12 第 12 章 リストラ 失 業 セーフティネット 定 期 収 入 とセーフティネットについて 学 ぶ 本 講 での 学 習 のゴール( 講 義 後 に 学 生 は 以 下 の 事 項 ができるようになっている) 失 業 した 場 合 の 対 処 の 方 法 について 考 えることができる セーフティネットについて 理 解 することができる 自 助 共 助 公 助 について 理 解 することができる 学 習 の 狙 い 予 期 せぬ 事 態 で 急 に 収 入 源 が 絶 たれた 場 合 どうすればよいのだろうか? 自 分 の 貯 金 だけ でどれくらいの 期 間 出 ていくキャッシュフローを 支 えることができるのか また 別 の 一 時 的 収 入 元 を 得 るようなセーフティネットは 存 在 するのか 定 期 収 入 というキャッシュ イン がなくなった 場 合 について Case Study で 学 習 する この 章 の 概 要 終 身 雇 用 制 度 が 崩 れつつある 今 日 失 業 は 誰 もが 直 面 するかもしれない 問 題 である 失 業 し て 所 得 が 途 絶 えた 場 合 どうしたらいいかディスカッションを 通 して 考 える 生 活 をサポー トしたり 新 しい 仕 事 を 探 したりするためにどのような 制 度 があるかを 学 ぶ 失 業 に 備 えて 貯 蓄 など 普 段 から 自 分 がしておくことは 何 か( 自 助 ) 社 会 保 険 の 制 度 は 何 か( 共 助 ) 公 的 な 援 助 には 何 があるか( 公 助 )について 考 える [Case 12-1] 張 り 切 って 新 社 会 人 になり 自 立 して 一 人 暮 らしを 始 めた 翔 さんだが 働 いて 1 年 たって どうやら 会 社 の 経 営 が 思 わしくないことに 気 付 いてはいた そしてとうとうある 日 解 雇 (リ ストラ)を 告 げられた 会 社 に 限 界 を 感 じていたので 受 け 入 れざるを 得 ないが 収 入 が 断 た れて 途 方 にくれるばかりである 両 親 はすでに 引 退 して 年 金 暮 らしなので 経 済 的 な 援 助 を 受 けることはできない こんな 時 どうしたらいいのだろうか? このような 時 に 自 分 たちなら どのような 行 動 をとるか 話 し 合 ってみよう 85
[Case 12-2] 新 社 会 人 になったアツコさんであるが 働 いて 1 年 たって どうやら 会 社 の 経 営 が 思 わ しくないようである そしてある 日 突 然 会 社 が 倒 産 し 解 雇 を 告 げられた アツコさん は 母 子 家 庭 で 苦 労 した 母 親 と 一 緒 に 実 家 で 暮 らしているが 母 親 は 病 気 で 収 入 がなく アツコさんの 収 入 が 頼 りであった 今 回 の 件 で アツコさんは 精 神 的 なショックから 体 調 を 崩 し しばらく 就 職 活 動 ができない この 場 合 この 母 子 はどうしたらいいか? 自 分 たち ならどんなアドバイスをするか 話 し 合 ってみよう キー 概 念 失 業 雇 用 保 険 セーフティネット ハローワーク 生 活 保 護 キー 概 念 解 説 失 業 : 一 般 的 には 元 気 で 働 きたいし 働 けるのに 職 がない 状 態 のこと 失 業 手 当 の 支 給 について 定 めている 雇 用 保 険 法 における 定 義 は ( 雇 用 保 険 の) 被 保 険 者 が 離 職 し 就 労 の 意 思 及 び 能 力 を 有 するにもかかわらず 職 業 に 就 くことができない 状 態 にあること である 雇 用 保 険 : 一 般 的 に 失 業 保 険 ということもある 雇 用 労 働 者 を 対 象 とした 保 険 である パ ートタイムで 働 く 人 も 所 定 労 働 時 間 が 週 20 時 間 以 上 で かつ 引 き 続 き 31 日 以 上 雇 用 さ れることが 見 込 まれる 場 合 は 被 保 険 者 となる 被 保 険 者 ( 会 社 員 など)が 失 業 した 場 合 に 失 業 中 の 収 入 を 保 障 し 再 就 職 の 促 進 を 図 る 主 な 給 付 は 基 本 手 当 (いわゆる 失 業 手 当 )で ある 失 業 手 当 の 給 付 は 公 共 職 業 安 定 所 (ハローワーク)での 職 業 紹 介 斡 旋 と 一 体 的 に 行 っている セーフティネット: 雇 用 保 険 生 活 保 護 などの 社 会 保 障 制 度 消 費 者 保 護 制 度 などのよう に 自 己 責 任 の 原 則 を 補 完 して 市 場 競 争 における 脱 落 者 や 弱 者 を 守 る 制 度 ハローワーク( 公 共 職 業 安 定 所 ): 公 共 職 業 安 定 所 が 正 式 名 称 で ハローワークは 愛 称 国 民 に 安 定 した 雇 用 機 会 を 確 保 することを 目 的 として 国 ( 厚 生 労 働 省 )が 主 要 都 市 に 設 置 して いる 求 職 者 には 求 職 申 込 求 職 相 談 職 業 紹 介 を 行 う 具 体 的 には 就 職 や 転 職 について の 相 談 指 導 適 性 や 希 望 にあった 職 場 への 職 業 紹 介 雇 用 保 険 ( 失 業 手 当 )の 受 給 手 続 き などのサービスを 提 供 する 雇 用 主 には 雇 用 保 険 雇 用 に 関 する 国 の 助 成 金 補 助 金 の 申 請 86
