総 合 研 究 所 林 木 育 種 センター( 以 下 林 木 育 種 センター)を 中 心 に 関 東 中 部 の1 都 県 の 林 業 試 験 研 究 機 関 及 び 宇 都 宮 大 学 が 共 同 で 取 り 組 む 新 たな 農 林 水 産 政 策 を 推 進 する 実 用 技 術 開 発 事 業 花 粉 症 対 策 ヒノキ スギ 品 種 の 普 及 拡 大 技 術 開 発 と 雄 性 不 稔 品 種 開 発 によって 得 られた 成 果 である Ⅱ 方 法 1 交 配 実 態 調 査 (1) 調 査 地 渋 川 市 横 堀 の 林 木 育 種 場 内 標 高 約 55mの 南 斜 面 に 造 成 した 少 花 粉 スギ 品 種 で 構 成 しているミニ チュア 採 種 園 を 調 査 地 とした 採 種 園 の 概 要 を 表 -1に 区 画 の 配 置 を 図 -1に 構 成 しているクロ - 62 -
ーンを 表 -2に 示 す 調 査 区 画 は 21 年 がC 区 画 211 年 はD 区 画 212 年 はB 区 画 及 びE 区 画 と した (2) 調 査 方 法 21 年 211 年 及 び212 年 ともに 同 じ 課 題 に 取 り 組 んだ 群 馬 県 埼 玉 県 及 び 茨 城 県 が 共 通 して 植 栽 している 那 珂 2 号 群 馬 4 号 利 根 6 号 の3クローン 及 び 茨 城 県 と 共 通 の 周 南 1 号 埼 玉 県 と 共 通 の 西 多 摩 14 号 筑 波 1 号 の2クローンの 合 計 6クローンを 調 査 クローンとして 設 定 した 各 調 査 クローンは 林 縁 を 除 きかつ 調 査 区 画 内 で 隣 り 合 わない 箇 所 から3 本 ずつ 選 木 した (3)DNA 解 析 花 粉 親 を 特 定 するため 採 取 した 種 子 を 群 馬 県 林 業 試 験 場 内 で21 年 及 び212 年 の 採 取 種 子 は 調 査 クローン 別 に 211 年 採 取 種 子 は 調 査 クローン 別 かつ 個 体 別 に 発 芽 させた 種 子 からCTAB 法 ( 白 石 渡 辺,1995)によってDNAの 抽 出 を 行 った 花 粉 親 の 特 定 には シカの 血 縁 関 係 調 査 に 利 用 さ れているCervus3.(Kalinowski et al,27)ソフトを 使 用 し 最 尤 法 により8 種 類 のマイクロサテ ライト( 以 下 SSR)マーカーのうち 解 析 精 度 の 高 い4 種 類 のSSRマーカーで 特 定 されたDNA 塩 基 配 列 の 塩 基 数 を 対 立 遺 伝 子 と 仮 定 し その 比 較 により 花 粉 親 を 決 定 した なお DNAの 抽 出 及 び 解 析 は 林 木 育 種 センターが 行 った その 結 果 花 粉 親 が 花 粉 の 少 ないスギ 品 種 であれば 区 画 内 交 配 とみ なし それ 以 外 については 外 部 花 粉 交 配 として 評 価 した また 調 査 クローンを 中 心 とした 場 合 花 粉 親 ( 父 親 )がどこに 位 置 していた 採 種 木 が 影 響 しているのかを 調 べるため 隣 接 木 を1とし 逐 次 2 3 4として 位 置 関 係 を 確 認 した( 図 -2) 表 -1 少 花 粉 スギミニチュア 採 種 園 の 概 要 区 画 造 成 年 面 積 (ha) クローン 数 植 栽 本 数 植 栽 間 隔 (m) A 23.2 11 69 1.2 1.2 B 24.3 14 15 1.2 1.2 C 25.3 34 147 1.2 1.2 D 25.3 31 127 1.2 1.2 E 21.3 32 162 1.2 1.2 F 211.3 31 155 1.2 1.2 クローン 数 及 び 植 栽 本 数 は213 年 時 点 C 区 画 B 区 画 A 区 画 D 区 画 E 区 画 F 区 画 図 -1 ミニチュア 採 種 園 区 画 別 配 置 - 63 -