窓 口 業 務 や 求 人 の 受 理 などを 行 う 生 活 保 護 : 公 的 扶 助 とも 言 われる 失 業 退 職 疾 病 死 亡 離 婚 災 害 などの 理 由 で 生 活 困 窮 者 となった 場 合 一 定 水 準 の 生 活 を 国 の 責 任 で 保 障 するもの 生 活 保 護 法 では 保 護 の 種 類 として 生 活 扶 助 教 育 扶 助 住 宅 扶 助 医 療 扶 助 介 護 扶 助 などを 定 めてい る 保 護 を 申 請 する 窓 口 は 福 祉 事 務 所 である 保 護 が 決 定 される 前 に 扶 養 義 務 者 調 査 と 資 産 調 査 が 行 われる 基 本 的 には 援 助 できる 近 親 者 や 資 産 がない 状 態 でないと 受 給 でき ないしくみになっている [Work 12-1] 雇 用 保 険 の 基 本 手 当 (いわゆる 失 業 手 当 )の 簡 単 な 計 算 問 題 Case 12-1 の 翔 さんは 気 を 取 り 直 して ハローワークに 行 き 職 探 しをすることにし た 会 社 にいたときに 雇 用 保 険 に 入 っていたので 新 しい 仕 事 が 見 つかるまでの 一 定 期 雇 用 保 険 は 社 会 保 険 の 一 種 なので 雇 用 保 険 料 を 納 めていた 人 が 失 業 の 際 に 失 業 手 当 を 間 失 業 手 当 が 受 けられることがわかった 失 業 手 当 の 金 額 と 給 付 を 受 けられる 日 数 は 受 けられる 制 度 である どれくらいだろうか? 24 歳 退 職 前 半 年 間 の 月 収 24 万 円 被 保 険 者 であった 期 間 は * 関 連 資 料 ( 厚 生 労 働 省 の 資 料 を 加 工 ) 1 年 給 付 金 額 ( 日 額 ): 円 ~ 円 の 見 込 み 給 付 日 数 : 日 雇 用 保 険 の 受 給 要 件 1 働 く 意 思 と 能 力 がありながら 仕 事 に 就 けず 積 極 的 に 求 職 活 動 を 行 っていること 2 離 職 以 前 の 2 年 間 に 被 保 険 者 期 間 が 通 算 して 12 ヵ 月 以 上 あること ただし 倒 産 解 雇 等 により 離 職 を 余 儀 なくされた 場 合 は 離 職 の 日 以 前 1 年 間 に 6 ヵ 月 以 上 でよい 基 本 手 当 ての 金 額 退 職 前 半 年 間 の 賃 金 180 50%~80%(60 歳 未 満 の 場 合 ) 年 齢 によって 1 日 分 の 金 額 に 上 限 あり 基 本 手 当 日 額 は 年 齢 区 分 ごとにその 上 限 額 が 定 められており 現 在 は 次 のとおり ( 平 成 27 年 8 月 1 日 現 在 今 後 の 見 直 しもある ) 30 歳 未 満 6,935 円 30 歳 以 上 45 歳 未 満 7,105 円 45 歳 以 上 60 歳 未 満 7,810 円 60 歳 以 上 65 歳 未 満 6,714 円 87
倒 産 解 雇 雇 止 め 当 等 による 離 職 者 に 対 する 給 付 日 数 * 厚 生 労 働 省 資 料 より [Work 12-2] 失 業 手 当 と 生 活 費 必 要 な 貯 蓄 の 計 算 問 題 翔 さんは 基 本 手 当 ( 失 業 手 当 )5,000 円 を 受 けることができるようになった 3ヵ 月 で 新 しい 仕 事 を 探 すつもりだが それまでの 生 活 費 をまかなうために 貯 蓄 はどれくらい 必 要 だろうか? (3ヵ 月 後 に 新 しい 仕 事 を 見 つけて 給 与 をもらえるまでの4ヶ 月 間 の 生 活 について 簡 単 にするため 月 はすべて 30 日 とする) < 収 入 >[Work 11-1]の 解 答 を 使 う 基 本 給 付 金 額 : 日 額 円 月 額 (30 日 で 計 算 ) 円 給 付 期 間 : 日 < 支 出 > 翔 さんの 家 計 簿 費 目 金 額 備 考 食 費 50,000 円 外 食 中 心 住 居 費 80,000 円 オートロックつきワンルームマンション 光 熱 水 道 費 10,000 円 ほとんど 家 にいない 通 信 費 13,000 円 家 電 とケータイ 