表 -2 ミニチュア 採 種 園 区 画 別 構 成 クローン 一 覧 コード No 系 統 名 A B C D E F 計 993 1 多 賀 2 3 1 1 7 7 19 9 2 南 那 須 2 9 4 4 6 5 28 782 3 南 会 津 4 9 4 2 4 5 24 846 4 河 沼 1 8 2 3 5 6 24 111 5 那 珂 5 1 6 6 13 84 6 東 白 川 9 5 2 5 7 19 18 7 那 珂 2 7 2 1 7 7 24 14 8 多 賀 14 8 4 3 5 4 24 895 9 上 都 賀 9 9 4 3 3 7 26 93 1 利 根 3 14 13 5 5 37 933 11 利 根 6 2 2 1 8 5 5 32 885 12 坂 下 2 8 23 9 5 45 122 13 西 多 摩 2 9 3 2 5 5 24 1175 14 北 三 原 1 19 2 1 22 1176 15 北 三 原 3 16 3 3 4 5 31 1178 16 周 南 1 1 4 4 4 4 26 1183 17 勝 浦 1 21 2 4 4 2 33 1174 18 鬼 泪 1 1 2 3 5 5 16 1148 19 比 企 13 2 2 1 4 6 15 153 2 筑 波 1 7 2 4 5 18 128 21 久 慈 17 12 12 948 22 群 馬 4 13 13 6 6 38 949 23 群 馬 5 12 15 6 4 37 123 24 西 多 摩 3 3 2 4 5 14 1213 25 西 多 摩 14 4 4 5 6 19 1247 26 足 柄 下 1 1 4 2 7 1252 27 足 柄 下 6 7 4 5 5 21 1264 28 愛 甲 1 3 4 5 4 16 1265 29 愛 甲 2 3 4 5 5 17 1269 3 津 久 井 3 3 3 6 3 15 1277 31 丹 沢 5 3 3 7 2 15 1292 32 片 浦 4 1 1 4 3 9 1293 33 片 浦 5 4 4 5 4 17 1277 34 北 群 馬 1 7 6 8 6 9 36 1292 35 多 野 2 7 7 8 5 6 33 1159 36 秩 父 ( 県 )1 2 2 4 計 69 15 147 127 162 155 81 クローン 数 11 14 34 31 32 31 4 3 2 1 4 3 2 1 1 2 3 4 1 2 3 4 図 -2 調 査 木 を 中 心 とした 植 栽 位 置 の 確 認 を 採 種 木 とし 隣 接 木 を 近 い 位 置 から1とする - 64 -
2 簡 易 被 覆 による 外 部 花 粉 の 軽 減 効 果 外 部 花 粉 の 影 響 を 軽 減 する 方 法 を 検 討 するため 211 年 2 月 1 日 に 上 面 にブルーシートによる 簡 易 被 覆 をA 区 画 に 設 置 した( 図 -3 図 -4) その 後 211 年 6 月 25 日 に 撤 去 した 211 年 1 月 15 日 に 調 査 木 から 球 果 を 採 取 し 精 選 した 種 子 については 交 配 実 態 調 査 と 同 様 に DNA 解 析 を 行 い 花 粉 親 を 特 定 した また 調 査 木 の 花 粉 飛 散 時 期 を 確 認 するため 211 年 2 月 下 旬 から 雄 花 が 着 生 した 枝 を 棒 で 叩 き 目 視 により 花 粉 飛 散 状 況 を 観 察 した なお 対 照 区 は 同 時 期 に 種 子 を 採 取 したD 区 画 とした 図 -3 簡 易 防 除 施 設 施 行 状 況 図 -4 簡 易 防 除 施 設 設 置 状 況 Ⅲ 結 果 及 び 考 察 1 交 配 実 態 調 査 21 年 211 年 及 び212 年 のミニチュア 採 種 園 における 交 配 実 態 を 表 -3に 示 す 年 度 により 変 動 があるが 外 部 花 粉 率 を 示 す 区 画 外 交 配 率 は 46.2%~68.9%で 