被 服 費 10,000 円 身 だしなみが 大 切 ( 切 りつめてこれが 限 度 ) 交 通 費 10,000 円 バイク 移 動 が 中 心 会 社 の 面 接 情 報 収 集 教 養 娯 楽 交 際 費 10,000 円 飲 み 会 デート 代 ( 切 りつめたが 憂 さ 晴 らしも 必 要 ) 就 職 活 動 のための 情 報 収 集 費 奨 学 金 返 済 17,000 円 2 種 奨 学 金 を 5 万 円 4 年 間 借 りていた 支 出 合 計 ( ) 円 Question: 4 ヵ 月 の 生 活 をまかなうために 必 要 な 貯 蓄 の 額 は? 4 か 月 間 の 支 出 合 計 - 失 業 手 当 支 給 合 計 = 必 要 な 貯 蓄 額 つまり いざという 時 (この 場 合 は 失 業 した 時 )のために 必 要 な 貯 蓄 額 [ ] - [ ] = [ ] 円 88
解 説 Quiz: 次 の 人 のうち 失 業 手 当 を 受 け 取 れる 人 には 受 け 取 れない 人 には をつけなさ い ただし 以 下 の 人 は 全 員 2 年 以 上 働 いていた 後 に それぞれの 事 情 で 仕 事 を 辞 めた とする 1( ) 正 社 員 として 働 いている 期 間 中 に 雇 用 保 険 料 を 納 めていたが 自 分 の 都 合 で 仕 事 を 辞 めて 現 在 ハローワークで 職 探 しをしている 人 2( ) 結 婚 のために 仕 事 を 辞 めて 現 在 求 職 活 動 はしていないが 正 社 員 として 働 いている 期 間 中 に 雇 用 保 険 料 を 納 めていた 人 3( ) 働 いている 期 間 中 に 雇 用 保 険 料 を 納 めていたが 正 社 員 ではなく 現 在 ハロ ーワークで 職 探 しをしているパートの 人 ( 非 正 規 労 働 者 ) 4( ) 最 近 自 分 の 経 営 していた 店 を 廃 業 し 現 在 ハローワークで 職 探 しをして いる 元 自 営 業 者 の 人 5 ( ) 公 立 学 校 の 先 生 を 辞 めて 現 在 ハローワークで 職 探 しをしている 人 [Work12-3] Case12-2 のアツコさん 母 子 は しばらくは 自 分 たちの 貯 蓄 を 取 り 崩 して 生 活 し てきたが 貯 蓄 は 底 をつき 生 活 は 困 窮 している そこで 近 所 の 民 生 委 員 を 通 して 福 祉 事 務 所 に 生 活 保 護 を 申 請 することにした 1 生 活 保 護 を 受 給 できる 条 件 について 考 えてみよう 2 次 の 意 見 について 賛 成 か 反 対 か 話 し 合 おう 私 たちは 生 活 保 護 には 頼 るべきではない 生 活 保 護 の 受 給 資 格 を 今 よりもっと 厳 しく すべきである 3 2についてどのような 意 見 が 出 たか グループごとに 発 表 しよう ( 賛 成 反 対 の 主 な 意 見 をメモしておくこと) 89
Student ID: 名 前 : 提 出 期 限 月 日 [Homework 12] セーフティネットとしての 生 活 保 護 横 浜 市 内 に 住 むサチ 子 さん(31 才 )は 病 身 でパートをしながら 2 人 の 子 どもを 育 ててい る DV 夫 とは 離 婚 したので 収 入 が 足 りず 生 活 保 護 を 申 請 しようと 思 う 支 給 額 はいくらく らいになるか 計 算 してみよう 2 人 の 子 どもは5 7 歳 現 在 の 収 入 は 月 額 5 万 円 です 横 浜 市 は 1 等 地 -1に 該 当 する アパートの 家 賃 は 45,000 円 である (Appendix の 生 活 扶 助 基 準 額 を 参 照 ) 計 算 参 考 ) 生 活 保 護 の 内 容 ( 生 活 扶 助 費 ) 日 常 生 活 に 必 要 な 費 用 ( 食 費 被 服 費 光 熱 費 など) 生 活 扶 助 定 められた 範 囲 内 で 実 費 を 支 給 アパート 等 の 家 賃 住 宅 扶 助 定 められた 範 囲 内 で 実 費 を 支 給 義 務 教 育 を 受 けるために 必 要 な 学 用 品 費 教 育 扶 助 定 められた 基 準 額 を 支 給 医 療 サービスの 費 用 医 療 扶 助 費 用 は 直 接 医 療 機 関 へ 支 払 ( 本 人 負 担 なし) 介 護 サービスの 費 用 介 護 扶 助 費 用 は 直 接 介 護 事 業 者 へ 支 払 ( 本 人 負 担 なし) 出 産 費 用 出 産 扶 助 定 められた 範 囲 内 で 実 費 を 支 給 就 労 に 必 要 な 技 能 の 修 得 等 にかかる 費 用 生 業 扶 助 定 められた 範 囲 内 で 実 費 を 支 給 葬 祭 費 用 葬 祭 扶 助 定 められた 範 囲 内 で 実 費 を 支 給 91