3か 年 の 平 均 は56.7%であった この 結 果 は 森 口 ら(23)の 報 告 と 同 様 な 傾 向 であった また 周 囲 のスギ 花 粉 飛 散 量 を 見 るため ミニチュア 採 種 園 側 に 設 置 してある 花 粉 自 動 計 測 器 環 境 省 花 粉 観 測 システム( 愛 称 :はなこさ ん) のデータを 図 -5に 示 す 花 粉 自 動 計 測 器 は ダーラム 型 花 粉 捕 集 器 から 得 たデータと 比 較 し 高 い 相 関 を 得 ており 花 粉 飛 散 量 モニタリングにおける 有 用 性 は 高 いと 報 告 されいる( 畔 上 ら,211) 年 度 別 のスギ 花 粉 空 中 飛 散 量 をみると 211 年 が21 年 及 び212 年 と 比 較 し 圧 倒 的 に 高 く ミニチュ ア 採 種 園 の 外 部 花 粉 率 の 傾 向 と 同 様 であった このことから 採 種 園 の 交 配 は 周 囲 のスギ 花 粉 飛 散 数 が 影 響 している 可 能 性 があり 花 粉 飛 散 量 が 多 い 年 は 外 部 花 粉 率 が 高 く 花 粉 飛 散 量 の 少 ない 年 では 外 部 花 粉 率 が 低 くなることが 示 唆 された 採 種 園 内 交 配 に 寄 与 する 花 粉 親 のクローンを 明 らかにした 結 果 調 査 木 を 中 心 とした1 列 目 と2 列 目 までの 採 種 木 で 全 体 の 約 8%を 占 めており 5 列 目 まで 行 くと 全 体 の 約 98%であった このことにより 採 種 木 を 中 心 として 5 列 目 までに 位 置 する 採 種 木 が 花 粉 親 として 寄 与 しており 特 に1 列 目 から2 列 目 までに 位 置 する 採 種 木 が 花 粉 親 として 強 く 寄 与 し ていることが 示 唆 された( 図 -6) 表 -3 ミニチュア 採 種 園 における 年 度 別 交 配 実 態 区 画 区 画 内 交 配 率 (%) 外 部 花 粉 交 配 率 (%) 21 年 (C 区 画 ) 44.9 55.1 211 年 (D 区 画 ) 31.1 68.9 212 年 (B E 区 画 ) 53.8 46.2 平 均 43.3 56.7-65 -
15 135 12 212 年 211 年 21 年 スギ 花 粉 飛 散 量 ( 個 /m3) 15 9 75 6 45 3 15 2 月 1 日 2 月 5 日 2 月 9 日 2 月 13 日 2 月 17 日 2 月 21 日 2 月 25 日 2 月 29 日 3 月 4 日 3 月 8 日 3 月 12 日 3 月 16 日 3 月 2 日 3 月 24 日 3 月 28 日 4 月 1 日 4 月 5 日 4 月 9 日 4 月 13 日 4 月 17 日 4 月 21 日 4 月 25 日 4 月 29 日 5 月 3 日 5 月 7 日 5 月 11 日 5 月 15 日 5 月 19 日 5 月 23 日 5 月 27 日 5 月 31 日 図 -5 花 粉 自 動 計 測 器 によるスギ 花 粉 空 中 飛 散 量 花 粉 親 クローン 該 当 本 数 2 18 16 14 12 1 8 6 4 2 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 列 目 図 -6 調 査 木 を 中 心 とした 花 粉 親 に 寄 与 する 距 離 - 66 -
2 簡 易 被 覆 による 外 部 花 粉 の 軽 減 効 果 簡 易 な 被 覆 をしたA 区 画 と 被 覆 をしていないD 区 画 の 交 配 実 態 を 表 -4に 示 す 外 部 花 粉 率 につい ては A 区 画 が57.9% D 区 画 が68.9%で 簡 易 な 被 覆 をすることにより 被 覆 をしない 場 合 よりも 11.% 外 来 花 粉 率 が 軽 減 された 結 果 であった しかし DNA 解 析 による 結 果 の 評 価 は 花 粉 親 が 花 粉 の 少 ないスギ 品 種 であれば 区 画 内 交 配 と 見 なし 集 計 していたため 再 度 A 区 画 内 での 交 配 とされ た 花 粉 親 について 確 認 した 所 構 成 クローン 以 外 のクローンが12 本 のうち4 本 花 粉 親 として 集 計 さ れていた( 図 -7) したがって 実 際 におけるA 区 画 の 区 画 内 交 配 は62 本 区 画 外 交 配 は18 本 とな ることから 外 部 花 粉 交 配 率 は74.3%と 被 覆 をしていないD 区 画 と 比 較 し 高 い 結 果 となった 構 成 クローン 以 外 の 花 粉 親 は 対 照 区 としたD 区 画 の 花 粉 が 流 動 してきたと 推 測 される スギ 雄 花 開 花 調 査 を 目 視 による 結 果 からも 花 粉 の 飛 び 始 めは A 区 画 D 区 画 ともに3 月 22 日 前 後 からであ ったのに 対 し 花 粉 の 飛 び 終 わりは A 区 画 が4 月 22 日 D 区 画 が4 月 6 日 と 簡 易 被 覆 をしたA 区 画 の 方 が2 週 間 程 度 長 く 飛 散 していた 簡 易 被 覆 の 設 置 により A 区 画 では 通 常 とは 異 なる 飛 散 期 間 となり 交 配 適 期 における 花 粉 のピークがずれたことが 原 因 の 一 つと 考 えられる なお 調 査 木 にお ける 花 粉 親 に 寄 与 した 採 種 木 については D 区 画 同 様 に 簡 易 被 覆 をしたA 区 画 においても 近 隣 の 採 種 木 が 影 響 していた( 図 -8 図 -9) 表 -4 簡 易 被 覆 のあり なし 別 採 種 園 交 配 実 態 区 画 解 析 数 区 画 内 交 配 クローン 本 数 区 画 外 交 配 クローン 本 数 外 部 花 粉 率 (%) A 区 画 ( 被 覆 あり) 242 12 14 57.9 D 区 画 ( 被 覆 なし) 615 191 424 68.9 該 当 クローン( 本 ) 11 1 9 8 7 6 5 4 3 2 1 4 62 交 配 内 訳 D 区 画 花 粉 交 配 A 区 画 内 交 配 図 -7 簡 易 被 覆 あり(A 区 画 )における 区 画 内 交 配 内 訳 - 67 -
花 粉 親 クローン 該 当 本 数 9 8 7 6 5 4 3 2 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 列 目 花 粉 親 クローン 該 当 本 数 5 45 4 35 3 25 2 15 1 5 1 2 3 4 5 6 7 列 目 図 -8 簡 易 被 覆 なし(D 区 画 ) 図 -9 簡 易 被 覆 あり(A 区 画 ) Ⅳ おわりに ミニチュア 採 種 園 の 交 配 実 態 について 調 査 した 結 果 外 部 からの 花 粉 混 入 率 は46.2%~68.9%であ った 少 花 粉 品 種 で 構 成 されているミニチュア 採 種 園 は 品 種 そのものが 雄 花 の 自 然 着 花 が 少 なく ジベレリン 処 理 によって 強 制 的 に 雄 花 を 着 花 させても 既 存 の 採 種 園 の 報 告 と 同 程 度 であることから 外 部 花 粉 を 軽 減 するためには さらなる 対 策 を 講 じる 必 要 がある 経 年 変 化 では 211 年 は 21 年 と212 年 と 比 較 し 高 い 外 部 花 粉 率 を 示 しており 周 囲 のスギ 人 工 林 からの 花 粉 飛 散 量 が 影 響 してい る 可 能 性 が 高 いと 考 えられる 花 粉 自 動 計 測 器 の 値 からも211 年 はスギ 花 粉 飛 散 量 が 多 く その 影 響 が 関 与 していることを 裏 付 けている また 採 種 木 からの 位 置 が 近 いほど 花 粉 親 としての 寄 与 が 高 い こから 交 配 には 採 種 園 内 に 流 動 する 花 粉 密 度 が 密 接 に 関 与 すると 考 えられる 今 回 簡 易 被 覆 による 外 部 花 粉 の 軽 減 効 果 について 期 待 した 成 果 は 得 られなかったものの 改 善 点 を 見 いだすことができた 採 種 園 周 囲 の 花 粉 量 や 風 向 き 交 配 時 期 を 明 らかにし 扇 風 機 などの 人 工 的 に 送 風 するシステムを 併 用 することにより 効 果 的 な 外 部 花 粉 の 軽 減 につながると 考 えられる 簡 易 被 覆 による 外 部 花 粉 の 軽 減 手 法 は 花 粉 飛 散 時 期 だけ 簡 易 な 支 柱 を 立 て 被 覆 すればよいこと から 経 費 もそれほど 高 価 ではなく 既 に 設 置 されたミニチュア 採 種 園 へも 適 用 可 能 である また 閉 鎖 型 温 室 と 異 なり 湿 度 や 温 度 による 影 響 が 野 外 とほとんど 同 一 であり 受 粉 後 の 球 果 に 対 する 高 温 障 害 などの 危 険 性 が 少 ない 点 では 有 効 的 であるが 大 規 模 な 採 種 園 に 適 用 することは 困 難 であり 比 較 的 小 面 積 の 対 応 となることが 欠 点 である 今 後 この 研 究 成 果 がスギ 花 粉 症 対 策 の 一 助 となれば 幸 いである 引 用 文 献 畔 上 由 佳 内 山 友 里 恵 笠 原 ひとみ 上 田 ひろみ 吉 田 徹 也 宮 坂 たつ 子 長 瀬 博 藤 田 暁 (211), 長 野 市 における1992 年 から21 年 までのスギ ヒノキ 科 花 粉 飛 散 状 況, 長 野 県 環 境 保 全 研 究 所 研 究 報 告 7,57-61 Kalinowski ST, Taper ML, Marshall TC (27), Revising how the computer program CERVUS acc ommodates genotyping error increases success in paternity assignment. Mol Ecol 16,199-116 森 口 喜 成 後 藤 晋 高 橋 誠 (25), 分 子 マーカー 情 報 に 基 づく 採 種 園 の 遺 伝 的 管 理, 日 林 誌 87,161-169 - 68 -
森 口 善 成 谷 尚 樹 平 英 彰 津 村 義 彦 (23), 設 計 様 式 および 立 地 環 境 の 異 なるスギ 採 種 園 における 遺 伝 子 流 動 の 比 較, 日 本 林 学 会 大 会 学 術 講 演 集 114,37pp Ozawa H., Watanabe J.,Chen H.,Isoda K.,Watanabe A.(29)The impact of henological and art ificial factors on need quality in a Nematobe-resistant Pinus densiflora seed oechard, Silvae.Genet58,145-152 白 石 進 渡 辺 敦 史 (1995),rbcL 遺 伝 子 多 型 を 利 用 したアカマツとクロマツの 葉 緑 体 ゲノム 識 別, 日 林 誌 77,429-436 Tsubomura M.,Fukatsu E.,Nakada R.,Fukuda Y.(212),Inheritance of male flowar producti on in Cryptomeria japonica(sugi)estimated from analysis of a diallel mating test,ann.for. Sci69,867-875 Wheeler N.C.and Jech K.S.(1992), The use of electrophoretic markers in seed orchard resear ch,new Forest.6,311-328 - 69 -